染色体とは?出生前診断のまえに知っておきたい13のポイント

染色体とは遺伝情報がコンパクトにつまった細胞の核内構造物で、この異常は赤ちゃんのダウン症候群などにつながります。出生前診断を受ける前に染色体について理解しましょう。

染色体とは?

染色体とは遺伝情報であるDNAが凝縮した構造体です。遺伝情報そのものですので、細胞が分裂するときにコピー間違いや分配ミスが起こるとダウン症候群などの疾患を発症します。
各細胞の核の中で、DNA分子は染色体と呼ばれる糸状の構造体になって存在しています。
染色体は、その構造を支えるヒストンと呼ばれるタンパク質を中心に、DNAが1.65回転巻きついたヌクレオソームを一つの単位としてできています。

1.染色体はどんな形をしているの?

染色体は、細胞が分裂していない状態では、細胞の核の中では顕微鏡でも見ることができません。しかし、染色体を構成するDNAは、細胞分裂の過程でより密に詰まった状態になり、顕微鏡で見ることができるようになります。
染色体の形状には円形と直線があり、核を持った細胞や真核生物の細胞は直線状の染色体を持ち、原核生物の細胞は通常円形の染色体を持っています。染色体は、真核細胞では核内にありますが、核の外であるミトコンドリアにもあり、こちらは丸い形をしています。
染色体についてわれわれがもっている知見のほとんどは、細胞分裂中の「見えるようになった」染色体を観察することによって得られたものです。
各染色体には、セントロメアと呼ばれる狭窄点があり、これが染色体を2つのセクション、つまり「腕」に分割しています。
染色体の短い腕は「短腕」と呼ばれています。
染色体の長い腕は「長腕」と呼ばれています。
各染色体上のセントロメアの位置は、染色体に特徴的な形を与え、特定の遺伝子の位置を説明するのに役立ちます。

テロメア
染色体にはセントロメアという中心があり、セントロメアをはさんで長い側を長腕、短い側を短腕という。短腕はフランス語のPettiからPと略し、長腕はQという略号を使います。どうしてQかというと、Pの次がQだからだそうです。

2.染色体はどんな物質からできているの?

染色体はDNAとヒストンタンと呼ばれるタンパクからできています。

DNAは、生命に不可欠なタンパク質の産生や細胞の営みを可能にし、世代から世代へと受け継がれていくために必須な遺伝物質です。DNA のすべての断片は、各細胞の発生、生殖、そして最終的には死に至るまでの指示を含む遺伝子配列で構成されています。

DNAは一本鎖のポリヌクレオチド鎖に分解され、メッセンジャーRNA(mRNA、リボ核酸)にコピーすることができる遺伝子配列を露出させます。このmRNAは、3つの異なる組み合わせで配置された4つのヌクレオチド塩基を持ち、DNAに似ています。リボソームはこれらの3塩基塩基配列を読み取り、それを翻訳してアミノ酸をつなぎ合わせてタンパクを形成していきます。
まず、アミノ酸はポリペプチド鎖と呼ばれる長い鎖を形成します。その後、この鎖は、タンパク質の最終的な複雑な構造が完成するまで、それ自体が折りたたまれたり糖鎖などで修飾されたりしながら、構造や機能が変化していきます。

また、染色体にはDNAに結合したタンパク質やヒストンも含まれており、DNAを強固にして安定化し、その機能を調節しています。
DNAとヒストン蛋白質は、染色体と呼ばれる構造体に詰め込まれています。

染色体の構造

3.染色体はどんな形をしているの?

基本的には、染色体は細胞分裂期のみにに観察される構造体をいいます。

染色体

染色体は二重らせん構造のDNAがヒストンと呼ばれるタンパクに146塩基対1.65回転、左巻きでまきついてできるヌクレオソームを最小単位としています。
DNAは酸性に荷電していて、ヒストンは塩基性に荷電しているため、この両者は電気的に親和性が高くなっています。
4種のコアヒストン(H2A, H2B, H3, H4)が2つずつ集まってヒストン8量体を形成します。ヌクレオソームとヌクレオソームの間には約50塩基対があり、このDNAはリンカーDNAとよばれ、ヒストンH1と呼ばれるリンカーヒストンが結合しています。
細胞の分裂期では、通常の顕微鏡(光学顕微鏡)で観察可能な棒状の構造体に凝縮します。染色体凝縮には、コンデンシン複合体やトポイソメラーゼ II などが別途関与します。
ヒストンについては関連記事をご覧ください:ヒストン

4.染色体はどんな風に誰が見つけたの?

細胞を顕微鏡で見る科学者たちが初めて染色体を観察したのは1800年代後半のことでした。しかし、当時は、これらの細胞構造の性質や機能については、はっきりとしたことはわかっていませんでした。

染色体は塩基性の色素(Gimsa)でよく染色されることから、
ギリシャ語 χρῶμα (chroma) 「色のついた」という意味のChromo- と
ギリシャ語の σῶμα (soma) 「体」という意味の -some を掛け合わせて
Chromosome と命名されました。
命名したのはヴィルヘルム・フォン・ヴァルデヤー(Heinrich Wilhelm Gottfried von Waldeyer-Hartz)、1888年です。

5.染色体はどんな働きをしているの?

染色体の独特な構造のため、DNAはヒストンと呼ばれるタンパク質にしっかりと巻き付いています。このような包装がなければ、DNA分子は長すぎて細胞内に収まりません。例えば、1つのヒトの細胞内のDNA分子をすべてヒストンから解きほぐして端から端まで配置した場合、その分子は約2メートルになります。

生物が成長して正常に機能するためには、細胞は常に分裂して、古くなって消耗した細胞に代わる新しい細胞を作らなければなりません。細胞分裂のときには、遺伝情報であるDNAが無傷のままで、細胞間に均等に分布する、つまりDNAが正確にコピーされて分配されることが不可欠です。染色体は、大部分の細胞分裂において、DNAが正確にコピーされ、分配されるようにするための重要な役割を果たしています。

6.染色体が異常になるとどうなるの?

まれに細胞分裂の際の遺伝情報のコピーや分配のミスが起こることがあります。
染色体が異常になると、なにがしかの疾患を発症することが多くなります。

新しい細胞で染色体の数や構造が変化すると、深刻な問題が発生することがあります。例えば、ヒトでは、ある種の白血病やその他の癌は、壊れた染色体が結合してできた欠陥染色体によって引き起こされます。

また、卵子や精子などの生殖細胞には、適切な数の染色体が存在し、それらの染色体が正しい構造を持っていることが重要です。そうでないと、生まれてくる子どもが正常な発育しない可能性があります。例えば、ダウン症の人は、他の人に見られる2本の染色体の代わりに、21番染色体の3本のコピーを持っています。
ダウン症の染色体検査結果
この写真は第21番染色体が3本あるダウン症の患者さんの染色体です。

7.染色体って生物はみんな一緒なの?

いえ。染色体の数や形は生物によって様々です。ほとんどの微生物は1本か2本の円形の染色体を持っています。核がない生物を原核生物と言います。
ヒトは、他の動物や植物と同様に、細胞の核の中に一対の直線状の染色体を持っています。この構造をもつ生物を真核生物と言います。
ヒトの細胞は通常、対になった染色体がある2倍体です。
対の染色体を持たない唯一のヒトの細胞は生殖細胞であり、生殖細胞は各染色体のコピーを1つだけ持っています。2つの生殖細胞が結合すると、それぞれの染色体のコピーを2つ持つ単一の細胞になります。その後、この細胞は分裂し、その後継細胞は何度も分裂を繰り返し、最終的には、実質的にすべての細胞でペアの染色体を持つ成熟した個体へと成長して誕生します。

8.核じゃないところにも染色体があるって本当?

はい。核にある直線状の染色体の他に、ヒトやその他の高等生物の細胞には、細菌に見られる染色体に似たはるかに小さなタイプの染色体があります。この円形の染色体はミトコンドリアにあり、核の外側にある構造物で、エネルギー産生をするため、細胞の動力源となっています。

科学者たちは、かつてミトコンドリアは酸素をエネルギーに変換する能力を持つ自由に生きているバクテリアだったと考えています。酸素の力を利用する力のない細胞に侵入した細菌がミトコンドリアを保持し、時間経過とともにいまのようなミトコンドリアへと進化したのではないかと考えられています。

遺伝性疾患のなかには、このミトコンドリアの遺伝子が異常になることで起こるものもあります。

9.染色体のセントロメアとは?

染色体は線状の構造物ですが、狭窄部があり、ここをセントロメアと呼んでいます。通常は染色体の中心に正確に位置しているわけではなく、場合によっては染色体のほぼ末端に位置しています。セントロメアの両側にある領域は、染色体の腕と呼ばれています。

セントロメアは、細胞分裂という複雑なプロセスの間、染色体を適切に整列させる働きをします。染色体が新しい細胞を作る準備のためにコピーされるとき、セントロメアは、姉妹染色体として知られているコピーされて2本ある染色体の2つの半分の付着部位としての役割を果たします。

10.染色体のテロメアとは?

染色体の末端部はテロメアと呼ばれる特有の構造をしています。テロメアとは、直線状の染色体の末端にあるDNAの反復的な伸張のことです。このテロメアは、先がほどけないように染色体の末端を保護しています。
多くの種類の細胞では、テロメアは細胞が分裂するたびにDNAの一部を失います。最終的にテロメアのDNAがすべてなくなると、細胞は複製ができなくなり、死んでしまいます。

白血球やその他の分裂能力の高い細胞は、染色体がテロメアを失うのを防ぐ特殊な酵素(テロメアを合成するのでテロメラーゼといいます)を持っています。白血球はテロメアを保持しているため、そのような細胞は一般的に他の細胞よりも長生きします。

テロメアはがんにも関係しています。悪性細胞の染色体は通常、テロメラーゼを獲得し、テロメアを失うことがなく、これががんの不死化、つまり制御不能な増殖の原因となっています。

テロメアが一定の長さを有さないときは染色体を合成することができませんので、新しい細胞を作れなくなり、生物は死滅します。なにも病気がないとすると、命の長さはテロメアが決めているということになります。

関連記事:テロメアについての詳細はこちらをご覧ください

11.ヒトの染色体の数とは?

人間の染色体は23対、合計46本です。
実は、動植物の種類ごとに染色体の数が決まっています。ネコは38対、犬は39対の染色体を持っています。

12.染色体はどうやって受け継がれるの?

ヒトや多くのの高等生物では、各染色体のコピーの1つは母親から、もう1つは父親から受け継がれます。このことは、子供がある種の形質を母親から、ある種の形質を父親から受け継ぐ理由を説明しています。

ミトコンドリアにある小さな円形の染色体では、遺伝のパターンが異なります。精子細胞ではなく卵子細胞だけが受精時にミトコンドリアを保持しています。精子細胞も稀にミトコンドリアを有することがあるのですが、多くても2-3個までです。つまり、ミトコンドリアのDNAは圧倒的に女性の親から遺伝するのです。ヒトでは、聴覚障害や糖尿病などのいくつかの疾患が、ミトコンドリアにあるDNAと関連していることがわかっています。

13.男性と女性は染色体が違うの?

はい、性染色体と呼ばれる一対の染色体の違いがあります。女性は2本のX染色体を持っていますが、男性は1本のX染色体と1本のY染色体を持っています。

性染色体のコピーが多すぎたり、少なすぎたりすると、疾患を引き起こす可能性があります。例えば、X染色体の余分なコピーを持っている女性は、通常、平均よりも背が高く、一部の人は精神遅滞を持っています。X染色体のコピーが2つ以上ある男性はクラインフェルター症候群となりますが、これは身長が低く、しばしば不妊症になることが特徴です。性染色体の数の不均衡(異常)によって引き起こされるもう一つの症候群は、ターナー症候群です。ターナー症候群の女性は、X染色体が1本しかありません。非常に背が低く、通常、思春期を受けていないといくつかの腎臓や心臓の問題を持っている可能性があります。

まとめ

中学・高校で染色体とかDNAとか聞いたことがあっても、なかなかその働きを理解して、異常になると病気になるのだということがわかりにくいのではないかと思います。
皆さんが習ったメンデル遺伝はエンドウ豆の色とかで、そういう遺伝情報が染色体に乗っているということくらいしか教わりませんので。
妊娠して、赤ちゃんの健康状態を知りたい、と出生前診断を検討して初めて、染色体という言葉と病気が結びついて驚かれたり、染色体異常と病気が結びつかなくて理解できない方々も多いと思います。

ミネルバクリニックでは、臨床遺伝専門医の院長が遺伝カウンセリングを行っており、皆様方にしっかりとご理解いただいたうえで出生前診断に臨んでいただけるようにと頑張っております。
この機会にぜひ、ミネルバクリニックにご相談ください。

この記事の著者:仲田洋美医師
医籍登録番号 第371210号
日本内科学会 総合内科専門医 第7900号
日本臨床腫瘍学会 がん薬物療法専門医 第1000001号
臨床遺伝専門医制度委員会認定 臨床遺伝専門医 第755号