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染色体微小欠失症候群(微細欠失症候群)|ゲノム障害

染色体微小欠失症候群(微細欠失症候群)|ゲノム障害

染色体構造異常微小欠失微小重複

微小欠失症候群(微細欠失症候群)とは?

微小欠失症候群は、いくつかの遺伝子を含む染色体領域の欠失を伴うが、通常の核型検査では検出できないほどの微小な欠失が原因である症候群を言います。これらは通常、de novo(新生突然変異)であり、隣接する低コピー繰り返し遺伝子群の相同組換えにより、同じ領域で再発する傾向があるため、隣接遺伝子症候群とも呼ばれます。

染色体微小欠失とは

少なくとも5メガバイト(Mb)以上の染色体欠失は、通常、染色体バンド型の核型上で顕微鏡で確認することができます。微小欠失、または亜微小欠失とは、従来の細胞遺伝学的手法を用いて光学顕微鏡で検出するには小さすぎる染色体欠失のことです。5Mbあれば光学顕微鏡で見えるわけですから、微小欠失とは5Mb未満の欠失を呼びます。これらの欠失を同定するためには、そのサイズに応じた専門的な検査が必要となります。微小欠失は通常1~3Mbの長さで、複数の連続した遺伝子が関与しています。症候群を引き起こす微小欠失の正確な大きさや位置は様々ですが、特定の「臨界領域」が一貫して関与しています。これらの微小欠失のほとんどの表現型への影響は、いくつかの重要な遺伝子のハプロ不全(2対ある遺伝子の片方が機能不全となること)、または場合によってはその病原性は単一の遺伝子のハプロ不全により惹起されます。
これらは通常、de novo(新生突然変異)であり、低コピー繰り返し配列(LCR)の隣接する相同組換えにより、同じ領域で再発する傾向があります。

欠失とは何ですか?何がなくなるのですか?

遺伝医学では欠失とは、DNAの複製中に染色体の一部またはDNAの配列がコピーされずになくなってしまう突然変異をいいます。欠失するサイズは1塩基から染色体全体に至るまでとさまざまです。微細欠失はこのうち5Mb 未満の欠失と定義されています。

微細欠失はどのくらいの頻度で起こるのでしょうか?

トリソミー、モノソミーといった染色体異数性(染色体の数が染色体単位で増える減る)とは異なり、最も一般的な微細欠失症候群や微細重複症候群は母体の年齢とは関係がありません。臨床的に関連のある微小欠失と重複は構造的に正常な妊娠の1.7%に発生します。

微細欠失と染色体異数性(トリソミー)の一番の違いは何でしょうか?

微小欠失は、染色体の一部が欠損してしまうだけなので、トリソミーでは大部分が流産死産になるのですが、微小欠失ではこれがあることだけによる流産死産はないと考えられることが一番大きな違いです。また、トリソミーに代表される染色体異数性は女性の高齢が危険因子(なりやすい)ことがわかっていますが、微小欠失症候群(微細欠失症候群)は男性女性どちらからもおこりますし、年齢も人種や民族性も全く関係ありません。つまり、微小欠失症候群には危険因子がありません。
微小欠失症候群と染色体異数性の違い

微小欠失症候群のお子さんを妊娠しやすい条件(危険因子)はあるのでしょうか?

たとえばダウン症候群のようなトリソミーでは女性が35歳以上であることが危険因子となることは有名です。
しかし、微小欠失症候群や微小重複症候群では危険因子は全くありません。ランダムに発生するのが特徴です。人種、性別、年齢全く関係ない積算リスクが1.7%というのは意外と高く感じませんか?

微小欠失症候群は遺伝するのでしょうか?

微小欠失症候群のお子さんが親御さんになると常染色体優性遺伝形式で遺伝します。

現在までに報告されている微小欠失症候群はいくつくらいあるのですか?

微小欠失症候群・微小重複症候群の報告数年次推移
昔は診断すること自体が難しかったのですが、マイクロアレイなどの検出方法が開発されて増えてきました。
300種弱の微細欠失症候群・微細重複症候群が現在までに報告されています。

ゲノム疾患の概要

ゲノム障害とは、染色体/DNA物質の喪失または獲得に起因する疾患である。最も一般的で、より明確に定義されているゲノム障害は、コピー数の喪失(欠失症候群)とコピー数の増加(重複症候群)に起因するものとの2つの主要なカテゴリーに分けられます。詳細はゲノム疾患のページをご覧ください。

コピー数変動(CNV)とは

コピー数変動(CNV)とは、DNAの1つ以上の部分のコピー数におけるゲノムの微視的な違いで、DNAの獲得または喪失をもたらすものです。
NAHRとNHEJ
いくつかのCNVは病原性があり、ここで議論されているように、一貫した表現型の特徴を持つ症候群性の障害を引き起こします。他のCNVは疾患感受性または抵抗性と関連しており、同じCNVはいくつかの多様な疾患と関連している可能性があります。また、CNVには正常な遺伝的変異の一部であり、疾患との関連性が認められていないものもあります。隣接遺伝子症候群は、CNVが複数の隣接遺伝子に影響を及ぼす場合に起こりうるものです。

ゲノム障害における疾患を引き起こす主なメカニズムは、欠失または重複による線量感受性遺伝子または遺伝子のコピー数の変化です。このため、遺伝子が機能しなくなり、タンパクの産生量が減ります。他の疾患メカニズムとしては、良い方のアレルが不活化されることでたまたま対立遺伝菓子が劣性の病的変異だったため劣性疾患が発症してしまう、インプリンティング遺伝子では父母どちらかの遺伝子が組織特異的に発現するのですがそれが病的になり発症する、遺伝子ではない部分にある調節エレメントがおかしくなる、などがあります。

ゲノム障害の検出方法

ゲノム障害は通常、アレイ比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)によって検出されます。ほとんどの検査室では、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)、多重ライゲーション依存性プローブ増幅(MLPA)、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(Q-PCR)などの独立した方法で、アレイ上で検出されたゲインまたはロスを確認しています。

現在までに報告されている微小欠失症候群

詳細は各リンク先をご覧ください。ここでは欠失サイズの大きさのみ言及します。(疾患詳細は順番にページをおつくりいたします)
1p36欠失症候群:  2.2 ~ 10.2 Mb
1q21.1遠位微小欠失症候群: 1.35 Mb
1q21.1近位微小欠失症候群: 200kb (0.2Mb)
1q43-44微小欠失症候群 : ~3.5Mb
2p15-16.1微小欠失症候群: 4~6Mb
2q23.1微小欠失症候群 : 2.4~5.4 Mb
2q33.1微小欠失症候群(GLASS症候群) : 35 kb(0.035Mb)~10.4 Mb
2q37微小欠失症候群 : 3.5~8.8Mb
3pter-p25微小欠失症候群 : 10.2~11.0Mb
3q29微小欠失症候群 : 1.6Mb
4p微小欠失症候群 (WOLF-HIRSCHHORN症候群) : 200Kb(0.2Mb)~34.0Mb
5q35微小欠失症候群 (SOTOS症候群) : ~2.0 Mb
6p25微小欠失症候群 : 0.9~11.5Mb
7q11.23微小欠失症候群(WILLIAMS症候群) : 1.5-1.8Mb
8q22.1微小欠失症候群 (仮面様顔症候群) : 1.6~7.2Mb
8q24.11微小欠失症候群(LANGER-GIEDION症候群):95kb(0.09Mb)~9Mb
9p22微小欠失症候群 : 5~8Mb
9q34.3微小欠失症候群(9qサブテロメア欠失症候群): 700 kb(0.7Mb) ~ 2.3 Mb
10p14-p13微小欠失症候群(DiGEORGE症候群2型)2Mb
11p13微小欠失症候群(WAGR症候群): 0.6Mb
11p11.2微小欠失症候群(POTOCKI-SHAFFER症候群): ~1.0Mb
11q24.1微小欠失症候群(JACOBSEN症候群): 1.5~12.8Mb
13q14微小欠失症候群(網膜芽細胞腫症候群): 4~10Mb
15q11.2微小欠失症候群
15q11-13微小欠失症候群 母系:ANGELMAN症候群 父系:PRADER-WILLI症候群(PWS):5~7Mb
15q13.3微小欠失症候群:1.5Mb
15q15.3微小欠失症候群
15q24微小欠失症候群 : 1.7 ~ 3.9 Mb
16p13.3微小欠失症候群(RUBINSTEIN-TAYBI症候群)
16p13.11微小欠失症候群:1.65Mb
16p12.2微小欠失症候群
16p11.2微小欠失症候群 : 29.5~30.1Mb
17p13.3微小欠失症候群
17p11.2微小欠失症候群 (遺伝性圧脆弱性ニューロパチー)
17p11.2微小欠失症候群 (SMITH-MAGENIS症候群)
17q12微小欠失症候群 :1.5Mb
17q21.31微小欠失症候群 
18p微小欠失症候群
20p11微小欠失症候群 (ALAGILLE症候群)
22q11.2微小欠失症候群 :3Mb
遠位22q11.2微小欠失症候群 :1.4~2.1Mb
22q13.3微小欠失症候群(PHELAN-MCDERMID症候群)

この記事の著者:仲田洋美医師
医籍登録番号 第371210号
日本内科学会 総合内科専門医 第7900号
日本臨床腫瘍学会 がん薬物療法専門医 第1000001号
臨床遺伝専門医制度委員会認定 臨床遺伝専門医 第755号

 

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