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クワトロテスト・母体血清マーカーテスト

クワトロテスト母体血清マーカーテスト)は母体血清マーカーのひとつで、クアトロテストで何がわかるのかわからないのか,受ける時期はいつなのか(15週から),結果は確率ででるだけ、などという特徴を解説するページです。クワトロテスト(クアトロテスト)もまた非確定的ではありますが出生前診断の一検査ですので、陽性の場合は妊娠中絶につながる検査です。よく理解して受けましょう。

母体血清マーカーテストのはじまり

1972年にBrockは神経管欠損に罹患した児を妊娠している母体は血中・羊水中のα-フェトプロテイン(AFP)が高値であることを発見し、胎児の状態に対する最初の母体血清スクリーニングの基礎となりました。
母体血清AFP値(maternal serum AFP:MSAFP)の上昇と胎児開放性神経管欠損の関連がイギリスで臨床試験で示され、1977年より母体血清スクリーニングが広く普及され始めました。
スクリーニングが妊娠16~18週に施行された場合、検出率は無脳症では90%、二分脊椎では80%に達することがわかり、これらの感度は現在の母体血清マーカーテストと同等となっています。

羊水中AFP値が上昇していたら、羊水中アセチルコリンエステラーゼを同時に測定していました。 露出した神経組織からアセチルコリンエステラーゼが直接的に羊水に漏出することを利用して測定するものです。
羊水中のこれら両成分の分析結果は、神経管欠損の診断に用いられていました。

開放性二分脊椎に対する羊水検査による感度は約98%、偽陽性率は0。4%とされています。
重要なことに、腹壁欠損、食道閉鎖、胎児奇形腫、総排泄腔外反、表皮水庖症などの皮膚疾患などの胎児異常も羊水中AFP値の上昇とアセチルコリンエステラーゼ検査の陽性と関連があります。
現在では画像診断技術が発達し、多くの神経管欠損は超音波検査で同定されるたえめ、最適な診断検査は超音波検査となっています。
現在の妊娠女性には、MSAFPまたは超音波検査いずれかを用いた神経管欠損のスクリーニングの選択肢をもつようになりました。
MSAFPスクリーニングが施行されるにつれて、高齢妊娠という用語が一般的になりました。
1979年のNIHのコンセンサス会議では、35歳以上の妊婦に対して羊水染色体検査の選択肢について助言をすることを推奨していました。この35歳という閾値は、一部の染色体異常の確率が母体年齢によって上外することと、 当時の染色体検査による流産率と母体年齢が35歳のダウン症21トリソミー)の確率が同じであるという前提に基づいていましたが、現在ではそれが誤りだとわかっています。

染色体異数性(トリソミー)の母体血清スクリーニングテスト

分娩時35歳未満の女性に対する染色体異数性の血清スクリーニングは、母体血清マーカーテストが可能となってから、ほどなくして可能となりました。
1984年に妊娠15~21週での21トリソミー18トリソミーの児を妊娠した妊婦のMSAFP値が低値であることが報告され、母体年齢は、特有のリスクになりうるため計算に組み込まれました。
結果が陽性である閾値比をl:270としたとき、MSAFPスクリーニングは21トリソミー胎児の約25%を同定できたのです。
この比は母体年齢が35歳のときの第2三半期でのダウン症候群(21トリソミー)のリスクに相当します。
21トリソミーのリスクに対する閾値とそれに関連する5%の偽陽性率は、現在でもいくつかの検査室で使用されている基準となりました。
導入から10年以上経っても、染色体異数性の血清スクリーニングテストは35歳未満を対象としていました。高リスクの女性には十分な感度がなかったためとされてきましたが、これももはや事実ではなくなっています。母体年齢の高齢化に伴い胎児染色体異数性罹患率が上昇するため、母体血清マーカーテストでもcell-freeDNA検査でも染色体異数性スクリーニングにおける陽性的中率は母体年齢が35歳以上ではより高値となるのです。

 

クアトロテスト(母体血清マーカーテスト)とは

母体血清マーカーテストには、妊婦さんの血液中の
①3種類の成分(AFP・非抱合型E3・hCG)を測定するトリプルマーカーテスト
②4種類の成分(AFP・非抱合型E3・hCG・インヒビンA)を測定するクアトロテスト
があります。

クワトロテストでは何がわかるのか?

胎児のダウン症(21トリソミー),18トリソミー、開放性神経管欠損症の確率を予測して、基準となる値(カットオフ値)をもとに羊水検査などの確定診断検査が必要かどうか考慮するためのスクリーニング検査です。

母体血清マーカーテストとは?

母体血清マーカー検査とは、母体の血清(血液の中から白血球、赤血球などの血球を除いた成分を血清と言います)の中にある胎盤や胎児に由来するホルモンやはタンパクを測定することで、胎児が21 トリソミー(Down症候群)18トリソミー開放性神経管奇形に罹患している確率を推定する方法です。

歴史的には、開放性神経管奇形の胎児では脳脊髄液中に大量に存在するalpha-fetoprotein(アルファフェトプロテイン)AFPが羊水中に漏出し、さらには母体血清中に移行することにより、その存在を推測できることが契機となりました。また、逆にDown症候群の胎児では、母体血清中AFPは低値となることが明らかとなったことで、そういう母体の血清に含まれる成分を赤ちゃんの疾患のマーカー(指標)にしよう、というのが始まりです。

その後、Down症候群胎児では母体血清中のヒト絨毛性ゴナドトロピンhCGが高値を示すことが明らかとなり、さらにAFPと組み合わせることでその検出率が高まることが明らかとなりました。

現在では、AFP、hCGのほかに、unconlugated estriol ;uE3inhibinAの4種類の血清マーカーが、 妊娠15週以降18週までの期間の2ndtrimeSter検査として Down症候群18トリソミー、開放性神経管奇形に罹患している確率の算出のために用いられています。

第1三半期(妊娠1~13週)の血清マーカー検査として、 Down症候群 18トリソミーの罹患率の評価のために、おおむね妊娠10週ごろから13週の期間に妊娠関連血漿タンパク質pregnancy associated plasmaproteinA;PAPP-Aと遊離/全 β-hCGの2項目の測定が用いられています。

 AFPβhCGuE3inhibin APAPP-A
開放性神経管奇形
ダウン症
18トリソミー

上の表はスクリーニング対象となる3疾患と各血清マーカーの動きを表したものです。
これら各マーカー単独での検出率は低いのですが、複数のマーカーを組み合わせることでその精度を高めることができます。
血清マーカー検査の最大の利点は、非侵襲的なので流産の危険がないことですが、あくまでも胎児が罹患している確率を求めるだけの検査にとどまるため、確定診断のためには絨毛検査や羊水検査などの侵襲的検査が必要となります。ですので、母体血清マーカー検査といえど、受けるにあたっては、検査前後に十分な遺伝カウンセリングを受ける必要があります。クワトロテスト、結果陽性、確定のための検査、結果陽性確定、そのつぎに赤ちゃんの病気を理由にした人工妊娠中絶。
厳しい現実がどんどん実現していくきっかけになるのが出生前検査の特徴ですので。

母体血清マーカーの判定

罹患確率は、母体年齢から推測される固有の確率に各マーカーによる尤度比を掛けて算出されます。
Down症候群18トリソミーなど常染色体の不分離により発症するトリソミーは、母親由来の染色体の不分離が原因であることが知られており、その確率は母体年齢が高くなるほど上昇いたします。

母体年齢ダウン症児の確率
201/1176
211/1160
221/1136
231/1114
241/1087
251/1040
261/990
271/928
281/855
291/760
301/690
311/597
321/508
331/421
341/342
351/274
361/216
371/168
381/129
391/98
401/74
411/56
421/42
431/31
441/23

この表は母体年齢と染色体異常の発生頻度を示しています。
体外受精による凍結胚移植による妊娠例では、採卵時の年齢を基準にします。

尤度比LRは、各マーカーの血清中濃度を測定中央値の何倍かで表すMoM(multiple of the median)値で示したときのMo値の分布曲線から算出します。

母体血清マーカー(クワトロテスト)の測定値に影響を及ぼす因子

これには以下のようなものがあります。
人種
妊娠週数
体重
体外受精と採卵時期
家族歴
抗てんかん薬内服
インスリン依存性糖尿病

母体血清マーカーの検査に当たっては十分な病歴・家族歴の聴取が必要となります。

判定

判定は、 通常は羊水穿刺により流産に至るとされる危険率で約1/300をカットオフ値の基準とし、それより高い場合には陽性、低い場合には陰性と判定されます。
この判定結果はあくまでも確率であり、罹患児はスクリーニング陽性妊婦の約2%に過ぎないのです。
また、母体年齢が高いほど偽陽性率が上昇することが知られており、 クアトロテストでは、母体年齢が40歳以上の場合には陽性率が1/3を超えることが報告されています。
また、陰性でも罹患児の可能性がないわけではありません

検査を受けた妊婦の結果の受け止め方はさまざまとなりますが、検査結果を理解したうえで本人たちからの希望があれば羊水穿刺などの確定診断可能な検査を行うことになります。
海外では、妊娠11週ごろから13週の期間の胎児の後頸部浮腫nuchal translucency;NT測定と第1三半期、 第2三半期の母体血清マーカー検査を組み合わせて罹患率を算出し、その結果を踏まえて絨毛検査や羊水検査を行いDown症候群をスクリーニングするさまざまな方法が行われてきました。最もDown症候群の検出率(偽陽性率5%)が高いものでは検出率が94~96%になるといいますが、わが国ではいまだこのような複合的な検査方法は実施されておらず、各検査単独での罹患率の算出という形をとっています。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 (がん薬物療法専門医認定者名簿)、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医(臨床遺伝専門医名簿:東京都)として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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