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NIPT(新型出生前診断)と医療費控除の関係
NIPT(新型出生前診断)は、妊婦さんの血液検査によって胎児の染色体異常の有無を調べる非侵襲的な検査方法です。この検査を受ける際には10〜20万円程度の費用がかかるため、「医療費控除の対象になるのだろうか?」という疑問を持つ方も多いでしょう。
結論から申し上げると、NIPTの検査費用は原則として医療費控除の対象にはなりません。これは国税庁による公式見解に基づいています。
医療費控除の基本的な仕組み
医療費控除とは、1年間(1月1日〜12月31日)に支払った医療費が一定額を超えた場合、確定申告によって所得税の一部が還付される制度です。
医療費控除の計算方法
医療費控除額は以下の計算式で求められます:
- 医療費控除額 = 実際に支払った医療費 – 保険金等で補填された金額 – 10万円(または総所得金額等の5%のいずれか少ない方)
医療費控除の対象となる費用
医療費控除の対象となるのは、以下のような医療費です:
- 医師や歯科医師による診療・治療の費用
- 治療のための医薬品費
- 入院費用
- 通院のための交通費(公共交通機関の料金)
- 医療のために必要な器具や装具の購入費
重要なポイントは、これらの費用が「治療」を目的としているかどうかです。国税庁の基準では、治療目的ではない検査や健康診断は原則として医療費控除の対象外とされています。
NIPTが医療費控除の対象外となる理由
国税庁の見解によると、NIPTは医療費控除の対象外とされています。その理由は主に以下の点にあります:
- NIPTは「診断」であって「治療」ではない
医療費控除は基本的に「治療」を目的とした費用を対象としていますが、NIPTはあくまで胎児の状態を調べる診断行為です。 - 検査結果が陽性でも直接的な治療に結びつかない
NIPTで染色体異常が検出されても、それが胎児の治療に直接つながるわけではないため、治療に先立つ診察とは見なされません。 - 健康診断と同様の位置づけ
人間ドックなどの健康診断と同様に、疾病の治療を伴わない検査は医療費控除の対象外とされています。
国税庁のホームページでは、「母体血を用いた出生前遺伝学的検査の費用」について、「本件検査(NIPT)に係る費用は、医療費控除の対象となりません」と明確に見解を示しています。
例外的に医療費控除が認められるケース
NIPTの結果が陽性となり、その後の処置に進む場合には、一部の費用が医療費控除の対象となる可能性があります:
- 羊水検査など確定診断のための検査費用
NIPTで陽性となった後、羊水検査などの確定診断を受ける場合、その検査費用自体は原則として医療費控除の対象外ですが、その後の処置と関連付けられる場合は例外となることもあります。 - 治療目的の医療行為に関連する費用
確定診断の結果に基づいて具体的な治療行為(例:人工妊娠中絶)が行われる場合、その治療費用は医療費控除の対象となります。 - 入院費用
検査のために入院した場合の費用は、医療費控除の対象となる可能性があります。
ただし、これらのケースでも、単に検査目的の費用のみでは医療費控除の対象とはなりません。あくまで「治療」と関連付けられる場合に限られます。具体的なケースについては、税理士や税務署への確認をお勧めします。
NIPT検査の費用相場
NIPTの費用は医療機関によって異なりますが、おおよその相場は以下の通りです:
- 認可施設での費用: 約16〜21万円
- 無認可施設での費用: 約8〜20万円
- 検査内容による差: 検査項目が増えるほど費用も高くなる傾向があります
また、NIPT後に羊水検査が必要になった場合の費用目安:
- 羊水検査: 約10〜20万円
当院(ミネルバクリニック)のNIPT検査費用については、料金ページをご確認ください。
クリニック選びのポイント:医療機関によっては、NIPTの結果が陽性だった場合、羊水検査などの確定検査の費用を負担してくれるところもあります。検査を受ける前に、このような追加サポートの有無を確認しておくと安心です。
妊娠・出産時に利用できる他の補助制度
NIPTは医療費控除の対象とはなりませんが、妊娠・出産に関しては様々な補助制度が設けられています。
妊婦健診費用の補助
妊婦健診は妊娠23週までは4週間に1回、出産直前には毎週の計14回程度が推奨されています。各自治体から妊婦健診の費用補助(受診券の交付など)が受けられます。補助額は自治体によって異なりますが、一般的に5〜10万円程度の補助が受けられることが多いです。
出産育児一時金
健康保険加入者が出産時に受け取れる助成金です。2023年4月から50万円(産科医療補償制度対象外の場合は48万8,000円)に引き上げられました。妊娠85日以上の出産(死産や流産を含む)が対象で、多胎の場合は人数分支給されます。
児童手当
0歳から中学校卒業までの児童を養育している方に支給される手当です。3歳未満は月額15,000円、3歳以上〜中学生は10,000円が基本ですが、第3子以降や所得によって変動します。最新情報を自治体に確認することをお勧めします。
まとめ:NIPTと医療費控除に関する重要ポイント
- NIPTの費用は原則として医療費控除の対象外です
- その理由は、NIPTが「診断」であって「治療」ではないからです
- 医療費控除を受けるためには「治療」目的の費用であることが必要です
- NIPTの結果に基づく「治療」に関連する費用は、医療費控除の対象となる可能性があります
- NIPT以外の妊娠・出産関連では、様々な補助制度が利用できるため、お住まいの自治体に確認しましょう
よくある質問
Q1: NIPTと同様の出生前診断検査も医療費控除の対象外ですか?
はい、母体血清マーカー検査(クワトロテスト)、絨毛検査、羊水検査など、出生前診断を目的とした検査費用は原則として医療費控除の対象外です。これらも診断目的であり、治療行為ではないためです。
Q2: NIPTの費用を少しでも抑える方法はありますか?
医療機関選びが重要です。認可施設と無認可施設で費用が異なる場合があり、また検査項目を必要最小限に絞ることでも費用を抑えられる可能性があります。また、NIPTの結果が陽性だった場合、羊水検査などの確定検査費用を負担してくれる医療機関もありますので、事前に確認するとよいでしょう。
しかし、NIPTはご家族の一生にかかわる「お子さんの健康状態」に関する検査です。本当に安いほうがいいのかについて検討する必要があるでしょう。価格の安さだけでなく、医療機関の信頼性、検査の精度、専門医によるカウンセリングの質、アフターフォローの充実度なども重要な選択基準です。
Q3: 医療費控除を申請する際の注意点は?
確定申告の際に、医療費控除の対象となる費用と対象外の費用を正確に区別することが重要です。NIPTなど対象外の費用を含めて申請すると、税務署から指摘を受ける可能性があります。不明点がある場合は、事前に税務署や税理士に相談することをお勧めします。
また、領収書や明細書は5年間保管する必要があります。e-Taxで確定申告する場合でも、税務署から求められた際に提示できるように保管しておきましょう。
Q4: 妊娠・出産に関して医療費控除の対象となる費用は?
妊娠中の異常(切迫流産や妊娠高血圧症候群など)に対する治療費、正常分娩でない場合の入院・手術費用、緊急時のタクシー代(公共交通機関の利用が困難な場合)などが医療費控除の対象となります。
通常の妊婦健診や正常分娩の費用は対象外ですが、合併症や異常分娩の場合は対象となる可能性があります。具体的なケースについては、税理士や税務署に確認することをお勧めします。
参考資料:
- 母体血を用いた出生前遺伝学的検査の費用(国税庁)
- 厚生労働省「妊婦健康診査について」
- 内閣府「児童手当制度の概要」
制度変更の可能性がありますので、最新情報は国税庁や各自治体のホームページでご確認ください。