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発達障害の種類一覧|子どものASD・ADHD・学習障害・チック・吃音の特徴と、広汎性発達障害・知的障害との違いを臨床遺伝専門医が解説

仲田洋美 医師

この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

記事の作り方(編集方針)

発達障害の主な種類は、自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動症(ADHD)、学習障害(限局性学習症)で、チック症(トゥレット症)・吃音・発達性協調運動症なども含まれます。日本の発達障害者支援法は「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害」などを挙げ、医学の診断基準(DSM-5)は「神経発達症群」としてまとめています。かつての「広汎性発達障害」は、今は「自閉スペクトラム症(ASD)」と呼ばれます。この記事では、種類ごとの特徴と、知的障害との違い、子どもの割合、相談先、遺伝との関係までを順に解説します。妊娠中の検査を含めた当院の検査の範囲は、東京のNIPT(新型出生前診断)のページにもまとめています。

⏱️ 30秒でわかる要約

🧩 Q. 発達障害にはどんな種類がありますか?

自閉スペクトラム症(ASD)・注意欠如・多動症(ADHD)・学習障害(限局性学習症)が代表で、チック症(トゥレット症)・吃音・発達性協調運動症なども発達障害に含まれます。医学の分類(DSM-5)では、知的能力障害も同じ「神経発達症群」に入ります。

🧩 Q. 広汎性発達障害とは何ですか?

自閉症・アスペルガー障害などをまとめた、以前の診断名です。2013年のDSM-5で「自閉スペクトラム症(ASD)」に1つにまとめられました。発達障害者支援法の条文には、今も「広汎性発達障害」の言葉が残っています。

🧩 Q. 子どもの発達障害はどのくらいいますか?

文部科学省の2022年の調査では、通常の学級の小中学生の8.8%に、学習面か行動面で著しい困難がありました。ただし先生の回答による調査で、発達障害と診断された子の割合ではありません。

🧩 Q. 気になったらどこに相談すればいいですか?

診断は、小児科・児童精神科・小児神経科・発達外来などの医師が行います。各都道府県・指定都市の発達障害者支援センターでも相談できます。遺伝が気になる場合は遺伝カウンセリングがあります。

この記事でわかること
📖 読了時間:約12分
🧩 ASD・ADHD・学習障害・チック・吃音
★ 臨床遺伝専門医監修
  • ➤法律と医学の分け方 → 発達障害者支援法の定義と、DSM-5の「神経発達症群」の違い
  • ➤種類一覧 → ASD・ADHD・学習障害・チック症・吃音・発達性協調運動症の特徴を表で比較
  • ➤広汎性発達障害 → どの診断名がASDにまとめられたのか
  • ➤知的障害との違い → 法律では別、医学では同じ神経発達症群。併せ持つこともある
  • ➤遺伝との関係 → 原因は育て方ではない。一部は遺伝子・染色体の変化で説明できる

🧩 発達障害の種類の基本情報

項目 内容
ひとことで言うと 脳の働き方の違いにより、物事のとらえ方や行動のパターンに違いがあり、日常生活に支障がある状態[5]
法律での定義 発達障害者支援法:自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害など、症状が通常低年齢で現れる脳機能の障害[1]
医学での分類 DSM-5の「神経発達症群」:知的能力障害・コミュニケーション症群・自閉スペクトラム症・注意欠如・多動症・限局性学習症・運動症群の6つ[4]
主な種類 ASD/ADHD/学習障害(限局性学習症)/チック症・トゥレット症/吃音/発達性協調運動症[5][6]
広汎性発達障害 DSM-IV-TRまでの呼び方。DSM-5(2013年)で自閉スペクトラム症(ASD)にまとめられた[4]
診断・相談 診断は小児科・児童精神科などの医師。相談は発達障害者支援センターでも受け付けている[8]

1. 発達障害とは?法律の定義と医学の「神経発達症」

発達障害とは、生まれつきの脳の働き方の違いによって、物事のとらえ方や行動のパターンに違いがあり、そのために日常生活に支障が出ている状態です。国立精神・神経医療研究センター(NCNP)は、このように説明しています[5]。同じ障害名でも特性の現れ方は人によって違い、ほかの発達障害や精神疾患を併せ持つこともあります[5]。

「発達障害の種類」を調べると、資料によって「3つ」「5つ」と数がばらばらに見えます。これは、日本の法律(発達障害者支援法)での分け方と、医学の診断基準(DSM-5)での分け方が違うためです。どちらが正しいということではなく、目的が違います。法律は支援の対象を決めるため、診断基準は医師が診断名をつけるためのものです。

発達障害者支援法の定義

発達障害者支援法の第2条は(2026年11月時点)、発達障害を「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるもの」と定めています[1]。政令(施行令)は、これに言語の障害と協調運動の障害を加え、さらに省令(施行規則)で「心理的発達の障害並びに行動及び情緒の障害」を加えています[1]。

この範囲は、2005年4月の文部科学・厚生労働両事務次官の通知で、国際疾病分類ICD-10の「心理的発達の障害(F80〜F89)」と「小児<児童>期及び青年期に通常発症する行動及び情緒の障害(F90〜F98)」に含まれる障害と説明されています[2]。ICD-10では、チック障害がF95(トゥレット症候群はF95.2)、吃音症がF98.5に入っています[3]。チック症や吃音も、法律上の発達障害に含まれるのはこのためです。

また法律は、「発達障害者」を「発達障害がある者であって発達障害及び社会的障壁により日常生活又は社会生活に制限を受けるもの」としています[1]。困りごとは本人の特性だけで決まるのではなく、周りの環境や仕組みとの組み合わせで生じる、という考え方です。

医学の分類:DSM-5の「神経発達症群」

医師が診断に使うアメリカ精神医学会の診断基準DSM-5(2013年)は、発達期に現れる障害を「神経発達症群(神経発達障害)」としてまとめ、知的能力障害、コミュニケーション症群、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、限局性学習症、運動症群の6つに分けています[4]。DSM-5では学習障害が「特殊的(限局性)学習障害」に名前を変え[4]、日本語の病名も「学習障害→学習症」「注意欠陥多動性障害→注意欠如多動症」のように、「〜症」を使う形が検討されてきました[12]。

法律との大きな違いは、DSM-5では知的能力障害(知的障害)も神経発達症群に含まれることです。この点は「4. 発達障害と知的障害の違い」で詳しく説明します。

原因は脳の働き方の違い。育て方のせいではない

発達障害は、脳の働き方の生まれつきの違いによるものと考えられています[5]。親の育て方や愛情不足が原因で起こるものではありません。チックや吃音についても、NCNPは体質的な要素が強いと説明しています[5]。お子さんの様子が気になって検索している方が、まず自分を責める必要はありません。遺伝との関係は「7. 発達障害と遺伝・遺伝子検査」で説明します。

2. 発達障害の種類一覧と、それぞれの特徴

発達障害の主な種類は、自閉スペクトラム症(ASD)・注意欠如・多動症(ADHD)・学習障害(限局性学習症)の3つで、ほかにチック症(トゥレット症)・吃音・発達性協調運動症があります。まず一覧で、法律と医学での呼び方、主な特徴を比べます。

📋 発達障害の種類一覧(法律・医学での呼び方と主な特徴)

種類(今の呼び方) 法律・以前の呼び方 主な特徴
自閉スペクトラム症(ASD) 広汎性発達障害(自閉症・アスペルガー症候群など) 社会性の難しさ、コミュニケーションの難しさ、興味・関心の狭さや偏り[6]
注意欠如・多動症(ADHD) 注意欠陥多動性障害 不注意、多動性、衝動性[6]
学習障害(限局性学習症) 学習障害(LD) 日本の教育上の学習障害(LD)は、全般的な知的発達の遅れがなく、聞く・話す・読む・書く・計算する・推論する能力の一部に著しい困難がある状態[6]。DSM-5の限局性学習症は、読む・書く(書字表出)・算数の困難を対象とする[16]
チック症・トゥレット症 チック障害(ICD-10 F95) 本人の意図に反して起こる運動チック・音声チック。トゥレット症は運動チックと音声チックの両方がみられ、毎日または断続的に1年以上続き、18歳より前に始まる[15]
吃音(流暢症) 吃音症(ICD-10 F98.5) 音の繰り返しや引き伸ばし、言葉が出ずに間があくなどの話し方の障害[6]
発達性協調運動症 協調運動の障害 不器用さ。ASDに併せ持つことが多い特性として知られる[6]
知的能力障害(知的障害) 法律の発達障害の定義には含まれない DSM-5では神経発達症群の1つ[4]

※1人に1つとは限らず、いくつかを併せ持つことがあります[5]。

自閉スペクトラム症(ASD)

ASDは、社会性の難しさ、コミュニケーションの難しさ、興味・関心の狭さや偏りの3つの特性があるとされます[6]。視線が合いにくい、決まった手順やものに強くこだわる、音や触られる感覚に敏感(または鈍感)といった形で現れることがあります。「スペクトラム(連続体)」という名前のとおり、特性の強さや現れ方は人によって大きく違います。子どもの自閉症の特徴と関わり方は、子どもの自閉症(ASD)とはで詳しく解説しています。

ASDそのものを治す薬はありません。睡眠や行動の問題が強いときに、薬が併用されることがあります[5]。年齢ごとの様子は2歳児のASDの特徴や赤ちゃんの頃の様子、軽い場合の見え方は軽度の自閉スペクトラム症で詳しく解説しています。

注意欠如・多動症(ADHD)

ADHDは、不注意、多動性、衝動性の3つの特性があり、目立つ特性によって不注意優位型、多動性-衝動性優位型、混合型に分けられます[6]。忘れ物やうっかりミスが多い、じっと座っていられない、順番を待てないといった形で、集団生活が始まる時期に気づかれることが多くあります。

ADHDの薬は症状をやわらげるもので、根本から治すものではなく、環境の調整や行動療法と組み合わせて使われます[5]。子どもの特徴と診断の流れは子どものADHDは見た目でわかる?、大人の治療は大人のADHDの治療で解説しています。

学習障害(限局性学習症)

日本の教育上の学習障害(LD)は、全般的な知的発達の遅れがなく、聞く・話す・読む・書く・計算する・推論する能力の一部の習得と使用に著しい困難がある状態です[6]。一方、医学の診断名であるDSM-5の限局性学習症は、読む・書く(書字表出)・算数の3つの領域のうち、少なくとも1つに困難が続く状態を対象とします。ディスレクシアは、主に文字を正確に、すらすらと読むことの困難を指す言葉として使われ、綴りの困難を伴うこともあります[16]。

本格的な勉強が始まる小学校に入ってから気づかれることが多く、「努力が足りない」と誤解されやすい障害です。大きな文字、音声教材、ICT機器など、学び方を工夫する教育的な支援が中心になります[5]。

チック症・トゥレット症

チックは、まばたき・首ふり・咳払い・声が出るなど、本人の意図に反して起こる(不随意の)動きや声です。運動チックと音声チックの両方がみられ、毎日または断続的に1年以上続き、18歳より前に始まったものが、トゥレット症候群(トゥレット症)です。チックの種類・回数・強さは時期によって変わり、とても軽いものから重いものまでありますが、多くは軽いとされています[15]。

NCNPによると、トゥレット症の症状は10〜15歳ごろに最も強くなるとされています[5]。ハビットリバーサル(行動療法)や薬物療法が行われ、薬が効かないとても重い場合には脳深部刺激療法が検討されることもあります[5]。

吃音(流暢症)

吃音は、「ぼ、ぼ、ぼく」のような音の繰り返し、「ぼーーく」のような引き伸ばし、言葉が出ずに間があくといった話し方の障害で、2〜7歳に始まることが多いとされます[6]。就学前の吃音は、数年のうちに軽くなることが多いとされています[5]。言語聴覚療法などのほか、学校でからかいやいじめがないかを確かめるなど、環境の調整も大切です[5]。

発達性協調運動症

発達性協調運動症は、体を思いどおりに動かす協調運動がとても苦手な状態で、はさみや箸がうまく使えない、ボール遊びや縄跳びが極端に苦手、字を書くのに時間がかかるといった「不器用さ」として現れます。厚生労働省の資料では、ASDに併せ持つことが多い特性として紹介されています[6]。

いくつかを併せ持つことも多い

発達障害は、種類ごとにはっきり分かれているとは限りません。ASDとADHD、ADHDと学習障害のように、いくつかの特性を併せ持つことがあります[5]。診断名は支援の入口として役に立ちますが、名前を当てはめることよりも、その子が何に困っているかを具体的に見ていくことが大切です。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【種類の名前より、「何に困っているか」を見る】

発達障害の種類を調べ始めると、「うちの子はASDなのか、ADHDなのか」と、どれか1つに当てはめたくなります。けれども、ここまで見てきたように、特性は重なり合うことが多く、同じ診断名でも困りごとは一人ひとり違います。

わたしは、診断名は「支援につながるための共通の言葉」だと考えています。名前が決まることで使える制度や支援がありますが、名前が決まらないあいだも、困っていることへの工夫は始められます。種類の一覧は、お子さんを分類するためではなく、困りごとを言葉にする手がかりとして使っていただければと思います。

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3. 広汎性発達障害とは?今の自閉スペクトラム症(ASD)との関係

広汎性発達障害(PDD)とは、DSM-IV-TRまで使われていた診断のグループ名で、自閉性障害、アスペルガー障害、特定不能の広汎性発達障害などを含んでいました。2013年のDSM-5で、これらは「自閉スペクトラム症(ASD)」という1つの診断名にまとめられました[4]。

🔄 広汎性発達障害(DSM-IV-TR)から自閉スペクトラム症(DSM-5)へ

DSM-IV-TRの広汎性発達障害 DSM-5での扱い
自閉性障害 自閉スペクトラム症(ASD)にまとめられた
アスペルガー障害 自閉スペクトラム症(ASD)にまとめられた
特定不能の広汎性発達障害 自閉スペクトラム症(ASD)にまとめられた
小児期崩壊性障害 自閉スペクトラム症(ASD)にまとめられた[17]
レット障害 ASDからは外され、別の病気として扱われる

出典:宮川(2014)[4]。DSM-5では、下位分類のかわりに支援の必要度を「レベル1〜3」で表す方式になりました[4]。

今、医療機関で新しくつく診断名は「広汎性発達障害」ではなく「自閉スペクトラム症(ASD)」が基本です。ただし、発達障害者支援法の条文には今も「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害」という言葉が使われています[1]。以前に「広汎性発達障害」「アスペルガー症候群」と診断された方の診断名が、そのまま書類に残っていることもあります。古い診断名だからといって、受けられる支援が変わるわけではありません。

広汎性発達障害(ASD)の子どもに見られやすい様子

ASD(以前の広汎性発達障害)の特性は、年齢によって見え方が変わります。次は気づくきっかけになりやすい例で、当てはまるから必ずASDというものではありません。

👶 年齢ごとに気づかれやすい様子の例

時期 気づかれやすい様子
乳幼児期(〜就学前) 名前を呼んでも振り向きにくい、ほかの子どもや遊びに興味を示しにくい、いつも決まった遊びをする
児童期(小学生) 集団生活が苦手、予定の急な変更でパニックになりやすい、考えを整理して言葉で伝えるのが苦手
思春期(中学生〜) 相手の気持ちや抽象的な話をイメージしにくい、独特の言い回し、興味のあることにはとても集中できる

※特性の現れ方は人によって大きく違います。気になるときは、自己判断せずに専門医に相談してください。

興味のあることに深く集中できる力は、部活動や仕事で強みとして発揮されることもあります。子どもの頃に高い知的能力を持つASDの特徴は子どもの高機能自閉症、学校でのチェックの考え方は自閉症の診断テストで解説しています。

4. 発達障害と知的障害の違い

発達障害者支援法の発達障害の定義には、知的障害は入っていません。一方、医学の診断基準DSM-5では、知的能力障害(知的障害)は発達障害と同じ「神経発達症群」の1つです。[1][4]「違うもの」と「同じグループ」のどちらの説明も目にするのは、このためです。

⚖️ 発達障害と知的障害の比べ方

項目 発達障害(ASD・ADHD・学習障害など) 知的障害(知的能力障害)
発達障害者支援法 対象(第2条で定義)[1] 定義には含まれていない[1]
DSM-5 神経発達症群[4] 神経発達症群(同じグループ)[4]
知的な発達 遅れがないこともある(学習障害は知的な遅れがないことが前提)[6] 全般的な知的な発達に遅れがある
主な手帳 精神障害者保健福祉手帳(1〜3級)。発達障害も対象[9][13][14] 療育手帳(児童相談所・知的障害者更生相談所で判定)[9]

実際には、ASDと知的障害を併せ持つ方もいれば、知的障害を伴わないASDの方もいます。どちらか一方に分けるより、知的な発達と、社会性・注意・学習などの特性を、それぞれ評価することが大切です。手帳の判定基準や運用は自治体によって違うので、お住まいの市町村の窓口で確かめてください[9]。

5. 子どもの発達障害はどのくらい?(割合)

文部科学省の2022年の調査では、公立小中学校の通常の学級に在籍する児童生徒のうち、学習面または行動面で著しい困難を示す子は8.8%(推定値)でした。小学校では10.4%、中学校では5.6%です[7]。

🏫 通常の学級で、学習面・行動面に著しい困難を示す児童生徒(2022年・推定値)

区分 割合
小中学校:学習面または行動面 8.8%
小中学校:学習面 6.5%
小中学校:行動面 4.7%
小中学校:学習面と行動面の両方 2.3%
小学校:学習面または行動面 10.4%
中学校:学習面または行動面 5.6%
高等学校:学習面または行動面 2.2%

出典:文部科学省「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果について」(2022年12月13日)[7]

⚠️ この数字の読み方

この調査は学級担任などの回答にもとづくもので、専門家チームの判断や医師の診断によるものではありません。発達障害のある児童生徒の割合ではなく、特別な教育的支援が必要な児童生徒の割合を示す数字です[7]。

発達障害の診断やカウンセリングのために医療機関を受診した人は、2002年度の3.5万人から2017年度には23.3万人に増えています[6]。これは発達障害そのものが急に増えたことを示す数字ではなく、受診につながる人が増えた、という読み方をするのが安全です。

6. 気になったときの相談先と、診断・支援の流れ

子どもの発達障害の診断は、小児科・児童精神科・小児神経科・発達外来などの医師が行います。受診先に迷うときは、乳幼児健診を担当する市町村の保健センターや、発達障害者支援センターに相談できます。

気づく家庭・園・学校・健診
▶
相談する保健センター・支援センター
▶
診断小児科・児童精神科など
▶
支援療育・教育・福祉

発達障害者支援センター

発達障害者支援センターは各都道府県・指定都市に置かれ、発達障害のある人やその家族などに、相談支援・発達支援・就労支援・情報提供を行っています[8]。「病院に行くほどか迷う」「子どもとの関わり方を相談したい」という段階でも利用できます。

診断で行われること

医師は、生まれてからの発達の経過(生育歴)や、家庭・園・学校での様子を聞き取り、発達検査や知能検査などの結果とあわせて、DSM-5などの診断基準に照らして診断します。1回の受診で決まらず、何度か様子を見ながら判断することもあります。母子健康手帳や、園・学校での様子がわかる連絡帳などを持っていくと、経過を伝えやすくなります。

支援と治療の考え方

発達障害の支援は、本人の特性に合わせて環境を整えることと、療育(発達支援)が中心です。家庭では、絵や写真で予定を見せる、短い文で具体的に伝える、予定の変更は前もって伝える、できたことをほめる、といった工夫がよく使われます。薬は、ADHDの症状や、睡眠・行動の問題が強い場合などに、主治医の判断で使われます[5]。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【得意を伸ばす関わり】

「得意」や「できる」を伸ばす関わりをすると、思わぬ才能を発揮することもあります。

例えば、私の友人で重度のアスペルガーを診断された方がいます。彼は会社に馴染めず退職をした一方で、絵を描くのが得意であったためイラストレーターを目指しました。結果、才能を発揮して今ではプロとして独立して活躍しています。

発達障害があっても得意を伸ばす関わりをすることで、社会でも活躍することは十分可能です。

支援の制度には、障害者手帳や障害福祉サービスなどがあります(以下は2026年11月時点の制度です)。精神障害者保健福祉手帳は精神障害の状態を認定する手帳で、等級は1〜3級です[9]。発達障害は、精神障害者保健福祉手帳の対象です。厚生労働省は2011年(平成23年1月13日、障発0113第1号)の通知で手帳の診断書の様式を改正し、発達障害の症状や状態像を把握して判定しやすくしました[13]。自治体の案内でも、手帳の対象として発達障害が挙げられています[14]。療育手帳は、児童相談所または知的障害者更生相談所で知的障害があると判定された方に交付されます[9]。どの制度が使えるかは、お住まいの市町村の窓口で確かめてください。

7. 発達障害と遺伝・遺伝子検査

発達障害には遺伝の要因が関わることが多い一方、親から子へ決まった確率で伝わる単純なものではありません。多くは、たくさんの遺伝子の小さな影響と、そのほかの要因が重なって起こると考えられています。ASDとADHDが遺伝する確率は、それぞれ自閉症が遺伝する確率とADHDは遺伝する?で詳しく解説しています。

一部は、遺伝子や染色体の変化で説明できる

発達の遅れや先天異常のある方を染色体マイクロアレイ検査で調べると、約15〜20%に、顕微鏡では見えない小さな染色体の欠失・重複が見つかると報告されています[10]。たとえば22q11.2欠失症候群では、子どもの約37%にADHDがみられたという国際共同研究があります[11]。原因がわかると、合併症の確認や、ごきょうだいへの影響の考え方など、次の対応につなげやすくなります。

当院では、発達障害・知的障害の原因を調べる発達障害の遺伝子検査や、発達障害・学習障害・知的障害の遺伝子パネル検査、自閉症の遺伝子検査を、臨床遺伝専門医による遺伝カウンセリングとあわせて行っています。検査でわかることとわからないことは、各ページで確かめてください。当院の遺伝子検査・遺伝カウンセリングは自費診療です。

妊娠中にわかること・わからないこと

一部の自閉症・発達障害・知的障害の原因は、当院のNIPTで生まれる前に調べられます。22q11.2欠失症候群はスタンダードを含む全プラン、16p11.2欠失・重複は双子マックス・インペリアル、フェラン・マクダーミッド症候群はインペリアル、レット症候群はダイヤモンド・インペリアルで調べられます。ただし、調べられるのは発達障害の原因のごく一部です。NIPTが陰性でも、発達障害が起こらないという意味ではありません。

NIPTの微小欠失・重複は、染色体の数の異常にくらべて陽性的中率が低めです。陽性のときは、絨毛検査(妊娠11〜13週)や羊水検査(妊娠15週以降)の確定検査で確かめます。当院では確定検査まで院内で受けられ、主要な検査項目は3日以内、マイクロアレイ検査は2週間ほどで結果が出ます。NIPTは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。詳しくは一部の自閉症・発達障害の原因はNIPTでわかると発達障害は妊娠中にわかる?、プランの内容はNIPT(新型出生前診断)のページをご覧ください。

なお、知的障害やASDの特徴を伴うことがある脆弱X症候群(FMR1遺伝子)はNIPTでは調べられませんが、ご両親の保因者検査で調べられます。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「遺伝」を知ることは、責めるためではない】

発達障害と遺伝の話をすると、「自分のせいで」と受け止めてしまう方がいます。けれども、遺伝の要因は誰かが選んで渡すものではなく、親の育て方とも関係がありません。

わたしは、原因を調べる意味は、責任の所在を決めることではなく、その子に必要な医療や支援を考え、ご家族の次の妊娠や、きょうだいについての疑問に答えることにあると考えています。検査を受けるかどうか、どこまで知りたいかは、ご家族それぞれに決めてよいことです。

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発達障害の遺伝子検査 | 自閉症とNIPT

よくある質問(FAQ)

Q1. 発達障害には何種類ありますか?

数え方は決まっていません。主な種類は、自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動症(ADHD)、学習障害(限局性学習症)の3つで、チック症(トゥレット症)、吃音、発達性協調運動症なども発達障害に含まれます。医学の診断基準DSM-5では、知的能力障害を含めた6つのグループを「神経発達症群」としています。

Q2. 広汎性発達障害と自閉スペクトラム症は同じですか?

ほぼ同じものを指します。広汎性発達障害はDSM-IV-TRまでの呼び方で、自閉性障害、アスペルガー障害、特定不能の広汎性発達障害などを含んでいました。2013年のDSM-5で、これらは自閉スペクトラム症(ASD)にまとめられました。

Q3. 発達障害と知的障害の違いは何ですか?

発達障害者支援法の発達障害の定義には、知的障害は含まれていません。一方、医学の診断基準DSM-5では、知的能力障害は発達障害と同じ神経発達症群の1つです。ASDと知的障害を併せ持つ方もいれば、知的障害を伴わないASDの方もいます。

Q4. 子どもの発達障害はどのくらいいますか?

文部科学省の2022年の調査では、通常の学級に在籍する小中学生の8.8%に、学習面または行動面で著しい困難がありました。ただし学級担任などの回答による調査で、発達障害と診断された子どもの割合ではありません。

Q5. 発達障害は親の育て方が原因ですか?

いいえ。発達障害は生まれつきの脳の働き方の違いによるものと考えられており、親の育て方や愛情不足が原因ではありません。遺伝の要因が関わることはありますが、それも誰かのせいではありません。

Q6. 発達障害は妊娠中にわかりますか?

発達障害そのものを妊娠中に診断することはできません。ただし、一部の自閉症・発達障害・知的障害の原因(22q11.2欠失症候群など)は、当院のNIPTで生まれる前に調べられます。調べられるのは原因のごく一部で、NIPTが陰性でも発達障害が起こらないという意味ではありません。

まとめ

発達障害の主な種類は、自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動症(ADHD)、学習障害(限局性学習症)で、チック症(トゥレット症)・吃音・発達性協調運動症も含まれます。法律(発達障害者支援法)と医学(DSM-5の神経発達症群)では分け方が違い、知的障害は医学では同じグループ、法律の定義では別に扱われます[1][4]。かつての広汎性発達障害は、今の自閉スペクトラム症(ASD)です[4]。

発達障害は育て方が原因ではありません。お子さんの様子が気になるときは、小児科・児童精神科などの医師や、発達障害者支援センターに相談してください[8]。原因や遺伝について知りたい場合は、臨床遺伝専門医の遺伝カウンセリングで、検査でわかることとわからないことを整理できます。

🧬 発達障害と遺伝について知りたい方へ

発達障害の診断・療育・薬の治療は、小児科・児童精神科・発達外来などの専門医が行います。ミネルバクリニックでは、臨床遺伝専門医が、発達障害・知的障害と遺伝についての遺伝カウンセリングと、原因を調べる遺伝子検査を行っています。検査を受けるかどうかまだ決めていない方は、発達障害の遺伝子検査のページで、検査で何がわかり、結果をどう受け止めればよいかを先にご覧ください。

参考文献

  • [1] 文部科学省. 別紙1 発達障害の法令上の定義(発達障害者支援法 第2条、同施行令 第1条、同施行規則). [文部科学省]
  • [2] 文部科学省. 別紙3 平成17年4月1日付け 文部科学事務次官・厚生労働事務次官通知(抄). [文部科学省]
  • [3] 文部科学省. 別紙5 ICD-10(疾病及び関連保健問題の国際統計分類)(抄). [文部科学省]
  • [4] 宮川充司. アメリカ精神医学会の改訂診断基準 DSM-5:神経発達障害と知的障害,自閉症スペクトラム障害. 椙山女学園大学教育学部紀要. 2014;7:65-78. [PDF]
  • [5] 国立精神・神経医療研究センター. 発達障害(神経発達症). こころの情報サイト. [NCNP]
  • [6] 厚生労働省 社会・援護局 障害保健福祉部 障害福祉課 障害児・発達障害者支援室. 発達障害の理解(令和元年度 就労準備支援事業従事者養成研修, 2019年10月). [厚生労働省 PDF]
  • [7] 文部科学省. 通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果について(令和4年12月13日). [文部科学省 PDF] [報道発表]
  • [8] 厚生労働省. 発達障害者支援施策の概要. [厚生労働省]
  • [9] 厚生労働省. 障害者手帳について. [厚生労働省]
  • [10] Miller DT, Adam MP, Aradhya S, et al. Consensus statement: chromosomal microarray is a first-tier clinical diagnostic test for individuals with developmental disabilities or congenital anomalies. Am J Hum Genet. 2010;86(5):749-764. [DOI]
  • [11] Schneider M, Debbané M, Bassett AS, et al. Psychiatric disorders from childhood to adulthood in 22q11.2 deletion syndrome: results from the International Consortium on Brain and Behavior in 22q11.2 Deletion Syndrome. Am J Psychiatry. 2014;171(6):627-639. [DOI]
  • [12] 神庭重信(日本精神神経学会 ICD専門委員会). これまでの日本精神神経学会での病名検討の経緯(2019年9月26日). [厚生労働省掲載 PDF]
  • [13] 厚生労働省. 「精神障害者保健福祉手帳制度実施要領について」の一部改正について(平成23年1月13日 障発0113第1号). [WAM NET掲載 PDF]
  • [14] さいたま市. 精神障害者保健福祉手帳(さいたま子育てWEB). [さいたま市]
  • [15] National Institute of Neurological Disorders and Stroke (NINDS). Tourette Syndrome. [NINDS]
  • [16] American Psychiatric Association. What Are Specific Learning Disorders? [APA]
  • [17] Sharma N, Mishra R, Mishra D. The Fifth Edition of Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders (DSM-5): What is New for the Pediatrician? Indian Pediatrics. 2015;52. [Indian Pediatrics]

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プロフィール
仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続け、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、検査結果の数値そのものだけでなく、「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、日本人として異文化の中で生活した経験があります。価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。この経験は現在の診療においても、「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、36週6日で一人を死産した経験があります。その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、家族の未来に関わる重要な意思決定です。年齢や統計だけで判断するのではなく、医学的根拠と心理的支援の両面から、ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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