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【2025年最新】確定的検査と非確定的検査の違い|出生前診断の種類を比較

この記事のポイント
  • 確定的検査と非確定的検査の違いと特徴を比較
  • NIPT(新型出生前診断)と羊水検査の具体的な違い
  • 各検査の費用・時期・リスク・精度の比較
  • 自分に合った出生前診断の選び方
  • よくある質問とその回答

妊娠中に出生前診断を検討されている方は、NIPT(新型出生前診断)と羊水検査の違いや、どの検査を選ぶべきか迷うことも多いのではないでしょうか。出生前診断には「確定的検査」と「非確定的検査」という2種類があり、それぞれ特徴やメリット・デメリットが大きく異なります。

このページでは、妊婦さんが安心して適切な選択ができるよう、出生前診断の種類と特徴、各検査の違いについて分かりやすく解説します。検査方法や費用、リスク、検査精度などを比較し、あなたに合った検査選びの参考にしていただければ幸いです。

出生前診断の基本:確定的検査と非確定的検査の違い

出生前診断は大きく分けて「確定的検査」と「非確定的検査」の2種類があります。それぞれの特徴を理解することで、自分に合った検査を選ぶことができます。

項目 確定的検査 非確定的検査
診断の確実性 100%に近い確率で確定診断が可能 可能性・リスクの判定(確定診断ではない)
代表的な検査 羊水検査、絨毛検査 NIPT、超音波検査、母体血清マーカー検査
侵襲性 侵襲的(針を刺すなど) 非侵襲的(採血や超音波のみ)
流産リスク あり(約0.3~1%) ほぼなし
実施時期 絨毛検査:妊娠10~13週
羊水検査:妊娠15週以降
NIPT:妊娠10週以降
超音波NT:妊娠11~13週
母体血清:妊娠15~18週
費用(目安) 10~20万円 NIPT:10~20万円
超音波NT:5,000円程度
母体血清:2~3万円
確定的検査と非確定的検査の関係

非確定的検査は検査の精度が高くても、あくまで確率やリスクを示すものです。そのため、NIPT等で「陽性」の結果が出た場合には、確定診断のために羊水検査や絨毛検査などの確定的検査を受けることが推奨されます。多くの妊婦さんは、まずリスクの低い非確定的検査(特にNIPT)を受け、必要に応じて確定的検査を検討するという流れになります。

非確定的検査の種類とそれぞれの特徴

非確定的検査は、胎児に直接触れることなく行われるため、流産などのリスクがほとんどないのが特徴です。ここでは代表的な非確定的検査について解説します。

NIPT(新型出生前診断)

検査の概要

母体の血液に含まれる胎児由来のDNA断片を分析し、染色体異常(主にダウン症、18トリソミー、13トリソミー)の可能性を調べる検査です。

検査は採血のみで行われるため、胎児へのリスクはほぼありません。

精度とデータ

  • ダウン症検出率:約99%以上
  • 18トリソミー検出率:約98%
  • 13トリソミー検出率:約90%以上
  • 偽陽性率:約0.1%未満
+メリット
  • 高い検査精度(特にダウン症)
  • 母体・胎児へのリスクがほぼなし
  • 妊娠初期(10週)から検査可能
デメリット
  • 高額(10~20万円程度)
  • 確定診断ではない(陽性なら確定検査が必要)
  • 調べられる染色体異常が限られている

検査を受ける前に知っておきたいこと: NIPTは非確定的検査であり、陽性結果が出ても必ずしも染色体異常があるわけではありません。陽性の場合は確定診断のための羊水検査などが必要です。検査前後の遺伝カウンセリングで、十分な情報提供と心理的サポートを受けることが重要です。

母体血清マーカー検査

母体の血液中のタンパク質やホルモン値を測定することで、胎児の染色体異常のリスクを評価する検査です。主に「クアトロテスト」と呼ばれる方法が用いられます。

検査の概要

母体血液中の4つの成分(AFP、uE3、hCG、インヒビンA)を測定し、母体年齢などと合わせて染色体異常のリスクを算出します。

検査は妊娠15~18週頃に行われ、費用は2~3万円程度です。

精度とデータ

  • ダウン症検出率:約80~87%
  • 18トリソミー検出率:約60~70%
  • 偽陽性率:約5%
+メリット
  • NIPTより安価(2~3万円程度)
  • 母体・胎児へのリスクがほぼなし
  • 比較的広く実施されている
デメリット
  • NIPTと比較して精度が低い
  • 偽陽性率が比較的高い(約5%)
  • 確定診断ではない(陽性の場合は確定検査が必要)

NT(Nuchal Translucency)検査

超音波検査を使って、胎児の首の後ろの透明帯(NT)の厚さを測定する検査です。NTが厚い場合、染色体異常のリスクが高まる可能性があります。

検査の概要

妊娠11~13週に超音波(エコー)で胎児の首の後ろの透明な部分の厚さを測定します。

3mm以上の場合、染色体異常のリスクが高いとされますが、これだけで診断は確定しません。

精度とデータ

  • ダウン症検出率:約70~80%
  • 偽陽性率:約5%
  • 費用:5,000円前後

コンバインド検査

NT検査と母体血清マーカー検査を組み合わせた検査です。欧米では一般的ですが、日本ではあまり普及していません。

検査の概要

妊娠11~13週に実施するNT検査と血液検査を組み合わせて、染色体異常のリスクを評価します。複数の指標を組み合わせることで、単独の検査より精度が高まります。

精度とデータ

  • ダウン症検出率:約85~95%
  • 偽陽性率:約3~5%
  • 費用:約5万円程度

確定的検査の種類とそれぞれの特徴

確定的検査は、胎児から直接細胞を採取して染色体を調べるため、ほぼ100%の精度で診断が可能です。一方で、検査に伴う流産などのリスクがあることも理解しておく必要があります。

羊水検査

検査の概要

妊娠15週以降に、お腹に細い針を刺して羊水を採取し、羊水内の胎児細胞から染色体を分析する検査です。

確定診断が可能ですが、約0.3%(300人に1人)の確率で流産のリスクがあります。

検査の流れ

  1. 超音波でお腹の中の胎児の位置を確認
  2. 局所麻酔を行い、細い針を刺して約20mlの羊水を採取
  3. 採取した羊水から胎児の細胞を培養
  4. 染色体解析(結果は3~4週間後)
+メリット
  • ほぼ100%の精度で確定診断が可能
  • 染色体異常だけでなく、他の遺伝子疾患も調べられる
  • 絨毛検査より流産リスクが低い
デメリット
  • 流産リスクがある(約0.3%)
  • 検査に伴う痛みや不快感
  • 高額(10~20万円程度)
  • 結果が出るまで3~4週間かかる

絨毛検査

検査の概要

妊娠10~13週に、胎盤を形成する絨毛(じゅうもう)組織を採取して染色体を分析する検査です。

羊水検査より早い時期に結果がわかりますが、流産リスクはやや高め(約1%)です。

検査方法

胎盤の位置によって、経腹法(お腹から針を刺す)または経膣法(膣から採取)が選択されます。

採取した絨毛細胞から染色体を分析し、結果は約2~3週間で判明します。

+メリット
  • 羊水検査より早く結果が判明(約1~2週間)
  • 早期(妊娠10週から)に検査可能
  • ほぼ100%の精度で確定診断が可能
  • 羊水検査より早く結果が判明(約1~2週間)
  • 早期(妊娠10週から)に検査可能
  • ほぼ100%の精度で確定診断が可能
デメリット
  • 流産リスクが比較的高い(約1%)
  • 高額(10~20万円程度)
  • 実施可能な医療機関が限られている

NIPT(新型出生前診断)と羊水検査の比較

多くの妊婦さんが検討するNIPTと羊水検査について、それぞれの違いを詳しく比較してみましょう。

比較項目 NIPT 羊水検査
検査の種類 非確定的検査(スクリーニング検査) 確定的検査(確定診断)
検査方法 母体の採血のみ お腹に針を刺して羊水を採取
検査可能時期 妊娠10週以降 妊娠15週以降
結果判明 約1~2週間 約3~4週間
検査精度 ダウン症:99%以上
18トリソミー:98%
13トリソミー:90%以上
ほぼ100%(確定診断可能)
流産リスク なし 約0.3%(300人に1人)
費用 10~20万円程度 10~20万円程度
検査できる異常 主に3種類の染色体異常
(ダウン症、18トリソミー、13トリソミー)
※拡張型は他の染色体異常も検査可能
全ての染色体異常と
一部の遺伝子疾患
実施場所 認可された医療機関
(一般クリニック、NIPT専門クリニックなど)
総合病院や大学病院など
(限られた医療機関のみ)
NIPT検査の種類と内容の違い

NIPTにはいくつかの種類があります。それぞれの検査内容と費用の違いを理解しておくことが大切です。

基本型NIPT

主要な3つの染色体異常(ダウン症、18トリソミー、13トリソミー)のみを調べる検査です。

費用:約10~15万円

拡張型NIPT

主要3疾患に加えて、その他の染色体異常(性染色体異常や微小欠失症候群、単一遺伝子疾患など)も検査できます。

費用:約20~40万円

※費用や検査内容は医療機関によって異なる場合があります。詳細は各医療機関にお問い合わせください。

あなたに合った出生前診断の選び方

出生前診断を検討する際には、いくつかのポイントを考慮することで、自分に合った検査を選ぶことができます。以下のチェックリストを参考にしてみてください。

検査選びのチェックリスト

1

妊娠週数を確認する

現在の妊娠週数によって選択できる検査が変わります。NIPTは妊娠10週から、羊水検査は15週以降に実施可能です。

2

リスク因子の有無

高齢妊娠(35歳以上)、過去に染色体異常のある子どもを出産した経験、家族歴などがある場合は、より詳細な検査を検討する必要があるかもしれません。

3

検査結果の確実性

100%に近い確定診断が必要か、スクリーニング検査(可能性の評価)で十分かを考慮します。確定診断が必要な場合は、羊水検査や絨毛検査が必要になります。

4

流産リスクの許容度

羊水検査や絨毛検査には流産のリスクがあります。このリスクを許容できるかどうかも検査選択の大きなポイントです。リスクを避けたい場合は、まずNIPTなどの非侵襲的検査を選ぶことが一般的です。

5

経済的負担の考慮

費用面も重要な判断材料です。検査費用は数千円から20万円程度まで幅広く、保険適用が無いのでいろいろ検討する必要があります。ただし、疾患のあるお子さんを持つことは生涯にわたる問題ですので、費用対効果だけで考えるべきなのかということも考える必要があるでしょう。

6

遺伝カウンセリングの活用

検査前後の遺伝カウンセリングを受けることで、検査の内容や結果の解釈について専門家からアドバイスを受けることができます。特にNIPTや羊水検査を受ける場合は、遺伝カウンセリングを併用することが推奨されています。

一般的な検査の流れ

多くの妊婦さんは、以下のような流れで出生前診断を進めることが一般的です。

1

NT検査(妊娠11~13週)

妊婦健診で行われる超音波検査で、胎児の頸部の透明帯(NT)の厚さを測定します。異常が疑われる場合は、次のステップに進むことを検討します。

2

NIPT(妊娠10週以降)

NT検査で異常が疑われる場合や、高齢妊娠など染色体異常のリスクが高い場合、NIPTを検討します。血液検査のみで胎児の染色体異常のリスクを調べることができます。

3

遺伝カウンセリング

NIPTの結果に関わらず、検査前後に遺伝カウンセリングを受けることで、検査の意味や結果の解釈について理解を深めることができます。

4

確定的検査(必要な場合)

NIPTで陽性結果が出た場合、最終的な確定診断として羊水検査や絨毛検査を検討します。これらの検査では、確実に染色体異常の有無を診断することができます。

よくある質問(FAQ)

Q. 出生前診断は全ての妊婦さんが受けるべきですか?

出生前診断は強制されるものではなく、妊婦さん(およびパートナー)が自分自身で選択するものです。必ずしも全ての方が受ける必要はありません。

検査を受けるかどうかは、自分たちの価値観や考え方、リスク因子の有無などを踏まえて慎重に検討することが大切です。迷われる場合は、産婦人科医や遺伝カウンセラーに相談することをおすすめします。

Q. NIPTの結果が「陽性」だった場合、必ず染色体異常があるのですか?

NIPTはスクリーニング検査であり、確定診断ではありません。「陽性」の結果が出たとしても、それは染色体異常のリスクが高いことを示すだけで、必ずしも染色体異常があるとは限りません。

例えば、ダウン症に関するNIPTの陽性的中率は約80~90%程度とされており、陽性であっても約10~20%は「偽陽性」(実際には染色体異常がない)の可能性があります。そのため、NIPTで陽性の結果が出た場合は、確定診断のために羊水検査などの確定的検査を受けることが推奨されています。

Q. NIPTは全ての染色体異常を調べることができますか?

いいえ、一般的なNIPTでは主に3種類の染色体異常(ダウン症、18トリソミー、13トリソミー)を調べます。近年は拡張型NIPTもあり、性染色体異常(ターナー症候群やクラインフェルター症候群など)や微小欠失症候群なども調べることができますが、それでもすべての染色体異常を網羅しているわけではありません。

また、NIPTでは染色体の数的異常を主に調べるため、均衡型転座などの構造異常は検出できない場合があります。全ての染色体異常を詳細に調べるためには、羊水検査などの確定的検査が必要です。

Q. 羊水検査で流産する確率はどのくらいですか?

羊水検査による流産のリスクは約0.3%(300人に1人)程度と言われています。最近の技術向上により、以前より安全性は高まっていますが、完全にリスクをゼロにすることはできません。

一方、絨毛検査の流産リスクは約1%(100人に1人)程度とされており、羊水検査よりもやや高めです。どちらの検査も実施する医師の技術や経験によってリスクが変わる場合もあるため、信頼できる医療機関を選ぶことが重要です。

Q. 出生前診断で陽性の結果が出た場合、どのような選択肢がありますか?

出生前診断で確定的に染色体異常と診断された場合、以下のような選択肢があります:

  1. 妊娠を継続し、生まれてくる子どもの状態に応じた準備を進める
  2. 妊娠を中断する(人工妊娠中絶)

これは非常に個人的かつ重要な決断であり、正解や間違いはありません。各家庭の価値観、状況、サポート体制などによって選択は異なります。どちらの選択をする場合も、医療・福祉・心理的サポートを受けることが大切です。

特に障害のある子どもを育てる選択をした場合は、早い段階から地域の支援制度や専門医療機関とつながっておくことで、出産後のサポート体制を整えることができます。どのような選択をする場合も、遺伝カウンセリングや専門家のサポートを活用することをおすすめします。

まとめ:出生前診断の選び方

最初に検討したい方法

NT検査(妊娠11~13週)などの超音波検査は、妊婦健診で行われる比較的手軽な検査です。異常が見つかった場合、次のステップとしてNIPTなどを検討することができます。

リスク回避したい方

流産リスクを避けたい方は、非侵襲的検査であるNIPTがおすすめです。高い精度でスクリーニングができ、リスクがなく、必要に応じて確定検査へ進むことができます。

確実な診断を求める方

100%近い確実性で診断を求める場合や、詳細な染色体検査が必要な場合は、羊水検査や絨毛検査が適しています。ただし、流産リスクがあることを理解した上で選択することが大切です。

出生前診断は、個人の価値観や家族の状況によって最適な選択肢が異なります。十分な情報収集と専門家への相談を通じて、自分たちに合った検査を選ぶことが大切です。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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