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知的障害児が生まれる確率は約1%(100人に1人)|原因・いつわかるか・遺伝との関係

目次

仲田洋美 医師

この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

記事の作り方(編集方針)

「うちの子に知的障害があったらどうしよう」——妊娠中や妊活中に、そう考えたことのある方は少なくありません。結論から言うと、知的障害のある子どもが生まれる確率は、およそ100人に1人(約1%)です(重度に限ると、子どもを対象にした調査で1,000人あたり約2.5〜5人)。ネットでよく見る「3〜5%」は、心臓の病気なども含めた生まれつきの病気全体の数字で、知的障害だけの数字ではありません。この記事では、数字がなぜバラつくのかを整理したうえで、なぜ生まれるのか・遺伝や家系との関係・いつわかるか・妊娠中にどこまで調べられるかを、臨床遺伝専門医の立場から順にお伝えします。

⏱️ 30秒でわかる要約

📊 Q. 障害児(知的障害児)が生まれる確率は?重度は何人に1人?

知的障害のある人の割合は約1%(100人に1人)です。重度に限ると、子どもを対象にした調査で1,000人あたり約2.5〜5人(およそ200〜400人に1人)です。よく見る「3〜5%」は生まれつきの病気全体の頻度で、その多くは知的障害を伴いません。

🤔 Q. ダウン症候群だけ調べれば大丈夫?

ダウン症候群を調べることは大切です。そのうえで、知的障害や発達の遅れの原因には、ダウン症候群のほかに微小欠失(染色体のごく小さな欠け)や1つの遺伝子の変化があり、その一部は妊娠中にNIPTで調べられます。ただし、すべての知的障害がわかるわけではありません。

🕐 Q. 知的障害はいつわかる?なぜ生まれる?

重度なら乳児期〜1歳前後、軽度は就学前後に気づかれることが多いです。原因で多いのは、ご両親にはなくお子さんで新しく起きた遺伝子の変化(de novo変異)で、ご両親の生活や妊娠中の過ごし方のせいではありません。

\ ダウン症候群だけで大丈夫?知的障害の原因の一部まで調べられるNIPT /

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ダウン症候群のほか、知的障害・発達の遅れの原因の一部になる微小欠失や1つの遺伝子の変化まで、妊娠中に血液で調べられます。通常妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。
NIPTを受けるべきか迷う方へ | お子さんの知的障害の原因を調べる遺伝子検査

妊娠中に調べられる範囲は、記事の後半とNIPT(新型出生前診断)のページでくわしくご案内しています。

結論:知的障害のある子どもが生まれる確率は、およそ100人に1人(約1%)

まず結論からお伝えします。知的障害(知的能力障害)のある人の割合は、およそ1%=100人に1人です。これは日本でも海外でも、おおむね一致している数字です。

世界52の調査をまとめた解析では、知的障害の有病率は人口1,000人あたり約10.4人、低・中所得の国や、子ども・若い世代で高い傾向があると報告されています[1]。日本でも、令和4年の全国調査で療育手帳をお持ちの方は推計114.0万人[2]で、人口比はほぼ1%です。

📌 いちばん大事な3行

・知的障害のある人は約1%(100人に1人)
・よく見る「3〜5%」は生まれつきの病気すべてを合わせた数字で、知的障害だけの数字ではありません
・原因で多いのはその子で新しく起きた変化で、ご両親の生活や体質のせいではありません

なお「3〜5%」という数字もまちがいではありません。ただしそれは先天異常(生まれつきの病気)全体の頻度です。生まれつきの病気を何かもっている赤ちゃんは、妊娠中にわかる場合と生まれてからわかる場合を合わせて全体の3〜5%と考えられています[3]。この3〜5%には心臓の病気も口唇口蓋裂も含まれており、その多くは知的障害を伴いません。ここを混同すると、実際よりずっと高い数字を思い込んでしまいます。

知的障害児が生まれる確率は約1%(100人に1人)――原因といつわかるかを臨床遺伝専門医が解説

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【数字を知りたい、の奥にあるもの】

診察室で「確率はどれくらいですか」と聞かれるとき、その方が本当に知りたいのは数字そのものではないことがほとんどです。「自分のせいではないと確かめたい」「もし何かあったとき、自分は受け止められるだろうか」——そういう気持ちが、数字という形をとって出てくるのだと感じています。

ですからこの記事でも、数字だけを並べることはしません。その数字が何を意味していて、何を意味していないのか。そこまでお伝えして、はじめて安心につながると思っています。

「障害児が生まれる確率」を数字で整理する ― 重度知的障害は何人に1人?

検索でよく見かける数字を、指しているものごとに並べてみます。「障害児が生まれる確率」という一つの数字は存在しません。何を数えているかで、答えは大きく変わります。

何を数えているか おおよその頻度
生まれつきの病気すべて(心臓・口唇口蓋裂なども含む) 3〜5%[3]
知的障害(知的能力障害) 約1%(100人に1人)[1]
うち重度の知的障害(子ども) 1,000人あたり約2.5〜5人(およそ200〜400人に1人)[7]
ダウン症候群(21トリソミー) 母体年齢で変わる(次の章の表)

知的障害のなかでは軽度知的障害がもっとも多く、全体の多数を占めます。「重度知的障害は何人に一人か」という問いには、子どもを対象にした米国の調査をまとめた報告で、重度は1,000人あたり約2.5〜5人、つまりおよそ200〜400人に1人とされています[7]。たとえば米国アトランタの8歳児(2010年)の調査では、知的障害全体が1,000人あたり13.6人で、そのうち軽度が9.4人、重度が3.8人でした[7]。調査によって定義や把握方法が異なるため、幅をもって受け止めてください。

💡 用語解説:知的障害の「今の」決め方

正式な名称…現在は「知的能力障害(知的発達症)」と呼びます。かつての「精神遅滞」という呼び方は使われなくなりました[4]。
診断に必要なもの…①知的機能(考える・学ぶ・問題を解く力)と、②適応機能(日常生活を送る力)の両方に、発達期からの困りごとがあること。
重症度の決め方…現在の診断基準では、重症度はIQの点数だけでなく、適応機能(日常生活でどれだけ支援が要るか)をもとに決めます。「IQ50〜70が軽度、35〜49が中等度…」という古い区切りだけで判断することはありません[4][5]。

IQについて、よくある誤解

知能指数(IQ)は平均が100、標準偏差が15になるようにつくられています。平均から2標準偏差ほど下(およそ70前後より下)が一つの目安になります。ただし検査には誤差があり、体調や年齢によっても数字は動きます。IQ何点だから知的障害、という単純な線引きは行いません。

知的障害は、神経発達症(発達障害)というグループのなかに位置づけられています。自閉スペクトラム症やADHDと同じグループですが、別々の状態であり、併存することもあります(後述)。軽い知的障害の特徴は軽度知的障害とは?特徴、診断、原因、支援でまとめています。

母体年齢で変わる確率と、変わらない確率

「20代なら安心ですか」「35歳を過ぎると急に上がりますか」というご質問をよくいただきます。ここははっきり分けて考える必要があります。

⚠️ 年齢で上がるのは「染色体の数の変化」

母体年齢とともにはっきり上がるのは、ダウン症候群などの染色体の数の変化です。知的障害の原因の多くを占める遺伝子レベルの変化や、周産期・生まれたあとの要因は、母体年齢とはほとんど関係しません(お父さんの年齢との関係は後述)。

母体年齢とダウン症候群・染色体の変化の関係は、厚生労働省の検討会資料にまとめられています[6]。「ダウン症候群の頻度」と「何らかの染色体の変化の頻度」は別の列なので、混同しないようご注意ください。

出産時の年齢 ダウン症候群の子が生まれる頻度 何らかの染色体の変化をもつ子が生まれる頻度
20歳 1,667人に1人 526人に1人
25歳 1,250人に1人 476人に1人
30歳 952人に1人 384人に1人
35歳 385人に1人 192人に1人
39歳 137人に1人 83人に1人
40歳 106人に1人 66人に1人
42歳 64人に1人 42人に1人
45歳 30人に1人 21人に1人

厚生労働省「不妊に悩む方への特定治療支援事業等のあり方に関する検討会」報告書 参考資料(Hook EB 1981・1983をもとに母子保健課で作成)より[6]

20代なら障害をもって生まれる確率は低い?

この表を見るときに、ぜひ知っておいていただきたいことが2つあります。

1つめ。20代でもダウン症候群のお子さんは生まれます。頻度は低くても、出産する人数そのものは20代・30代前半が多いため、実際に生まれるお子さんの人数でみると若い年代がかなりの割合を占めます。くわしくは20代・30代前半が出生前診断を受ける割合は?ダウン症とNIPTで解説しています。「若いから関係ない」とは言えません。

2つめ。これは「染色体の変化」の頻度であって、「知的障害」の頻度ではありません。たとえばダウン症候群のあるお子さんの知的発達には大きな幅があり、一人ひとりまったく違います。染色体の変化がわかっても、その子がどう育つかまではわかりません。

なぜ生まれるのか ― 知的障害の原因

「なぜ知的障害のある子が生まれるのか」。この問いに、いまの医学ははっきり答えられる部分と、まだ答えられない部分の両方をもっています。

発達の遅れや知的障害のあるお子さんでは、遺伝的な要因が最大で半数ほどにかかわると考えられています[8]。102の研究・55,752人のお子さんをまとめた解析では、全エクソーム解析で37%、マイクロアレイ染色体検査で19%に原因が見つかっています[8]。裏を返せば、いま調べられる方法を尽くしても、原因がはっきりしないお子さんも少なくありません。

いちばん多いのは「その子で新しく起きた変化」

原因が見つかったケースを調べていくと、そのかなりの部分がde novo(デノボ)変異——ご両親のどちらにも無く、そのお子さんで新しく生じた変化——によるものです(とくに重度の知的障害では、主な原因の一つと報告されています[17])。ご両親とお子さんの3人をまとめて解析するトリオ解析は、こうした変化を見つけるのに役立ちます。

🔬 用語解説:de novo変異(新生突然変異)

卵子や精子がつくられるとき、あるいは受精のごく初期に、偶然に起きるDNAの写しまちがいのことです。誰にでも一定の数が起こっており、避ける方法はありません。
お母さんの生活習慣、食べたもの、飲んだ薬、ストレス、妊娠中の過ごし方とは無関係に起こります。「自分の何かが悪かったのでは」と思い詰める必要はまったくありません。

原因を大きく4つに分けると

① 染色体の変化…21トリソミー(ダウン症候群)のように本数が変わるもののほか、顕微鏡では見えないほど小さな欠失・重複(コピー数変異/CNV)があります。22q11.2欠失症候群やウィリアムズ症候群などが代表です。

② 1つの遺伝子の変化…知的障害に関わる遺伝子は非常に多く知られており、全エクソーム解析で見つかることがあります。

③ 妊娠中・出産前後の要因…先天性の感染症(風疹・サイトメガロウイルスなど)、妊娠中の飲酒、極端な早産や出生時のトラブルなど。

④ 生まれたあとの要因…重い感染症、頭部の外傷、事故など。

「障害児を産む人の特徴」はある? ― 父親の年齢とde novo変異

「障害児を産む人には特徴があるのか」と調べる方もいますが、知的障害の多くはご両親の性格や生活とは関係なく起こります。年齢で言えるのは、お母さんの年齢とともに染色体の数の変化が増えることと、お父さんの年齢とともにde novo変異が増えることです。アイスランドの研究では、父親の年齢が1歳上がるごとにお子さんのde novo変異が約2個増え、約16.5年で2倍になると推定されています[18]。ダウン症候群と母親の年齢の関係はダウン症を産む人の特徴は?母親が原因?年齢と確率の真実を専門医が解説、父親の年齢との関係は父親の年齢と単一遺伝子疾患で解説しています。

遺伝するのか、家系は関係するのか

「家系に誰もいないのに、なぜ?」「親戚に一人いるのですが、うちも危ないですか?」——このご質問は、遺伝カウンセリングでもっとも多いもののひとつです。

結論から言うと、知的障害の多くは家系をたどれるものではありません。前の章のとおり原因の多くはde novo変異であり、その場合はご両親にも、おじいさま・おばあさまにも同じ変化はありません。健常なご両親から知的障害のあるお子さんが生まれるのは、まったく珍しいことではないのです。

一方で、確かに遺伝するものもあります ― 母親から?父親から?

代表が脆弱X症候群です。X染色体上のFMR1遺伝子の変化が母親から受け継がれることで起こり、遺伝性の知的障害としてもっとも頻度が高いものです[19]。ご家族に知的障害のある男性が複数いる場合などには、FMR1のリピート数を調べる検査を検討します。

このほか、ご両親がともに同じ遺伝子の変化をもつ(保因者である)ときに4分の1の確率で起こる常染色体潜性(劣性)遺伝のものや、お母さんが保因者でおもに男の子に現れるX連鎖遺伝のものもあります。こうした「親が保因者かどうか」はNIPTでは調べられず、保因者検査で調べます。当院では、NIPTと同じ日に採血できるカップルの保因者検査ファミリーセーフティ プラス(NIPTと同時に申し込む保因者検査で、NIPTの一種ではありません。単独では受けられません)と、妊娠前から受けられる拡大版保因者検査(女性787遺伝子・男性714遺伝子のほか、1009遺伝子のものもあります)を行っています。脆弱X症候群(FMR1)も保因者検査で調べられます。

障害のある子が続けて生まれるのはなぜ?

「障害児ばかり生まれるのはなぜか」と悩まれる方もいます。きょうだいに続けて知的障害がみられるときは、偶然のde novo変異よりも、次のような繰り返しやすい原因が隠れていることがあります。

・ご両親がともに保因者の常染色体潜性遺伝(毎回4分の1)
・お母さんが保因者のX連鎖遺伝(男の子は毎回2分の1)
・ご両親のどちらかがもつ均衡型の染色体の入れかわり(転座)
・ご両親の卵子や精子の一部にだけ変化がある性腺モザイク

どれに当たるかは、上のお子さんの原因を調べてはじめてわかります。「続けて生まれたのは自分の体質のせい」と決めつける前に、遺伝カウンセリングで原因を整理することをおすすめします。

⚠️ 二人目はどうなるのか(再発率)

「上の子に知的障害があるので、二人目が心配」——このとき知りたい数字を再発率と呼びます。再発率は原因によってまったく違います。
de novo変異が原因なら、次のお子さんで繰り返す確率は一般に低くなります(ただし性腺モザイクがあると、家族の中で同じ変化が繰り返されることがあります。大規模な研究では、変化の性質によって繰り返す確率は0.011%から28.5%まで幅がありました[20])。常染色体潜性遺伝なら4分の1、X連鎖ならお子さんの性別によって考え方が変わります。
つまり「原因を調べないと、二人目の確率は答えられない」のです。ここが、上のお子さんの原因を調べることに意味がある大きな理由です。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「私のせいですか」と聞かれたとき】

お子さんに知的障害があるとわかったあと、お母さまが「妊娠中にあの薬を飲んだからでしょうか」「無理をして働いたからでしょうか」とご自身を責められる場面に、何度も立ち会ってきました。ご家族の言葉に傷つかれている方もいらっしゃいます。

原因がde novo変異だったとわかったとき、多くの方が涙を流されます。誰のせいでもなかったと、はっきり言える。それは検査の結果がもつ、いちばん大きな意味のひとつだと私は思っています。

知的障害はいつわかるのか

「いつわかるのか」は、とてもよく調べられている一方で、答えがひとつではない問いです。気づかれる時期は、支援の必要さの程度によって大きく変わります。重いほど早く、軽いほど遅く気づかれるのが一般的です。

程度 気づかれやすい時期(目安) きっかけになりやすいこと
重度・最重度 乳児期〜1歳前後 首すわり・お座り・歩行など運動発達の遅れ、乳幼児健診
中等度 1歳半〜3歳ごろ ことばが出ない・増えない、1歳6か月児健診・3歳児健診
軽度 就学前後〜小学校中学年 読み書き・算数のつまずき、集団行動のむずかしさ
境界〜ごく軽度 思春期〜成人になってから 仕事や生活での困りごとをきっかけに、はじめて相談へ

※知的障害の程度による、気づかれやすい時期の一般的な目安です。お子さんによって違います。

ここで大切なのは、幼児期のはやい時期には、知能検査そのものの信頼性が高くないという点です。そのため小さいうちは確定的な診断をつけず、「発達の遅れ(全般的発達遅延)」として経過をみながら支援を始めるのが一般的です[5]。診断名を急ぐより、困っていることに合わせた支援を先に始めるほうが、お子さんにとって有益です。

生まれる前・生まれてすぐにわかることはある?

知的障害そのものは、生まれる前や生まれてすぐには診断できません。ただし、ダウン症候群や一部の微小欠失のように知的障害を伴うことの多い病気は、妊娠中の検査や、生まれたあとの診察・染色体検査で早くにわかることがあります。妊娠中にどこまで調べられるかは、次の章でお伝えします。

妊娠中にどこまでわかるのか ― 出生前診断の限界

⚠️ 最初にはっきりお伝えします

「知的障害があるかどうか」は、妊娠中の検査ではわかりません。わかるのは、知的障害の原因になりうる染色体や特定の遺伝子の変化があるかどうかです。

この違いは、とても大切です。たとえばダウン症候群であることが妊娠中にわかったとしても、そのお子さんの知的発達がどの程度になるかは、生まれる前には誰にも予測できません。検査でわかるのは「設計図の変化」であって、「その子がどう育つか」ではないのです。くわしくは出生前診断でわかること・わからないこともご覧ください。

妊娠中に行える検査と、わかること

NIPT(非侵襲性出生前遺伝学的検査)…お母さんの血液で調べる非確定的検査です[10]。認証施設のNIPTは21トリソミー(ダウン症候群)・18トリソミー・13トリソミーの3つが対象です。当院のNIPTでは、プランによって、知的障害や発達の遅れの原因の一部になる微小欠失症候群や、1つの遺伝子の変化による病気(単一遺伝子疾患とNIPT)まで調べられます(次の章)。陽性の場合は確定検査が必要です。

確定検査(絨毛検査・羊水検査)…赤ちゃん側の細胞そのものを調べます[11]。染色体の本数だけでなく、マイクロアレイを追加すれば小さな欠失・重複(CNV)まで調べられます。当院では絨毛検査(妊娠11〜13週)・羊水検査(妊娠15週以降)とも院内で行っています。羊水検査・絨毛検査のページもご覧ください。

胎児超音波検査…からだのつくりの違いや、染色体の変化を示唆するサインを見つけられることがあります。胎児超音波検査(超音波胎児スクリーニング検査)とは?で解説しています。

💡 わかること/わからないこと

◎ わかる…染色体の本数の変化(21・18・13トリソミーなど)、検査の対象に入っている微小欠失・重複、検査の対象に入っている遺伝子の変化
× わからない…知的障害の有無そのもの、知的発達の程度、自閉スペクトラム症やADHDの有無、検査の対象に入っていない遺伝子の変化
つまり、妊娠中の検査ですべての知的障害を見つけることはできません。陰性でも、知的障害がないとは言えません。この点は、検査を受けるかどうかを考える前に必ず知っておいていただきたいことです。

ダウン症候群だけで大丈夫? ― 「値段」ではなく「調べられる範囲」で選ぶ

ここまでお伝えしたとおり、知的障害の原因は染色体の数の変化だけではありません。ダウン症候群を調べることはもちろん大切です。そのうえで、ダウン症候群のほかにも、知的障害や発達の遅れの原因の一部になる病気を妊娠中に調べられることを知ったうえで、検査を選んでいただきたいと考えています。

子育ての大変さは、知的発達の重さだけでは決まらない

自閉スペクトラム症のお子さんを育てる親の子育てのストレスを調べたメタ解析では、ほかの障害のお子さんの親と比べてもストレスが高く、ダウン症候群のお子さんの親との差がもっとも大きいという結果でした。著者は、ダウン症候群の子育てに特有の事情が関わっている可能性があるとして、解釈に注意を添えています[12]。また、微小欠失の一つである22q11.2欠失症候群では、知的発達への影響は軽めのことも多い一方で、先天性心疾患が約半数にみられ、国際共同研究では子どもの37.1%にADHD、25歳を超える大人の41%に統合失調症などの精神病性の障害がみられました[13]。

知的障害・発達の遅れの原因の一部と、当院のNIPTのプラン

病気 調べられるプラン
22q11.2欠失症候群・スミス・マゲニス症候群(17p11.2欠失) スタンダード・プレミアム・ダイヤモンド・双子マックス・インペリアル
16p11.2欠失・重複 双子マックス・インペリアル
レット症候群・ソトス症候群・コルネリア・デ・ランゲ症候群・CHARGE症候群 ダイヤモンド・インペリアル
ピット・ホプキンス症候群・フェラン・マクダーミッド症候群・KBG症候群・ルビンシュタイン・テイビ症候群・ドラベ症候群 インペリアル

このほか、スタンダードプランは微小欠失6種類7疾患、プレミアムプラン・ダイヤモンドプランは12種類13疾患、双子マックスプラン・インペリアルプランは92種類の微小欠失・重複と5Mbを超える構造異常を調べます。ヌーナン症候群は知的障害のない人も多い病気ですが、発達の遅れがみられることがあります。

ここに挙げたのは、知的障害・発達の遅れの原因のごく一部です。NIPTで陰性でも、知的障害がないとは言えません。また陽性のときは、確定検査で確かめる必要があります。自閉症・発達障害との関係は一部の自閉症・発達障害の原因はNIPTでわかるで解説しています。

プランごとの検出対象疾患数と「1つの病気あたり」
棒の長さは検出対象疾患数をあらわします(インペリアルを100とした長さ)
三大トリソミーだけを調べる検査仮に10万円とした場合
1つの病気あたり 約33,333円
13・18・21トリソミー
検出対象疾患数3
1つの病気あたり 約15,714円
13・18・21トリソミー、性染色体の数の異常、微小欠失6種類7疾患
検出対象疾患数14
プレミアム264,000円
1つの病気あたり 約11,478円
13・18・21・15・16・22トリソミー、性染色体の数の異常、微小欠失12種類13疾患
検出対象疾患数23
1つの病気あたり 約5,152円
プレミアムの範囲+単一遺伝子56
検出対象疾患数79
1つの病気あたり 約3,860円
全常染色体の数の異常、92種類の微小欠失・重複、5Mbを超える構造異常
検出対象疾患数114+α
1つの病気あたり 約1,719円
全常染色体と性染色体の数の異常、92種類の微小欠失・重複、5Mbを超える構造異常、単一遺伝子202疾患
検出対象疾患数320+α

検出対象疾患数は性染色体の数の変化も含めて320になり、1つの病気あたりは約1,719円です。当院の料金には、臨床遺伝専門医による遺伝カウンセリング(90分の受診枠の中で行います)、NIPTでの性別判定、4Dエコー(来院の場合)が含まれます。検査結果の作成費用(3,300円)や互助会の会費は別にかかります。

結果が出るまでは10〜14日ほど(インペリアルプランの単一遺伝子の結果のみ3〜4週間)で、陰性でも陽性でもまずマイページでお知らせします。陽性の場合はご連絡のうえ、臨床遺伝専門医が陽性カウンセリング(何度でも無料)を行い、羊水検査・絨毛検査も院内で受けられます(基本は日曜日、月曜日が祝日の場合は月曜日)。他院でNIPTを受けて陽性になった方の確定検査もお受けしています。

\ 陽性なら確定検査まで院内で受けられるNIPTを /

📅NIPTを予約する

臨床遺伝専門医が常駐し、羊水検査・絨毛検査も院内で行っています。
NIPTのプランを見る | インペリアルプラン

発達障害・自閉症との違いと、その確率

知的障害と発達障害の種類は、しばしば同じものとして語られますが、別のものです。

知的障害は、知的機能と適応機能の両方に困りごとがある状態。自閉スペクトラム症(ASD)は、対人的なやりとりや興味・行動のパターンの特性。ADHDは不注意や多動・衝動性の特性。これらは重なることも、重ならないこともあります。知的な遅れのないASDの方も、ASDのない知的障害の方も、たくさんいらっしゃいます。

確率についてもよくご質問をいただきます。ASDやADHDの頻度は、診断のとらえ方や調査の方法によって幅が大きく、一つの数字で言い切れるものではありません。参考までに、米国CDCの2022年の調査では、8歳児のASDは1,000人あたり32.2人(31人に1人)でした[21]。ASDと遺伝の関係は知的障害と共通する部分が多く、原因となる遺伝子も重なります。高齢出産と自閉症の確率は高齢出産と障害│自閉症の子供が生まれてくる確率とリスク、発達障害が遺伝する確率は発達障害の遺伝子検査|発達障害は遺伝する?確率と、お子さん・家族のための検査の選び方でくわしく解説しています。

なお、ASDやADHDそのものを妊娠中に診断することはできません。ただし、生まれたあとに原因を調べる過程で、ASDや知的障害の背景にある遺伝子やCNVが見つかることはあります。当院では自閉症・発達障害の遺伝子パネル検査やADHDの遺伝子検査も行っています。

防げるもの、防げないもの

「確率を下げる方法はありますか」というご質問には、正直にお答えする必要があります。防げるものと、どうやっても防げないものがあります。

◎ 実際に防げること

① 風疹ワクチン…免疫が不十分な妊婦さんが風疹にかかると、難聴・心疾患・白内障などを伴う先天性風疹症候群が起こりえます[14]。妊娠前のワクチン接種で予防できます。

② 妊娠中の飲酒を避ける…胎児性アルコール・スペクトラム障害(FASD)は、飲酒しなければ起こりません[15]。胎児性アルコール症候群もご覧ください。

③ 先天性サイトメガロウイルス感染の予防…上のお子さんの唾液・尿にふれたあとの手洗いなど、日常の工夫で感染の機会を減らせます。先天性サイトメガロウイルス感染症とはで解説しています。

④ 新生児マススクリーニング…見落とされがちですが、確実に知的障害を防いでいる検査です。日本では20疾患を対象に公費で行われており[22]、フェニルケトン尿症や先天性甲状腺機能低下症などは、生後すぐ治療を始めれば知的障害を防げます。新生児スクリーニングもご覧ください。

⑤ 一部の薬剤の見直し…妊娠中に避けたほうがよい薬があります。自己判断で中止せず、必ず主治医にご相談ください。催奇形因子(テラトゲン)で解説しています。

💡 葉酸について、正確にお伝えします

葉酸400μgの摂取が予防するのは神経管閉鎖障害のリスクであって[16]、知的障害全般を防ぐものではありません。摂ることは大切ですが、過度な期待も、飲み忘れたことへの自責も不要です。

× どうやっても防げないこと

原因の大きな部分を占めるde novo変異は、誰にも防げません。食事にも、運動にも、サプリメントにも、ストレス管理にも、これを減らす力はありません。「気をつけていれば防げたはずだ」という考え方は、事実として正しくありませんし、ご家族を不要に苦しめます。

不安なときの相談先 ― 当院でできること

確率の数字だけでは、ご自身の状況の答えにはなりません。ご家族の状況、上のお子さんのこと、ご年齢、これまでの妊娠経過——それらを踏まえて、はじめて「あなたの場合」の話ができます。それを一緒に整理するのが遺伝カウンセリングです。

当院では、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングから検査、結果のご説明まで担当します。2025年6月から産婦人科を併設し、NIPTから羊水検査・絨毛検査までを院内で行っています。上のお子さんの原因を調べたい場合は、マイクロアレイ染色体検査や全エクソーム解析などをご提案します。遠方の方はオンラインNIPT(全国対応)もご利用いただけます。特定の選択へ誘導せず、ご自身で選べるよう情報をお伝えします。

まとめ

📌 重要ポイントのまとめ

・確率:知的障害のある人は約1%(100人に1人)。よく見る「3〜5%」は生まれつきの病気すべての数字です
・年齢:母体年齢で上がるのは染色体の数の変化。知的障害全体は母体年齢とあまり関係しません
・原因:多いのはde novo変異。誰のせいでもなく、防ぐ方法もありません
・遺伝:多くは家系をたどれません。ただし脆弱X症候群など遺伝するものもあります
・時期:重度は乳児期、軽度は就学前後。小さいうちは診断より支援を優先します
・妊娠中:わかるのは染色体・遺伝子の変化まで。知的障害の有無や程度はわかりません。原因の一部はNIPTで調べられます
・二人目:再発率は原因によって違うため、原因を調べることに意味があります

確率を知ることは、不安をなくすためではなく、これから起こりうることを落ち着いて考えるためにあります。数字だけでは答えの出ないことも多いので、気がかりがあれば、お一人で抱え込まずにご相談ください。

🏥 知的障害の原因の一部まで、妊娠中に調べる

ダウン症候群のほか、知的障害・発達の遅れの原因の一部になる微小欠失や1つの遺伝子の変化まで調べられます。臨床遺伝専門医が常駐し、陽性なら羊水検査・絨毛検査まで院内で受けられます。通常妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。

まだ決めていない方は:NIPTを受けるべきか迷う方へ(3つの判断基準) | 上のお子さんの原因を調べたい方は:発達障害・学習障害・知的障害の遺伝子検査

よくある質問(FAQ)

Q1. 障害児(知的障害児)が生まれる確率はどのくらいですか?

知的障害のある人の割合はおよそ1%、100人に1人です。世界52の調査をまとめた解析では人口1,000人あたり約10.4人と報告されており、日本の療育手帳所持者数(令和4年推計114.0万人)から計算した人口比ともほぼ一致します。

Q2. ダウン症候群だけを調べるNIPTで大丈夫ですか?

ダウン症候群を調べることは大切です。そのうえで、知的障害や発達の遅れの原因には、22q11.2欠失症候群などの微小欠失や、レット症候群・ソトス症候群などの1つの遺伝子の変化による病気もあり、その一部は当院のNIPTでプランによって調べられます。ただし調べられるのは原因の一部で、陰性でも知的障害がないとは言えません。

Q3. 障害児が生まれる確率は3%と聞きましたが、本当ですか?

その数字は「生まれつきの病気すべて」の頻度で、3〜5%とされています。心臓の病気や口唇口蓋裂なども含まれ、その多くは知的障害を伴いません。知的障害だけを数えた場合は約1%です。

Q4. 重度の知的障害は何人に1人ですか?

子どもを対象にした米国の調査をまとめた報告では、重度の知的障害は1,000人あたり約2.5〜5人、およそ200〜400人に1人とされています。知的障害のなかでは軽度がもっとも多く、全体の多数を占めます。調査によって定義や把握方法が異なるため、幅をもって受け止めてください。

Q5. 知的障害はいつわかりますか?

程度によって大きく異なります。重度・最重度は乳児期から1歳前後、中等度は1歳半から3歳ごろ、軽度は就学前後から小学校中学年ごろに気づかれることが多く、ごく軽度の場合は成人になってからはじめて相談に至ることもあります。幼児期は知能検査の信頼性が高くないため、確定診断を急がず「発達の遅れ」として支援を始めるのが一般的です。

Q6. 知的障害の子はなぜ生まれるのですか?

原因は、染色体の変化、1つの遺伝子の変化、妊娠中・出産前後の要因、生まれたあとの要因に大きく分けられます。原因が見つかる場合、ご両親にはなくお子さんで新しく起きた変化(de novo変異)が多く、ご両親の生活や妊娠中の過ごし方のせいではありません。一方で、調べても原因がはっきりしないお子さんも少なくありません。

Q7. 知的障害は遺伝しますか?母親や父親から遺伝しますか?

多くは家系をたどれるものではありません。原因の大きな部分を占めるde novo変異は、ご両親のどちらにも無い変化だからです。一方で、母親から受け継がれる脆弱X症候群のようなX連鎖遺伝のものや、両親がともに保因者のときに起こる常染色体潜性遺伝のものもあります。父親の年齢が上がるとde novo変異が増えることも知られています。

Q8. 障害児ばかり生まれるのはなぜですか?

きょうだいに続けて知的障害がみられるときは、ご両親がともに保因者の常染色体潜性遺伝、お母さんが保因者のX連鎖遺伝、ご両親のどちらかがもつ均衡型の転座、卵子や精子の一部にだけ変化がある性腺モザイクなど、繰り返しやすい原因が隠れていることがあります。どれに当たるかは、上のお子さんの原因を調べてはじめてわかります。

Q9. 一人目に知的障害があると、二人目も同じになりますか?

再発率は原因によってまったく異なります。de novo変異が原因なら次のお子さんで繰り返す確率は一般に低く、常染色体潜性遺伝なら4分の1、X連鎖遺伝ならお子さんの性別によって考え方が変わります。上のお子さんの原因を調べないと、二人目の確率はお答えできません。

Q10. 20代なら知的障害の子が生まれる確率は低いですか?

母体年齢で上がるのは染色体の数の変化(ダウン症候群など)であって、知的障害全体ではありません。知的障害の原因の多くを占める遺伝子レベルの変化は母体年齢とほとんど関係しないため、20代だから安心とは言えません。出産する人数そのものが多いため、ダウン症候群のお子さんが実際に生まれる人数でみると若い年代がかなりの割合を占めます。

Q11. 知的障害は妊娠中の検査(出生前診断)でわかりますか?

「知的障害があるかどうか」は妊娠中の検査ではわかりません。わかるのは、知的障害の原因になりうる染色体の本数の変化や、検査の対象に入っている微小欠失・遺伝子の変化までです。ダウン症候群とわかっても、知的発達の程度には大きな幅があり、生まれる前に予測することはできません。

Q12. 妊娠中に気をつければ、知的障害は防げますか?

防げるものと防げないものがあります。妊娠前の風疹ワクチン、妊娠中の禁酒、先天性サイトメガロウイルス感染の予防、そして生後の新生児マススクリーニング(20疾患)は、知的障害を防ぐことにつながります。一方、原因の大きな部分を占めるde novo変異は誰にも防げません。葉酸が予防するのは神経管閉鎖障害のリスクで、知的障害全般ではありません。

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※本記事は一般の方に向けた情報提供を目的とするもので、個別の診断・検査の選択を示すものではありません。検査については臨床遺伝専門医にご相談ください。

プロフィール
仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続け、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、検査結果の数値そのものだけでなく、「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、日本人として異文化の中で生活した経験があります。価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。この経験は現在の診療においても、「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、36週6日で一人を死産した経験があります。その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、家族の未来に関わる重要な意思決定です。年齢や統計だけで判断するのではなく、医学的根拠と心理的支援の両面から、ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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