InstagramInstagram

11q24.1欠失症候群(ヤコブセン症候群)とは|東京・ミネルバクリニック

仲田洋美 医師

この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

記事の作り方(編集方針)

ヤコブセン症候群(11q末端欠失症候群)は、11番染色体の長腕(11q)の端の部分が欠けることで起こる、生まれつきの染色体の病気です。出生およそ10万人に1人とされ、血小板の数と働きの異常(パリ・トルーソー症候群)、生まれつきの心臓の病気、発達の遅れ、特徴的な顔つきがみられます。欠けている範囲によって、症状の組み合わせや重さは一人ひとり異なります。この記事では、症状・顔貌・寿命の見通し・原因となる遺伝子・再発率と、妊娠中にNIPTでどこまで調べられるかを、臨床遺伝専門医の立場から解説します。

この記事でわかること
📖 読了時間:約15分
🧬 11q末端欠失・微小欠失症候群
★ 臨床遺伝専門医監修
  • ➤原因 → 11番染色体長腕の端(11q23〜qter)の欠失。多くはおよそ7〜20Mb
  • ➤主な症状 → パリ・トルーソー症候群(約9割)、先天性心疾患(約56%)、発達の遅れ(約97%)
  • ➤寿命の見通し → 2歳までの死亡は約20%。多くは心臓の合併症で、その後は成人期を迎える方が多い
  • ➤再発 → 約85%は新生(de novo)、約15%は親の転座などから。両親の染色体検査で見通しが変わる
  • ➤NIPT → 当院ではプレミアム・ダイヤモンド・双子マックス・インペリアルで対象(スタンダードは対象外)

⏱️ 30秒でわかる要約

🧬 Q. ヤコブセン症候群とは?どんな症状?

11番染色体の長腕の端が欠ける病気で、出生およそ10万人に1人です。血小板の異常(約9割)、心臓の病気(約56%)、発達の遅れ(約97%)が主な症状で、欠けた範囲によって組み合わせが変わります。

⏳ Q. 寿命はどのくらい?

一つの数字では示せません。2歳までに約20%が亡くなり、原因の多くは心臓の合併症と報告されています。この時期を越えた方の多くは成人期を迎え、2009年の時点で45歳の方が知られていました。

🔬 Q. 妊娠中にNIPTでわかる?

当院ではプレミアム・ダイヤモンド・双子マックス・インペリアルの4プランで調べられます(スタンダードは対象外)。陽性のときは羊水検査・絨毛検査で確かめ、当院では確定検査まで院内で受けられます。

11q24.1欠失症候群(ヤコブセン症候群)とは

1. 11q24.1欠失症候群(ヤコブセン症候群)とは|基本情報

ヤコブセン症候群は、11番染色体の長腕の端(11q23〜qter)が欠けることで起こる染色体の病気です。出生およそ10万人に1人と推定され、女性が男性の約2倍です。2009年の総説の時点で、世界で200例以上が報告されていました[1]。当院のページ名にある「11q24.1」は、典型的な欠失に含まれる領域の一つを指しています。

1973年、Jacobsenらが、11番と21番の染色体の転座を4世代にわたって持つ家系で、お子さんに11番染色体の異常が生じた例を報告したのが最初です[2]。欠けた部分には170〜340以上の遺伝子が含まれうるため[9]、心臓・血液・脳・免疫・腎臓など全身に症状が出るのが特徴です。このように、隣り合う複数の遺伝子が一度に1本分ずつ失われて起こる病気を、隣接遺伝子欠失症候群と呼びます。

💡 用語解説:ハプロ不全(はぷろふぜん)

遺伝子は父と母から1本ずつ、2本で働いています。そのうち1本が欠けて、残りの1本だけでは十分な働きが保てない状態をハプロ不全といいます。ヤコブセン症候群の症状は、欠けた範囲にある遺伝子のハプロ不全が重なって生じると考えられています。

1.1 疾患の概要

🧬 ヤコブセン症候群の基本情報

項目 内容
疾患名 ヤコブセン症候群(Jacobsen syndrome)/11q末端欠失症候群(OMIM #147791)[8]
原因 11番染色体長腕の端(11q23〜qter)の欠失
欠失の大きさ およそ7〜20Mb[1]。これより小さい欠失の報告もある(1.4参照)
頻度 出生およそ10万人に1人[1]
男女比 女性:男性=2:1[1]
起こり方 約85%が新生(de novo)の欠失、約15%が親の転座などの組み換えから[1]

1.2 欠失の起こり方|新生の欠失と親の転座

ヤコブセン症候群の約85%は、両親の染色体には異常がなく、卵子や精子ができる過程などで偶然に起こる新生(de novo)の変化です。残りの約15%は、親が持つ均衡型転座などの組み換えが、お子さんには不均衡な形で受け継がれて起こります[1]。どちらで起きたかによって、次のお子さんへの再発の見通しが大きく変わります(6章)。

💡 用語解説:FRA11B(11番染色体の脆弱部位)

11q23.3には、CCGという3つの塩基のくり返しを含む「FRA11B」と呼ばれる切れやすい部位があります。正常な人の70%以上ではこのくり返しは11回ですが、80〜100回に伸びた状態(前変異)を持つ人もいます[1]。ヤコブセン症候群の一部では、欠失の切れ目がこの部位と関係していると考えられています[1]。

1.3 新生の欠失と転座由来で何が違うか

👪 欠失の起こり方による違い

起こり方 割合 両親の染色体 次のお子さんへの見通し
新生(de novo)の欠失 約85% 異常なし 再発の可能性は低い
親の転座などに由来 約15% どちらかが均衡型転座などを持つ 再発の可能性が高い。程度は組み換えの種類で異なる

※割合は文献[1]による。個別の再発の見通しは、両親の染色体検査の結果をもとに遺伝カウンセリングで確認します。

1.4 小さな欠失でも一部の症状が出る|「隣接遺伝子欠失症候群」の考え方

典型的なヤコブセン症候群の欠失は7Mbを超えますが、マイクロアレイ検査が広まってからは、11q23〜q25の中のずっと小さな欠失も見つかるようになりました。こうした小さな欠失を持つ人は、ヤコブセン症候群の特徴の一部だけを持ち、全体像はそろわないことが多いと報告されています[6][7]。

2016年の症例報告では、11q23.3〜q24.2の中の重ならない2か所に、どちらも親から受け継いでいない新生の欠失を持つ2人のお子さんが報告されました[6]。

🔎 11q23.3〜q24.2の小さな欠失の2例(Su 2016)

症例 欠失の場所と大きさ 主な特徴
1例目(女児) 11q23.3〜q24.1、約1.6Mb 低身長、相対的な小頭、体重の増えにくさ、筋緊張の低下、睡眠障害、発達の遅れ
2例目(男児) 11q24.2、約0.76Mb(HEPACAMを含む) 相対的な大頭、MRIの異常、軽い発達の遅れ、けいれん

※どちらも血小板の異常や心臓の病気はみられませんでした。2例だけの報告で、頻度を示すものではありません[6]。

著者らは、発達の遅れに関わる領域が11qの末端の中に複数あると考え、ヤコブセン症候群は、欠けた範囲にある複数の遺伝子がそれぞれ症状に関わる「本当の意味での隣接遺伝子欠失症候群」であると結論しています[6]。つまり、「11qの端が欠けている」という同じ診断名でも、どこからどこまで欠けているかを正確に知ることが、見通しを考える出発点になります。

2. ヤコブセン症候群の主な症状

主な症状は、血小板の異常(パリ・トルーソー症候群)、生まれつきの心臓の病気、発達の遅れ、特徴的な顔つきです。ただし、欠けた範囲によって症状の組み合わせや重さは異なります。

2.1 主な症状の頻度

📊 ヤコブセン症候群でみられる主な症状

症状 頻度 内容
知的障害・発達の遅れ 約97% 軽度〜重度。正常〜境界域は3%未満
パリ・トルーソー症候群 88.5%以上 血小板の減少と働きの異常、出血しやすさ
低身長 約75% 身長が10パーセンタイル未満
脳の構造の異常 約65% 何らかの構造の異常
先天性心疾患 約56% 心室中隔欠損が最多。左心低形成症候群は約5%
停留精巣(男児) 36%(報告例)〜約60%(専門施設の例) 精巣が陰のうに下りていない
消化管の形の異常 約18%(報告例)〜25% 消化管の閉鎖・狭窄など
湿疹 約22% 皮膚の湿疹
尿路・腎臓の形の異常 約13% 腎臓・尿路の形の異常

※頻度は文献[1](2009年の総説)による。

2.2 パリ・トルーソー症候群(血小板の異常)

ヤコブセン症候群で最もよくみられるのが、血小板の数の減少と働きの異常をあわせたパリ・トルーソー症候群で、少なくとも88.5%にみられます[1]。血小板をつくる細胞(巨核球)の成熟に関わるFLI1遺伝子が1本分欠けると、巨核球がうまく育たなくなることが原因と考えられています[1]。一部の血小板には大きな顆粒(巨大α顆粒)がみられますが、その割合は人や時期によって変わります。

⚠️ 大切なこと:血小板の数が戻っても、働きの異常は残ることが多い

血小板の数はやがて低めの正常値まで回復することがありますが、働きの異常は多くの場合残ります[1]。そのため、手術や抜歯などの前には必ず主治医に伝え、必要に応じて血小板輸血の準備をします。予防的な血小板輸血が命を守ることもあると述べられています[1]。

2.3 先天性心疾患

生まれつきの心臓の病気(先天性心疾患)は約56%にみられ、2歳までに亡くなる原因として最も多いものです[1]。心臓の病気があるお子さんの約3分の2は心室中隔欠損で、次いで大動脈弁や僧帽弁の異常、大動脈縮窄など、心臓の左側の血液の通り道が狭くなる病気がみられます。

なかでも重いのが左心低形成症候群で、一般には約5,000人に1人のまれな病気ですが、ヤコブセン症候群では約5%にみられます[1]。心臓の発生に関わるETS1遺伝子をなくしたマウスでは心室中隔欠損が生じることが示されており、心臓の病気との関係が考えられています[5]。

2.4 特徴的な顔貌(顔つき)

「ヤコブセン症候群 顔貌」と調べる方が多い項目です。顔つきの特徴は診断の手がかりになりますが、顔つきだけで診断することはできず、確定には染色体の検査が必要です。

👶 報告されている顔つき・頭の形の特徴

部位 報告されている所見
頭の形 額がとがって見える三角頭蓋など。専門施設の経験では三角頭蓋は30%未満と、以前の報告より少ない[1]
目 目と目の間が広い(眼間開離)、まぶたが下がっている(眼瞼下垂)、目尻が下がっている
鼻・口 鼻の付け根が平たい、短い鼻、薄い上くちびる、小さな下あご
耳 耳の位置が低い、耳の形の違い

※すべてがそろうわけではなく、一人ひとり異なります。

2.5 発達・知的機能・行動

知的障害は軽度から重度まで幅があり、約97%にみられます。正常〜境界域の知的発達は3%未満です[1]。行動面では注意欠如・多動症(ADHD)が最も多く報告されています[1]。

自閉スペクトラム症との関係も調べられており、ヤコブセン症候群のお子さん17人を詳しく評価した研究では、8人が自閉スペクトラム症の基準を満たしました[3]。人数の少ない研究ですが、発達の評価では言葉や運動だけでなく、対人関係やこだわりの面も確かめることが大切です。

2.6 免疫と感染症

幼いころは、くり返す感染症にかかりやすいとされています[1]。6人を詳しく調べた研究では、5人がくり返す感染症を経験し、IgG(抗体)の低下、肺炎球菌ワクチンへの反応の弱さ、記憶B細胞の減少がみられました。著者らは、ヤコブセン症候群の多くは、症候群の一部として免疫不全を伴うと述べています[4]。感染をくり返す場合は、抗体の量やワクチンへの反応を調べることが勧められます。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「同じ病名」でも、欠けた範囲で見通しが変わる】

ヤコブセン症候群は、一つの遺伝子の病気ではなく、隣り合う多くの遺伝子が一度に1本分ずつ失われる病気です。そのため、同じ「ヤコブセン症候群」という病名でも、心臓の病気がある方とない方、血小板の異常がはっきりしている方とそうでない方がいます。病名だけで見通しを語るのは難しい、というのが臨床遺伝専門医としての考えです。

だからこそ大切だと考えているのは、マイクロアレイ検査で欠けた範囲を正確に知り、その範囲にどの遺伝子が含まれるかを確認することです。FLI1やETS1が含まれるかどうかで、出血や心臓への備えの優先順位が変わります。検査の結果を「病名」で終わらせず、「この子に何が起こりうるか」の見通しに変えていくことが、遺伝の専門家の役割だと考えています。

\ 妊娠中にヤコブセン症候群も調べたい方へ /

📅NIPTを予約する

プレミアムプラン | インペリアルプラン

3. 原因と遺伝的背景|責任遺伝子

ヤコブセン症候群の症状は、欠けた範囲にある複数の遺伝子のハプロ不全が重なって生じます。すべての症状の原因遺伝子がわかっているわけではありませんが、いくつかの遺伝子は症状との関係が示されています。

🧬 症状との関係が示されている主な遺伝子

遺伝子 場所 関係する症状 根拠
FLI1 11q24 パリ・トルーソー症候群(血小板の異常) 1本分の欠失で巨核球の成熟が障害される[1]
ETS1 11q24 先天性心疾患(心室中隔欠損など) 欠失マウスで心室中隔欠損[5]
KIRREL3 11q24.2 発達・認知の遅れ 中間部欠失の症例報告で候補とされた[10]
HEPACAM 11q24.2 大頭、MRIの白質の異常 小さな欠失の症例報告で候補とされた[6]

※KIRREL3・HEPACAMは少数の症例報告にもとづく候補で、確立した結論ではありません。

欠失がどこから始まるかによって、これらの遺伝子が含まれるかどうかが変わります。例えば、欠失がFLI1を含まない範囲にとどまれば、血小板の異常がはっきりしないこともありえます。責任領域(MCR)の詳しい解析は、別のページで扱っています。

なお、11q23のより中心寄り(染色体の中央に近い側)が欠ける11q23欠失症候群は、ヤコブセン症候群とは別の病気として扱われます。11番染色体のほかの異常は11番染色体異常のまとめで解説しています。

4. ヤコブセン症候群の診断方法

診断は、症状から疑い、染色体の検査で確定します[1]。欠けた範囲と含まれる遺伝子を正確に知るには、染色体マイクロアレイ検査(CMA)が役立ちます。

4.1 診断を考えるきっかけ

生まれてすぐの血小板の減少と心臓の病気の組み合わせ、特徴的な顔つき、発達の遅れなどから疑われます。妊娠中には、羊水が少ない、首の後ろのむくみ(項部肥厚)、心臓の形の異常、腎臓の重複などが超音波検査で見つかった報告があります[1]。妊娠中の超音波検査でわかることと限界は胎児超音波検査とはで解説しています。

4.2 検査方法ごとの違い

🔬 ヤコブセン症候群を調べる検査

検査 特徴 ヤコブセン症候群での役割
染色体マイクロアレイ(CMA) 染色体の小さな欠失・重複を細かく調べ、欠けた範囲と含まれる遺伝子がわかる 欠失の範囲を正確に決める。小さな欠失も見つけられる
G分染法(染色体の顕微鏡検査) 染色体全体の数と大きな構造の変化を見る 大きな末端欠失や、転座・環状染色体などの確認
FISH法 目的の場所に光る目印をつけて調べる 欠失の確認や、両親の転座の有無の確認

お子さんに11q末端の欠失が見つかったときは、両親の染色体検査で、親が均衡型転座などを持っていないかを確かめることが、次の妊娠の見通しを考えるうえで欠かせません。

5. 治療と長期管理|寿命の見通し

欠けた染色体そのものを元に戻す治療はなく、症状ごとの治療と、複数の診療科による管理を組み合わせます。診断がついた時点で、心臓・血液・目・耳・成長・発達をひととおり評価します。

5.1 診断後に行う評価

🩺 診断後に勧められている評価と支援

分野 内容
心臓 小児循環器医による心電図・心エコー
血液 血球数・血小板数、血小板の働きの検査、出血時間
目 瞳孔を開いての眼科検査
耳 全員に聴力検査
成長・内分泌 IGF-1・甲状腺刺激ホルモン(TSH)の検査。成長ホルモン治療は意見が分かれる
発達 早い時期からの作業療法・言語療法・理学療法・行動面の支援
免疫 感染をくり返す場合は抗体の量やワクチンへの反応を確認[4]

※文献[1]の推奨をもとに整理(免疫の項は文献[4])。

5.2 手術や処置のときの注意

血小板の数が正常に近くても働きの異常が残っていることがあるため、手術・抜歯・カテーテル検査などの前には、血液の専門医と相談し、血小板輸血の準備をしておくことが大切です[1]。

5.3 寿命と予後

「ヤコブセン症候群 寿命」と検索される方も多いのですが、寿命を一つの数字で示すことはできません。2009年の総説では、生まれてから2歳までに約20%のお子さんが亡くなると報告されています。原因の多くは心臓の病気の合併症で、次いで出血でした[1]。

一方で、この時期を越えたお子さんの多くは成人期を迎えると考えられており、同じ総説の時点で45歳の方が知られていました[1]。心臓の病気の有無と重さ、出血への備えが、乳幼児期の見通しを大きく左右します。

6. 遺伝カウンセリングと再発リスク

再発の見通しは、欠失が新生(de novo)か、親の染色体の組み換えに由来するかで大きく変わります。お子さんの診断がついたら、両親の染色体検査と遺伝カウンセリングで、ご家族ごとの見通しを確認します。

6.1 再発リスク

👪 両親の染色体検査の結果と再発の見通し

両親の染色体検査 次のお子さんへの見通し 次の妊娠での選択肢
両親とも異常なし(新生の欠失) 再発の可能性は低い 希望に応じてNIPTや確定検査で確認
どちらかが均衡型転座などを持つ 再発の可能性が高い。程度は組み換えの種類で異なる 絨毛検査・羊水検査、着床前検査(PGT-SR)など
親自身がヤコブセン症候群 50%[1] 遺伝カウンセリングで個別に相談

親が均衡型転座を持つ場合、親ご本人は健康なことがほとんどです。次の妊娠では、妊娠中の絨毛検査・羊水検査のほか、体外受精を行う場合にはPGT-SR(着床前胚染色体構造異常検査)という選択肢もあります。どの方法が合うかは、転座の種類やご夫婦の考え方によって異なります。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「親の検査」は、親を責めるためのものではない】

お子さんにヤコブセン症候群が見つかったあと、両親の染色体検査を勧められると、「自分のせいだったのか」と受け止めてしまう方がいます。けれども、約85%は誰のせいでもない新生の欠失ですし、均衡型転座を持っていることも、本人が選んだものではありません。

親の検査の目的は、次の妊娠の見通しを正確に知ることにあると考えています。再発の可能性が低いと分かれば安心材料になりますし、転座が見つかれば、確定検査や着床前検査など、前もって備える方法を選ぶことができます。結果をどう使うかはご家族が決めることで、その判断に必要な情報をそろえるのが、臨床遺伝専門医の役割だと考えています。

\ 次の妊娠で、調べる範囲から選びたい方へ /

📅NIPTを予約する

ダイヤモンドプラン | 双子マックスプラン

7. 出生前診断について|NIPTと羊水検査

ヤコブセン症候群は、妊娠中にNIPTで可能性を調べ、羊水検査・絨毛検査で確定することができます。ただし、NIPTの対象に入っているかどうかは、施設やプランによって異なります。

7.1 ミネルバクリニックのNIPTプランとヤコブセン症候群

ミネルバクリニックでは、プレミアム・ダイヤモンド・双子マックス・インペリアルの4プランでヤコブセン症候群を調べられます。プランのページでは「ジェイコブセン症候群(11q23q25欠失)」と表記しています。スタンダードプランは対象外です。

🔬 当院のNIPTプランとヤコブセン症候群

プラン ヤコブセン症候群 微小欠失などの範囲 料金(当日割引後・税込)
スタンダード 対象外 微小欠失6種類7疾患(13・18・21番+性染色体)/単胎・双胎 220,000円
プレミアム 対象 微小欠失12種類13疾患(13・18・21・15・16・22番)/単胎のみ 264,000円
ダイヤモンド 対象 プレミアムと同じ範囲+単一遺伝子56/単胎のみ 407,000円
双子マックス 対象 全常染色体/92種類の微小欠失・重複+5Mb超の構造異常/双子の妊娠に対応 440,000円
インペリアル 対象 全常染色体/92種類+5Mb超+単一遺伝子 最大155遺伝子(202疾患)/単胎のみ 550,000円

※料金は事前学習動画を見て来院した場合の当日割引後の税込金額です。遺伝カウンセリング・4Dエコー・性別判定を含み、結果の作成費用3,300円が別途かかります。インペリアルプランの対象一覧には、ヤコブセン症候群とは別に「11q23欠失症候群」も含まれています。

ダイヤモンドプランは、米国の3大遺伝子検査会社の一角が提供する新技術「COATE法」(SNP法とターゲット法の組み合わせ)で検査します。インペリアルプランは、低深度全ゲノムシーケンスとターゲット法を組み合わせています。

※「3大遺伝子検査会社」は、遺伝性がんや周産期(出生前検査・保因者検査)を含む遺伝子検査全般を手がける米国の検査専業会社のうち、2025年通期の売上高が上位の3社を指します(各社の決算発表にもとづく当院調べ)。がん検診やリキッドバイオプシーに特化した会社は含みません。

NIPTは妊娠9週から受けられ(妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます)、結果は基本的に10〜14日でお伝えします(インペリアルプランの単一遺伝子のみ3〜4週間)。

7.2 NIPTの結果をどう受け止めるか

NIPTはお母さんの血液を使うスクリーニング検査で、診断を確定する検査ではありません。特に微小欠失・重複は、陽性的中率が項目により60〜70%程度と低めで、陽性だった方の中に実際には欠失がない方も含まれます。陽性のときは、羊水検査・絨毛検査で確かめることが必要です。

🧪 出生前の検査でできること

検査 位置づけ ヤコブセン症候群について
NIPT(対象のプラン) スクリーニング 可能性を調べる。陽性なら確定検査が必要
絨毛検査+マイクロアレイ 確定検査 赤ちゃん側の細胞で欠失の有無と範囲を確かめる
羊水検査+マイクロアレイ 確定検査 赤ちゃん側の細胞で欠失の有無と範囲を確かめる
超音波検査 形の観察 心臓・腎臓の形や羊水量などを確認。病名の確定はできない

7.3 陽性だったときの流れ

ミネルバクリニックでは、2025年6月から羊水検査・絨毛検査を院内で行っています。主要な項目は3日以内、欠けた範囲を調べるマイクロアレイは2週間ほどで結果をお伝えします。陽性のときの遺伝カウンセリングは何度でも無料です。確定検査の選び方はNIPT陽性後の確定検査:絨毛検査と羊水検査の選び方で解説しています。

確定検査でヤコブセン症候群とわかった場合は、欠けた範囲にFLI1やETS1が含まれるかを確認し、詳しい心臓の超音波検査、出生後の血小板の管理、小児循環器・血液の専門医との連携など、出生後に必要な準備を一緒に整理します。

8. ミネルバクリニックのサポート体制

ミネルバクリニックは、臨床遺伝専門医が常駐し、NIPTの前後の遺伝カウンセリングから確定検査まで院内で行っています。

🏥 当院でできること

項目 内容
調べられる範囲 ヤコブセン症候群はプレミアム・ダイヤモンド・双子マックス・インペリアルで対象
遺伝カウンセリング 受診は90分の枠で、その中で臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行う。陽性のときのカウンセリングは何度でも無料
確定検査 羊水検査・絨毛検査を院内で実施(2025年6月から)。主要項目は3日以内、マイクロアレイは2週間ほど
判定保留 当院のNIPTの判定保留は0%。胎児分画が足りないときは再検査(再採血)
互助会 全員加入。カトレア会(羊水検査互助会)8,000円、安心検査結果保障制度6,000円
お問い合わせ NIPT専用ダイヤル 03-3408-3768。遠方の方はオンラインNIPTも利用できます

🏥 ヤコブセン症候群も調べられるNIPTを、臨床遺伝専門医と選ぶ

プレミアム・ダイヤモンド・双子マックス・インペリアルの4プランでヤコブセン症候群を調べられます。陽性のときは羊水検査・絨毛検査まで院内で受けられ、マイクロアレイで欠けた範囲まで確認します。

よくある質問(FAQ)

Q1. ヤコブセン症候群とはどんな病気ですか?主な症状は?

11番染色体の長腕(11q)の端の部分が欠けることで起こる、生まれつきの染色体の病気です。出生およそ10万人に1人とされ、女性が男性の約2倍です。血小板の数と働きの異常(パリ・トルーソー症候群)が約9割に、生まれつきの心臓の病気が約56%にみられ、ほとんどの方に発達の遅れがあります。欠けている範囲によって、症状の組み合わせや程度が一人ひとり異なります。

Q2. ヤコブセン症候群の寿命はどのくらいですか?

寿命を一つの数字で示すことはできません。2009年の総説では、生まれてから2歳までに約20%のお子さんが亡くなると報告されており、原因の多くは心臓の病気の合併症、次いで出血でした。この時期を越えた方の多くは成人期を迎えると考えられており、同じ総説の時点で45歳の方が知られていました。心臓の手術や出血への備えなど、早い時期からの管理が見通しを左右します。

Q3. ヤコブセン症候群の顔つき(顔貌)の特徴は?

目と目の間が広い(眼間開離)、まぶたが下がっている(眼瞼下垂)、目尻が下がっている、鼻の付け根が平たい、耳の位置が低いなどの特徴が報告されています。額がとがって見える三角頭蓋は特徴の一つとされてきましたが、専門家の経験では30%未満と、以前の報告より少ないと述べられています。顔つきだけで診断することはできず、確定には染色体の検査が必要です。

Q4. ヤコブセン症候群になる確率はどのくらいですか?

出生およそ10万人に1人と推定されています。約85%は両親の染色体に異常がなく、偶然に起こる新生(de novo)の欠失です。残りの約15%は、親が持つ均衡型転座などの染色体の組み換えから、欠失の形で受け継がれたものです。

Q5. NIPTでヤコブセン症候群はわかりますか?

ミネルバクリニックでは、プレミアムプラン・ダイヤモンドプラン・双子マックスプラン・インペリアルプランで調べられます(プランのページでは「ジェイコブセン症候群(11q23q25欠失)」と表記しています)。スタンダードプランは対象外です。NIPTはスクリーニング検査で、微小欠失の陽性的中率は項目により60〜70%程度と低めのため、陽性のときは羊水検査や絨毛検査で確かめる必要があります。当院では確定検査も院内で行い、マイクロアレイの結果は2週間ほどでお伝えしています。

Q6. 子どもがヤコブセン症候群と診断されました。次の子も同じ病気になりますか?

欠失がどのように起きたかで大きく変わります。両親の染色体に異常がない新生(de novo)の欠失であれば、再発の可能性は低いと考えられます。一方、親のどちらかが均衡型転座などを持っている場合は、再発の可能性が高くなり、その程度は組み換えの種類によって異なります。まず両親の染色体検査を受け、遺伝カウンセリングで具体的な見通しを確認することをお勧めします。

Q7. ヤコブセン症候群に治療法はありますか?

欠けた染色体そのものを元に戻す治療はありません。心臓の病気には手術、出血しやすさには手術や処置の前の血小板輸血の準備、発達には早い時期からの作業療法・言語療法・理学療法・行動面の支援など、症状ごとの治療と管理を組み合わせます。血小板の数は年齢とともに低めの正常値まで回復することがありますが、働きの異常は多くの場合残るため、手術や抜歯の前には必ず主治医に伝えてください。

Q8. パリ・トルーソー症候群とは何ですか?

ヤコブセン症候群の約9割にみられる、血小板の数の減少と働きの異常をあわせた状態です。血小板をつくる細胞(巨核球)の成熟に関わるFLI1遺伝子が1本分欠けることが原因と考えられています。一部の血小板には大きな顆粒(巨大α顆粒)がみられます。新生児期に気づかれることが多く、手術や処置のときの出血に注意が必要です。

関連記事

参考文献

  • [1] Mattina T, Perrotta CS, Grossfeld P. Jacobsen syndrome. Orphanet J Rare Dis. 2009;4:9. [DOI 10.1186/1750-1172-4-9] [PubMed 19267933]
  • [2] Jacobsen P, Hauge M, Henningsen K, Hobolth N, Mikkelsen M, Philip J. An (11;21) translocation in four generations with chromosome 11 abnormalities in the offspring. A clinical, cytogenetical, and gene marker study. Hum Hered. 1973;23(6):568-585.
  • [3] Akshoomoff N, Mattson SN, Grossfeld PD. Evidence for autism spectrum disorder in Jacobsen syndrome: identification of a candidate gene in distal 11q. Genet Med. 2015;17(2):143-148. [DOI 10.1038/gim.2014.86] [PubMed 25058499]
  • [4] Dalm V, et al. The 11q terminal deletion disorder Jacobsen syndrome is a syndromic primary immunodeficiency. J Clin Immunol. 2015;35(8):761-768. [DOI 10.1007/s10875-015-0211-z]
  • [5] Ye M, et al. Deletion of ETS-1, a gene in the Jacobsen syndrome critical region, causes ventricular septal defects and abnormal ventricular morphology in mice. Hum Mol Genet. 2010;19(4):648-656. [PubMed 19942620]
  • [6] Su J, Chen R, Luo J, et al. de novo interstitial deletions at the 11q23.3-q24.2 region. Mol Cytogenet. 2016;9:39. [DOI 10.1186/s13039-016-0247-7]
  • [7] Tyson C, Qiao Y, Harvard C, et al. Submicroscopic deletions of 11q24-25 in individuals without Jacobsen syndrome: re-examination of the critical region by high-resolution array-CGH. Mol Cytogenet. 2008;1:23. [DOI 10.1186/1755-8166-1-23] [PubMed 19000322]
  • [8] Online Mendelian Inheritance in Man (OMIM). #147791 JACOBSEN SYNDROME. [OMIM 147791]
  • [9] MedlinePlus Genetics. Jacobsen syndrome. U.S. National Library of Medicine. [MedlinePlus]
  • [10] Guerin A, Stavropoulos DJ, Diab Y, et al. Interstitial deletion of 11q-implicating the KIRREL3 gene in the neurocognitive delay associated with Jacobsen syndrome. Am J Med Genet A. 2012;158A(10):2551-2556. [DOI 10.1002/ajmg.a.35621]

※本記事は一般の方に向けた情報提供を目的とするもので、個別の診断・治療方針を示すものではありません。お子さんの症状や次の妊娠については、主治医・専門医にご相談ください。

仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 当サイトの記事は、院長が自ら執筆し、医学的な内容を確認してから公開しています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

記事の作り方と生成AIの使い方は、編集方針をご覧ください。

お電話での受付可能
診療時間
午前 10:00~14:00
(最終受付13:30)
午後 16:00~20:00
(最終受付19:30)
休診 火曜・水曜

休診日・不定休について

クレジットカードのご利用について

publicブログバナー
 
medicalブログバナー
 
NIPTトップページへ遷移