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出生前診断(NIPT)のメリット・デメリット|確定診断ではない・偽陽性・わからない病気とその減らし方

目次

仲田洋美 医師

この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

記事の作り方(編集方針)

出生前診断(NIPT)のメリットは、お母さんの採血だけで、妊娠の早い時期に赤ちゃんの染色体などの変化の可能性を知り、準備や考える時間を持てることです。デメリットは、確定診断ではないこと、偽陽性・偽陰性があること、調べられない病気があること、陽性のあとの決断が重いこと、費用がかかることなどです。この記事では、良い面と同じだけデメリットを正直に並べ、そのうえで、それぞれのデメリットをどうすれば小さくできるかを、臨床遺伝専門医の立場から説明します。

⏱️ 30秒でわかる要約

⚖️ Q. 出生前診断(NIPT)のメリット・デメリットは?

メリットは、採血だけで、妊娠の早い時期に赤ちゃんの染色体などの変化の可能性を知り、準備や考える時間を持てることです。デメリットは、確定診断ではないこと、偽陽性・偽陰性があること、調べられない病気があること、陽性のあとの決断が重いこと、費用がかかることです。

🤔 Q. ダウン症候群だけ調べれば大丈夫ですか?

大丈夫とは言えません。子育ての負担を最も大きく左右するのは、知的障害の程度よりも、攻撃的な行動や自傷、睡眠の問題といった行動の問題です。それを伴いやすいのは、ダウン症候群よりも微小欠失症候群や単一遺伝子疾患で、三大トリソミーだけの検査では調べられません。当院のNIPTはこれらの病気まで調べられます。

🧩 Q. NIPTで自閉症や発達障害はわかりますか?

一部はわかります。当院のNIPTは、自閉症・発達障害・知的障害の原因になる遺伝子や染色体の変化の一部を調べられます。ただし、陰性でも自閉症や発達障害がないとは言えません。

🏥 Q. デメリットは減らせますか?

減らせるものがあります。当院では陽性でも確定検査(絨毛検査・羊水検査)まで院内で受けられ、主要な検査項目は3日以内、マイクロアレイ検査は2週間ほどで結果が出ます。陽性後の遺伝カウンセリングは何度でも無料で、確定検査の費用は互助会が補助します(補助の上限なし)。

📅 Q. 何週から受けられますか?

当院のNIPTは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。おすすめは8週で、妊娠8週で受けた場合の再検査率は約5%です(当院のデータ)。

\ ダウン症候群だけで大丈夫?調べられる範囲からプランを選びたい方へ /

ダウン症候群だけで大丈夫ですか? 当院のNIPTは、子育ての負担につながりやすい微小欠失症候群や単一遺伝子疾患まで調べられます。どこまで調べるかは、90分の受診枠の中で臨床遺伝専門医と一緒に決められます。

📅NIPTを予約する

まだどのプランにするか決めていない方は、調べられる範囲と費用を比べたページからご覧ください。
NIPTの費用・料金 | ダイヤモンドプラン | インペリアルプラン

出生前診断のメリット・デメリット早わかり

結論から言うと、出生前診断は「受ければ安心」でも「受けると不幸になる」でもない検査です。採血だけで早く可能性を知れるという大きなメリットがある一方で、確定診断ではない、調べられない病気があるといった、知っておくべき限界があります。まずは全体を一覧で見てください。

⚖️ 出生前診断(NIPT)のメリットとデメリット

メリット デメリット・問題点
採血だけで調べられる(NIPT) 確定診断ではなく、陽性なら確定検査が必要
妊娠の早い時期に可能性を知れる 偽陽性・偽陰性がある
陰性なら、調べた範囲について安心材料になる 調べられない病気がある(検査の範囲は施設・プランで違う)
生まれる前から、出産する施設や生まれてすぐの検査などの準備ができる 知りたくなかったことを知ることがある
結果をもとに、ご家族で考える時間を持てる 陽性のあとの決断が重く、考えられる期間にも限りがある
― 確定検査は針を刺す検査で、体への負担や不安がある
― 費用がかかる
― 「命の選別につながる」という意見がある

それぞれのデメリットを減らす方法は、「デメリットはどう減らせる?」で表にまとめています。

出生前診断とは?種類と「確定」「非確定」の違い

出生前診断とは、妊娠中に赤ちゃんの染色体や遺伝子、体のつくりなどを調べる検査の総称です。大きく分けると、病気の可能性を調べる非確定的検査と、病気があるかどうかを確かめる確定的検査の2つがあります。メリット・デメリットは、この2つでまったく違います。

📋 主な出生前検査の種類

検査 分類 方法
NIPT(非侵襲性出生前遺伝学的検査) 非確定的検査 お母さんの採血
コンバインド検査 非確定的検査 超音波検査(首の後ろのむくみなど)+お母さんの採血
母体血清マーカー検査(クアトロテスト) 非確定的検査 お母さんの採血
胎児超音波検査(胎児ドック) 形を調べる検査 超音波
絨毛検査 確定的検査 おなかに針を刺して胎盤の組織(絨毛)を採る
羊水検査 確定的検査 おなかに針を刺して羊水を採る

それぞれの検査の時期・費用は出生前診断の種類一覧、コンバインド検査はコンバインド検査とは、クアトロテストはクアトロテストを受けるべきか、胎児ドックは胎児ドックとNIPTの違いで解説しています。

NIPTは、お母さんの血液に混ざっている赤ちゃん側(主に胎盤由来)のDNAの断片を調べる検査です。出生前検査の認証制度を運営する委員会も、NIPTで陽性になった場合は病気がない場合(偽陽性)もあるので、確かめるための確定的検査が必要だと説明しています[7]。この記事では、検査を考える方がいちばん多く検討するNIPTを中心に、確定検査も含めたメリット・デメリットを見ていきます。

💡 用語解説:非確定的検査と確定的検査

非確定的検査(ひかくていてきけんさ)は、赤ちゃんに病気がある「可能性」を調べる検査で、スクリーニング検査ともいいます。確定的検査(かくていてきけんさ)は、赤ちゃん側の細胞を直接調べて、病気があるかどうかを確かめる検査です。NIPTは非確定的検査、絨毛検査と羊水検査は確定的検査です。

出生前診断のメリット

出生前診断のいちばんのメリットは、「知ることで、準備と考える時間を持てる」ことです。具体的には、次の4つがあります。

① 採血だけで、妊娠の早い時期に可能性を知れる

NIPTはお母さんの採血だけで調べるので、検査そのものが流産の原因になることはありません。当院のNIPTは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。週数が早いほど、血液中の赤ちゃん由来のDNA(胎児分画)が少なく、判定できずに再検査(再採血)になることがあります。当院のおすすめは8週で、妊娠8週で受けた場合の再検査率は約5%です(当院のデータ)。

💡 用語解説:胎児分画(たいじぶんかく)

お母さんの血液に含まれるDNAのうち、赤ちゃん側(主に胎盤)から来たDNAの割合です。当院では、スタンダード・プレミアム・ダイヤモンドプランは3%、インペリアル・双子マックスプランは3.5%を基準にしています。届かないときは、判定保留ではなく再検査(再採血)としています。詳しくは胎児ゲノム率(胎児分画)の解説をご覧ください。

② 陰性なら、調べた範囲については安心材料になる

結果が陰性なら、調べた病気については可能性が低いと分かり、その後の妊娠期間を過ごす材料になります。ただし、安心できるのは「調べた範囲」についてだけです。調べていない病気については、陰性の結果は何も言えません。だからこそ、何を調べる検査なのかを、受ける前に確かめておくことが大切です。

③ 生まれる前から準備ができる

病気が分かっていれば、出産する施設の選び方や、生まれてすぐの検査・治療の準備ができます。たとえば22q11.2欠失症候群は、心臓の病気や免疫の働きの低下、低カルシウム血症などを伴うことがあり、生まれる前に分かっていれば、生まれてすぐに心臓・カルシウム・免疫を調べる準備ができます。当院では、スタンダードプランから22q11.2欠失症候群を調べられます。

④ 結果をもとに、ご家族で考える時間を持てる

早い時期に結果が分かれば、陽性だった場合に確定検査を受け、その結果を待ってから、どうするかをご家族で考える時間を持てます。週数が進んでから結果が出ると、確定検査や考える時間が限られてきます。当院が8週での検査をおすすめしているのは、この時間を確保するためです。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「知る」ことは、選択肢を増やすためにある】

出生前診断は、ときに「産むかどうかを決めるための検査」とだけ受け止められます。けれども、臨床遺伝専門医として大切だと考えているのは、結果をもとにご家族が準備をしたり、考えたりする材料を持つことです。生まれてすぐに必要な治療を知っておくことも、どんな支援を受けられるかを調べておくことも、その一つです。

一方で、検査の結果は「何を調べたか」の範囲でしか答えをくれません。メリットだけを見て受けると、陽性のときにも陰性のときにも戸惑いが残ります。デメリットまで知ったうえで選ぶことが、後悔の少ない選択につながると考えています。

出生前診断のデメリット・問題点

出生前診断のデメリットは、大きく8つあります。どれも避けられない性質を持つ一方で、検査の選び方や施設の体制で小さくできるものもあります。

① 確定診断ではない(陽性なら確定検査が必要)

NIPTは非確定的検査なので、陽性は「病気の可能性が高い」という意味で、病気があると決まったわけではありません[7]。陽性の結果だけで、妊娠を続けるかどうかを決めてしまうことが、いちばん避けたいことです。必ず絨毛検査や羊水検査で確かめてから考えます。陽性のときの流れはNIPT陽性だったらどうする?、確定検査を受けずに決める危うさはNIPT陽性で羊水検査なしは危険?で解説しています。

② 偽陽性・偽陰性がある

NIPTが調べるDNAは主に胎盤から来ているため、胎盤と赤ちゃんの染色体が違う場合(胎盤限局性モザイク)などで、結果と赤ちゃんの実際がずれることがあります。微小欠失・重複は、数の異常より陽性的中率が低めで、項目によって60〜70%程度です。偽陰性は、まれですが可能性はあります。だから、陽性なら確定検査で確かめることが前提になります。精度の数字の読み方はNIPTの精度と的中率、しくみは胎盤限局性モザイクが偽陽性・偽陰性を起こすしくみをご覧ください。

③ 調べられない病気がある

NIPTで、赤ちゃんのすべての病気が分かるわけではありません。認証施設のNIPTは、精度や意義を考えて、対象をダウン症候群(21トリソミー)・18トリソミー・13トリソミーの3つに限っています[7]。当院のNIPTはプランによって、微小欠失・重複や、新しく起こる遺伝子の変化(de novo変異)による単一遺伝子疾患まで調べられますが、それでも調べられない病気は残ります。

超音波検査で赤ちゃんの異常が疑われた妊婦さんを対象にした研究では、染色体の検査に加えて単一遺伝子の病気も調べると、見つかった病気の数が約1.6倍(61件→98件、60.7%増)に増えたと報告されています[1]。すべての妊婦さんで1.6倍になるという意味ではありませんが、「何を調べるか」で見つけられる病気が大きく変わることを示しています。

また、ご両親が保因者であるかどうかや、脊髄性筋萎縮症(SMA)のように当院のNIPTではどのプランでも調べられない病気もあります。こうした「親が保因者かどうか」を調べたい場合は、NIPTと同時に行うカップルの保因者検査ファミリーセーフティ プラス(女性787遺伝子・男性714遺伝子、NIPTと同じ日に採血できます。単独では受けられません)をご案内しています。何が分かり何が分からないかは出生前診断でわかること・わからないことでも整理しています。

④ 知りたくなかったことを知ることがある

調べる範囲を広げると、症状の幅が広く、生まれてからの見通しを立てにくい変化が見つかることもあります。性染色体の数の異常のように、知的障害を伴うことは少ないものの、言葉や学習の支援が役立つことがある変化もあります。まれに、赤ちゃんではなくお母さん自身の要因が結果に影響していることが分かる場合もあります(NIPTの偽陽性の原因:母体側の要因)。どこまで知りたいかを検査の前に決めておくことが、このデメリットへの備えになります。

⑤ 陽性のあとの決断が重く、考えられる期間にも限りがある

陽性の結果を受け取ったあとは、確定検査を受けるか、結果をどう受け止めるかなど、短い期間に重い判断が続きます。結果を待つ間の不安も小さくありません。このデメリットを小さくするのは、陽性のあとに相談できる体制と、確定検査までの距離の短さです。施設によって陽性後の支援は違うので、受ける前に確かめてください(NIPT陽性で後悔しない施設選び)。

⑥ 確定検査は針を刺す検査で、体への負担や不安がある

NIPTそのものは採血だけですが、陽性のあとの絨毛検査・羊水検査は、おなかに針を刺して行う検査です。「流産しないか」と心配される方は少なくありません。英国の胎児医療施設で行われた後ろ向きのコホート研究では、検査を受けた人と受けなかった人で流産の割合に統計的な差は見られず、検査によって上乗せされた流産の割合は絨毛検査で0.29%、羊水検査で−0.36%(どちらも統計的な差なし)でした[6]。1つの施設の研究なので、この数字がどこでも同じとは言えませんが、確定検査の危険を考えるときの材料になります。詳しくは羊水検査で流産した…検査が原因?と羊水検査・絨毛検査のページをご覧ください。

⑦ 費用がかかる

NIPTの費用は、検査の料金だけではありません。当院では、互助会の会費(羊水検査互助会〔カトレア会〕8,000円・安心検査結果保障制度6,000円)と、検査結果の作成費用3,300円が別にかかります。一方で、料金には臨床遺伝専門医による遺伝カウンセリング・4Dエコー・性別判定が含まれます。プランごとの料金はNIPTの費用・料金、一般的な相場はNIPTの費用相場で確認できます。料金の安さだけで比べると、陽性のあとの確定検査の費用が別に大きくかかることがあります。

⑧ 「命の選別につながる」という意見がある

出生前診断の結果が、妊娠を続けるかどうかの判断につながることから、障害のある人の生き方を否定することにならないかという意見があります。これは検査を受ける人を責める意見ではなく、社会全体で考えるべき問題として出されているものです。一方で、知ることで準備ができる、考える機会を持てる、という考え方もあります。どちらの立場も、ご家族の選択を尊重することを出発点にしています。議論の中身は出生前診断の倫理的問題とはで詳しく扱っています。

ダウン症候群だけで大丈夫? ― 「値段」ではなく「調べられる範囲」で選ぶ

「ダウン症候群だけが心配」という方は少なくありません。けれども、出生前検査で調べる病気は、どれも赤ちゃんとご家族の暮らしに大きくかかわるものです。そして、ご家族の子育ての負担を最も大きく左右するのは、知的障害の程度よりも、攻撃的な行動や自傷、睡眠の問題といった「行動の問題」だと分かっています[4]。こうした行動の問題を伴いやすい病気には、ダウン症候群ではなく、微小欠失症候群や単一遺伝子疾患が多く含まれます[4][5]。三大トリソミーだけを調べる検査では、これらの病気は調べられません。

出生前検査は、その後の人生を左右するかもしれない検査です。「安さ」だけで選んで大丈夫でしょうか。

三大トリソミーだけを調べる検査を仮に10万円とすると、1つの病気あたりは約3万3千円です。

当院のインペリアルプランは、全常染色体と性染色体の数の異常、92種類の微小欠失・重複、202の単一遺伝子疾患を調べます。性染色体の数の異常も含めて、数えられる病気だけで320になり、1つの病気あたりは約1,719円です。さらに、5Mbを超える欠失・重複はすべての染色体が対象なので、数えきれないほどの変化を調べていることになります。数えられる分だけでも、これだけの範囲を調べられます。

知的障害を伴う病気のお子さんのご家族を比べた研究では、スミス・マゲニス症候群、ウィリアムズ症候群、プラダー・ウィリー症候群のご家族は、ダウン症候群のご家族より子育てのストレスが高いと報告されています[4]。アンジェルマン症候群やスミス・マゲニス症候群では他人への攻撃的な行動が、コルネリア・デ・ランゲ症候群やスミス・マゲニス症候群、プラダー・ウィリー症候群では自傷が多いことが分かっています[5]。スミス・マゲニス症候群・プラダー・ウィリー症候群・アンジェルマン症候群は全プラン、コルネリア・デ・ランゲ症候群はダイヤモンド・インペリアル、ウィリアムズ症候群はインペリアル・双子マックスで調べられます。

プラン 主に調べる範囲 数えた病気の数 1つの病気あたり
三大トリソミーだけを調べる検査
(仮に10万円とした場合)
13・18・21トリソミー 3 約33,333円
スタンダード(220,000円) 13・18・21トリソミー、性染色体の数の異常、微小欠失6種類7疾患 14 約15,714円
プレミアム(264,000円) 13・18・21・15・16・22トリソミー、性染色体の数の異常、微小欠失12種類13疾患 23 約11,478円
ダイヤモンド(407,000円) プレミアムの範囲+単一遺伝子56 79 約5,152円
双子マックス(440,000円) 全常染色体の数の異常、92種類の微小欠失・重複、5Mbを超える構造異常 114+α 約3,860円
インペリアル(550,000円) 全常染色体の数の異常、性染色体の数の異常、92種類の微小欠失・重複、5Mbを超える構造異常、単一遺伝子202疾患 320+α 約1,719円

※価格は事前学習動画を見て来院した場合の当日割引後の税込価格です。最新の料金は料金ページをご確認ください。※病気の数は、数の異常・微小欠失・重複・単一遺伝子疾患を1つずつ数えたものです。性染色体の数の異常は4種類(ターナー症候群・クラインフェルター症候群・トリプルX症候群・XYY症候群)として数えています(性染色体を調べるのはスタンダード・プレミアム・ダイヤモンド・インペリアル。双子マックスは調べません)。5Mbを超える構造異常は数に入れていないため、双子マックスとインペリアルは実際にはさらに多くの変化を調べています。※「三大トリソミーだけを調べる検査」は計算のための仮の例で、特定の施設の価格ではありません。

ただし、病気の数が多いほど良い検査、というわけではありません。調べる範囲が広がると、陽性になる可能性も、確定検査が必要になる場面も増えます。だからこそ、どこまで調べるかは検査前の遺伝カウンセリングで選ぶことが大切です。

子育ての大変さは、知的発達の重さだけでは決まらない

自閉スペクトラム症(ASD)のお子さんを育てる親の子育てのストレスを調べたメタ解析では、ほかの障害のお子さんの親と比べてもストレスが高く、全体の効果量は0.64でした。ダウン症候群のお子さんの親と比べた個々の研究では、効果量が0.90〜1.53と大きな差が出ていました。著者は、ダウン症候群のお子さんの子育てに特有の事情が関わっている可能性があるとして、この比較の解釈に注意を添えています[2]。

微小欠失の中で最も多い22q11.2欠失症候群は、知的発達への影響は軽めでも、心臓・免疫・精神面の合併症が多い病気です。1,402人を対象にした国際共同研究では、子どもで最も多かったのはADHD(37%)、25歳を超えた大人の41%に精神病性の障害がみられました[3]。22q11.2欠失症候群についてはDiGeorge症候群(22q11.2欠失)の全体像で詳しく解説しています。

自閉症・発達障害・知的障害もNIPTで一部わかる ― 当院で調べられること

お子さんに自閉症や発達障害がないかを心配するのは、自然なことです。原因はさまざまですが、一部は染色体の微細な欠失・重複や、1つの遺伝子の変化が原因だと分かっています。当院のNIPTが調べる微小欠失・重複や単一遺伝子疾患には、自閉症・発達障害・知的障害を伴うことがある病気が含まれています。

🧩 当院のNIPTで調べられる、自閉症・発達障害・知的障害を伴うことがある主な病気

プラン 微小欠失・重複 単一遺伝子 主な病気の例
スタンダード 6種類7疾患 ― 22q11.2欠失症候群、アンジェルマン症候群、プラダー・ウィリー症候群
プレミアム 12種類13疾患 ― スタンダードと同じ病気を含む
ダイヤモンド 12種類13疾患 de novo 56遺伝子 上に加えて、レット症候群、コルネリア・デ・ランゲ症候群、CHARGE症候群
双子マックス 92種類+5Mbを超える構造異常 ― 22q11.2欠失症候群などに加えて、16p11.2欠失・重複
インペリアル 92種類+5Mbを超える構造異常 最大155遺伝子(202疾患) 上に加えて、フェラン・マクダーミッド症候群、ピット・ホプキンス症候群、16p11.2欠失・重複

単一遺伝子の遺伝子の一覧は56遺伝子de novo変異NIPT、155遺伝子de novo変異NIPTで確認できます。

一方で、正直に書いておきたい限界があります。陽性なら確定検査が必要です(当院では院内で受けられます)。微小欠失は陽性的中率が低めです。陰性でも、自閉症・発達障害・知的障害がないとは言えません。脆弱X症候群のように、NIPTでは調べられない原因もあります。脆弱X症候群の原因遺伝子(FMR1)は、お母さんが保因者かどうかを、NIPTと同時に行う保因者検査(ファミリーセーフティ プラス)で調べられます。また、病気が分かっても、症状の重さまでは予測できません。くわしくは自閉症はNIPTでわかりますか?をご覧ください。

🏥 調べられる範囲から、NIPTのプランを選ぶ

ダウン症候群だけでなく、18・13トリソミーや微小欠失症候群、一部の自閉症・発達障害・知的障害の原因まで、当院のNIPTでわかります。陽性でも、確定検査(羊水検査・絨毛検査)まで院内で受けられます。

まだ決めていない方は:NIPTを受けるべきか迷う方へ(3つの判断基準) | ダイヤモンドプラン | インペリアルプラン

デメリットはどう減らせる?当院の体制との対応表

出生前診断のデメリットの多くは、検査そのものより「陽性のあと、どこで、どう確かめるか」で大きさが変わります。当院がそれぞれのデメリットに対してとっている体制を、事実で並べます。

🛡️ デメリットと、それを減らす当院の体制

デメリット 当院の体制
確定診断ではない 2025年6月から産婦人科を併設し、絨毛検査・羊水検査とも院内で実施。主要な検査項目は3日以内、マイクロアレイ検査は2週間ほどで結果が出ます。
偽陽性・陽性後の不安 陽性後の遺伝カウンセリングは何度でも無料。確定検査で確かめてから考える流れを、院内で支えます。
判定できない・再検査 当院のNIPTの判定保留は0%。胎児分画が足りないときは再検査(再採血)です。再検査が必要になったのに流産して結果が出なかったときは、安心検査結果保障制度(1回6,000円)で検査代金(諸費用を除く)を返金します。
確定検査の費用 羊水検査互助会(カトレア会、1回のNIPTにつき8,000円)が、陽性時の確定検査の費用を補助します(補助の上限なし)。NIPTを受ける方は2つの互助会に全員加入します。
調べられない病気がある 5つのプランから調べる範囲を選べます。親が保因者かどうかは、NIPTと同時に行う保因者検査(ファミリーセーフティ プラス)で調べられます。
来院が難しい Zoomでのカウンセリング+全国110か所の提携施設での採血を組み合わせたオンラインNIPTがあります。

陰性の結果はマイページでお知らせし、結果が出るまでの目安は基本10〜14日です(インペリアルプランの単一遺伝子の結果だけは3〜4週間。ダイヤモンドプランは単一遺伝子も10〜14日)。来院が難しい方はオンラインNIPTもご利用いただけます。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【弱点は検査ではなく、「確かめる前に決めてしまうこと」】

NIPTは、可能性のある赤ちゃんを見逃さずに拾い上げるための検査です。陽性的中率が100%でない以上、陽性の結果だけで決めてしまうことがいちばんの危険だと考えています。

だから大切なのは、陽性になったときに確定検査で本当にそうかを確かめてから考えられる環境です。検査の精度の数字と同じくらい、陽性のあとにどこで確定検査を受けられ、何日で結果が出て、誰に相談できるのかを、受ける前に確かめていただきたいと考えています。

認証外(認可外)の施設で受けるデメリットは?

「認証外の施設で受けると質が低い」というのは、誤解を含んだ見方です。認証施設のNIPTは、精度や意義を考えて、対象をダウン症候群・18トリソミー・13トリソミーの3つに限っています[7]。認証施設かどうかは、施設を選ぶときの大切な手がかりの1つで、当院も認証施設を否定する立場ではありません。

一方、認証外の施設は、体制が施設ごとに大きく違うのが実情です。デメリットになりうるのは「認証外であること」そのものより、陽性のあとに確定検査や相談の受け皿がない場合です。当院は認証外の施設ですが、臨床遺伝専門医が運営・常駐し、検査前の遺伝カウンセリングから陽性後のケア、確定検査まで院内で支援しています。

施設を選ぶときは、認証の有無に加えて、①調べられる範囲 ②陽性のあとの確定検査をどこで受けられるか ③検査前後の遺伝カウンセリング ④確定検査の費用の補助、の4つを物差しにしてください。詳しくはNIPT無認可のリスクとは?認可との違いで解説しています。

受けるか迷ったときの考え方と、受ける時期・流れ

出生前診断は、受けなければならない検査でも、受けてはいけない検査でもありません。迷ったときは、次の3つを考えてみてください。

  • ➤何を知りたいか:ダウン症候群だけか、ほかの病気まで知りたいか
  • ➤陽性だったらどうするか:確定検査を受けるか、誰とどう話し合うか
  • ➤知らないままで後悔しないか:受けない選択をしたときの気持ち

判断の基準はNIPTを受けるべきか迷う方へ(3つの判断基準)、受けない選択・受けた後悔については出生前診断を受けなかった後悔・受けた後悔を回避するにはで詳しく解説しています。

受ける時期と流れ

当院のNIPTは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。10週を過ぎても、16週でも受けられますが、陽性だったときの確定検査や考える時間を確保するために、早めに受けることをおすすめしています。90分の受診枠の中で、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行います。プラン選びに必要な説明は、予約時に事前学習動画でご覧いただけます。

① 遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医が説明
▶
② 4Dエコー・採血赤ちゃんの状態を確認
▶
③ 結果基本10〜14日
▶
④ 陽性なら確定検査院内で受けられる

遺伝カウンセリングの役割はNIPTと遺伝カウンセリングで解説しています。

よくある質問(FAQ)

Q1. ダウン症候群だけ調べれば大丈夫ですか?

ダウン症候群だけを調べれば大丈夫、とは言えません。知的障害を伴う病気のお子さんのご家族を比べた研究では、スミス・マゲニス症候群、ウィリアムズ症候群、プラダー・ウィリー症候群のご家族は、ダウン症候群のご家族より子育てのストレスが高く、ストレスを最も強く左右していたのは知的障害の程度よりも行動の問題でした。こうした病気は三大トリソミーだけを調べる検査ではわかりません。当院ではスタンダードプランから22q11.2欠失症候群やプラダー・ウィリー症候群、アンジェルマン症候群などの微小欠失を、ダイヤモンドプラン・インペリアルプランでは単一遺伝子疾患まで調べられます。どこまで調べるかは、検査前の遺伝カウンセリングで一緒に考えます。

Q2. NIPTで陰性なら、ほかの病気も心配ありませんか?

陰性で可能性が低いと言えるのは、そのプランで調べた病気だけです。調べていない病気については何も言えず、偽陰性もまれですが可能性はあります。また、陰性でも自閉症・発達障害・知的障害がないとは言えません。どこまで調べるかは、受ける前にプランで選びます。

Q3. 出生前診断のデメリットは何ですか?

主なデメリットは、確定診断ではないこと、偽陽性・偽陰性があること、調べられない病気があること、知りたくなかったことを知ることがあること、陽性のあとの決断が重いこと、確定検査は針を刺す検査であること、費用がかかることです。多くは、陽性のあとに確定検査と相談の体制がある施設を選ぶことで小さくできます。

Q4. 出生前診断で流産することはありますか?

NIPTは採血だけなので、検査が流産の原因になることはありません。陽性のあとの絨毛検査・羊水検査はおなかに針を刺す検査ですが、英国の胎児医療施設の研究では、検査を受けた人と受けなかった人で流産の割合に統計的な差は見られませんでした。

Q5. 出生前診断は受けない方がいいですか?

受けなければならない検査でも、受けてはいけない検査でもありません。何を知りたいか、陽性だったらどうするか、知らないままで後悔しないかを考えて決めてください。受けないことも一つの選択です。

Q6. 認証外の施設でNIPTを受けるデメリットはありますか?

認証外であること自体より、陽性のあとに確定検査や相談の受け皿がないことがデメリットになります。当院は認証外の施設ですが、臨床遺伝専門医が運営・常駐し、陽性なら確定検査(絨毛検査・羊水検査)まで院内で受けられます。

Q7. NIPTで陽性だったらどうなりますか?

陽性は病気の可能性が高いという意味で、確定ではありません。当院では確定検査(絨毛検査・羊水検査)まで院内で受けられ、主要な検査項目は3日以内、マイクロアレイ検査は2週間ほどで結果が出ます。陽性後の遺伝カウンセリングは何度でも無料で、確定検査の費用は羊水検査互助会(カトレア会)が補助します(補助の上限なし)。

Q8. NIPTは何週から受けられますか?

当院のNIPTは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。当院のおすすめは8週で、妊娠8週で受けた場合の再検査率は約5%です(当院のデータ)。10週を過ぎても、16週でも受けられます。

Q9. 費用はいくらかかりますか?

プランごとの料金はNIPTの費用・料金のページでご確認ください。料金には臨床遺伝専門医による遺伝カウンセリング・4Dエコー・性別判定が含まれます。別途、互助会の会費(カトレア会8,000円・安心検査結果保障制度6,000円)と、検査結果の作成費用3,300円がかかります。

🏥 デメリットまで知ったうえで、NIPTを選ぶ

陽性でも、確定検査(羊水検査・絨毛検査)まで院内で受けられ、主要項目は3日以内に結果が出ます。90分の受診枠の中で、常駐する臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行います。来院が難しい方は、オンラインNIPT(Zoomでのカウンセリング+全国110か所の提携施設で採血)もご利用いただけます。

まだ決めていない方は:NIPTを受けるべきか迷う方へ(3つの判断基準) | NIPTクリニックの選び方 | スタンダードプラン | プレミアムプラン | 双子マックスプラン

関連記事

参考文献

  • [1] Zhang J, Wu Y, Chen S, et al. Prospective prenatal cell-free DNA screening for genetic conditions of heterogenous etiologies. Nat Med. 2024;30(2):470-479. [DOI 10.1038/s41591-023-02774-x]
  • [2] Hayes SA, Watson SL. The impact of parenting stress: a meta-analysis of studies comparing the experience of parenting stress in parents of children with and without autism spectrum disorder. J Autism Dev Disord. 2013;43(3):629-642. [DOI 10.1007/s10803-012-1604-y]
  • [3] Schneider M, Debbané M, Bassett AS, et al. Psychiatric disorders from childhood to adulthood in 22q11.2 deletion syndrome: results from the International Consortium on Brain and Behavior in 22q11.2 Deletion Syndrome. Am J Psychiatry. 2014;171(6):627-639. PMID: 24577245. [DOI 10.1176/appi.ajp.2013.13070864]
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  • [6] Beta J, Zhang W, Geris S, Kostiv V, Akolekar R. Procedure-related risk of miscarriage following chorionic villus sampling and amniocentesis. Ultrasound Obstet Gynecol. 2019;54(4):452-457. [DOI 10.1002/uog.20293]
  • [7] 出生前検査認証制度等運営委員会. NIPT(非侵襲性出生前遺伝学的検査)について. [出生前検査認証制度等運営委員会]

※本記事は一般の方に向けた情報提供を目的とするもので、個別の診断・検査の選択を示すものではありません。

プロフィール
仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続け、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、検査結果の数値そのものだけでなく、「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、日本人として異文化の中で生活した経験があります。価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。この経験は現在の診療においても、「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、36週6日で一人を死産した経験があります。その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、家族の未来に関わる重要な意思決定です。年齢や統計だけで判断するのではなく、医学的根拠と心理的支援の両面から、ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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