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20代後半・30代前半が出生前診断を受ける割合は?ダウン症リスクとNIPT

仲田洋美 医師

この記事の監修:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

この記事でわかること
📖 読了時間:約15分
🤰 NIPT・ダウン症リスク・20代後半・30代前半
★ 臨床遺伝専門医監修

Q. 20代・30代前半で出生前診断を受ける人は少ないと聞きました。私も受けなくて大丈夫でしょうか?

A. 「周りがどうしているか」ではなく、「自分たちはどうしたいか」をご家族で話し合って決めることが大切です。
2020年の調査では、出産時35歳未満の方の82.9%が出生前検査を何も受けていませんでした[1]。たしかにダウン症候群の確率は若いほど低くなります。けれども、22q11.2欠失症候群などの微小欠失や、単一遺伝子の病気は、お母さんの年齢に関係なく起こります。年齢だけを安心材料にせず、現実的なリスクを知ったうえで判断していただきたいと考えています。

  • ➤受ける割合の背景 → 35歳未満の8割以上が検査を受けないまま出産を迎えている現実
  • ➤年齢に関係ないリスク → 微小欠失・単一遺伝子の病気は若くても同じように起こる
  • ➤見逃されやすいリスク → エコー検査だけでは染色体異常は指摘されにくい
  • ➤実際の症例 → 20代・30代前半で検査を受けた方、受けなかった方の経過
  • ➤陽性後の流れ → 確定検査(羊水・絨毛)を院内で受けられる体制

⏱️ 30秒でわかる要約

📊 Q. 20代後半・30代前半で出生前診断を受ける割合は?

2020年の調査では、何らかの出生前検査を受けた人は出産時35歳未満で約17%(6人に1人)でした。35〜39歳は約35%、40歳以上は約59%で、若い世代ほど受ける人は少数派です[1]。ダウン症候群の確率は30歳で約1/950、33歳で約1/600、34歳で約1/490です[2]。

🧬 Q. ダウン症候群だけ調べれば大丈夫?

年齢とともに増えるのは、ダウン症候群などの染色体の「数」の異常です。一方、22q11.2欠失症候群などの微小欠失や、ヌーナン症候群などの単一遺伝子の病気はお母さんの年齢に関係なく起こります。単一遺伝子の病気は30遺伝子・25疾患を合わせただけでも約600人に1人と報告されています[4]。若い方ほど、ダウン症候群以外の範囲が占める重みは大きくなります。

🌸 Q. 陽性だったらどうなる?

NIPTはスクリーニング検査なので、陽性なら羊水検査・絨毛検査で確かめます。当院では確定検査まで院内で受けられ、主要な検査項目は3日以内に結果が出ます(マイクロアレイ検査は2週間ほど)。陽性のカウンセリングは何度でも無料です。

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1. 20代後半・30代前半で出生前診断を受ける割合と、見過ごされがちな「本当のリスク」

「私の周りでNIPTを受けたという人はあまりいない」「まだ20代、30代前半だから大丈夫だよね」と、ご自身の年齢を安心材料にされている妊婦さんは少なくありません。実際、2020年に厚生労働省の専門委員会で報告された調査(出産経験のある女性448名)では、出産時35歳未満の方で何らかの出生前検査を受けた人は約17%、つまり6人に1人ほどでした。言いかえると、8割以上の方が出生前検査を何も受けずに出産を迎えています[1]。

📊 出産時の年齢別:何らかの出生前検査を受けた人の割合

出産時の年齢 何らかの出生前検査を受けた 何も受けなかった
35歳未満(20代後半・30代前半を含む) 約17% 82.9%
35〜39歳 約35% 65.3%
40歳以上 約59% 40.9%

出典:河合蘭「女性から見た出生前検査」(2020年10月のインターネット調査・448名、第2回NIPT等の出生前検査に関する専門委員会資料)[1]。「受けた」は100%から「何も受けなかった」を引いた値です。20代後半・30代前半だけを区切った全国の統計はなく、35歳未満としてまとめた数字です。

「受ける割合」が低いのは、20代後半・30代前半ではダウン症候群の確率が低いと知られているからでもあります。けれども、その確率がどのくらいなのかを具体的に知っている方は多くありません。

30歳〜34歳のダウン症の確率(年齢別一覧)

ダウン症候群(21トリソミー)などの染色体の数の異常は、お母さんの年齢が上がるにつれて増えます。生まれてくる赤ちゃんがダウン症候群である確率は、次のように報告されています[2]。30歳を過ぎると少しずつ上がり、32歳から34歳にかけて上がり方が急になるのが分かります。

👶 出産時の年齢別:ダウン症候群の赤ちゃんが生まれる確率

出産時の年齢 ダウン症候群の確率
25歳 約1/1,250
26歳 約1/1,176
27歳 約1/1,111
28歳 約1/1,053
29歳 約1/1,000
30歳 約1/952
31歳 約1/909
32歳 約1/769
33歳 約1/602
34歳 約1/485
35歳 約1/378

出典:Hook EB(Obstetrics and Gynecology, 1981)[2]。出生時(生まれた赤ちゃん)での確率です。妊娠中の時期には、途中で流産する分が含まれるため、これより高い値になります。ダウン症候群以外も含めた染色体の数の異常全体では、30歳で約0.3%です。

「30歳 初産」のように、初めての出産かどうかを気にされる方もいますが、ダウン症候群の確率を左右するのはお母さんの年齢で、初産か2人目以降かで確率が変わるわけではありません。35歳以降の確率や、妊娠中の時期ごとの数字はダウン症の確率と年齢の関係で詳しく解説しています。

ただし、確率が低いことと「起こらない」ことは違います。20代〜30代前半は出産する人の数が多い年代のため、若いお母さんから生まれるダウン症候群の赤ちゃんも少なくありません。そして、この年代の多くの方が検査を受けていないため、出産を迎えるまで赤ちゃんの染色体の変化に気づかないまま妊娠期間を過ごすケースが生じています。

知っておいていただきたい現実がもう一つあります。ダウン症候群のある方の寿命は医療の進歩で大きく延び、現在は60歳前後まで生きられると報告されています[3]。そのぶん、成人してからの暮らしや支援をご家族でどう考えるかも大切になります。「受けておけばよかった」と後から悩むよりも、正しい情報を得たうえで、受けるか受けないかを選んでいただくことが大切です。

20代後半・30代前半は出生前診断を受けるべき?

出生前診断は、受けるべきかどうかが年齢で決まる検査ではありません。20代後半・30代前半の方が考えるときの目安は、次の3つだと考えています。

① 結果を知ったらどうしたいか:陽性だったときに、確定検査に進むのか、出産に向けて準備をするのかを、パートナーと一度話しておくこと。
② 年齢に関係ないリスクをどう考えるか:微小欠失や単一遺伝子の病気は、20代でも30代前半でも同じように起こります(次の章で説明します)。
③ お父さんの年齢:お父さんの年齢が高いと、新しい遺伝子の変化が増えます。

年代別の受検割合や「受けるべきか」の判断基準は35歳でNIPTを受ける割合は?「受けるべきか」迷う方へ3つの判断基準で、20代で実際に陽性となった例とその後の選択は20代NIPT陽性事例と出生前診断の選択で紹介しています。このページでは、20代後半・30代前半の方が「若くても受ける意味があるか」を判断するための材料を整理します。

💡 「周りの割合」ではなく「自分たちの備え」を

出生前診断は強制されるものではありません。けれども、万が一のときの心構えや環境を整えるための選択肢の一つです。年齢にかかわらず、ご家族にとって後悔のない選択をしていただくことが何より大切です。

2. なぜ20代・30代前半でも染色体異常は起こるのか?

「若ければ染色体異常は起きない」というのは、よくある誤解の一つです。染色体異常は、高齢妊娠だけのリスクではありません。

卵子や精子ができる過程(減数分裂)や、受精後の細胞分裂の過程で、染色体の数が1本多くなったり少なくなったりするずれは、お母さんの年齢にかかわらず誰にでも偶然起こりうる現象です。年齢とともに起こりやすくなりますが、健康なご夫婦であっても一定の確率で起こります。

💡 用語解説:陽性的中率(PPV)とは?

NIPTで「陽性」という結果が出たときに、お腹の赤ちゃんが本当にその病気をもっている確率のことです。陽性的中率は、検査を受ける方の年齢によって変わります。若い妊婦さんほどもともとの確率が低いため、陽性と出ても実際には病気がない「偽陽性」の割合が相対的に高くなります。NIPTはスクリーニング検査なので、陽性のときは確定検査で本当にそうかを確かめることが前提です。

お母さんの年齢だけが要因ではない「微小欠失」と「遺伝子の変化」

ダウン症候群のような染色体の「数」の異常と違い、染色体の一部がわずかに欠けたり重なったりする「微小欠失・微小重複」や、1つの遺伝子に起こる変化(単一遺伝子疾患)は、お母さんの年齢に関係なく起こります。つまり、25歳でも40歳でも、起こる確率はほとんど変わりません。

代表的なのが22q11.2欠失症候群です。心臓の病気や免疫の弱さ、発達の遅れなどを伴うことがあり、年齢によらず起こる微小欠失の中では頻度の高いものとして知られています。微小欠失の種類と症状は微小欠失症候群とは?12種類の症状と検査で解説しています。

父親由来の遺伝子変異が子へ伝わるイメージ

(父親由来の遺伝子変異が子へ伝わるイメージ)

また、お母さんが若くても、お父さんの年齢が上がるにつれて精子の細胞分裂の回数が増え、「新生突然変異(de novo変異)」と呼ばれる新しい遺伝子の変化が増えることが分かっています。子どもに生じる新しい変化の大部分は父親由来で、父親の年齢が1歳上がるごとに約2個ずつ増えると報告されています[6]。父親の年齢と単一遺伝子疾患の関係はNIPTと単一遺伝子疾患|父親の年齢リスク(デノボ変異)とはで詳しく解説しています。

こうした単一遺伝子疾患は1つひとつはまれですが、わずか30遺伝子・25疾患を合わせただけでも、約600人に1人(0.17%)の頻度になると報告されています[4][5]。これは、ダウン症候群の出生頻度(全体で約700人に1人)と同じくらいの数字です。当院のダイヤモンドプランでは56遺伝子、インペリアルプランでは最大155遺伝子(202疾患)の単一遺伝子疾患を対象にしています。

さらに、微小欠失・微小重複や単一遺伝子の変化の中には、知的障害や発達の遅れ、自閉症を伴うことがあるものが含まれています。たとえば16p11.2欠失・重複(双子マックス・インペリアル)、フェラン・マクダーミッド症候群(インペリアル)、レット症候群(ダイヤモンド・インペリアル)などです。そのため、一部の自閉症・発達障害の原因は、当院のNIPTで調べることができます。ただし自閉症・発達障害の原因はさまざまで、NIPTで分かるのはその一部です。陰性であっても、自閉症・発達障害がないことを保証するものではありません。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【命と向き合うということ】

「若いから大丈夫なはず」という思い込みと、妊娠中の「もしも…」という漠然とした不安。この狭間で揺れる20代後半や30代前半の妊婦さんは少なくないと考えています。不安を抱えたままの妊娠期間は、つらく孤独なものです。

私は、出生前検査は命を選別するためのものではなく、あなたと赤ちゃんのためにどうするか、命と向き合う準備をするための大切なステップだと考えています。年齢で決まるのはリスクの一部にすぎません。何を調べ、何を調べないのかを知ったうえで、ご家族で選んでいただきたいと考えています。

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3. エコー検査(妊婦健診)だけではダウン症が指摘されない理由

「毎回の妊婦健診のエコーで『順調ですね』と言われているから、ダウン症ではないですよね?」という疑問をもつ方は多いと思います。しかし、ここには落とし穴があります。

エコー検査は赤ちゃんの形(大きさや臓器のつくり)を見るための検査であり、ダウン症候群などの染色体異常をエコー画像だけで見抜くことは困難です。

首の後ろのむくみ(NT)や心臓の形の異常など、ダウン症候群に多い所見がエコーで見つかることもあります。けれども、すべてのダウン症候群の赤ちゃんに形の異常が現れるわけではありません。通常の健診のエコーでは異常を指摘されず、生まれてから初めてダウン症候群と分かるケースも少なくありません。エコーで分かること・分からないことはダウン症はエコーで指摘されない?わかる時期と特徴で解説しています。

💡 NIPTの役割

エコー検査とNIPTは、得意とする分野が異なります。NIPTはお母さんの血液中にある赤ちゃん(胎盤)由来のDNAの断片を調べるため、エコーでは見えない染色体や遺伝子の変化を、妊娠の早い時期に知るための選択肢になります。当院のNIPTは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。

4. 【症例】出生前診断を受けた方、受けなかった方の経過

数字やデータだけでなく、20代・30代前半で出生前診断を考えた方の経過をご紹介します(個人が特定されないよう、内容の一部を変えています)。ほかの方がどのような経緯で検査を受け、どのような結果と向き合ったのかを知ることは、ご自身の選択を考えるうえで助けになると考えています。

Aさん(32歳):2人目の妊娠で受けたNIPT

Aさんは2人目のお子さんを妊娠した際、「まだ若いから大丈夫かな」という気持ちで当院のNIPTを受けられました。結果は21トリソミー(ダウン症候群)陽性で、その後の羊水検査でもダウン症候群であることが確定しました。Aさんは悩んだ末に妊娠を継続しない選択をされ、深くつらい経験になりました。その後Aさんは再び妊娠され、もう一度NIPTを受けられました。そのときの結果は陰性でした。

Bさん(27歳):家族との話し合いと早い時期の決断

Bさんは初めての妊娠でした。以前からNIPTの存在を知っており、妊娠したら受けようと決めていました。検査結果は21トリソミー陽性でした。お母様とパートナーの双方と話し合い、Bさんご自身も妊娠初期のうちに判断したいと考え、妊娠を継続しない選択をされました。20代と若く、次の妊娠を希望されています。

Cさん(28歳):検査を受けなかったことで生じた複雑な思い

Cさんは初めてのお子さんを出産されましたが、その子がダウン症候群でした。妊婦健診は毎回欠かさず受けていましたが、ダウン症候群と分かったのは生まれてからでした。そのことがきっかけで、ご家族との関係が難しくなってしまいました。生まれてきたお子さんはかわいくてたまらない一方で、「あのとき出生前診断を受けていれば、違った未来があったのではないか」と考えてしまう瞬間があるそうです。同時に、「もし検査を受けていたら、今この腕の中にいるこの子には会えなかったかもしれない」とも思い、複雑な気持ちを抱えていらっしゃいます。

Dさん(26歳):20代で経験した「年齢だけでは決まらない」という現実

Dさんは第1子を26歳で出産され、お子さんはダウン症候群でした。お子さんがかわいくてたまらないからこそ、「この子の将来を支えるきょうだいをつくってあげたい」と考え、第2子、第3子の妊娠へと踏み出しました。「もし次もダウン症候群だったら、2人を育てていく自信はない」という思いから、第2子と第3子のときにはNIPTを受けることを決められました。Dさんは「35歳未満だからといって大丈夫なわけではない」ことを、ご自身の経験から実感されています。

これらの経過は、不安をあおるためにご紹介したものではありません。検査を受けても受けなくても、それぞれの人生に重い決断と深い愛情があります。ただ、事前に「知る」ことで心の準備ができ、ご家族と話し合う時間をもてることは確かです。

5. もしもNIPTで「陽性」という結果が出たら?

検査を受ける前にいちばん不安になるのは、「もし異常が見つかったらどうしよう」ということだと思います。不安を整理するためにも、陽性が出たあとの流れを事前に知っておくことが大切です。

まず大前提として、NIPTは非確定検査(スクリーニング検査)であり、陽性=確定ではありません。結果が陽性だった場合は、本当にその病気があるかどうかを確かめるために、羊水検査や絨毛検査といった確定検査を受けます。とくに微小欠失・微小重複は、染色体の数の異常に比べて陽性的中率が低めなので、陽性なら必ず確定検査で確かめる必要があります。なお、微小欠失は通常の染色体検査(Gバンド法)では見つけにくいため、確定にはマイクロアレイ検査などが必要です。

当院では2025年6月から羊水検査・絨毛検査を院内で行っており、主要な検査項目は3日以内に、マイクロアレイ検査は2週間ほどで結果が出ます。陽性のときのカウンセリングは何度でも無料で、臨床遺伝専門医が結果の意味とその後の選択肢を説明します。

陽性の結果を告げられた直後は、頭が真っ白になり、冷静に考えられなくなる方がほとんどです。だからこそ、検査を受ける施設を選ぶときは、陽性のときに誰が説明し、確定検査をどこで受けられるのかまで確認しておくことが大切です。

6. 後悔しない選択のために~検査の範囲と遺伝専門医のサポート

NIPTにはいくつかの検査方式があり、どの方式で何を調べるかによって、分かることが変わります。

全染色体を広く浅く調べる「ワイドゲノム法」は、13・18・21番以外の染色体も見られる一方で、胎盤だけに染色体の違いがある「胎盤限局性モザイク」の影響を受けやすく、7番染色体などで陽性と出ても、赤ちゃん本人には異常がないことがあります。NIPTはスクリーニング検査なので、陽性的中率が下がること自体で検査の意味がなくなるわけではありません。大切なのは、陽性の方を拾い上げ、確定検査で本当にそうかを確かめることにつなげることです。

当院のプランは、それぞれ検査方式が異なります。スタンダードプランは標的捕捉濃縮法、ダイヤモンドプランは米国の3大遺伝子検査会社の一角が提供する新技術「COATE法」(SNP法とターゲット法の組み合わせ)※、インペリアルプランは低深度全ゲノムシーケンス+ターゲット法で検査します。COATE法の精度データはCOATE法のエビデンスで解説しています。

※「3大遺伝子検査会社」は、遺伝性がんや周産期(出生前検査・保因者検査)を含む遺伝子検査全般を手がける米国の検査専業会社のうち、2025年通期の売上高が上位の3社を指します(各社の決算発表にもとづく当院調べ)。がん検診やリキッドバイオプシーに特化した会社は含みません。

ダウン症候群だけで大丈夫? ― 「値段」ではなく「調べられる範囲」で選ぶ

20代・30代前半の方は、ダウン症候群の確率がもともと低いぶん、年齢に関係なく起こる微小欠失や単一遺伝子の病気の重みが相対的に大きくなります。そこで、プランを「総額」ではなく「調べられる項目1つあたり」で並べてみます。

🧬 プランごとの調べられる範囲と「1項目あたり」の目安

プラン 主に調べる範囲 項目数 1項目あたり
三大トリソミーのみ(仮に10万円とした場合) 13・18・21トリソミー 3 約33,333円
スタンダード(220,000円) 13・18・21トリソミー+性染色体4種類+微小欠失6種類(22q11.2欠失症候群など) 13 約16,923円
プレミアム(264,000円) 13・18・21・15・16・22トリソミー+性染色体4種類+微小欠失12種類 22 約12,000円
ダイヤモンド(407,000円) プレミアムと同じ範囲+単一遺伝子56 78 約5,218円
双子マックス(440,000円) 全常染色体+微小欠失・重複92種類+5Mb超の構造異常(単胎・双胎) 114+α 約3,860円
インペリアル(550,000円) 全常染色体+性染色体4種類+微小欠失・重複92種類+5Mb超の構造異常+単一遺伝子最大155遺伝子(202疾患) 320+α 約1,719円

料金は事前学習動画を見て来院した場合の当日割引後(税込)です。三大トリソミーは出生前検査で広く調べられている基本の項目で、当院では2026年7月から、これだけを調べるプランは扱っていません。比較のために仮の金額を置いています。項目数は、トリソミー・性染色体・微小欠失は種類の数、単一遺伝子は病気の数で数えています。このほか互助会(カトレア会8,000円・安心検査結果保障制度6,000円、全員加入)などの費用がかかります。

検査の範囲は、保険の補償内容に似ています。補償の範囲が広いほど保険料は上がりますが、守られる範囲も広がります。ただしNIPTの場合、陰性は「調べた範囲では可能性が低い」という意味で、すべての病気がないことの保証ではありません。どのプランが合うかは、ご家族が何を知りたいかによって変わります。遺伝カウンセリングでご相談ください。

ミネルバクリニックのサポート体制

当院は日本医学会の認証施設ではありませんが、臨床遺伝専門医が常駐し、検査前の遺伝カウンセリングから結果の説明、陽性のときの確定検査(羊水検査・絨毛検査)までを院内で行っています。

NIPTの料金には、遺伝カウンセリング・4Dエコー・性別判定が含まれます。結果は基本的に10〜14日で出ます(インペリアルプランの単一遺伝子の結果だけは3〜4週間)。また、当院でNIPTを受けるすべての方が、2つの互助会に加入します。カトレア会(8,000円)は、陽性のときの羊水検査の費用を補助する互助会です。安心検査結果保障制度(6,000円)は、結果が出ず再検査が必要になったのに、流産によって再検査ができなかった場合に備える互助会です。どちらも収益を目的としない仕組みです。

施設を選ぶときは、料金や結果の早さだけでなく、陽性のときに誰が説明し、確定検査までどこで受けられるのかを最初に確認しておくことをおすすめします。遠方の方は、全国110か所の提携施設で採血できるオンラインNIPTもご利用いただけます。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「正確性」は、心の安全を守るためにあります】

当院が結果を出す早さよりも、検査の正確さと調べる範囲にこだわるのには理由があります。それは、偽陽性による不必要な絶望や、陽性のあと確定検査まで行き場がなくなる不安から、妊婦さんを守るためです。

生涯に関わる重い結果を受け止めるには、確かなデータと、それを説明する専門家の存在が欠かせないと考えています。「どのプランにするべきか」は医師が誘導するものではありません。ご家族でしっかり話し合い、納得できる選択をしていただくことが大切だと考えています。一人で抱え込まず、まずは臨床遺伝専門医の話を聞きにいらしてください。

FAQ(よくある質問)

Q1. 20代・30代前半なら、ダウン症候群だけ調べれば大丈夫ですか?

年齢とともに増えるのは、ダウン症候群などの染色体の数の異常です。一方、22q11.2欠失症候群などの微小欠失や、単一遺伝子の病気はお母さんの年齢に関係なく起こります。単一遺伝子の病気は30遺伝子・25疾患を合わせただけでも約600人に1人と報告されており、ダウン症候群の出生頻度(約700人に1人)と同じくらいです。若い方ほど、ダウン症候群以外の範囲の重みが大きくなります。

Q2. 20代・30代前半でNIPTを受ける意味はありますか?

あります。2020年の調査では、出産時35歳未満で何らかの出生前検査を受けた人は約17%で、8割以上が何も受けずに出産を迎えていました。ダウン症候群の確率は若いほど低いものの、出産する人の数が多い年代のため、若いお母さんから生まれるダウン症候群の赤ちゃんも少なくありません。さらに微小欠失や単一遺伝子の病気は年齢に関係なく起こります。受けるかどうかは、ご家族で話し合って決めていただくことが大切です。

Q3. 30代前半・20代後半でも出生前診断は受けるべきですか?

受けるべきかどうかは年齢で決まるものではありません。目安は、結果を知ったらどうしたいかをパートナーと話せているか、年齢に関係なく起こる微小欠失や単一遺伝子の病気をどう考えるか、お父さんの年齢が高いかどうか、の3つです。迷う場合は、検査を受ける前に臨床遺伝専門医の遺伝カウンセリングで相談してください。

Q4. エコー検査(妊婦健診)で異常がなければ安心ですか?

エコー検査だけで、ダウン症候群などの染色体異常をすべて見つけることは困難です。エコーは赤ちゃんの形を見る検査であり、生まれるまで分からなかったというケースも少なくありません。染色体や遺伝子の変化を早い時期に知りたい場合は、NIPTが選択肢になります。

Q5. ワイドゲノム法とターゲット法はどう違うのですか?

ワイドゲノム法は全染色体を広く浅く調べる方式で、13・18・21番以外の染色体も見られますが、胎盤限局性モザイクの影響で陽性でも赤ちゃん本人には異常がないことがあります。ターゲット法は、調べる領域を決めて詳しく調べる方式です。当院のダイヤモンドプランは、SNP法とターゲット法を組み合わせたCOATE法で検査します。どの方式でも、陽性なら確定検査で確かめることが前提です。

Q6. もし結果が「陽性」だった場合、どうすればいいですか?

NIPTは確定診断ではないため、本当に病気があるかどうかを羊水検査や絨毛検査で確かめます。当院では確定検査を院内で行い、主要な検査項目は3日以内に、マイクロアレイ検査は2週間ほどで結果が出ます。陽性のカウンセリングは何度でも無料で、カトレア会(8,000円)により羊水検査の費用が補助されます。

Q7. 陰性であれば絶対に安心と言えますか?

いいえ。陰性は「調べた範囲では可能性が低い」という意味で、すべての先天性の病気や発育の異常がないことを保証するものではありません。まれですが偽陰性の可能性もあります。どの範囲を調べたのかを結果報告書で確認し、妊婦健診も引き続き受けてください。

Q8. 夫の年齢が高いこともリスクになりますか?

はい。お父さんの年齢が上がるにつれて精子の細胞分裂の回数が増え、新しい遺伝子の変化(新生突然変異)が増えることが分かっています。こうした変化による単一遺伝子の病気は、当院のダイヤモンドプラン(56遺伝子)やインペリアルプラン(最大155遺伝子)で調べることができます。

Q9. 30歳〜34歳でダウン症の赤ちゃんが生まれる確率はどのくらいですか?

生まれた赤ちゃんでの確率は、30歳で約1/952、31歳で約1/909、32歳で約1/769、33歳で約1/602、34歳で約1/485と報告されています。25歳(約1/1,250)より高く、35歳(約1/378)より低い数字です。初産か2人目以降かでは変わりません。確率はあくまで集団の統計で、ご自身の赤ちゃんがどうなるかを保証するものではありません。

Q10. ダウン症が「生まれやすい人」の特徴や条件はありますか?

医学的に最もはっきりした要因は「お母さんの年齢」で、年齢が上がるほど確率は高くなります。また「お父さんの年齢」は、一部の遺伝子の変化に影響します。しかし、特定の体質や生活習慣があるから生まれやすいというものではなく、健康な20代・30代のご夫婦にも偶然起こりうるものです。

🏥 不安を、ひとりで抱えないために

年齢にかかわらず、赤ちゃんの健康を願うのは当然のことです。ミネルバクリニックは臨床遺伝専門医が常駐し、NIPTの遺伝カウンセリングから、陽性のときの確定検査(羊水検査・絨毛検査)まで院内で対応しています。NIPT専用ダイヤル:03-3408-3768

関連記事

参考文献

  • [1] 河合蘭. 女性から見た出生前検査(「出生前診断のニーズに関するアンケート」2020年10月実施、448名). 第2回NIPT等の出生前検査に関する専門委員会 資料. 2020年11月20日. [厚生労働省]
  • [2] Hook EB. Rates of chromosome abnormalities at different maternal ages. Obstet Gynecol. 1981;58(3):282-285. [PubMed 6455611]
  • [3] Bittles AH, Glasson EJ. Clinical, social, and ethical implications of changing life expectancy in Down syndrome. Dev Med Child Neurol. 2004;46(4):282-286. [Murdoch University]
  • [4] Mohan P, et al. Clinical experience with non-invasive prenatal screening for single-gene disorders. Ultrasound Obstet Gynecol. 2022;59(1):33-39. [PMC9302116]
  • [5] Zhang J, et al. Non-invasive prenatal sequencing for multiple Mendelian monogenic disorders using circulating cell-free fetal DNA. Nat Med. 2019;25(3):439-447. [DOI 10.1038/s41591-018-0334-x]
  • [6] Kong A, et al. Rate of de novo mutations and the importance of father’s age to disease risk. Nature. 2012;488(7412):471-475. [PMC3548427]

※本記事は一般の方に向けた情報提供を目的とするもので、個別の診断・治療方針を示すものではありません。検査を受けるかどうかは、主治医・専門医にご相談ください。

プロフィール
仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続け、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、検査結果の数値そのものだけでなく、「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、日本人として異文化の中で生活した経験があります。価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。この経験は現在の診療においても、「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、36週6日で一人を死産した経験があります。その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、家族の未来に関わる重要な意思決定です。年齢や統計だけで判断するのではなく、医学的根拠と心理的支援の両面から、ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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