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拡大版保因者検査(キャリアスクリーニング)男性版714遺伝子|男性も受ける理由・費用・カップルでの受け方

目次

仲田洋美 医師

この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

記事の作り方(編集方針)

男性版714遺伝子の保因者検査(キャリアスクリーニング)

男性版714遺伝子の保因者検査(キャリアスクリーニング)は、お子さんに受け継がれる常染色体潜性(劣性)遺伝の病気について、男性ご本人が「保因者」かどうかを調べる遺伝子検査です。潜性の病気は、ふたりとも同じ遺伝子の保因者のときにお子さんに出ます。そのため、女性だけが検査を受けても、カップルとしてのリスクはわかりません。男性版714遺伝子は、X連鎖の病気まで調べる女性版787遺伝子と組み合わせて受けるのが基本です。生まれ持った遺伝子は一生変わりません。一度の検査でわかったことは、これからの妊娠・出産の計画にずっと使える情報になります。このページでは、男性が受ける意味、調べる病気、料金、カップルでの受け方を、臨床遺伝専門医が解説します。

⏱️ 30秒でわかる要約

🧬 Q. 男性版714遺伝子の保因者検査で何がわかりますか?

常染色体潜性(劣性)遺伝の病気の原因になる714遺伝子について、あなたが病気の原因となる変化を1つ持つ「保因者」かどうかがわかります。男性版はX連鎖の病気(脆弱X症候群など)を調べないので、女性版787遺伝子とペアで受けるのが基本です。

🧬 Q. どんな男性が受けるとよいですか?

結婚・妊娠を考えているカップル、パートナーが保因者検査で保因者とわかった方、いとこ婚など血のつながりのあるカップル、ご家族に遺伝の病気がある方です。家族歴がなくても保因者であることは珍しくありません。

🧬 Q. 費用・結果までの日数・検体は?

検査はお一人税込253,000円です。結果が出るまで、おおむね1か月です(検査会社の目安は2〜3週間ですが、検体の輸送や解析の状況によって前後します)。検体は血液・唾液・頬の粘膜で、唾液・頬の粘膜ならオンライン診療のあと郵送で受けられます。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。

🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?

結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングでご説明してから、マイページにアップします。ふたりとも同じ病気の保因者だった場合、妊娠したときの絨毛検査・羊水検査まで院内で受けられます。

\ 人生に一度の遺伝子検査を、おふたりのこれからの計画に /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

検査の前に臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、結果も臨床遺伝専門医が直接ご説明します。

お問い合わせはこちら | パートナーの女性版787遺伝子

1. 男性版714遺伝子の保因者検査(キャリアスクリーニング)でわかること

この検査でわかるのは、常染色体潜性(劣性)遺伝の病気の原因となる714遺伝子について、あなたが病気の原因となる変化(病的バリアント)を1つ持つ「保因者」かどうかです。保因者ご本人は、ふつうその病気を発症しません。けれども、パートナーも同じ遺伝子の保因者だと、お子さんがその病気になることがあります。

米国医学遺伝学・ゲノム学会(ACMG)の2021年の指針は、妊娠中の方と妊娠を計画している方のすべてに、保因者頻度が200人に1人以上の常染色体潜性の病気などを含む「Tier 3」の保因者スクリーニングを提供すべきとしています[1]。米国産科婦人科学会(ACOG)も、妊娠を考えている方・妊娠中の方への保因者スクリーニングの情報提供と提供をすすめており、民族を問わない拡大版の保因者スクリーニングも認められた方法のひとつとしています(2023年に再確認)[2]。この男性版714遺伝子には、Tier 3に含まれる常染色体潜性の遺伝子がすべて入っています。

保因者とは・潜性(劣性)遺伝で子どもに伝わる確率(1/4)

ふたりとも同じ遺伝子の保因者のとき、お子さん1人ごとに、病気になる確率は4分の1、保因者になる確率は2分の1、どちらも受け継がない確率は4分の1です。この確率は、お子さん1人ごとに同じです。上のお子さんの結果で、次のお子さんの確率が変わることはありません。

人は同じ遺伝子を2本ずつ(父親から1本、母親から1本)持っています。保因者(キャリア)とは、そのうち1本にだけ病気の原因となる変化がある状態です。もう1本が正常に働くので、ふつうは症状が出ません。2本とも変化がそろったときに病気になるのが、潜性(劣性)遺伝です。保因者は自覚がないため、家族に患者さんがいないまま、初めてのお子さんの発症で保因者だとわかることもあります。

🧬 ふたりとも同じ遺伝子の保因者のとき(お子さん1人ごと)

お子さんが受け継ぐもの お子さんの状態 確率
2本とも変化を受け継ぐ 病気を発症する 4分の1(25%)
1本だけ変化を受け継ぐ 保因者(ふつうは発症しない) 2分の1(50%)
どちらも受け継がない 保因者でもない 4分の1(25%)

※片方だけが保因者のときは、常染色体潜性の病気をお子さんが発症することは、ふつうありません(お子さんが保因者になる確率は2分の1です)。

男性版がX連鎖の病気を調べない理由

男性版714遺伝子は、X染色体にある遺伝子の病気(X連鎖の病気)を調べません。この検査を行う検査会社も、男性ではX連鎖の病気(たとえば脆弱X症候群のFMR1遺伝子)を調べない、としています。X連鎖の病気は、お母さんが保因者のときに男の子に出ることが多いため、女性側で調べることが大切です。ACMGの指針も、X連鎖の遺伝子のスクリーニングは、X染色体を2本持つ方に提供するとしています[1]。

そのため、カップルで受けるときは、女性版787遺伝子(X連鎖の遺伝子を含む)と男性版714遺伝子を組み合わせるのが基本です。女性版787遺伝子から、X連鎖の遺伝子を除いたものが男性版714遺伝子です。脆弱X症候群や、X連鎖遺伝のしくみについては、X連鎖遺伝とはで解説しています。

保因者スクリーニングの全体像(歴史・米国の指針・日本の現状)は、保因者スクリーニング検査(キャリアスクリーニング)とはにまとめています。

2. なぜ男性も保因者検査を受けるのか

常染色体潜性の病気は、一般に、お父さんとお母さんの両方が同じ遺伝子の保因者で、それぞれから病的バリアントを受け継いだときにお子さんに出ます。だから、女性だけが検査を受けても、カップルとしてのリスクはわかりません。女性に保因者の変化が見つかったとき、男性も同じ遺伝子の保因者かどうかで、お子さんへの確率は大きく変わります。

ACOGは、女性が保因者とわかったら、正確な遺伝カウンセリングのためにパートナーにも検査を提供すべきとしています[2]。米国の学会の推奨はキャリア(保因者)スクリーニング検査|米国の学会の推奨内容で詳しく解説しています。結婚・カップルで受ける遺伝子検査の全体は遺伝子ブライダルチェックのページをご覧ください。

家族歴がなくても、保因者は珍しくない

米国で274遺伝子の保因者スクリーニングを受けた60,052人のうち、63.78%が少なくとも1つの病気の保因者でした[3]。この研究は米国の一般の受検者を対象にしたもので、調べる遺伝子の数や集団によって割合は変わります。それでも、多くの遺伝子を調べると、保因者であることはまったく珍しくないことがわかります。

保因者は症状がなく、ご家族に患者さんがいないことも多いので、「うちは大丈夫」と見た目や家族歴だけで判断することはできません。保因者であることは、誰にでもあるごく普通のことで、恥ずかしいことでも、誰かのせいでもありません。大切なのは、それを妊娠の前に知り、おふたりで選べることを増やしておくことです。

こんな男性・カップルに向いています

  • ●結婚・妊娠を考えているカップル・ご夫婦:妊娠の前におふたりで受けておくと、選べることがいちばん多くなります。
  • ●パートナーが保因者検査を受け、ある病気の保因者とわかった方:あなたが同じ遺伝子の保因者かどうかで、お子さんへの確率が変わります。
  • ●いとこ同士など、血のつながりのあるカップル:共通の祖先から同じ変化を受け継いでいる可能性があります。ACMGの指針は、はとこ(またはいとこ)以上に近い血縁のカップルでは、より広い範囲の検査(Tier 4)を考えてよいとしています[1]。
  • ●ご家族・ご親族に遺伝の病気の方がいる方
  • ●体外受精や着床前遺伝学的検査(PGT-M)を考えている方:どの遺伝子のどの変化を調べるかを、前もって決めておく必要があります。
  • ●すでに妊娠中の方:NIPTと同じ日に採血できるカップルの保因者検査ファミリーセーフティ プラス(女性787遺伝子・男性714遺伝子)もあります。NIPTと同時に行う検査で、単独では受けられません。当院のNIPTは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。

この検査より別の検査が向く場合

目的によっては、男性版714遺伝子より別の検査のほうが向いています。比べているのは検査の種類で、目的に合った検査を選ぶことが大切です。

🔍 目的に合わせた検査の選び方

こんなとき 向いている検査
カップルで、潜性の病気の保因者かを広く知りたい このページの男性版714遺伝子(女性版787遺伝子とペア)、またはより広い男性版911遺伝子(女性版1009遺伝子とペア)
ご家族で原因の遺伝子の変化がすでにわかっている 既知の変異検査(その変化だけをピンポイントで調べる)
妊娠中で、赤ちゃんの病気を調べたい 単一遺伝子疾患の出生前診断(ご家族の原因がわかっている場合)
男性不妊の原因を知りたい 男性不妊症遺伝子検査(NGSパネル)
ご本人に症状があり、原因を調べたい 症状に合った診断のための遺伝子検査(保因者検査は症状の原因を調べる検査ではありません)

\ 妊娠の前に知れば、選べることが増えます /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

ふたりとも同じ遺伝子の保因者だった場合、妊娠したときの出生前診断(羊水検査・絨毛検査)まで院内で受けられます。海外でPGT-Mを考えている方には、英語の検査結果をお渡しできます(検査の時にお申し出ください)。

遺伝子ブライダルチェックの全体を見る | どの検査がよいか迷う方へ

3. 男性版714遺伝子・911遺伝子と女性版787・1009遺伝子の違い

当院の拡大版保因者スクリーニングには、女性版787遺伝子・男性版714遺伝子の組み合わせと、より多くの遺伝子を調べる女性版1009遺伝子・男性版911遺伝子の組み合わせがあります。どちらも、男性版は女性版からX連鎖の遺伝子を除いたものです。

⚖️ 拡大版保因者スクリーニングの組み合わせ

組み合わせ 女性版 男性版
標準の組み合わせ 787遺伝子(X連鎖を含む)税込253,000円 714遺伝子(このページ)税込253,000円
より広い組み合わせ 1009遺伝子(X連鎖を含む)税込275,000円 911遺伝子 税込275,000円
結果までの日数 どちらも、結果が出るまで、おおむね1か月です(検査会社の目安は2〜3週間ですが、検体の輸送や解析の状況によって前後します)

※料金は検査費用(お一人)で、遺伝カウンセリング料などが別にかかります。料金は当院の妊娠前遺伝子検査のページ(2026年10月21日確認)による。遺伝子数と検査会社の目安の日数は、検査会社の検査内容で確かめています(2026年10月22日)。

714遺伝子と911遺伝子の検査費用の差は、お一人22,000円です。その差で、調べる遺伝子は男性版で197個(女性版では787遺伝子から1009遺伝子へ222個)増えます。そのため当院では、より広い女性版1009遺伝子・男性版911遺伝子の組み合わせを選ぶ方が多くなっています。どちらを選ぶかは、調べたい範囲と費用の考え方で決めていただけます。ACMGがすべての妊娠中・妊娠計画中の方に提供すべきとしたTier 3の常染色体潜性の遺伝子は、男性版714遺伝子にも911遺伝子にも入っています[1]。ペアの考え方は大切で、女性が787遺伝子を受けたなら男性は714遺伝子、女性が1009遺伝子を受けたなら男性は911遺伝子、とそろえるのが基本です。そろえないと、女性だけ・男性だけが調べた遺伝子が生まれ、その遺伝子についてはカップルのリスクがわかりません。保因者検査に不妊の遺伝子とアクショナブル遺伝子をまとめたセットとして、遺伝子ブライダルチェックパネルもあります(男性版714遺伝子を含みます)。

4. カップルの受け方:同時に受ける/順番に受ける

受け方は、おふたりで同時に受ける方法と、ひとりが先に受けて、見つかった病気をもうひとりが調べる方法の2つです。どちらにも良い点があり、どちらが正しいということはありません。妊娠までの時間や考え方に合わせて選びます。

👫 2つの受け方

受け方 良い点 気をつけたい点
同時に受ける 一度の結果で、すぐにカップルとしてのリスクがわかる。妊娠を急ぐ方に向く。同じ診療枠で同時に検査を受ければ、遺伝カウンセリング料が一人分になる 検査費用はおふたり分かかる
順番に受ける 先に受けた方が保因者でなければ、その病気についてもうひとりが調べる必要は小さくなる 結果がそろうまで時間がかかる。陰性でもリスクはゼロにならない(第6章)

※ACMGの指針は、パートナーの検査を、パートナーと同時に行うTier 3の常染色体潜性のスクリーニングとして提供してよいとしています[1]。

順番に受ける場合、女性が787遺伝子を受けて保因者の変化が見つかったら、男性は同じ遺伝子を調べることになります。その場合も、男性版714遺伝子で広く調べるのか、見つかった遺伝子だけを調べるのかは、遺伝カウンセリングでご相談ください。おふたりで受ける理由については、結婚相手と受けたい保因者検査|なぜ二人一緒に受けるのかでも解説しています。

5. 調べる714遺伝子と代表的な病気

男性版714遺伝子では、神経・筋肉の病気、代謝の病気、血液の病気、難聴、目の病気、免疫の病気など、700を超える常染色体潜性の病気の原因遺伝子を調べます。代表的なものを下の表にまとめました。

代表的な病気

🧬 男性版714遺伝子で調べる代表的な病気(すべて常染色体潜性遺伝)

病気 主な原因遺伝子 どんな病気か
脊髄性筋萎縮症(SMA) SMN1 運動神経の病気で、筋力が弱くなる(SMAの遺伝子パネル検査)
嚢胞性線維症 CFTR 肺や消化管に粘り気の強い分泌物がたまる病気
ゴーシェ病 GBA ライソゾーム病(細胞の中に脂質がたまる代謝の病気)
先天性副腎過形成 CYP21A2 副腎のホルモンをつくる酵素の病気
αサラセミア HBA1・HBA2 ヘモグロビンの病気(貧血)
βサラセミア HBB ヘモグロビンの病気(貧血)
フェニルケトン尿症 PAH アミノ酸の代謝の病気
ウィルソン病 ATP7B 銅が体にたまる病気
シトリン欠損症 SLC25A13 肝臓の代謝(尿素サイクル)に関わる病気
ポンペ病(糖原病II型) GAA 筋肉などにグリコーゲンがたまる病気
福山型先天性筋ジストロフィー FKTN 日本で比較的多い先天性の筋ジストロフィー[5]。日本人に多い長い挿入変異も報告の対象です
GJB2遺伝子による難聴 GJB2 生まれつきの難聴
メープルシロップ尿症 BCKDHA・BCKDHB アミノ酸の代謝の病気
ムコ多糖症 IDUAなど ライソゾーム病
ファンコニ貧血 FANCAなど 骨髄の働きが弱くなる病気
色素性乾皮症 XPAなど 日光に過敏で、皮膚の病変が起こりやすい病気
MCAD欠損症 ACADM 脂肪酸の代謝の病気
アッシャー症候群 USH2Aなど 難聴と網膜色素変性
異染性白質ジストロフィー ARSA 神経の白質の病気
ペルオキシソーム形成異常症 PEX1など ペルオキシソームという細胞内の器官の病気
毛細血管拡張性運動失調症 ATM 運動失調と免疫の低下などがみられる病気

※福山型先天性筋ジストロフィーの頻度は文献[5]による。各病気の詳しい説明は、リンク先の疾患ページ・遺伝子ページをご覧ください。

福山型先天性筋ジストロフィーは、日本で比較的多い病気で、出生1万人あたり0.7〜1.2人と報告されています。患者さんの染色体の80%以上が共通の祖先から受け継いだ型をもっており、日本に多い理由と考えられています[5]。このように、ある集団に多い病気も、民族を問わない拡大版のパネルなら一緒に調べられます。

日本人の福山型の多くは、FKTN遺伝子の3’非翻訳領域(たんぱく質をつくる情報のすぐ後ろの部分)に、約3kbのレトロトランスポゾン(SVA)という長い配列が入り込んだ変化が原因です[5]。共通の祖先から受け継がれてきた「創始者変異」で、日本全国の調査では、この挿入の保因者は約188人に1人と報告されています[10]。このような長い挿入は、一般的な遺伝子検査(NGS)では見つけにくい種類の変化です。当院の男性版714遺伝子では、この日本人に多い挿入も報告の対象になっていることを、検査会社に確認しています。女性版787遺伝子にもFKTNが入っているので、ご夫婦で受ければ、おふたりがこの挿入の保因者かどうかを確かめられます。福山型は常染色体潜性の病気で、ふたりとも保因者のとき、お子さん1人ごとに4分の1の確率で起こります。

FKTN遺伝子がつくるたんぱく質はフクチン(fukutin)です。福山型は、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD遺伝子・ジストロフィン、X連鎖)とは別の遺伝子・別の遺伝形式の病気です。お子さんにすでに症状があり、福山型かどうかを診断したい場合は、保因者検査ではなく、福山型筋ジストロフィーの遺伝子検査(症候性先天性筋ジストロフィー5遺伝子パネル)やジストログリカン関連13遺伝子パネルで調べます。病気そのものの説明は、福山型先天性筋ジストロフィーのページをご覧ください。

714遺伝子の全一覧

男性版714遺伝子の全遺伝子です。青字の遺伝子名は、当院の遺伝子解説ページにリンクしています。遺伝子ごとの病名は、同じ遺伝子を含む女性版787遺伝子のページでもご確認いただけます。

📋 714遺伝子の一覧を開く
AAAS, ABCA12, ABCA3, ABCA4, ABCB11, ABCB4, ABCC8, ABCD4, ACAD9, ACADM, ACADS, ACADSB, ACADVL, ACAT1, ACOX1, ACSF3, ADA, ADAMTS2, ADGRG1, ADGRV1, ADK, AGA, AGL, AGPAT2, AGPS, AGXT, AHCY, AHI1, AIMP1, AIPL1, AIRE, AK2, AKR1D1, ALDH3A2, ALDH4A1, ALDH7A1, ALDOB, ALG1, ALG12, ALG3, ALG6, ALMS1, ALOX12B, ALOXE3, ALPL, AMH, AMHR2, AMN, AMPD2, AMT, ANO10, ANO5, ANTXR2, AP1S1, AP3B1, AP3D1, APOPT1, AQP2, ARG1, ARL13B, ARL6, ARSA, ARSB, ASL, ASNS, ASPA, ASS1, ATM, ATP13A2, ATP6V0A2, ATP6V0A4, ATP6V1B1, ATP6V1E1, ATP7B, ATP8B1, B9D1, B9D2, BBS1, BBS10, BBS12, BBS2, BBS4, BBS5, BBS7, BBS9, BCHE, BCKDHA, BCKDHB, BCS1L, BLM, BLOC1S3, BLOC1S6, BMP1, BMPER, BRIP1, BSND, BTD, C19orf12, C8orf37, CAD, CANT1, CAPN3, CASP14, CASQ2, CASR, CAVIN1, CBS, CC2D1A, CC2D2A, CCDC103, CCDC151, CCDC39, CCDC8, CCDC88C, CD247, CD3D, CD3E, CD3G, CD59, CD8A, CDAN1, CDCA7, CDH23, CEP104, CEP152, CEP290, CERKL, CERS3, CFTR, CHAT, CHMP1A, CHRNE, CHRNG, CHST6, CIB2, CIITA, CLCF1, CLCN1, CLCNKB, CLN3, CLN5, CLN6, CLN8, CLP1, CLRN1, CNGA1, CNGA3, CNGB1, CNGB3, CNTNAP2, COASY, COL11A2, COL17A1, COL27A1, COL4A3, COL4A4, COL7A1, COLQ, COQ4, CORO1A, COX10, COX15, COX20, COX6B1, CP, CPLANE1, CPS1, CPT1A, CPT2, CRADD, CRB1, CRLF1, CRTAP, CRYL1, CTC1, CTNS, CTSA, CTSC, CTSD, CTSF, CTSK, CUL7, CWC27, CYBA, CYP11A1, CYP11B1, CYP11B2, CYP17A1, CYP19A1, CYP1B1, CYP21A2, CYP27A1, CYP27B1, CYP4F22, CYP7B1, DBT, DCAF17, DCLRE1C, DDB2, DDC, DDR2, DDX11, DGUOK, DHCR24, DHCR7, DHDDS, DLAT, DLD, DLL3, DNAH5, DNAI1, DNAI2, DNAL1, DNMT3B, DOCK8, DOK7, DOLK, DPYD, DTNBP1, DUOX2, DUOXA2, DYNC2H1, DYSF, EFEMP2, EIF2AK3, EIF2B1, EIF2B2, EIF2B3, EIF2B4, EIF2B5, ELP1, EPB42, ERBB3, ERCC2, ERCC3, ERCC4, ERCC5, ERCC6, ERCC8, ESCO2, ETFA, ETFB, ETFDH, ETHE1, EVC, EVC2, EXOSC3, EYS, F11, F2, F5, F7, FA2H, FAH, FAM126A, FAM161A, FANCA, FANCC, FANCD2, FANCE, FANCF, FANCG, FANCI, FANCL, FBP1, FBXL4, FH, FKBP10, FKRP, FKTN, FMO3, FOLR1, FOXN1, FOXRED1, FRAS1, FREM2, FTCD, FUCA1, FXN, G6PC, G6PC3, GAA, GALC, GALE, GALK1, GALNS, GALNT3, GALT, GAMT, GATM, GBA, GBE1, GCDH, GDAP1, GDF5, GFM1, GFPT1, GHR, GHRHR, GJB2, GJB6, GLB1, GLDC, GLE1, GNE, GNPAT, GNPTAB, GNPTG, GNRHR, GNS, GORAB, GP1BA, GP9, GRHPR, GRIP1, GSS, GUCY2D, GUSB, GYS2, HADH, HADHA, HADHB, HAMP, HAX1, HBA1, HBA2, HBB, HELLS, HEXA, HEXB, HFE, HGD, HGSNAT, HINT1, HJV, HLCS, HMGCL, HMGCS2, HOGA1, HPD, HPS1, HPS3, HPS4, HPS5, HPS6, HSD17B3, HSD17B4, HSD3B2, HSD3B7, HYAL1, HYLS1, IDH3B, IDUA, IFT140, IGHMBP2, IKBKB, IL2RA, IL7R, INPP5E, INVS, ITGA2B, ITGA6, ITGB3, ITGB4, ITPA, IVD, IYD, JAK3, KCNJ1, KCNJ11, KCTD7, KIF14, LAMA2, LAMA3, LAMB3, LAMC2, LARS, LCA5, LCK, LDLR, LDLRAP1, LHCGR, LHX3, LIFR, LIG4, LIPA, LIPN, LMAN1, LMBRD1, LOXHD1, LPAR6, LPL, LRAT, LRP2, LRPPRC, LTBP4, LYST, MAK, MALT1, MAN2B1, MANBA, MAT1A, MCCC1, MCCC2, MCEE, MCOLN1, MCPH1, MED17, MEFV, MEGF8, MESP2, MFSD8, MKKS, MKS1, MLC1, MLYCD, MMAA, MMAB, MMACHC, MMADHC, MPI, MPL, MPV17, MRE11, MTHFD1, MTHFR, MTMR2, MTR, MTRR, MTTP, MUT, MVK, MYO15A, MYO7A, NAGA, NAGLU, NAGS, NBAS, NBEAL2, NBN, NCF2, NCF4, NDRG1, NDUFA11, NDUFAF2, NDUFAF5, NDUFS4, NDUFS6, NDUFS7, NDUFV1, NEB, NEU1, NGLY1, NHEJ1, NIPAL4, NPC1, NPC2, NPHP1, NPHP3, NPHS1, NPHS2, NR2E3, NTRK1, OAT, OBSL1, OCA2, OPA3, OSTM1, OTOF, P3H1, PAH, PANK2, PC, PCBD1, PCCA, PCCB, PCDH15, PCNT, PDE6A, PDHB, PDHX, PDP1, PEPD, PET100, PEX1, PEX10, PEX11B, PEX12, PEX13, PEX14, PEX16, PEX19, PEX2, PEX26, PEX3, PEX5, PEX6, PEX7, PFKM, PGM3, PHGDH, PHKB, PHKG2, PHYH, PIGN, PIP5K1C, PJVK, PKHD1, PLA2G6, PLEKHG5, PLOD1, PLOD2, PMM2, PNP, PNPLA1, PNPO, POC1A, POLG, POLH, POLR1C, POMGNT1, POMT1, POMT2, POR, POU1F1, PPIB, PPT1, PRCD, PRDM5, PRF1, PRICKLE1, PRKDC, PROP1, PSAP, PTPRC, PTS, PUS1, PYCR1, PYGL, PYGM, QDPR, RAB23, RAG1, RAG2, RAPSN, RARS2, RAX, RD3, RDH12, RDH5, RFX5, RFXANK, RFXAP, RHAG, RLBP1, RMRP, RNASEH2A, RNASEH2B, RNASEH2C, ROGDI, RPE65, RPGRIP1, RPGRIP1L, RSPH9, RTEL1, SACS, SAG, SAMD9, SAMHD1, SARS2, SBDS, SCO1, SCO2, SDCCAG8, SDR9C7, SEC23B, SELENON, SEPSECS, SERPINA1, SERPINF1, SGCA, SGCB, SGCD, SGCG, SGSH, SH3TC2, SKIV2L, SLC12A1, SLC12A3, SLC12A6, SLC17A5, SLC19A2, SLC19A3, SLC1A4, SLC22A5, SLC25A13, SLC25A15, SLC25A20, SLC26A2, SLC26A3, SLC26A4, SLC27A4, SLC2A10, SLC2A2, SLC34A3, SLC35A3, SLC37A4, SLC39A4, SLC3A1, SLC45A2, SLC46A1, SLC4A1, SLC4A11, SLC5A5, SLC6A19, SLC7A7, SLC7A9, SMARCAL1, SMN1, SMPD1, SNAP29, SNX10, SP110, SPATA7, SPG11, SPG21, SPG7, SPINK5, SPR, SRD5A2, ST3GAL5, STAR, STK4, STX11, STXBP2, SUCLA2, SUMF1, SUOX, SURF1, SYNE4, TAT, TBCE, TBX19, TCIRG1, TCTN1, TCTN2, TCTN3, TECPR2, TERT, TF, TFR2, TG, TGM1, TH, TK2, TMC1, TMEM138, TMEM216, TMEM231, TMEM237, TMEM38B, TMEM67, TMEM70, TMPRSS3, TNFSF11, TNXB, TPO, TPP1, TRAPPC11, TRDN, TREX1, TRHR, TRIM32, TRIM37, TRMU, TRPM6, TSEN2, TSEN34, TSEN54, TSFM, TSHB, TSHR, TTC37, TTC7A, TTC8, TTPA, TULP1, TYMP, TYR, TYRP1, UGT1A1, UNC13D, USH1C, USH1G, USH2A, VDR, VLDLR, VPS13A, VPS13B, VPS45, VPS53, VRK1, VSX2, WHRN, WISP3, WNT1, WNT10A, WRN, XPA, XPC, ZAP70, ZBTB24, ZFYVE26, ZNF469(714遺伝子)

このパネルにない遺伝子も、追加して調べられます

ご家族の病気の原因遺伝子が714遺伝子に入っていない場合も、その遺伝子を追加して調べることができます。遺伝カウンセリングのときにご相談ください。詳しくはカスタマイズ遺伝子パネル検査のページをご覧ください。より広い男性版911遺伝子に入っている遺伝子なら、911遺伝子を選ぶ方法もあります。

6. 検査でわかること・わからないこと

この検査でわかるのは、714遺伝子の配列の小さな変化(1文字の変化・小さな挿入や欠失)と、一部の欠失・重複です。すべての遺伝子検査には限界があり、陰性でも保因者である可能性はゼロにはなりません。

🔬 調べ方

項目 内容
配列の解析 遺伝子のたんぱく質をつくる部分と、その境目の部分を、次世代シーケンサー(NGS)で読みます。解析対象の塩基の99%以上を、20回以上の読み取り深度で調べます
欠失・重複の解析 遺伝子の一部がなくなったり増えたりする変化を調べます。見つかった変化は、別の原理の方法(MLPA法やqPCR法など)でもう一度確かめてから報告します
よく似た配列がある遺伝子 ゴーシェ病のGBA、先天性副腎過形成のCYP21A2、αサラセミアのHBA1/HBA2など、よく似た働かない配列(偽遺伝子)がある遺伝子も、専用の解析で調べます
報告する変化 「病的」「病的の可能性が高い」と判定された変化だけを報告します
検出率 検査会社が示す分析上の検出率(調べる範囲の中で、この検査が検出できる種類の変化を見つける割合)は、全遺伝子で98%を超えます。リピートの伸長など、調べられない種類の変化はこの値に含まれません(下の「男性が知っておきたい検査の限界」)

※検査会社の検査内容による(2026年10月22日確認)。

男性が知っておきたい検査の限界

  • ●男性不妊の検査にはなりません:CFTR遺伝子の変化のうち、先天性両側精管欠損症だけに関係する変化は、報告の対象外です。男性不妊の原因を調べたい方は、男性不妊症遺伝子検査をご検討ください。
  • ●脊髄性筋萎縮症(SMA)の一部の保因者は見つけられません:SMN1遺伝子が片方の染色体に2つ並び、もう片方にない型(いわゆる「2+0型」)の保因者は、直接は見つけられません。陰性なら保因者である可能性は大きく下がりますが、ゼロにはなりません。
  • ●調べられない種類の変化:染色体の転座・逆位、リピート(くり返し配列)の伸長、多くのプロモーター領域や、エクソンから20塩基以上離れたイントロンの変化は調べられません。たとえばFXN遺伝子の病気でいちばん多いリピートの伸長は、この検査では調べません。
  • ●欠失・重複の検出:2つ以上つながったエクソンの大きさの変化を見つける設計で、1つのエクソンだけの変化は、いつも見つかるわけではありません。唾液の検体では、欠失・重複を見つける感度が下がることがあります。
  • ●X連鎖の病気:男性版では調べません(第1章)。
  • ●モザイク:体の一部の細胞にだけある変化を見つけるための検査ではありません。

陰性でもリスクはゼロにならない(残余リスク)

陰性は「調べた714遺伝子について、検出できる変化が見つからなかった」という意味で、「どの病気の保因者でもない」という意味ではありません。ACOGも、保因者スクリーニングでは、調べた病気のリスクがある人を全員見つけられるわけではないとしています[2]。検出できない変化や、パネルに入っていない遺伝子の病気のリスクは残ります。これを「残余リスク」といいます。陰性の結果の意味は、遺伝カウンセリングでご説明します。

意義がまだわからない変化(VUS)は報告されません

この検査では、病気の原因かどうかまだ判断できない変化(VUS)は報告されません。保因者スクリーニングの目的は、おふたりのお子さんへのリスクを知って選択につなげることで、意味がまだわからない情報は、その判断に使えないためです。調べた目的と別の病気についての情報の扱いは、当院の二次的所見の開示方針をご覧ください。

7. 保因者とわかったら、次にできること

保因者とわかっても、それだけでお子さんが病気になるわけではありません。次にすることは、パートナーが同じ遺伝子の保因者かどうかを確かめることです。ふたりとも同じ遺伝子の保因者だった場合も、知ってから選べることがあります。

① パートナーの検査

あなたが保因者で、パートナーがまだ検査を受けていない場合は、パートナーが同じ遺伝子の保因者かどうかを調べます。パートナーが同じ遺伝子の保因者でなければ、その病気がお子さんに出る確率はとても小さくなります(ゼロではありません)。

② ふたりとも同じ遺伝子の保因者だったとき

お子さん1人ごとに4分の1の確率でその病気になります。そのうえで、次のような道があります。どれかをすすめるものではなく、おふたりの考え方で選んでいただくものです。

  • ●自然に妊娠して、出生前診断を受ける:妊娠中に赤ちゃんの細胞を調べ、ご両親それぞれの病的バリアントを受け継いでいるかを確かめます。絨毛・羊水からの胎児の出生前診断は当院で承っております。詳しくは単一遺伝子疾患の出生前診断と羊水検査・絨毛検査のページをご覧ください。出生前診断ができるかは、病気の重さや国内の指針を踏まえて個別に判断しますので、妊娠を考えている段階からご相談ください。
  • ●体外受精で着床前遺伝学的検査(PGT-M)を受ける:体外受精でできた受精卵を調べる方法です(PGT-Mとは)。当院は体外受精・PGT-Mを行っていません。日本では日本産科婦人科学会の審査を経て行われ、海外で受ける方もいます(下の「海外でPGT-M(着床前遺伝学的検査)を考えている方へ」をご覧ください)。
  • ●何もせずに妊娠・出産する:知ったうえで、生まれてからの治療や支援の準備をしておく、という選択もあります。

PGT-Mだけが選択肢ではない、という考え方は、遺伝性疾患があっても、子供を諦めないでほしいで詳しく書いています。

③ ご家族(きょうだい)にとっての意味

あなたが保因者とわかった場合、その変化をご両親のどちらかから受け継いでいれば、あなたのきょうだいも同じ変化をもっている可能性があります。きょうだいが結婚・妊娠を考えるとき、あなたの結果は、同じ変化をピンポイントで調べる手がかりになります(既知の変異検査)。検査を受けるかどうかは、ご本人が決めることです。

④ 当院でのその後

結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングでご説明し、次に何ができるかを一緒に考えます。パートナーの検査、出生前診断の計画、海外でのPGT-Mのための英語の報告書まで、当院で続けてご相談いただけます。

海外でPGT-M(着床前遺伝学的検査)を考えている方へ:英語の検査結果をお渡しできます

当院では、海外でPGT-Mを受けるときに使える英語の検査結果をお渡しできます。ご希望の方は、検査の時にお申し出ください。当院は体外受精・PGT-Mを行っていません。当院でできるのは、原因遺伝子の確定、英語の検査結果の用意、遺伝カウンセリング、ご家族の遺伝子検査、妊娠後の絨毛検査・羊水検査(院内)です。

PGT-Mは、体外受精でできた受精卵(胚)の一部の細胞を調べ、ご家族でわかっている遺伝子の変化を受け継いでいない胚を選んで子宮に戻す検査です。欧州ヒト生殖医学会(ESHRE)の指針では、準備として、病気の原因と確かめられた遺伝子の変化があること、その変化が書かれた元の報告書があること、そしてご家族の検体が勧められています[6]。

受精卵から取れるDNAはごくわずかで、変化を直接読むだけでは、2本あるうちの片方が読み取れない「アレルドロップアウト」などで判定を誤るおそれがあります。そのため、変化のある場所の両側にある目印(多型マーカー)で、変化をもつ染色体を家系の中でたどる方法(ハプロタイプ解析)を組み合わせます。潜性遺伝の病気では、ご夫婦に加えて、患者さん(2つの変化をもつ方)・保因者・保因者でない方の検体が目安とされています[6]。ご本人の検査結果だけでは、PGT-Mの準備はふつう整いません。血縁者がいない場合に別の方法を挙げている指針もありますが、施設や家系の状況によっては受けられないこともあります[6]。

臨床遺伝専門医としての判断では、潜性遺伝の病気でPGT-Mを考えるなら、ご夫婦それぞれがどの変化をもっているかを確かめておく必要があります。意義がまだわからない変化(VUS)は、病気の原因と確かめられていないため、そのままPGT-Mの対象にするのは難しいと考えます。海外の施設によって求められる書類や検体は違うので、受ける予定の施設にも前もって確認してください。当院では、ご家族の遺伝子検査も、遺伝カウンセリングのうえでお受けしています。

⚠️ PGT-Mは診断ではなく、スクリーニング検査です

PGT-Mは受精卵のごく一部の細胞を調べる検査で、結果が赤ちゃんの状態と食い違うことがあります。ESHREの指針は、多くの施設で誤った結果になる割合は全体で1〜3%まで下げられているとしたうえで、PGTのあとに妊娠したすべての方に出生前診断を提案すべきとしています[7]。当院では、PGT-Mで選んだ胚で妊娠した場合も、妊娠中に赤ちゃんそのものを調べる確定検査(絨毛検査・羊水検査)で確かめることが望ましいと考えています。絨毛検査・羊水検査は院内で行っており、海外でPGT-Mを受けたあとの妊娠でもご相談いただけます。

日本では、日本産科婦人科学会の「重篤な遺伝性疾患を対象とした着床前遺伝学的検査(PGT-M)に関する指針」(2026年9月改定)にもとづき、PGT-Mは症例ごとに学会の審査を受け、そのうえで実施施設の倫理委員会が承認して行われます(2026年10月時点で確認)。この指針の「重篤」の考え方は、原則として、成人に達する前に日常生活が著しく損なわれる、または生存が危ぶまれる状態になる病気で、申請の時点で有効な治療法がないか、治療法があっても高度かつ侵襲度の高いもの、とされています。どの病気が対象になるかは、審査で個別に決まります。

どの病気がPGT-Mの対象になるかは、国や制度、施設によって違います[8]。日本産科婦人科学会の発表では、2025年7月〜2026年6月の1年間に審査した73件のうち、37件が審査継続中でした(2026年9月発表)。英国では、公的機関(HFEA)がPGT-Mを使える病気の一覧を公表しており、2,000を超える病気が載っています(2026年9月17日更新の一覧で2,067)。米国生殖医学会(ASRM)の倫理委員会は2024年、大人になってから発症する病気に対するPGT-Mも倫理的に許容されうるとする意見を出しています[9]。受ける国の制度と、施設の条件を前もって確かめてください。準備に必要なことは、海外でPGT-M(着床前診断)を考えている方へで詳しく解説しています。

8. 費用・結果までの日数・検体・受診の流れ

検査はお一人税込253,000円です。結果が出るまで、おおむね1か月です(検査会社の目安は2〜3週間ですが、検体の輸送や解析の状況によって前後します)。検体は血液・唾液・頬の粘膜で、唾液・頬の粘膜ならご来院なしで受けられます。この検査は、遺伝診療先進国・米国の3大遺伝子検査会社の一角で行います。※

※「3大遺伝子検査会社」は、遺伝性がんや周産期(出生前検査・保因者検査)を含む遺伝子検査全般を手がける米国の検査専業会社のうち、2025年通期の売上高が上位の3社を指します(各社の決算発表にもとづく当院調べ)。がん検診やリキッドバイオプシーに特化した会社は含みません。

ご予約
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遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医
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検体の採取採血・唾液・頬の粘膜
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結果のご説明おおむね1か月後・マイページへ

💴 費用・日数・検体

項目 内容(税込)
検査費用(お一人) 253,000円
遺伝カウンセリング料 30分22,000円(検査費用とは別)。基本はおひとりずつかかります。おふたり(ご家族)が同じ診療枠で、かつ同時に検査を受ける場合だけ、一人分をサービスし、おふたりで22,000円です。検査を受けない場合(ご相談だけの場合)は、人数分かかります
マイページ使用料 550円
検査結果作成手数料(暗号化を含む) 3,300円
英語版と日本語版の両方 追加料金5,500円
結果までの期間 結果が出るまで、おおむね1か月です(検査会社の目安は2〜3週間ですが、検体の輸送や解析の状況によって前後します)
検体 血液・唾液・頬の粘膜
オンライン診療 唾液・頬の粘膜の場合は、オンライン診療で遺伝カウンセリングを行ったあと、検体を郵送していただけます。検体採取キットは検査費用のお支払いのあとにお送りします

※当院の検査・遺伝カウンセリングはすべて自費診療です。オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。検体採取キットが届く前に、ご自身で検体を採らないでください(検体の取り違えや品質の低下を防ぐためです)。

結果の受け取り方と報告書の言語

結果は、必ず一度、遺伝カウンセリングで臨床遺伝専門医がお伝えしてから、マイページにアップします。検査の進み具合の確認やご質問も、マイページを通じて行っていただきます。結果は、基本的に日本語版でお渡ししています。海外でPGT-Mを受けるなど、英語の原本が必要な方には英語版をお渡ししますので、検査の時にお申し出ください。英語版と日本語版の双方を希望される方は、追加料金5,500円で承ります。報告書の読み方は遺伝子検査結果の見かたをご覧ください。

ご来院の場合

院内は全室個室です。受診枠は90分で、ほかの患者さんと時間が重ならないように予約をお取りしているため、院内でほかの患者さんと顔を合わせることはありません。キッズスペースはありませんが、お子さま連れでご来院いただけます(診察室は広さに余裕があります)。遺伝カウンセリングは遺伝カウンセリング・遺伝診療のページもご覧ください。

検査を受けるかどうかは、遺伝カウンセリングで説明を聞いて、納得してから決めていただきます。検査を受けなかった場合(ご相談だけの場合)も、遺伝カウンセリング料は人数分かかります。なお、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。

\ 唾液・頬の粘膜なら、ご来院なしで受けられます /

📅この検査を予約する(遺伝カウンセリングの予約)

おふたりが同じ診療枠で同時に検査を受ける場合は、遺伝カウンセリング料が一人分になります。院内は全室個室で、ほかの患者さんと顔を合わせません。

お問い合わせはこちら | より広い男性版911遺伝子

9. 院長コラム

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【知ってから選ぶために、男性にも受けてほしい】

私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。また、お子さんが重い症状で発症したのをきっかけに、ご自身も同じ遺伝子の変化を持っていたとわかり、自分のせいだと責めてしまう親御さんを、何度も見てきました。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。

潜性の病気は、おふたりのどちらかのせいで起こるものではありません。ふたりとも保因者だったときに初めて起こるものです。それなのに、検査や相談の場に来るのは女性だけ、ということが少なくありません。結婚するか、子どもを持つかは、その人の生き方そのものに関わる大きな選択です。おふたりで同じ情報を持ち、おふたりで選んでほしい、と考えています。

遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。家族歴が濃いものの、ご本人は大学を卒業して会社に勤めていた方が、念のため検査を受けたところ、染色体の微小欠失が見つかったこともあります。見た目や家族歴だけでは判断できません。

わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、と考えています。遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。当院は、結婚前・妊娠前・妊娠中と、ライフステージごとのおふたりを遺伝の専門医として支え、出生前診断まで続けてご相談いただける体制を整えています。どの選択をされても、その選択を尊重します。

10. よくある質問(FAQ)

Q1. 健康なのに、なぜ男性も保因者検査を受けるのですか?

常染色体潜性(劣性)遺伝の病気では、お父さんとお母さんの両方が同じ遺伝子の保因者の場合、お子さん1人ごとに4分の1の確率で病気の原因となる変化を両方から受け継ぎます。保因者はふつう症状がなく、ご家族に患者さんがいないことも多いので、健康でも保因者であることは珍しくありません。女性だけが検査を受けても、カップルとしてのリスクはわかりません。

Q2. 妻(パートナー)の結果が陰性なら、私は受けなくてよいですか?

女性が受けた検査で保因者の変化が見つからなければ、その病気についてカップルのリスクは大きく下がります。ただし、陰性でも検出できない変化やパネルにない遺伝子の病気のリスクは残るため、ゼロにはなりません。同時に受ければ一度でカップルとしての結果がわかります。どちらの受け方にも良い点があるので、遺伝カウンセリングでご相談ください。

Q3. 男性版714遺伝子と911遺伝子は、どちらを選べばよいですか?

パートナーの女性が受ける検査にそろえるのが基本です。女性版787遺伝子なら男性版714遺伝子、女性版1009遺伝子なら男性版911遺伝子です。どちらにも、米国医学遺伝学・ゲノム学会がすべての妊娠中・妊娠計画中の方に提供すべきとしたTier 3の常染色体潜性の遺伝子が入っています。料金は714遺伝子が税込253,000円、911遺伝子が税込275,000円で、差の22,000円で調べる遺伝子が197個増えるため、当院では911遺伝子(女性は1009遺伝子)を選ぶ方が多くなっています。

Q4. 家族に遺伝の病気があると、結婚に差し支えますか?

遺伝の病気がお子さんに伝わるかどうかは、病気の遺伝のしかたとご家族ごとの状況で大きく違います。潜性の病気では、一般に、ふたりとも同じ遺伝子の保因者で、それぞれから病的バリアントを受け継いだときにお子さんに出ます。保因者検査で、ご自身とパートナーが保因者かどうかを調べれば、お子さんへの確率を具体的に考えられます。知ったうえで、出生前診断などの選択肢も含めて計画できます。

Q5. いとこ同士の結婚で、子どもへの影響はありますか?

血のつながりのあるカップルは、共通の祖先から同じ遺伝子の変化を受け継いでいる可能性があり、同じ潜性の病気の保因者どうしになることがあります。米国医学遺伝学・ゲノム学会の指針は、はとこ(またはいとこ)以上に近い血縁のカップルでは、より広い範囲の検査を考えてよいとしています。おふたりで同時に保因者検査を受けることをご検討ください。

Q6. 男性不妊の原因もわかりますか?

わかりません。この検査は、お子さんに伝わる潜性の病気の保因者かどうかを調べる検査です。CFTR遺伝子の変化のうち、先天性両側精管欠損症だけに関係する変化は報告の対象外です。男性不妊の原因を調べたい方は、男性不妊症遺伝子検査(NGSパネル)をご検討ください。

Q7. オンラインで受けられますか?

唾液・頬の粘膜の検体なら、オンライン診療で遺伝カウンセリングを行ったあと、検体を郵送していただく形で、ご来院なしで受けられます。検体採取キットは検査費用のお支払いのあとにお送りします。オンラインの場合は、遺伝カウンセリング料金を事前にお支払いください。

Q8. 714遺伝子に入っていない遺伝子を追加できますか?

できます。ご家族の病気の原因遺伝子が714遺伝子に入っていない場合も、その遺伝子を追加して調べることができます。遺伝カウンセリングのときにご相談ください。より広い男性版911遺伝子に入っている遺伝子なら、911遺伝子を選ぶ方法もあります。

Q9. 日本人に多い福山型の挿入変異も調べられますか?

調べられます。日本人の福山型先天性筋ジストロフィーの多くは、FKTN遺伝子に約3kbのレトロトランスポゾン(SVA)が入り込んだ変化が原因で、日本全国の調査では、この挿入の保因者は約188人に1人と報告されています。このような長い挿入は一般的な遺伝子検査(NGS)では見つけにくいのですが、当院の男性版714遺伝子では報告の対象になっていることを、検査会社に確認しています。女性版787遺伝子にもFKTNが入っているので、ご夫婦で受ければ、おふたりがこの挿入の保因者かどうかを確かめられます。福山型は常染色体潜性の病気で、ふたりとも保因者のとき、お子さん1人ごとに4分の1の確率で起こります。

🧬 一生変わらない遺伝子を、おふたりのこれからの計画に

潜性の病気は、ふたりとも同じ遺伝子の保因者のときにお子さんに出ます。男性版714遺伝子と女性版787遺伝子を組み合わせれば、カップルとしてのリスクを妊娠の前に知ることができます。当院では臨床遺伝専門医が検査の前後の遺伝カウンセリングを行い、ふたりとも保因者だった場合も、羊水検査・絨毛検査による出生前診断まで院内で続けて受けていただけます。

お電話でのお問い合わせ:03-3478-3768

参考文献

  • [1] Gregg AR, Aarabi M, Klugman S, et al. Screening for autosomal recessive and X-linked conditions during pregnancy and preconception: a practice resource of the American College of Medical Genetics and Genomics (ACMG). Genet Med. 2021;23(10):1793-1806. [DOI: 10.1038/s41436-021-01203-z](PMID: 34285390)
  • [2] American College of Obstetricians and Gynecologists. Committee Opinion No. 690: Carrier Screening in the Age of Genomic Medicine. Obstet Gynecol. 2017;129(3):e35-e40.(2023年に再確認) [DOI: 10.1097/AOG.0000000000001951]
  • [3] Westemeyer M, Saucier J, Wallace J, et al. Clinical experience with carrier screening in a general population: support for a comprehensive pan-ethnic approach. Genet Med. 2020;22(8):1320-1328. [DOI: 10.1038/s41436-020-0807-4]
  • [4] Bennett RL, Motulsky AG, Bittles A, et al. Genetic counseling and screening of consanguineous couples and their offspring: recommendations of the National Society of Genetic Counselors. J Genet Couns. 2002;11(2):97-119. [DOI: 10.1023/A:1014593404915]
  • [5] Kobayashi K, Nakahori Y, Miyake M, et al. An ancient retrotransposal insertion causes Fukuyama-type congenital muscular dystrophy. Nature. 1998;394(6691):388-392. [DOI: 10.1038/28653]
  • [6] ESHRE PGT-M Working Group, Carvalho F, Moutou C, et al. ESHRE PGT Consortium good practice recommendations for the detection of monogenic disorders. Hum Reprod Open. 2020;2020(3):hoaa018. [DOI: 10.1093/hropen/hoaa018]
  • [7] ESHRE PGT Consortium Steering Committee, Carvalho F, Coonen E, et al. ESHRE PGT Consortium good practice recommendations for the organisation of PGT. Hum Reprod Open. 2020;2020(3):hoaa021. [DOI: 10.1093/hropen/hoaa021]
  • [8] Nakasato K, Yamamoto BA, Kato K. Evaluating standards for ‘serious’ disease for preimplantation genetic testing: a multi-case study on regulatory frameworks in Japan, the UK, and Western Australia. Hum Genomics. 2022;16:16. [DOI: 10.1186/s40246-022-00390-3]
  • [9] Ethics Committee of the American Society for Reproductive Medicine. Use of preimplantation genetic testing for monogenic adult-onset conditions: an Ethics Committee opinion. Fertil Steril. 2024;122(4):607-611. [DOI: 10.1016/j.fertnstert.2024.05.165]
  • [10] Watanabe M, Kobayashi K, Jin F, et al. Founder SVA retrotransposal insertion in Fukuyama-type congenital muscular dystrophy and its origin in Japanese and Northeast Asian populations. Am J Med Genet A. 2005;138(4):344-348. [PubMed: 16222679]

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仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 当サイトの記事は、院長が自ら執筆し、医学的な内容を確認してから公開しています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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