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自閉症ASDが親から遺伝する確率は?原因と検査方法も解説

自閉症スペクトラム障害ASD)は遺伝的要因を持ち、親から子への遺伝する確率は一般の人口よりも高いとされています。しかし、具体的な遺伝の確率は多様で、個々の家族の遺伝的背景や環境要因によって異なります。ASDの原因には、遺伝的要因の他に、脳の構造や機能の違い、環境的要因が関連していると考えられています。検査方法には、行動評価、発達のスクリーニング遺伝子検査などがあります。

自閉症スペクトラム(ASD)の原因

自閉症スペクトラム障害(ASD)の原因は複数あり、完全には理解されていませんが、主要な要因には以下のものが含まれます。

  • 遺伝的要因:遺伝が重要な役割を果たします。多くの遺伝子がASDと関連していることが明らかになっています。
  • 脳の構造と機能の違い:ASDの人々は、脳の構造や機能において特有の違いを持つことがあります。
  • 環境要因:妊娠中の曝露、出生時の合併症など、特定の環境要因がASDのリスクを高める可能性があります。
  • 遺伝的と環境的要因の相互作用:遺伝的脆弱性と環境要因が相互に作用し、ASDのリスクを高める可能性があります。

これらの要因は個々のケースによって異なり、ASDは非常に個別化された状態であることを示しています。

自閉症スペクトラムには、遺伝、生物学、環境のすべてが重要な要因となります。遺伝子が9割とも言われています。

両親が高齢であること、難産であったこと、妊娠中の感染症などは、自閉症スペクトラムのリスクを高める要因の一つです。

また、男性は女性の4倍も自閉症スペクトラムが発現しやすいリスクを抱えています。他にも脆弱X症候群、結節性硬化症、ダウン症候群など、特定の遺伝性疾患を持つ人は自閉症スペクトラムになりやすいそうです。

以前は母親の愛情不足や家庭環境が原因と考えられていた時期がありましたけど、現在は否定されています。

親の高齢だとこどもが自閉症になりやすいって本当ですか?
両親の高齢と子どもの自閉症スペクトラム障害(ASD)の発症リスクとの間には関連性があるとされています。高齢の両親と子供の自閉症スペクトラム障害(ASD)発症リスクとの関連についての研究があります。27件の観察研究を含むメタ分析では、高齢の親が子供の自閉症リスクを高めることが示されました。特に、母親と父親の年齢が10年上昇するごとに、自閉症リスクはそれぞれ18%と21%高まることが明らかにされています。この結果は、高齢の両親と子供の自閉症リスクとの有意な関連を示唆しています
難産で自閉症になるって本当ですか?
難産と自閉症スペクトラム障害(ASD)の関連については、科学的な研究によって調査されています。いくつかの研究では、出産時の合併症やストレスが高い出産環境(例えば、酸素不足や早産など)が、子供のASD発症リスクを高める可能性が示唆されています。しかし、これらの因果関係はまだ完全には明らかになっておらず、多くの研究では複数の要因が組み合わさってASDのリスクを高めることが指摘されています。
難産が直接的にASDを引き起こすという明確な証拠は限られており、自閉症の原因は遺伝的要因、環境的要因、それらの相互作用など、より複雑な多要素に関連していると考えられています。したがって、難産が自閉症の直接的な原因であると断定することは困難です。
妊娠中の感染症で自閉症になるって本当ですか?
妊娠中の感染症と子どもの自閉症スペクトラム障害(ASD)リスクとの関連についての研究では、一貫しない証拠が存在します。15件の研究(2件のコホート研究と13件の症例対照研究)を含むメタ分析によると、妊娠中の感染症は子どものASDリスクを1.13倍に高める可能性があるとされています。特に入院が必要な場合にはそのリスクがさらに1.30倍に高まると報告されています。これらの結果は、感染症の種類、感染時期、感染部位によってリスクが変動する可能性を示唆しています。感染症による直接的な病原体の影響や、より間接的には発達中の脳への炎症反応の影響が原因である可能性があります
男の子は自閉症になりやすいって本当ですか?
男性が自閉症スペクトラム障害(ASD)を発症するリスクが女性よりも高いという証拠があります。複数の研究によると、自閉症の診断を受ける男性と女性の比率は約3:1から4:1であるとされています。一部の研究では、この比率が約4人の男性に対して1人の女性とされていますが、他の研究ではこれが約3:1または2:1に近いと指摘されています。米国では、42人に1人の男性と189人に1人の女性が自閉症スペクトラム障害と診断されています

さらに、54件の研究(参加者総数13,784,284人、うち53,712人がASD診断)を含むメタ分析では、男性と女性のオッズ比(男女比)が4.20(95% CI 3.84-4.60)であることが明らかにされていますが、研究間の変動は大きい(I^2 = 90.9%)です。高品質の研究では、このオッズ比は低く(3.32; 95% CI 2.88-3.84)、全体的な人口を対象としたスクリーニング研究では、既にASD診断を受けている参加者のみを対象とした研究よりも男女比が低いことが示されています(それぞれ3.25; 95% CI 2.93-3.62 対 4.56; 95% CI 4.10-5.07)。このことから、自閉症の診断基準を満たす子どもの中で、実際の男女比は一般に想定される4:1ではなく、約3:1に近いと結論づけられています。また、自閉症の診断基準を満たしている女性が臨床診断を受ける機会に不均衡なリスクがあること、すなわち診断に性別バイアスが存在する可能性が指摘されています

自閉症スペクトラム(ASD)が起きる確率

自閉症スペクトラム障害(ASD)の世界的な有病率に関する研究によると、およそ1/100の子供が自閉症スペクトラム障害と診断されているとされています。この比率は地理的、民族的、社会経済的要因によって異なる可能性があり、さらなる詳細な調査が必要です。このデータは、自閉症が比較的一般的な発達障害であることを示しており、世界中で多くの子供たちがこの状態の影響を受けていることを示唆しています。

2000年に、米国疾病予防管理センター(CDC)は、8歳の子供における自閉症スペクトラム(ASD)の有病率を推定するために、人口ベースの公衆衛生監視システムとして、自閉症および発達障害モニタリング(ADDM)ネットワークを設立しました。2014年と2016年に発表されたADDMレポートでは68人に約1人でしたが、2018年のレポートでは、59人に1人と発表しています。

CDCは、2010年に4歳の子供におけるASDの有病率に関するデータも公開しています。これらの子供では診断の有病率が低い(1.34%)で8歳の子供よりも約30%少ないと報告しました。子供の健康に関する全国調査(2011〜2012年)および、特別な医療が必要な子供の全国調査(2009〜2010年)では、親が診断を報告した年齢および親が報告した主観的重症度について分析されました。少数の子供は、3歳より前にASDを持っていると特定されており、6歳以降の診断は子供の3分の1から半分だったという結果を報告しています。診断時の遅い年齢は、報告された軽度の症状と関連しているケースが多かったそうです。

※参照サイト:アメリカ小児学会(リンク先は英語)/自閉症スペクトラム障害児の特定、評価、および管理

日本における自閉症スペクトラム障害(ASD)の発生確率

日本における自閉症スペクトラム障害(ASD)の発生確率に関して、複数の研究から異なるデータが報告されています。一つの大規模なコミュニティベースの疫学研究によると、日本におけるASDの有病率は約1%と推定されています。これは、西洋諸国の約1/59の子どもに比べて低い数字です。

一方で、日本の47都道府県における5年間の累積有病率は、0.9%から7.9%の範囲で、中央値は2.4%です。また、ある調査では、5歳の子供を対象にした全人口サンプルで、調整されたASDの有病率は3.22%(95%信頼区間(CI)2.66-3.76%)と報告されています

これらのデータは、日本におけるASDの有病率には地域や研究方法によるばらつきがあることを示唆しています。また、文化的な態度や診断方法の違いが、日本と他国との有病率の差に影響している可能性があります。

自閉症スペクトラムが親から子どもへ遺伝する確率は?

自閉症スペクトラム障害(ASD)が親から子どもへ遺伝する確率についての正確な数値は、現在のところ一概には決定できません。ASDの遺伝的要因は非常に複雑で、多くの遺伝子が関与していると考えられていますが、単一の遺伝子や明確な遺伝パターンだけでなく、環境要因や遺伝的および環境的要因の相互作用も重要な役割を果たしているとされています。

一般的に、自閉症のある子供を持つ親は、再度自閉症の子供を持つリスクが通常よりも高いとされています。兄弟姉妹の一人が自閉症である場合、他の兄弟姉妹にも自閉症が発症するリスクは増加すると考えられています。ただし、このリスクの正確な割合は、さまざまな研究によって異なる結果が報告されています。

自閉症の遺伝に関するリスクを評価する際には、家族歴、遺伝的背景、および環境的要因を考慮に入れることが重要です。また、自閉症は非常に多様な状態であり、一人一人の自閉症の症状や特徴は大きく異なるため、個々のケースごとにリスクを評価する必要があります。

兄弟が自閉症スペクトラムになる確率は?

兄弟姉妹が自閉症スペクトラム障害(ASD)になる確率に関しては、研究によって異なる結果が示されていますが、一般的には、一人の子供がASDの診断を受けると、その兄弟姉妹にもASDが発症するリスクが高まるとされています。このリスクは、一般集団におけるASDの発生率よりも高いと考えられています。

いくつかの研究では、ASDのある子供を持つ家族において、他の兄弟姉妹がASDになる確率は約18-20%であると報告されています。しかし、この数字は家族の遺伝的背景、環境要因、および既に家族内に自閉症を持つ子供の数などによって変わる可能性があります。

また、性別によってもリスクが異なる可能性があり、男の子の方が女の子に比べてASDを発症するリスクが高いことが示されています。兄弟姉妹がASDになる確率を正確に特定するためには、遺伝学的な評価や家族歴の詳細な調査が必要とされています。

自閉症スペクトラム障害(ASD)の家族内再発リスクに関する研究では、兄弟姉妹間でのASDのリスクが、影響を受けていない家族と比較して著しく高いことが示されています。一つの多国籍、人口ベースの研究では、ASDのある兄弟姉妹を持つ子供のASD発症リスクが8.4倍、児童期自閉症(CA)のある兄弟姉妹を持つ子供のCA発症リスクが17.4倍に増加することが観察されました。また、いとこ間のリスクでも2倍の増加が見られました。この研究では性別による兄弟間ASD再発リスクの顕著な違いも報告されています

この研究結果は、自閉症のある兄弟姉妹を持つ子供がASDを発症するリスクが高いことを示していますが、具体的な確率を示すにはさらなる詳細な研究が必要です。また、自閉症のリスクは個別の家族の遺伝的背景や環境要因によっても変わる可能性があります。

いとこが自閉症の場合(甥や姪が自閉症の場合)は自閉症の確率(リスク)が上がりますか
いとこ間で自閉症スペクトラム障害(ASD)のリスクが2倍に増加するとされています。これは、いとこにASDがある場合、その家族内で遺伝的な要因が関与している可能性を示唆しています。ただし、これはあくまで相対的なリスクであり、具体的な確率は個々の家族の遺伝的背景やその他の要因によって異なります。自閉症のリスクについて懸念がある場合は、遺伝カウンセリングを受けることが推奨されます。

自閉症かどうか調べる方法

自閉症療法のコンセプトは、3Dイラストエレメントを持つ精神障害のアイデアの自閉症アイコン
自閉症スペクトラム障害(ASD)かどうかを調べる方法には、以下のようなものがあります。

  • 発達スクリーニング:小児科医や医療専門家による定期的な発達スクリーニングが行われます。これには、子供のコミュニケーション、行動、遊び、学習スキルの評価が含まれます。
  • 包括的発達評価:スクリーニングで懸念が生じた場合、より詳細な評価が行われます。これには、言語、聴覚のテストや、行動とスキルの評価が含まれます。
  • 観察とインタビュー:医療専門家が子供の行動を観察し、親や保護者へのインタビューを通じて情報を収集します。
  • 遺伝子検査:場合によっては、遺伝子検査が行われることもあります。

自閉症の診断は、一般的に医療専門家によって行われ、子供の発達状況や行動の観察に基づいて行われます。

自閉症そのものが遺伝するわけではない

自閉症そのものが直接遺伝するわけではありません。自閉症スペクトラム障害(ASD)は、複数の遺伝子が関与する複雑な遺伝的要因によって影響を受ける可能性がありますが、単一の遺伝子や明確な遺伝的パターンによって直接引き継がれるわけではありません。ASDの発症には、遺伝的要素の他に環境要因やそれらの相互作用が関わっていると考えられています。したがって、自閉症が「遺伝する」というよりは、遺伝的要素がリスクを高める一因となるというのが適切な表現です。

まとめ

自閉症の原因と親や兄弟姉妹から遺伝するのかという点について、みなさまの疑問が解決するようにお伝えしてきました。
自閉症スペクトラム障害(ASD)は複雑な原因により発症する神経発達障害であり、遺伝的要因が重要な役割を果たしていることが明らかにされています。多くの遺伝子が関与する可能性があり、家族内でのASDのリスクは一般集団に比べて高いとされています。特に、兄弟姉妹やいとこ間でのリスク増加が示されていますが、これは家族間の遺伝的な関連性によるものです。しかし、ASDが特定の遺伝子や単一の遺伝的パターンによって直接引き継がれるわけではなく、環境要因や遺伝的・環境的要因の相互作用も考慮する必要があります。

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ミネルバクリニックでは、「リスクを知り、未来を制す」というコンセプトの臨床遺伝専門医の院長のもと、東京都港区青山で、自閉症・知的障害・発達障害・ADHDの遺伝子検査を提供しています。自閉症や知的障害の方が血縁者にいらっしゃって、恋愛や結婚に踏み出せない。次のお子さんも自閉症になるのではと心配。漠然と不安を抱くより、リスクをきちんと知り、未来に備えるためのサポートを万全に致します。
当院では世界の先進的特許技術に支えられた高精度、かつ、ご希望に合わせてたくさんの疾患検査を提供してくれる確かな技術力と、信頼にこたえる分析力のある世界一流の検査会社を、遺伝専門医の目で選りすぐりご提供しています。オンライン診療で全国カバーしており、検体は口腔粘膜なので、ご自宅で簡単にとることが可能です。是非ご検討くださいませ。
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プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 (がん薬物療法専門医認定者名簿)、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医(臨床遺伝専門医名簿:東京都)として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

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