染色体

学術的用語を説明しています.このページでは遺伝情報そのものである染色体についてその構造最小単位であるDNAヒストンからなるヌクレオチドセントロメアテロメアという大まかな構造、細胞分裂のときの挙動、クロマチン、ユークロマチン、ヘテロクロマチンといった用語まで幅広く解説しています。

染色体とは?

染色体は塩基性の色素(Gimsa)でよく染色されることから、
ギリシャ語 χρῶμα (chroma) 「色のついた」という意味のChromo- と
ギリシャ語の σῶμα (soma) 「体」という意味の -some を掛け合わせて
Chromosome と命名されました。
命名したのはヴィルヘルム・フォン・ヴァルデヤー(Heinrich Wilhelm Gottfried von Waldeyer-Hartz)、1888年です。

基本的には、細胞分裂期のみにに観察される構造体をいいます。

この写真は第21番染色体が3本あるダウン症の患者さんの染色体です。

染色体の構造

染色体は二重らせん構造のDNAヒストンと呼ばれるタンパクに146塩基対1.65回転、左巻きでまきついてできるヌクレオソームを最小単位としています。
DNAは酸性に荷電していて、ヒストンは塩基性に荷電しているため、この両者は電気的に親和性が高くなっています。
4種のコアヒストン(H2A, H2B, H3, H4)が2つずつ集まってヒストン8量体を形成します。ヌクレオソームとヌクレオソームの間には約50塩基対があり、このDNAはリンカーDNAとよばれ、ヒストンH1と呼ばれるリンカーヒストンが結合しています。
細胞の分裂期では、通常の顕微鏡(光学顕微鏡)で観察可能な棒状の構造体に凝縮します。染色体凝縮には、コンデンシン複合体やトポイソメラーゼ II などが別途関与します。

ユークロマチンとヘテロクロマチン

クロマチンには、ユークロマチン (euchromatin) とヘテロクロマチン (heterochromatin) の二種類があり、ユークロマチンとはクロマチン構造が緩んで転写される、つまり細胞活動に必要な遺伝子はユークロマチンに多く存在します。ぎゅっと縮んでいては転写因子が結合したり、そこから転写したりができませんので。これに対してヘテロクロマチンと呼ばれるのは密に凝集したクロマチンで、この領域ではあまり転写が起こりません。ぎゅっと詰まっていると、転写因子が結合する部位が露出していないため結合できず、転写がおこらないためです。
ヘテロクロマチンはセントロメア付近にありDNA が繰り返し配列に富み遺伝子の発現はほとんど見られない構成的ヘテロクロマチンと、条件により緩んで遺伝子が発現する条件的ヘテロクロマチンの2種類に分けることができます。

セントロメアとテロメア


染色体にはセントロメアという中心があり、セントロメアをはさんで長い側を長腕、短い側を短腕という。短腕はフランス語のPettiからPと略し、長腕はQという略号を使います。
どうしてQかわかります?
Pの次がQだからだそうです!!

Scientists have labelled each of the arms of a chromosome. The short arm is called “p” for petite or small. The long arm is called “q” simply because it’s the next letter in the alphabet!

染色体の末端部はテロメアと呼ばれる特有の構造をしています。
テロメアは細胞分裂の時に少しずつ短くなります。
テロメアが一定の長さを有さないと染色体を合成することができませんので、新しい細胞を作れなくなり、生物は死滅します。

染色体の構成タンパク

染色体にはヒストンの他にも多くのタンパクが結合しています。
RNAポリメラーゼのような転写に関係するタンパク複合体。
トポイソメラーゼは、DNA超らせん状態を制御する酵素です。
染色体の高次構造を制御するタンパクには染色体凝縮に関わるコンデンシン、姉妹染色分体の接着に関与するコヒーシンがあります。

細胞周期と染色体

細胞周期については
minerva-clinic.or.jp/about-human-genom-index/what-is-inheritance/cell-cycle/
こちらのリンク先でご覧ください。

前期:核膜を保持したままクロマチンが凝縮を開始
前中期:核膜が崩壊し染色体凝縮が進行。
分裂中期:凝縮の最も進み、二つの染色分体(姉妹染色分体)がセントロメアで強固に結合。細胞の両極から伸びた紡錘糸はセントロメアに形成されるキネトコアに結合。
分裂後期:姉妹染色分体間の接着が解除。紡錘糸は各染色分体を細胞の両極に向けて分離する。

最終的に各娘細胞は1セットの染色分体を受け継ぎ、細胞分裂が完了すると染色分体は再び脱凝縮して細胞核内に収納される。

核型

染色体が何本あるかは生物ごとに違い、染色体の型を核型(カリオタイプ)といいます。
ヒトでは22本の常染色体と2本の性染色体(XXまたはXY)の合計46本です。

常染色体は大きい順に並べ、番号を付けます。

この記事の著者:仲田洋美
医籍登録番号 第371210号
日本内科学会 総合内科専門医 第7900号
日本臨床腫瘍学会 がん薬物療法専門医 第1000001号
臨床遺伝専門医制度委員会認定 臨床遺伝専門医 第755号

 

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