目次
- 1 1. 【要約Q&A】「二人目の再発率」を家族ごとに整理する
- 2 2. 【相談内容】上の子が重い遺伝病。二人目を望むほど不安が増えていった
- 3 3. 【検査と結果】「両親保因者(25%)」の前提が揺らいだ
- 4 4. 【報告書の再評価】「結果の紙」ではなく「家族の未来」に責任を持つ解釈へ
- 5 5. 再発率の考え方:常染色体潜性(劣性)だけで決めない
- 6 6. 出生前診断の位置づけ:スクリーニングと確定診断を混同しない
- 7 7. 当院で大切にしていること:正確性と、その後の支え
- 8 8. よくある誤解:ここを直すと、心が軽くなります
- 9 9. 臨床遺伝専門医からのメッセージ:不安は“弱さ”ではありません
- 10 よくある質問(FAQ)
- 11 関連記事
- 12 参考文献
「上の子が遺伝病と言われました。次の子も同じ病気になるのでしょうか」。常染色体潜性(劣性)遺伝の病気では「二人目は25%」と説明されることが多いのですが、25%は「ご両親がともに同じ遺伝子の保因者」という前提がそろったときの数字です。この記事では、ご両親の保因者検査と上のお子さんの検査報告書の再評価によって、その前提が当てはまらない可能性が見えてきた実例をもとに、再発率の考え方と、二人目の妊娠で調べられる検査を臨床遺伝専門医の立場から解説します。
- ➤結論 → 再発率は「式」ではなく、ご家族ごとの根拠で決まります
- ➤今回のポイント → ご両親の保因者検査+報告書の再評価で、25%の前提が揺らぎました
- ➤大切な注意 → 新生突然変異が疑われても、性腺モザイクの可能性はゼロと言い切れません
- ➤二人目の妊娠 → 上のお子さんの変化が分かっていれば、絨毛検査・羊水検査で狙って調べられます
⏱️ 30秒でわかる要約
🧬 Q. 上の子が潜性(劣性)遺伝の病気。二人目が同じ病気になる確率は?
ご両親がともに同じ遺伝子の保因者なら、妊娠のたびに25%(4分の1)です。ただしこれは前提がそろったときの数字です。この症例では、ご両親の保因者検査と上のお子さんの報告書を見直したところ、その前提が当てはまらない可能性が出てきました。
🔍 Q. 片方の親しか保因者でないのに発症することはある?
あります。もう1つの変化がお子さんで新しく起きた(新生突然変異)、両方の染色体を片方の親だけから受け継いだ(片親性ダイソミー)、検査で見つけにくい変化が隠れていた、などです。どれに当たるかで、次のお子さんの見立てが大きく変わります。
🌸 Q. 二人目の妊娠では何を調べられる?
上のお子さんの原因となる変化が分かっていれば、絨毛検査・羊水検査でその変化を狙って調べる出生前診断を検討できます(当院では絨毛検査・羊水検査を院内で行っています)。当院のNIPTは上のお子さんの潜性遺伝の病気をそのまま調べる検査ではないため、目的に合わせて検査を選びます。
1. 【要約Q&A】「二人目の再発率」を家族ごとに整理する
同じ「常染色体潜性(劣性)」という言葉でも、ご家族ごとに状況は違います。ネットの情報を読んでも結論が出ないのは、あなたの理解力の問題ではありません。前提が人それぞれ違うからです。
ご両親がともに同じ遺伝子の保因者であれば、お子さんが病気になる確率は妊娠のたびに25%、保因者になる確率は50%、どちらでもない確率は25%です[1]。この数字は「前の子が病気だったから次は大丈夫」「次も必ず同じ」というものではなく、毎回の妊娠で同じように当てはまります。
ただし、この25%は「ご両親がともに保因者」と確認できた場合の基本形です。本症例では、ご両親の保因者検査と上のお子さんの検査報告書の再評価によってその前提が揺らぎ、再発率の見立てが変わりました。
💡 用語解説:保因者(キャリア)とは
常染色体潜性(劣性)の病気では、原因となる遺伝子の変化を1つだけ持つ人は、多くの場合、症状が出ません。この「症状はないが、子に伝える可能性がある状態」が保因者(キャリア)です。お子さんが病気になるのは、ご両親から1つずつ、合わせて2つの変化を受け継いだときです。同じ遺伝子の中の2つの変化がそれぞれ別の種類である状態を、複合ヘテロ接合といいます。
2. 【相談内容】上の子が重い遺伝病。二人目を望むほど不安が増えていった
第一子は、重い運動機能障害を伴う遺伝性の病気とされ、日常生活に介助が必要な状態でした。ほかの医療機関で受けた遺伝子検査では、常染色体潜性(劣性)遺伝の病気と説明されていました。お子さんが大きくなるほど介助の負担は増え、親御さんの体力も年齢とともに変わっていきます。
「もう一人同じ状態の子を育てられるだろうか」という不安は、決して弱さではありません。現実的で、責任のある心配です。
Aさんご夫婦(事例は、個人が特定されないよう細部を変えています)は、二人目の妊娠にあたり、「検査を受けるだけでなく、結果の意味を整理したい」と当院を受診されました。ここがこの症例の出発点です。
⚠️ 大切なお知らせ
「常染色体潜性(劣性)=次は必ず25%」という“式”だけで結論を出すのは危険です。まずはご両親が本当に同じ遺伝子の保因者なのか、それが上のお子さんの検査結果と矛盾しないかを確認する必要があります。
3. 【検査と結果】「両親保因者(25%)」の前提が揺らいだ
本症例では、妊娠中のNIPT(スクリーニング)、ご夫婦の保因者検査、第一子の検査報告書の再評価を組み合わせることで、第一子の発症が「両親保因者(25%)」だけでは説明しにくい可能性が見えてきました。
実施したこと
🧪 この症例で行った検査と、それぞれの位置づけ
| 実施内容 | 目的 | 位置づけ |
|---|---|---|
| NIPT | 妊娠中の赤ちゃんの染色体の変化などのスクリーニング | スクリーニング(確定ではない) |
| 保因者検査(ご夫婦) | ご両親が同じ遺伝子の保因者かどうかの確認、再発率の整理 | 家族計画の基礎情報 |
| 第一子の検査報告書の再評価 | 症状・家系・ご両親の検査結果・最新の文献に照らして、解釈を点検する | セカンドオピニオン的な再解釈 |
結果の要点(この症例で重要だった点)
- NIPTは、妊娠中のスクリーニングとして陰性の結果でした
- ご夫婦の保因者検査で、「ご両親がそろって同じ遺伝子の保因者」という形と一致しない可能性が示されました
- 第一子の症状との照合を含めて再評価すると、新生突然変異(または性腺モザイク)を考えるべき点が見えてきました
💡 ポイント:「再発率が下がる」方向の整理が起こる理由
常染色体潜性(劣性)で25%になるのは「ご両親がともに保因者」という前提がそろったときです。その前提が崩れると、再発率の見立ては変わります。ただし性腺モザイクは証明が難しいため、「ゼロ」と断言することはできません。だからこそ、確率と不確実性を一緒に整理し、次の妊娠の備えにつなげます。
4. 【報告書の再評価】「結果の紙」ではなく「家族の未来」に責任を持つ解釈へ
本症例では、第一子の遺伝子検査報告書の解釈を、お子さんの症状、ご両親の保因者検査の結果、海外の標準的な情報源とあわせて点検し直しました。報告書の誤りを指摘したというより、あとから得られた情報(ご両親の検査結果)を加えて解釈し直したところ、別の説明を考える必要が出てきた、ということです。その結果を、ご家族にとっていちばん大事な「再発率の見立て」につなげて整理しました。
遺伝子の変化(バリアント)が病気の原因かどうかは、米国臨床遺伝・ゲノム学会(ACMG)と分子病理学会(AMP)の指針で、Pathogenic(病的)からBenign(良性)までの5段階で判定されます。指針は「Likely(可能性が高い)」を90%を超える確からしさと定義しており、この分類の方法も知識と技術の進歩とともに変わっていくとしています[2]。つまり、同じ変化でも、情報が増えれば判定や解釈が変わることがあるのです。
基準の使い方の差
ACMG/AMPなどの枠組みはあっても、根拠の重み付けで検査機関ごとに判断が分かれることがあります。
情報更新のタイムラグ
新しい論文やデータベースの更新で解釈が変わっても、手元の報告書は作成した時点の内容のままです。
「片側しか見つからない」問題
潜性(劣性)の病気で変化が1つしか見つからないとき、通常の検査では見つけにくい種類の変化が隠れていることがあります。
症状との照合
報告書の結論と、お子さんの症状・ご家族の検査結果が矛盾しないかを照らし合わせることが、いちばん大切です。
🩺 院長コラム【「正確性」は、心の安全を守るためにあります】
遺伝子検査は、結果が出た瞬間に“終わる”検査ではありません。結果の解釈が不安定なまま残ると、妊娠期間の毎日が苦しくなります。だからこそ、急いで結論を出すよりも、根拠を積み上げて「今のご家族にとって、何がいちばん大事な判断材料なのか」をはっきりさせることが大切だと考えています。
医学の正確性は、数字のためではなく、患者さんの心の安全を守るためにあると考えています。
5. 再発率の考え方:常染色体潜性(劣性)だけで決めない
遺伝形式(遺伝の伝わり方)は、再発率の骨格です。ただし、同じ病名でも“起こり方”が複数あることがあります。
再発率を決めるのは「病名」だけではありません。①遺伝形式(顕性・潜性など)、②ご両親が保因者か、③新生突然変異や性腺モザイク、④検査が見落としやすい変化の有無、を順番に確認していきます。再発率は、病名+遺伝形式+検査結果+家系の情報を重ねて初めて見えてきます。
常染色体潜性(劣性)
ご両親が同じ病気の保因者の場合、お子さんが病気になる確率は妊娠のたびに25%です。ですが、ご両親の検査で前提がそろわないとき、見立ては変わります。
常染色体顕性(優性)
親が原因となる変化を持つ場合、お子さんに伝わる確率は一般に50%です。ただし、新生突然変異としてお子さんに初めて起こる場合もあり、その場合は次のお子さんの見立てが変わります。
性腺モザイク
親の体(血液など)では変化が見つからなくても、卵子・精子をつくる細胞の一部に変化がある状態です。証明が難しいため、「ゼロ」と断言できないことがあります。
片方の親だけが保因者なのに、潜性(劣性)の病気になるのはどんなとき?
潜性(劣性)の病気は、ふつうはご両親から1つずつ変化を受け継いで起こります。けれども、ご両親の検査で保因者が一方だけだった場合でも、次のような仕組みでお子さんが発症することがあります。
🧬 片方の親だけが保因者でも発症する主な仕組み
| 仕組み | 何が起きているか | 次のお子さんへの影響 |
|---|---|---|
| 新生突然変異(de novo) | 保因者でない親から受け継いだ側の遺伝子に、卵子・精子ができる過程などで新しく変化が起きた | 再発率は下がる方向。ただし性腺モザイクの可能性は残る |
| 片親性ダイソミー | ある染色体の2本を、両方とも片方の親だけから受け継いだ。その親の潜性の変化が2つそろうことがある | 多くは偶然に起こるため、再発率は低いと考えられる |
| 見つけにくい変化 | もう一方の親の変化が、大きな欠失やイントロンの変化など、通常の検査で見つけにくい種類だった | 実際は両親とも保因者で、25%のままのことがある |
※片親性ダイソミーは、一般集団の約400万人の遺伝子データの解析で、およそ2,000人に1人と推計されています[4]。
3つ目の可能性があるため、「保因者検査で片方の親に変化が見つからなかった」ことだけで、すぐに再発率が低いとは言い切れません。どの仕組みが考えられるかを、上のお子さんの報告書(変化の種類、ホモ接合か複合ヘテロ接合か)とご両親の検査結果を照らし合わせて絞り込みます。なお、保因者検査で陰性でも保因者である可能性はゼロにはならない(残余リスクがある)ことは、ACMGの指針でも示されています[5]。
新生突然変異と性腺モザイク:再発率の数字の読み方
お子さんに新生突然変異(de novo変異)が見つかったとき、次のお子さんの再発率として1〜2%という数字がよく使われます。これは、親の生殖細胞系列に同じ変化がある性腺モザイクの可能性を見込んだ数字です[3]。
ところが、病気の原因となる新生突然変異がお子さんに見つかった58家族(59の変化)を、親の血液や精液などで詳しく調べた英国の研究では、35の変化(59%)で再発率が0.1%未満と見積もられた一方、5の変化(9%)では親のモザイクのために再発率が高く、父親由来で精液から測れた例では5.6〜12.1%でした[3]。著者らは、1〜2%という数字は特定のご夫婦にとっては多くの場合正しくない、と述べています。
つまり、「新生突然変異だから次は大丈夫」とも「1〜2%だから同じ」とも言い切れず、ご家族ごとに幅があるということです。この不確実さがあるからこそ、二人目の妊娠では、確定検査も含めた計画を前もって考えておくことに意味があります。
妊娠前にできること:準備という選択
再発率の整理は、妊娠してからだけでなく、妊娠前から準備できることがあります。その中心は、ご夫婦の保因者検査と家族歴の整理です。前提がはっきりすることで、「25%なのか」「それ以外の可能性なのか」が見えてきます。
- ご両親が同じ遺伝子の保因者かどうかを確認する
- 第一子の検査結果と症状が矛盾しないかを点検する
- 知る権利・知らないでいる権利を含めて、ご家族で話し合う
ACMGは、妊娠中の方と妊娠を考えている方すべてに、113遺伝子を含む「Tier 3」の保因者スクリーニングを提示することを勧めています[5]。当院では、ファミリーセーフティ プラスとして、NIPTと同時に行うカップルの保因者検査(女性787遺伝子・男性714遺伝子。ご夫婦の血液を調べる検査で、NIPTとは別の検査です)を用意しています。NIPTと同じ日に採血でき、結果は検体が検査機関に届いてから3〜4週間ほどです。妊娠前の方は拡大版保因者スクリーニングもご覧ください。
検査を受けるかどうかは、ご家族が決めることです。遺伝カウンセリングでは、結果の意味だけでなく、「どこまで知りたいのか」も一緒に整理します。

(父親由来の遺伝子変化が子へ伝わるイメージ)
6. 出生前診断の位置づけ:スクリーニングと確定診断を混同しない
出生前診断は、ご家族の価値観や背景によって「何を知りたいか」が違います。大切なのは、どの検査も“万能ではない”ことを前提に、検査の意味を整理して選ぶことです。出生前診断は「安心を保証する検査」ではなく、可能性を整理するための医療行為です。
出生後の確定診断の基本
出生後は、血液を用いた検査で確定診断に進むことが多く、染色体の小さな欠失・重複を調べる中心は染色体マイクロアレイ(CMA)です。顕微鏡で染色体を見るGバンド法では、5〜10Mbほどの大きさの欠失・重複を見逃すことが多いとされ、発達の遅れや先天異常のある方では、CMAで原因が見つかる割合(15〜20%)がGバンド法(約3%)より高いと報告されています[6]。
出生前(妊娠中)の基本
妊娠中は、まずNIPTが「スクリーニング(可能性をみる検査)」として位置づけられ、結果を確定するには羊水検査・絨毛検査(出生前の確定診断)が必要です。当院では2025年6月から産婦人科を併設し、羊水検査・絨毛検査を院内で行っています。主要な検査項目は3日以内に、マイクロアレイ検査は2週間ほどで結果が出ます。
🔎 羊水検査+CMA(マイクロアレイ)について
米国産科婦人科学会(ACOG)は、超音波検査で赤ちゃんに大きな形の異常が見つかり、羊水検査などを受ける場合にはCMAを勧めています。形の異常がない場合でも、羊水検査などを受けるときは、従来の染色体検査とCMAのどちらを行ってもよいとしています[7]。どちらを選ぶかは、目的を整理してから決めます。
上の子の潜性(劣性)遺伝の病気は、妊娠中に調べられる?
上のお子さんの原因となる変化(バリアント)が分かっていれば、絨毛検査・羊水検査で採った赤ちゃんの細胞を使い、その変化を狙って調べる出生前診断を検討できます。詳しくは単一遺伝子疾患の出生前診断で解説しています。妊娠前であれば、体外受精の胚を調べる着床前診断(PGT-M)という選択肢もあり、着床前診断だけが選択肢ではない理由や、PGT-Mに家族の検体が必要な理由にまとめています(当院は体外受精を行っていません)。
一方、当院のNIPTは、上のお子さんの潜性(劣性)遺伝の病気をそのまま調べる検査ではありません。NIPTの単一遺伝子の項目(ダイヤモンドプラン56遺伝子、インペリアルプラン最大155遺伝子)は、主に親から受け継がずに新しく起こる変化による病気を対象にしています。たとえば脊髄性筋萎縮症(SMA)は、当院のどのプランのNIPTでも調べられません。潜性遺伝の難聴の原因になるGJB2のように、ご家族ごとに個別に相談して対応している遺伝子もあります。
⚠️ 大切な姿勢
遺伝カウンセリングは「結論を出す場」ではありません。医師は決定者ではなく、情報提供と意思決定を支える立場です。知る権利・知らないでいる権利を尊重し、どの選択をしても医療として支えます。
当院のNIPTで調べられる範囲
NIPTでは、プランによって調べられる範囲が違います。上のお子さんの病気とは別に、二人目の妊娠で赤ちゃんの染色体や新しく起こる変化による病気を調べたい場合は、次の範囲から選びます。
📋 当院のNIPTのプランと調べる範囲
※NIPTはスクリーニング検査です。陽性の場合は羊水検査・絨毛検査で確かめます。微小欠失・重複は、数の異常より陽性的中率が低め(項目により60〜70%程度)です。
7. 当院で大切にしていること:正確性と、その後の支え
この症例でご夫婦が求めていたのは、検査そのものよりも「不安の整理」でした。陽性・陰性どちらでも“その後”が重要だと考えています。
当院のNIPTは、90分の受診枠の中で、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行います。検査の意味、結果の解釈、陽性だった場合の選択肢などを整理し、ご理解いただいたうえで検査に進みます。料金に含まれるのは、遺伝カウンセリング・4Dエコー・性別判定です。陽性の場合のカウンセリングは何度でも無料で受けられます。
また、NIPTを受ける方は全員、2つの互助会に加入します。羊水検査の費用を補助するカトレア会(羊水検査互助会、会費8,000円)と、流産などで再検査ができず結果が出ない場合に備える安心検査結果保障制度(会費6,000円)です。詳しくはNIPTの検査費用以外にかかるものをご覧ください。
🩺 院長コラム【「相談しやすさ」は、医療の品質です】
遺伝の不安は、夜に強くなります。日常の小さな出来事が、急に怖く感じることがあります。だからこそ、検査当日の説明だけで終わらせず、必要なときに相談できる体制を大切にしています。
お金がかかるから相談しにくい、という状況をできる限り避けて、妊娠期間を少しでも穏やかに過ごせるように支えたいと考えています。
📌 ご案内
当院でNIPTを受けた方へのサポート体制を優先して整えており、当院受検者のフォローを優先する運用です。検査は「受ける前の準備」が、結果が出たあとの判断を大きく左右します。
8. よくある誤解:ここを直すと、心が軽くなります
誤解①:常染色体潜性(劣性)=次は必ず25%
25%は“前提がそろった場合”の基本形です。前提が揺らぐと見立ては変わります。だからこそ、ご家族ごとの根拠で整理します。
誤解②:検査報告書の結論は絶対に変わらない
報告書は大切ですが、症状や家系、あとから分かった検査結果と照らし合わせて意味づけします。「紙の結論」ではなく「人生の判断材料」として整えることが大切です。
誤解③:出生前検査で将来の自立度まで分かる
出生前検査で分かるのは「可能性」です。症状の幅が広い所見もあり、出生前に予後を確定できないことがあります。不確実性を正直に伝え、決定はご家族に委ねます。
9. 臨床遺伝専門医からのメッセージ:不安は“弱さ”ではありません
この症例のご夫婦が示してくれたのは、「不安があるからこそ、ちゃんと考えたい」という姿勢でした。遺伝の問題は、家族計画の問題です。情報を集めても答えが出ないとき、必要なのは“さらなる情報”ではなく、情報の整理だと考えています。
🏥 二人目の妊娠の検査を、ご家族の根拠にもとづいて選ぶために
臨床遺伝専門医が常駐し、NIPTのカウンセリングから、陽性の場合の絨毛検査・羊水検査(院内)まで行います。ご夫婦の保因者検査もNIPTと同じ日に採血できます。
NIPT専用ダイヤル:03-3408-3768
よくある質問(FAQ)
Q1. 常染色体潜性(劣性)遺伝の病気なら、二人目も必ず25%の確率で発症しますか?
25%は、ご両親がともに同じ遺伝子の保因者だと確認できた場合に、妊娠のたびに当てはまる確率です。ご両親の一方しか保因者でない、上のお子さんの変化が新しく起きたもの(新生突然変異)だった、検査で見つけにくい変化が隠れていた、などの場合は、ご家族ごとに見立てが変わります。
Q2. 片方の親しか保因者でないのに、潜性(劣性)遺伝の病気になることはありますか?
あります。もう1つの変化がお子さんで新しく起きた場合(新生突然変異)、両方の染色体を片方の親だけから受け継いだ場合(片親性ダイソミー)、もう一方の親の変化が通常の検査では見つけにくい種類だった場合などです。どれに当たるかで次のお子さんの再発率が大きく変わるため、ご両親の検査結果と上のお子さんの報告書をあわせて見直すことが大切です。
Q3. 「新生突然変異」が疑われたら、次の子は安心ですか?
安心と断言はできません。新生突然変異と考えられると再発率は下がる方向で整理されますが、親の卵子や精子の一部に同じ変化がある性腺モザイクの可能性はゼロと言い切れません。再発率として1〜2%という数字がよく使われますが、研究では家族ごとに大きく異なることが報告されているため、不確実性も含めて説明し、次の妊娠の備えを考えます。
Q4. 性腺モザイクとは何ですか?
親の体の血液などの細胞では変化が見つからなくても、卵子や精子をつくる細胞の一部だけに同じ変化がある状態です。血液の検査では見つからないことが多く、証明が難しいため、新生突然変異と考えられる場合でも、次のお子さんの再発率をゼロとは言えない理由になります。
Q5. 上の子と同じ遺伝病を、NIPTで調べることはできますか?
当院のNIPTの単一遺伝子の項目(ダイヤモンドプラン56遺伝子、インペリアルプラン最大155遺伝子)は、主に親から受け継がずに新しく起こる変化による病気を対象にしており、上のお子さんの潜性(劣性)遺伝の病気をそのまま調べる検査ではありません。たとえば脊髄性筋萎縮症(SMA)は、当院のどのプランのNIPTでも調べられません。上のお子さんの原因となる変化が分かっていれば、絨毛検査・羊水検査でその変化を調べる出生前診断を検討します。
Q6. NIPTは確定診断ですか?
いいえ。NIPTはスクリーニング(可能性をみる検査)です。確定診断には羊水検査・絨毛検査が必要です。当院では羊水検査・絨毛検査を院内で行っています。
Q7. 羊水検査+CMA(マイクロアレイ)は誰でも受けられますか?
米国産科婦人科学会(ACOG)は、超音波検査で赤ちゃんに大きな形の異常が見つかり、羊水検査などを受ける場合にはマイクロアレイ検査を勧めています。形の異常がない場合でも、羊水検査などを受けるときは、従来の染色体検査とマイクロアレイ検査のどちらを行ってもよいとしています。どの検査を選ぶかは、遺伝カウンセリングで目的を整理してから決めます。
Q8. 遺伝カウンセリングでは何を話しますか?
病名や遺伝形式の説明だけでなく、再発率の前提の確認、検査の選択肢、結果の意味、陽性だった場合の次の行動、そして「どこまで知りたいか」の希望まで含めて整理します。決定はご家族に委ね、どの選択をしても医療として支えます。
Q9. 互助会は別途費用がかかりますか?
当院でNIPTを受ける方は全員、2つの互助会に加入します。会費は、羊水検査の費用を補助するカトレア会(羊水検査互助会)が8,000円、流産などで再検査ができず結果が出ない場合に備える安心検査結果保障制度が6,000円です。
Q10. 遠方でも相談できますか?
はい。オンラインNIPTで全国から受けられます。陽性だった場合の確定検査(羊水検査・絨毛検査)は当院で行います。
関連記事
参考文献
- [1] MedlinePlus Medical Encyclopedia. Autosomal recessive. U.S. National Library of Medicine. [MedlinePlus]
- [2] Richards S, Aziz N, Bale S, et al. Standards and guidelines for the interpretation of sequence variants: a joint consensus recommendation of the American College of Medical Genetics and Genomics and the Association for Molecular Pathology. Genet Med. 2015;17(5):405-424. [PubMed 25741868]
- [3] Bernkopf M, Abdullah UB, Bush SJ, et al. Personalized recurrence risk assessment following the birth of a child with a pathogenic de novo mutation. Nat Commun. 2023;14(1):853. [DOI 10.1038/s41467-023-36606-w]
- [4] Nakka P, Smith SP, O’Donnell-Luria AH, et al. Characterization of prevalence and health consequences of uniparental disomy in four million individuals from the general population. Am J Hum Genet. 2019;105:921-932. [DOI 10.1016/j.ajhg.2019.09.016]
- [5] Gregg AR, Aarabi M, Klugman S, et al. Screening for autosomal recessive and X-linked conditions during pregnancy and preconception: a practice resource of the American College of Medical Genetics and Genomics (ACMG). Genet Med. 2021;23(10):1793-1806. [PubMed 34285390]
- [6] Miller DT, Adam MP, Aradhya S, et al. Consensus statement: chromosomal microarray is a first-tier clinical diagnostic test for individuals with developmental disabilities or congenital anomalies. Am J Hum Genet. 2010;86(5):749-764. [PubMed 20466091]
- [7] American College of Obstetricians and Gynecologists, Committee on Genetics; Society for Maternal-Fetal Medicine. Microarrays and next-generation sequencing technology: the use of advanced genetic diagnostic tools in obstetrics and gynecology. ACOG Committee Opinion No. 682. 2016 (reaffirmed 2023). [ACOG]
※本記事は一般の方に向けた情報提供を目的とするもので、個別の診断・治療方針を示すものではありません。症例は、個人が特定されないよう細部を変えて記載しています。






