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遺伝子異常と染色体異常の違いとは?種類・原因・遺伝するもの/しないもの、先天性と遺伝性の違いと検査を臨床遺伝専門医が解説

目次

仲田洋美 医師

この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

記事の作り方(編集方針)

遺伝子異常は「1つの遺伝子の中のDNAの配列が変わること」、染色体異常は「染色体の数や形(構造)が変わること」です。変化の大きさが違うため、起こる病気も、調べる検査も、親から子へ遺伝するかどうかの考え方も変わります。ダウン症候群のような染色体の数の異常の多くは遺伝しません。一方、遺伝子異常には親から受け継ぐものと、親にはなく子どもで新しく起こるもの(新生突然変異)があります。この記事では、2つの違いを一覧表で示したうえで、種類・原因・遺伝するもの/しないもの・先天性と遺伝性の違い・調べる検査までを、臨床遺伝専門医が解説します。妊娠中で赤ちゃんの検査を考えている方は、東京のNIPT(新型出生前診断)のページもあわせてご覧ください。

⏱️ 30秒でわかる要約

🧬 Q. 遺伝子異常と染色体異常の違いは?

変化の大きさと場所が違います。遺伝子異常は1つの遺伝子のDNA配列の変化、染色体異常は染色体の本数や形の変化で、1回に多くの遺伝子がまとめて影響を受けます。

🧬 Q. 遺伝するのはどっち?

一概には決まりません。ダウン症候群などの数の異常は、多くが遺伝しません。遺伝子異常は、親から受け継ぐものと、子どもで新しく起こる新生突然変異の両方があります。

🧬 Q. 原因は?防げますか?

生まれつきの遺伝子異常や染色体異常には、親から受け継ぐものと、卵子・精子ができるときや受精の前後に偶然新しく起こるものがあります。母親の年齢は染色体の数の異常と、父親の年齢は新生突然変異と関係がありますが、生活の工夫で確実に防ぐ方法はありません。

🧬 Q. どうやって調べますか?

染色体異常は染色体検査やマイクロアレイ検査、遺伝子異常は遺伝子検査で調べます。妊娠中はNIPTでふるい分けをし、陽性なら羊水検査・絨毛検査で確かめます。

この記事でわかること
📖 読了時間:約14分
🧬 遺伝子異常・染色体異常・新生突然変異
★ 臨床遺伝専門医監修
  • ➤違い → 遺伝子1個の配列の変化か、染色体の数・形の変化か
  • ➤種類 → 置換・挿入・欠失・リピート伸長/トリソミー・欠失・転座など
  • ➤遺伝するか → 「先天性=遺伝性」ではない。新生突然変異は両親に変化がなくても起こる
  • ➤検査 → 染色体検査・マイクロアレイ・遺伝子検査・NIPT・確定検査の役割分担

🧬 遺伝子異常と染色体異常の基本情報

項目 内容
遺伝子異常 1つの遺伝子のDNA配列の変化(置換・挿入・欠失・リピート伸長など)。単一遺伝子疾患の原因になる
染色体異常 染色体の数(トリソミーなど)や構造(欠失・重複・転座など)の変化。多くの遺伝子がまとめて影響を受ける
その間にあるもの 微小欠失・微小重複(顕微鏡では見えない小さな染色体の欠け・重なり)。例:22q11.2欠失症候群
遺伝するか 数の異常の多くは遺伝しない。遺伝子異常は親から受け継ぐものと、新しく起こるもの(新生突然変異)がある
主な調べ方 染色体検査(Gバンド法)・マイクロアレイ検査・遺伝子検査。妊娠中はNIPT(スクリーニング)と羊水・絨毛検査(確定検査)
代表的な病気 染色体異常:ダウン症候群・クラインフェルター症候群/遺伝子異常:ハンチントン病・脆弱X症候群

1. 遺伝子異常と染色体異常の違い【一覧表】

遺伝子異常と染色体異常の違いは、「どのくらいの大きさの変化か」にあります。遺伝子異常は1つの遺伝子の中の、数文字から数十文字ほどのDNA配列の変化を指すことが多く、染色体異常は染色体1本の増減や、目で見える大きさの欠け・入れ替わりを指します。MSDマニュアルも、染色体の異常を「数の異常」と「構造の異常」に、遺伝子の異常を「遺伝子のDNAの1つ以上の塩基対の変化」として分けて説明しています[1]。

遺伝子・DNA・染色体の関係

遺伝子は、体をつくるタンパク質などの設計情報を持つ、遺伝の基本単位です。ヒトのゲノムには、タンパク質をつくる遺伝子が約19,900個あるとされ、1つの遺伝子の長さは数百塩基対から200万塩基対を超えるものまでさまざまです[2]。

このDNAが折りたたまれて束になったものが染色体で、通常、核を持つ体細胞には23対・46本の染色体があり、1本の染色体には数百から数千の遺伝子が並んでいます[1]。たとえるなら、染色体は「本」、遺伝子は本の中の「1つの章」、DNAの塩基配列は「文字」です。遺伝子異常は文字の書き間違い、染色体異常は本が1冊多い・ページの束がごっそり抜けている、という違いになります。遺伝子そのものの仕組みは遺伝子とは、染色体については染色体とはで詳しく解説しています。

染色体(46本)本にあたる
▶
遺伝子(約19,900個)章にあたる
▶
DNAの塩基配列文字にあたる

遺伝子異常と染色体異常の比較表

📊 遺伝子異常と染色体異常の違い

項目 遺伝子異常 染色体異常
変化の大きさ 1つの遺伝子の中の配列(数文字〜遺伝子の一部) 染色体1本分、または顕微鏡で見える大きさの部分
影響を受ける遺伝子 基本は1つ 数十〜数百以上がまとめて増減することがある。均衡型転座・逆位では量が変わらない場合もある
主な種類 置換(ミスセンス・ナンセンス)、挿入・欠失(フレームシフト)、リピート伸長など 数の異常(トリソミー・モノソミー)、構造の異常(欠失・重複・転座・逆位)
病気の例 ハンチントン病、脆弱X症候群など(単一遺伝子疾患) ダウン症候群(21トリソミー)、クラインフェルター症候群(47,XXY)など
遺伝するか 親から受け継ぐもの/新しく起こるもの(新生突然変異)の両方 数の異常の多くは遺伝しない。親の均衡型転座から受け継ぐものもある
調べる検査 遺伝子検査(パネル検査・エクソーム検査など) 染色体検査(Gバンド法)、マイクロアレイ検査、FISH法

※検査の区分はMSDマニュアル[1]による。遺伝するかどうかは第4章で詳しく説明します。

境目にある「微小欠失・微小重複」

遺伝子異常と染色体異常は、きれいに2つに分かれるわけではありません。その間にあるのが、顕微鏡では見えないほど小さな染色体の一部の欠け(微小欠失)や重なり(微小重複)です。たとえば22q11.2欠失症候群は、22番染色体の一部がわずかに欠けることで、そこに並ぶ複数の遺伝子がまとめて1コピーになる病気です。染色体の構造の異常でありながら、通常の染色体検査(Gバンド法)では見つけにくく、マイクロアレイ検査などで見つかります[1]。

22q11.2欠失症候群では、先天性心疾患がおよそ半数にみられるほか、子どもの約37%にADHD、25歳を超えた人の約41%に精神病性障害がみられたと報告されています[8]。小さな欠失でも、体と発達の両方に影響が出ることがあります。詳しくは微小欠失症候群とはと22q11.2欠失症候群(ディジョージ症候群)で解説しています。

2. 遺伝子異常とは?種類と「バリアント」という呼び方

遺伝子異常とは、遺伝子をつくるDNAの配列が、ずっと残る形で変わることです。米国国立医学図書館の解説では、これを「遺伝子バリアント」と呼び、遺伝子を構成するDNA配列の恒久的な変化と定義しています[3]。日本語では「遺伝子変異」「遺伝子の変化」ともいいます。

遺伝子異常の種類

DNAはA(アデニン)・T(チミン)・G(グアニン)・C(シトシン)の4種類の塩基の並びで情報を記録しています。遺伝子異常は、その並びがどう変わったかで次のように分けられます。

🧬 遺伝子異常(遺伝子バリアント)の主な種類

種類 何が起こるか
置換(ミスセンス) 1文字が別の文字に変わり、タンパク質のアミノ酸が1つ入れ替わる
置換(ナンセンス) 1文字の変化で途中に「終わり」の合図ができ、タンパク質が短く切れる
挿入・欠失(フレームシフト) タンパク質をつくる配列に、3の倍数ではない数の文字が入ったり抜けたりして、その先の読み取りの区切りがずれる
スプライス部位の変化 遺伝子の必要な部分をつなぎ合わせる目印が変わり、正しい設計図ができない
リピート伸長 同じ短い配列のくり返しが長くなる。例:ハンチントン病のCAGリピート
エクソン単位の欠失・重複 遺伝子の一部(エクソン)がまとめて抜ける・重なる

たとえばハンチントン病は、HTT遺伝子の中のCAGという3文字のくり返しが長くなることで起こります。通常は10〜35回程度のくり返しが、ハンチントン病の人では36回から120回以上になっています[9]。このように、遺伝子異常にはさまざまな形があり、検査の方法によって見つけやすいもの・見つけにくいものがあります。

「異常」があっても病気とは限らない

遺伝子の配列が人と違っていても、それだけで病気になるわけではありません。DNAの配列には一人ひとり違いがあり、多くは健康に影響しません。そのため現在の遺伝医療では、「異常」「変異」という言葉の代わりに、中立的な「バリアント」という言葉を使い、そのバリアントが病気の原因かどうかを、病的(pathogenic)から良性(benign)までの5段階で判定します。判定の考え方は病的バリアントとはで詳しく説明しています。

この記事では検索でよく使われる「遺伝子異常」という言葉を使いますが、遺伝子検査の報告書では「バリアント」と書かれていることが多い、と覚えておくと結果を読むときに役立ちます。

遺伝子異常の病気と遺伝のしかた

1つの遺伝子の異常で起こる病気を単一遺伝子疾患といい、遺伝のしかた(遺伝形式)によって、主に3つに分けられます。

常染色体顕性(優性)遺伝

対になった遺伝子の片方に病的バリアントがあるだけで発症しうる。例:ハンチントン病は、変化した遺伝子が1つあれば発症しうる[9]。

常染色体潜性(劣性)遺伝

両方の遺伝子に病的バリアントがそろうと発症する。片方だけを持つ人は通常は症状がなく「保因者」と呼ばれる。

X連鎖遺伝

X染色体の上にある遺伝子による。X染色体が1本の男性に症状が出やすい。例:脆弱X症候群(FMR1遺伝子)。

遺伝形式の全体像は遺伝形式とは、潜性遺伝は常染色体潜性遺伝、X連鎖はX連鎖遺伝とはにまとめています。

3. 染色体異常とは?数の異常と構造の異常

染色体異常とは、染色体の数か構造(形)が通常と違う状態のことです。MSDマニュアルは、染色体の異常を「染色体の数」と「染色体の構造」に影響するものに分けています[1]。染色体1本には数百から数千の遺伝子があるため、染色体異常では多くの遺伝子の量が一度に変わることがあります。ただし、均衡型転座・逆位では、遺伝物質の量が変わらない場合もあります。

数の異常(トリソミー・モノソミー)

通常2本で1対の染色体が3本になるのがトリソミー、1本になるのがモノソミーです。代表的なのが、21番染色体が3本あるダウン症候群(21トリソミー)で、新生児約700人に1人の割合でみられます[4]。性染色体の数の異常では、X染色体が1本多い47,XXYのクラインフェルター症候群があります[10]。

「ダウン症候群は遺伝子異常ですか?」という質問がありますが、ダウン症候群は遺伝子の配列の書き間違いではなく、21番染色体という「本」が1冊多い状態なので、染色体異常に分類されます。結果として21番染色体の上の遺伝子の量が1.5倍になり、体や発達にさまざまな影響が出ます。トリソミーの種類についてはトリソミーとは、ダウン症候群の全体像はダウン症候群とはで解説しています。

構造の異常(欠失・重複・転座・逆位)

染色体の一部が欠ける(欠失)、重なる(重複)、別の染色体とつながる(転座)、向きが逆になる(逆位)といった変化が構造の異常です。遺伝子の量が変わらない「均衡型」の転座や逆位を持つ人は、本人には症状がないことが多い一方、卵子や精子をつくるときに染色体の量がかたよって、子どもに不均衡な形で伝わることがあります。均衡型の構造異常については均衡型構造異常で詳しく説明しています。

モザイク

体の細胞の一部だけに染色体異常がある状態をモザイクといいます。ダウン症候群でも、21番染色体が3本ある細胞が体の一部の細胞に限られる人がごく少数います[4]。遺伝子異常でも、発生の途中で起こった変化が一部の細胞だけにみられるモザイクがあります[3]。染色体異常の分類の一覧は染色体異常の種類にまとめています。

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4. 遺伝するもの・しないもの|先天性と遺伝性の違い

「遺伝子異常」「染色体異常」と聞くと、親から遺伝するものだと思われがちですが、実際には遺伝しないものも多くあります。ここを整理しておくと、家族にこうした病気の人がいるときに、自分や子どもに関係があるかを考えやすくなります。

「先天性」と「遺伝性」は同じではない

先天性は「生まれたときからある」、遺伝性は「親から子へ受け継がれうる」という意味で、軸が違います。

🧩 先天性と遺伝性の組み合わせ

組み合わせ 例
先天性で、遺伝しないことが多い ダウン症候群(21トリソミー)、クラインフェルター症候群[4][10]
遺伝性で、先天性ではない(大人になって発症) ハンチントン病(多くは30〜40代で発症)[9]
先天性で、遺伝しうる 親から受け継いだ遺伝子異常による病気、親の均衡型転座から伝わった不均衡な染色体異常
遺伝子の変化だが、子どもに伝わらない がん細胞など、体の一部の細胞に後から起こる遺伝子の変化(体細胞バリアント)[3]

生まれつきの病気全般については先天異常とは、遺伝性疾患の分類は遺伝性疾患とはで解説しています。

染色体の数の異常の多くは遺伝しない

ダウン症候群の多くは遺伝ではありません。米国国立医学図書館は「ダウン症候群のほとんどは遺伝しない」と説明しており、21トリソミーやモザイク型は、卵子や精子ができるとき、あるいは受精後まもなく起こる細胞分裂の誤りによるものです[4]。クラインフェルター症候群も遺伝せず、X染色体が1本多くなるのは生殖細胞ができる過程で起こるとされています[10]。

例外は、染色体の一部が別の染色体についた「転座型」のダウン症候群です。症状のない親が均衡型の転座を持っていて、それが子どもに伝わることがあります[4]。そのため、上の子が転座型と診断された場合は、両親の染色体検査が意味を持ちます。

遺伝子異常は「親から受け継ぐ」と「新しく起こる」の2通り

遺伝子異常には、親から子へ受け継がれる「遺伝性(生殖細胞系列)のバリアント」と、人生のどこかで一部の細胞に起こる「後天的(体細胞)のバリアント」があります。後天的なバリアントは、日光の紫外線などの環境要因や、細胞分裂でDNAを写し取るときの誤りで生じ、次の世代には伝わりません[3]。

さらに、子どもにはあるのに両親のどちらにもない遺伝子の変化を新生突然変異(de novo変異)といいます。親の卵子や精子だけに起こった場合と、受精してまもなくの受精卵に起こった場合があります[3]。重度で原因未診断の発達障害がある方を含む4,293家族のエクソーム解析を中心にしたDDD研究(Deciphering Developmental Disorders)では、対象者の42%がタンパク質をつくる領域に病的な新生突然変異を持つと推定されました[6]。両親に症状も遺伝子の変化もなくても、子どもに遺伝子異常による病気が起こることは珍しくないということです。新生突然変異の仕組みは新生突然変異(de novo変異)とはで詳しく解説しています。

両親に症状がなくても起こるもう1つの理由(保因者)

常染色体潜性遺伝の病気では、両親がともに同じ遺伝子の病的バリアントを片方ずつ持つ保因者で、どちらにも症状がないことがふつうです。その場合、子どもが両親から1つずつ受け継ぐと発症します。「家系に誰もいないのに」というケースの多くは、新生突然変異か、この保因者どうしの組み合わせで説明されます。血縁関係のある夫婦(いとこ婚など)で潜性遺伝の病気が起こりやすいのは、同じ祖先から同じバリアントを受け継いでいる可能性が高くなるためです。保因者については保因者とはで説明しています。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「我が子が遺伝子異常だったら」という不安について】

「我が子が遺伝子異常だったら、どうしよう…」と不安になるのは、妊婦として当然の反応です。実際、私も子どもが生まれるまでは「元気に成長してくれているのか?」「障害を抱えていないだろうか?」と不安や心配が尽きませんでした。

この不安を少しでも具体的にするには、「どの種類の変化を心配しているのか」を分けて考えることが大切だと考えています。染色体の数の異常と、遺伝子1つの変化と、その間にある微小欠失では、起こりやすさに関わる要因も、調べる方法も違います。そして、親から受け継ぐものも、誰にでも偶然新しく起こりうるものもあります。「家系にいないから大丈夫」とも、「親のせいで起こった」とも言えない、というのが医学的に正確な答えです。

5. 遺伝子異常・染色体異常の原因|親の年齢との関係と予防

生まれつきの遺伝子異常や染色体異常には、親から受け継ぐものと、新しく起こるものがあります。新しく起こる原因には、DNAをコピーするときの誤りや、細胞分裂で染色体を分配するときの誤りなどがあります[3]。

母親の年齢は「染色体の数の異常」と関係する

MSDマニュアルは、妊娠する人の年齢が高いほど、胎児に染色体が丸ごと1本多い異常が起こる可能性が高くなると説明しています。一方で、父親の年齢が上がっても、染色体異常の可能性はわずかに高くなる程度とされています[1]。

父親の年齢は「新生突然変異」と関係する

遺伝子1つの新しい変化(新生突然変異)は、主に父親側から入ります。アイスランドの親子の全ゲノム解析では、父親の年齢が1歳上がるごとに子どもの新生突然変異は約2個増え、16.5年ごとに倍になると推定されました[7]。父親の年齢と単一遺伝子疾患の関係はNIPTと単一遺伝子疾患|父親の年齢リスクで詳しく説明しています。

👨‍👩‍👧 親の年齢と関係する変化

親 関係する変化 妊娠中に調べる方法の例
母親の年齢 染色体の数の異常(トリソミーなど)[1] NIPT(スクリーニング)→羊水検査・絨毛検査
父親の年齢 遺伝子1つの新生突然変異[7] 単一遺伝子疾患を対象にしたNIPT(一部の病気のみ)

「タバコ・放射線・化学物質」との関係は?

紫外線や化学物質などの環境要因がDNAを傷つけることは事実ですが、その多くは皮膚や肺など体の一部の細胞に後から起こる変化(体細胞バリアント)で、がんの原因として問題になるものです。こうした変化は次の世代には伝わりません[3]。生活の工夫で、赤ちゃんの遺伝子異常や染色体異常を確実に防ぐ方法はありません。起こったときに「何かをしたせい」と考える必要はない、ということでもあります。

💡 「遺伝子異常の頻度」の考え方

遺伝子異常の頻度は、病気ごと・遺伝子ごとに大きく違うため、「遺伝子異常は何人に1人」という1つの数字では表せません。発達の遅れや先天異常のある人では、原因を調べるとマイクロアレイ検査で約15〜20%に微細な欠失・重複が見つかり[5]、エクソーム解析で多くの新生突然変異が見つかっています[6]。

6. 遺伝子異常・染色体異常を調べる検査

染色体異常は染色体検査やマイクロアレイ検査、遺伝子異常は遺伝子検査で調べます。MSDマニュアルも、顕微鏡で見える大きな染色体異常は核型検査(染色体検査)で、小さな染色体異常はマイクロアレイ検査やFISH法で調べ、遺伝子のバリアントは核型検査には写らないため、より特化した遺伝子検査が必要だと説明しています[1]。

🔬 検査ごとにわかること・わからないこと

検査 わかること わからないこと
染色体検査(Gバンド法) 染色体の数の異常、顕微鏡で見える大きさの構造の異常、均衡型転座 微小欠失・微小重複、遺伝子1つの変化
マイクロアレイ検査 数の異常に加え、微小欠失・微小重複 均衡型転座・逆位、遺伝子1つの小さな変化
遺伝子検査(パネル・エクソームなど) 調べた遺伝子の中の置換・挿入・欠失など 調べていない遺伝子、検査法によってはリピート伸長や大きな構造の変化
NIPT(妊娠中) 母体血で、対象とする染色体異常・微小欠失・一部の単一遺伝子疾患の可能性 確定診断はできない。対象外の病気はわからない
羊水検査・絨毛検査(妊娠中) 胎児(絨毛)の細胞で染色体・マイクロアレイなどを調べ、診断を確定する 調べた項目以外のこと

米国の専門家グループの合意声明では、原因のわからない発達の遅れ・知的障害、自閉スペクトラム症、複数の先天異常がある人に対し、マイクロアレイ検査の診断率は15〜20%で、Gバンド法の約3%(ダウン症候群など見た目で分かる染色体症候群を除く)より高いことから、マイクロアレイ検査を最初に行う検査として勧めています[5]。どの検査が合うかは、何を心配しているか(数の異常か、微小欠失か、特定の遺伝子か)で変わります。検査の種類の全体像は遺伝子検査(遺伝学的検査)とはで解説しています。

妊娠中に調べる場合:NIPTから確定検査へ

妊娠中に赤ちゃんの染色体異常や遺伝子異常を調べる方法の一つが、母体の採血だけで行うNIPTでふるい分けをし、陽性なら羊水検査や絨毛検査で確かめる流れです。家族歴や超音波所見、調べたい病気などによっては、NIPTを経ずに確定検査を選ぶこともあります。NIPTは非確定的検査なので、陽性でも確定ではなく、陰性でもすべての病気が否定されるわけではありません。とくに微小欠失・微小重複は、染色体の数の異常より陽性的中率が低めで、項目によって60〜70%程度です。

遺伝カウンセリング何を調べるか決める
▶
NIPT妊娠9週から
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陽性なら確定検査絨毛・羊水検査
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結果の説明臨床遺伝専門医

当院のNIPTは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。陽性の場合は、絨毛検査(妊娠11〜13週)や羊水検査(妊娠15週以降)まで院内で受けられ、主要な検査項目は3日以内、マイクロアレイ検査は2週間ほどで結果が出ます。確定検査の違いは絨毛検査と羊水検査の違い、他院でNIPTが陽性だった方はNIPT陽性後の確定検査をご覧ください。

当院のNIPTで調べられる遺伝子異常・染色体異常の一部

自閉症・発達障害・知的障害の原因の一部は、染色体の微小欠失や単一遺伝子の変化です。当院のNIPTでは、その一部をプランに応じて調べられます。

🧬 当院のNIPTで調べられるもの(自閉症・発達障害・知的障害の原因の一部)

対象 変化の種類 プラン
22q11.2欠失症候群 微小欠失 スタンダードを含む全プラン
16p11.2欠失・重複 微小欠失・微小重複 双子マックス・インペリアル
フェラン・マクダーミッド症候群 微小欠失 インペリアル
レット症候群・ソトス症候群・コルネリア・デ・ランゲ症候群・CHARGE症候群 単一遺伝子の変化(知的障害や発達の遅れを伴うことがある) ダイヤモンド・インペリアル
ピット・ホプキンス症候群・KBG症候群・ルビンシュタイン・テイビ症候群・ドラベ症候群 単一遺伝子の変化(知的障害や発達の遅れを伴うことがある) インペリアル

※自閉症・発達障害・知的障害の原因のすべてが調べられるわけではありません。陰性でも、これらの可能性がなくなるわけではありません。陽性の場合は確定検査で確かめます。料金とプランの詳細はNIPT(新型出生前診断)のページをご覧ください。

自閉症とNIPTの関係は一部の自閉症・発達障害の原因はNIPTでわかるで詳しく解説しています。なお、育てるうえでの大変さは、知的発達の重さだけでは決まりません。自閉スペクトラム症の子の親は、ほかの障害の子の親より子育てのストレスが高く、ダウン症候群の子の親との差が最も大きかったというメタ解析があります[11]。

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ファミリーセーフティ プラス | 微小欠失症候群

生まれた後・大人になってから調べる場合

お子さんに発達の遅れや先天異常があって原因を知りたいとき、あるいは家族に遺伝性の病気の人がいて自分が同じ変化を持っているか知りたいときは、目的に合わせて染色体検査、マイクロアレイ検査、遺伝子検査を選びます。当院では、染色体検査(Gバンド法)、マイクロアレイ染色体検査、発達障害・知的障害の遺伝子検査などを扱っています。検査の一覧は当院の遺伝子検査にまとめています。

常染色体潜性遺伝やX連鎖遺伝の病気が心配な場合は、両親の保因者検査で調べられることがあります。たとえば脆弱X症候群(FMR1遺伝子)はNIPTでは調べられませんが、保因者検査で調べられます。当院では女性787遺伝子・男性714遺伝子などの拡大版保因者スクリーニングのほか、NIPTと同じ日に採血できる夫婦の保因者検査「ファミリーセーフティ プラス」があります(NIPTとセットで受ける検査で、単独では受けられません)。当院の遺伝子検査・NIPT・遺伝カウンセリングは自費診療です。

結果を受け取る前に、遺伝カウンセリングで整理しておきたいこと

遺伝子異常・染色体異常の検査は、結果が本人だけでなく血縁者にも関わります。検査を受ける前に、次のことを確かめておくと、結果が出たあとに迷いにくくなります。

  • 何を心配していて、その検査で何が調べられ、何が調べられないか
  • 見つかった変化が「病的」か「意義不明(VUS)」かで、受け止め方が変わること
  • 陽性・陰性それぞれの場合に、次に何をするか(確定検査、家族の検査など)
  • 結果を家族にどう伝えるか、血縁者の検査が必要になるか
  • 費用と、結果が出るまでの期間

当院では臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、検査の前後に結果の意味を説明しています。全室個室で、90分の受診枠をほかの患者さんと重ならないようにとっています。オンラインの遺伝カウンセリングは料金の事前支払いで受けられます。

よくある質問(FAQ)

Q1. 遺伝子異常と染色体異常の違いは何ですか?

遺伝子異常は1つの遺伝子のDNA配列の変化、染色体異常は染色体の数や構造(形)の変化です。染色体異常では、そこに並ぶ多くの遺伝子がまとめて影響を受けます。その間に、顕微鏡では見えない微小欠失・微小重複があります。

Q2. ダウン症候群やクラインフェルター症候群は遺伝子異常ですか?

どちらも染色体異常です。ダウン症候群は21番染色体が3本ある状態、クラインフェルター症候群はX染色体が1本多い47,XXYの状態で、遺伝子の配列の変化ではなく染色体の数の変化によって起こります。

Q3. 遺伝子異常は遺伝しますか?

親から受け継ぐものと、親にはなく子どもで新しく起こるもの(新生突然変異)の両方があります。また、がんなど体の一部の細胞に後から起こる遺伝子の変化は、子どもには伝わりません。遺伝するかどうかは、どの遺伝子のどんな変化か、遺伝形式は何かで決まります。

Q4. 両親に異常がないのに、子どもに遺伝子異常が起こることはありますか?

あります。主な理由は2つで、1つは子どもで新しく起こる新生突然変異、もう1つは両親がともに症状のない保因者で、子どもが両方から病的バリアントを受け継ぐ場合です。重度で原因未診断の発達障害を対象としたDDD研究では、対象者の42%に病的な新生突然変異があると推定されました。

Q5. 遺伝子異常の原因は何ですか?防ぐことはできますか?

生まれつきの遺伝子異常には、親から受け継ぐものと、卵子や精子ができるときや受精後まもなく、DNAのコピーの誤りなどによって新しく起こるものがあります。父親の年齢が上がると新生突然変異は増えますが、生活の工夫で赤ちゃんの遺伝子異常を確実に防ぐ方法はありません。

Q6. 赤ちゃんの遺伝子異常や染色体異常は、妊娠中にいつわかりますか?

当院のNIPTは妊娠9週から受けられ(妊娠6〜8週は臨床研究)、陽性なら絨毛検査(妊娠11〜13週)か羊水検査(妊娠15週以降)で確かめます。NIPTで調べられるのは対象の病気だけで、すべての遺伝子異常がわかるわけではありません。

Q7. 遺伝子異常や染色体異常の検査はできますか?

できます。当院では、妊娠中のNIPTと院内での確定検査、生まれた後や大人の方の染色体検査・マイクロアレイ検査・遺伝子検査、夫婦の保因者検査を扱っており、臨床遺伝専門医が検査前後の遺伝カウンセリングを行います。いずれも自費診療です。

まとめ

遺伝子異常は1つの遺伝子のDNA配列の変化、染色体異常は染色体の数や構造の変化で、その間に微小欠失・微小重複があります[1]。ダウン症候群などの染色体の数の異常の多くは遺伝せず[4]、遺伝子異常には親から受け継ぐものと、両親になく子どもで新しく起こる新生突然変異があります[3][6]。「先天性」と「遺伝性」は同じ意味ではありません。

母親の年齢は染色体の数の異常と、父親の年齢は新生突然変異と関係しますが[1][7]、生活の工夫で確実に防ぐ方法はありません。調べるときは、心配している変化の種類に合わせて、染色体検査・マイクロアレイ検査・遺伝子検査、妊娠中はNIPTと確定検査を選びます。

🏥 遺伝子異常・染色体異常のご相談

ミネルバクリニック(東京・北青山)では、臨床遺伝専門医が常駐し、遺伝カウンセリングと遺伝子検査を行っています。NIPTは妊娠9週から(6〜8週は臨床研究)受けられ、陽性なら絨毛検査・羊水検査まで院内で受けられます。家族の病気が自分や子どもに関係するか知りたい方、妊娠中の検査を考えている方は、遺伝カウンセリングでご相談ください。

参考文献

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  • [7] Kong A, Frigge ML, Masson G, et al. Rate of de novo mutations and the importance of father’s age to disease risk. Nature. 2012;488(7412):471-475. [DOI: 10.1038/nature11396]
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  • [9] Huntington disease. MedlinePlus Genetics. National Library of Medicine. [MedlinePlus]
  • [10] Klinefelter syndrome. MedlinePlus Genetics. National Library of Medicine. [MedlinePlus]
  • [11] Hayes SA, Watson SL. The impact of parenting stress: a meta-analysis of studies comparing the experience of parenting stress in parents of children with and without autism spectrum disorder. J Autism Dev Disord. 2013;43(3):629-642. [DOI: 10.1007/s10803-012-1604-y]

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プロフィール
仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続け、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、検査結果の数値そのものだけでなく、「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、日本人として異文化の中で生活した経験があります。価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。この経験は現在の診療においても、「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、36週6日で一人を死産した経験があります。その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、家族の未来に関わる重要な意思決定です。年齢や統計だけで判断するのではなく、医学的根拠と心理的支援の両面から、ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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