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【医師監修】羊水検査の流産リスクは0.3%|NIPT検査との比較と安全な選択肢

この記事のポイント
  • 羊水検査による流産リスクは0.3%(1000人に3人)と低確率ながら存在する
  • NIPT検査は流産リスクゼロで高精度、ただし確定診断ではない
  • 安全性と正確性を考慮すると、まずNIPT検査を受け、陽性なら羊水検査を検討するのが一般的
  • 羊水検査は妊娠16週〜18週が最適時期、結果は2〜3週間で判明
  • 検査前の遺伝カウンセリングで不安や疑問を解消することが重要

赤ちゃんの染色体異常を調べる「羊水検査」は、ほぼ100%の精度で確定診断ができる検査方法です。一方で、お腹に針を刺して羊水を採取するため、「流産のリスクがある」と言われています。このリスクについて不安を感じている妊婦さんも多いのではないでしょうか。

この記事では、羊水検査による流産の確率、なぜ「侵襲的検査」と呼ばれるのか、その理由を医学的根拠とともに詳しく解説します。また、流産リスクのないNIPT(新型出生前診断)との比較や、安全に検査を受けるための注意点についても紹介しています。羊水検査を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。

流産になるリスクを伴う羊水検査とは?

まずは羊水検査の基本情報と、なぜ流産リスクがあるのかについて見ていきましょう。

羊水検査が侵襲的検査と呼ばれる理由

「侵襲的」という言葉は、母体や胎児の体を傷つける可能性がある検査方法を意味します。羊水検査では、妊婦さんのお腹に極細の針を刺し、子宮内の羊水を採取するため、この「侵襲的検査」に分類されます。

羊水検査手技のイメージ画像

羊水検査の基本手順

  1. 超音波検査で胎児・胎盤の位置を確認
  2. 局所麻酔を打つ場合もある(麻酔なしでも可能)
  3. 超音波ガイド下で穿刺針を挿入
  4. 羊水を20ml程度採取(約30秒の作業)
  5. 検査後は40分程度の安静が必要

羊水検査は、ダウン症候群など染色体異常についてほぼ確実に検査できる確定診断です。母体から採取した羊水内の胎児細胞を培養し、染色体を分析します。こうして胎児が持つ染色体数の異常(本来46本あるべき染色体が多い・少ない)や、染色体の構造異常を高精度で診断できます。

子宮に針を刺すことに不安を感じる妊婦さんは多いですが、実際の羊水採取にかかる時間は約30秒と短時間です。検査後の安静時間も含めても、全体で1時間程度で終了します。

侵襲的検査の種類

胎児の染色体検査には、羊水検査以外にも侵襲的検査があります:

検査名 検査時期 流産リスク 特徴
羊水検査 妊娠16週〜18週 約0.3%
(1000人に3人)
羊水中の胎児細胞を培養して染色体を分析
絨毛検査 妊娠11週〜14週 約1%
(100人に1人)
胎盤になる組織(絨毛)を採取して染色体を分析
羊水検査より早い時期に結果が得られる

※絨毛検査は実施している医療機関が限られています。また手技が難しく、流産リスクが羊水検査より高いため、羊水検査を選択する妊婦さんが多い傾向にあります。

羊水検査で流産になる確率は?

羊水検査による流産リスクについて、具体的な数字で見ていきましょう。

羊水検査による流産リスク

羊水検査による流産の確率は、約0.3%(1000人に3人程度)と報告されています。この数字には、羊水検査とは無関係に発生する自然流産も含まれているため、実際の検査による流産リスクはさらに低い可能性があります。

また、最近の研究では、超音波技術の進歩により、羊水検査後24週までの手技関連流産リスクは0.11%程度まで低下しているという報告もあります。

流産以外にも考えられるリスク

  • 羊水漏出(1.2%程度)
  • 破水
  • 子宮内感染(1/1000以下)
  • 出血
  • 腹痛や子宮収縮

※これらの症状の多くは一時的なものであり、適切な処置で対応可能です。

流産のリスクがない出生前診断とは?

羊水検査の流産リスクを避けたい場合に検討できる、流産リスクのない非侵襲的な出生前診断方法を見ていきましょう。

非侵襲的検査(非確定的検査)について

胎児を傷つけるリスクのない非侵襲的検査(非確定的検査)には、以下のようなものがあります:

検査名 検査時期 特徴 精度
NIPT
(新型出生前診断)
妊娠10週0日以降 母体血漿中のDNA断片を解析して染色体異常の可能性を検査 感度・特異度ともに99%以上
(ダウン症の場合)
超音波検査 妊娠11週〜13週
(NT測定)
超音波で胎児の状態を観察し、染色体異常の可能性を示唆する徴候を確認 NT測定単独で約70〜80%
(特徴的所見がない場合も)
母体血清マーカー検査
(クアトロテスト)
妊娠15週〜20週 母体血中の4種類の成分を解析して染色体異常の可能性を検査 約60〜70%
コンバインド検査 妊娠11週〜13週 超音波検査(NT測定)と母体血清マーカー検査を組み合わせて検査 約85〜90%

これらの非侵襲的検査は、あくまで染色体異常の可能性を示す「確率」を計算する検査であり、確定診断ではありません。検査で「陽性」と判定された場合でも、実際には染色体異常が無いケース(偽陽性)もあります。確定診断を希望する場合は、羊水検査や絨毛検査を検討することになります。

安心安全かつ高精度の「NIPT」とは?

最近注目されている出生前診断の一つが「NIPT(新型出生前診断)」です。この検査の特徴を詳しく見ていきましょう。

NIPTの特徴

  • 母体採血のみで行う非侵襲的検査
  • 流産リスクは0%(胎児への影響なし)
  • 精度は感度・特異度ともに99%以上
  • 妊娠10週0日から検査可能
  • 主に21・18・13トリソミーを検査

検査の流れ

  1. 遺伝カウンセリング(検査前)
  2. 採血(約10ml)
  3. 検査機関での分析
  4. 結果判明(1〜2週間後)
  5. 結果説明・遺伝カウンセリング(検査後)
結果判定:「陽性」「陰性」「判定保留」のいずれかで判定されます。陽性の場合でも、確定診断には羊水検査が必要です。

NIPTは、母体の血液中に微量に存在する胎児由来のDNA断片を高度な技術で分析する検査です。胎児への負担やリスクがなく、高い精度で染色体異常の可能性を調べることができます。

日本産婦人科医会の認定施設では、主に35歳以上の妊婦さんや染色体異常児を出産した既往がある方などに限定されていますが、認定外施設(ミネルバクリニックなど)では、年齢制限なく誰でも受検が可能です。

NIPT検査のメリット・デメリット
メリット
  • 流産リスクがない
  • 高い検査精度(99%以上)
  • 妊娠初期から検査可能
  • 採血のみの簡便な検査
デメリット
  • 確定診断ではない(陽性の場合は羊水検査が必要)
  • 検査できる染色体異常が限られる
  • 自費診療(保険適用外)

NIPTで検査できる主な染色体異常は、ダウン症(21トリソミー)、エドワーズ症候群(18トリソミー)、パトー症候群(13トリソミー)の3種類です。検査プランによっては、性染色体(X・Y)の数的異常や、その他の染色体異常も検査できる場合があります。

NIPTと羊水検査の違い-安全性とデメリットの比較

NIPTと羊水検査は、どちらも染色体異常を調べる検査ですが、特徴やリスク、精度に違いがあります。それぞれの違いを比較し、どのような検査選択が適切かを考えていきましょう。

比較項目 NIPT 羊水検査
検査方法 母体からの採血のみ 腹部から針を刺して羊水を採取
検査時期 妊娠10週0日から 妊娠16週〜18週ごろ
流産リスク 0%(リスクなし) 約0.3%(1000人に3人)
検査精度 高精度だが確定診断ではない
(感度・特異度:99%以上)
ほぼ100%の確定診断
(偽陰性・偽陽性はごくわずか)
結果判明 1〜2週間程度 2〜3週間程度
(迅速法では数日で暫定結果)
検査できる異常 主に21・18・13トリソミー
(プランにより性染色体異常なども)
すべての染色体異常
(特定の遺伝子疾患も検査可能)
検査後の負担 ほとんどなし 検査後の安静が必要
感染予防の抗生剤服用など
保険適用 自費診療 自費診療

効果的なNIPTと羊水検査の組み合わせ方

羊水検査のリスクとNIPTの特性を比較すると、多くの医療専門家は最初にNIPTを受け、陽性結果が出た場合にのみ羊水検査を検討する「段階的アプローチ」を推奨しています。この方法の理由と利点を見ていきましょう。

推奨される検査の流れ

1

NIPT検査を受ける(妊娠10週0日以降)

2

結果の確認(1〜2週間後)

陽性

陰性

羊水検査を検討

遺伝カウンセリングを受け、リスクと検査の必要性について相談

検査終了

99%以上の確率で染色体異常がないと判断

この段階的アプローチには、以下のようなメリットがあります:

  • 不必要な羊水検査による流産リスクを回避できる
  • 妊娠初期(10週以降)から検査が可能で、早期に情報を得られる
  • 検査結果と遺伝カウンセリングを受けた上で、より情報に基づいた意思決定ができる
専門家の見解

多くの産婦人科医は、まずNIPTを受けることで、リスクが低いと判断された場合に不必要な羊水検査を避けることができると考えています。特に35歳以上の高齢妊娠や、染色体異常の家族歴がある場合には、この段階的アプローチが強く推奨されています。

「NIPTの登場により、羊水検査による流産リスクを必要最小限に抑えつつ、高精度な出生前診断が可能になりました。特に不安を感じている妊婦さんには、まずNIPTから始めることをお勧めしています。」

– 産婦人科専門医

検査を受ける時期と結果が出るまでの期間

羊水検査とNIPTでは、検査可能な時期と結果が判明するまでの期間に違いがあります。これらのタイミングを理解することで、適切な検査スケジュールを立てることができます。

NIPT 羊水検査
検査可能時期 妊娠10週0日以降 妊娠16週〜18週が最適
結果判明期間 1〜2週間 2〜3週間
※迅速法(PCR法)では2〜3日
最適な受検タイミング 妊娠11〜13週が多い 妊娠16週すぎて早めに
タイミングの理由 この時期から母体血中の胎児DNAが検出可能 羊水量が十分に増え、安全に採取できる時期

なお、羊水検査の結果を受けて、もし染色体異常が確定した場合に妊娠中断(人工妊娠中絶)を選択肢として考慮する場合は、日本では妊娠22週未満までに決断する必要があります。羊水検査の結果が出るまでの時間を考慮すると、できるだけ早く検査を受けることが重要です。

重要なポイント

検査を受ける時期は、検査結果に基づいてどのような選択をするかによっても左右されます。検査の目的(確定診断、心の準備、医療ケアの計画など)を明確にした上で、最適なタイミングを産婦人科医と相談することをお勧めします。

検査前後の注意点と遺伝カウンセリングの重要性

出生前診断(NIPT・羊水検査)を受ける際には、検査前後の心理的なケアや遺伝カウンセリングが非常に重要です。特に羊水検査のような侵襲的検査では、身体的な準備だけでなく、精神的な準備も必要となります。

検査前の注意点

  • 遺伝カウンセリングを受ける:検査の意味、リスク、結果の解釈について理解する
  • パートナーと話し合う:検査結果をどのように活用するか事前に相談
  • 医師に既往歴を伝える:アレルギーや服用中の薬について医師に伝える
  • 心の準備をする:検査当日の不安を軽減するためにリラックス法を学ぶ

検査後の注意点

  • 十分な休息をとる:特に羊水検査後は40分程度の安静が必要
  • 異常症状に注意する:発熱、出血、腹痛などの症状があれば即医師に連絡
  • 結果を待つ間の心のケア:不安な気持ちを抱え込まず相談できる相手を見つける
  • 検査結果が出たら遺伝カウンセリングを受ける:結果の正確な解釈と今後の選択肢を相談

遺伝カウンセリングの重要性

遺伝カウンセリングは、出生前診断において非常に重要な役割を果たします。特に検査結果が陽性だった場合は、専門家からの適切な情報提供と心理的サポートが必要です。

遺伝カウンセリングで得られる支援

1
医学的情報の提供

検査結果が示す医学的な意味、染色体異常の症状や予後、治療の可能性などについての正確な情報

2
心理的サポート

検査結果に対する不安や心配を共有し、感情的な負担を軽減するための専門的サポート

3
意思決定のサポート

検査結果に基づいて、今後の選択肢(妊娠継続、医療ケアの準備、中断など)を理解し、意思決定をサポート

4
社会的・福祉的支援情報

障がいのある子どもを育てる場合の医療制度、福祉サービス、自助グループなどの社会的リソース情報

ミネルバクリニックでは、出生前診断(NIPT・羊水検査)の前後に臨床遺伝専門医による遺伝カウンセリングを提供しています。不安や疑問をしっかりと聞き、一人ひとりの状況に合わせたサポートを行っています。

よくある質問(FAQ)

羊水検査とNIPTはどちらを先に受けるべきですか?

一般的には、まずNIPT(非侵襲的出生前診断)を受けることが推奨されています。NIPTは採血のみで行う検査で流産リスクがなく、高い精度(99%以上)で染色体異常の可能性を調べることができます。NIPTで陽性結果が出た場合に、確定診断として羊水検査を検討するという段階的アプローチが安全です。ただし、超音波検査で胎児に特徴的な所見が見られる場合や、すでに染色体異常の可能性が高いと判断される場合は、直接羊水検査を受けることもあります。検査の選択は、妊娠週数や個人の状況に応じて医師と相談することをお勧めします。

羊水検査は痛いですか?

羊水検査の際の痛みの感じ方には個人差がありますが、一般的には局所麻酔を使用するため、穿刺時の痛みは軽減されます。多くの方が、採血時の痛み程度か、それよりも若干強い程度と表現しています。実際の羊水採取は約30秒程度と短時間で終了します。穿刺後に軽度の腹部不快感を感じる場合もありますが、多くは一時的なものです。心配な場合は、事前に医師に相談し、痛みを軽減する方法について確認しておくとよいでしょう。麻酔なしでも検査は可能ですが、不安がある場合は麻酔の使用についても医師と相談してください。

NIPTで陽性と出たら、必ず染色体異常がありますか?

NIPTで陽性結果が出たからといって、必ずしも染色体異常があるとは限りません。NIPTはスクリーニング検査であり、確定診断ではないためです。NIPTの陽性的中率(陽性の結果が出て実際に染色体異常がある確率)は、ダウン症(21トリソミー)で約97%、18トリソミーで約88%、13トリソミーで約54%とされています。つまり、陽性結果が出ても一定の割合で「偽陽性」(実際には染色体異常がない)のケースがあります。そのため、NIPTで陽性結果が出た場合は、確定診断のための羊水検査や絨毛検査を受けることが推奨されています。確定診断の結果が出るまでは、最終的な判断をせずに医師の説明をよく聞くことが大切です。

羊水検査後に注意すべき症状はありますか?

羊水検査後は以下の症状に注意する必要があります:①37.5℃以上の発熱 ②持続する腹痛や背部痛 ③出血(おりものにピンク色や赤色が混じる) ④羊水の漏れ(おりものの量が増える) ⑤胎動の減少や停止。これらの症状が現れた場合は、すぐに医療機関に連絡してください。検査後24〜48時間は激しい運動や性行為を控え、安静にすることが推奨されます。また、検査後に処方される抗生物質は感染予防のために指示通り服用してください。多くの場合、異常なく経過しますが、万が一の際に早期対応ができるよう、異変を感じたらためらわずに医師に相談することが大切です。

まとめ

羊水検査とNIPT検査の選択ポイント

  • 羊水検査の流産リスクは約0.3%と低確率ながら存在
  • NIPTは流産リスクゼロで高精度(99%以上)のスクリーニング検査
  • 多くの場合、まずNIPTを受け、陽性なら羊水検査を検討する段階的アプローチが推奨
  • 検査前後の遺伝カウンセリングが結果の理解と意思決定に重要
  • NIPTは妊娠10週から、羊水検査は16〜18週が最適時期
  • 検査の選択は個人の状況や価値観に応じて、医師と相談の上で決定することが大切

出生前診断は個人の選択であり、検査を受けるかどうかに正解はありません。
大切なのは、十分な情報と専門家のサポートのもとで、自分自身にとって最適な選択をすることです。

ミネルバクリニックのNIPT・遺伝カウンセリングのご案内

ミネルバクリニックでは、臨床遺伝専門医によるNIPT検査と遺伝カウンセリングを提供しています。
検査前後の不安や疑問にしっかりと寄り添い、安心して検査を受けていただけるようサポートします。

ご不明な点やご質問がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

NEW 妊娠6週から受けられる早期NIPT臨床試験のご案内

ミネルバクリニックでは、妊娠6週から受けることができる早期NIPTの臨床試験を実施しています。日本では妊娠12週以降は中期中絶となり、様々なデメリットが生じることから、より早期の検査が重要となっています。

早期NIPTと絨毛検査による早期確定診断

早期NIPTで陽性となった場合、羊水検査(16週以降)を待たずに絨毛検査(11〜14週)で確定診断を行うことができます。これにより、判断・決断のための時間的余裕が生まれます。


対象:妊娠6週〜8週6日の方


費用:臨床試験のため無料

※臨床試験のため、実施期間や適応条件に制限があります。詳細はお問い合わせください。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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