染色体異常の種類
染色体異常の種類とは?
東京でNIPT他の遺伝子検査を提供しているミネルバクリニックです。NIPTなどの遺伝子検査や遺伝性疾患を理解するためには、基礎的なヒトゲノムや染色体の構造についての理解が必要となってきます。このページでは、染色体異常の種類(数的異常と構造的異常)と、正常異常含めた染色体核型の表記方法について記載しています。
数的異常と構造異常
染色体異常には本数の異常(数的異常。異数性ともいいます。)と、染色体の構造の異常(構造異常)があります。
1つまたは複数の常染色体・性染色体が同時に関与していることがあります。
この図は1988年Johns Hopkins大学出版のGenetic disorders and the fetus 第4版に掲載されている内容です。
68000人以上の新生児を染色体検査でスクリーニングした結果、全体としての染色体異常は154人に一人、異数性異常は263人に一人、構造異常が375人に一人となっています。
しかし、これは1988年のものなので、現在では女性の社会進出による母体の高齢化で、染色体異常は100人に一人と増加しています。
全染色体異常の頻度は生産児100人あたり1人程度であるため、その影響は臨床医学・社会ともに大変大きいものです。
臨床上重要な染色体異常のなかで最も一般的なのは染色体数が多かったり少なかったりするという染色体の数の異常で、異数性(aneuploidy)と呼ばれます。
異数性染色体異常は常に、身体的異常か精神発達異常あるいはその両方を伴います。
異数性染色体異常の重症度は当該染色体に含まれる遺伝子の数と相関していて、一番少ないのは21番染色体(337)、ついで18染色体(400)、13染色体(496)となっています。
21トリソミーが異数性の中の53%を占めています。
が、その他の染色体異常で47%を占めています。
1つ以上の染色体が関与する再構成である構造異常も比較的頻度が高いものです。異数性:構造異常=3:2 と概算可能ですので。
再構成によりゲノム量の不均衡が生じるか否かによって、表現型に影響が出ることもあれば出ないこともあります。
ゲノム量の不均衡がなくて表現型に問題がないものを均衡型染色体構造異常といいますが、たとえそうであっても、次世代に異常のある子が生まれるリスクが高くなる可能性があります。
染色体異常(核型)の記載方法
染色体異常は、標準的な略語と用語で表記されます。
46,XX 正常女性核型
46,XY 正常男性核型
cen セントロメア centromere
del 欠失 deletion 46,XX,del(5) (q13) 1本の5番染色体の短腕の端部からq13までが端部欠失した女性
( ) 内は染色体番号。
der 派生染色体 derivative chromosome ひとつの染色体の複数の再構成、即ち逆位と欠失、両腕の欠失、または(2) 複数の染色体の再構成、即ち不均衡型転座産物を派生染色体(der)と呼び、セントロメア(cen)またはネオセントロメア(neo)を持ちます。
der(1) 1番染色体のセントロメアを含む 1番染色体に由来する構造異常染色体
der(1)t(1;3)(p32;q21)t(1;11)(q25;q13) 1p32 と 3q21 の転座と 1q25 と 11q13 の転座から生じた派生 1 番染色体。
dic 二動原体染色体 dicentric chromosome dic(X;Y) x染色体およびY染色体の両方のセントロメアを含む二動原体染色体
dup 重複 dupliction
inv 逆位(inversion) inv(3) (p25q21) 3番染色体の腕間逆位
mar マーカー染色体 marker chromosome 47,XX,+mar 過剰な未同定の染色体を有する女性
mat 母由来 maternal origin 47,XY, +der(1)mat 母から受け継いだ派生1番染色体を過剰に有する男性
p 染色体短腕 pettiに由来します
pat 父由来 paternal origin
46,XX,t(5;6)(q34;q23)mat, inv(14)(q12q31)pat 母由来(mat)の t(5;6)転座と父由来(pat)の inv(14)逆位。
q 染色体長腕
r 環状染色体 ring chromosome 46,X,r(X) 1本のX染色体が環状X染色体になっている女性
rob Robertson(型)転座 rob(14;21)(q10;q10) 14番と21番染色体がそれぞれセントロメア領域(14q10と21q10)で切断されそれぞれの長腕同士が再結合したRobertson転座。セントロメアが切断点と推定され、長腕側が残った染色体の切断点として利用される場合q10と表記。短腕側が残った場合はp10と表記。
t 転座 translocation 46,XX,1(2;8)(q22;p21) 2q22と8p21を切断点とする2番染色体と8番染色体間の 均衡型転座の女性
( ; ) 二つの染色体が関与していることを意味しています。
性染色体、次いで番号の低い染色体を先に書きます。
t(2;7;5) 三つの染色体の関与する転座をあらわします。
番号の低い染色体を最初に書き、その染色体から断片が転座する染色体を次に、
最初の染色体に転座断片を供与する染色体を最後に書きます。
+ ~の増加 47,XX,+21 21 トリソミーの女性
― ~の欠如 45,XX,-22 22モノソミーの女性(常染色体のモノソミーは生きて生まれる、つまり生産できません)
/ モザイク 47,XX,+21/46,XX 21 トリソミーと正常核型の2つの細胞集団をモザイクで有する女性
4p+ 5q− +がついている腕は普通より長く、−がついている腕は短いことを意味します。
mos 45,X[15]/47,XXX[30]/46,XX[50] 45,X が 15 細胞、47,XXX が 30 細胞、46,XX が 50 細胞のモザイク。 [ ]は分析した細胞数。
46,XY,t(12;16)(q13;p11.1)
46,X,t(X;18)(p11.1;q11.1)
ふたつの染色体のそれぞれ一箇所に切断点があるときは、番号の若い方の染色体を先に書きます。性染色体と常染色体とでは性染色体を先に書きます。
46,X,ins(5;X)(p14;q21q25)
染色体の一部が他の染色体に挿入(ins)しているときは、受容染色体を先に、ドナー染色体を後に書きます。 5p14 に Xq21 から Xq25 までの断片が順位で挿入。
46,XX,ins(2)(q13p13p23) 2q13 に 2p13 から 2p23 までの断片が順位で挿入。
46,XX,ins(2)(q13p23p13) 逆位で挿入。
46,XX,t(9;22;17)(q34;q11.2;q22) 9q34 から先の断片が 22q11.2 の切断点に転座し、22q11.2 から先の断片が 17q22 の切断点に転座、17q22 から先の断片が 9q34 の切断点に転座。
46,Y,t(X;15;18)(p11.1;p11.1;q11.1) Xp11.1 から先の断片が 15p11.1 の切断点に転座、15p11.1 から先の断片が 18q11.1 の切 断点に転座、18q11.1 から先の断片が Xp11.1 の切断点に転座。