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モノソミーとは?染色体が一本少ない状態と生存・トリソミーとの違いを臨床遺伝専門医が解説

仲田洋美 医師

この記事の監修:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

のべ10万人以上の意思決定に伴走。国際医療誌『Medical Care Review APAC』『Global Woman Leader』の2誌で表紙を飾り、「Top Prenatal Testing Service in APAC 2025」に選出されるなど、世界基準の遺伝医療を提供。

「染色体が一本少ない」と検索して、この言葉にたどり着いた方も多いかもしれません。モノソミー(monosomy)とは、本来2本で1対になっているはずの染色体の一方が失われ、その染色体が1本だけになった状態のことです。ヒトの細胞はふつう46本(23対)の染色体を持ちますが、モノソミーではそれが45本になります。よく似た言葉に「トリソミー(1本多い=47本)」があり、代表がダウン症です。この記事では、モノソミーの意味と-ソミーの命名の仕組み、そしてなぜ多くのモノソミーは生まれてこられないのか(トリソミーとの決定的な違い)、ターナー症候群のように生存できるモノソミー、原因、検査までを、臨床遺伝専門医の視点で整理します。

この記事でわかること
📖 読了時間:約13分
🧬 モノソミー・ターナー症候群・部分モノソミー
★ 臨床遺伝専門医監修

Q. モノソミーとは何ですか?まず結論だけ知りたいです

A. モノソミーとは、一対の染色体のうち一方が失われて1本だけになり、染色体の総数が通常の46本から45本になった状態です。「モノ(mono)=1つ」という意味で、英語では monosomy と書きます。染色体が1本「少ない」状態がモノソミー、逆に1本「多い(47本)」状態がトリソミーです。常染色体(1〜22番)の完全なモノソミーは、多くが妊娠のごく初期に流産となり、生まれてくることはほとんどありません。例外的に生まれてこられる代表が、性染色体のモノソミーであるターナー症候群(45,X)です。

  • ➤定義 → 一対の一方が欠け、染色体が45本になった数的異常(異数性の一型)
  • ➤トリソミーとの違い → 少ない(45本)がモノソミー/多い(47本)がトリソミー
  • ➤最大のポイント → 常染色体の完全モノソミーはほぼ致死。トリソミーは生まれる例があるのと対照的
  • ➤生存できる例 → ターナー症候群(45,X)、染色体の一部が欠ける部分モノソミー、モザイク
  • ➤原因 → 減数分裂での染色体不分離。トリソミーの一部は母体年齢と関連するが、45,Xは年齢との関連が弱い

🧬 モノソミーの基本情報

項目 内容
読み方・英語 モノソミー(monosomy)。「モノ(mono)=1」+「-ソミー(-somy/染色体の状態を表す語尾)」
定義 一対の相同染色体の一方が失われ、その染色体が1本だけになった状態。染色体の総数は通常の46本ではなく45本になる
分類 染色体の「数的異常(異数性)」の一型。染色体の一部だけが欠ける「部分モノソミー(欠失)」とは区別する
主な原因 減数分裂または初期の細胞分裂での染色体不分離
生存性 常染色体の完全モノソミーはほぼ致死(多くが妊娠初期に流産)。生存例は性染色体の45,X(ターナー症候群)、部分モノソミー、モザイクなど
代表例 ターナー症候群(45,X=モノソミーX)

※本記事は一般の方と、遺伝や出生前診断に関わる方の両方に向けた用語解説です。特定の検査を勧めるものではありません。

モノソミーとトリソミーの染色体本数の違い、生存可能性、ターナー症候群をまとめたインフォグラフィック

モノソミーは一対の染色体の一方が失われ、その染色体が1本だけになった状態です。染色体が1本多いトリソミーとの違い、常染色体の完全モノソミーが生存しにくい理由、45,X(ターナー症候群)などの代表例をまとめています。

1. モノソミーとは ─ 染色体が1本少ない状態

モノソミーとは、本来2本で1対になっているはずの染色体の一方が失われ、その染色体が1本だけになった状態を指します。ヒトの体をつくる細胞には、ふつう染色体が46本あります。内訳は、父と母から1本ずつ受け継いだ2本を1対とする常染色体が22対(44本)と、性染色体が1対(2本)です。モノソミーではこの対の一方が欠けるため、染色体の総数は45本になります。

モノソミーは、染色体の「数」が通常と異なる数的異常(異数性、aneuploidy)の一つです。染色体全体の異数性という点で、後で詳しく述べるトリソミー(1本多い状態)とちょうど裏表の関係にあります。ヒトでは異数性は決してまれではなく、トリソミーまたはモノソミーをもつ胚は少なくとも全妊娠の約10%を占め、女性の生殖年齢が高くなると50%を超えることもあると報告されています[1]。異数性は、流産や先天性疾患の重要な原因の一つです。

💡 用語解説:染色体・常染色体・性染色体

染色体は、遺伝情報(DNA)がおさまった構造です。ヒトは46本を持ち、そのうち1〜22番の番号がついた44本を常染色体、性別に関わるXとYを性染色体と呼びます。女性はX染色体を2本、男性はXとYを1本ずつ持ちます。モノソミーは、この常染色体でも性染色体でも起こりえますが、どちらで起こるかによって結果が大きく異なります。

モノソミーで押さえておきたいのは、染色体が1本失われることは、体の設計図の一部が丸ごと足りなくなることを意味するという点です。染色体には数百から千を超える遺伝子が並んでいます。その1本が欠けると、そこに乗っていた多数の遺伝子の量が一度に半分になり、体づくりのバランスが大きく崩れます。この「量の不足」が、モノソミーの理解のうえで重要な鍵になります。

なお、モノソミーには、染色体が丸ごと1本失われる完全モノソミーと、染色体の一部分だけが失われる部分モノソミー(欠失)があります。前者は染色体の「数」の異常、後者は「構造」の異常に分類されますが、どちらも「その領域の遺伝子が足りなくなる」という点では共通しています。この記事では、まず数の異常である完全モノソミーを中心に説明し、後半で部分モノソミーにも触れます。

2. -ソミーの命名 ─ モノ・ダイ・トリ・テトラ

モノソミーの「-ソミー(-somy)」は、染色体が何本あるかを表す語尾です。ここに数を表すギリシャ語系の接頭辞が付いて、状態を呼び分けます。正常な「2本で1対」の状態はダイソミーと呼び、その前後に本数が増減した状態が、それぞれ次のように整理されます。

🔢 -ソミーの命名と本数(その染色体1種類あたり)

呼び方 接頭辞の意味 その染色体の本数 位置づけ
ナリソミー(nullisomy) ゼロ 0本 その染色体が1本もない。生存できない
モノソミー(monosomy) 1 1本 一方が欠けた状態(本記事の主題)
ダイソミー(disomy) 2 2本 正常な状態
トリソミー(trisomy) 3 3本 1本多い状態(例:ダウン症=21トリソミー)
テトラソミー(tetrasomy) 4 4本 2本多い状態。まれ
ペンタソミー(pentasomy) 5 5本 3本多い状態。さらにまれ

※呼び方はいずれも「その染色体1種類が何本あるか」を表します。何番の染色体かは、番号を付けて「21トリソミー」「モノソミーX」のように呼び分けます。

このように、モノソミーは「1本」、トリソミーは「3本」というように、本数で状態を言い分けています。染色体の数や構造の変化にどのような種類があるかは、染色体異常の種類(数的異常・構造異常・モザイク)の解説でより詳しく整理しています。

3. 「染色体が一本少ない」と「一本多い」 ─ 混同しやすい点

「染色体が一本少ない」という言葉は、まさにモノソミー(45本)を指します。一方で、よく似た「染色体が一本多い」は、モノソミーではなくトリソミー(47本)のことです。検索では、この2つが取り違えられていることが少なくありません。特にダウン症は「染色体が1本多い(21番が3本=47本)」トリソミーであって、モノソミー(少ない側)ではない、という点は間違えやすいので整理しておきます。

⚖️ 「少ない」と「多い」の整理

状態 その染色体の本数 総数 代表例
一本少ない=モノソミー 1本 45本 ターナー症候群(45,X)
正常 2本 46本 ―
一本多い=トリソミー 3本 47本 ダウン症(21トリソミー)など

「一本多い」側、つまりダウン症をはじめとするトリソミーで、なぜ遺伝子の量が増えると体に影響が出るのか、その仕組み(遺伝子量)については染色体が1本多いとなぜ病気になるのか(遺伝子量とダウン症)で詳しく解説しています。ここから先は、「少ない」側であるモノソミーそのものに話を戻します。

4. モノソミーとトリソミーの違い ─ なぜモノソミーは生まれてこないのか

モノソミーとトリソミーは、染色体が「1本少ない(45本)」か「1本多い(47本)」かという裏表の関係にあります。ただし、両者は数のうえで対称なだけで、体への影響という点では大きく非対称です。最大の違いは、常染色体では、トリソミーには生まれてくる例があるのに対し、完全なモノソミーはほぼすべてが妊娠のごく初期に流産となり、生まれてくることがほとんどないという点にあります。

数のうえでの違い

まず数の整理です。トリソミーは特定の染色体が1本多く3本ある状態(総数47本)で、代表的なものに21トリソミー(ダウン症)、18トリソミー、13トリソミーがあります。これに対してモノソミーは、特定の染色体が1本少なく1本だけの状態(総数45本)です。どちらも減数分裂の際の染色体不分離という同じ仕組みから生じますが、結果として「増える」か「減る」かが正反対になります。

なぜ常染色体のモノソミーはほとんど生まれてこないのか

結論から言うと、染色体が丸ごと1本足りないこと(遺伝子の量が半分になること)は、1本多いことよりも体づくりへの影響が大きく、多くの場合、命を保てないためです。染色体には多数の遺伝子が並んでおり、その1本が失われると、そこに乗った数百以上の遺伝子の働きが一度に不足します。染色体全体が1本失われると、多数の遺伝子でコピー数が同時に減少し、遺伝子量の大きな不均衡が生じます。その中には、1コピーでは十分な機能を保てないハプロ不全を示す遺伝子も含まれます。この広範な遺伝子量の不足が、常染色体の完全モノソミーが一般に重篤となる重要な理由です。その結果、常染色体の完全なモノソミーの多くは、妊娠に気づく前の段階を含め、ごく早い時期に流産となります[1]。

💡 用語解説:ハプロ不全(haploinsufficiency)

遺伝子によっては、2コピーのうち1コピーが失われると、残る1コピーだけでは必要な量の遺伝子産物を確保できず、正常な機能を保てなくなることがあります。これを「ハプロ不全」と呼びます。染色体が丸ごと1本欠ける完全モノソミーでは、多数の遺伝子のコピー数が同時に減少するため、広範な遺伝子量の不均衡が生じます。

もう一つの理由として、染色体を1本失うと、残った1本にひそむ変化(通常は2本あるためたがいに補い合って表に出ない変化)が、補う相手を失って影響を及ぼしやすくなることも挙げられます。トリソミーではこのような「残った1コピー上の劣性病的バリアントがヘミ接合状態になる」という問題は通常生じませんが、代わりに遺伝子量の増加による影響が生じます。常染色体を丸ごと1本失うことは、1本増える場合とは異なる大きな遺伝子量の不均衡を生じる——これが、モノソミーとトリソミーの非対称性の本質です。

この非対称性は、流産の実態からも裏づけられます。妊娠初期の流産で見つかる染色体の変化のうち、性染色体のモノソミーである45,X(後述のターナー症候群)は、自然流産で認められる代表的な染色体異常の一つです。45,Xとして成立した妊娠の大部分が自然流産に至ることが知られています[2]。なお、モノソミーとトリソミーの違いを、21・18・13番など個々の染色体や出生前検査(NIPT)の観点からさらに詳しく知りたい場合は、上に挙げたモノソミー・トリソミーの違いとNIPT検査の記事もあわせてご覧ください。

5. 生存できるモノソミー ─ ターナー・部分モノソミー・モザイク

常染色体の完全モノソミーはほとんどが流産となる一方で、条件によっては生まれてこられるモノソミーもあります。代表が性染色体のモノソミーであるターナー症候群、染色体の一部だけが欠ける部分モノソミー、そして一部の細胞だけがモノソミーであるモザイクです。順に見ていきます。

ターナー症候群(45,X = モノソミーX)

ターナー症候群は、女性で2本あるはずのX染色体が1本になった状態(45,X)で、出生後まで生存しうる代表的な完全モノソミーとして知られています。X染色体のモノソミーであることから「モノソミーX」とも呼ばれます。主な特徴は、低身長、卵巣の発育不全による思春期発来や月経の問題・不妊、心臓や血管の変化(大動脈縮窄や二尖弁など)で、個人差が大きいことも特徴です[3]。

頻度は、出生した女児のおよそ1/2,000〜2,500人と報告されています[3]。ただし、ターナー症候群と診断される人のうち完全な45,Xは約45〜50%で、残りは後述するモザイクや、X染色体の一部が欠けた(構造の変化した)タイプです[3][4]。重要なのは、45,Xとして受胎した胎児のうち、生まれてくるまで育つのはごくわずかで、約99%は妊娠初期に自然流産となるという点です[2]。つまりターナー症候群は、「生まれてこられる例がある」という意味で例外的ですが、その背後には非常に多くの初期流産があります。症状・寿命・治療など詳しい内容は、上のターナー症候群の解説記事にゆずります。

💡 なぜX染色体のモノソミーだけ生存できるのか

常染色体のモノソミーがほぼ致死であるのに対し、X染色体のモノソミー(45,X)が生まれてこられるのには理由があります。女性はもともとX染色体を2本持ちますが、体の細胞では一方のX染色体の働きが大きく抑えられるX染色体不活化(ライオニゼーション)という仕組みがあります。つまり体は、実質的に「1本分」のX染色体で働くことに、もともとある程度対応しているのです。このため、X染色体が1本になっても、常染色体を1本失うほどの致命的な影響にはなりにくいと考えられています。

ただし、これは「45,Xならまったく問題ない」という意味ではありません。X染色体には、不活化を免れて2本とも働く必要がある遺伝子(偽常染色体領域にある遺伝子など)があり、その代表がSHOX遺伝子です。X染色体が1本になるとこうした遺伝子が不足し、それがターナー症候群の低身長などの特徴につながると考えられています[3]。また前述のとおり、45,Xとして受胎しても約99%は妊娠初期に流産となります[2]。つまり45,Xは「常染色体のモノソミーよりは生存しやすい」だけであって、決して負担の小さい状態ではない、という点は押さえておく必要があります。

部分モノソミー(染色体の一部が欠ける = 欠失)

染色体全体ではなく、染色体の一部分だけが失われた状態を部分モノソミーといい、これは構造の変化である「欠失」と同じものです。完全モノソミーと違い、欠けた領域の場所や大きさによっては、常染色体でも生まれてこられる場合があります。代表例に、5番染色体短腕の欠失による猫鳴き症候群(ねこなきしょうこうぐん、5p-欠失、cri-du-chat症候群)や、4番染色体短腕の欠失によるウォルフ・ヒルシュホーン症候群(Wolf-Hirschhorn症候群、4p-欠失)があります。

猫鳴き症候群は、乳児期の高い猫のような泣き声、小頭、発達の遅れなどを特徴とし、出生のおよそ1/15,000〜1/45,000と報告されています[5][6]。ウォルフ・ヒルシュホーン症候群は、成長の遅れ、発達の遅れ、てんかん、特徴的な顔つきなどを伴うまれな疾患です。いずれも欠けた領域の大きさによって症状の程度が大きく異なります。これら個々の疾患の詳細は本記事の範囲を超えるため、ここでは「染色体の一部が欠けるタイプのモノソミー(欠失)がある」という位置づけの紹介にとどめます。

モザイクモノソミー(一部の細胞だけがモノソミー)

体のすべての細胞ではなく、一部の細胞だけが45本で、残りの細胞は正常な46本という状態をモザイクといいます。モザイクは、受精後の初期の細胞分裂で染色体の分配にずれが生じることで起こります。一般に、すべての細胞が影響を受ける完全型よりも、症状は軽くなる傾向があります。実際、ターナー症候群でも、45,Xの細胞と46,XXの細胞が混じったモザイク(45,X/46,XX)は診断される人の一定割合を占め、完全な45,Xより特徴が穏やかなことがあります[3]。ただし、どの細胞にどの割合でモノソミーが分布するかは個人差が大きく、症状との関係を一律に決めることはできません。細胞ごとに染色体構成が異なる仕組みそのものについては、体細胞モザイク・生殖細胞系列モザイクの解説もご参照ください。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「多い」と「少ない」は同じではありません】

染色体の数の変化というと、多い(トリソミー)も少ない(モノソミー)も同じくらいの重さだと受け取られることがあります。医学的には、この2つは対称ではありません。1本足りないこと、つまり遺伝子の量が半分になることは、体づくりにとってしばしば1本多いことよりも大きな負担になります。常染色体の完全なモノソミーがほとんど生まれてこないのは、そのためです。

一方で、ターナー症候群のように生まれてこられるモノソミーもあり、部分的な欠失やモザイクまで含めると、その現れ方は幅があります。「モノソミー」という一つの言葉の中に、流産に至るものから、支援を受けながら生活していくものまでが含まれる、という点を知っておいていただければと思います。

6. モノソミーの原因 ─ 染色体不分離と母体年齢

モノソミーの主な原因は、卵子や精子がつくられる減数分裂の際に起こる「染色体不分離」です。本来なら対になった染色体はきれいに2つの細胞へ分かれていきますが、この分配に失敗すると、一方の細胞には染色体が2本入り、もう一方には入らなくなります。染色体が入らなかった側の細胞(卵子や精子)が受精すると、その染色体はモノソミー(1本)になります。逆に2本入った側が受精すればトリソミー(3本)になり、不分離という一つの現象が、モノソミーとトリソミーの両方を生み出します。

こうした異数性の多くは、卵子がつくられる過程で生じることが知られており、女性の年齢が上がるほど起こりやすくなります[1]。ただし、ここで注意が必要なのは、この「母体年齢が上がると増える」という関係が、主に21トリソミーなどの常染色体トリソミーについて当てはまるという点です。出生後まで生存しうる代表的な完全モノソミーである45,X(ターナー症候群)は、常染色体トリソミーとは事情が異なり、母体年齢との関連は弱く、失われるX染色体の約80%は父親由来であることが報告されています[3]。したがって、「年齢が上がるとモノソミーが増える」と一律に理解するのは正確ではありません。なぜ卵子で染色体の数の変化が起こりやすくなるのか、その仕組みと加齢との関係は、なぜ卵子で染色体異常が起こるのか(母体加齢との関係)で詳しく解説しています。

なお、モノソミーの多くは、親から受け継ぐものではなく、生殖細胞ができるときに偶然生じます。これは誰にでも起こりうる現象であり、親の生活習慣や努力とは関係がありません。ただし、親が「均衡型転座」と呼ばれる染色体の構造をもっている場合には、部分的なモノソミー(欠失)などが子に生じるリスクが高まることがあり、こうした場合は個別の評価が必要になります。

また、不分離がいつ起こるかによって、モノソミーの現れ方も変わります。卵子や精子ができる減数分裂の段階で起これば、体のすべての細胞がモノソミーになる完全型になります。一方、受精した後の初期の細胞分裂(有糸分裂)で起これば、モノソミーの細胞と正常な細胞が混じったモザイクになります。同じ「染色体が1本足りない」でも、その始まりのタイミングが、完全型かモザイクかを分けているのです。

7. 診断と出生前診断

モノソミーの確定診断は、染色体を直接調べる検査によって行われます。具体的には、染色体の数と形を顕微鏡で確認する核型分析(G分染法)、特定の染色体領域を調べるFISH、より細かな過不足を調べる染色体マイクロアレイ(CMA)などが用いられます。出生後は主に血液を用いて、これらの検査を行います。

出生前については、確定診断と、その手前のスクリーニング(ふるい分け)を分けて理解することが大切です。出生前の確定検査は、羊水検査・絨毛検査で、採取した胎児側の細胞で染色体を調べます。一方、NIPT(新型出生前診断)は、母体の血液中に流れる胎盤由来のDNAを調べるスクリーニング検査であり、確定診断ではありません。国際的な産科の指針でも、cfDNA/NIPTはスクリーニングと位置づけられ、陽性の場合は遺伝カウンセリングと超音波評価に加え、羊水検査・絨毛検査などの診断検査を提案することが推奨されています[9]。

⚠️ 注意:NIPTのモノソミーX(45,X)の結果の読み方

性染色体の変化、とくにモノソミーX(45,X)については、NIPTの陽性的中率(陽性と出た人のうち本当にその状態である割合)が低いことが知られています。報告によっては、45,Xで陽性と出ても実際に確認されるのは約12〜21%程度にとどまり、常染色体のトリソミー(たとえば21トリソミー)に比べてかなり低い水準です[7][8]。これは、母体側のわずかな染色体のモザイクや、胎盤に限られた染色体の変化などが影響するためです。NIPTで45,Xが疑われた場合こそ、確定検査での確認が特に重要になります。

なお、染色体の一部が欠ける部分モノソミー(欠失)のうち、ごく小さなものは、染色体の数と形を見る核型分析では見つけにくく、染色体マイクロアレイ(CMA)のような解像度の高い検査が必要になります。NIPTにも一部の微小欠失を対象とする検査がありますが、国際的な指針では一般集団に対する微小欠失のルーチンcfDNAスクリーニングは推奨されていません。胎児のコピー数変化について診断的な情報を希望する場合には、cfDNAによる微小欠失スクリーニングではなく、羊水検査・絨毛検査などの診断検査を選択肢として提示することが推奨されています[9]。

当院では、こうした染色体に関わる検査の前後で、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行っています。話し合う内容は、検査で何が分かり何が分からないのか、結果がご本人やご家族にとってどのような意味を持つのか、そしてどのような選択肢があるのか、といった点です。検査を受けるかどうかを含め、決めるのはご本人であり、私たちは中立の立場で判断材料を整理する役割を担います。

まとめ

モノソミーとは、一対の染色体の一方が失われ、染色体の総数が45本になった状態です。染色体が「1本少ない」のがモノソミー、「1本多い(47本)」のがトリソミーで、ダウン症は後者にあたります。両者は数のうえでは裏表ですが、体への影響は非対称で、常染色体の完全なモノソミーはほとんどが妊娠初期に流産となり、生まれてくることはまれです。これは、染色体が丸ごと1本足りないこと(遺伝子の量が半分になること)の影響が大きいためです。

その中で、性染色体のモノソミーであるターナー症候群(45,X)は生まれてこられる例外的な存在であり、染色体の一部が欠ける部分モノソミー(欠失)や、一部の細胞だけが影響を受けるモザイクも含めると、モノソミーの現れ方には幅があります。原因の多くは減数分裂での染色体不分離で、常染色体トリソミーは母体年齢と関連する一方、45,Xは年齢との関連が弱いという違いもあります。診断は染色体検査で行い、出生前ではNIPT(スクリーニング)と羊水・絨毛検査(確定検査)を区別して理解することが大切です。

よくある質問(FAQ)

Q1. モノソミーとはどういう意味ですか?

モノソミーとは、本来2本で1対になっているはずの染色体の一方が失われ、その染色体が1本だけになった状態です。「モノ(mono)=1」という意味で、英語では monosomy と書きます。染色体の総数は、通常の46本ではなく45本になります。染色体の数が通常と異なる「数的異常(異数性)」の一つです。

Q2. モノソミーとトリソミーの違いは何ですか?

染色体が1本「少ない(45本)」のがモノソミー、1本「多い(47本)」のがトリソミーです。ダウン症は21番染色体が3本あるトリソミーで、「多い」側にあたります。数のうえでは裏表の関係ですが、体への影響は対称ではなく、常染色体では、トリソミーに生まれてくる例があるのに対し、完全なモノソミーはほとんどが妊娠初期に流産となる点が大きく異なります。

Q3. 染色体が一本少ないとどうなりますか?

染色体が一本少ない状態がモノソミーです。常染色体(1〜22番)の完全なモノソミーは、そこに乗った多数の遺伝子の量が一度に不足するため影響が大きく、多くは妊娠のごく初期に流産となり、生まれてくることはほとんどありません。例外は性染色体のモノソミーであるターナー症候群(45,X)で、この場合は生まれてこられる例があります。ただし個人の妊娠がどうなるかは一律には決められず、実際の評価は遺伝カウンセリングで個別に行います。

Q4. モノソミーの代表例は何ですか?

出生後まで生存しうる完全モノソミーの代表は、ターナー症候群(45,X/モノソミーX)です。女性で2本あるはずのX染色体が1本になった状態で、低身長や卵巣の発育不全などを特徴とします。このほか、染色体の一部が欠ける部分モノソミー(欠失)として、猫鳴き症候群(5p-欠失)やウォルフ・ヒルシュホーン症候群(4p-欠失)などが知られています。

Q5. モノソミーの原因は何ですか?

主な原因は、卵子や精子がつくられる減数分裂での「染色体不分離」です。染色体がうまく2つに分かれず、一方の細胞に染色体が入らないと、その細胞が受精したときにモノソミーになります。多くは偶然に生じ、親の生活習慣とは関係ありません。なお、21トリソミーなど常染色体トリソミーは母体年齢が上がると増えますが、ターナー症候群(45,X)は母体年齢との関連が弱く、失われるX染色体の多くは父親由来であることが報告されています。

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参考文献

  • [1] Nagaoka SI, Hassold TJ, Hunt PA. Human aneuploidy: mechanisms and new insights into an age-old problem. Nat Rev Genet. 2012;13(7):493-504. [PubMed 22705668](doi:10.1038/nrg3245)
  • [2] Urbach A, Benvenisty N. Studying early lethality of 45,XO (Turner’s syndrome) embryos using human embryonic stem cells. PLoS One. 2009;4(1):e4175. [PubMed 19137066](doi:10.1371/journal.pone.0004175)
  • [3] Gravholt CH, et al. Clinical practice guidelines for the care of girls and women with Turner syndrome: proceedings from the 2016 Cincinnati International Turner Syndrome Meeting. Eur J Endocrinol. 2017;177(3):G1-G70. [PubMed 28705803](doi:10.1530/EJE-17-0430)
  • [4] Gravholt CH, et al. Clinical practice guidelines for the care of girls and women with Turner syndrome: proceedings from the 2023 Aarhus International Turner Syndrome Meeting. Eur J Endocrinol. 2024;190(6):G53-G151. [Eur J Endocrinol 2024]
  • [5] Orphanet. Monosomy 5p syndrome(cri-du-chat syndrome). [Orphanet ORPHA:281]
  • [6] Cri Du Chat Syndrome. StatPearls(NCBI Bookshelf). [NBK482460]
  • [7] Zhang B, et al. Cell-free DNA screening for sex chromosome aneuploidies by non-invasive prenatal testing in maternal plasma. Mol Cytogenet. 2020;13:10. [PMC7068885](doi:10.1186/s13039-020-0478-5)
  • [8] Lu X, Wang C, Sun Y, Tang J, Tong K, Zhu J. Noninvasive prenatal testing for assessing foetal sex chromosome aneuploidy: a retrospective study of 45,773 cases. Mol Cytogenet. 2021;14(1):1. [PubMed 33407708](doi:10.1186/s13039-020-00521-2)
  • [9] American College of Obstetricians and Gynecologists. Screening for Fetal Chromosomal Abnormalities. Practice Advisory. 2026. [ACOG]

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仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 当サイトの記事は、院長が自ら執筆し、医学的な内容を確認してから公開しています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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