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自閉症(ASD)・ADHD・アスペルガーを公表した有名人・芸能人15人|女性7名を含む一覧を臨床遺伝専門医が解説

目次

仲田洋美 医師

この記事の監修:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

のべ10万人以上の意思決定に伴走。2025年国際誌『Global Woman Leader』表紙抜擢など、世界基準の出生前診断と遺伝カウンセリングを提供。

📍 クイックナビゲーション

自閉スペクトラム症(ASD)やADHDを自分の言葉で公表した有名人は、日本にも海外にもいます。この記事では、米津玄師さんやイーロン・マスクをはじめ、女性7名を含む15人が、いつ・どこで・何を語ったのかを整理しました。ネット上で「あの人も発達障害では」と噂されている人は、ここには載せていません。本人が語っていないことを他人が診断することはできないからです。その理由も後半でご説明します。

この記事でわかること
📖 読了時間:約19〜20分
📊 約11,700文字
臨床遺伝専門医監修

  • ASD・ADHD・学習症を自ら公表した15人が、いつ・どこで語ったのかの一覧
  • 米津玄師さんが「高機能自閉症」と語った出典と、その言葉の正確な範囲
  • 「アスペルガー症候群」という診断名が今どう扱われているのか
  • 女性が大人になってから気づくことが多い理由
  • 「自分もそうかもしれない」と思ったときの相談先と、遺伝子検査でわかること・わからないこと

自ら公表した15人(女性7名)― 誰が、いつ、どこで語ったのか

まず全体像です。この表に載せたのは、本人がインタビュー・著書・番組・SNSで自分から語った人だけです。噂や、周囲の人が言っただけのものは入れていません。

名前 語られている内容 公表の時期と場
米津玄師 高機能自閉症(現在のASD) 2015年・音楽誌の長編インタビュー
深瀬慧(SEKAI NO OWARI) ADHD・パニック発作での入院 2010年〜・音楽誌インタビュー、本人のSNS
栗原類 ADD/ADHD、読み書きの苦手さ 2015年・テレビ番組、2016年・著書
沖田×華(女性) 学習症・ADHD・アスペルガー症候群 2012年頃〜・コミックエッセイと取材
柳家花緑 ディスレクシア(読み書きの学習症) 2017年・著書
市川拓司 アスペルガー症候群とADHD 2016年・著書
小島慶子(女性) ADHD(41歳で診断) 2018年・ウェブ記事、以後多数の取材
黒柳徹子(女性) 「学習症だったのでは」と自著で言及
※診断の公表ではありません
著書『小さいときから考えてきたこと』
イーロン・マスク アスペルガー症候群 2021年5月8日・米テレビ番組の冒頭
グレタ・トゥーンベリ(女性) アスペルガー症候群 2019年・本人のSNSと英BBCの取材
スーザン・ボイル(女性) アスペルガー症候群(52歳で診断) 2013年12月・英紙インタビュー
パリス・ヒルトン(女性) ADHD 2023年・自伝、2024年・寄稿
マイケル・フェルプス ADHD(9歳ごろ診断) 自伝および複数の取材
ダリル・ハンナ(女性) 子ども時代に自閉症と診断 2013年・米誌インタビュー
ダン・エイクロイド アスペルガー症候群 複数の取材で言及

読み方の注意:同じ「発達障害」でも、ASDとADHDと学習症はまったく別の特性です。表の「語られている内容」は本人が使った言葉に寄せてあり、当院が診断したものではありません。

米津玄師さんは何をどこで語ったのか ― 「高機能自閉症」という言葉の出どころ

検索で最も多く調べられているのが米津玄師さんです。答えを先に書くと、米津さんは音楽誌の長編インタビューで、20歳を過ぎてから高機能自閉症と診断されたと語っています。語られたのは音楽誌『ROCKIN’ON JAPAN』2015年11月号(2015年9月30日発売)の誌面で、自身の半生を語った2万字の巻頭インタビューです。出版社の公式サイトには、この特集の告知と発言の一部が公開されています[1][2]

公式サイトで読める抜粋には、教室で誰とも話さず頭の中の架空の人物と会話していたこと、「俺はずっと、普通の人になりたかった」という言葉などが並びます[1]診断名そのものについての発言は誌面(紙の雑誌)に載っているもので、無料公開部分には含まれていません。ネット上では受診に至った経緯までさらに細かく書かれていることがありますが、確認できる範囲を超えるため、この記事では踏み込みません。

💡 用語解説:高機能自閉症とは

高機能自閉症は、知的発達の遅れをともなわない自閉症を指して使われてきた呼び名です。医学の正式な診断分類では、現在は自閉スペクトラム症(ASD)にまとめられています。

「高機能」という言葉は「症状が軽い」という意味ではありません。知的な遅れがないぶん困りごとが周囲に伝わりにくく、支援につながりにくいという難しさがあります。詳しくは高機能自閉症の解説もご覧ください。

米津さんの音楽の独創性を「自閉症だからこそ」と結びつける説明をよく見かけます。けれども、特性と才能を直結させる語り方には慎重でありたいと考えています。同じ診断を受けている人が全員、創作の才能を持つわけではありません。作品は本人の努力と時間の積み重ねであって、診断名の副産物ではないからです。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「診断がついて楽になった」という言葉の意味】

この記事に登場する方々は、口をそろえて「診断がついて納得した」「ほっとした」と語っています。私が遺伝外来でお会いする成人の方も同じで、長いあいだ「自分の努力が足りないせいだ」と思ってこられた方ほど、名前がついた瞬間に肩の力が抜けます。

診断は、その人を狭い箱に入れるためのものではありません。これまでの経験を説明する言葉を手に入れ、必要な配慮を人に頼めるようになるための道具です。私はそう考えて、外来ではまず「今、何にいちばん困っていますか」からお聞きしています。

日本で公表した7人 ― 深瀬慧さん、栗原類さん、沖田×華さんほか

日本では、音楽・お笑い・出版・放送と幅広い分野の人が公表しています。共通しているのは、「才能の秘密」としてではなく、困っていたことの説明として語っている点です。

深瀬慧さん(SEKAI NO OWARI)― ADHDと、10代の入院

深瀬さんは、高校を1年で中退したあとニューヨークへ留学し、精神的に不安定になって帰国、精神科の閉鎖病棟に入院した経験を早い時期から公にしています[3]。その入院中にADHDと診断されたことを、のちに音楽誌『ROCKIN’ON JAPAN』2012年8月号のインタビューで語りました。バンド名の由来もこの時期の体験にあると本人が説明しています。

深瀬さんはその後、SNSでも「ADHDのことは、できることや長所として話すよう心がけていた」という趣旨の発信をしています。公表するかどうか、どう伝えるかは本人が決めることであり、その加減に迷うのは当然だ、という姿勢がうかがえます。

栗原類さん ― 8歳でのADD診断と、その後の言葉の変化

モデル・俳優の栗原類さんは、2015年にテレビ番組で、8歳のとき在住していたニューヨークでADD(多動が目立たないタイプの注意欠如)と診断されたことを話しました。翌2016年には自伝『発達障害の僕が輝ける場所をみつけられた理由』(KADOKAWA)を出版しています[4]

栗原さんは取材で、「隠していたわけではなく、聞かれなかったから答えなかっただけ」という趣旨を語っています[5]。なお近年はご自身をADHDとして紹介し、記憶の残りにくさや、台本の文字の見え方といった学習面の苦手さについても語っています。診断名の呼び方は時代とともに変わることを示す例でもあります。

沖田×華さん ― 3つの診断を受けた漫画家

『透明なゆりかご』の作者・沖田×華さんは、小学4年生で学習症とADHD、中学でアスペルガー症候群と、3つの診断を受けたことを公表しています[6]。ご本人は取材のなかで、診断は早くついたものの、それを自分のこととして受け入れるまでには10年以上かかったと振り返っています。

聴覚の過敏さ、社交辞令が読み取りにくいこと、そのため気づいたことをメモに残していることなど、日常の工夫も具体的に語られています。看護師として働いていた時期にマルチタスクが難しく仕事を変えた経緯も本人が話しており、特性と職業の相性を考えるうえで参考になります(ASDの人に向く仕事の考え方)。

柳家花緑さん ― 落語家が明かしたディスレクシア

落語家の柳家花緑さんは、2017年の著書でディスレクシア(読み書きに困難がある学習症)であることを公表しました[7]。40歳を過ぎて分かったといい、「飛び続けて疲れていた鳥が、やっと止まり木を得た感覚」と表現しています[8]

言葉を自在に操る職業の人が読み書きに苦労している、というのは意外に思えるかもしれません。しかし学習症は全体の知的発達に遅れがないのに、特定の領域だけがうまくいかないのが特徴です。花緑さんは台本の漢字にすべてルビを振るなどの工夫で対応してきたと語っています。

市川拓司さん ― 40代での診断

『いま、会いにゆきます』の作者・市川拓司さんは、40代でアスペルガー症候群とADHDにほぼ当てはまると診断され、2016年の著書『ぼくが発達障害だからできたこと』(朝日新聞出版)で公表しました[9]。会社勤めが続かなかったこと、19歳のときに起きたパニック発作を長く内臓の病気だと思っていたことなども語っています。

小島慶子さん ― 41歳での診断と、「全部を診断で説明しない」姿勢

元アナウンサーでエッセイストの小島慶子さんは、41歳のときにADHDと診断され、2018年に公表しました。もともと不安障害で通院していて、主治医との対話のなかで診断に至ったという経緯を語っています[10]

この記事でいちばん紹介したいのは、小島さんが主治医から言われたという次の趣旨の言葉です。生まれ持った気質、育った環境、その日の体調などが影響し合って今のあなたがあるのだから、発達障害だけですべては説明できない――これは臨床の現場にいる者として、まったく同感です。

黒柳徹子さん ― 「診断の公表」ではないという線引き

「黒柳徹子 発達障害」と検索する方はとても多いのですが、ここは正確に書きます。黒柳さんは診断を公表したわけではありません。著書『小さいときから考えてきたこと』(新潮社)のなかで、『窓ぎわのトットちゃん』に描いた子ども時代の様子について、学習症の子どもを診ている専門家から見るとその特徴に当てはまると言われた、と本人が書いているのです。

ご自身も「思ってもみなかった」と記しています。つまりこれは本人による「診断名の報告」ではなく、「そう見えるらしい」という言及です。この違いを飛ばして「黒柳徹子は発達障害」と書いてしまうのは、正確ではありません。

海外で公表した7人 ― イーロン・マスク、グレタ・トゥーンベリほか

海外では、公表が大きなニュースとして報じられ、記録が残っているのが特徴です。日付と場がはっきりしているぶん、事実確認がしやすくなっています。

イーロン・マスク ― 生放送の冒頭で語った2021年5月8日

テスラとスペースXのイーロン・マスクは、2021年5月8日に米国の人気コメディ番組『サタデー・ナイト・ライブ』の司会を務めた際、冒頭のあいさつで自分がアスペルガー症候群であると述べました[11]。自分の話し方に抑揚が乏しいことを笑いに変えつつ、視線を合わせないことにも触れています[12]。彼が公の場でこの言葉を使ったのは、このときが初めてだったと報じられています。

グレタ・トゥーンベリ ― 「隠れるためではなく」と書いた投稿

環境活動家のグレタ・トゥーンベリは、容姿や特性を揶揄する声に対して2019年8月にSNSで応じ、アスペルガー症候群であることを「条件が整えば、人と違うことは強みになる」という趣旨の言葉とともに書きました[13]。診断の後ろに隠れるためではなく、「病気」や否定的なものと見る誤解があるからこそ公にしている、とも述べています。

スーザン・ボイル ― 52歳でついた診断(公表は2013年12月)

歌手のスーザン・ボイルは、2013年12月に英紙のインタビューでアスペルガー症候群の診断を明らかにしました(診断そのものは前年)[14]。子どものころは出生時の酸素不足による脳の損傷だと説明されており、その説明は誤りだったと語っています。知能検査の結果は平均より高かったとも報じられました。

よくある誤記に注意:「2012年に公表」と書かれた記事が多くありますが、2012年は診断を受けた年で、公表は2013年12月です。

パリス・ヒルトンとマイケル・フェルプス ― ADHDを語った2人

パリス・ヒルトンは2023年の自伝でADHDについて率直に書き、2024年には雑誌への寄稿で「エネルギーがありすぎる、気が散る、しゃべりすぎると言われ続けた」という子ども時代を振り返っています[15]。水泳のマイケル・フェルプスは9歳ごろにADHDと診断され、自伝で「じっとしていられず、一つのことに集中するのが難しかった」と書いています[15]

この2人に共通するのは、本人が困っていた具体的な場面を語っていることです。「ADHDだから成功した」という単純な話ではなく、環境が合ったこと、支えた人がいたことが繰り返し語られています。

ダリル・ハンナとダン・エイクロイド ― 公表が問い合わせを増やす

俳優のダリル・ハンナは、子どものころに自閉症と診断されていたことを2013年に米誌へ明かしました[16]。俳優のダン・エイクロイドも、1980年代にアスペルガー症候群と診断されたことを繰り返し語っています[11]

著名人の公表があると、支援団体には「自分もそうかもしれない。どこで診てもらえますか」という問い合わせが増えると報じられています[16]。とくに30代・40代・50代からの相談が増えるといい、公表が持つ意味の大きさがうかがえます。

\ 「自分もそうかもしれない」と感じたら、臨床遺伝専門医に直接ご相談いただけます /

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自閉症遺伝子検査のページもあわせてご覧ください

「アスペルガー症候群」は今どう扱われているのか

この記事の登場人物の多くが「アスペルガー症候群」という言葉を使っています。結論から書くと、アスペルガー症候群は現在、独立した診断名としては使われていません。国際的な診断基準の改訂により、自閉症・広汎性発達障害などとまとめて自閉スペクトラム症(ASD)という一つの名前に整理されました[17]

とはいえ、過去にその診断名で説明を受けた人が、その言葉を使い続けるのは自然なことです。マスクもグレタもボイルも、公表の場では「アスペルガー」と言っています。呼び名が古いことと、その人の経験が古いことは別の話です。この記事でも、本人が使った言葉はそのまま残しました。

🔬 用語解説:呼び名の対応表

アスペルガー症候群・高機能自閉症・自閉症・広汎性発達障害…いずれも現在は自閉スペクトラム症(ASD)に含まれます。

注意欠陥多動性障害…現在の日本語表記は注意欠如多動症(ADHD)です。

学習障害(LD)…現在は限局性学習症と呼ばれます。読み・書き・計算のうち特定のものだけが著しく苦手になる状態で、ディスレクシアは読み書きのタイプです。高機能自閉症とアスペルガー症候群の違いもご覧ください。

ASDとADHDは重なる ― 「発達障害=ADHD」ではありません

この記事の一覧を見ると、1人が複数の診断名を挙げていることに気づかれると思います。沖田×華さんは3つ、市川拓司さんは2つ、栗原類さんも学習面の苦手さに触れています。これは例外ではありません。

発達障害は、ASD・ADHD・限局性学習症などを含む「神経発達症」というグループの総称で、これらは互いに重なり合うことが珍しくありません[17]。「発達障害(ADHD)」という書き方をときどき見かけますが、ADHDは発達障害の一部であって、同義ではありません。

💡 用語解説:3つの特性のちがい

ASD(自閉スペクトラム症)…対人関係・コミュニケーションの独特さと、こだわりや感覚の敏感さ/鈍さが中心。

ADHD(注意欠如多動症)…不注意、多動、衝動性が中心。多動が目立たないタイプもあります。

限局性学習症…全体の知的発達に遅れがないのに、読む・書く・計算するなど特定の学習だけが著しく困難。それぞれの詳しい特徴は自閉症スペクトラム(ASD)の特徴と原因・接し方でも解説しています。

「発達障害の人は人口の10%」といった数字がよく引用されますが、根拠を確かめておく必要があります。日本で広く知られているのは文部科学省が2022年に公表した調査で、小中学校の通常学級に在籍する児童生徒の8.8%、高校では2.2%が「学習面または行動面で著しい困難を示す」とされました[18]

この8.8%の読み方:これは医師の診断数ではなく、学級担任らが質問票に回答した結果の推計値です。国が「小中学生の8.8%が発達障害」と発表したわけではありません。数字を引用するときは、誰が・何を数えたのかまで確認してください。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「〇%いるから大丈夫」と言いたくない理由】

「発達障害の人は10人に1人いるのだから落ち込まなくていい」という励まし方があります。気持ちは分かるのですが、私はこの言い方をしません。数が多いことは、その人の困りごとが軽いことを意味しないからです。

大切なのは人数ではなく、その方が今どこで、どんな場面で行き詰まっているかです。数字は社会が支援を用意するための材料であって、個人を慰めるための道具ではない。外来ではいつもそう思いながらお話を伺っています。

女性が大人になってから気づくことが多いのはなぜか

この記事の15人のうち7人が女性ですが、公表した年齢に目を向けると違いが見えてきます。小島慶子さんは41歳、スーザン・ボイルは52歳で診断を受けています。市川拓司さんや柳家花緑さんのように男性でも成人後に分かる人はいますが、女性ではとくに「子どものころは見過ごされていた」というケースが目立ちます。

背景の一つとして説明されるのが、カモフラージュと呼ばれる振る舞いです。周囲の会話や表情を観察して真似る、困っていても平気なふりをする、といった方法で集団に合わせ続けるため、外からは困りごとが見えなくなります。うまくいっているように見えても、本人は強い疲労を抱えていることが少なくありません。

さらに、不安症状や気分の落ち込み、摂食の問題といった二次的な不調のほうが先に受診のきっかけになることがあります。小島さんも、先に不安障害で通院していて、その診療の流れのなかでADHDの診断に至ったと語っています[10]「うまくやれているように見える」ことは、困っていないことの証明にはならないのです。

公表していない人を「あの人も発達障害では」と書かない理由

有名人と発達障害を扱う記事の多くは、公表した人と、噂されているだけの人を並べて紹介しています。当院はそれをしません。理由は3つあります。

1つめ。診断は、本人を直接診なければできません。ASDもADHDも、生育歴の聞き取り、行動の観察、複数の場面での困りごとの確認を積み重ねて判断するものです。テレビの受け答えや作品の雰囲気から決められるものではありません。

2つめ。見た目や顔つきからも判定できません。顔の形態と自閉症の関連を調べた研究は実際に存在しますが、個人の診断に使えるレベルには達していません。顔写真から自閉症を判定したとする人工知能の論文が、その後に撤回された例もあります。詳しくは自閉症(ASD)・発達障害は顔つきでわかる?でまとめています。

3つめ。本人の受け止め方は一つではないからです。俳優のアンソニー・ホプキンスは、家族から「アスペルガーではないか」と言われた経験を語りつつ、2025年11月に公開された英紙のインタビューでは「自分はそうは思わない」「ラベルには興味がない」という趣旨を述べています[19]。過去に公表したと報じられた人が、後年こう語ることもある。だからこそ、他人が代わりに決めるべきではないのです。

この記事の線引き:本人が自分の言葉で語ったことだけを、語られた範囲で書く。憶測を「らしい」でつなげない。それが医療機関が有名人の話題を扱うときの最低限だと考えています。

「自分もそうかもしれない」と思ったら ― 相談先と、遺伝子検査でわかること

ここまで読んで思い当たることがあった方へ。大人が相談できる窓口は、大きく3つあります。

📌 大人の相談先
  • 精神科・心療内科:大人の発達障害の診断を行っています。受診前に「成人の発達障害を診ているか」を電話で確認すると確実です
  • 発達障害者支援センター:各都道府県・指定都市に設置された公的な相談窓口。診断の有無にかかわらず相談できます[20]
  • 発達障害ナビポータル:国の機関が運営する情報サイト。成人期の解説もあります[17]

当院は臨床遺伝専門医が運営する遺伝子診療のクリニックです。ASDやADHDの診断そのものは精神科・心療内科の領域であり、当院が行うのは自閉症遺伝子検査と、その結果をご本人・ご家族と一緒に読み解く遺伝カウンセリングです。

ここは誤解の多いところなので、はっきり書きます。遺伝子検査で「あなたはASDです」と診断が確定することはありません。ASDやADHDは多くの要因が関わる状態で、単一の遺伝子で決まるものではないからです。検査で分かるのは、知的発達症や身体的な特徴をともなう場合に、その背景となる遺伝学的な要因が見つかることがある、という範囲にとどまります(発達障害・学習障害・知的障害遺伝子検査ASD患者に対する遺伝子検査の現状)。

🔬 遺伝子検査でわかること・わからないこと

わかる可能性があること…背景に特定の症候群や染色体の変化があるかどうか。ごきょうだいや次のお子さんの再発リスクを考える材料。

わからないこと…ASD・ADHDそのものの診断、将来どの程度の困りごとが出るか、治療方針。自閉症に関わる遺伝子とは親から遺伝する確率ADHDは子どもに遺伝する?もご覧ください。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【検査を勧めるより先に、聞きたいこと】

「有名人の記事を読んで、自分もそうかもしれないと思った」というご相談は珍しくありません。そのとき私がまずお尋ねするのは、検査の希望ではなく「何が分かれば、あなたの明日が少し楽になりますか」です。答えが「職場での配慮を頼みたい」なら、必要なのは遺伝子検査ではなく診断書かもしれません。

検査は目的があってはじめて意味を持ちます。当院は不安をあおって検査へ誘導することはしません。必要がなければ「今回は必要ありません」とお伝えするのも、専門医の仕事だと思っています。

まとめ

📌 重要ポイントのまとめ
  • 15人(女性7名):米津玄師さんは2015年の音楽誌インタビューで高機能自閉症と語り、イーロン・マスクは2021年5月8日の生放送でアスペルガー症候群と述べた
  • 黒柳徹子さん:診断の公表ではなく、自著で「学習症に当てはまると言われた」と書いている段階
  • 呼び名:アスペルガー症候群は現在ASDに統合。ADHDは発達障害の一部であって同義ではない
  • 女性:カモフラージュや二次的な不調が先に立ち、成人後に気づくことが多い
  • 推測しない:診断は本人を診なければできず、顔つきや作品からは分からない
  • 相談先:大人は精神科・心療内科、発達障害者支援センターへ。遺伝子検査でASD・ADHDの診断は確定しない

15人に共通しているのは、才能の話より先に「分からなくて苦しかった時期」が語られていることでした。名前がついたことで、自分を責めるのをやめられた――そのことが、いま同じ場所にいる方への一番のメッセージだと思います。

よくある質問(FAQ)

Q1. 発達障害を公表している有名人にはどんな人がいますか?

日本では米津玄師さん、深瀬慧さん、栗原類さん、沖田×華さん、柳家花緑さん、市川拓司さん、小島慶子さんが自ら語っています。海外ではイーロン・マスク、グレタ・トゥーンベリ、スーザン・ボイル、パリス・ヒルトン、マイケル・フェルプス、ダリル・ハンナ、ダン・エイクロイドが公表しています。いずれも本人がインタビュー・著書・番組・SNSで話した内容です。

Q2. 米津玄師さんは発達障害を公表しているのですか?

はい。『ROCKIN'ON JAPAN』2015年11月号の巻頭インタビューで、20歳を過ぎてから高機能自閉症と診断されたと語っています。高機能自閉症は現在の診断分類では自閉スペクトラム症(ASD)に含まれます。受診の詳しい経緯など、一次情報で確認できない内容は当院では記載していません。

Q3. アスペルガー症候群を公表した有名人は誰ですか?

イーロン・マスク、グレタ・トゥーンベリ、スーザン・ボイル、ダン・エイクロイド、日本では市川拓司さんと沖田×華さんが、この診断名で語っています。ただしアスペルガー症候群は現在、独立した診断名としては使われておらず、自閉スペクトラム症(ASD)に統合されています。本人が過去に受けた説明の言葉として使われている点にご注意ください。

Q4. ADHDを公表した有名人は誰ですか?

日本では深瀬慧さん、栗原類さん、小島慶子さん、沖田×華さん、市川拓司さんが挙げられます。海外ではパリス・ヒルトンとマイケル・フェルプスが公表しています。ADHDは不注意・多動・衝動性を中心とする特性で、多動が目立たないタイプもあります。

Q5. 発達障害を公表した女性の有名人は?

この記事では7名を紹介しています。沖田×華さん、小島慶子さん、黒柳徹子さん(自著での言及)、グレタ・トゥーンベリ、スーザン・ボイル、パリス・ヒルトン、ダリル・ハンナです。小島さんは41歳、ボイルは52歳と、成人後に診断を受けた方が目立ちます。

Q6. 黒柳徹子さんは発達障害と診断されたのですか?

診断を公表したわけではありません。著書『小さいときから考えてきたこと』のなかで、『窓ぎわのトットちゃん』に描いた子ども時代について、学習症の子どもを診ている専門家から見ると当てはまると言われた、と書いています。本人も「思ってもみなかった」と記しており、診断名の報告とは区別して読む必要があります。

Q7. ASDとADHDを両方持つことはありますか?

あります。発達障害はASD・ADHD・限局性学習症などを含む総称で、これらは互いに重なり合うことが珍しくありません。この記事でも、沖田×華さんは3つ、市川拓司さんは2つの診断を挙げています。「発達障害=ADHD」という書き方は正確ではありません。

Q8. 公表していない有名人が「発達障害では」と言われているのはなぜですか?

話し方や独特の作風、こだわりの強さといった印象から結びつけられているだけで、医学的な根拠はありません。診断は生育歴の聞き取りや行動の観察を重ねて本人を直接診なければできず、映像や作品から判断することはできません。当院は本人が語っていない方については書かない方針です。

Q9. 発達障害は顔つきや見た目でわかりますか?

わかりません。顔の形態と自閉症の関連を調べた研究はありますが、集団としての傾向を扱うもので、個人の診断に使えるレベルには達していません。顔写真から自閉症を判定したとする人工知能の論文が後に撤回された例もあります。見た目で判断しようとしないことが大切です。

Q10. 大人になってから発達障害かもしれないと思ったら、どこに相談すればよいですか?

成人の発達障害を診ている精神科・心療内科が診断の窓口です。診断の有無にかかわらず相談できる公的な窓口として、各都道府県・指定都市の発達障害者支援センターもあります。なお遺伝子検査でASDやADHDの診断が確定することはありません。検査で分かるのは、背景に特定の症候群や染色体の変化があるかどうかという範囲です。

🏥 ミネルバクリニックへのご相談

ご自身やご家族のことで気がかりがある方は、臨床遺伝専門医が運営するミネルバクリニックへ、どうぞお気軽にご相談ください。検査を受けるかどうかを含めて、中立的にご説明します。

🏥 大人になってからのご相談も承ります
お電話は 03-3478-3768
✓ 臨床遺伝専門医が運営し、結果説明まで一貫して対応
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✓ 診断は精神科・心療内科の領域であることも率直にお伝えします
✓ ご家族・ごきょうだいの再発リスクのご相談にも対応します

関連記事

参考文献

  1. rockinon.com「米津玄師、衝撃の半生を語る――絶望の長いトンネルを抜け、「今」へ」(2015年9月30日/『ROCKIN’ON JAPAN』2015年11月号 巻頭2万字インタビューの発言の一部を公開。診断名に関する発言は誌面掲載分)[記事]
  2. rockinon.com「「僕はずっと、普通の人になりたかった」――米津玄師、その壮絶な半生を語る2万字インタヴュー」(2015年10月1日/同号の紹介記事)[記事]
  3. bounce/TOWER RECORDS ONLINE「世界の終わり『EARTH』INTERVIEW(1)――病気と、強い薬と、閉鎖された病棟」(2010年3月31日)[記事]
  4. KADOKAWA プレスリリース「『発達障害』であることを告白した栗原類。『発達障害の僕が輝ける場所をみつけられた理由』発売」[公式発表]
  5. LITALICO発達ナビ「モデル・栗原類、『発達障害(ADD)って、隠してたつもりはなかったんですけど笑』」[インタビュー]
  6. LITALICO発達ナビ「トリプル発達障害漫画家、沖田×華さん取材。ハイパーADHDだった小学生時代!?」[インタビュー]
  7. 東京すくすく(東京新聞)「学習障害を公表した落語家 柳家花緑さん 祖父の教え『あるがまま』で楽になれた」[記事]
  8. 幻冬舎plus「落語家の僕が『発達障害』を語る理由 柳家花緑」[著書抜粋]
  9. LITALICO発達ナビ「『間違ってる!』と言われ続けたぼくが、偏りを”個性”に出来た理由ー作家・市川拓司さんインタビュー」[インタビュー]
  10. 大人の発達障害ナビ(武田薬品工業)「当事者インタビュー(ADHD) 小島慶子さん」[インタビュー]
  11. Forbes「Elon Musk Reveals He Has Asperger’s On ‘Saturday Night Live’」(2021年5月9日/ダン・エイクロイドの言及を含む)[記事]
  12. NPR「Elon Musk Leans On Elon-isms As ‘Saturday Night Live’ Host」(2021年5月9日)[記事]
  13. CBC News「Winnipeg activist with autism ‘really inspired’ by Greta Thunberg」(2019年9月/トゥーンベリ本人がSNSで「superpower」と書いたことに言及)[記事]
  14. Disability Scoop「Susan Boyle Reveals Asperger’s Diagnosis」(2013年12月9日)[記事]
  15. TODAY「Celebrities who have opened up about their ADHD diagnoses」(パリス・ヒルトン、マイケル・フェルプスほか)[記事]
  16. Child Mind Institute「Susan Boyle Reveals Her Autism」(ダリル・ハンナの公表と、公表後に支援団体への相談が増えることに言及)[記事]
  17. 発達障害ナビポータル(国立障害者リハビリテーションセンター・国立精神・神経医療研究センターほか)「自閉スペクトラム症」[公的情報]
  18. 文部科学省「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果(令和4年)について」(2022年12月13日公表。小中学校8.8%・高等学校2.2%。学級担任等の回答による推計値で、医学的診断ではない)[公的資料]
  19. PEOPLE「Anthony Hopkins Says His Wife Thinks He May Have Autism — but He’s ‘Cynical’ About Diagnoses」(2025年11月2日/2025年11月1日付 The Sunday Times インタビューの報道)[記事]
  20. 国立障害者リハビリテーションセンター「発達障害者支援センター・一覧」[公的情報]

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仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、
臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。
のべ10万人以上のご家族の意思決定と向き合ってきた臨床遺伝専門医です。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、
検査結果の数値そのものだけでなく、
「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、
一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、
日本人として異文化の中で生活した経験があります。
価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。
この経験は現在の診療においても、
「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、
36週6日で一人を死産した経験があります。
その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、
そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。
現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、
出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、
家族の未来に関わる重要な意思決定です。
年齢や統計だけで判断するのではなく、
医学的根拠と心理的支援の両面から、
ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/
日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。
2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け
複数の海外メディア・専門誌で特集掲載
されました。

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