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ターナー症候群とは?原因・症状・知的障害・寿命の不安に臨床遺伝専門医が答えます

目次

仲田洋美 医師

この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

記事の作り方(編集方針)

ターナー症候群とは、女性の2本あるX染色体のうち1本が完全に、または部分的に失われていることで起こる状態で、女児の出生およそ2,000人に1人にみられます[1]。低身長と卵巣機能の低下が中心となりますが、あらわれ方の幅はとても広く、知的障害を伴うのは約10%で、知的障害を前提とする状態ではありません[4]。この記事では、検索して不安になっている方がいちばん知りたい「知的障害は?」「いつわかるの?」「寿命は?」「妊娠は?」に、臨床遺伝専門医が2026年の「ターナー症候群 診療の手引き」と原著論文にもとづいて順番にお答えします。

⏱️ 30秒でわかる要約

🧬 Q. ターナー症候群とは?

女性の2本あるX染色体のうち1本の全部または一部が失われている状態です。女児の出生およそ2,000人に1人にみられ、ほぼ全員にみられるのは成長障害(低身長)、多くの方にみられるのが卵巣の働きの低下です。男の子には起こりません。

🧠 Q. 知的障害や発達障害はありますか?

知的障害を伴うのは約10%で、多くの方は知的発達が正常範囲です。ただし知的障害がなくても、図形・地図・算数・段取りが苦手になりやすい非言語性の学習の苦手さがみられることがあり、「知能は正常」だけでは説明が足りません。

⏰ Q. いつわかりますか?

デンマークの全国調査では、診断された年齢の中央値は15.1歳で、成人してから診断された方が38.5%でした。妊娠中のエコーやNIPT、成長曲線からの外れ、思春期の無月経などがきっかけになります。

🩸 Q. NIPTで調べられますか?陽性ならどうなりますか?

単胎の妊娠なら、当院のスタンダード・プレミアム・ダイヤモンド・インペリアルプランで調べられます。ただしモノソミーX陽性の陽性的中率は約32%で、陽性でも約7割は赤ちゃんに変化がありません。当院では確定検査(羊水検査・絨毛検査)まで院内で受けられます。

🧩 Q. NIPTで自閉症や発達障害の原因もわかりますか?

一部はわかります。当院のNIPTは、22q11.2欠失症候群やアンジェルマン症候群などの微小欠失を全プランで調べられ、自閉症・発達障害・知的障害の原因になる変化の一部を見つけられます。陰性でも、自閉症・発達障害がないとは言えません。

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ターナー症候群とは ― 女児2,000人に1人にみられる、X染色体の変化

女性の細胞には、通常性染色体のX染色体が2本あります。ターナー症候群は、この2本目のX染色体が丸ごと、あるいは一部だけ失われている状態です。X染色体の上には、身長の伸びにかかわる遺伝子、リンパ管の発生にかかわる遺伝子、卵巣の働きにかかわる遺伝子などが並んでいます。その一部が足りなくなることで、低身長や卵巣機能の低下といった特徴があらわれます[1]。

頻度は女児の出生およそ2,000人に1人で、染色体の病気としてまれなものではありません[1]。国際ガイドラインでも、女性10万人あたり25〜50人(2,000〜4,000人に1人)と示されています[2]。そして大切なのは、同じ「ターナー症候群」でも、症状の出方は人によってまったく違うということです。ほとんど気づかれずに大人になる方もいれば、生まれてすぐに指摘される方もいらっしゃいます。

💡 用語解説:モノソミーX(45,X)

モノソミー…本来2本あるはずの染色体が1本しかない状態のことです。ターナー症候群でもっとも多い核型は、X染色体が1本だけの45,Xで、これをモノソミーXと呼びます。数字の45は、体細胞の染色体の合計本数(通常は46本)を表しています。言葉としてはモノソミーや核型、染色体の数的異常もあわせてご覧いただくと、検査結果の紙に書かれた記号が読めるようになります。

「病気」ではなく「体質」と考える立場もあります

ターナー症候群は、進行したり悪化したりする病気ではありません。生まれ持った染色体の構成であり、必要な医療的フォローを受けながら、進学し、就労し、自立した生活を送っている方が多くいます。医療者のなかには、これを「疾患」ではなく「体質」ととらえ、「ターナー女性」と呼ぶ考え方をとる方もいます。

ただし、体質と呼べるからといって放っておいてよいわけではありません。見つけて管理すれば対応できるリスクが、いくつもはっきり分かっているのがこの領域の特徴です。だからこそ「正しく知ること」に意味があります。

原因は何か ― 「私のせい?」「次の子も?」にお答えします

診断を受けたご家族がまず知りたいのが、この点ではないでしょうか。結論からお伝えします。大多数のターナー症候群は、卵子や精子がつくられる過程、あるいは受精卵が分裂していく過程で偶然に起こります。妊娠前の生活習慣も、妊娠中の仕事も食事も、原因ではありません。

この「偶然」の正体は、不分離(ふぶんり)などと呼ばれる、細胞分裂のときの染色体の分かれ損ないです。細胞が分裂するとき、染色体は2つの細胞へ均等に分かれていきます。ところが何らかのはずみでうまく分かれず、X染色体が1本足りない細胞ができてしまうことがあります。ダウン症候群など他の染色体の数の変化と同じく、どなたにでも起こりうる自然現象です。

🔬 用語解説:不分離(ふぶんり)

不分離…細胞分裂のときに、対になっている染色体がきれいに2つに分かれない現象です。結果として、染色体が1本多い細胞や1本少ない細胞ができます。

「お母さんのせい?」「お父さんのせい?」

45,Xの赤ちゃん16人の家族を調べた研究では、残っていたX染色体はすべてお母さん由来で、お父さん由来の性染色体(XまたはY)が受精のころまでに失われていたと報告されています[15]。ただしこれは、お父さんの体質や生活に原因があるという意味ではありません。同じ研究(34家族)では、両親の年齢との関連も認められませんでした[15]。小規模な研究ですが、「どちらかの親のせい」と考える根拠はない、というのが医学的な見方です。

「ターナー症候群は遺伝しない」と言い切るのは、正確ではありません

ここは誤解の多いところなので、はっきりお伝えします。2026年に公表された日本語の「ターナー症候群 診療の手引き」では、最初のクリニカルクエスチョン(CQ1)として「家族性ターナー症候群は、存在する」ことが、もっとも強い推奨度(推奨度1・エビデンスレベルA)で示されています[1]。

整理すると、こうなります。もっとも多い45,X(モノソミーX)は偶発的に起こるもので、次のお子さんで繰り返す可能性は一般の方と大きく変わりません。一方で、X染色体の一部が欠けている・形が変わっているタイプ(構造異常型)では、自然に月経があり妊娠できる方の場合、母から娘へ受け継がれることがあります[1]。ですから「絶対に遺伝しません」ではなく、「核型によります。お子さんの核型を確認すれば答えが出ます」が正しい答えになります。

💡 ここが大事です

次のお子さんのことが気がかりな方は、お子さんの核型(45,Xなのか、構造異常型なのか)をご確認ください。答えはそこにあります。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「お母さんのせいではありません」と言い切れる理由】

診断のあと、「あのとき薬を飲んだから」「仕事を続けたから」と、ご自分の妊娠中を振り返って責めてしまうお母さんは少なくないと思います。医学的には、そのどれも原因ではありません。染色体が分かれ損なう瞬間は、受精のはるか手前か、受精直後に起きています。誰にも止めようがなく、誰にも予測できません。

それでも自分を責めてしまうのは、お子さんを大切に思っておられるからだと考えています。だからこそ原因の説明は、「事実の説明」で終わらせず、責める理由がないことを根拠とともにお伝えすることが大切だと考えています。

その一方で、「絶対に遺伝しません」という言い切りはしません。構造異常型では母から娘へ伝わることがあるからです。安心していただきたい気持ちで事実を丸めてしまうと、次のお子さんを考えるときに困るのはご家族です。安心は、正確さの上にしか置けないと考えています。

核型のタイプ ― 同じ診断名でも、中身はかなり違います

ターナー症候群を理解するうえで、いちばんの近道が核型(染色体のタイプ)を知ることです。将来の見通しも、必要なフォローも、ここで大きく変わります。国際ガイドラインがまとめた核型ごとの割合は次のとおりです[2]。

🧬 ターナー症候群の主な核型

タイプ 核型の書き方 おさえておきたいこと
古典型(40〜50%) 45,X 低身長と卵巣機能の低下が出やすく、身体所見も目立ちやすい
モザイク型(45,X/46,XXが15〜25%、45,X/47,XXXが3%) 45,X/46,XX など 所見が目立ちにくいことが多く、自然な二次性徴や妊娠の可能性が残ることも
構造異常型(i(Xq)などで約15%) 46,X,i(Xq) など 欠けている場所によって症状が変わる。母から娘へ伝わることがある
Y染色体を含む型(10〜12%) 45,X/46,XY など 性腺腫瘍のリスク評価が必須。見つけて対応できる領域

出典:Gravholtら(Eur J Endocrinol, 2024)Table 1[2]。環状X染色体などはまれです。成長ホルモン治療を受けた日本人成人492人の調査では、45,Xは28.9%でした[6](対象の選び方で割合は変わります)。

モザイク型とは ― 体のなかで細胞が混ざっている状態

モザイク型は、体のなかに「45,Xの細胞」と「46,XXの細胞」が混ざっている状態です。46,XXの細胞の割合が高いほど所見は目立ちにくく、周囲に気づかれないまま成人される方もいらっしゃいます。日本の成人当事者を対象とした調査では、自然に初経が来た方は22.0%で、45,X/46,XXの核型では35.7%と最も高い割合でした[3]。

注意していただきたいのは、混ざり具合は組織によって違うということです。血液で調べた割合が、卵巣や皮膚での割合と同じとは限りません。血液の検査だけでは全体像がつかみにくいのは、このためです。

Y染色体が含まれるときは、必ず確認していただきたいことがあります

45,X/46,XYのようにY染色体の成分を持つ核型では、発育の不十分な性腺に性腺芽腫(ゴナドブラストーマ)という腫瘍が生じることがあります。診療の手引きでは、その発症率は約1%程度とされ、男性化などの症状がなければ、通常のG分染法による染色体検査で十分であること(遺伝子レベルの検索はかえって過剰診断になりうること)も示されています[1]。

⚠️ 大切なこと

これは「怖い話」ではなく、確認さえすれば手を打てる話です。核型にYの成分が含まれるかどうかを、まず主治医にご確認ください。

症状と身体的特徴 ― 頻度の数字で見ると印象が変わります

インターネットで検索すると、翼状頸や低位耳といった言葉が並び、「うちの子に全部当てはまるのでは」と不安になる方が少なくありません。ですが、実際の頻度を並べてみると、その多くは「全員にあるもの」ではないことが分かります。

ターナー症候群の身体的特徴(翼状頸・内眼角贅皮・低位耳・後頭部毛髪線の低位など)を示した図

📋 主な身体所見とみられる割合

所見 みられる割合
成長障害(低身長) 95〜100%
中耳炎 60%
小顎症(あごが小さい) 60%
翼状頸 40%
後頭部の毛髪線が低い 40%
第4中手骨が短い 35%
盾状胸(胸が平たく広い) 30%
手足のリンパ浮腫 25%
色素性母斑(ほくろが多い) 25%
内眼角贅皮 20%
耳介の変形 15%
眼瞼下垂(まぶたが下がる) 10%

出典:日本小児内分泌学会「移行期医療支援ガイド ターナー症候群」表1(国際ガイドラインからの抜粋改変)[4]。

数字にすると、印象がずいぶん変わるのではないでしょうか[4]。ほぼ全員に共通するのは成長障害(低身長)だけで、顔や首の所見はいずれも「あることもある」という頻度です。もっともよく知られている翼状頸でも10人に4人ほど、内眼角贅皮は5人に1人、眼瞼下垂は10人に1人にとどまります。治療を受けていない日本人成人の平均身長は141.2±5.6cmと報告されています[4](成長ホルモン治療後の身長は治療の章で紹介します)。

翼状頸(よくじょうけい)とは何か、なぜできるのか

首の両側から肩にかけて皮膚がたるみ、首が短く太く見える状態を翼状頸(よくじょうけい)と呼びます。英語ではwebbed neck、「翼状頚」と書かれることもあります。

頻度は約40%で、ターナー症候群の方みなさんにみられるわけではありません[4]。これは皮膚だけの問題ではなく、おなかの中にいた時期のリンパ管の育ち方に由来します。胎児期に首の後ろへリンパ液が溜まる嚢胞性ヒグローマ(胎児リンパ管腫)が生じ、それが吸収されたあとに皮膚のたるみとして残ったもの、と考えられています。手足の甲がぷっくりむくむリンパ浮腫も同じ理由で、新生児期に目立ちます。

知的障害はあるのか ― 「知能は正常」だけでは足りません

まず結論です。ターナー症候群は、知的障害を前提とする状態ではありません。知的障害を伴うのは約10%とされています[4]。多くの方は一般的な学校生活を送り、進学し、仕事に就いておられます。

ただし、ここで話を終えてしまう解説が多いのですが、それでは不十分だと考えています。知的障害がなくても、「特異的(非言語的)学習障害」と呼ばれる特性が、ターナー症候群でみられやすい特徴の一つとして挙げられているからです[4]。

🧠 用語解説:非言語性学習障害(NVLD)

非言語性学習障害…言葉の理解や読み書きは得意なのに、図形・地図・空間の把握、算数、段取りを立てることが苦手になりやすい特性のことです。知的な発達そのものは正常範囲です。「話すとしっかりしているのに、算数だけどうしてもできない」「片づけや時間の見積もりが苦手」といった形であらわれます。怠けでも努力不足でもありません。言葉で手順を説明する、地図ではなく文章で道順を伝える、といった工夫が助けになります。

なお、環状X染色体という特殊な核型では、知的発達の遅れを認めることが多いとされています[4]。ここでも、核型を知っていることが見通しの助けになります。

「性格」についてもよく検索されますが、ターナー症候群だから決まった性格になる、ということはありません。まじめで穏やかな方が多いという記述を見かけますが、医学的な根拠のある特徴とは言えません。性格は、その方の育ちと環境と経験でつくられます。

いつわかるのか ― 診断が見つかる年齢の中央値は15歳前後

「ターナー症候群はいつわかるのですか」という疑問には、少し驚かれる答えをお伝えすることになります。デンマークの全国規模の調査では、診断された年齢の中央値は15.1歳、成人になってから診断された方が38.5%を占めていました[5]。1歳未満で診断されたのは14.9%にとどまります[5]。生まれてすぐ分かるものだと思われがちですが、実際には思春期以降にずれ込むことが少なくないのです。

⏰ 見つかるきっかけは、大きく5つ

① 妊娠中…エコーで首の後ろのむくみ(NT)や嚢胞性ヒグローマ、胎児水腫を指摘される。あるいはNIPTで指摘される。
② 新生児期…手足の甲のむくみ、翼状頸、心臓の雑音などから疑われる。
③ 幼児期〜学童期…成長曲線から少しずつ下に外れていくことで気づかれる。
④ 思春期…胸が膨らまない、月経が来ない(原発性無月経)ことをきっかけに受診して判明する。
⑤ 成人期…不妊の検査や、早発卵巣不全(POI)の精査の途中ではじめて診断される方もいらっしゃいます。

早発卵巣不全の原因は染色体だけではなく、脆弱X症候群の原因遺伝子(FMR1)の変化などもあります。FMR1の変化を親が持っているかどうかは保因者検査で調べられ、当院ではファミリーセーフティ プラス(NIPTと同時に行うカップルの保因者検査。女性787遺伝子・男性714遺伝子、NIPTと同じ日に採血でき、単独では受けられません)で調べられます。

診断を確定させる検査は、染色体検査(Gバンド法)です。採血で行います。モザイクを見落とさないために、20個ではなく30個の細胞を数えるほうがよいとされています[4]。割合の低いモザイクを疑うときは100個の細胞を用いるFISH法やマイクロアレイCGH法が有用で、血液以外の組織(頬粘膜など)で調べることもあります[4]。

💡 ここが大事です

低身長の検査で「ホルモンは正常でした」と言われても、それでターナー症候群が否定されたわけではありません。確認できるのは染色体検査です。低身長の遺伝学的な評価もあわせてご覧ください。

合併症と定期フォロー ― 日本人当事者492人のデータから

合併症の話は不安をあおるために書くのではありません。逆です。何を、いつ、どのくらいの間隔で診ておけばよいかが分かっている——それがターナー症候群の見通しを変えてきました。

成長ホルモン治療を受けた17〜42歳の日本人当事者492人を対象にした調査では、合併症の頻度は次のように報告されています[6]。

🩺 日本人成人当事者の主な合併症

合併症 頻度 確認の方法
骨密度の低下(骨減少症を含む) 42.9% 骨密度測定。ホルモン補充の中止後はとくに注意
慢性甲状腺炎(橋本病) 25.2% 血液検査
先天性の心血管の異常 11.8% 心エコー・胸部MRI。もっとも重要な項目です
尿路の形の異常 11.8% 腹部超音波。症状がないまま見つかることが多い
側弯(背骨の曲がり) 8.4% 成長期の整形外科的なチェック
難聴 6.2% 聴力検査

出典:Hanewら(Endocr J, 2018)[6]。骨密度の注意点は診療の手引き[1]。

この調査では、大動脈二尖弁は1.2%、大動脈縮窄は2.8%でした。論文の考察では、欧米の報告(大動脈縮窄6.9〜9%、大動脈二尖弁12〜21%)を大きく下回ると述べられています[6]。差の理由は論文では示されていませんが、臨床遺伝専門医としては、心臓や大動脈の画像評価を十分に受けていない方がいる可能性も考えておくべきだと考えています。一度も心エコーや胸部の画像評価を受けたことがなければ、主治医に相談できることです。

治療 ― 成長ホルモンと女性ホルモン、2本の柱

ターナー症候群の治療は「染色体を治す」ものではなく、足りないものを補って、その方の人生を支えるためのものです。柱は2つあります。

成長ホルモン療法 ― 開始はおおむね2〜4歳から

診療の手引きでは、成長ホルモン治療はなるべく早期に(おおむね2〜4歳)開始することが最終身長の見通しを改善するとされています[1]。毎日ご自宅で行う皮下注射です。治療は小児慢性特定疾病の医療費助成の対象になりますが、成長ホルモン治療には別に定められた基準を満たす必要があります[1][4]。

「最終的な身長はどのくらいになるのか」もよく調べられています。治療を受けていない日本人成人の平均身長は141.2±5.6cmです[4]。国内の1施設で成長ホルモン治療を受けて最終身長に達した24人の報告では、平均146.9±4.2cmで、治療前の予測身長より平均7.5cm高くなっていました[14]。ただし2000年の小規模な報告で、今の治療の開始年齢とは条件が違うため、目安としてお読みください。

女性ホルモン補充療法(HRT)― 日本と国際ガイドラインで開始時期の考え方が違います

卵巣の働きが弱いため、多くの方で二次性徴が自然には進みません。そこでエストロゲンを少量から補充し、少しずつ増やしていきます。ここで知っておいていただきたいのが、日本のプロトコルと国際ガイドラインで、開始のタイミングの考え方が違うことです。

💊 ホルモン補充の開始時期

日本の推奨プロトコル…12歳以降、遅くとも15歳までに、身長140cmに達した時点で開始。エストロゲン製剤は少量で始め、6〜12か月間隔で増やしていきます[1]。
国際ガイドライン(2024年)…卵巣の働きの低下(FSHの上昇)が確認されれば、11〜12歳で低用量のエストロゲンを始めることを推奨しています。剤形は、できれば経皮エストラジオール(貼り薬・塗り薬)、次に飲み薬のエストラジオールを提案し、エチニルエストラジオールは「リスクは多いが、治療しないよりはよい」という位置づけです[2]。
2026年の日本の手引きでも、11〜12歳までに開始することが妥当とするクリニカルクエスチョンが示されています[1]。身長を優先するか、思春期のタイミングを同年代にそろえることを優先するかという考え方の違いで、主治医と相談して決める余地があるということを知っておいていただければと思います。

ホルモン補充は見た目のためだけの治療ではありません。骨密度の低下が42.9%にみられたことを思い出してください[6]。診療の手引きでも、ホルモン補充を中止したあとは骨密度にとくに注意が必要とされています[1]。移行期医療支援ガイドでも、思春期を過ぎてホルモン補充が不要な時期があっても、成人期に必要になることがあるため、定期的な受診が必要とされています[4]。

月経・性生活・妊娠 ― 聞きにくいことにお答えします

人には聞きにくく、けれど検索ではとてもよく調べられているテーマです。当事者の方も、ご家族も、知っておいてよいことですので、そのままお答えします。

月経は来るのか

自然に二次性徴が始まる方は約30%、自然に初経が来る方は約20%と報告されています[4]。日本の成人当事者の調査では、自然な初経は22.0%で、45,X/46,XXのモザイク型で多くみられました[3]。自然に来なかった場合も、ホルモン補充によって月経を起こすこと(カウフマン療法)ができます。

性生活はふつうに送れるのか

はい、送れます。ターナー症候群では、子宮も腟も備わっています。性交そのものを妨げる構造的な問題はありません。ただし、エストロゲンが不足したままだと腟や外陰の粘膜が薄く乾きやすくなり、痛みの原因になることがあります。これはホルモン補充が十分かどうかの問題であって、体質の限界ではありません。痛みがあるときは我慢せず、婦人科でご相談ください。

妊娠はできるのか

正直にお伝えします。移行期医療支援ガイドでは、最終的には約95%の方が不妊となり、自然妊娠率は海外の報告で2〜7%とされています[4]。卵巣予備能の低下が早くから進むためで、モザイク型では可能性が残りやすい傾向があります[4]。

ご自身の卵子での妊娠が難しい場合でも、卵子提供による体外受精で出産されている方がいらっしゃいます。子宮はホルモン補充で妊娠できる状態に整えられるからです。なお、卵子提供は日本では法的に確立していません[4]。

⚠️ 妊娠を考えるときの最重要事項

妊娠中は心臓と血管に大きな負担がかかり、大動脈解離のリスクが問題になります。国際ガイドラインでは、妊娠や生殖補助医療を計画する前の2年以内に少なくとも1回、心臓MRIやCTなどで大動脈を評価することが推奨され、大動脈の拡張が強い場合は妊娠を避けることも提案されています[2]。妊娠を希望される場合は、必ず妊娠前に循環器の専門医による評価をお受けください。

寿命 ― 「一般と同じ」とは言えません。でも、そこで終わる話でもありません

この項目は、書き方に迷う医療者が多いところです。安心していただきたい気持ちから「一般の方と変わりません」と書かれている解説も見かけますが、それは正確ではありません。診療の手引きでは、ターナー症候群の死亡リスクは一般集団の3.0倍と報告されていることが示され、心臓の合併症、とくに大動脈解離がその一因とされています[1]。

では絶望的な話なのかというと、まったく違います。英国で診断された約3,400人の調査では、一般より上乗せされた死亡の41%を循環器の病気が占め、大動脈瘤による死亡がとくに多くみられました[13]。つまり、リスクの正体の大きな部分は分かっているのです。

💛 見通しを左右する、確認できることがら

① 大動脈の評価…大動脈二尖弁や大動脈の拡大がないか。心エコーで見えにくい部分は、胸部MRIやCTで評価することがあります。
② 血圧の管理…高血圧は大動脈への負担を増やします。ここはご自宅でも管理できる部分です。
③ ホルモン補充の継続…骨を守るという意味で、長い見通しの話と地続きです。
④ 定期的な受診を続けること…年齢とともに増える合併症もあるため、小児科から成人の診療科へ移っても、定期受診を続けることが大切です[4]。

「寿命が短いらしい」という漠然とした不安ほど、人を消耗させるものはありません。漠然とした不安は、具体的な検査項目に置き換えることができます。それがこの節でいちばんお伝えしたいことです。

男の子には起こるのか、双子ではどうなるのか

ターナー症候群は男性には起こりません

結論から言えば、ターナー症候群は女性に起こる状態で、男の子・男性には起こりません。2本あるはずのX染色体の1本が失われる、という定義そのものが女性のものだからです。男性の性染色体の変化としては、X染色体が1本多いクラインフェルター症候群(47,XXY)が知られています。女性でX染色体が1本多いのはトリプルX症候群(47,XXX)です。

では、なぜ「ターナー症候群 男の子」と検索されるのでしょうか。ひとつは、男の子にも翼状頸や低身長がみられる別の状態があるためだと思われます。代表がヌーナン症候群です。染色体ではなく遺伝子の変化によって起こり、男女どちらにも生じます。見た目が似ているため、かつては「男性のターナー症候群」と呼ばれたこともありましたが、まったく別の疾患です。

双子・異性の一卵性双生児という現象

「一卵性双生児なのに、男の子と女の子だった」という珍しい報告があります。そのしくみの多くがターナー症候群と関係しています。もともと46,XYだった受精卵が分裂していく初期に、片方の細胞群でY染色体が失われて45,Xになると、一方は男児、もう一方はターナー症候群の女児として育つことがあるのです。一卵性双生児という言葉の意味を考えると不思議に感じられますが、染色体の側から見ると説明のつく現象です。

医療費と制度 ― 指定難病ではありませんが、使える支援があります

ここは誤解がとても多いところです。ターナー症候群は、いわゆる「指定難病」(難病医療費助成制度の対象疾患)ではありません[4]。「ターナー症候群 難病」と検索して、対象だと思い込んでしまうと、あとで困ることになります。

その代わりに使えるのが小児慢性特定疾病の医療費助成です。ターナー症候群は番号88の対象疾病で、補充療法などの薬物療法を行っている場合が対象になります[7]。成長ホルモン治療・ホルモン補充療法はいずれも助成の対象で[1]、歯列矯正にも小児慢性特定疾病の助成が適用される点は、あまり知られていません[4]。

💡 ここが大事です

成人期に移行したあとの助成や、障害者手帳の対象になるかどうかは、制度ごとに基準が異なり、個別に判断されます。まずはお住まいの自治体の窓口と、主治医にご確認ください。

出生前診断とNIPT ― 陽性でも、約7割は赤ちゃんに変化がありません

妊娠中にターナー症候群が話題になる入口は2つあります。エコー所見と、NIPT(新型出生前診断)です。

エコーで指摘されやすい所見

妊娠初期のエコーで、首の後ろのむくみ(NT)の厚さや、嚢胞性ヒグローマ、胎児水腫を指摘されることがあります。ただしむくみを指摘された=ターナー症候群、ではまったくありません。逆に、ターナー症候群の胎児のおよそ3分の1では、エコーに所見が出ないことがあると報告されています[8]。所見がない例では、生まれたあとの症状が少なく、モザイク型の割合が高い傾向も示されています[8]。

NIPTでモノソミーX陽性と出たとき、いちばん大事な数字

これは、この記事のなかでもとくに覚えておいていただきたい数字です。94本の論文・約153万人の妊婦さんのデータを集めた系統的レビューによると、NIPTでモノソミーX陽性と出た場合の陽性的中率は32.0%(95%信頼区間 27.0〜37.3%)でした[9]。性染色体の変化全体の陽性的中率は49.4%で、そのなかでもモノソミーXは最も低いグループです[9]。

言い換えると、陽性と出た方のうち、およそ7割は赤ちゃんに染色体の変化がありません。この数字を知らずに結果の紙だけを渡されると、必要のない絶望を抱えることになってしまいます。

🔍 なぜモノソミーXは偽陽性が多いのか

① 胎盤限局性モザイク…NIPTが読んでいる赤ちゃん側のDNAは、主に胎盤由来です。胎盤だけに変化があり、赤ちゃんは正常ということが起こります[8]。
② お母さん自身の性染色体の変化…お母さんご自身がX染色体のモザイクなどを持っていて、その信号が拾われることがあります。性染色体の結果が食い違った例の9〜24%は、お母さん側の性染色体の数の変化やモザイクによるものと報告されています[8]。詳しくはNIPTの偽陽性の原因:母体側の要因をご覧ください。
③ 双子の一人が育たなくなった場合(バニシングツイン)…早い時期に育たなくなったもう一人の赤ちゃんのDNAが残っていることがあります[8]。
④ まれに母体の病気…お母さんの悪性腫瘍などが影響することもあります[8]。

ですから、NIPTは診断ではありません。陽性であれば、羊水検査・絨毛検査という確定検査に進んで、赤ちゃん由来の細胞そのもので核型を確認します[10][11][12]。

当院のNIPTでターナー症候群を調べるとき

ターナー症候群(モノソミーX)は、性染色体の「数」の変化です。単胎の妊娠であれば、当院のスタンダードプラン・プレミアムプラン・ダイヤモンドプラン・インペリアルプランで、ターナー症候群・クラインフェルター症候群・トリプルX症候群・XYY症候群の4つを調べます。双子の妊娠では性染色体の数の判定が難しく、双子マックスプランでは性染色体の数の変化は調べません(Y染色体の有無のみ)。性染色体の結果をお伝えするかどうかは、ご夫婦のご意向を伺ったうえで対応しています。

ターナー症候群は、診断が15歳前後までずれ込みやすい状態です[5]。一方で、成長ホルモン治療はおおむね2〜4歳での早い開始が勧められ[1]、心臓・大動脈の評価にも意味があります。生まれる前に分かっていれば、生まれてすぐの心臓の評価や成長の見守りを、最初から計画できると考えています。ただし陽性的中率は約32%なので[9]、陽性のときは必ず確定検査で確かめます。

当院のNIPTは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。結果は基本10〜14日(インペリアルプランの単一遺伝子の結果だけは3〜4週間)で、陰性の結果はマイページでお知らせします。陽性の場合も、確定検査(絨毛検査・羊水検査)まで院内で受けられます。主要な検査項目は3日以内に、マイクロアレイ検査は2週間ほどで結果が出ます。陽性後の遺伝カウンセリングは何度でも無料です。精度の考え方はNIPTの精度と的中率で解説しています。

\ 陽性なら確定検査まで院内で受けられるNIPTを /

📅NIPTを予約する

臨床遺伝専門医が常駐し、羊水検査・絨毛検査も院内で行っています。
NIPT陽性だったら? | 羊水検査互助会(カトレア会)

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【32%という数字を、検査の前に知っておいてほしい】

モノソミーX陽性という結果の紙を受け取ってから確定検査の結果が出るまでの時間は、ご家族にとってとても長く感じられるものです。けれども「陽性のうち、赤ちゃんに本当に変化があるのは3人に1人ほど」という事実を知っているかどうかで、その時間の過ごし方は大きく変わると考えています。

だからこそ、この数字は結果が出たあとではなく、検査を受ける前に知っておいていただきたいと考えています。性染色体の項目を含めて検査するのであれば、陽性のときの意味も、そのあと何をするのかも、先に共有しておくべきものです。当院では90分の受診枠の中で、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、陽性だったときの流れまでお伝えしてから検査に進みます。

そしてもうひとつ。ターナー症候群と確定した場合でも、その先には長い人生があります。結果は終着点ではなく、必要な医療につながるための情報だと考えています。

名前が似ている、まったく別の病気

「ターナー」という名前は医学のなかでいくつも登場します。検索してこのページにたどり着いた方が、実は別のものを探していた、ということも珍しくありません。念のため整理しておきます。

📖 「ターナー」が付く別のもの

名前 まったく別の、こういうものです
グレイターナー徴候 重症の急性膵炎などで、わき腹の皮膚が紫色に変色する所見のこと
メイ・ターナー症候群 骨盤内で左の腸骨静脈が圧迫され、脚のむくみや血栓を起こす血管の病気
パーソネージ・ターナー症候群 突然の激しい肩の痛みのあとに腕の筋力が落ちる、神経の炎症
タナー段階(ターナー分類) 思春期の進み具合を5段階で表す指標。人名の綴りが異なります(Tanner)

いずれも、この記事で扱っているターナー症候群(Turner症候群、45,X)とは関係のない別のものです。お探しの内容が上記であれば、そちらの名称で調べていただくのが確実です。とくにタナー段階は思春期の評価に使う指標で、ターナー症候群のホルモン補充療法の経過を見るときにも使われるため、混同されやすい言葉です。

当院でできること

ミネルバクリニックは臨床遺伝専門医が運営し、検査前の遺伝カウンセリングから検査、結果のご説明、陽性後のフォローまで院内で行うクリニックです。2025年6月に産婦人科を併設し、確定検査(羊水検査・絨毛検査)まで院内で行える体制を整えました。

🏥 当院の検査・サポート体制

項目 内容
臨床遺伝専門医が常駐 検査前の遺伝カウンセリングから結果のご説明まで、臨床遺伝専門医が担当します
90分の受診枠 90分の受診枠の中で、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行います。4Dエコー・性別判定も料金に含まれます
確定検査まで院内で 2025年6月から産婦人科を併設。主要項目は3日以内、マイクロアレイ検査は2週間ほどで結果が出ます
陽性後のカウンセリング 何度でも無料です
オンラインNIPT Zoomでのカウンセリング+全国110か所の提携施設で採血
中立な遺伝カウンセリング 特定の選択へ誘導せず、ご自身で選べるよう情報をお伝えします

検査前後の遺伝カウンセリングは、臨床遺伝専門医が担当します。当院でNIPTを受けられる方は全員、2つの互助会に加入します。羊水検査互助会(カトレア会)は1回のNIPTにつき8,000円で、陽性のときの確定検査の費用を補助します(補助の上限なし)。安心検査結果保障制度は1回6,000円で、再検査が必要になったのに流産して再検査ができず結果が出なかったときに、検査代金(諸費用を除く)を返金します。料金はNIPTの費用・料金のページでご確認ください(検査結果の作成費用3,300円は別途)。来院が難しい方はオンラインNIPTもご利用いただけます。精度についてはスタンダードプランの精度データとCOATE法の解説もご覧ください。染色体や遺伝子に関するご相談全般は遺伝診療のページからどうぞ。

まとめ

📌 重要ポイントのまとめ

頻度:女児の出生およそ2,000人に1人。染色体の病気としてまれではありません
原因:大多数は偶然に起こり、親のせいではない。ただし構造異常型は母から娘へ伝わることがある
知能:知的障害は約10%。知的障害がなくても非言語性の学習の苦手さがみられることがある
診断:見つかる年齢の中央値は15歳前後。確定は染色体検査(30個の細胞)
寿命:「一般と同じ」ではない。循環器の病気が大きな部分を占め、大動脈の評価と血圧管理が大切
妊娠:約95%が不妊。自然妊娠は2〜7%。妊娠前の大動脈評価は必須
NIPT:モノソミーXの陽性的中率は約32%。陽性でも確定検査までは結論を出さない

ターナー症候群について調べていると、断片的な情報にぶつかっては不安が積み重なっていきます。けれど、ここまで読んでいただいて分かるとおり、この領域は「分からないこと」より「分かっていて、手が打てること」のほうがずっと多いのです。気がかりなことは、具体的な検査項目に置き換えて、主治医と一つずつ確かめていってください。

よくある質問(FAQ)

Q1. ターナー症候群だと知的障害がありますか?

知的障害を伴うのは約10%で、大多数の方は知的発達が正常範囲です。ただし知的障害がなくても、言葉の理解や読み書きは得意なのに、図形・地図・算数・段取りが苦手になりやすい「非言語性の学習の苦手さ」がみられることがあります。怠けではありませんので、言葉で手順を説明するなどの工夫が助けになります。

Q2. ターナー症候群は遺伝しますか?次の子も同じでしょうか?

核型によります。もっとも多い45,X(モノソミーX)は偶発的に起こるもので、次のお子さんで繰り返す可能性は一般の方と大きく変わりません。一方、2026年の診療の手引きでは「家族性ターナー症候群は存在する」ことが最も強い推奨度で示されており、X染色体の構造異常型では母から娘へ伝わることがあります。「絶対に遺伝しない」は正確ではありません。

Q3. ターナー症候群の原因は親にありますか?

親のせいではありません。大多数は、卵子や精子がつくられる過程や受精卵が分裂する過程で、偶然に起こります。45,Xの16家族を調べた研究では、残っていたX染色体はすべてお母さん由来で、お父さん由来の性染色体が失われていましたが、お父さんの体質や生活が原因という意味ではありません。両親の年齢との関連も認められていません。

Q4. ターナー症候群はいつわかりますか?

デンマークの全国調査では、診断された年齢の中央値は15.1歳で、成人してから診断された方が38.5%でした。見つかるきっかけは、妊娠中のエコーやNIPT、新生児期の手足のむくみ、幼児期から学童期の成長曲線からの外れ、思春期の無月経、成人期の不妊検査などです。

Q5. ターナー症候群の寿命は短いのですか?

診療の手引きでは、死亡リスクは一般集団の3.0倍と報告されていることが示されています。「一般の方と変わりません」とは言えません。ただし英国の約3,400人の調査では、上乗せされた死亡の41%を循環器の病気が占めており、大動脈の定期的な評価と血圧管理、ホルモン補充、定期受診の継続が大切です。

Q6. 最終身長はどのくらいですか?

治療を受けていない日本人成人の平均身長は141.2±5.6cmと報告されています。国内の1施設で成長ホルモン治療を受けて最終身長に達した24人の報告では平均146.9±4.2cmでしたが、2000年の小規模な報告なので目安としてお考えください。成長ホルモン治療は、おおむね2〜4歳での早い開始が勧められています。

Q7. NIPTでモノソミーX陽性と出ました。確定でしょうか?

確定ではありません。系統的レビューによると、モノソミーX陽性の陽性的中率は32.0%(95%信頼区間27.0〜37.3%)です。つまり陽性と出た方のおよそ7割では、赤ちゃんに染色体の変化がありません。偽陽性の主な原因は、胎盤限局性モザイク、お母さん自身の性染色体のモザイク、双子の一人が育たなくなった場合などです。確認には羊水検査・絨毛検査が必要です。

Q8. 当院のNIPTでターナー症候群は調べられますか?

単胎の妊娠であれば、スタンダード・プレミアム・ダイヤモンド・インペリアルプランで、ターナー症候群を含む性染色体の数の変化を調べられます。双子マックスプランでは性染色体の数の変化は調べません。当院のNIPTは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。陽性の場合は確定検査(羊水検査・絨毛検査)まで院内で受けられます。

Q9. ダウン症候群のほかにも、調べておいたほうがよい病気はありますか?

子育ての大変さは、知的発達の重さだけでは決まりません。自閉スペクトラム症のお子さんの親は、ほかの障害のお子さんの親より子育てのストレスが高いというメタ解析があります。また微小欠失の一つである22q11.2欠失症候群は、知的発達への影響は軽めでも、心臓・免疫・精神面の合併症が多いことが知られています。当院のNIPTはスタンダードプランから22q11.2欠失症候群などの微小欠失を調べられます。

Q10. ターナー症候群は男の子にも起こりますか?

起こりません。2本あるX染色体の1本が失われるという定義そのものが女性のものだからです。男の子で翼状頸や低身長がみられる場合、ヌーナン症候群など別の疾患が考えられます。ヌーナン症候群は染色体ではなく遺伝子の変化によるもので、男女どちらにも生じます。

Q11. 月経は来ますか。性生活は送れますか。

自然に二次性徴が始まる方は約30%、自然に初経が来る方は約20%です。来ない場合もホルモン補充によって月経を起こすことができます。性生活については、子宮も腟も備わっているため、送ることができます。エストロゲンが不足していると粘膜が乾いて痛みの原因になることがありますが、それは補充が十分かどうかの問題ですので、我慢せず婦人科でご相談ください。

Q12. ターナー症候群は指定難病ですか?医療費の助成はありますか?

指定難病(難病医療費助成制度の対象疾患)ではありません。ただし小児慢性特定疾病の対象疾病(番号88)で、補充療法などの薬物療法を行っている場合に医療費助成の対象になります。歯列矯正にも小児慢性特定疾病の助成が適用されます。成人期以降の助成や障害者手帳の対象になるかどうかは個別に判断されますので、自治体の窓口と主治医にご確認ください。

Q13. 翼状頸(よくじょうけい)とは何ですか。全員にありますか?

首の両側から肩にかけて皮膚がたるみ、首が短く太く見える状態のことです。胎児期に首の後ろへリンパ液が溜まり、それが吸収されたあとに皮膚のたるみとして残ったものと考えられています。頻度は約40%で、全員にあるわけではありません。ほぼ全員に共通するのは成長障害(低身長)のほうで、内眼角贅皮は約20%、眼瞼下垂は約10%です。

Q14. 核型にY染色体が含まれると言われました。何をすればよいですか?

45,X/46,XYのようにY染色体の成分を持つ場合、発育の不十分な性腺に性腺芽腫という腫瘍が生じることがあります。診療の手引きでは発症率は約1%程度とされ、男性化などの症状がなければ通常のG分染法による染色体検査で十分とされています。まずは核型にYの成分が含まれるかどうかを主治医にご確認いただき、そのうえで性腺の評価についてご相談ください。

🏥 性染色体の数の変化まで調べられるNIPT

ダウン症候群のほかに、子育ての負担につながりやすい病気まで調べられることも知っておいてください。当院のNIPTは、ターナー症候群などの性染色体の数の変化や、22q11.2欠失症候群などの微小欠失まで調べられ、陽性なら羊水検査・絨毛検査まで院内で受けられます。

まだ決めていない方は:NIPTでわかる性染色体の変化 | NIPTを受けるべきか迷う方へ(3つの判断基準)

関連記事

参考文献

  • [1] ターナー症候群診療の手引き作成委員会.「ターナー症候群 診療の手引き」Ver.1.0(厚生労働省難治性疾患政策研究事業/協力:日本小児内分泌学会, 2026年2月5日) [PDF]
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  • [3] Hanew K, Tanaka T, Horikawa R, Hasegawa T, Yokoya S. The current status of 492 adult women with Turner syndrome: a questionnaire survey by the Foundation for Growth Science. Endocr J. 2021;68(9):1081-1089. doi:10.1507/endocrj.EJ20-0617. PMID: 33907067 [DOI]
  • [4] 糸永知代, 橘真紀子, 高橋裕, 石井智弘, 長谷川行洋, 川井正信.「移行期医療支援ガイド ターナー症候群」ver1(日本小児内分泌学会, 2023年9月25日) [PDF]
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  • [6] Hanew K, Tanaka T, Horikawa R, Hasegawa T, Yokoya S. Prevalence of diverse complications and its association with karyotypes in Japanese adult women with Turner syndrome—a questionnaire survey by the Foundation for Growth Science. Endocr J. 2018;65(5):509-519. doi:10.1507/endocrj.EJ17-0401. PMID: 29515055 [DOI]
  • [7] 小児慢性特定疾病情報センター「ターナー(Turner)症候群 診断の手引き」(文責:日本小児内分泌学会) [公式サイト]
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  • [10] 出生前検査認証制度等運営委員会「NIPT(非侵襲性出生前遺伝学的検査)とは」 [公式サイト]
  • [11] 出生前検査認証制度等運営委員会「羊水検査とは」 [公式サイト]
  • [12] 出生前検査認証制度等運営委員会「絨毛検査とは」 [公式サイト]
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※本記事は一般の方に向けた情報提供を目的とするもので、個別の診断・検査の選択を示すものではありません。[16][17]はよくある質問Q9の根拠です。

プロフィール
仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続け、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、検査結果の数値そのものだけでなく、「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、日本人として異文化の中で生活した経験があります。価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。この経験は現在の診療においても、「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、36週6日で一人を死産した経験があります。その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、家族の未来に関わる重要な意思決定です。年齢や統計だけで判断するのではなく、医学的根拠と心理的支援の両面から、ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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