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遺伝性疾患をお持ちで海外でPGT-M(着床前診断)を考えている方へ|受ける前に必要な遺伝子検査・家族の検体・英語の検査結果

仲田洋美 医師

この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

記事の作り方(編集方針)

遺伝性の病気をお持ちの方やそのご家族から、「海外でPGT-M(着床前診断)を受けたい」というお問い合わせを多くいただいています。PGT-Mは、体外受精でできた受精卵の段階で、ご家族でわかっている遺伝子の変化を調べる検査です。ただし、PGT-Mを受けるには、海外の施設に行く前にそろえておくものがあり、ご本人の遺伝子検査の結果だけでは準備が整わないことが少なくありません。このコラムでは、海外でPGT-Mを考えている方が前もって知っておきたいこと(原因と確かめられた遺伝子の変化、英語の検査結果、ご家族の検体、妊娠したあとの確定検査)を、臨床遺伝専門医が解説します。海外で受けると決めた方も、最初の一歩は日本にいるうちの遺伝子検査です。

⏱️ 30秒でわかる要約

🧬 Q. 海外でPGT-Mを受けるには、何が必要ですか?

欧州ヒト生殖胎生学会(ESHRE)の指針では、病気の原因と確かめられた遺伝子の変化、その内容が書かれた元の遺伝子検査の報告書、ご夫婦と血縁者の検体が準備として挙げられています。

🧬 Q. 自分の検査結果だけで受けられますか?

ふつうは足りません。受精卵のDNAはごくわずかなため、変化の両側にある目印(STRなど)で「変化の乗った染色体」を家系の中でたどる準備が必要で、そのためにご家族のDNAが求められます。

🧬 Q. PGT-Mで選んだ受精卵で妊娠したら、それで安心ですか?

PGT-Mは診断ではなくスクリーニング検査です。妊娠したら、絨毛検査・羊水検査で赤ちゃんそのものを確かめることが望ましいと考えます。当院では、どちらも院内で受けられます。

🧬 Q. 当院では何ができますか?

原因遺伝子を確かめる遺伝子検査、海外でPGT-Mを受けるときに使える英語の検査結果(検査の時にお申し出ください)、ご家族やパートナーの検査、妊娠後の確定検査です。当院は体外受精・PGT-Mは行っていません。

\ PGT-Mの準備は、原因遺伝子を確かめるところから /

📅遺伝カウンセリングを予約する

臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、海外でPGT-Mを受けるときに使える英語の検査結果をお渡しできます(検査の時にお申し出ください)。

お問い合わせはこちら | 当院の遺伝子検査の一覧

1. PGT-Mとは:受精卵を調べるスクリーニング検査

PGT-M(単一遺伝子疾患を対象とした着床前遺伝学的検査)は、体外受精でできた受精卵(胚)の一部の細胞を調べ、ご家族でわかっている病的な遺伝子の変化について胚の遺伝子型を評価し、対象疾患を発症しないと考えられる胚を移植候補として選ぶ検査です。以前は「着床前診断(PGD)」と呼ばれていました。用語としての詳しい説明は着床前遺伝学的検査(PGT-M)のページにまとめています。

PGT-Mは体外受精が前提になる検査で、調べるのは「ご家族でわかっている特定の遺伝子の変化」だけです。その病気以外の病気や、すべての遺伝子を調べる検査ではありません。

PGT-A・PGT-SRとの違い

着床前の検査には、受精卵の染色体の数を調べるPGT-A、ご夫婦のどちらかが染色体の構造の変化(転座など)をもつ場合のPGT-SRもあります。このコラムで扱うのは、遺伝性の病気(単一遺伝子疾患)を対象にしたPGT-Mです。

日本でのPGT-M:症例ごとに学会の審査

日本では、日本産科婦人科学会の「重篤な遺伝性疾患を対象とした着床前遺伝学的検査(PGT-M)に関する指針」(2026年9月改定)にもとづき、PGT-Mは症例ごとに学会の審査を受け、そのうえで実施施設の倫理委員会の承認を得て行われます。この指針では、対象となる「重篤」な疾患を、原則として、成人に達する前に日常生活が著しく損なわれる、または生存が危ぶまれる状態になる疾患で、有効な治療法がないか、治療法があっても高度かつ侵襲度の高いもの、としています(2026年10月時点)。病気が日本で対象になるかどうかは、審査で個別に判断されます。

PGT-Mの対象にする病気の決め方は、国によって大きく違います。19か国の制度を比べた総説は、法律で厳しく制限する国から比較的ゆるやかな国まで、規制のしかたに大きな幅があると報告しています[3]。たとえば英国では、公的機関(HFEA:ヒト受精・胚機構)が承認した病気でなければPGT-Mは行えず、病気ごとに承認されます(2026年10月時点)。一方、日本は病名ではなく症例ごとに、ご家族の状況も含めて審査されます。日本産科婦人科学会が公表した2023年の症例審査結果では、72例のうち58例が承認、3例が不承認で、不承認の主な理由として「重篤性の定義を満たしていない」ことなどが挙げられ、同じ病気でも結果が異なることがあると説明されています。

日本では審査に時間がかかることがあり、承認されるかどうかも申請の時点では見通せません。日本学術会議の提言(2023年8月)も、規制の厳しい国から緩やかな国へ行ってPGTを受けるケースや、費用を負担できる方が海外へ行くケースが増えていると指摘しています。費用をかけてでも海外を選ぶ方がいるのは、こうした事情によるものです。

🧭 海外で受けると決めた方へ:最初の一歩は、日本での遺伝子検査です

どの国で受ける場合も、PGT-Mの前に①病気の原因と確かめられた遺伝子の変化 ②その内容が書かれた英語の報告書 ③ご家族の検体をそろえる必要があります。渡航してから「原因が確かめられていない」「家族の検査が済んでいない」とわかると、計画そのものが止まってしまいます。

当院では、原因遺伝子を確かめる検査、ご家族・パートナーの検査、海外でPGT-Mを受けるときに使える英語の検査結果のご用意まで、日本にいるうちに進められます(英語の検査結果は、検査の時にお申し出ください)。

📅 PGT-Mの前の遺伝子検査を相談する(遺伝カウンセリングの予約)

こうした事情もあり、海外でPGT-Mを受けたいと考える方がいらっしゃいます。このコラムは、海外で受けることを勧めるものではありません。どこで受けるにしても、受ける前の準備で困ることがないよう、知っておいていただきたいことをまとめたものです。

2. 海外でPGT-Mを受ける前に必要な3つのこと

欧州ヒト生殖胎生学会(ESHRE)のPGT-Mの指針は、PGT-Mの準備として、病気の原因と確かめられた遺伝子の変化、その内容が書かれた元の報告書、ご家族の検体を挙げています[1]。海外の施設でも、PGT-Mを始める前にこうした書類や検体を求められるのがふつうです。

📋 海外でPGT-Mを受ける前に用意しておきたいもの

必要なもの 内容 当院でできること
① 原因と確かめられた遺伝子の変化 病気の原因になると証明された変化であること 遺伝子検査で原因の変化を確かめる
② 元の遺伝子検査の報告書 どの遺伝子のどの変化かが書かれた、認定を受けた検査室の報告書 英語の検査結果をお渡し(検査の時にお申し出ください)
③ ご家族の検体 ご夫婦と、病気の有無がわかっている血縁者のDNA ご家族・パートナーの遺伝子検査

※①②③は欧州ヒト生殖胎生学会(ESHRE)の指針[1]による。求められる書類や検体は施設ごとに違うため、受ける予定の施設にも前もってご確認ください。

① 病気の原因と確かめられた遺伝子の変化

PGT-Mの対象は、病気の原因になると証明された遺伝子の変化です。ESHREの指針は、可能な限り、その変化を確かめておくことを勧めています[1]。つまり、まずご本人(または患者さん)の遺伝子検査で、原因の変化がはっきりしていることが出発点です。

臨床遺伝専門医としての判断を加えると、意義がまだわからない変化(VUS)は、病気の原因と確かめられていないため、そのままPGT-Mの対象にするのは難しいと考えます。また、常染色体潜性(劣性)遺伝の病気では、ご夫婦それぞれがどの変化をもっているかを確かめておく必要があります。

② 変化の内容が書かれた元の報告書:英語の検査結果

ESHREの指針は、見つかった変化の内容(どの遺伝子のどの変化か)が書かれた元の報告書を、認定を受けた検査室から取り寄せることを勧めています[1]。海外の施設では、この報告書が英語で読めることが前提になります。

当院では、多くの遺伝子検査の解析を、米国の遺伝子検査を専門とする検査会社に依頼しています。海外でPGT-Mを受けるときに使える英語の検査結果をお渡しできますので、ご希望の方は検査の時にお申し出ください。日本語の結果だけを持っていく場合と比べて、翻訳の手間や、変化の書き方の食い違いを減らすことにもつながります。

③ ご家族の検体

3つの中で、いちばん見落とされやすいのがご家族の検体です。ご本人の検査結果がそろっていても、ご家族の検体が用意できなければ、PGT-Mの準備はふつう整いません。なぜご家族が必要なのかを、次の章でご説明します。

3. ご本人の結果だけでは足りない理由:STRとハプロタイプ

受精卵から取れるDNAはごくわずかなため、PGT-Mでは、変化そのものを読むことに加えて、変化の両側にある目印(STRなどの多型マーカー)で「変化の乗った染色体」をたどる方法を組み合わせます[1]。その目印の並びを決めるために、ご家族のDNAが必要になります。

受精卵のDNAはごくわずか

PGT-Mでは、受精卵から取り出したわずかな細胞のDNAを増やして調べます。DNAが少ないと、2本ある染色体のうち片方だけが増えて、もう片方が見えなくなる「アレルドロップアウト」が起こることがあります[1]。もし変化のある側が見えなくなれば、変化をもつ受精卵を「もっていない」と判定してしまうおそれがあります。

変化の両側の目印で「変化の乗った染色体」をたどる

そこでPGT-Mでは、変化のある場所の近くにある、人によって長さや配列が違う目印を使います。代表的なのがSTR(マイクロサテライト)やSNP(一塩基多型)です。目印の組み合わせ(ハプロタイプ)で「変化の乗った染色体」と「変化のない染色体」を見分けておけば、変化そのものが読み取れなかったときも、どちらの染色体を受け継いだかで判定できます。

ESHREの指針は、変化も一緒に調べる場合は変化の両側にSTR1個(またはSNP3個)以上、目印だけで調べる場合は両側にSTR2個(またはSNP6個)以上を目安にしています[1]。目印は変化と一緒に受け継がれることを利用するため、連鎖解析と同じ考え方です。

💡 なぜご家族が必要なのか

ご本人のDNAだけでは、目印のうち「どちらの染色体のもの」が変化と一緒に並んでいるかが決められません。病気の有無がわかっている血縁者と比べることで、はじめて「この目印の並びが変化の乗った染色体」と決められます。詳しいしくみはPGT-Mはなぜ本人だけでは検査できないのかで解説しています。

遺伝のしかたごとに必要なご家族の目安

👨‍👩‍👧 ESHREの指針が示す、ご夫婦に加えて必要な血縁者の目安

遺伝のしかた 必要な血縁者の目安
常染色体顕性(優性)遺伝 患者さん少なくとも1人(できれば2人)、および/または発症していない方1人
常染色体潜性(劣性)遺伝 患者さん(2つの変化をもつ方)、保因者の方、保因者でない方
X連鎖遺伝 患者さん、および/または発症していない方(保因者と確かめられた方が望ましい)

※ESHREの指針[1]による。実際に必要な方は、家系の状況と受ける施設の方法によって変わります。

4. ご家族の検体が用意できないとき・新しく起きた変化のとき

血縁者の検体が用意できない場合について、ESHREの指針は、ご夫婦で目印を調べたうえで、実際の治療周期の受精卵や、1個の精子を調べて「変化の乗った染色体」を決める方法を挙げています[1]。ただし、こうした方法が使えるかどうかは施設や家系の状況によって大きく変わり、受けられないこともあります。

ご本人の代で新しく起きた変化(de novo)の場合は、家系の中に同じ変化をもつ方がいません。指針は、新しく起きた変化で、これまでに妊娠歴のないご夫婦では、一般的なハプロタイプ解析の方法は使えないとしています[1]。

そのため、海外でPGT-Mを考えている方は、ご本人の検査の段階から、検査に協力していただけるご家族(とくに同じ変化をもつ方)がいるかを考えておくことが大切です。ご家族が高齢だったり、遠方に住んでいたりする場合は、検体を集めるのに時間がかかることもあります。当院では、ご家族の遺伝子検査(同じ変化があるかを調べる検査)も、遺伝カウンセリングのうえでお受けしています。

5. PGT-Mは診断ではない:妊娠したら確定検査で確かめる

PGT-Mは、受精卵のごく一部の細胞を調べるスクリーニング検査で、結果が赤ちゃんの状態と食い違うことがあります。PGT-Mで選んだ受精卵で妊娠したあとも、それで終わりではありません。

⚠️ PGT-Mは診断ではなく、スクリーニング検査です

ESHREの指針は、多くの施設で誤った結果になる割合は全体で1〜3%まで下げられているとしたうえで、PGTのあとに妊娠したすべての方に出生前診断を提案すべきとしています[2]。臨床遺伝専門医としては、PGT-Mで選んだ胚で妊娠した場合も、妊娠中に赤ちゃんそのものを調べる確定検査(絨毛検査・羊水検査)で確かめることが望ましいと考えます。

当院では、絨毛検査と羊水検査を院内で行っています(2025年6月から産婦人科を併設)。海外でPGT-Mを受けたあと、日本に戻ってからの妊娠でも、確定検査のご相談ができます。確定検査では、ご家族でわかっている同じ変化を赤ちゃんで調べるため、ここでも元の報告書と原因の変化がはっきりしていることが役に立ちます。

なお、着床前の検査とNIPTの関係については、着床前診断でダウン症は防げる?NIPTとの違いと限界で解説しています。

6. 当院でできること・できないこと

当院でお手伝いできるのは、PGT-Mの前提となる原因遺伝子の確定、英語の検査結果のご用意、ご家族・パートナーの検査、遺伝カウンセリング、妊娠後の確定検査です。当院は体外受精・PGT-Mを行っていません。

🏥 当院でできること・できないこと

段階 当院で
原因遺伝子を確かめる できます(病気に合わせた遺伝子検査)
英語の検査結果 お渡しできます(検査の時にお申し出ください)
ご家族・パートナーの検査 できます(同じ変化の有無、保因者検査)
体外受精・PGT-M 行っていません
妊娠後の確定検査 できます(絨毛検査・羊水検査を院内で)

原因遺伝子を確かめる遺伝子検査

当院では、病気に合わせた遺伝子パネル検査や、全エクソーム検査(WES)などで、原因の遺伝子を確かめます。どの検査が合うかは、病名・症状・ご家族の情報によって違うため、遺伝カウンセリングで一緒に決めます。結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。

ご家族・パートナーの検査

PGT-Mの準備に必要な血縁者の方の検査も、遺伝カウンセリングのうえでお受けしています。潜性遺伝の病気では、パートナーの方が同じ遺伝子の保因者かどうかを調べることも大切です。当院の拡大版保因者スクリーニング(女性版787遺伝子・男性版714遺伝子、さらに女性版1009遺伝子・男性版911遺伝子)もご利用いただけます。

遺伝カウンセリングの料金

遺伝カウンセリング料は30分22,000円(税込)で、検査費用とは別にかかります(出生前診断の遺伝カウンセリングは30分33,000円・税込)。検査費用は、検査の種類によって違います。

\ 原因の確定から妊娠後の確定検査まで、続けて支えます /

📅遺伝カウンセリングを予約する

英語の検査結果をご希望の方は、検査の時にお申し出ください。妊娠後の絨毛検査・羊水検査は院内で受けられます。

お問い合わせはこちら | 当院の遺伝子検査の一覧

7. PGT-M以外の選択肢

遺伝性の病気をお持ちの方が子どもを考えるときの選択肢は、PGT-Mだけではありません。自然に妊娠して、妊娠中に絨毛検査・羊水検査で赤ちゃんを調べる出生前診断という道もあります。出生前診断ができるかどうかは、病気の重さや国内の指針を踏まえて個別に判断されるため、妊娠を考えている段階からご相談ください。

PGT-Mには体外受精が必要で、身体的・経済的な負担もかかります。どの道を選ぶかは、病気の重さ、ご夫婦の年齢や妊娠のしやすさ、考え方によって違い、どれが正しいということはありません。PGT-M以外の選択肢については、遺伝性疾患があっても、子供を諦めないでほしい。着床前診断(PGT-M)だけが選択肢ではない理由で詳しく解説しています。

8. 院長コラム

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【子どもに受け渡したくない、という思いに寄り添うために】

私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。また、お子さんが重い症状で発症したのをきっかけに、ご自身も同じ遺伝子の変化を持っていたとわかり、自分のせいだと責めてしまう親御さんを、何度も見てきました。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。

海外でPGT-Mを考える方の思いは、とても切実です。だからこそ、海外の施設に行ってから「原因の変化が確かめられていない」「ご家族の検体がない」とわかり、計画が進まなくなることは避けたいと考えています。PGT-Mは、原因の遺伝子がはっきりしていて、家系の中でその変化をたどれることが前提の検査です。準備は、ご本人の遺伝子検査の段階から始まっています。

そして、PGT-Mで選んだ受精卵で妊娠できたとしても、それは診断ではありません。妊娠したら、赤ちゃんそのものを確定検査で確かめていただきたいと考えています。当院は体外受精やPGT-Mは行っていませんが、その前の原因の確定と、そのあとの確定検査を、続けて支えることができます。どの選択をされても、その選択を尊重します。

よくある質問(FAQ)

Q1. PGT-Mとは何ですか?

体外受精でできた受精卵(胚)の一部の細胞を調べ、ご家族でわかっている病的な遺伝子の変化について胚の遺伝子型を評価し、対象疾患を発症しないと考えられる胚を移植候補として選ぶ検査です。以前は着床前診断(PGD)と呼ばれていました。調べるのはご家族でわかっている特定の変化だけです。

Q2. 海外でPGT-Mを受けるには何が必要ですか?

欧州ヒト生殖胎生学会(ESHRE)の指針では、病気の原因と確かめられた遺伝子の変化、その内容が書かれた元の報告書、ご夫婦と病気の有無がわかっている血縁者の検体が準備として挙げられています。求められる書類や検体は施設ごとに違うため、受ける予定の施設にも前もって確認してください。

Q3. 自分の遺伝子検査の結果だけでPGT-Mは受けられますか?

ふつうは足りません。受精卵のDNAはごくわずかなため、変化の両側にある目印(STRなど)で変化の乗った染色体をたどる方法を組み合わせ、そのためにご家族のDNAが必要になります。血縁者がいない場合の方法もありますが、できるかどうかは施設や家系の状況によって変わります。

Q4. 英語の検査結果はもらえますか?

はい。当院は多くの遺伝子検査の解析を米国の遺伝子検査を専門とする検査会社に依頼しており、海外でPGT-Mを受けるときに使える英語の検査結果をお渡しできます。ご希望の方は、検査の時にお申し出ください。

Q5. PGT-Mで選んだ受精卵で妊娠したら、出生前診断は必要ですか?

PGT-Mは診断ではなくスクリーニング検査です。ESHREの指針は、PGTのあとに妊娠したすべての方に出生前診断を提案すべきとしています。妊娠したら、絨毛検査・羊水検査で赤ちゃんそのものを確かめることが望ましく、当院ではどちらも院内で行っています(その病気で出生前診断ができるかは、国内の指針を踏まえて個別に判断します。妊娠前からご相談ください)。

Q6. ミネルバクリニックでPGT-Mは受けられますか?

受けられません。当院は体外受精・PGT-Mを行っていません。当院でお手伝いできるのは、原因遺伝子を確かめる遺伝子検査、英語の検査結果のご用意、ご家族・パートナーの検査、遺伝カウンセリング、妊娠後の確定検査(絨毛検査・羊水検査)です。

🧬 PGT-Mの準備を、原因遺伝子の確定から

海外でPGT-Mを考えている方は、まず原因の遺伝子を確かめ、ご家族の検体を用意できるかを考えるところから始まります。当院では臨床遺伝専門医が常駐し、遺伝子検査と英語の検査結果のご用意、ご家族の検査、妊娠後の羊水検査・絨毛検査まで、院内で続けて受けていただけます。

お電話でのお問い合わせ:03-3478-3768

参考文献

  • [1] ESHRE PGT-M Working Group, Carvalho F, Moutou C, et al. ESHRE PGT Consortium good practice recommendations for the detection of monogenic disorders. Hum Reprod Open. 2020;2020(3):hoaa018. [DOI: 10.1093/hropen/hoaa018]
  • [2] ESHRE PGT Consortium Steering Committee, Carvalho F, Coonen E, et al. ESHRE PGT Consortium good practice recommendations for the organisation of PGT. Hum Reprod Open. 2020;2020(3):hoaa021. [DOI: 10.1093/hropen/hoaa021]
  • [3] Ginoza MEC, Isasi RM. Regulating preimplantation genetic testing across the world: a comparison of international policy and ethical perspectives. Cold Spring Harb Perspect Med. 2020;10(5):a036681. [DOI: 10.1101/cshperspect.a036681](PMID: 31506325)

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プロフィール
仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続け、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、検査結果の数値そのものだけでなく、「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、日本人として異文化の中で生活した経験があります。価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。この経験は現在の診療においても、「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、36週6日で一人を死産した経験があります。その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、家族の未来に関わる重要な意思決定です。年齢や統計だけで判断するのではなく、医学的根拠と心理的支援の両面から、ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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