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先天性代謝異常症の遺伝子検査|795遺伝子をまとめて調べる包括的代謝疾患パネル(新生児マススクリーニングで再検査と言われた方へ)

目次

仲田洋美 医師

この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

記事の作り方(編集方針)

先天性代謝異常症の遺伝子検査(包括的代謝疾患パネル)

先天性代謝異常症は、生まれつき体の中の化学反応(代謝)を進める酵素などがうまく働かず、必要なものが足りなくなったり、たまってはいけないものがたまったりする病気の総称です。国際的な分類では1,450の病気が数えられていて[1]、症状が似ていても原因は病気ごとに違います。この検査は、先天性代謝異常症の原因として知られる795の遺伝子をまとめて調べます。原因がわからないまま病院を回る時間を、1回の検査で短くできる可能性があります。新生児マススクリーニングで再検査と言われた方、原因のわからない発達の遅れや低血糖がある方に向けて、検査でわかること・わからないこと、わかったあとにできることを臨床遺伝専門医が解説します。

⏱️ 30秒でわかる要約

🧬 Q. この検査で何がわかりますか?

先天性代謝異常症の原因として知られる795の遺伝子に、病気の原因となる変化があるかを調べます。アミノ酸・有機酸・尿素サイクル・脂肪酸・糖・ライソゾーム・ペルオキシソーム・糖鎖・金属など、幅広いグループをまとめて調べられます。

🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?

新生児マススクリーニングの精密検査で先天性代謝異常症が疑われた方、原因のわからない発達の遅れ・けいれん・低血糖・高アンモニア血症などがある方、ご家族に先天性代謝異常症の方がいる方です。病名がほぼ決まっていれば、個別のパネル検査が向くこともあります。

🧬 Q. 費用・日数・検体は?

検査料330,000円(税込)、結果は2〜3週間です。検体は血液・唾液・頬の内側の粘膜で、唾液・頬の粘膜ならオンライン診療でも受けられます。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。

🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?

結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。原因がわかれば、使える治療、病気のときの注意、きょうだいの検査、次のお子さんの備えが具体的になります。意義がまだわからない変化(VUS)が見つかることもあります。

\ 一生変わらない遺伝子を知って、これからの計画に /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

検査の前に臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、結果も臨床遺伝専門医が直接ご説明します。

お問い合わせはこちら | どの検査がよいか迷う方へ

1. 先天性代謝異常症とは?原因・遺伝のしかた・何人に一人か

先天性代謝異常症(先天代謝異常症・遺伝性代謝疾患)は、生まれつきの遺伝子の変化によって代謝の流れのどこかが止まり、体に必要なものが不足したり、有害なものがたまったりする病気のグループです。2021年に発表された国際的な分類(ICIMD)は、1,450の病気を24のカテゴリーに分けています[1]。

生まれつき酵素がうまく働かない:代謝のしくみ

私たちの体は、食事でとったたんぱく質・糖・脂肪を分解してエネルギーに変えたり、体に必要な物質に作り変えたりしています。この化学反応の連続が代謝で、反応の一つひとつを酵素が進めています。酵素の設計図である遺伝子に変化があると酵素がうまく働かず、その手前の物質がたまったり、その先の物質が足りなくなったりします。たとえばアンモニアを処理できなければ高アンモニア血症に、脂肪をエネルギーに変えられなければ空腹のときの低血糖に、細胞の中のごみを分解できなければ臓器にものがたまっていく病気になります。

症状は、哺乳の不良、ぐったりする、けいれん、発達の遅れ、肝臓や脾臓がはれる、筋力の低下など、病気によってさまざまです。生まれてすぐ重い症状で始まる病気もあれば、かぜや絶食などをきっかけに悪くなる病気、大人になってから見つかる病気もあります。

遺伝のしかた:多くは潜性遺伝、一部はX連鎖・顕性・ミトコンドリア

先天性代謝異常症の多くは、常染色体潜性(劣性)遺伝です。2本ある遺伝子の両方に変化があると発症し、1本だけに変化がある人(保因者)には通常症状がありません。ご両親がともに同じ遺伝子の保因者の場合、お子さん1人ごとに4分の1の確率で発症します。

一方で、OTC欠損症・ファブリー病・ムコ多糖症Ⅱ型(ハンター症候群)・副腎白質ジストロフィーなどはX連鎖遺伝、家族性高コレステロール血症(LDLR)・急性間欠性ポルフィリン症(HMBS)などは常染色体顕性(優性)遺伝です。ミトコンドリアDNAの変化による病気は、母親から伝わる独特の遺伝のしかたをとります。病気ごとの遺伝のしかたは、遺伝形式のページでも解説しています。

何人に一人? 原因は親のせい?

世界の49研究をまとめた系統的レビューでは、先天性代謝異常症全体の出生頻度は出生10万人あたり50.9人(95%信頼区間43.4〜58.4)と推定されています[2]。日本では、新生児スクリーニング(タンデムマス法)で有機酸・脂肪酸酸化・アミノ酸の代謝異常を調べた研究で、1997〜2015年に約336万人を調べ、約8,557人に1人の割合で見つかっています[3]。対象とした病気や調べ方が違うため、2つの数字はそのまま比べられません。

「原因は親のせいでは」と心配される方がいます。けれども、保因者であることは珍しいことではなく、ご両親の生活や妊娠中の過ごし方が原因になるわけではありません。遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。

2. 先天性代謝異常症の種類一覧:グループ別の代表的な病気と、当院の個別パネル

先天性代謝異常症は、どの物質の代謝が止まるかでグループに分けられます。小児慢性特定疾病の「先天性代謝異常」では、14の大分類に138の病気が挙げられています(令和7年4月1日版、2026年10月時点で確認)。この検査(包括的代謝疾患パネル)は、下の表のグループをまとめて調べます。病名やスクリーニングの結果で見当がついていれば、右の個別のパネル検査を選ぶ方法もあります。

🧪 先天性代謝異常症のグループと代表的な病気

グループ 代表的な病気 当院の個別のパネル検査
アミノ酸代謝異常症 フェニルケトン尿症、メープルシロップ尿症、ホモシスチン尿症、チロシン血症Ⅰ型 メチルマロン酸血症・ホモシスチン尿症パネル
尿素サイクル異常症 OTC欠損症、シトルリン血症・シトリン欠損症 高アンモニア血症・尿素サイクル異常症パネル
有機酸代謝異常症 プロピオン酸血症、メチルマロン酸血症、イソ吉草酸血症、ビオチニダーゼ欠損症 プロピオン酸血症パネル、コバラミン・ホモシステイン代謝異常症
脂肪酸代謝異常症 MCAD欠損症、VLCAD欠損症、CPT2欠損症 脂肪酸酸化異常症パネル、低血糖症・脂肪酸β酸化異常症パネル
糖質代謝異常症 糖原病Ⅰa型、遺伝性フルクトース不耐症、ガラクトース血症 糖原病パネル、ガラクトース・フルクトース代謝異常パネル、低血糖症パネル
ミトコンドリア病 ミトコンドリア病(核の遺伝子が原因のもの) ミトコンドリア病パネル、核遺伝子ミトコンドリア病パネル、ミトコンドリアDNA枯渇症候群パネル、乳酸アシドーシス・ピルビン酸代謝異常症パネル
ライソゾーム病 ゴーシェ病、ファブリー病、ポンペ病、ムコ多糖症、異染性白質ジストロフィー ライソゾーム病パネル、ムコ多糖症パネル、神経セロイドリポフスチン症パネル
ペルオキシソーム病 副腎白質ジストロフィー、ペルオキシソーム形成異常症(ツェルウェガー症候群スペクトラム)、レフサム病 ペルオキシソーム病パネル、ツェルウェガー症候群パネル
金属代謝異常症 ウィルソン病、メンケス病、遺伝性ヘモクロマトーシス ヘモクロマトーシスパネル
脂質代謝異常症 家族性高コレステロール血症 家族性高コレステロール血症の遺伝子検査
糖鎖の異常(先天性糖鎖合成異常症) PMM2-CDG(先天性グリコシル化異常症Ⅰa型) 先天性糖鎖合成異常症(CDG)パネル
そのほか ポルフィリン症、プリン・ピリミジン代謝異常症、脳クレアチン欠乏症など このパネル

※グループ分けは小児慢性特定疾病「先天性代謝異常」の大分類(令和7年4月1日版)を参考にし、糖鎖の異常を加えた。代表的な病気はこの検査の対象遺伝子に原因遺伝子が含まれるものから挙げた。

選び分けの考え方:病名がほぼ決まっていれば、そのグループの個別パネルで十分なことが多いです。症状が多くの臓器にわたっていてグループをしぼれないとき、または個別のパネルで原因が見つからなかったときは、このパネルでまとめて調べる意味があります。細胞の中で不要なものを分解するライソゾーム、とても長い脂肪酸などを分解するペルオキシソーム、脂肪をエネルギーに変えるβ酸化など、関わるしくみもグループごとに違います。

3. 新生児マススクリーニングで「再検査」「要精密検査」と言われたら

新生児マススクリーニングで再検査や精密検査になっても、病気でない場合も多くあります。スクリーニングは病気の可能性がある赤ちゃんを見落とさないための検査で、病気を確定する検査ではありません。精密検査で病気が疑われたときに、原因を確かめる役割を持つのが遺伝子検査です。

新生児マススクリーニング(先天性代謝異常等検査)とは:対象疾患と費用

新生児マススクリーニングは、生まれて数日の赤ちゃんの足の裏から少量の血液をとり、治療できる病気を症状が出る前に見つけるための検査です。こども家庭庁の資料(2025年12月)によると、全国の都道府県・指定都市で20疾患を対象に行われています。内訳は、先天性代謝異常の18疾患と、内分泌の病気(先天性甲状腺機能低下症・先天性副腎過形成症)の2疾患です。

東京都の案内(2026年7月更新)では、採血は生まれた日を0日として日齢4〜6日に行い、検査の費用は都が負担し、採血料は保護者の負担です。採血の日や費用の扱いの書き方は自治体によって少しずつ違うため、お住まいの自治体の案内でご確認ください(2026年10月時点で確認)。

拡大新生児マススクリーニング:対象の病気と費用は自治体ごとに違う

全国共通の20疾患のほかに、病気を追加して調べる「拡大新生児マススクリーニング」があります。東京都は2025年3月から、ライソゾーム病のうちポンペ病・ムコ多糖症Ⅰ型・ムコ多糖症Ⅱ型を都独自に公費の対象に加え、合計26疾患を調べています。一方で、ライソゾーム病のスクリーニングを有料(保護者の負担)で行っている自治体もあります。重症複合免疫不全症(SCID)と脊髄性筋萎縮症(SMA)は、国の実証事業として多くの自治体が参加していますが、2026年10月時点で全国の正式な対象疾患にはなっていません。

「受けるべきか」は、ご家族の考えで決めてよいものです。どの病気が公費で、どの病気が有料かは自治体ごとに違うため、出産する医療機関や自治体の案内を確かめてください。

引っかかるとどうなる? 再検査と精密検査の違い

スクリーニングの判定は「正常」「再検査」「要精査(精密検査)」に分かれます。再検査は、もう一度血液をとって測り直すことです。要精査になると、専門の医療機関で詳しい検査を受けます。日本マススクリーニング学会は、要精査となった場合でも、病院での検査の結果「異常なし」と判断される場合も少なくないとしています。「引っかかった=病気」ではありません。

精密検査の中での遺伝子検査の役割:診断を確かめる

スクリーニングは、血液の中の物質の量を測って病気の可能性を調べます。精密検査で病気が疑われたとき、原因の遺伝子の変化を見つけると、どの病気のどの型かがはっきりします。病名がはっきりすれば、治療の方針、病気のときの注意、きょうだいの検査、次のお子さんの備えまで、具体的に考えられるようになります。遺伝子の変化が見つかっても、治療は精密検査を担当する専門の医療機関で受けていただきます。生まれた赤ちゃんの遺伝子を調べる検査には、別に新生児遺伝子スクリーニング検査パネルもあります。

スクリーニングでは見つからない病気もある

新生児マススクリーニングで調べるのは、早く見つけて治療すると効果が大きい一部の病気だけです。先天性代謝異常症の多くは対象外で、スクリーニングで異常がなかったからといって、すべての代謝の病気が否定されるわけではありません。成長の途中で、発達の遅れ・けいれん・低血糖・高アンモニア血症などが出てきたときは、スクリーニングの結果にかかわらず先天性代謝異常症を考えることがあります。

4. この検査を受けるとよい人・別の検査が向く人

先天性代謝異常症が疑われるのに病名がしぼれない方、ご家族に先天性代謝異常症の方がいる方に向く検査です。見た目や症状だけでは、どの代謝の病気かを決められないことが多いからです。

症状から考える:発達の遅れ・けいれん・低血糖・高アンモニア血症など

  • ●新生児マススクリーニングの精密検査で、先天性代謝異常症が疑われた方
  • ●原因のわからない発達の遅れ・知的障害・発達の後戻りがある方
  • ●原因のわからないけいれん・筋力の低下・筋緊張の低下がある方
  • ●低血糖をくり返す、高アンモニア血症・代謝性アシドーシスを指摘された方
  • ●肝臓や脾臓のはれ、哺乳の不良、体重が増えないなどが続く方
  • ●大人になってから、原因のわからない筋肉痛と赤い尿、意識障害、心臓や腎臓の病気などで代謝の病気を疑われた方

先天性代謝異常症の中には、発達障害・知的障害の原因になるものもあります。発達の遅れが中心のときは、知的障害・発達障害の遺伝子パネル検査や発達障害の遺伝子検査の選び方もあわせて考えます。

欧州41か国の希少疾患の患者さん6,507人を調べた調査では、診断がつくまでにかかった期間(総診断時間)は平均4.7年でした[4]。日本の未診断疾患イニシアチブ(IRUD)では、遺伝学的解析を終えた5,136家系のうち2,247家系(43.8%)で診断が確定しています[5]。全員に診断がつくわけではありませんが、遺伝子検査は回り道を短くする手段のひとつです。

ご家族に先天性代謝異常症の方がいる

ご家族がすでに検査を受けて原因の遺伝子の変化がわかっていれば、その結果がいちばんの手がかりになります。ご自身で同じ変化があるかを調べる検査を検討できます。ご家族の原因がまだわかっていない場合は、ご自身の症状や家族歴に合わせて検査を選びますが、ご自身の検査だけで、ご家族の発症原因まで確定できるとは限りません。

この検査より別の検査が向く場合

🔍 症状や状況に合わせた検査の選び方

こんなとき 向いている検査
病名やグループがほぼ決まっている 2章の表の個別のパネル検査
ミトコンドリアDNAの変化を疑う ミトコンドリア病遺伝子検査パネル
代謝以外の症状も多く、病気をしぼれない 全エクソーム検査(WES)
原因が代謝の病気か、まったくわからない このパネル(795遺伝子)

※どの検査が合うかは、症状・血液や尿の検査結果・ご家族の情報で変わります。遺伝カウンセリングで一緒に決めましょう。

\ あなたの検査結果が、ご家族の手がかりにもなります /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

原因の変化がわかったご家族は、同じ場所だけを調べて、自分が同じ変化をもっているか確かめられます。

ご家族の検査を考えている方は、遺伝カウンセリングを予約する(ご希望があれば検査まで受けられます) | どの検査がよいか迷う方へ

5. 包括的代謝疾患パネルで調べる795遺伝子

この検査では、先天性代謝異常症の原因として知られる795の遺伝子について、遺伝子の小さな変化(塩基の置き換わり・小さな挿入や欠失)と、遺伝子全体やエクソン単位の欠失・重複を調べます。生まれ持った遺伝子は一生変わりません。一度の検査でわかったことは、ご自身の健康管理だけでなく、これからの妊娠・出産の計画や、ご家族の健康を考えるときにも、ずっと役に立ちます。

この検査は、遺伝診療先進国・米国の3大遺伝子検査会社の一角で行います。※

※「3大遺伝子検査会社」は、遺伝性がんや周産期(出生前検査・保因者検査)を含む遺伝子検査全般を手がける米国の検査専業会社のうち、2025年通期の売上高が上位の3社を指します(各社の決算発表にもとづく当院調べ)。がん検診やリキッドバイオプシーに特化した会社は含みません。

🧬 主な対象遺伝子と、わかる病気・遺伝のしかた

遺伝子 わかる病気(代表) 遺伝のしかた
PAH フェニルケトン尿症 潜性
BCKDHA メープルシロップ尿症 潜性
CBS ホモシスチン尿症 潜性
FAH チロシン血症Ⅰ型 潜性
PCCA・PCCB プロピオン酸血症 潜性
MUT(現在の名前:MMUT) メチルマロン酸血症 潜性
IVD イソ吉草酸血症 潜性
GCDH グルタル酸血症Ⅰ型 潜性
OTC OTC欠損症(オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症) X連鎖
CPS1 CPS1欠損症 潜性
ASS1 シトルリン血症Ⅰ型 潜性
SLC25A13 シトリン欠損症(シトルリン血症Ⅱ型) 潜性
ACADM MCAD欠損症 潜性
ACADVL VLCAD欠損症 潜性
CPT2 CPT2欠損症 潜性
SLC22A5 全身性(原発性)カルニチン欠乏症 潜性
GALT ガラクトース血症 潜性
ALDOB 遺伝性フルクトース不耐症 潜性
G6PC(現在の名前:G6PC1) 糖原病Ⅰa型 潜性
GAA ポンペ病 潜性
GLA ファブリー病 X連鎖
GBA(現在の名前:GBA1) ゴーシェ病 潜性
IDUA ムコ多糖症Ⅰ型 潜性
IDS ムコ多糖症Ⅱ型(ハンター症候群) X連鎖
SMPD1 ニーマン・ピック病A型・B型(酸性スフィンゴミエリナーゼ欠損症) 潜性
NPC1 ニーマン・ピック病C型 潜性
ARSA 異染性白質ジストロフィー 潜性
ABCD1 副腎白質ジストロフィー X連鎖
PEX1 ツェルウェガー症候群スペクトラム 潜性
ATP7B ウィルソン病 潜性
ATP7A メンケス病 X連鎖
HFE 遺伝性ヘモクロマトーシス 潜性
LDLR 家族性高コレステロール血症 顕性
PMM2 PMM2-CDG(先天性グリコシル化異常症Ⅰa型) 潜性
MPI MPI-CDG(先天性グリコシル化異常症Ⅰb型) 潜性
GAMT GAMT欠損症(脳クレアチン欠乏症) 潜性
SLC6A8 クレアチントランスポーター欠損症 X連鎖
HPRT1 レッシュ・ナイハン症候群 X連鎖
HMBS 急性間欠性ポルフィリン症 顕性
BTD ビオチニダーゼ欠損症 潜性
PDHA1 ピルビン酸脱水素酵素欠損症(E1α) X連鎖

※病名と遺伝のしかたは、MedlinePlus GeneticsとGeneReviewsで確認した(2026年10月)。潜性=常染色体潜性(劣性)、顕性=常染色体顕性(優性)。1つの病気に複数の原因遺伝子がある場合もある。

795遺伝子すべての一覧を見る(遺伝子名をクリックすると遺伝子の解説ページが開きます)

AARS2, AASS, ABCA1, ABCB11, ABCB4, ABCB7, ABCC8, ABCD1, ABCD4, ABCG5, ABCG8, ABHD12, ABHD5, ACAA1, ACAD8, ACAD9, ACADL, ACADM, ACADS, ACADSB, ACADVL, ACAT1, ACO2, ACOX1, ACSF3, ACY1, ADA, ADAMTSL2, ADAR, ADK, ADSL, AFG3L2, AGA, AGK, AGL, AGPAT2, AGPS, AHCY, AIFM1, AKR1D1, AKT2, ALAD, ALAS2, ALDH18A1, ALDH3A2, ALDH4A1, ALDH5A1, ALDH6A1, ALDH7A1, ALDOA, ALDOB, ALG1, ALG11, ALG12, ALG13, ALG14, ALG2, ALG3, ALG6, ALG8, ALG9, ALPL, AMACR, AMN, AMPD1, AMT, ANO10, ANO5, ANTXR2, AP1S1, AP4M1, APOA1, APOA5, APOB, APOC2, APOE, APOPT1, APTX, ARG1, ARSA, ARSB, ASAH1, ASL, ASNS, ASPA, ASS1, ATAD1, ATAD3A, ATIC, ATP13A2, ATP5F1A, ATP5F1D, ATP5F1E, ATP5MC3, ATP5PO, ATP6AP1, ATP6AP2, ATP6V0A2, ATP7A, ATP7B, ATP8B1, ATPAF2, AUH, B3GALNT2, B3GALT6, B3GAT3, B3GLCT, B4GALNT1, B4GALT1, B4GALT7, B4GAT1, BAAT, BCAT2, BCKDHA, BCKDHB, BCKDK, BCS1L, BOLA3, BSCL2, BSND, BTD, C12orf65, C19orf12, C19orf70, C1QBP, CA2, CA5A, CACNA1S, CAD, CARS2, CASR, CAT, CAV1, CAV3, CAVIN1, CBS, CCDC115, CD320, CHCHD10, CHKB, CHST14, CHST3, CHST6, CHSY1, CIDEC, CISD2, CKMT1A, CKMT1B, CKMT2, CLCN1, CLDN16, CLDN19, CLN3, CLN5, CLN6, CLN8, CLPB, CLPP, CNNM1, CNNM2, CNNM4, COA6, COA7, COASY, COG1, COG4, COG5, COG6, COG7, COG8, COL11A2, COL2A1, COQ2, COQ4, COQ5, COQ6, COQ7, COQ8A, COQ9, COX10, COX14, COX15, COX20, COX6A1, COX6B1, COX7B, CP, CPOX, CPS1, CPT1A, CPT1B, CPT2, CRAT, CRLS1, CSGALNACT1, CTH, CTNS, CTSA, CTSC, CTSD, CTSK, CUBN, CYC1, CYP27A1, CYP7B1, D2HGDH, DARS, DARS2, DBH, DBT, DCXR, DDC, DDOST, DGUOK, DHCR24, DHCR7, DHDDS, DHFR, DHTKD1, DLAT, DLD, DMPK, DNA2, DNAJC12, DNAJC19, DNAJC5, DNM1L, DNM2, DOLK, DPAGT1, DPM1, DPM2, DPM3, DPYD, DPYS, DYM, DYSF, EARS2, EBP, ECHS1, EGF, ELAC2, ENO3, EOGT, EPG5, EPM2A, ETFA, ETFB, ETFDH, ETHE1, FA2H, FAH, FAM111A, FARS2, FASTKD2, FBP1, FBXL4, FDX2, FDXR, FECH, FH, FKRP, FKTN, FLAD1, FLNA, FLNB, FMO3, FOLR1, FOXRED1, FTCD, FTL, FUCA1, FUT8, FXN, FXYD2, G6PC, G6PC3, GAA, GABRG2, GAD1, GALC, GALE, GALK1, GALM, GALNS, GALNT2, GALNT3, GALT, GAMT, GATM, GBA, GBE1, GCDH, GCH1, GCK, GCLC, GCSH, GDAP1, GFER, GFM1, GFM2, GFPT1, GIF, GK, GLA, GLB1, GLDC, GLRA1, GLRB, GLRX5, GLS, GLUD1, GLUL, GLYCTK, GM2A, GMPPA, GMPPB, GNE, GNMT, GNPAT, GNPTAB, GNPTG, GNS, GOT2, GPC3, GPD1, GPHN, GRHPR, GSS, GTPBP3, GUSB, GYG1, GYS1, GYS2, HAAO, HADH, HADHA, HADHB, HAMP, HARS2, HCCS, HCFC1, HEXA, HEXB, HFE, HGD, HGSNAT, HIBCH, HJV, HLCS, HMBS, HMGCL, HMGCS2, HNF1A, HNF1B, HNF4A, HOGA1, HPD, HPRT1, HPS1, HRAS, HS2ST1, HSD17B10, HSD17B4, HSD3B7, HSPD1, HTRA2, HYAL1, IARS2, IBA57, IDH2, IDS, IDUA, IER3IP1, IFIH1, INSR, ISCA1, ISCA2, ISCU, ISPD, ITPA, IVD, KCNA1, KCNJ10, KCNJ11, KCNJ2, KCTD7, KIF1A, KYNU, L2HGDH, LAMA2, LAMP2, LARGE1, LARS, LARS2, LCAT, LCT, LDB3, LDHA, LDLR, LDLRAP1, LETM1, LIAS, LIPA, LIPE, LIPT1, LIPT2, LMBRD1, LMNA, LONP1, LPIN1, LPL, LRPPRC, LYRM4, LYRM7, MAGT1, MAN1B1, MAN2B1, MANBA, MAOA, MARS2, MAT1A, MCCC1, MCCC2, MCEE, MCOLN1, MDH2, MECR, MFF, MFN2, MFSD8, MGAT2, MGME1, MICU1, MIPEP, MLYCD, MMAA, MMAB, MMACHC, MMADHC, MMGT1, MOCOS, MOCS1, MOCS2, MOGS, MPC1, MPDU1, MPI, MPV17, MRPL3, MRPL44, MRPS16, MRPS2, MRPS22, MRPS34, MSMO1, MSTO1, MTFMT, MTHFR, MTO1, MTPAP, MTR, MTRR, MTTP, MUT, MVK, MYOT, NADK2, NAGA, NAGLU, NAGS, NARS2, NAXD, NAXE, NBAS, NDUFA1, NDUFA10, NDUFA11, NDUFA12, NDUFA13, NDUFA2, NDUFA4, NDUFA6, NDUFA8, NDUFA9, NDUFAF1, NDUFAF2, NDUFAF3, NDUFAF4, NDUFAF5, NDUFAF6, NDUFAF8, NDUFB10, NDUFB11, NDUFB3, NDUFB8, NDUFC2, NDUFS1, NDUFS2, NDUFS3, NDUFS4, NDUFS6, NDUFS7, NDUFS8, NDUFV1, NDUFV2, NEU1, NFS1, NFU1, NGLY1, NHLRC1, NIPA2, NNT, NPC1, NPC2, NSDHL, NSUN3, NT5C3A, NUBPL, OAT, OCRL, OGDH, OPA1, OPA3, OTC, OXCT1, PAH, PANK2, PARS2, PC, PCBD1, PCCA, PCCB, PCK1, PCK2, PCSK9, PDHA1, PDHB, PDHX, PDK3, PDP1, PDSS1, PDSS2, PDX1, PEPD, PET100, PEX1, PEX10, PEX11B, PEX12, PEX13, PEX14, PEX16, PEX19, PEX2, PEX26, PEX3, PEX5, PEX6, PEX7, PFKM, PGAM2, PGAP2, PGAP3, PGK1, PGM1, PGM3, PHGDH, PHKA1, PHKA2, PHKB, PHKG1, PHKG2, PHYH, PIGA, PIGL, PIGN, PIGO, PIGS, PIGT, PIGV, PINK1, PLA2G6, PLIN1, PLPBP, PMM2, PMPCA, PMPCB, PNP, PNPLA2, PNPLA8, PNPO, PNPT1, POLG, POLG2, POMGNT1, POMGNT2, POMK, POMT1, POMT2, POR, PPA2, PPARG, PPM1K, PPOX, PPT1, PRDX1, PRKAG2, PRKAG3, PRODH, PRPS1, PSAP, PSAT1, PSPH, PTF1A, PTS, PUS1, PYGL, PYGM, PYY, QDPR, QRSL1, RAI1, RARS2, RBCK1, RFT1, RMND1, RNASEH1, RNASEH2A, RNASEH2B, RNASEH2C, RPIA, RPL10, RPN2, RRM2B, RTN4IP1, RXYLT1, RYR1, SACS, SAMHD1, SAR1B, SARS2, SC5D, SCN4A, SCO1, SCO2, SCP2, SDHA, SDHAF1, SDHB, SDHD, SEC23B, SERAC1, SERPINA1, SETX, SFXN4, SGSH, SHMT2, SI, SKIV2L, SLC12A3, SLC13A5, SLC16A1, SLC17A5, SLC18A2, SLC19A1, SLC19A2, SLC19A3, SLC1A3, SLC22A5, SLC25A1, SLC25A12, SLC25A13, SLC25A15, SLC25A19, SLC25A20, SLC25A22, SLC25A26, SLC25A3, SLC25A32, SLC25A38, SLC25A4, SLC25A42, SLC25A46, SLC2A1, SLC2A2, SLC30A10, SLC33A1, SLC35A1, SLC35A2, SLC35C1, SLC37A4, SLC39A14, SLC39A4, SLC39A8, SLC3A1, SLC40A1, SLC41A2, SLC41A3, SLC46A1, SLC52A2, SLC52A3, SLC5A1, SLC5A6, SLC6A19, SLC6A3, SLC6A5, SLC6A8, SLC6A9, SLC7A7, SLC7A9, SMPD1, SPG7, SPR, SPTLC1, SPTLC2, SRD5A3, SSBP1, SSR4, ST3GAL3, ST3GAL5, STT3A, STT3B, SUCLA2, SUCLG1, SUGCT, SUMF1, SUOX, SURF1, TACO1, TALDO1, TANGO2, TARS2, TAT, TAZ, TBC1D4, TCF4, TCN1, TCN2, TFAM, TFR2, TH, TIMM50, TIMM8A, TIMMDC1, TK2, TMEM126A, TMEM126B, TMEM165, TMEM199, TMEM70, TOP3A, TPI1, TPK1, TPMT, TPP1, TREX1, TRIM37, TRIT1, TRMT10C, TRMT5, TRMU, TRNT1, TRPM6, TRPM7, TSFM, TTC19, TTC37, TTPA, TUFM, TUSC3, TWNK, TYMP, UCP2, UGT1A1, UMPS, UPB1, UQCC2, UQCRB, UQCRC2, UQCRFS1, UQCRQ, UROD, UROS, VARS2, VIPAS39, VKORC1, VPS33B, WARS2, WDR45, WFS1, XDH, XYLT2, YARS2, ZMPSTE24(795遺伝子)

※FXN遺伝子:病気の原因で最も多いのはGAAという3塩基の繰り返しが長くなる変化(リピート伸長)ですが、この検査ではリピート伸長は調べません。塩基の変化とコピー数の変化だけを調べます。リピート伸長を調べる検査が必要な場合はご相談ください。

※MTHFR遺伝子:米国臨床遺伝・ゲノム学会(ACMG)の推奨に従い、よく見られる2つの多型(c.1286A>C〔c.1298A>Cとも呼ばれる〕とc.665C>T〔c.677C>Tとも呼ばれる〕)は、臨床的な意味が十分でないため報告しません。

※ALG1遺伝子:よく似た配列の影響で、エクソン6〜13の変化を見つける感度が下がります。

NIPT(新型出生前診断)との関係

代謝の病気の主な原因遺伝子(PAH・OTC・GAAなど)は、当院のNIPTの対象ではありません。なお、このパネルの795遺伝子のうち、COL2A1・EBP・FLNB・HRAS・LMNA・NSDHLは当院のNIPTのダイヤモンドプランとインペリアルプランで、FLNA・KCNJ2・KIF1A・TCF4・WDR45はインペリアルプランで、妊娠中の赤ちゃんに新しく起きた変化を調べる対象に入っています。当院のNIPTは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。詳しくはNIPTのページをご覧ください。

6. この検査でわかること・わからないこと

この検査でわかるのは、795の遺伝子の小さな変化と、遺伝子全体または連続した2つ以上のエクソンの欠失・重複です。次世代シークエンサーで遺伝子のたんぱく質を作る部分とその境目を読み、見つかった欠失・重複(コピー数の変化)は、別の原理の方法(qPCR法やMLPA法)でもう一度確かめてから報告します。一方で、どの遺伝子検査にも限界があります。

  • ●ミトコンドリアDNA:ミトコンドリアがもつ独自のDNAの変化は調べません。
  • ●リピート伸長・構造の変化:同じ配列の繰り返しが長くなる変化、染色体の一部の入れ替わり(転座・逆位)は見つけられません。
  • ●遺伝子の調節部分・深いイントロン:多くの調節領域や、エクソンから20塩基より離れたイントロンの変化は調べません。
  • ●1つのエクソンだけの欠失・重複:見つかることはありますが、いつも見つけられるわけではありません。頬の粘膜の検体では、遺伝子全体の欠失・重複までの判定になります。
  • ●モザイク:体の一部の細胞にだけ変化がある状態を調べるための検査ではありません。
  • ●意義がまだわからない変化(VUS):病気の原因かどうか、まだ判断できない変化が見つかることがあります。
  • ●陰性でも否定はできません:795遺伝子は、すべての先天性代謝異常症の原因を含んでいるわけではありません。原因が見つからなくても、病気が否定されるわけではなく、血液・尿の検査や症状にもとづく診断と管理が引き続き大切です。

調べた目的とは別の病気の原因が見つかった場合の扱いは、当院の二次的所見の開示方針をご覧ください。

7. 病的変異が見つかったら、次にできること

原因の遺伝子の変化がわかると、使える治療、病気のときの注意、ご家族の検査、次のお子さんの備えが、病気に合わせて具体的に決まります。わかるだけで終わらない、というのが先天性代謝異常症の遺伝子検査の大きな意味です。

ご本人:使える治療が決まる・病気のときの注意

先天性代謝異常症には、病名がわかれば使える治療がある病気が多くあります。食事療法や特殊ミルク、ビタミン、足りない物質の補充などです。ライソゾーム病では、厚生労働省の資料に、酵素補充療法がファブリー病・ゴーシェ病・ポンペ病・ムコ多糖症(Ⅰ型・Ⅱ型・ⅣA型・Ⅵ型)で行われ、いくつかの病気では造血細胞移植が行われていると書かれています。このほか、ムコ多糖症Ⅶ型、ライソゾーム酸性リパーゼ欠損症、酸性スフィンゴミエリナーゼ欠損症、神経セロイドリポフスチン症2型(CLN2)に対する薬も、日本で承認されています(2026年10月時点、PMDAの情報で確認)。

また、尿素サイクル異常症では、病気・手術・長い絶食・出産の前後・たんぱく質のとりすぎなどをきっかけに、どの年齢でも高アンモニア血症の発作が起こりうるとされています[11]。病名がわかっていれば、こうした場面で主治医が早めに対応できます。臨床遺伝専門医として、病気のときにどうするかを前もって主治医と決めておくことが大切だと考えています。治療は、主治医・専門の医療機関で受けていただきます。

症状のない方・保因者だった方:パートナーの検査と、結婚・いとこ婚

潜性遺伝の病気の保因者だった場合、ご自身に症状は通常ありません。パートナーも同じ遺伝子の保因者である場合や、その遺伝子による病気の当事者である場合には、お子さんが発症する可能性があります。パートナーの検査や拡大版保因者スクリーニング(女性版)・男性版で、お子さんへの確率を具体的に知ることができます(その病気の遺伝子が保因者検査の対象かどうかは、遺伝子一覧でご確認ください)。妊娠中の方には、NIPTと同じ日に採血できるカップルの保因者検査「ファミリーセーフティ プラス」もあります(単独では受けられません)。結婚前に考えたい方は、結婚相手と受けたい保因者検査もご覧ください。

いとこ同士の結婚では、同じ遺伝子の保因者どうしになる確率が上がります。米国遺伝カウンセラー学会の推奨では、いとこ婚で生まれるお子さんの重大な先天異常のリスクは、一般の背景リスク(1年目の大きな先天異常で3〜4%)に1.7〜2.8%上乗せされると推定されています[8]。リスクが高くなることはあっても、結婚してはいけないという意味ではありません。知ったうえで選べることを増やすために、保因者検査があります。

X連鎖の病気では、保因者の女性にも症状が出ることがあります。ファブリー病の女性は、男性より軽く遅れて症状が出ることが多い一方、まれに男性と同じくらい重い症状になることもあります[9]。OTC欠損症でも、変化を1つもつ女性が、病気やストレスをきっかけに高アンモニア血症を起こすことがあります[10]。症状のないお母さん・姉妹が検査で知っておく意味は、ここにもあります。

きょうだい・ご両親:症状が出る前に見つける

お子さんの原因がわかれば、症状のないきょうだいも、同じ病気をもっているか、保因者かを調べられます。潜性遺伝の病気では、きょうだいが同じ病気である確率は4分の1、保因者である確率は2分の1です。症状が出る前に見つかれば、早く治療や見張りを始められる病気もあります。ご両親が保因者かどうかの確認は、次のお子さんの計画にもつながります。

BRCA1/2の検査を受ける人を追った研究では、遺伝カウンセリングのあとに、家族や社会のために検査を受けたいという理由が有意に増えたと報告されています[7]。ご自身の結果を、ご家族のためにも使いたいと考える方は少なくありません。

次のお子さん:出生前診断・生まれてすぐの検査・PGT-M

ご家族で原因の遺伝子の変化がわかっていれば、妊娠したときに赤ちゃんで同じ変化があるかを調べられます。絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。その病気で出生前診断を行えるかは、病気の重さや国内の指針を踏まえて個別に判断しますので、妊娠を考えている段階からご相談ください。羊水検査・絨毛検査は院内で行っています(2025年6月から産婦人科を併設)。出生前診断を受けずに出産し、生まれてすぐに赤ちゃんを調べて早く治療につなげる、という選び方もあります。どの選択も尊重します。

日本でも、日本産科婦人科学会の指針にもとづく審査を経て、PGT-M(着床前遺伝学的検査)が行われています(当院は体外受精・PGT-Mを行っていません)。準備に必要なことは海外でPGT-Mを考えている方へで解説しています。

陰性・VUSだったとき

原因が見つからなかった場合でも、病気が否定されたわけではありません(6章)。症状に合わせて、ミトコンドリアDNAの検査や全エクソーム検査などを考えます。VUSは、それだけで診断やご家族の発症リスクの判断には使いません。ただし、その変化の意味を評価するために、ご家族の検査を検討することがあります。研究が進んで、のちに意味がはっきりすることもあります。

当院でのその後

結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングでご説明し、次にどうするかを一緒に考えます。ご家族の検査、パートナーの保因者検査、妊娠したときの出生前診断まで、当院で続けてご相談いただけます。

8. 日本の制度(2026年10月時点)

先天性代謝異常症の多くは、小児慢性特定疾病や指定難病の対象になっています。小児慢性特定疾病では、疾患群「先天性代謝異常」に138の病気が挙げられています(令和7年4月1日版)。指定難病には、ライソゾーム病(19)、副腎白質ジストロフィー(20)、ミトコンドリア病(21)、ウィルソン病(171)、ペルオキシソーム病(副腎白質ジストロフィーを除く)(234)、フェニルケトン尿症(240)、メープルシロップ尿症(244)、プロピオン酸血症(245)、メチルマロン酸血症(246)、尿素サイクル異常症(251)、ポルフィリン症(254)、シトリン欠損症(318)などが含まれます(厚生労働省の指定難病一覧で確認)。

医療費の助成を受けるには、それぞれの制度の認定の条件を満たし、申請する必要があります。病名が遺伝子検査で確定していることは、制度を使うときの手がかりにもなります。認定の基準や申請の方法は、難病情報センター・小児慢性特定疾病情報センターや、お住まいの自治体の窓口でご確認ください。

9. 検査の流れ・費用・結果までの日数・検体

検査料は330,000円(税込)、結果までは2〜3週間です。唾液・頬の粘膜・血液のいずれでも検査でき、オンライン診療でも受けられます。

ご予約
▶
遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医
▶
検体の採取唾液・頬の粘膜・血液
▶
結果のご説明2〜3週間後・マイページへ

💴 費用・日数・検体

項目 内容
検査料 330,000円(税込)
遺伝カウンセリング料 30分22,000円(税込)※検査料とは別
結果までの期間 2〜3週間(至急オプション〔55,000円〕で約7日短縮)
検体 血液(EDTA管4ml×2本)、抽出DNA、頬の粘膜、唾液
調べる内容 塩基配列の変化と欠失・重複(料金に含まれる)
VUSの除外 ご希望により、VUSを報告しない設定ができます(無料)
オンライン診療 可能です。血液検体の場合は全国の提携医療機関で採血をお願いします

※当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。ご夫婦・カップルで同じ検査を同じ日に一緒に受ける場合は、遺伝カウンセリング料が1人分になります(検査料の割引はありません)。

オンライン診療の場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。オンライン診療(ビデオ通話)で遺伝カウンセリングを行ったあと、検体を当院にお送りいただきます。検体採取キットは検査料金のお支払い後にお送りします。取り違えや検体の品質の問題を防ぐため、ご自身で勝手に検体を採取しないでください。

結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果は、基本的に日本語版でお渡ししています。海外でPGT-Mを受けるなど、英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。報告書の読み方は遺伝子検査結果の見かたで解説しています。

検査の前の遺伝カウンセリングでは、検査で何がわかり、何がわからないか、結果がご家族にとってどういう意味をもつかをご説明します(遺伝カウンセリングとは)。検査を受けるかどうかは、説明を聞いて納得してから決めていただきます。

先天異常や知的障害のあるお子さんのエクソーム・ゲノム検査について、研究167件をまとめた米国臨床遺伝・ゲノム学会の系統的レビューでは、95%の研究が、患者さんやご家族の診療方針に何らかの変化があったと報告しています(このパネル自体の成績ではありません)[6]。変化の中身は研究ごとに違いますが、病名がわかると次の一手が決まりやすくなります。

\ 病名がわかると、次の一手が決まります /

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10. 院長コラム

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「引っかかった」の次に、何を知るか】

新生児マススクリーニングで再検査と言われたご家族は、結果が出るまで本当に不安な時間を過ごされます。スクリーニングは見落とさないための検査なので、再検査になっても病気でないことは多くあります。ただ、精密検査で病気が疑われたときには、原因の遺伝子まで確かめることで、治療・病気のときの注意・ご家族の検査・次のお子さんの備えが、一つひとつ具体的になっていきます。先天性代謝異常症は、わかったあとにできることがはっきりしている病気が多いと考えています。

私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。また、お子さんが重い症状で発症したのをきっかけに、ご自身も同じ遺伝子の変化を持っていたとわかり、自分のせいだと責めてしまう親御さんを、何度も見てきました。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。潜性遺伝の病気では、保因者であることはありふれたことで、誰のせいでもありません。

遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。こうした経験から、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。

わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、と考えています。どの選択をされても、その選択を尊重します。

よくある質問(FAQ)

Q1. 先天性代謝異常は治る病気ですか?

病気によって大きく違います。食事療法や特殊ミルク、ビタミン、酵素補充療法などで症状を抑えたり防いだりできる病気がある一方で、根本的な治療法がまだない病気もあります。日本ではファブリー病・ゴーシェ病・ポンペ病・ムコ多糖症の一部などで酵素補充療法が行われています(2026年10月時点)。どの病気かがわかってはじめて、使える治療が決まります。

Q2. 新生児マススクリーニングで再検査と言われました。病気なのでしょうか?

再検査や精密検査になっても、病気でない場合も多くあります。日本マススクリーニング学会も、精密検査で「異常なし」と判断される場合は少なくないとしています。まずは精密検査を受ける医療機関の指示に従ってください。遺伝子検査は、精密検査で病気が疑われたときに、原因を確かめる役割を持ちます。

Q3. 先天性代謝異常は何人に一人くらいですか?

病気の数がとても多いため、まとめた頻度は調べ方で変わります。世界の研究をまとめた報告では、出生10万人あたり50.9人と推定されています。日本では、有機酸・脂肪酸・アミノ酸の代謝異常を新生児スクリーニングで調べた研究で、約8,557人に1人の割合で見つかっています(1997〜2015年)。

Q4. 先天性代謝異常の原因は親にあるのですか?

誰のせいでもありません。多くは常染色体潜性(劣性)遺伝で、ご両親はそれぞれ1つずつ変化をもつ保因者でも、症状はありません。保因者であることは珍しいことではなく、ご両親の生活や妊娠中の過ごし方が原因になるわけでもありません。

Q5. きょうだいも検査を受けたほうがよいですか?

お子さんの原因がわかった場合、症状のないきょうだいでも、同じ病気をもっているか、保因者かを調べられます。潜性遺伝の病気では、きょうだいが同じ病気である確率は4分の1、保因者である確率は2分の1です。症状が出る前に見つかれば、早く治療を始められる病気もあります。

Q6. 家族に先天性代謝異常の人がいると、結婚に差し支えますか?

差し支えるかどうかを決めるのは、遺伝の確率ではなく、おふたりの考えです。潜性遺伝の病気では、パートナーも同じ遺伝子の保因者である場合や、その遺伝子による病気の当事者である場合に、お子さんが発症する可能性があります。ご自身とパートナーの保因者検査で、お子さんへの確率を具体的に知ることができます。

Q7. ミトコンドリアDNAの変化も調べられますか?

この検査では調べません。この検査は核の中のDNA(795遺伝子)を調べるもので、ミトコンドリアがもつ独自のDNA(ミトコンドリアDNA)の変化は対象外です。ミトコンドリア病を疑う場合は、ミトコンドリア病の遺伝子検査を考えます。

Q8. 結果はどのように伝えられますか?

結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果だけをお送りすることはありません。結果は基本的に日本語版でお渡しし、英語の原本が必要な方には英語版をお渡しします。

🧬 人生に一度の遺伝子検査を、ご家族とこれからの計画に

生まれ持った遺伝子は一生変わりません。先天性代謝異常症の原因がわかれば、使える治療や病気のときの注意だけでなく、きょうだいの検査や、次のお子さんの計画を考える手がかりになります。当院では臨床遺伝専門医が常駐し、検査の前後の遺伝カウンセリングから、羊水検査・絨毛検査による出生前診断の相談まで、院内で続けて受けていただけます。

お電話でのお問い合わせ:03-3478-3768

参考文献

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  • [2] Waters D, Adeloye D, Woolham D, et al. Global birth prevalence and mortality from inborn errors of metabolism: a systematic analysis of the evidence. J Glob Health. 2018;8(2):021102. [DOI: 10.7189/jogh.08.021102](PMID: 30479748)
  • [3] Shibata N, Hasegawa Y, Yamada K, et al. Diversity in the incidence and spectrum of organic acidemias, fatty acid oxidation disorders, and amino acid disorders in Asian countries: selective screening vs. expanded newborn screening. Mol Genet Metab Rep. 2018;16:5-10. [DOI: 10.1016/j.ymgmr.2018.05.003](PMID: 29946514)
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  • [5] Takahashi Y, Date H, Oi H, et al. Six years’ accomplishment of the Initiative on Rare and Undiagnosed Diseases: nationwide project in Japan to discover causes, mechanisms, and cures. J Hum Genet. 2022;67(9):505-513. [DOI: 10.1038/s10038-022-01025-0](PMID: 35318459)
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仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 当サイトの記事は、院長が自ら執筆し、医学的な内容を確認してから公開しています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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