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「クアトロテストは陰性だったけれど、本当に大丈夫なのだろうか」。ブログや体験談で「陰性だったのにダウン症だった」という話を読んで、不安になった方もいると思います。結論から言うと、クアトロテスト(クアトロ検査)が陰性でも、赤ちゃんがダウン症候群である可能性は残ります。それは検査が間違っていたからではなく、クアトロテストがもともと「確率を出す検査」で、診断をつける検査ではないからです。この記事では、陰性という結果が何を意味するのか、どのくらいの割合で陰性と報告されるのか、「あてにならない」と言われる理由、NIPTとの違いを、確認できたデータにもとづいて説明します。
- ➤クアトロテストの「陰性」が意味すること(確率が基準より低い、という結果)
- ➤ダウン症候群の検出率(81〜87%)と、陰性と報告される割合(13〜19%)
- ➤見逃しが起こる3つの理由と、「あてにならない」と言われる背景
- ➤NIPTとの検出率・陽性的中率の違いと、陽性的中率が低い検査をどう考えるか(がん検診との比較)
- ➤ダウン症候群のほかにNIPTで調べられる病気と、「調べられる範囲」でのプランの選び方
⏱️ 30秒でわかる要約
🔎 Q. クアトロテストが陰性でも、ダウン症候群の可能性はありますか?
あります。ダウン症候群の検出率は約81〜87%で、ダウン症候群の赤ちゃんを妊娠していた方の13〜19%は陰性と報告されています。陰性は「確率が基準(1/295)より低い」という意味で、可能性がなくなったという意味ではありません。
🤔 Q. クアトロ検査は「あてにならない」のですか?
役割が違います。クアトロ検査は、確定検査を受けるかどうかを考えるための確率を出す検査です。国内の集計では、陰性だった方のうちダウン症候群の赤ちゃんを妊娠していたのは約2,900人に1人でした。確率を見積もる材料にはなりますが、診断の代わりにはなりません。
🌸 Q. 陰性でも不安が残るときは?
NIPT(ダウン症候群の検出率99.7%)で改めて調べる方法があります。NIPTも確定検査ではありませんが、クアトロテストより検出率が高く、陽性と出る人も少ない検査です。当院のNIPTは妊娠9週から受けられ、クアトロテストの結果が出たあとの週数でも受けられます。陽性なら、確定検査まで院内で受けられます。
\ クアトロテストの結果のあと、NIPTを考えている方へ /
ダウン症候群のほかに、子育ての負担につながりやすい病気まで調べられることも知っておいてください。
1. クアトロテスト(クアトロ検査)とは?
クアトロテスト(クアトロ検査)は、妊婦さんの血液に含まれる4つの成分(AFP・hCG・uE3・インヒビンA)を測り、年齢や妊娠週数などと合わせて、赤ちゃんがダウン症候群(21トリソミー)、18トリソミー、開放性神経管奇形である確率を計算する検査です[1]。妊娠15週0日から21週6日まで受けられます[1]。赤ちゃんのDNAを直接調べる検査ではなく、診断をつける検査でもありません。
結果は「1/500」のような確率で届きます。ダウン症候群では、カットオフ値(陽性と陰性を分ける基準)の1/295より確率が高ければ「スクリーニング陽性」、低ければ「スクリーニング陰性」と報告されます[2]。つまり陰性とは、「確率が基準より低い」という結果です。「ダウン症候群ではない」という意味ではありません[1]。
💡 用語解説:スクリーニング検査と確定検査
スクリーニング検査は、可能性が高い人を見つけるための検査で、結果は確率や「陽性・陰性」で示されます。クアトロテストもNIPTもこちらに入ります。確定検査は、羊水検査や絨毛検査のように赤ちゃん由来の細胞の染色体を直接調べる検査で、結果は診断になります。スクリーニング検査の「陰性」と、確定検査の「異常なし」は、同じ意味ではありません。
4つの成分のくわしい説明、受ける時期、費用、結果の数字の読み方は、クアトロ検査とは?わかること・費用・結果の見方にまとめています。この記事では「陰性だったとき」にしぼって説明します。
2. クアトロテスト陰性でもダウン症になる理由
「クアトロテストで陰性だったのに、生まれてきた赤ちゃんがダウン症だった」。ブログや体験談でこうした話を読むと、検査が間違っていたのではないかと感じるかもしれません。けれども、これは検査の仕組みから、一定の割合で起こることです。
米国で約3万8千人を対象に行われた研究では、陽性と出る人が5%になるように基準を置いた場合、クアトロテストのダウン症候群の検出率は81%でした[3]。国内の検査会社による19,112例の集計では、ダウン症候群の赤ちゃんを妊娠していた45例のうち39例が陽性で、検出率は87%でした[1]。裏返すと、ダウン症候群の赤ちゃんを妊娠していても、13〜19%は陰性と報告されることになります。国内の集計では、45例のうち6例が陰性でした。「見逃し率は約20%」と言われるのは、この数字のことです。
💡 用語解説:偽陰性(ぎいんせい)
実際には病気があるのに、検査では陰性と出ることを偽陰性といいます。クアトロテストでは、「確率は基準より低かったが、実際にはダウン症候群だった」場合がこれにあたります。検査の失敗ではなく、確率で線を引く検査では避けられないものです。
なぜ見逃しが起きるのか?
理由は大きく3つあります。
❶ 間接的に測っている
クアトロテストが測るのは、赤ちゃんや胎盤で作られてお母さんの血液に流れ込んだ成分の量です[1]。赤ちゃんの染色体を直接見ているわけではありません。ダウン症候群のときに平均からずれやすい成分を使いますが、ダウン症候群でも値が平均に近いことがあります。
❷ 計算に使う情報の影響
確率の計算には、妊娠週数、体重、家族歴、インスリンを使う糖尿病の有無なども使われます[2]。申告した妊娠週数が実際とずれていると、それだけで確率が変わります。双子の妊娠では、検出率は一人の妊娠の場合より低いと考えられています[2]。
❸ カットオフ値で線を引いている
陽性と陰性は、1/295という基準で分けられます[2]。確率は連続した数字で、1/290と1/300の間に医学的な段差があるわけではありません。基準を厳しくすれば見つかる人は増えますが、病気でないのに陽性と出る人も増えます。
では、陰性だった方の中に、ダウン症候群の赤ちゃんを妊娠していた方はどのくらいいたのでしょうか。国内の集計から計算すると、陰性と報告された17,349例のうち6例で、約2,900人に1人でした[1]。陰性であれば確率はかなり低いと言えますが、ゼロではありません。
もう一つ知っておきたいのは、陰性という結果が示しているのは、ダウン症候群・18トリソミー・開放性神経管奇形の3つについてだけだという点です。13トリソミーや、心臓など体のつくりの変化は、クアトロテストの対象ではありません。対象外のものについては、陰性という結果からは何もわかりません。
🩺 院長コラム【「陰性だから大丈夫」と受け取る前に】
クアトロテストの「陰性」は、「確率が基準より低い」という結果です。ところが「陰性」という言葉は「病気ではない」という意味に受け取られやすく、検査の前にその違いが伝わっていないと、あとで「陰性だったのに」という思いにつながります。
臨床遺伝専門医として、検査の説明では「この結果で何がわかり、何がわからないか」を採血の前に言葉にしておくことが大切だと考えています。結果が出てから限界を知るのと、限界を知ったうえで結果を受け取るのとでは、同じ「陰性」でも受け止め方が変わるからです。
3. クアトロテストの感度80%が意味すること
「感度」は、病気のある赤ちゃんを妊娠している人のうち、検査で陽性と出る人の割合のことです。この記事で「検出率」と呼んでいるものと同じです。感度80%とは、ダウン症候群の赤ちゃんを妊娠している妊婦さんが100人いたとき、80人は陽性、20人は陰性と報告されるという意味です。
📊 感度80%の具体例
ダウン症候群の赤ちゃんを妊娠している妊婦さん100人がクアトロテストを受けた場合、80人は「陽性」と報告され、20人は「陰性」と報告されます。この20人が、いわゆる見逃し(偽陰性)にあたります。
間違えやすいのは、感度80%を「陽性なら80%の確率でダウン症候群」「陰性なら80%の確率で違う」と読んでしまうことです。感度は、病気のある人を100人集めたときの数字です。陽性や陰性と言われた人がどのくらいの確率なのかは、陽性的中率・陰性的中率という別の指標で表します。指標の違いは感度・特異度と陽性的中率・陰性的中率の解説で説明しています。
文献による感度データ
クアトロテストの検出率には、条件の違う2つのデータがあります。
2つの検出率が違うのは、陽性とする基準の置き方が違うためです。陽性と出る人を多くとれば、検出率は上がります。
クアトロ検査が「あてにならない」と言われるのはなぜ?
「クアトロ検査はあてにならない」という声は、主に2つの経験から出てきます。1つは、陰性だったのに赤ちゃんがダウン症候群だったという経験です。もう1つは、陽性と言われて羊水検査を受けたら、赤ちゃんはダウン症候群ではなかったという経験です。国内の集計では、受けた人の約9%が陽性になり、そのうち実際にダウン症候群の赤ちゃんを妊娠していたのは約2%でした[1]。
どちらも、検査が壊れているから起こるのではありません。クアトロ検査は、お腹に針を刺す確定検査を受けるかどうかを、年齢だけでなく、もう一段くわしい確率で考えるための検査です。「ある・ない」を決める検査だと思って受けると、期待と結果が食い違います。採血だけで受けられること、検査が原因で流産が起こらないこと、NIPTでは対象にならない開放性神経管奇形について手がかりが得られることは、この検査の役割として今も変わりません。
大事なのは、受ける前に限界を知っておくことです。受けるかどうかを決めるときの考え方は、クアトロ検査の解説ページで説明しています。
4. クアトロテストとNIPTの精度比較
クアトロテストより検出率が高い検査に、NIPT(新型出生前診断)があります。NIPTは、お母さんの血液に含まれる赤ちゃん由来(正確には胎盤由来)のDNAの断片を調べる検査です。複数の研究をまとめた解析では、一人の妊娠の場合、ダウン症候群の検出率は99.7%、偽陽性率は0.04%と報告されています[4]。
| 比較項目 | クアトロテスト | NIPT |
|---|---|---|
| ダウン症候群の検出率 | 81〜87% | 99.7% |
| 陰性と報告される割合(見逃し) | 13〜19% | 0.3% |
| 病気でないのに陽性と出る割合 | 5〜約9% | 0.04% |
| 受けられる時期 | 妊娠15週0日〜21週6日 | 当院では妊娠9週から(妊娠6〜8週は臨床研究として) |
| 検査の方法 | 採血 | 採血 |
| 対象 | ダウン症候群・18トリソミー・開放性神経管奇形 | ダウン症候群・18トリソミー・13トリソミーなど(プランにより、微小欠失症候群や単一遺伝子疾患まで範囲が広がる) |
| 結果の形 | 確率(1/○○) | 陽性・陰性・判定保留 |
クアトロテストは[3][1]、NIPTは[4]による。NIPTの0.3%は、検出率99.7%から計算した値です。
💡 用語解説:NIPT(新型出生前診断)
お母さんの血液の中には、胎盤からはがれ落ちたDNAの断片が流れています。NIPTはこの断片を調べて、染色体の数の変化などを見つける検査です。成分の量から確率を計算するクアトロテストと違い、DNAそのものを手がかりにするため検出率が高くなります。ただしNIPTもスクリーニング検査で、確定検査ではありません。
どちらも採血だけで受けられ、検査が原因で流産が起こることはありません。違うのは、何を測っているかと、結果の形です。カットオフ値の考え方や、2つの検査のくわしい違いは、下の関連記事で説明しています。
5. 陽性的中率の違い|陽性判定の信頼性
ここまでは陰性の話でしたが、陽性の受け取り方も知っておくと、検査の性質がつかみやすくなります。国内の集計では、クアトロテストで陽性と報告された1,763例のうち、実際にダウン症候群の赤ちゃんを妊娠していたのは39例、約2%でした[1]。陽性と言われた方の大半は、赤ちゃんがダウン症候群ではなかったことになります。
💡 用語解説:陽性的中率(PPV)
陽性と出た人のうち、実際に病気のある赤ちゃんを妊娠していた人の割合です。受ける人の年齢によって変わり、年齢が高いほど高くなります。検出率が高い検査でも、もともとの頻度が低い病気では、陽性的中率は低くなります。
陽性的中率の比較
NIPTの80.9%は、年齢の高い方に限らない一般の妊婦さんを対象にした研究の数字です[5]。陽性的中率は年齢が高いほど上がるので、受ける方の年齢によってこの数字は変わります。どちらの検査でも、陽性は診断ではなく、確かめるには羊水検査などの確定検査が必要です。NIPTの精度の数字の読み方はNIPTの精度・確率と陽性的中率の解説でまとめています。
クアトロテストで陽性と言われたときに、すぐ羊水検査を受けるか、先にNIPTを受けるかという選び方は、クアトロテストが陽性のときで説明しています。
陽性的中率が低いと『無駄な確定検査』が増える? ― がん検診と比べて考える
「陽性的中率が低い検査は、体に負担のかかる確定検査をむだに増やす」。出生前検査について、こうした心配の声があります。上で見たように、クアトロテストの陽性的中率は約2%でした。けれども、陽性的中率が数%の検査はほかにもあります。身近な例が、がん検診です。
胸部X線で行う日本の自治体の肺がん検診では、国が2008年の報告書で示した陽性反応適中度(要精密検査とされた人のうち、実際に肺がんだった人の割合)の許容値は「1.3%以上」です[14]。米国の大規模試験(NLST)では、陽性的中率は低線量CTで2.4〜5.2%、胸部X線で4.4〜6.7%でした[12]。それでも低線量CTによる検診は、肺がんによる死亡を減らすことが示されています[13]。
X線はCTより「怪しい」と判定する人が少ないぶん、陽性的中率は少し高くなりますが、そのかわり見逃しも多くなります。CTは拾い上げる範囲を広げたぶん陽性的中率が下がりましたが、死亡を減らしました。陽性的中率が低いことは、それだけで「悪い検査」を意味するわけではありません。
がん検診の精密検査にも危険はあります。米国の診療データ(保険請求データ)を使った調査では、肺の異常を調べる精密検査を受けた人は、受けなかった人に比べて、重い合併症が針生検で4.0%、気管支鏡で13.4%、胸部手術で11.3%多く起きていました[15]。一方、出生前検査の確定検査については、英国の医療施設で行われた研究(1施設のコホート研究)で、絨毛検査・羊水検査を受けた人と受けなかった人のあいだに、流産の割合の統計的な差は見られませんでした(絨毛検査0.29%、羊水検査−0.36%で、どちらも統計的な差なし)[16]。研究の規模や方法が違うので数字をそのまま並べて比べることはできませんが、「陽性的中率が低いと、体に負担のかかる検査が増える」という心配は、少なくとも肺がん検診にも同じように当てはまり、がん検診ではそれでも検診が行われています。
それでも出生前検査で慎重な意見が出るのには、理由があります。まず、検査の結果が、妊娠を続けるかどうかの判断に直結することです。いちばん大きな危険は、陽性のあと確定検査を受けずに妊娠をやめる選択をしてしまうことで、陽性的中率が低いと、本当は病気のない赤ちゃんが失われるおそれがあります。また、結果を待つ間の不安が大きく、判断できる期間にも限りがあります。さらに、微小欠失などは症状の幅が広く、わかっても見通しが立てにくいことがあり、学会によって考え方が分かれています(下の22q11.2欠失症候群の項を参照)。
一方で、陽性的中率だけを見ると『外れの陽性』ばかりに目が向きますが、拾い上げなければ、本当に病気がある赤ちゃんについて、ご家族が生まれる前に知り、出産する施設や生まれてすぐの治療を準備するか、妊娠を続けるかどうかを考える機会そのものがなくなります。見逃しにも、外れの陽性と同じように重い結果があります。
実際に、先天的な病気が生まれる前にわかったお母さんは、生まれてから初めて知ったお母さんに比べて、心の面の生活の質が高かったという報告があります[17]。また、重い心臓の病気では、生まれる前にわかっていると生まれてすぐの治療を早く始められ、大血管転位症では手術の前後に亡くなる赤ちゃんが減ったと報告されています[18]。ただし前者はポルトガルの小規模な研究で、生まれる前に知ることで出産までの不安やつらさが増えるという報告もあり、研究によって結果は分かれています。
弱点は検査そのものではなく、確定検査で確かめる前に決めてしまうことにあります。だから当院では、陽性になったら院内で確定検査(絨毛検査・羊水検査)を受けられ、主要な検査項目は3日以内、マイクロアレイ検査は2週間ほどで結果が出る体制をとっています。陽性のカウンセリングは何度でも無料で受けられ、確定検査の費用は互助会で補助されます(上限なし)。
NIPTは、可能性のある赤ちゃんを見逃さずに拾い上げるための検査です。陽性になったときに大切なのは、確定検査で本当にそうかを確かめてから考えることです。当院では、その確定検査まで院内で受けられます。
6. なぜNIPTが選ばれるのか
クアトロテストが陰性でも不安が残るとき、次の選択肢として挙がるのがNIPTです。米国産科婦人科学会は、NIPTを、主な染色体の数の変化について感度と特異度が最も高いスクリーニング検査と位置づけています。同時に、偽陽性も偽陰性も起こりうること、確定検査の代わりにはならないことも明記しています[6]。NIPTが選ばれる理由は、次の3つに整理できます。
🕐 早い時期に受けられる
クアトロテストは妊娠15週以降ですが、NIPTはそれより早く受けられます。当院のNIPTは妊娠9週から受けられます。妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。
🎯 検出率が高く、偽陽性が少ない
ダウン症候群の検出率は99.7%、偽陽性率は0.04%と報告されています[4]。陽性と出る人が少ないので、確定検査を受けるかどうかを考えることになる人も少なくなります。
🛡️ 採血だけで受けられる
クアトロテストと同じく採血だけの検査です。お腹に針を刺さないので、検査が原因で流産が起こることはありません。
⚠️ NIPTにも限界があります
NIPTもスクリーニング検査です。陽性のときは羊水検査・絨毛検査での確定が必要で、陰性でも可能性がなくなるわけではありません。結果が出ず判定保留になることもあります[6]。また、開放性神経管奇形はNIPTの対象ではないため、超音波検査などで確かめます。NIPTが陰性だったのにダウン症候群だった例については、NIPTの偽陰性の解説をご覧ください。
🩺 院長コラム【検査は「何がわからないか」も見て選ぶ】
出生前検査を比べるとき、検出率の高さに目が行きます。けれども、同じくらい知っておきたいのは「この検査では何がわからないか」です。クアトロテストは13トリソミーを対象にしていません。NIPTは神経管の状態を調べられません。どの検査にも、対象外のものと、一定の割合で起こる偽陽性・偽陰性があります。
臨床遺伝専門医として、検査の説明で大切なのは、結果の速さよりも、結果の意味を正しく受け取れることだと考えています。陰性でも陽性でも、その結果が何を示していて、次に何ができるのかがわかっていれば、結果に振り回されにくくなります。内科医の立場から見ると、陽性的中率が数%でも拾い上げを優先するという考え方は、がん検診ではすでに受け入れられているものだと考えています。
7. ミネルバクリニックのNIPT
ミネルバクリニックは、臨床遺伝専門医が常駐し、NIPTの検査前の説明から、陽性のときの確定検査までを院内で行っています。クアトロテストのあとにNIPTを検討される方に関係する点をまとめます。
🔬 検査の方法と調べる範囲
プランによって方法と範囲が異なります。スタンダードプランは13・18・21トリソミーと性染色体の数の異常に加えて、22q11.2欠失症候群を含む微小欠失6種類7疾患を調べます。ダイヤモンドプランは、米国の3大遺伝子検査会社の一角が提供するCOATE法(SNP法とターゲット法の組み合わせ)※を使います。微小欠失・重複は双子マックスプラン・インペリアルプランで92種類、単一遺伝子(de novo変異)はインペリアルプランで最大155遺伝子・202疾患、ダイヤモンドプランで56遺伝子が対象です。
🏥 確定検査まで院内で
2025年6月から、羊水検査・絨毛検査を院内で行っています。主要な検査項目は3日以内に、マイクロアレイ検査は2週間ほどで結果が出ます。確定検査のために別の施設へ移る必要はありません。
👩⚕️ 臨床遺伝専門医が常駐
90分の受診枠の中で、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、検査の内容と限界を説明します。陽性だったときのカウンセリングは何度でも無料で受けられます。
💰 互助会
NIPTを受ける方は全員、2つの互助会(カトレア会8,000円・安心検査結果保障制度6,000円)に加入します。収益目的ではない事業のため、会費は消費税の対象外です。NIPTで陽性となって確定検査を受ける場合、その費用はカトレア会から補助されます(上限なし)。
※「3大遺伝子検査会社」は、遺伝性がんや周産期(出生前検査・保因者検査)を含む遺伝子検査全般を手がける米国の検査専業会社のうち、2025年通期の売上高が上位の3社を指します(各社の決算発表にもとづく当院調べ)。がん検診やリキッドバイオプシーに特化した会社は含みません。
当院のNIPTは妊娠9週から受けられます。妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。クアトロテストの結果が出たあとの週数でも受けられます。結果が出るまでの目安は、基本は10〜14日です(インペリアルプランの単一遺伝子の結果だけは3〜4週間。ダイヤモンドプランは単一遺伝子も10〜14日)。クアトロテストのあとは週数が進んでいるので、陽性だった場合の確定検査の日程も含めて、早めに予定を立てておくと安心です。
料金のほかに必要な費用(互助会の会費や検査結果の作成費用3,300円など)はNIPTの検査費用以外にかかるものにまとめています。遠方の方は、Zoomで臨床遺伝専門医の遺伝カウンセリングを受け、全国110か所の提携医療機関で採血するオンラインNIPTも利用できます。
8. ダウン症候群のほかにもNIPTで調べられる病気
ここまで、クアトロテストとNIPTでダウン症候群を調べる話をしてきました。ダウン症候群を調べることの意味は変わりません。そのうえで、検査を選ぶ前に知っておいていただきたいのが、NIPTでは、ダウン症候群のほかにも、ご家族の暮らしに大きくかかわる病気を調べられるということです。クアトロテストで調べるのはダウン症候群・18トリソミー・開放性神経管奇形ですが、NIPTはプランによって、微小欠失症候群や単一遺伝子疾患まで範囲を広げられます。
子育てのストレスと行動の問題
知的障害を伴う病気のお子さんのご家族を比べた研究では、スミス・マゲニス症候群、ウィリアムズ症候群、プラダー・ウィリー症候群のご家族は、ダウン症候群のご家族より子育てのストレスが高いと報告されています[7]。ストレスを最も強く左右していたのは、知的障害の程度よりも、攻撃的な行動や自傷などの行動の問題、睡眠の問題でした[7]。
アンジェルマン症候群やスミス・マゲニス症候群では他人への攻撃的な行動が、コルネリア・デ・ランゲ症候群やスミス・マゲニス症候群、プラダー・ウィリー症候群では自傷が多いことが分かっています[8]。こうした病気はどれも当院のNIPTで調べられます。スミス・マゲニス症候群、プラダー・ウィリー症候群、アンジェルマン症候群はすべてのプランで、コルネリア・デ・ランゲ症候群はダイヤモンドプラン・インペリアルプランで、ウィリアムズ症候群はインペリアルプラン・双子マックスプランで調べられます。
自閉スペクトラム症についても、原因の一部になる染色体や遺伝子の変化(16p11.2欠失・重複、フェラン・マクダーミッド症候群など)は、当院のNIPTで調べられます。わかるのは「一部」で、陰性でも自閉スペクトラム症の心配がなくなるわけではありません。くわしくはNIPTで自閉症はわかる?検査の範囲と限界で説明しています。ダウン症候群に加えてどこまで調べるかを、検査を選ぶ前に一度考えてみてください。
22q11.2欠失症候群を調べる意味
22q11.2欠失症候群は、妊娠中の赤ちゃんのおよそ1,000人に1人にみられ、微小欠失症候群の中で最も多い病気です[10]。多くは親から受け継いだものではなく新しく起こる変化で、母親の年齢とは関係がありません[10]。心臓の病気、免疫の働きの低下、低カルシウム血症、口蓋裂、発達の遅れなどを伴うことがあり、自閉スペクトラム症を伴う割合も一般より高いと報告されています[11][10]。
米国臨床遺伝・ゲノム学会(ACMG)は、年齢にかかわらずすべての妊婦さんに、22q11.2欠失症候群のNIPTを提供することを提案しています[9]。一方、米国母体胎児医学会(SMFM)は、22q11.2欠失を調べる場合は検査前に十分な説明を受けて選ぶことを求めています。学会によって考え方が分かれる項目だからこそ、検査前の遺伝カウンセリングが大切です。
生まれる前に分かっていれば、出産する施設の選び方や、生まれてすぐの心臓・カルシウム・免疫の検査など、赤ちゃんを迎える準備ができます。当院では、スタンダードプランから22q11.2欠失症候群を調べられます。ただし微小欠失は、数の異常に比べて陽性的中率が低めなので、陽性のときは確定検査で確かめることが必要です(微小欠失の陽性的中率)。
検査は「値段」ではなく「調べられる範囲」で選ぶ ― 1つの病気あたりで考えると
「ダウン症候群だけが心配」という方は少なくありません。けれども、出生前検査で調べる病気は、どれも赤ちゃんとご家族の暮らしに大きくかかわるものです。そして、ご家族の子育ての負担を最も大きく左右するのは、知的障害の程度よりも、攻撃的な行動や自傷、睡眠の問題といった「行動の問題」だと分かっています[7]。こうした行動の問題を伴いやすい病気には、ダウン症候群ではなく、微小欠失症候群や単一遺伝子疾患が多く含まれます[7][8]。三大トリソミーだけを調べる検査では、これらの病気は調べられません。
出生前検査は、その後の人生を左右するかもしれない検査です。『安さ』だけで選んで大丈夫でしょうか。
三大トリソミーだけを調べる検査を仮に10万円とすると、1つの病気あたりは約3万3千円です。当院のインペリアルプランは、全常染色体と性染色体の数の異常、92種類の微小欠失・重複、202の単一遺伝子疾患を調べます。性染色体の数の異常も含めて、数えられる病気だけで320になり、1つの病気あたりは約1,700円です。さらに、5Mbを超える欠失・重複はすべての染色体が対象なので、数えきれないほどの変化を調べていることになります。数えられる分だけでも、これだけの範囲を調べられます。
| プラン | 主に調べる範囲 | 数えた病気の数 | 1つの病気あたり |
|---|---|---|---|
| 三大トリソミーだけを調べる検査 (仮に10万円とした場合) |
13・18・21トリソミー | 3 | 約33,333円 |
| スタンダード (220,000円) |
13・18・21トリソミー、性染色体の数の異常、微小欠失6種類7疾患 | 14 | 約15,714円 |
| プレミアム (264,000円) |
13・18・21・15・16・22トリソミー、性染色体の数の異常、微小欠失12種類13疾患 | 23 | 約11,478円 |
| ダイヤモンド (407,000円) |
プレミアムの範囲+単一遺伝子56 | 79 | 約5,152円 |
| 双子マックス (440,000円) |
全常染色体の数の異常、92種類の微小欠失・重複、5Mbを超える構造異常 | 114+α | 約3,860円 |
| インペリアル (550,000円) |
全常染色体の数の異常、性染色体の数の異常、92種類の微小欠失・重複、5Mbを超える構造異常、単一遺伝子202疾患 | 320+α | 約1,719円 |
※価格は事前学習動画を見て来院した場合の当日割引後の税込価格です。最新の料金は料金ページをご確認ください。
※病気の数は、数の異常・微小欠失・重複・単一遺伝子疾患を1つずつ数えたものです。性染色体の数の異常は4種類(ターナー症候群・クラインフェルター症候群・トリプルX症候群・XYY症候群)として数えています(性染色体を調べるのはスタンダード・プレミアム・ダイヤモンド・インペリアル。双子マックスは調べません)。5Mbを超える構造異常は数に入れていないため、双子マックスとインペリアルは実際にはさらに多くの変化を調べています。
※『三大トリソミーだけを調べる検査』は計算のための仮の例で、特定の施設の価格ではありません。
ただし、病気の数が多いほど良い検査、というわけではありません。調べる範囲が広がると、陽性になる可能性も、確定検査が必要になる場面も増えます。だからこそ、どこまで調べるかは、検査前の遺伝カウンセリングで一緒に考えてプランを選ぶことが大切です。なお、双子の妊娠で選べるのはスタンダードプランと双子マックスプランです。
各プランの調べる範囲は、それぞれのページでくわしく説明しています。
プレミアムプラン15・16・22トリソミーと微小欠失12種類
ダイヤモンドプランプレミアムの範囲+単一遺伝子56
双子マックスプラン双子でも全常染色体と微小欠失・重複92種類
インペリアルプラン全常染色体・92種類・単一遺伝子202疾患
どこまで調べたいかは、ご家族によって違います。90分の受診枠の中で、常駐する臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、どのプランが合うかを一緒に考えます。
🏥 クアトロテストのあと、NIPTを検討している方へ
ミネルバクリニックは臨床遺伝専門医が常駐し、陽性なら確定検査(羊水検査・絨毛検査)まで院内で受けられます。主要な検査項目は3日以内に結果が出ます。当院のNIPTは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。NIPT専用ダイヤル:03-3408-3768
よくある質問(FAQ)
Q1. クアトロテストで陰性だったのに、ダウン症の赤ちゃんが生まれることはありますか?
あります。クアトロテストのダウン症候群の検出率は約81〜87%で、ダウン症候群の赤ちゃんを妊娠していた方の13〜19%は陰性と報告されています。陰性は「確率が基準(1/295)より低い」という意味で、「ダウン症候群ではない」という診断ではありません。
Q2. ダウン症候群のほかにも、調べておいたほうがよい病気はありますか?
ダウン症候群を調べることの大切さは変わりませんが、ほかにも知っておいていただきたい病気があります。知的障害を伴う病気のお子さんのご家族を比べた研究では、スミス・マゲニス症候群、ウィリアムズ症候群、プラダー・ウィリー症候群のご家族は子育てのストレスが高く、ストレスを最も強く左右していたのは知的障害の程度よりも行動の問題でした。こうした病気は三大トリソミーだけを調べる検査ではわかりません。当院ではスタンダードプランから22q11.2欠失症候群やプラダー・ウィリー症候群、アンジェルマン症候群などの微小欠失を、ダイヤモンドプラン・インペリアルプランでは単一遺伝子疾患まで調べられます。どこまで調べるかは、検査前の遺伝カウンセリングで一緒に考えます。
Q3. クアトロ検査はあてにならないのですか?
役割を知ったうえで使えば、あてにならない検査ではありません。クアトロ検査は、確定検査を受けるかどうかを考えるための確率を出す検査です。国内の集計では、陰性だった方のうちダウン症候群の赤ちゃんを妊娠していたのは約2,900人に1人でした。一方で、診断をつける検査ではないため、陰性でも可能性は残り、陽性でも大半はダウン症候群ではありません。
Q4. クアトロテストとNIPTはどちらが精度が高いですか?
ダウン症候群の検出率は、クアトロテストが約81〜87%、NIPTが99.7%です。病気でないのに陽性と出る割合も、クアトロテストの5〜約9%に対し、NIPTは0.04%と報告されています。ただしクアトロテストは、NIPTでは調べられない開放性神経管奇形も対象にしています。どちらも確定検査ではありません。
Q5. クアトロテストで陽性と言われました。本当にダウン症ですか?
陽性は診断ではありません。国内の集計では、陽性と報告された方のうち、実際にダウン症候群の赤ちゃんを妊娠していたのは約2%でした。確かめるには羊水検査が必要です。羊水検査の前にNIPTを受けて、もう一度確率を確かめる方法もあります。大切なのは、確定検査で確かめる前に結論を出さないことです。
Q6. クアトロテストを受けた後でもNIPTを受けられますか?
受けられます。当院のNIPTは妊娠9週から受けられ(妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます)、妊娠15週以降に行うクアトロテストの結果が出たあとの週数でも受けられます。NIPTで陽性だった場合は確定検査にさらに日数がかかるため、早めに予定を立てることをお勧めします。
Q7. クアトロテストのあとにNIPTを受けると、結果はいつ出ますか?
結果が出るまでの目安は、基本は10〜14日です。インペリアルプランの単一遺伝子の結果だけは3〜4週間かかります(ダイヤモンドプランは単一遺伝子も10〜14日)。陽性で院内の確定検査を受ける場合は、主要な検査項目は3日以内に、マイクロアレイ検査は2週間ほどで結果が出ます。
Q8. NIPTで陰性なら100%安心ですか?
いいえ。NIPTのダウン症候群の検出率は99.7%と報告されていますが、100%ではありません。NIPTもスクリーニング検査で、陰性でも可能性がごくわずかに残ります。また、NIPTが調べているのは対象の染色体などに限られ、赤ちゃんのすべての病気がわかるわけではありません。
Q9. 遠方ですがNIPTを受けられますか?
オンラインNIPTを利用できます。Zoomで臨床遺伝専門医の遺伝カウンセリングを受け、全国110か所の提携医療機関で採血する形です。
Q10. NIPTで陽性だった場合、その後はどうなりますか?
確定のために羊水検査・絨毛検査を受けるかどうかを決めます。陽性のカウンセリングは何度でも無料で受けられ、確定検査もそのまま院内で受けられます。主要な検査項目は3日以内に、マイクロアレイ検査は2週間ほどで結果が出ます。確定検査の費用は互助会(カトレア会)から補助されます(上限なし)。
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参考文献
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※本記事は一般の方に向けた情報提供を目的とするもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。検査を受けるかどうかは、主治医の説明を受けたうえでご自身で判断してください。






