目次
📍 クイックナビゲーション
クアトロテスト(クアトロ検査)や羊水検査で陽性と分かり、妊娠を続けない決断をされたご夫婦が、次の妊娠を考えるときにいちばん知りたいのは、「次の子も同じになるのか」ではないでしょうか。先に答えをお伝えします。ダウン症候群(ダウン症)の約95%を占める標準型の場合、次の妊娠で同じことが起こる確率は、年齢による確率に0.04〜0.62%ほど上乗せされる程度と報告されています[2]。大多数の方は、次の妊娠では21トリソミーになりません。一方、転座型でご両親のどちらかが保因者の場合は確率が変わるため、前回の羊水検査の結果で染色体の型を確かめることが出発点になります。この記事では、クアトロテスト陽性から中期中絶までの経過を振り返ったうえで、次の妊娠での確率と、妊娠9週から受けられる新型出生前診断(NIPT)について、臨床遺伝専門医が解説します。
- ➤クアトロテスト陽性の「その後」に必要な確定検査(羊水検査)と、検査による流産の上乗せの報告値
- ➤中期中絶という経験と、そのあとの心と体の変化
- ➤ダウン症候群で中絶したあと、次の子が同じになる確率(標準型と転座型の違い)
- ➤転座型のときに行うご両親の染色体検査と、母親・父親が保因者の場合の確率
- ➤妊娠9週から受けられるNIPTと、陽性だったときの確定検査までの道筋
⏱️ 30秒でわかる要約
🧬 Q. ダウン症で中絶したあと、次の子も同じになる確率は?
前回が標準型(21番染色体が3本ある型)なら、次の妊娠での確率は年齢による確率に0.04〜0.62%ほど上乗せされる程度と報告されています。転座型でご両親のどちらかが保因者の場合は、母親で10〜15%、父親で1.5〜5%と変わるため、まず前回の羊水検査の結果で染色体の型を確かめます。
🔎 Q. ダウン症候群だけ調べれば大丈夫ですか?
大丈夫とは言えません。21トリソミーを経験した方では、次の妊娠で別のトリソミーが起こる頻度も、同じ年齢の方より少し高いと報告されています。そして、子育ての負担を最も大きく左右するのは、知的障害の程度よりも、攻撃的な行動や自傷、睡眠の問題といった行動の問題です。それを伴いやすい微小欠失症候群や単一遺伝子疾患は、三大トリソミーだけの検査では調べられません。当院のNIPTはこれらの病気まで調べられます。
🩺 Q. クアトロテストが陽性のとき、中絶を決める前に必要なことは?
クアトロテストは確率を計算する検査で、陽性は診断の確定ではありません。羊水検査などの確定検査で確かめてから考えます。日本で人工妊娠中絶ができるのは妊娠21週6日までです。
📅 Q. 次の妊娠では、いつ・どんな検査を受けられますか?
ミネルバクリニックのNIPTは妊娠9週から受けられます(妊娠6〜8週は臨床研究として)。結果は基本的に10〜14日で出ます。陽性のときは、確定検査(絨毛検査・羊水検査)を院内で受けられ、主要な検査項目は3日以内に結果が出ます。
\ ダウン症候群だけで大丈夫ですか? /
次の妊娠で調べる範囲は、21トリソミーだけとは限りません。当院のNIPTは、子育ての負担につながりやすい微小欠失症候群や単一遺伝子疾患まで調べられます。どこまで調べるかは、90分の受診枠の中で臨床遺伝専門医と一緒に決められます。
1. クアトロ検査陽性の「その後」:突然の宣告から羊水検査へ
待ち望んだ妊娠の途中で受けたクアトロテスト(クアトロ検査・母体血清マーカー検査)の結果が、その後の数週間を一変させることがあります。「確率が高い」と告げられた日から、ご夫婦は、それまで考えたこともなかった検査や選択と向き合うことになります。
クアトロテストは、お母さんの血液中の4つの成分と年齢などから「確率」を計算する検査で、陽性は診断の確定ではありません。本当に赤ちゃんに染色体の変化があるかどうかは、羊水検査などの確定検査で確かめます。検査のしくみと結果の読み方はクアトロテストを受けるべきかで、陽性のあとの進み方はクアトロテストが陽性のときで解説しています。
「偽陽性であってほしい」という祈りと、羊水検査への恐怖
クアトロテストで陽性となってから、羊水検査を受け、その結果が出るまでの時間は、とても長く感じられるものです。クアトロテストは確定検査ではないため、赤ちゃんに染色体の変化がない「偽陽性」の可能性が残っています。エコーのたびに医師の表情をうかがい、インターネットで情報を探し続けた方もいるでしょう。
羊水検査は、お腹に細い針を刺して羊水を採り、赤ちゃんの染色体を直接調べる検査です。検査による流産を心配する方は多いのですが、近年の大規模な解析では、羊水検査を受けた妊婦さんと受けなかった妊婦さんで流産の割合に統計的な差はなく、検査による流産の上乗せは−0.36%(95%信頼区間 −1.26〜0.55%)と報告されています[5]。それでも、染色体の結果が出るまでには一般に2週間前後かかり、その間の不安は決して小さくありません。
なお、ミネルバクリニックでは確定検査(絨毛検査・羊水検査)を院内で行っており、主要な検査項目は3日以内に、マイクロアレイ検査は2週間ほどで結果が出ます。
2. 羊水検査での確定診断と、中期中絶という過酷なご経験
羊水検査でダウン症候群(21トリソミー)と確定したとき、ご夫婦は、妊娠を続けるかどうかという重い決断に向き合います。倫理的な葛藤、上のお子さんのこと、これからの暮らしのことを何日も話し合って出した結論は、産む選択であっても、産まない選択であっても、尊重されるべきものです。
日本では、人工妊娠中絶ができるのは妊娠21週6日までと定められています。期限と手続きについてはNIPT陽性時の中絶はいつまで?法律と期間で解説しています。
妊娠12週以降の中絶は「中期中絶」と呼ばれ、子宮の出口を広げる処置のあと、陣痛を起こす薬を使って、お産と同じ形で行われます。体にも心にも大きな負担がかかる方法です。なお、ミネルバクリニックは分娩と人工妊娠中絶を行っていません。
産声のないお産と、置き去りにされる「心のケア」
入院先が通常の産科の病棟であることも多く、ほかの部屋から赤ちゃんの泣き声が聞こえるなかで、陣痛を経てお別れのお産を迎えることになります。
退院したあとも、体はお産のあとと同じように変化します。胸が張ったり、母乳が出たりして、そのたびに気持ちが揺れる方もいます。心のケア(グリーフケア)を十分に受けられないまま、日常に戻らなければならないこともあります。
涙が止まらない、罪悪感が消えない、反対に、ほっとした自分を責めてしまう。こうした反応については中絶後の心の反応で、同じ決断をした方の気持ちについてはダウン症とわかり中絶しました。後悔の理由と専門医の視点で取り上げています。つらい気持ちが長く続くときは、処置を受けた産婦人科や、精神科・心療内科、お住まいの自治体の相談窓口に相談してください。
🩺 院長コラム【次の妊娠を怖がらないでください。あなたは何も悪くありません。】
中期中絶という経験のあとで、それでも「次」を考えようとするご夫婦に、まずお伝えしたいことがあります。21トリソミーの大部分は、卵子や精子ができるときに偶然起こる、染色体の分かれ方の誤りによるものです。妊娠中の過ごし方や、ご夫婦のどちらかの落ち度で起こるものではありません。
産むという選択も、産まないという選択も、悩み抜いた末の決断であれば、どちらも尊重されるべきものだと考えています。つらい経験をしたからといって、「自分のせいだ」「自分の体がおかしいのだ」とご自身を責める必要はありません。次の妊娠を考えるかどうか、いつ考えるかも、ご夫婦のペースで決めてよいことです。
3. 「次も同じ結果になったら…」深い悲しみと反復リスクへの不安
時間がたって少しずつ日常が戻ってきても、「もう元気な赤ちゃんを授かれないのではないか」「次もダウン症候群だったらどうしよう」という不安から、次の妊娠に踏み出せない方は少なくありません。ここからは、次の妊娠での確率(反復リスク・再発率)を、報告されている数字で整理します。
ダウン症で中絶したあと、次の子の確率は?標準型と転座型で違います
前回の羊水検査の結果用紙に「47,XX,+21」または「47,XY,+21」と書かれていれば、標準型です。ダウン症候群の約95%がこの型で[1]、卵子や精子ができるときに21番染色体がうまく分かれなかったこと(染色体不分離)で起こります。ご夫婦の染色体は通常どちらも正常で、親から受け継いだものではありません。
英国の登録データでは、ダウン症候群の妊娠をした女性のうち、それ以前にもダウン症候群の妊娠があった方は11,281人中95人でした[2]。この研究によると、標準型を経験した方の次の妊娠での確率は、年齢だけから計算される確率より少し高くなります。上乗せされる幅は、前回の妊娠のときの年齢が若いほど大きく、20歳で経験した方で0.62%、40歳で経験した方で0.04%です(妊娠中期のはじめの時点)[2]。北米のデータでも、21トリソミーを経験した方の次の妊娠で21トリソミーが起こる頻度は、同じ年齢の方の約2.4倍で、2回とも30歳未満だった方では約8倍、2回とも30歳以上だった方では約2.1倍でした[3]。
「高くなる」という言葉だけを見ると不安になるかもしれませんが、もとになる年齢の確率が小さいため、大多数の方は、次の妊娠では21トリソミーになりません。遺伝カウンセリングでは、分かりやすい目安として「約1%」と説明されることもあります。
結果用紙に「der(14;21)」や「rob(14;21)」のような記載があれば、転座型です。転座型はダウン症候群の約4%で、そのうち約3分の1が親から受け継いだものです。受け継ぐ場合は、母親からのことが父親からの6〜7倍多いと報告されています[1]。転座型と分かった場合は、ご両親の染色体検査(血液で調べるGバンド法)で、どちらかが保因者かどうかを確かめます。
ご両親のどちらも保因者でなければ、赤ちゃんに新しく起きた転座と考えられ、次の妊娠での確率は、保因者の場合に比べて低くなります。どちらかが、13〜15番の染色体と21番染色体がつながったロバートソン転座の保因者だった場合、羊水検査の時点で赤ちゃんが不均衡型(ダウン症候群になる型)である割合は、母親が保因者なら10〜15%、父親が保因者なら1.5〜5%と報告されています[4]。まれに、21番どうしがつながった転座を親がもっていることがあり、その場合は確率が大きく変わります。型ごとのくわしい説明はダウン症は遺伝する?2人目の再発率と転座型のリスクをご覧ください。
🧬 ダウン症候群の型と、次の妊娠での確率
※数字は集団での頻度です。個々のご夫婦の確率は、前回の染色体の型、ご両親の染色体検査の結果、年齢によって変わります。
💡 用語解説:ロバートソン転座と保因者(ほいんしゃ)
13・14・15・21・22番の染色体のうち2本が、根もとでつながって1本になった状態をロバートソン転座といいます。遺伝情報の量に過不足がなければ本人は健康で、こうした方を保因者と呼びます。保因者の卵子や精子では21番染色体の量に過不足が生じることがあり、転座型のダウン症候群の原因になります。
前回が標準型だった方は、ご両親の染色体検査は通常必要ありません。また、北米の同じ研究では、21トリソミーのあとに別の染色体のトリソミーが起こる頻度も、同じ年齢の方の約2.3倍でした[3]。次の妊娠で調べる範囲を考えるときの材料になります。
父親の年齢と新生突然変異の関係
染色体の数の変化は母親の年齢との関係がよく知られていますが、遺伝子1つの中に新しく起こる変化(新生突然変異、de novo変異)は、父親の年齢と関係します。アイスランドの研究では、父親が1歳年を取るごとに、子どもに伝わる新しい変異が約2個ずつ増えると報告されています[6]。精子のもとになる細胞は分裂をくり返すため、年齢とともにDNAの写し間違いが積み重なっていくためです。

こうした単一遺伝子疾患は1つひとつはまれですが、わずか30遺伝子・25疾患を合わせただけでも、約600人に1人(0.17%)の頻度になると報告されています[7][8]。これは、ダウン症候群の出生頻度(全体で約700人に1人)と同じくらいの数字です。当院のインペリアルプランでは最大155遺伝子、ダイヤモンドプランでは56遺伝子のde novo変異を対象にしています。
自閉症・発達障害・知的障害の原因はさまざまで、多くは特定できませんが、一部は染色体や遺伝子の変化で起こります。当院のNIPTでは、その一部を妊娠中に調べられます(たとえば、ダイヤモンドプラン・インペリアルプランのレット症候群やコルネリア・デ・ランゲ症候群、全プランのアンジェルマン症候群や22q11.2欠失症候群)。ただし、自閉症そのものを診断する検査ではなく、陰性でも自閉症や発達障害がないとは言えません。くわしくは自閉症はNIPTでわかりますか?をご覧ください。
4. 早い時期に結果を知るために。妊娠9週から受けられる新型出生前診断(NIPT)
前回は、クアトロテストを受け、羊水検査を受け、結果を待ち、決断の期限が近づくなかで考えなければなりませんでした。次の妊娠で検査を受けるなら、もっと早い時期に結果を知っておきたい、と考える方は少なくありません。
ミネルバクリニックのNIPTは、通常は妊娠9週から受けられます。できるだけ早い時期に結果を知りたい方のために、妊娠6〜8週でも臨床研究として受けられる体制を整えています。お母さんの採血だけで行う検査なので、検査そのものが流産の原因になることはありません。結果は基本的に10〜14日で出ます(インペリアルプランの単一遺伝子の結果だけは3〜4週間)。
📅 クアトロテストから始める場合と、NIPTから始める場合
| クアトロテストから始める場合(一般的な流れ) | 当院のNIPTから始める場合 | |
|---|---|---|
| 最初の検査 | 妊娠15週以降(採血) | 妊娠9週から(採血)。妊娠6〜8週は臨床研究として |
| 検査の性質 | 確率を計算する検査(確定検査ではない) | 赤ちゃん由来のDNAを調べる検査(確定検査ではない) |
| 陽性のあと | 羊水検査で確かめる | 絨毛検査・羊水検査で確かめる(院内で実施) |
| 確定検査の結果 | 一般に2週間前後 | 主要な検査項目は3日以内、マイクロアレイ検査は2週間ほど |
早い時期に結果を知ることには、考える時間を持てるという意味があります。妊娠12週以降に妊娠を続けない選択をすると中期中絶となり、体への負担が大きくなります。また、妊娠4か月(85日)以降の流産・死産・人工妊娠中絶は、労働基準法では「出産」として扱われ、産後休業が必要になります。
一方で、限界もあります。NIPTは確定検査ではなく、陽性の場合は絨毛検査や羊水検査で確かめる必要があります。まれですが、偽陰性の可能性もあります。また、週数が早いほど血液中の赤ちゃん由来のDNAが少なく、判定できずに再検査になることがあります。
前回が転座型で、ご両親のどちらかが保因者と分かっている場合は、NIPTだけで判断せず、絨毛検査や羊水検査を計画に入れることを考えます。
\ 陽性のときは、確定検査まで院内で受けられます /
主要な検査項目は3日以内に結果が出ます。陽性後の遺伝カウンセリングは何度でも無料です。
5. 検査で調べられる範囲と、ミネルバクリニックのサポート体制
当院のNIPTは、13・18・21番の3つのトリソミーだけを調べる検査ではありません。調べる範囲は、プランによって次のように違います。
- スタンダードプラン:13・18・21トリソミー+性染色体の数の異常/微小欠失6種類7疾患/単胎・双胎
- プレミアムプラン:13・18・21・15・16・22トリソミー+性染色体の数の異常/微小欠失12種類13疾患/単胎のみ
- ダイヤモンドプラン:プレミアムプランと同じ範囲+単一遺伝子56遺伝子/単胎のみ
- 双子マックスプラン:全常染色体の数の異常/92種類の微小欠失・重複+5Mbを超える構造異常/単胎・双胎
- インペリアルプラン:全常染色体と性染色体の数の異常/92種類の微小欠失・重複+5Mbを超える構造異常/単一遺伝子最大155遺伝子(202疾患)/単胎のみ
検査の方式もプランによって異なります。スタンダードプランは標的捕捉濃縮法、ダイヤモンドプランは米国の3大遺伝子検査会社の一角が提供する新技術「COATE法」(SNP法とターゲット法の組み合わせ)※、インペリアルプランは低深度全ゲノムシーケンスとターゲット法の組み合わせです。
※「3大遺伝子検査会社」は、遺伝性がんや周産期(出生前検査・保因者検査)を含む遺伝子検査全般を手がける米国の検査専業会社のうち、2025年通期の売上高が上位の3社を指します(各社の決算発表にもとづく当院調べ)。がん検診やリキッドバイオプシーに特化した会社は含みません。
どのプランも、NIPTはスクリーニング検査です。微小欠失・重複は、染色体の数の異常に比べて陽性的中率が低め(項目によって60〜70%程度)で、陽性の場合は必ず確定検査で確かめます。調べる範囲が広がれば、陽性になる場面も増えます。だからこそ、陽性になったあとの体制が大切です。
🏥 陽性だったときの当院の体制
・確定検査(絨毛検査・羊水検査)を院内で受けられます(産婦人科の併設は2025年6月から)。
・主要な検査項目は3日以内、マイクロアレイ検査は2週間ほどで結果が出ます。
・陽性後の遺伝カウンセリングは、何度でも無料です。
・羊水検査互助会(カトレア会)8,000円:陽性のときの確定検査の費用を補助します(上限はありません)。
・安心検査結果保障制度 6,000円:再検査が必要になったのに流産して再検査ができず、結果が出なかったときに、検査代金(諸費用を除く)を返金します。
・2つの制度は全員加入で、消費税の対象外です。
検査を受ける施設を選ぶときは、陽性になったときに誰が説明し、確定検査をどこで受けられるのかまで確かめてください。確かめる点はNIPTクリニックの選び方にまとめています。来院が難しい方は、オンラインNIPT(Zoomでの遺伝カウンセリングと、全国110か所の提携施設での採血)もご利用いただけます。
🩺 院長コラム【「正確性」は、心の安全を守るためにあります】
当院は非認証施設ですが、臨床遺伝専門医が、検査前の遺伝カウンセリングから結果の判定、陽性後のカウンセリング、そして確定検査(羊水検査・絨毛検査。2025年6月から院内で実施)までを、一つの施設で行っています。NIPTは、結果を早く出すことだけを目的にした検査ではありません。生涯にかかわる検査だからこそ、正確さがいちばん大切だと考えています。
不安は、断片的な情報が増えるほど大きくなります。そのため当院では、事前に説明の動画をご覧いただいたうえで、お一人90分の受診枠を確保しています。前回つらい経験をされた方にとって、検査は、結果をどう受け止め、次にどう進むかを考えるための材料です。どのような結果でも、そのあとの道筋まで責任をもって示すこと。それが臨床遺伝専門医の役割だと考えています。
ダウン症候群だけで大丈夫? ― 「値段」ではなく「調べられる範囲」で選ぶ
前の妊娠がダウン症候群だった方は、次の妊娠でも「ダウン症候群かどうかだけ分かればよい」と考えることが少なくありません。けれども、3章で見たように、21トリソミーを経験した方では別のトリソミーが起こる頻度も少し高く[3]、出生前検査で調べる病気は、どれも赤ちゃんとご家族の暮らしに大きくかかわるものです。そして、ご家族の子育ての負担を最も大きく左右するのは、知的障害の程度よりも、攻撃的な行動や自傷、睡眠の問題といった「行動の問題」だと分かっています[9]。こうした行動の問題を伴いやすい病気には、微小欠失症候群や単一遺伝子疾患が多く含まれます[9][10]。三大トリソミーだけを調べる検査では、これらの病気は調べられません。
出生前検査は、その後の人生を左右するかもしれない検査です。「安さ」だけで選んで大丈夫でしょうか。
調べられる範囲の広さを見るために、費用を「調べられる病気の数」で割ってみます。三大トリソミーだけを調べる検査を仮に10万円とすると、1つの病気あたりは約3万3千円です。当院のインペリアルプランは、全常染色体と性染色体の数の異常、92種類の微小欠失・重複、202の単一遺伝子疾患を調べます。性染色体の数の異常も含めて、数えられる病気だけで320になり、1つの病気あたりは約1,700円です。5Mbを超える欠失・重複はすべての染色体が対象なので、実際にはさらに多くの変化を調べています。
🧮 1つの病気あたりで考えると
| プラン | 主に調べる範囲 | 数えた病気の数 | 1つの病気あたり |
|---|---|---|---|
| 三大トリソミーだけを調べる検査 (仮に10万円とした場合) |
13・18・21トリソミー | 3 | 約33,333円 |
| スタンダード (220,000円) |
13・18・21トリソミー、性染色体の数の異常、微小欠失6種類7疾患 | 14 | 約15,714円 |
| プレミアム (264,000円) |
13・18・21・15・16・22トリソミー、性染色体の数の異常、微小欠失12種類13疾患 | 23 | 約11,478円 |
| ダイヤモンド (407,000円) |
プレミアムの範囲+単一遺伝子56 | 79 | 約5,152円 |
| 双子マックス (440,000円) |
全常染色体の数の異常、92種類の微小欠失・重複、5Mbを超える構造異常 | 114+α | 約3,860円 |
| インペリアル (550,000円) |
全常染色体と性染色体の数の異常、92種類の微小欠失・重複、5Mbを超える構造異常、単一遺伝子202疾患 | 320+α | 約1,719円 |
※価格は事前学習動画を見て来院した場合の当日割引後の税込価格です。最新の料金は料金ページをご確認ください。
※病気の数は、数の異常・微小欠失・重複・単一遺伝子疾患を1つずつ数えたものです。性染色体の数の異常は4種類(ターナー症候群・クラインフェルター症候群・トリプルX症候群・XYY症候群)として数えています(性染色体を調べるのはスタンダード・プレミアム・ダイヤモンド・インペリアル。双子マックスは調べません)。5Mbを超える構造異常は数に入れていないため、双子マックスとインペリアルは実際にはさらに多くの変化を調べています。
※「三大トリソミーだけを調べる検査」は計算のための仮の例で、特定の施設の価格ではありません。
調べる病気の数が多いほど良い検査、ということではありません。調べる範囲が広がると、陽性になる可能性も、確定検査が必要になる場面も増えます。前回の経験があるからこそ、どこまで知りたいか、知ったあとどうしたいかは、ご夫婦によって違います。90分の受診枠の中で、常駐する臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、どのプランが合うかを一緒に考えます。
🏥 次の妊娠を、確かな情報から考えるために
ミネルバクリニックのNIPTは妊娠9週から受けられ(妊娠6〜8週は臨床研究として)、ダウン症候群だけでなく、微小欠失症候群や単一遺伝子疾患まで調べられます。
陽性のときは、確定検査(絨毛検査・羊水検査)まで院内で受けられ、主要な検査項目は3日以内に結果が出ます。
90分の受診枠の中で、常駐する臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行います。
よくある質問(FAQ)
Q1. 一度ダウン症の赤ちゃんを中絶した場合、次の妊娠でもダウン症になる確率は上がりますか?
標準型(21番染色体が3本ある型)の場合、年齢だけから計算される確率より少し高くなりますが、大多数の方は次の妊娠で21トリソミーになりません。英国の登録データでは、上乗せされる幅は、前回の妊娠が20歳のときで0.62%、40歳のときで0.04%(妊娠中期のはじめの時点)と報告されています。転座型でご両親のどちらかが保因者の場合は確率が変わるため、まず前回の羊水検査の結果で染色体の型を確かめてください。
Q2. ダウン症候群だけ調べれば大丈夫ですか?
大丈夫とは言えません。21トリソミーを経験した方では、次の妊娠で別のトリソミーが起こる頻度も、同じ年齢の方より少し高いと報告されています。また、子育ての負担を最も大きく左右するのは、知的障害の程度よりも、攻撃的な行動や自傷、睡眠の問題といった行動の問題です。それを伴いやすい微小欠失症候群や単一遺伝子疾患は、三大トリソミーだけの検査では調べられません。当院のNIPTはこれらの病気まで調べられます。どこまで調べるかは、検査前の遺伝カウンセリングで決められます。
Q3. クアトロテストが陽性でした。中絶を決める前に何が必要ですか?
クアトロテストは確率を計算する検査で、陽性は診断の確定ではありません。羊水検査などの確定検査で赤ちゃんの染色体を確かめてから考えます。日本で人工妊娠中絶ができるのは妊娠21週6日までなので、確定検査を受ける時期と結果が出るまでの日数を、早めに主治医と確認してください。ミネルバクリニックでは確定検査を院内で行っており、主要な検査項目は3日以内に結果が出ます。
Q4. 標準型と転座型とは何ですか?
標準型は、卵子や精子ができるときの染色体の分かれ方の誤りで21番染色体が3本になるもので、ダウン症候群の約95%を占め、親から受け継いだものではありません。転座型は約4%で、21番染色体がほかの染色体につながっている型です。転座型の約3分の1は親から受け継いだもので、ご両親のどちらかが保因者の場合は、母親で10〜15%、父親で1.5〜5%の確率で次の妊娠でも起こると報告されています。保因者かどうかは、ご両親の染色体検査(Gバンド法)で確かめられます。
Q5. 中期中絶のあと、次の妊娠はいつから可能ですか?
一律に決まった期間はありません。月経が再開し、子宮の回復に支障がないことを、処置を受けた産婦人科で確認してもらうのが基本です。排卵は月経より先に戻るため、月経が再開する前でも妊娠する可能性があります。体の回復と同じくらい、気持ちの回復も大切です。時期は、ご夫婦のペースで決めてください。
Q6. 次の妊娠で同じ思いをしないためには、どのような検査がありますか?
検査で結果そのものを変えることはできませんが、早い時期に結果を知ることで、考える時間を持てます。当院のNIPTは妊娠9週から受けられ(妊娠6〜8週は臨床研究として)、結果は基本的に10〜14日で出ます。陽性の場合は、絨毛検査や羊水検査で確かめます。
Q7. NIPTで陽性になった場合、どうすればいいですか?
NIPTはスクリーニング検査なので、陽性の場合は確定検査(絨毛検査・羊水検査)で確かめます。当院では確定検査を院内で受けられ、主要な検査項目は3日以内、マイクロアレイ検査は2週間ほどで結果が出ます。陽性後の遺伝カウンセリングは何度でも無料で、全員加入の互助会(カトレア会・8,000円)が確定検査の費用を補助します(上限はありません)。
Q8. クアトロ検査とNIPTはどう違うのですか?
どちらもお母さんの血液で調べる検査で、確定検査ではありません。クアトロ検査は妊娠15週以降に、血液中の4つの成分と年齢などから確率を計算します。NIPTは血液中の赤ちゃん由来のDNAを調べる検査で、当院では妊娠9週から受けられ、調べる範囲をプランで選べます。どちらも、陽性の場合は確定検査で確かめる必要があります。
Q9. どのプランを受けるべきか、当日相談して決めることはできますか?
プランは、事前の説明動画をご覧いただいたうえで、90分の受診枠の中で行う臨床遺伝専門医の遺伝カウンセリングで決められます。当院は、相談だけのご予約は受け付けていません。どのプランを選ぶかは、ご家族で話し合って決めていただくもので、医師が特定のプランに誘導することはありません。
関連記事
参考文献
- [1] Mutton D, Alberman E, Hook EB. Cytogenetic and epidemiological findings in Down syndrome, England and Wales 1989 to 1993. J Med Genet. 1996;33(5):387-394. [PubMed 8733049]
- [2] Morris JK, Mutton DE, Alberman E. Recurrences of free trisomy 21: analysis of data from the National Down Syndrome Cytogenetic Register. Prenat Diagn. 2005;25(12):1120-1128. [PubMed 16231400]
- [3] Warburton D, Dallaire L, Thangavelu M, Ross L, Levin B, Kline J. Trisomy recurrence: a reconsideration based on North American data. Am J Hum Genet. 2004;75(3):376-385. [PubMed 15248154]
- [4] Daniel A, Hook EB, Wulf G. Risks of unbalanced progeny at amniocentesis to carriers of chromosome rearrangements: data from United States and Canadian laboratories. Am J Med Genet. 1989;33(1):14-53. [PubMed 2750783]
- [5] Beta J, Zhang W, Geris S, Kostiv V, Akolekar R. Procedure-related risk of miscarriage following chorionic villus sampling and amniocentesis. Ultrasound Obstet Gynecol. 2019;54(4):452-457. [DOI 10.1002/uog.20293]
- [6] Kong A, Frigge ML, Masson G, et al. Rate of de novo mutations and the importance of father’s age to disease risk. Nature. 2012;488(7412):471-475. [DOI 10.1038/nature11396]
- [7] Mohan P, Lemoine J, Trotter C, et al. Clinical experience with non-invasive prenatal screening for single-gene disorders. Ultrasound Obstet Gynecol. 2022;59(1):33-39. [DOI 10.1002/uog.23756]
- [8] Zhang J, Li J, Saucier JB, et al. Non-invasive prenatal sequencing for multiple Mendelian monogenic disorders using circulating cell-free fetal DNA. Nat Med. 2019;25(3):439-447. [DOI 10.1038/s41591-018-0334-x]
- [9] Fitzgerald J, Gallagher L. Parental stress and adjustment in the context of rare genetic syndromes: A scoping review. J Intellect Disabil. 2022;26(2):522-544. [DOI 10.1177/1744629521995378]
- [10] Arron K, Oliver C, Moss J, Berg K, Burbidge C. The prevalence and phenomenology of self-injurious and aggressive behaviour in genetic syndromes. J Intellect Disabil Res. 2011;55(2):109-120. [DOI 10.1111/j.1365-2788.2010.01337.x]
※本記事は一般の方に向けた情報提供を目的とするもので、個別の診断・治療方針を示すものではありません。次の妊娠や検査については、主治医・専門医にご相談ください。






