ダウン症候群の原因は染色体が増えて遺伝子の量が変わってしまうから

ダウン症候群は21番染色体が3本になる21トリソミーで起こります。遺伝子の量が変わってしまい、産生されるタンパクの量が変わることが原因で疾患が発症すると考えられています。

どうして染色体が3本になると人間は疾患になるのか?染色体異常で気になる遺伝子量とは?

東京でNIPT他の遺伝子検査を提供しているミネルバクリニックです。NIPTなどの遺伝子検査や遺伝性疾患を理解するためには、基礎的なヒトゲノムや染色体の構造についての理解が必要となってきます。このページでは、染色体異常が表現型(ダウン症などの疾患)につながる機序についてお書きしています。遺伝子の量が変わってしまい、産生されるタンパクの量が変わるためと考えられています。

染色体疾患の発症メカニズムは遺伝子の量が変わってしまうこと

染色体・ゲノム疾患は何を反映して異常な表現型となっているのかというと、遺伝子発現の量です。

これに対して遺伝子の一塩基置換や欠失・重複により疾患を発症(表現型)する単一遺伝子疾患は、遺伝子の質的側面が反映されています。すなわち、遺伝子が読み取られて翻訳されてできるタンパクの機能が不全となったリ過剰となったりして表現型に結びついています。

特定の染色体異常においては、異常により不均衡(足らないもしくは増える)となったゲノム部分、つまり異常な部分に含まれる遺伝子の種類、そしてその異常により影響を受ける遺伝子、その異常が次世代に伝達される可能性、といった要因がその臨床的な重要性を決定しています。

染色体・ゲノム疾患について考えるうえで中心となる概念は遺伝子量(gene dosage)と、その均衡/不均衡です。

染色体異常では基本的に問題の染色体領域内の遺伝子の塩基配列が正常か異常かよりも、遺伝子量が問題となります。

染色体が一本増えるだけではその染色体に含まれる遺伝子たちの塩基配列には問題はないですよね?
遺伝子量が異常である点を除けば、問題はありません。

ヒトゲノムにあるほとんどの遺伝子は2コピー(二つ。父と母からそれぞれ1つずつコピーをもらいます。)あり、その両方から発現しています。

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けれども一部の遺伝子は一方のコピーからしか発現しません。たとえば、インプリンティング遺伝子やX不活化が影響するX連鎮遺伝子が該当します。

臨床症例の広範な解析により、正常な発達にはこれらの遺伝子の相対量がきわめて重要であることが明らかとなってきました。
通常2コピーの遺伝子が発現している遺伝子たちは、lコピーあるいは3コピーの遺伝子から発現すると、正常に機能しなくなってしまうのです。
同様に、ゲノムインプリンティングやX不活化の異常で1コピーでなく2コピーの遺伝子たちが発現異常をきたすと、必ず臨床的障害が生じることになります。

遺伝カウンセリングにおいて、特に出生前の状況では、染色体・ゲノム疾患の臨床的転帰の予測は非常に難しいものです。

各種の染色体異常を診察する際に留意すべき一般原則

生産児における不均衡型の染色体・ゲノム異常:遺伝カウンセリングのための一般的原則としては以下のことがあげられます。
1.モノソミーはトリソミーと比べてより重症となる。
完全なモノソミーは、X染色体モノソミーを除き通常は生きて産まれることはありません。
2.完全なトリソミーは、13番、18番、21番、X、Y染色体なら生きて産まれうる。
染色体トリソミーの重症度と最も相関するのはその遺伝子の中に含まれる遺伝子の数です。X染色体自体は大きな染色体ですが、もともと2本あるうちの1本が不活化されているくらいなので、3本になったところで大きな影響はありません。

3.部分的な異数性の表現型は、
不均衡型断片の大きさ
どのゲノム領域が影響を受けていているのか
どの遺伝子が関与しているか
不均衡はモノソミーかトリソミーか
といった要因に左右されます。

4.逆位症例のリスクはセントロメアに対する逆位の場所と逆位断片のサイズによります。
セントロメアが関与しない逆位(腕内逆位)では、次世代に異常な表現型を有する児が産まれるリスクは非常に低いものです。これに対してセントロメアを挟む逆位(腕間逆位)では先天異常のある子孫が生まれるリスクがあり、逆位断片の大きさとともにリスクは高まります。
5.染色体異常を伴うモザイク核型の表現型を予測するのは困難です。
通常関連する組織のモザイクの程度や関連する発生段階は分からないため、表現型の重症度を判断することは困難であり、遥伝カウンセリングでは特に留意すべきです。

部分的な異数性の表現型 を強調してあるのは、最近、7Mbで全部の染色体領域をみれます、という検査ができるようになったためです。
検査できるようになったのはよろしいのですが、解釈は専門家でも難しいのです。
したがって、専門外の医師による検査を受けた場合、今まで以上の大混乱となるでしょう。

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この記事の筆者

1995年医師免許取得。血液・呼吸器・感染症内科を経て、臓器別・疾患別の縦割りの医療の在り方に疑問を感じ、人を人として”全人的”に診療したいという思いを強くし、臓器を網羅した横断的専門医となり、2010年にがん薬物療法専門医取得(2019年現在全国1200人程度)。臓器を網羅すると遺伝性がんへの対策が必要と気づき、2011年に臨床遺伝専門医取得(2019年現在全国1000人程度)。遺伝相談はセンシティブな分野にもかかわらず、昼間の短い時間しか対応できない大病院のありかたに疑問を感じて、もっと必要な人がハードルを感じずに診療を受けられるようにしたいと2014年12月に開業。以来、全国から大学病院でも難しい内容の対応を求める人々を受け入れ、よろづお悩み相談所として多くの人々の様々な”家族(計画)の問題”を改善に導く。

著書に”女性のがんの本当の話”(ワニブックス)、”遺伝するがん・しないがん”(法研)がある。
少ない専門家で、正直で嘘のない言葉選びから週刊誌等の取材も多く、医療系の特集に時折コメントが掲載。(週刊現代、週刊ポスト、週刊新潮など)。
テレビ出演も時々あり、小林真央さんの病状を市川海老蔵さんが初めて記者会見した日、フジテレビの午後4時台のニュース番組に生出演して解説。その他TBS, AbemaTVなど出演。

一人一人の事情に合わせた個別対応をするべく、しっかり時間を取って本当のニーズは何かを聞き取りすることを大切にしている。短い時間でもお互いが出会ったことが相手の人生に大きな意味があるような医師患者関係の構築を理想として日々精進。

患者さんが抱えている問題を解決するにはどうしたらよいのかを考えて医師歴8年目に法学部に学士入学した程度に”凝り性”。女医が少なかった時代に3人の母親として難関専門医を3つ取得して社会進出を続けた経験から、女性のライフスタイルを医学以外の部分でも支援したいと願っている。
いろんな人生経験から心に響く言葉を投げかけるため、”会うと元気になる”ということで有名。飼いネコ3匹。

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