目次
- 1 NIPTの全染色体検査とは ― 1〜22番すべての数と大きな欠失・重複を調べる検査
- 2 全染色体の欠失・重複まで調べると何が見つかるか ― 公表された症例から
- 3 全染色体を調べると陽性的中率が下がるのはなぜ?
- 4 「全染色体検査は意味ない」と言われる理由 ― 学会の見解と日本の状況
- 5 陽性的中率が低いと「無駄な確定検査」が増える? ― がん検診と比べて考える
- 6 自閉症・発達障害・知的障害もNIPTで一部わかる ― 当院で調べられること
- 7 全染色体検査を受けるなら確かめたいこと ― 陽性のあとまで含めて選ぶ
- 8 ダウン症候群だけで大丈夫? ― 「値段」ではなく「調べられる範囲」で選ぶ
- 9 よくある質問(FAQ)
- 10 関連記事
- 11 参考文献
📍 クイックナビゲーション
NIPTの全染色体検査とは、13・18・21番だけでなく、1〜22番すべての常染色体の数の異常と、大きな欠失・重複を調べる検査です。全部を調べると安心に思える一方で、「意味ない」「偽陽性が多い」という声も目にします。結論からお伝えすると、全染色体を調べると陽性的中率(陽性と出た人のうち、本当に赤ちゃんにその変化がある人の割合)は下がります。それでも、NIPTは可能性のある赤ちゃんを拾い上げ、確定検査で確かめることにつなげるスクリーニング検査です。この記事では、全染色体検査でわかること・わからないこと、公表された症例から見る構造の変化、陽性的中率が下がる理由と実際のデータ、学会の見解、陽性になったときの流れまでを、臨床遺伝専門医の立場から解説します。
⏱️ 30秒でわかる要約
🧬 Q. NIPTの全染色体検査で何がわかりますか?必要ですか?
1〜22番すべての常染色体の数の異常と、5Mbを超える大きな欠失・重複を調べます。13・18・21番だけの検査では見つからない変化を拾い上げられる一方、陽性なら確定検査で確かめることが前提です。当院では双子マックスプランとインペリアルプランで全常染色体を調べられます。
👶 Q. ダウン症候群だけ調べれば大丈夫ですか?
大丈夫とは言えません。子育ての負担を最も一貫して左右するのは、知的障害の程度よりも、攻撃的な行動や自傷といった行動の問題です。それを伴いやすいのは、ダウン症候群よりも微小欠失症候群や単一遺伝子疾患で、三大トリソミーだけの検査では調べられません。当院のNIPTはこれらの病気まで調べられます。
🔎 Q. 「全染色体検査は意味ない」と言われるのはなぜ?
13・18・21番以外のトリソミーは、陽性でも多くは胎盤だけの変化で、オランダの全国調査では赤ちゃんに確認されたのは経過を追えた97人のうち6人(6%)でした。一方、染色体の一部の欠失・重複では32%で赤ちゃんの変化が確認されています。陽性的中率が低いことは「意味がない」と同じではありません。
🏥 Q. 陽性だったらどうなりますか?
確定検査(羊水検査・絨毛検査)で赤ちゃんの染色体を確かめます。当院では確定検査まで院内で受けられ、主要な検査項目は3日以内、マイクロアレイ検査は2週間ほどで結果が出ます。
🧩 Q. NIPTで自閉症や発達障害はわかりますか?
一部はわかります。当院のNIPTは、自閉症・発達障害・知的障害の原因になる遺伝子や染色体の変化の一部を調べられます。ただし、陰性でも自閉症・発達障害・知的障害がないとは言えません。
ダウン症候群だけで大丈夫ですか? 当院のNIPTは、子育ての負担につながりやすい微小欠失症候群や単一遺伝子疾患まで調べられます。どこまで調べるかは、90分の受診枠の中で臨床遺伝専門医と一緒に決められます。
まだどのプランにするか決めていない方は、全常染色体を調べるプランのページからご覧ください。
インペリアルプラン | 双子マックスプラン | NIPTの費用・料金
NIPTの全染色体検査とは ― 1〜22番すべての数と大きな欠失・重複を調べる検査
ヒトの細胞には、1番から22番までの常染色体が2本ずつと、性染色体(X・Y)があります。一般的なNIPTが調べるのは、このうち13番・18番・21番の3つの染色体の数です。全染色体検査は、これを1〜22番すべての常染色体に広げた検査で、「全ゲノムNIPT」と呼ばれることもあります。数の異常に加えて、染色体の一部が欠けている「欠失」や、一部が増えている「重複」のうち、大きなものも調べます。
13・18・21番以外の常染色体のトリソミー(特定の染色体が3本ある状態)は、まとめて「まれな常染色体トリソミー(RAT)」と呼ばれます。オランダで一般の妊婦さんに全染色体を調べるNIPTを行った全国調査では、RATが見つかったのは0.18%でした[1]。番号ごとの特徴は、1〜8番染色体(Vol.1)、9〜16番染色体(Vol.2)、17〜22番・性染色体(Vol.3)で解説しています。
💡 用語解説:まれな常染色体トリソミー(RAT:ラット)
Rare Autosomal Trisomy の略で、13・18・21番以外の常染色体が3本ある状態をいいます。NIPTでは7番・16番・8番・20番などが見つかります[1]。赤ちゃん本人ではなく、胎盤だけに見られることが多いのが特徴です。詳しくはまれな常染色体トリソミー(RAT)とはをご覧ください。
全染色体検査でわかること・わからないこと
「全染色体」という名前から、赤ちゃんのことがすべてわかるように感じるかもしれません。しかし、NIPTで調べられるのは染色体の数の変化と、ある程度の大きさをもつ欠失・重複が中心です。「全染色体を調べた=すべての病気がないとわかった」ではありません。当院の双子マックスプラン・インペリアルプランで調べる範囲を、わかることとわからないことに分けて整理します。
🧬 全染色体を調べる当院のNIPTで、わかること・わからないこと
| 調べるもの | わかるか | 補足 |
|---|---|---|
| 1〜22番すべての常染色体の数の異常 | わかる | 13・18・21・9・16・22番が報告の対象。それ以外の番号で見つかった数の異常も、偶発的所見として報告します |
| 5Mbを超える欠失・重複 | わかる | すべての染色体・全領域が対象。詳しくは5Mb全染色体スキャン |
| 微小欠失・重複症候群 | わかる(92種類) | 22q11.2欠失症候群、ウィリアムズ症候群、16p11.2欠失・重複など |
| 性染色体の数の異常 | インペリアルはわかる | 双子マックスでわかるのはY染色体の有無だけで、ターナー症候群などの数の異常は調べません |
| 単一遺伝子疾患 | インペリアルはわかる | 最大155遺伝子・202疾患 |
| 量の変わらない均衡型転座 | わからない | 染色体の量が増減しないため、NIPTには表れません |
| 片親性ダイソミー(UPD) | わからない | 確定検査でとった検体で調べます |
| 心臓など体のつくりの異常そのもの | わからない | 超音波検査で確認します |
※当院のインペリアルプラン・双子マックスプランのページの記載にもとづきます。
ここで大切なのは、見つかったときに確定検査で確かめられる体制があるかという点です。全染色体を調べると、陽性になる場面も、確定検査が必要になる場面も増えるからです。NIPTで調べる項目の全体像はNIPTの検査項目にまとめています。
全染色体の欠失・重複まで調べると何が見つかるか ― 公表された症例から
全染色体を調べる意味は、まれなトリソミーだけではありません。むしろ、染色体の一部が欠けたり増えたりしている「構造の変化」を、13・18・21番以外の染色体でも拾い上げられることに大きな意味があります。オランダの全国調査でも、染色体の一部の欠失・重複が見つかった人の32%で、赤ちゃんに同じ変化が確認されました[1]。まれなトリソミー(6%)よりはっきり高い割合です。
海外の検査会社が公表した症例:欠失・重複・不均衡型転座
全染色体の欠失・重複を調べるNIPTで変化が見つかり、確定検査で確かめられた例として、海外の検査会社が公表した症例の一部を表にまとめました。当院で見つかった症例ではありません。どんな大きさ・種類の変化が、どの確定検査で確かめられるのかを知っていただくための例です。
📋 全染色体を調べるNIPTで見つかり、確定検査で確かめられた構造の変化の例
| 種類 | 染色体の変化 | 大きさ | 確定検査の方法 |
|---|---|---|---|
| 欠失 | 5番短腕の欠失(5p-症候群〔猫鳴き症候群〕) | 34Mb | 羊水のマイクロアレイ検査 |
| 欠失 | 5番短腕の欠失(5p-症候群〔猫鳴き症候群〕) | 30.7Mb | 羊水検査 |
| 欠失 | 4番短腕の欠失(ウォルフ・ヒルシュホーン症候群) | 21Mb | 羊水検査 |
| 欠失 | 8番短腕の欠失 | 17Mb | 羊水のG分染法(顕微鏡で見る染色体検査) |
| 重複 | 8番長腕の重複 | 50Mb | 羊水のG分染法 |
| 重複 | 2番短腕の重複 | 16.3Mb | 羊水のマイクロアレイ検査 |
| 重複 | 11番短腕の重複 | 16Mb | 羊水のマイクロアレイ検査 |
| 不均衡型転座 | 7番短腕の一部と9番の大部分の重複(母親が7番と9番の均衡型転座の保因者) | 約15Mb+約107.5Mb | 羊水のマイクロアレイ検査 |
| 不均衡型転座 | 3番長腕の重複と5番長腕の欠失(母親が3番と5番の均衡型転座の保因者) | 69.4Mb+2.2Mb | 羊水のマイクロアレイ検査 |
※海外の検査会社が公表した症例資料より、当院で整理したものです。資料の中で大きさや位置の記載が食い違う症例、確定検査の方法が書かれていない症例は除いています。
💡 用語解説:マイクロアレイ検査・G分染法
マイクロアレイ検査は、染色体の小さな欠失・重複まで調べられる確定検査の方法です。G分染法は、染色体を染めて顕微鏡で形を見る従来の方法で、数十Mbのような大きな変化なら確かめられます。マイクロアレイ検査のしくみは染色体マイクロアレイ(CMA)とはで解説しています。
表にある5p-症候群(猫鳴き症候群)とウォルフ・ヒルシュホーン症候群は、当院では5p-症候群(猫鳴き症候群)・ウォルフ・ヒルシュホーン症候群として、スタンダードプランから微小欠失の項目に含めて調べています。一方、8番や11番、2番のように、名前のついた症候群に当てはまらない染色体の欠失・重複は、全染色体の5Mbスキャンがあるからこそ拾い上げられる変化です。
親の均衡型転座から、赤ちゃんの不均衡型転座が起こるしくみ
表の下の2つは、お母さんが「均衡型転座」の保因者だった例です。均衡型転座とは、2本の染色体の一部が入れ替わっていても、遺伝子の量は過不足なくそろっている状態で、ご本人の健康には多くの場合影響がありません。ところが、卵子や精子がつくられるときに染色体が分かれる組み合わせによっては、赤ちゃんに一方の染色体の一部が足りず、もう一方の一部が余分にある「不均衡型転座」が起こることがあります。
NIPTが見ているのは染色体の「量」なので、量が増減している不均衡型転座は、大きさによっては拾い上げられます。一方で、量が変わらない均衡型転座そのものは、NIPTではわかりません。ご夫婦のどちらかが均衡型転座の保因者かどうかは、ご夫婦の血液で行う染色体検査でわかります。流産をくり返す方の検査として行われることが多く、不育症の原因になる染色体異常で詳しく説明しています。均衡型・不均衡型の構造異常のしくみは、均衡型構造異常と不均衡型構造異常のページでも解説しています。
なお、染色体の転座とは別に、潜性(劣性)遺伝の病気について親が保因者かどうかを調べる方法もあります。当院では、NIPTと同時に行うカップルの保因者検査ファミリーセーフティ プラス(女性787遺伝子・男性714遺伝子。NIPTと同じ日に採血でき、単独では受けられません)を行っています。
当院のプランで対象になる範囲と、その限界
当院の双子マックスプランとインペリアルプランが調べるのは、すべての染色体にわたる5Mbを超える欠失・重複と、92種類の微小欠失・重複です。表の3番と5番の不均衡型転座の例でいえば、69.4Mbの重複は5Mbスキャンの対象の大きさですが、2.2Mbの欠失はそれより小さい変化です。このように、5Mbより小さく、92種類にも入らない変化は対象外になりうるため、「インペリアルプランならこれらの変化が全部見つかる」とは言えません。どこまで見つけられるかは、変化の大きさと場所によって変わります。
🩺 院長コラム【均衡型転座の保因者とわかったとき】
ご自身やパートナーが均衡型転座の保因者だとわかると、「健康な子は授からないのではないか」と考えてしまう方もいるかもしれません。けれども、保因者であっても、染色体の量に過不足のない赤ちゃんを授かる可能性は十分にあると考えています。保因者であることは、誰かの落ち度ではありません。
そのうえで大切なのは、赤ちゃんに不均衡型転座が起きたときに、それが13・18・21番だけを調べる検査では見つからない、という事実を知っておくことだと考えています。全染色体の欠失・重複まで調べる検査は、そうした変化を拾い上げる手段の一つです。どこまで調べるかを決めるための材料として、この記事を使っていただければと思います。
全染色体を調べると陽性的中率が下がるのはなぜ?
全染色体を調べると、13・18・21番だけを調べる場合に比べて陽性的中率が下がります。いちばん大きな理由は、まれなトリソミーが、赤ちゃん本人ではなく胎盤だけに起こっていることが多いためです。陽性的中率の考え方そのものは感度・特異度と陽性的中率・陰性的中率で、NIPTの精度の全体像はNIPTの精度と的中率で解説しています。
実際のデータ:オランダの全国調査(TRIDENT-2)
オランダでは、一般の妊婦さんを対象に、全染色体を調べるNIPTを国のスクリーニングとして導入しています。その最初の1年をまとめた研究(TRIDENT-2)では、NIPTを受けた73,239人のうち、56,818人(78%)が全染色体を調べる検査を選びました[1]。
📊 オランダの全国調査(TRIDENT-2)で見つかった13・18・21番以外の変化
| 見つかったもの | 人数(割合) | 確定した割合 |
|---|---|---|
| まれな常染色体トリソミー(RAT) | 101人(0.18%) | 経過を追えた97人のうち6人(6%)で赤ちゃんに確認 |
| 染色体の一部の欠失・重複(構造の変化) | 95人(0.16%) | 経過を追えた91人のうち29人(32%)で赤ちゃんに確認 |
| お母さんの悪性腫瘍が疑われる複雑な結果 | 11人 | 7人で悪性腫瘍または前がん病変が見つかり、そのうち5人はリンパ腫 |
出典:van der Meijら(Am J Hum Genet, 2019)[1]。全染色体を調べるNIPTを選んだ一般の妊婦さんのデータです。赤ちゃんに確認された6人の内訳は、モザイクの16トリソミー2人、モザイクの22トリソミー1人、トリソミーから生じた片親性ダイソミー3人です。
見つかったRATで最も多かったのは7トリソミー(32人)で、16トリソミー(14人)、8トリソミー(13人)、20トリソミー(11人)が続きました[1]。つまり、RATが陽性でも、赤ちゃん本人にその変化がある人は少数派です。一方で、同じ調査ではお母さん自身の病気(リンパ腫など)が見つかるきっかけになった例もありました[1]。全染色体を調べると、赤ちゃんのこと以外の情報が得られる場合があることも、検査の前に知っておいてほしい点です。お母さん側の要因についてはNIPTの偽陽性の原因:母体側の要因で解説しています。
陽性的中率を下げるいちばんの理由:胎盤限局性モザイク(CPM)と胎児発育不全
NIPTが調べている血液中のDNAの多くは、実は赤ちゃん本人ではなく、胎盤の細胞から出てきたものです。通常、胎盤と赤ちゃんの染色体は同じですが、受精卵が分裂していく途中で、胎盤だけに染色体の変化が残ることがあります。これが胎盤限局性モザイク(CPM)です。オランダの調査でも、RATが陽性だった97人のうち87人では、赤ちゃんにトリソミーは見つかりませんでした[1]。しくみはNIPTのモザイクとは?で解説しています。
💡 用語解説:胎盤限局性モザイク(たいばんげんきょくせいモザイク:CPM)
モザイクとは、同じ体の中に染色体の数が違う細胞が混ざっている状態です。胎盤限局性モザイクは、その違う細胞が胎盤だけにあり、赤ちゃん本人にはない状態をいいます。NIPTは胎盤由来のDNAを多く見ているため、赤ちゃんが正常でも陽性になることがあります。
ただし、「胎盤だけの変化だから心配ない」と言い切れるわけではありません。CPMのある妊娠181例と対照757例を比べた研究では、16トリソミーのCPMで、出生体重が3パーセンタイル未満になること(オッズ比11.2)と早産(オッズ比10.2)が多くみられました。一方、16番以外のCPMでは、妊娠の経過が悪くなる強い関連はみられず、著者らは16トリソミーを除けばCPMの妊娠で経過が悪くなる頻度は低いとまとめています[2]。胎盤の働きと赤ちゃんの発育(胎児発育不全)の関係は限局性胎盤モザイク(CPM)と胎児発育不良(FGR)の関係で、確定検査での見分け方は限局性胎盤モザイク(CPM)と羊水検査の役割で解説しています。
ほかの原因:バニシングツイン・お母さん側の要因
妊娠初期に成長が止まった双子の一方(バニシングツイン)に染色体の変化があると、そのDNAが血液中に残って陽性になることがあります。また、お母さん自身の染色体の変化や、上で触れた悪性腫瘍が結果に影響することもあります[1]。どれも赤ちゃん本人の染色体を直接調べる確定検査で区別できます。バニシングツインについてはバニシングツインとはをご覧ください。
「全染色体検査は意味ない」と言われる理由 ― 学会の見解と日本の状況
「全染色体検査は意味ない」という意見の背景には、海外の学会の見解があります。ただし、どの学会も全染色体検査を「危険な検査」としているわけではありません。効果を示すだけの根拠がまだ十分でない、というのが共通した立場です。
米国臨床遺伝・ゲノム学会(ACMG)の指針(2023年)
ACMGは2023年の指針で、RATをNIPTで調べることについて、「現時点では、勧めるにも勧めないにも十分な根拠がない」としました[3]。22q11.2欠失以外の欠失・重複を日常的に調べることも、勧めるだけの根拠が十分でないとしています[3]。一方で、22q11.2欠失症候群のNIPTは、すべての妊婦さんに提供することを提案しています(条件付きの推奨)[3]。ACMGは、調べる範囲を一律に広げることには慎重でも、見つける意味がはっきりしている病気は調べることを勧めています。
米国産婦人科学会(ACOG)の見解(2020年)
ACOGは2020年の診療指針で、全ゲノムで大きな欠失・重複を調べるNIPTについて、臨床的な検証がされておらず、検出率や偽陽性率も確立していないため勧められないとしています[4]。モザイクの16・22トリソミーは赤ちゃんが生存することもあるものの、スクリーニングは勧められない、とも述べています[4]。
日本の状況:認証施設でも臨床研究として始まる
日本の認証施設のNIPTは、13・18・21番の3つを対象にしてきました。その認証施設でも、全国11の医療機関が、すべての染色体を調べるNIPTの臨床研究を2026年2月にも始めると報じられています。妊婦さん約2,000人を対象に、2030年3月末まで行う見通しです[5]。報道では、対象は18歳以上で妊娠10週から37週未満の方のうち、超音波検査で赤ちゃんに何らかの病気が疑われた方や、染色体疾患のお子さんを出産したことがある方とされています[5]。
東京慈恵会医科大学附属病院の案内では、全染色体のNIPTを受けられるのは、①カップルのどちらかに均衡型転座などの染色体の構造異常がある場合、②着床前検査(PGT-A・PGT-SR)でモザイク胚を移植して妊娠した場合、③染色体疾患のお子さんの出産歴がある場合のいずれかに限られています[6]。認証施設でも、全染色体を調べる意味がある方がいることを前提に、対象を絞って始まっている段階です。①は、この記事の前半で見た不均衡型転座の考え方と重なります。
当院は認証外の施設ですが、臨床遺伝専門医が運営し、常駐する臨床遺伝専門医が検査前の遺伝カウンセリングから結果の説明、陽性後の確定検査まで院内で対応しています。全常染色体は双子マックスプランとインペリアルプランで調べており、検査の意味と限界を理解したうえで選んでいただくことを大切にしています。認証施設と当院のどちらがよいかではなく、ご自身に必要な範囲と、陽性のときの体制で選んでください。
陽性的中率が低いと「無駄な確定検査」が増える? ― がん検診と比べて考える
全染色体検査への批判で多いのが、「陽性的中率が低い検査は、本当は必要のない確定検査を増やす」という意見です。この心配はもっともなものです。ただ、陽性的中率が低い検査は、出生前検査だけではありません。がん検診と並べて考えてみます。
がん検診も、陽性的中率は数%
胸部X線で行う日本の自治体の肺がん検診では、国が2008年の報告書で示した陽性反応適中度(要精密検査とされた人のうち、実際に肺がんだった人の割合)の許容値は「1.3%以上」です[7]。米国の大規模試験(NLST)では、2回目・3回目の検診の陽性反応適中度は低線量CTで2.4〜5.2%、胸部X線で4.4%(2回目)でした[8]。それでも低線量CTによる検診は、胸部X線と比べて肺がんによる死亡を20.0%減らしたと報告されています[9]。
X線は「怪しい」と判定する人がCTより少ないぶん見逃しも多くなり、CTは拾い上げを広げたぶん陽性的中率が下がりましたが、死亡を減らしました。「陽性的中率が低い=悪い検査」ではないということです。がん検診の精密検査にも危険はあり、米国の保険請求データを使った調査では、肺の異常を調べる精密検査を受けた55〜77歳の人は、受けなかった人に比べて、重い合併症が針生検で4.0%、気管支鏡で13.4%、胸部手術で11.3%多く起きていました[10]。それでも肺がん検診は行われています。
出生前検査の確定検査については、英国の1施設のコホート研究で、絨毛検査・羊水検査を受けた人と受けなかった人で、流産の割合に統計的な差は見られなかったと報告されています(検査による上乗せは絨毛検査0.29%、羊水検査−0.36%で、どちらも統計的な差なし)[11]。研究の規模や方法が違うので、がん検診の数字と直接並べて比べることはできませんが、確定検査で確かめることは、出生前検査でも現実的な選択肢です。
それでも出生前検査で慎重論が出る理由
出生前検査には、がん検診とは違う難しさもあります。検査の結果が、妊娠を続けるかどうかの判断に直結することです。いちばん大きな危険は、陽性のあと確定検査を受けずに妊娠をやめる選択をしてしまうことで、陽性的中率が低いと、本当は病気のない赤ちゃんが失われるおそれがあります。結果を待つ間の不安が大きいこと、判断できる期間に限りがあること、構造の変化によっては見つかっても見通しが立てにくいことも、慎重論の理由です。
一方で、陽性的中率だけを見ると「外れの陽性」ばかりに目が向きますが、拾い上げなければ、本当に病気がある赤ちゃんについて、ご家族が生まれる前に知り、出産する施設や生まれてすぐの治療を準備するか、妊娠を続けるかどうかを考える機会そのものがなくなります。見逃しにも、外れの陽性と同じように重い結果があります。先天的な病気が生まれる前にわかったお母さんは、生まれてから初めて知ったお母さんに比べて、心の面の生活の質が高かったという小規模な研究の報告があります[12]。また、重い心臓の病気では、生まれる前にわかっていると生まれてすぐの手術を早く行え、大血管転位症では手術の前後に亡くなる赤ちゃんが減ったと報告されています[13]。
つまり弱点は検査そのものではなく、「確定検査で確かめる前に決めてしまうこと」にあります。NIPTは、可能性のある赤ちゃんを見逃さずに拾い上げるための検査です。陽性になったときに大切なのは、確定検査で本当にそうかを確かめてから考えることです。当院では、その確定検査まで院内で受けられます。精度についてはNIPTの精度のページもあわせてご覧ください。
🩺 院長コラム【「陽性的中率が低いから意味がない」をどう考えるか】
内科医としてがんの診療にも携わってきた立場から見ると、陽性反応適中度が数%の肺がん検診が「死亡を減らす検診」として受け入れられている一方で、NIPTだけが「陽性的中率が低いから意味がない」と言われることには、違和感があると考えています。スクリーニング検査に求められるのは、確定検査ほど高い陽性的中率ではなく、可能性のある人を見逃さずに拾い上げることだからです。
もちろん、出生前検査には妊娠を続けるかどうかという重い判断がかかわります。だからこそ、陽性の結果だけで決めずに、確定検査で確かめることが欠かせないと考えています。全染色体を調べるかどうかは、陽性になったときの意味と限界を理解したうえで、ご自身に合った選択を考えるための材料として判断していただきたいと思います。
自閉症・発達障害・知的障害もNIPTで一部わかる ― 当院で調べられること
お子さんの発達を心配するのは自然なことです。自閉症・発達障害・知的障害の原因はさまざまで、多くは特定できませんが、一部は染色体や遺伝子の変化で起こることが分かっています。当院のNIPTは、こうした原因の一部を妊娠中に調べられます。全染色体を調べるかどうかを考えるときは、「数の異常」だけでなく、どんな病気まで調べられるかを合わせて見ることが大切です。
ダウン症候群だけを調べればよいわけではない
出生前検査で調べる病気は、どれも赤ちゃんの命や発達、そしてご家族の暮らしに大きくかかわるものです。ただ、その中身は病気によって大きく異なります。
ダウン症候群は、医療や支援の進歩で寿命が延び、西オーストラリアの研究では平均寿命が58.6歳と報告されています[14]。知的障害のあるお子さんを比べた研究では、ダウン症候群のお子さんは、自閉症や脳性麻痺のお子さんに比べて、行動の問題が少ないと報告されています[15]。自閉スペクトラム症を伴う割合も16%で、出生前検査で調べるほかの病気と比べて少ないことが分かっています[16]。
一方、18トリソミーや13トリソミーでは、1歳まで生きられる赤ちゃんは約1割にとどまります(18トリソミー13.4%・13トリソミー11.5%)[17]。また、微小欠失症候群や単一遺伝子疾患の中には、重い知的障害やてんかんに加えて、自閉スペクトラム症を高い割合で伴い、ご家族の見守りや介護の負担が大きくなりやすい病気も少なくありません。自閉スペクトラム症を伴う割合は、レット症候群(女性)61%、コルネリア・デ・ランゲ症候群43%、アンジェルマン症候群34%と報告されています[16]。
知的障害を伴う病気のお子さんのご家族を比べた研究では、スミス・マゲニス症候群、ウィリアムズ症候群、プラダー・ウィリー症候群のご家族は、ダウン症候群のご家族より子育てのストレスが高いと報告されています[18]。ストレスを最も一貫して左右していたのは、知的障害の程度よりも、お子さんの情緒や行動の問題でした[18]。アンジェルマン症候群やスミス・マゲニス症候群では他人への攻撃的な行動が、コルネリア・デ・ランゲ症候群やスミス・マゲニス症候群、プラダー・ウィリー症候群などでは自傷が多いことが分かっています[19]。また、自閉スペクトラム症のお子さんの親は、ほかの障害のお子さんの親より子育てのストレスが高いことがメタ解析で示されています(効果量0.64)[20]。著者らは、ダウン症候群のお子さんとの比較で差が出やすいことについて、ダウン症候群ならではの事情を反映している可能性があるとして、慎重に解釈するよう求めています[20]。
スミス・マゲニス症候群・プラダー・ウィリー症候群・アンジェルマン症候群はすべてのプランで、コルネリア・デ・ランゲ症候群とレット症候群はダイヤモンドプラン・インペリアルプランで、ウィリアムズ症候群はインペリアルプラン・双子マックスプランで調べられます。ダウン症候群だけを調べればよいのか、検査を選ぶ前に考えていただきたい点です。
22q11.2欠失症候群を調べる意味
22q11.2欠失症候群は、妊娠中の赤ちゃんのおよそ1,000人に1人にみられる病気で、多くは親から受け継いだものではなく新しく起こる変化です[21]。心臓の病気、免疫の働きの低下、副甲状腺の働きの低下、口蓋の異常、発達の遅れなどを伴うことがあります[21]。知的発達への影響は比較的軽めでも、心臓・免疫・精神面の合併症が多いのが特徴で、国際的な研究では、6〜12歳のお子さんの37%に注意欠如・多動症(ADHD)が、25歳を超えた方の41%に統合失調症などの精神病性障害がみられました[22]。自閉スペクトラム症を伴う割合は11%と報告されています[16]。
上で触れたとおり、ACMGは年齢にかかわらずすべての妊婦さんに、22q11.2欠失症候群のNIPTを提供することを提案しています[3]。生まれる前に分かっていれば、出産する施設の選び方や、生まれてすぐの心臓・カルシウム・免疫の検査など、赤ちゃんを迎える準備ができます。当院では、スタンダードプランから22q11.2欠失症候群を調べられます。微小欠失は数の異常に比べて陽性的中率が低め(項目によって60〜70%程度)なので、陽性なら確定検査が必要です。詳しくは22q11.2欠失症候群(ディジョージ症候群)をご覧ください。
当院のプラン別に調べられる範囲
📋 当院のNIPTのプランと、自閉症・発達障害・知的障害を伴うことがある主な病気
| プラン | 数の異常 | 微小欠失・重複 | 単一遺伝子 | 自閉症・発達障害・知的障害を伴うことがある主な病気 |
|---|---|---|---|---|
| スタンダード | 13・18・21+性染色体 | 6種類7疾患 | - | 22q11.2欠失症候群、アンジェルマン症候群、プラダー・ウィリー症候群、スミス・マゲニス症候群、猫鳴き症候群 |
| プレミアム | 13・18・21・15・16・22 | 12種類13疾患 | - | スタンダードの病気+ジェイコブセン症候群など |
| ダイヤモンド | プレミアムと同じ | 12種類13疾患 | 56遺伝子 | 上の病気+レット症候群、コルネリア・デ・ランゲ症候群、CHARGE症候群 |
| 双子マックス | 全常染色体(1〜22番) | 92種類+5Mbを超える構造異常 | - | ウィリアムズ症候群、16p11.2欠失・重複など |
| インペリアル | 全常染色体(1〜22番)+性染色体 | 92種類+5Mbを超える構造異常 | 最大155遺伝子(202疾患) | 上の病気+フェラン・マクダーミッド症候群、ピット・ホプキンス症候群など |
※プレミアム・ダイヤモンド・インペリアルは単胎の妊娠が対象です。双子マックスは性染色体の数の異常を調べません。
単一遺伝子の病気まで調べる意味について、超音波検査で赤ちゃんの異常が疑われた妊婦さんを対象にした研究では、染色体の検査に加えて単一遺伝子の病気も調べると、見つかった病気の数が約1.6倍(61件→98件、60.7%増)に増えたと報告されています[23]。この研究の検査の感度は98.5%・特異度は99.3%でした[23]。すべての妊婦さんで1.6倍になるという意味ではありません。
性染色体の数の異常は分けて考える
性染色体の数の異常(クラインフェルター症候群[47,XXY]、トリプルX[47,XXX]、47,XYY、ターナー症候群[45,X]など)は、ほかの染色体の病気とは事情が大きく異なります。性染色体が1本多いお子さんの平均のIQはおおむね正常の範囲ですが、ことばの発達に苦手さが出ることが多いと報告されています[24]。自閉スペクトラム症の診断も一般より多く、XYYで19%、XXYで11%でした[25]。早めに分かっていれば、ことばの発達を見守り、必要な支援を早めに考えることができると考えています。なお、性染色体の数を調べるのはインペリアルプランで、双子マックスプランでわかるのはY染色体の有無だけです。
⚠️ 正直にお伝えしたい限界
陽性なら確定検査が必要です(当院は院内で行います)。微小欠失は陽性的中率が低めです。陰性でも、自閉症・発達障害・知的障害がないとは言えません。脆弱X症候群などNIPTで調べられない原因もあり、症状の重さは予測できません。まれですが偽陰性の可能性もあります。こうした病気は大多数のお子さんには当てはまらないことも、あわせて知っておいてください。くわしくは自閉症はNIPTでわかりますか?をご覧ください。
ダウン症候群だけでなく、18・13トリソミーや微小欠失症候群、一部の自閉症・発達障害・知的障害の原因まで、当院のNIPTでわかります。
まだどのプランにするか決めていない方は、単一遺伝子まで調べるプランのページからご覧ください。
ダイヤモンドプラン | インペリアルプラン | NIPTを受けるべきか迷う方へ
全染色体検査を受けるなら確かめたいこと ― 陽性のあとまで含めて選ぶ
全染色体を調べる検査を選ぶときに確かめたいのは、調べる範囲だけではありません。陽性になったときに、誰が結果を説明し、確定検査をどこで受けられるかまで含めて選ぶことが大切です。ほかの施設と比べるときにも、次の点を確かめてください。
- ➤どの染色体・どの病気を調べるか(全常染色体か、性染色体を含むか、何Mbを超える欠失・重複を探すか、単一遺伝子まで調べるか)
- ➤陽性のとき、確定検査(羊水検査・絨毛検査、マイクロアレイ検査)をどこで、どのくらいの期間で受けられるか
- ➤検査の前後に、臨床遺伝専門医による遺伝カウンセリングを受けられるか
- ➤確定検査の費用の補助があるか
当院で全常染色体を調べられるのは双子マックスとインペリアル
当院で1〜22番すべての常染色体の数の異常を調べるのは、双子マックスプランとインペリアルプランです。どちらも13・18・21・9・16・22番を報告の対象とし、それ以外の番号で数の異常が見つかった場合も偶発的所見として報告します。92種類の微小欠失・重複と、すべての染色体にわたる5Mbを超える欠失・重複も対象です。インペリアルプランは性染色体の数の異常と単一遺伝子(最大155遺伝子・202疾患)まで調べます。双子マックスプランは双子の妊娠に対応したプランで、性染色体の数の異常は調べません。15・16・22番のトリソミーまでを調べるなら、プレミアムプラン・ダイヤモンドプランもあります。
陽性になったときの流れ
陽性の場合も、確定検査(絨毛検査・羊水検査)まで院内で受けられます。主要な検査項目は3日以内に、マイクロアレイ検査は2週間ほどで結果が出ます。陽性のあとの遺伝カウンセリングは何度でも無料です。13・18・21番以外のトリソミーでは、胎盤の細胞を調べる絨毛検査がモザイクの影響を受けることがあるため、どちらの確定検査を選ぶかも遺伝カウンセリングで相談します。オランダの調査で赤ちゃんに確認された例には、トリソミーそのものではなく、トリソミーから生じた片親性ダイソミー(UPD)も含まれていました[1]。確定検査の精度とモザイクのときの限界は羊水検査・絨毛検査の精度とは?で、2つの確定検査の違いは絨毛検査と羊水検査の違いで解説しています。
NIPTを受ける方は全員、2つの互助会に加入していただきます。羊水検査互助会(カトレア会)は1回のNIPTにつき8,000円で、陽性のときの確定検査の費用を補助します(補助の上限はありません)。安心検査結果保障制度は1回のNIPTにつき6,000円で、再検査が必要になったのに流産して再検査ができず、結果が出なかったときに、検査代金(諸費用を除く)を返金する制度です。
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受けられる時期と、結果が出るまでの日数
当院のNIPTは妊娠9週から受けられます。さらに、できるだけ早い時期に結果を知りたい方のために、妊娠6〜8週から臨床研究として受けられる体制を整えています。当院がおすすめしているのは妊娠8週で、8週で受けた場合の再検査率は約5%です(当院のデータ)。週数が早いほど、血液中の赤ちゃん由来のDNAが少なく、判定できずに再検査になることがあります。10週を過ぎても、16週でも受けられます。全染色体を調べて陽性になった場合は、確定検査を受けて結果を待ち、そのうえで考える時間が必要になるため、早めに受けることには意味があると考えています。
結果が出るまでの目安は基本的に10〜14日で、インペリアルプランの単一遺伝子の結果だけは3〜4週間かかります。陰性の場合は、結果をマイページでお知らせします。90分の受診枠の中で、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、4Dエコーで赤ちゃんの状態を確認してから検査に進みます。来院が難しい方は、オンラインNIPT(Zoomでのカウンセリング+全国110か所の提携施設で採血)もご利用いただけます。
ダウン症候群だけで大丈夫? ― 「値段」ではなく「調べられる範囲」で選ぶ
「ダウン症候群だけが心配」という方は少なくありません。けれども、出生前検査で調べる病気は、どれも赤ちゃんとご家族の暮らしに大きくかかわるものです。そして、ご家族の子育ての負担を最も一貫して左右するのは、知的障害の程度よりも、攻撃的な行動や自傷といった「行動の問題」だと分かっています[18]。こうした行動の問題を伴いやすい病気には、ダウン症候群ではなく、微小欠失症候群や単一遺伝子疾患が多く含まれます[18][19]。三大トリソミーだけを調べる検査では、これらの病気は調べられません。
出生前検査は、その後の人生を左右するかもしれない検査です。『安さ』だけで選んで大丈夫でしょうか。
三大トリソミーだけを調べる検査を仮に10万円とすると、1つの病気あたりは約3万3千円です。
当院のインペリアルプランは、全常染色体と性染色体の数の異常、92種類の微小欠失・重複、202の単一遺伝子疾患を調べます。性染色体の数の異常も含めて、数えられる病気だけで320になり、1つの病気あたりは約1,719円です。さらに、5Mbを超える欠失・重複はすべての染色体が対象なので、数えきれないほどの変化を調べていることになります。数えられる分だけでも、これだけの範囲を調べられます。
| プラン | 主に調べる範囲 | 数えた病気の数 | 1つの病気あたり |
|---|---|---|---|
| 三大トリソミーだけを調べる検査 (仮に10万円とした場合) |
13・18・21トリソミー | 3 | 約33,333円 |
| スタンダード (220,000円) |
13・18・21トリソミー、性染色体の数の異常、微小欠失6種類7疾患 | 14 | 約15,714円 |
| プレミアム (264,000円) |
13・18・21・15・16・22トリソミー、性染色体の数の異常、微小欠失12種類13疾患 | 23 | 約11,478円 |
| ダイヤモンド (407,000円) |
プレミアムの範囲+単一遺伝子56 | 79 | 約5,152円 |
| 双子マックス (440,000円) |
全常染色体の数の異常、92種類の微小欠失・重複、5Mbを超える構造異常 | 114+α | 約3,860円 |
| インペリアル (550,000円) |
全常染色体の数の異常、性染色体の数の異常、92種類の微小欠失・重複、5Mbを超える構造異常、単一遺伝子202疾患 | 320+α | 約1,719円 |
※価格は事前学習動画を見て来院した場合の当日割引後の税込価格です。最新の料金は料金ページをご確認ください。※病気の数は、数の異常・微小欠失・重複・単一遺伝子疾患を1つずつ数えたものです。性染色体の数の異常は4種類(ターナー症候群・クラインフェルター症候群・トリプルX症候群・XYY症候群)として数えています(性染色体を調べるのはスタンダード・プレミアム・ダイヤモンド・インペリアル。双子マックスは調べません)。5Mbを超える構造異常は数に入れていないため、双子マックスとインペリアルは実際にはさらに多くの変化を調べています。※『三大トリソミーだけを調べる検査』は計算のための仮の例で、特定の施設の価格ではありません。
ただし、調べる病気の数が多いほど良い検査、というわけではありません。この記事で見てきたように、調べる範囲が広がると、陽性になる可能性も、確定検査が必要になる場面も増えます。だから、どこまで調べるかは、検査前の遺伝カウンセリングで、臨床遺伝専門医と一緒に決めていただきます。
🏥 どこまで調べるかを、検査の前に決めるために
どこまで調べたいかは、ご家族によって違います。90分の受診枠の中で、常駐する臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、どのプランが合うかを一緒に考えます。陽性でも、確定検査(羊水検査・絨毛検査)まで院内で受けられ、主要項目は3日以内に結果が出ます。
まだどのプランにするか決めていない方は、調べられる範囲と費用を比べたページからご覧ください。
NIPT専用ダイヤル:03-3408-3768
よくある質問(FAQ)
Q1. ダウン症候群だけ調べれば大丈夫ですか?
ダウン症候群だけを調べれば大丈夫、とは言えません。知的障害を伴う病気のお子さんのご家族を比べた研究では、スミス・マゲニス症候群、ウィリアムズ症候群、プラダー・ウィリー症候群のご家族は、ダウン症候群のご家族より子育てのストレスが高く、ストレスを最も一貫して左右していたのは知的障害の程度よりも行動の問題でした。こうした病気は三大トリソミーだけを調べる検査ではわかりません。当院ではスタンダードプランから22q11.2欠失症候群やプラダー・ウィリー症候群、アンジェルマン症候群などの微小欠失を、ダイヤモンドプラン・インペリアルプランでは単一遺伝子疾患まで調べられます。どこまで調べるかは、検査前の遺伝カウンセリングで一緒に考えます。
Q2. NIPTの全染色体検査は意味がないのですか?
意味がないとは考えていません。13・18・21番以外のまれなトリソミーは、陽性でも赤ちゃんに確認される割合が低く、オランダの全国調査では経過を追えた97人のうち6人(6%)でした。米国臨床遺伝・ゲノム学会(ACMG)も、まれなトリソミーをNIPTで調べることを勧めるにも勧めないにも根拠が足りないとしています。一方で、NIPTはスクリーニング検査で、可能性のある赤ちゃんを拾い上げ、確定検査で確かめることにつなげる検査です。同じ調査では、染色体の一部の欠失・重複が見つかった人の32%で赤ちゃんの変化が確認されました。陽性になったら必ず確定検査で確かめることが前提です。
Q3. NIPTの全染色体検査で何がわかりますか?
1〜22番すべての常染色体の数の異常(トリソミーなど)と、5Mbを超える大きな欠失・重複を調べます。当院では双子マックスプランとインペリアルプランが全常染色体を解析し、92種類の微小欠失・重複も対象です。インペリアルプランは性染色体の数の異常と、単一遺伝子(最大155遺伝子・202疾患)も調べます。双子マックスプランで性染色体についてわかるのはY染色体の有無だけです。片親性ダイソミーや、心臓など体のつくりの異常そのものはNIPTではわかりません。
Q4. 全染色体検査で、染色体の欠失・重複や転座はどこまでわかりますか?
双子マックスプランとインペリアルプランでは、すべての染色体を対象に5Mbを超える欠失・重複を探します。親が均衡型転座の保因者で、赤ちゃんに一方の染色体の欠失ともう一方の重複(不均衡型転座)が起きた場合も、その変化が5Mbを超えていれば対象になります。ただし、5Mbより小さく、92種類の微小欠失・重複にも入らない変化は対象外になりうるため、すべての構造の変化がわかるわけではありません。NIPTでわかるのは染色体の量の増減で、転座そのものや、量の変わらない均衡型転座はわかりません。
Q5. 全染色体検査で偽陽性が多いのはなぜですか?
NIPTが調べている血液中のDNAの多くは、赤ちゃん本人ではなく胎盤から出てきたものだからです。胎盤だけに染色体の変化がある胎盤限局性モザイクでは、赤ちゃんは正常でもNIPTは陽性になります。13・18・21番以外のトリソミーは、この胎盤だけの変化として見つかることが多く、陽性的中率が低くなります。妊娠初期に成長が止まった双子の一方(バニシングツイン)や、お母さん側の要因が原因になることもあります。
Q6. 全染色体検査で陽性になったら、どうすればよいですか?
陽性の結果だけで判断せず、確定検査(羊水検査・絨毛検査)で赤ちゃんの染色体を確かめてください。13・18・21番以外のトリソミーでは、胎盤の細胞を調べる絨毛検査がモザイクの影響を受けることがあるため、どちらの検査を選ぶかも遺伝カウンセリングで相談します。当院では確定検査まで院内で受けられ、主要な検査項目は3日以内、マイクロアレイ検査は2週間ほどで結果が出ます。陽性のあとの遺伝カウンセリングは何度でも無料です。
Q7. 認証施設でも全染色体のNIPTは受けられますか?
認証施設では、全国11の医療機関が全染色体を調べるNIPTの臨床研究を始めると報じられています。報道では、対象は超音波検査で赤ちゃんに何らかの病気が疑われた方や、染色体疾患のお子さんの出産歴がある方などとされています。東京慈恵会医科大学附属病院の案内では、対象はカップルのどちらかに均衡型転座などの染色体の構造異常がある場合、着床前検査でモザイク胚を移植して妊娠した場合、染色体疾患のお子さんの出産歴がある場合のいずれかに限られています。当院では、双子マックスプランとインペリアルプランで全常染色体を調べています。
Q8. 全染色体を調べるには、どのプランを選べばよいですか?
全常染色体の数の異常を調べるのは、双子マックスプランとインペリアルプランです。インペリアルプランは単胎の妊娠が対象で、性染色体の数の異常と単一遺伝子(最大155遺伝子・202疾患)まで調べます。双子マックスプランは双子の妊娠に対応したプランで、性染色体の数の異常は調べません。15・16・22番のトリソミーまでを調べるなら、プレミアムプランとダイヤモンドプランもあります。どれが合うかは、90分の受診枠の中で、臨床遺伝専門医の遺伝カウンセリングを受けて決めていただきます。
Q9. 全染色体検査はいつから受けられて、結果はいつわかりますか?
当院のNIPTは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。結果が出るまでの目安は基本的に10〜14日で、インペリアルプランの単一遺伝子の結果だけは3〜4週間かかります。週数が早いほど、血液中の赤ちゃん由来のDNAが少なく、判定できずに再検査になることがあります。
Q10. 全染色体検査の費用はいくらですか?
プランごとの金額は料金ページでご確認ください。料金には、臨床遺伝専門医による遺伝カウンセリング、4Dエコー、性別判定が含まれます。検査結果の作成費用は別途かかります。また、NIPTを受ける方は全員、陽性のときの確定検査の費用を補助する羊水検査互助会(カトレア会。補助の上限なし)と、安心検査結果保障制度に加入していただきます。
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参考文献
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※本記事は一般の方に向けた情報提供を目的とするもので、個別の診断・検査の選択を示すものではありません。検査については臨床遺伝専門医にご相談ください。






