目次
ADHDは子どもに遺伝する可能性があります。
というのも、近年の研究で、ADHDは遺伝要因と環境要因が原因で発症することがわかったからです。
そこでこの記事では、以下の内容をお伝えします。
- 遺伝する確率とその原因
- 代表的な特徴
- 検査・診断・治療
子どものADHDは早期発見・早期治療をして症状をコントロールすることが重要です。一番身近な存在であるご両親がADHDについて正しく学び、早めに対処できるようになりましょう。
ADHD(注意欠如・多動性障害)が遺伝する確率は?
パートナーにADHD気質があると、子どもにも遺伝するのではないかと不安になりますよね。
ADHDの遺伝については様々な論争がありますが、最近の研究でご両親のどちらか一方でもADHDなら、遺伝する確率が高いことがわかってきました。
そこでこの章では、ADHDの遺伝について以下の内容をお伝えします。
- 両親からADHDが遺伝する確率
- 兄弟でADHDが再現する確率
「我が子がADHDだったらどうしよう…」と不安になっている方は、最初にADHDと遺伝の関係について正しく学ぶことから始めましょう。
両親からの遺伝率
ADHDの遺伝に関しては、完全に解明されているわけではありません。
しかし、最近の研究では親から子どもへのADHDの遺伝率は「約70%」であることがわかっています。つまり、ご両親のどちらか一方、もしくはどちらもADHDであった場合は、お子様もADHDを発症する確率が非常に高いことになります。
参考文献:Genetics of ADHD: What Should the Clinician Know?
ただし、ADHDは出生後の家庭・育児環境などの環境因子も影響するため、一概にご両親から遺伝したと考えるのは危険です。また、ご両親にADHDがない場合でも発症することはあるため、発症が予測しづらい難点もあります。
ADHDの遺伝率ばかりに目が行きがちですが、重要なのは発症した時にどのように対処するかを知ることです。
兄弟・姉妹での遺伝率
兄弟から遺伝することはありません。あくまでも、遺伝物質はご両親からお子さんに受け継がれるものです。
兄弟間でADHDで同じ症状がでることは遺伝ではなく「再現」と言います。兄弟間の再現率についても確実な研究データが出ているわけではありません。
ただし、2018年に出版された「精神経誌」によると、ADHD の遺伝率について以下の研究データが報告されています。
遺伝率とは,ある形質の発現に遺伝要因がどのくらい関与しているかという割合であるが,一般的に一卵性双生児(ゲノムが 100%近く一致)と二卵性双生児(ゲノムが 50%近く一致)の診断一致率から求められることが多い.ADHDについてもこれまでさまざまな形で遺伝率について報告されてきた.児童思春期の ADHD の遺伝率としては 20 の双生児研究から、76%(60〜90%)という結果が示されている.一方で成人の ADHD の遺伝率は30〜40%と低く報告されている.
引用文献:J-Stage/注意欠如・多動症発症のエピジェネティクス仮説―成人期発症と児童期発症との違いの解明に向けて― P1019
つまり、兄弟間でのADHDの遺伝にある程度の相関関係が立証されたのです。ただし、両親からの遺伝でも話した通り、ご両親や他の兄弟がADHDではない場合でも、ADHDが発症する可能性は十分あります。
ADHDを疑うご兄弟がいるなら遺伝した可能性も考えて、一度専門の病院を受診してみるのも良いでしょう。
ADHDとは?
ADHD(注意欠如・多動性障害:Attention-Deficit Hyperactivity Disorder)とは、不注意や多動・衝動行動を特徴とする神経発達障害の一種です。神経発達障害とは、就学前の子どもに見られる「対人関係機能」「社会的機能」「学業能力」を特徴とする障害です。
ADHDは「2〜3歳」で発症(症状が目立つ)し、厚生労働省によると学童期の子どもの「約3〜7%」に見られることもわかっています。
また男女別に見ると、男児の発症率は女児に比べて「約2〜9倍」とも言われ、圧倒的に男児に多い発達障害であることも確認されているのです。
では、ADHDの基礎知識について詳しく解説します。
参考資料:厚生労働省 e-ヘルスネット/ADHD(注意欠如・多動症)の診断と治療
ADHDが遺伝する原因
ADHDの遺伝の原因は、以下の2つと考えられています。
- 遺伝要因
- 環境要因
遺伝要因とは、胎児期に脳が成熟する過程で何らかの障害を受けて発症するというものです。その結果、行動コントロールが難しいADHDが発症します。
近年の研究で、行動をコントロールするのは脳の「前頭葉」であると分かってきました。例えば、集中して一つのことに取り組んだり、自分の行動を制御したりするなどが挙げられます。
つまり、胎児期に脳の前頭葉の成熟が偏ることが遺伝要因と考えられます。
次に環境要因とは、 妊娠中の母親の行動や出生後の生育環境に影響された結果、ADHDが発症するというものです。
具体的には、以下の要因が考えられます。
- 胎生期における中毒性物質への曝露
- 出産時の頭部外傷
- 妊娠中のお母さんの喫煙・飲酒習慣
- 家庭の社会経済的状況
また、遺伝要因がある子どもは前頭葉の成熟に偏りがあり、他の子どもと比べて五感が敏感です。そのため、家庭・育児環境が少なからず影響を及ぼすと考えられます。
つまりADHDは出生前後の要因により発症する発達障害と考えられます。
参考資料:J-Stage/注意欠陥多動性障害の疫学,治療と予防(吉益 光一, 山下 洋, 清原 千香子, 宮下 和久)
ADHDの3つのタイプ
ADHDは以下の3つのタイプに分類されます。
- 不注意優勢型
- 多動性-衝動性優勢型
- 混合型
不注意優勢型とは多動や衝動行動は少ないものの、初歩的なミスが多く不注意が目立つタイプのADHDです。「忘れ物が多い」「周りからの刺激に影響を受けやすい」などの特徴があり、おっちょこちょいな性格というイメージをもたれやすいでしょう。
多動性-衝動性優勢型とは不注意優勢型と逆で、不注意でミスをすることは少ないものの、多動や衝動行動が多く、突発的な動きが目立ちます。「落ち着きがない」「計画的な行動ができない」などの特徴があり、集団行動が苦手です。
最後に混合型とは「不注意優勢型」と「多動性-衝動性優勢型」のミックスタイプです。不注意・多動・衝動行動すべてが目立ち、どちらのタイプとも分類しづらい特徴があります。
ただし、ADHDではない子どもでも同じような症状は見られます。そこでADHDとそうではないお子様を見分けるために、長期的な症状や日常生活への支障の具合などを観察する必要があるでしょう。
ADHDとASD(自閉スペクトラム症)との違い
ADHDとASDの違いは、対人コミュニケーション能力があるかどうかです。
ADHDは前頭葉(前葉前野)の障害であるため、主に行動に関する支障が伴います。そのため、行動自体で相手を不快にすることはあっても、対人コミュニケーション能力に問題はないため、人間関係は比較的良好に築けます。
一方のASD(自閉症スペクトラム)は、脳の下前頭回の機能異常で発症する発達障害です。下前頭回は、相手の気持ちや意図した内容を理解するのに重要な器官です。ASDで下前頭回の発達が偏ると、相手の気持ちを汲んだコミュニケーションができません。
一方でADHDのような日常生活に支障が出る不注意や衝動行動をすることはないため、障害が目立ちにくく、発見に遅れる特徴があります。
つまり、ADHDは「行動」、ASDは「コミュニケーション」で症状が現れる発達障害と分類できるのです。
なお、ASD(自閉スペクトラム症)については「診断テスト|子どものASD(自閉症スペクトラム)の特徴と関わる時の5つのコツ」の記事で詳しく解説しています。子どもの発達障害を疑っている方は、ぜひ参考にしてみてください。
ADHDの合併症
ADHDの代表的な合併症は、以下のとおりです。
- ASD(自閉症スペクトラム)
- LD(学習障害)
- うつ病
- 双極性障害
- 不安症(不安障害)
- 睡眠障害
ADHDは精神疾患を合併しやすい発達障害と言われています。
なぜならADHDの主症状と合併する精神疾患が似ているからです。
また、幼少期に発症するADHDは症状があってもキャラクターや個性として認知されることが多く、発見が遅れる特徴があります。受診や治療が遅れ精神疾患を発症してしまうのです。
だからこそADHDを診断する時は、精神疾患が合併していないかも視野に入れておく必要があります。精神疾患がADHDの症状を助長させるため、合併症も含めて治療の優先順位が決められます。
お子様が抱えている悩みや苦しみの根本的な原因を明らかにして、最短で症状をコントロールするためには、これらの視点を持って診断に当たる必要があるでしょう。
子どものADHD|代表的な4つの特徴(性格)
子どものADHDは発見が遅れる傾向にあります。
なぜなら、症状が顕在化していても子どものうちは個性やキャラクターとして成立することが多いからです。
一方で親としては「1日でも早くADHDの発見と治療を行い、子どもを救いたい」と考えるでしょう。
そこでこの章では、子どものADHDの代表的な特徴を4つ紹介します。
- ・特徴①:長時間一つのことに集中できない
- ・特徴②:初歩的なミスが多い
- ・特徴③:計画性がない
- ・特徴④:順番が待てない
代表的な特徴を把握しておくだけもで、子どものADHDの早期発見・早期治療に役立てられます。
特徴①:長時間一つのことに集中できない
ADHDの子どもは、長時間一つのことに集中して取り組めません。
なぜなら、周りからの刺激に過敏に反応して気が散るからです。
例えば、砂場遊びしている最中に横でブランコの音が聞こえたとします。ADHDの子どもはすぐに砂遊びを中止してブランコへ向かいますが、視界にボールが横切ればブランコのことは忘れてボールを追っかけているでしょう。
このように周りの刺激に敏感であるが故に、一つのことに集中して取り組めません。
ただし、裏を返せば「刺激に対して常にアンテナを張っている」ことであり、様々なことに興味を持って取り組める強みでもあります。ADHDによる症状をマイナスと捉えず、その子の強みとして伸ばす関わりもご両親には必要になります。
特徴②:初歩的なミスが多い
不注意による初歩的なミスが多いのもADHDの特徴の一つです。
例えば、学校のテストで見直しをしていれば気づけるような初歩的なミスが目立ったり、毎日同じものを忘れたりするなどの症状が考えられます。
他にも幼児なら遊びに夢中になり、周りの子どもと何度もぶつかるなどが考えられます。また、いつも同じところでつまずいて転ぶなどの症状があれば、ADHDの可能性が疑われるでしょう。
ADHDの子どもは細かい部分へ注意を払ったり、物事を習慣的にこなしたりするのが苦手なのです。
特徴③:計画性がない
衝動的な行動をするADHDの子どもは、計画的な行動が難しい特徴があります。
そのため、スケジュール通りに物事をこなすことができなかったり、周囲との協調性を取れなかったりするでしょう。また、これらが原因で周りと人間関係を上手く築けないケースもあります。
ただし、衝動行動があることは悪いことばかりではありません。興味のあることに対してフットワークが軽く、常に周りの刺激に敏感なアンテナを張れる証拠です。
そして計画性がないことを問題視するなら、周りの大人たちがスケジュール管理をすることで症状の改善が見込めます。詳しくはこの記事の「ADHDの子どもと上手く関わる3つのコツ」で解説しているので、ぜひご覧ください。
特徴④:順番が待てない
ADHDの子どもは、じっとして順番を待つのが苦手です。
待ち時間が長ければ長いほど待てません。待っている間は周りからの刺激に意識散漫になり、その場でじっとしておくのが難しいでしょう。
そこで、待ち時間に趣味や興味のあることをさせて気を逸らせてあげると良いでしょう。例えば、病院の待ち時間に大好きな本を持参して読ませてあげるなどの方法が考えられます。
また、意味も泣くのを待つのは私たちADHDではない人にとっても苦痛です。待った先にどのようなメリットがあるかを伝えると、待つためのモチベーションにもなります。
参考資料:公益社団法人 日本精神神経学会/今村明先生に「ADHD」を訊く
ADHDを検査・診断
子どものADHDを検査・診断をしてもらいたくても、何科を受診すればいいか悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
そこでこの章では「受診すべき診療科と検査内容」「検査・診断にかかる費用」について解説します。
受診すべき診療科や検査の具体的なイメージを持ち、安心して受診するためにも、一緒に学んでいきましょう。
受診すべき診療科と検査内容
子どものADHDについて相談したいなら、以下の診療科を受診しましょう。
- 小児科
- 小児精神科
- 発達外来
この他にも学童期なら「精神科」や「心療内科」を受診しても良いでしょう。
ADHDを診断するための検査は、以下のとおりです。
- 問診
- 行動観察
- 心理検査
ただし、ADHDをはじめとする発達障害の診断には、単独で実施できる医学的検査がありません。そのため、これらの検査以外にも、医師の経験やご両親からの問診で得られる情報をもとに診断することも知っておきましょう。
問診では「生育歴」や「既往歴」「普段の生活状況」などが聞かれます。近年の研究でADHDは遺伝要因以外にも環境要因(生育歴など)が影響するとわかっています。その子の生活状況を把握して、ADHDの発症に影響する因子がないかを探ります。
また、行動観察や心理検査で「ADHDの症状や傾向」「他の発達障害が合併していないか」の観察を行います。特にADHDの子どもはASD(自閉症スペクトラム)が合併していることがあるため、診断の際は慎重に観察する必要があるでしょう。
これらの検査結果から総合的にADHDの診断を行います。また、受診した日の状況やコンディションによっては診断ができないこともあるため、何度か通院が必要になることもあるでしょう。
検査・診断にかかる費用
検査・診断にかかる費用は「約1万円」です。
ただし、症状の程度によっては保険適応外(自由診療)の検査が必要になるため、1万円よりも高いことがあります。保険適応と保険適応外の検査一覧については、以下の表をご覧ください。
保険適応 | 保険適応外(自由診療) |
---|---|
問診 行動観察 心理検査(内容によっては保険適応外) |
血液検査 脳波検査 MRI検査 |
ADHDの診断に用いられる一般的な検査は保険適応です。ただし、心理検査には様々な種類があり、種類によっては保険適応外です。もちろん受ける検査が多いほど診断しやすくなりますが、それだけ費用も高くなります。
そのため、費用が気になる方は検査前に確認しておきましょう。
また、脳波やMRI検査などで脳機能を観察すると、発症の原因や他の病気の関与についても観察してもらえます。ADHDについてしっかり精査したい方は、追加検査について医師に相談することもできます。
ADHDと上手く付き合っていくための3つの治療
ADHDの治療の目的は完治ではなく、日常生活への支障を最小限にするために症状をコントロールすることです。
そのために行われる治療は、以下の3つです。
- 治療①:環境調整
- 治療②:カウンセリング
- 治療③:薬物療法
早期から治療しておくと症状をコントロールできるだけでなく、いじめ・不登校・抑うつなどの二次的な問題の予防もできます。
では、1つずつ解説します。
治療①:環境調整
子どもを取り巻く周辺環境を整え、症状と上手く付き合えるようにします。
例えば、子どものADHDなら以下の環境調整ができます。
保育園や学校の先生にADHDであると伝え、障害に対する理解を深めてもらう
生活リズムを統一して日常生活にイレギュラーを発生しにくくする
1つのことに集中できる環境を整える
まずは周りの大人たちが障害について正しく理解する必要があります。幼少期であれば個性やキャラクターとして成立するADHDの症状ですが、協調性が求められる学童期になると急に症状が目立ち始めます。
ADHDについて周りの大人たちが正しく理解していないと、本人だけが苦しむことになりかねません。つまり、サポートをする周りの大人たちの理解が重要なのです。
またADHDの症状を助長するイレギュラーなことが発生しにくい環境を整えるのも効果的です。そのために、日々のスケジュールや日課を決めておくと良いでしょう。
治療②:カウンセリング
ADHDの子どもの自尊心を回復させ、気持ちの整理をする目的でカウンセリングが行われます。
障害が原因で周りの子どもたちと人間関係性が上手くいかなかったり、「どうして周りと自分は違うにか?」と悩んだりすると、知らず知らずのうちに自尊心が傷つき、卑屈になっていくものです。
子どもの心は非常にデリケートであり、回復にも時間がかかります。そして、一番近くにいるご両親にもわからないレベルのヘルプサインを出しているかもしれません。
カウンセリングを通して、これまでの行動を振り返りつつ気持ちの整理をして、ありのままの自分を受け入れられるようにカウンセリングが行われます。
治療③:薬物療法
環境調整やカウンセリング治療をしても症状が改善しない、もしくは初診ですでに症状が強い場合は、薬物療法が適応になります。
ただし薬物治療の目的は、日常生活に支障がでない程度まで症状コントロールや緩和することです。
薬物療法で用いられるお薬は、脳内の神経伝達物質のバランスを整えて脳活動をスムーズにするもの、大脳や脳幹に働きかけて精神活動を活発にさせるもの、の2種類が主流です。
そして、薬物療法の基本は、薬効が現れるまでに2週間程度はかかる、長期内服が前提(寛解維持が目的)、の2つです。
薬の中には副作用が強いものもあるため、症状がコントロールできる最小量を探る必要があります。また、副作用や薬の影響を考慮して、6歳未満は薬物療法の適応外とされていることも知っておきましょう。
ADHDの子どもと上手く関わる3つのコツ
ADHDと子どもと関わる際に、以下の3つのコツを意識すると良いでしょう。
- コツ①:コミュニケーションや情報伝達を工夫する
- コツ②:したいことに関連づけて行動を促す
- コツ③:スケジュール管理をする
上手く関われないとご両親・お子様のそれぞれがストレスを感じるため、ADHDの子どもの育児をするなら必ず押さえておきたいコツになります。
コツ①:コミュニケーションや情報伝達を工夫する
ADHDの子どものコミュニケーションの特徴は、以下のとおりです。
- 言われたそばから忘れている
- 周りが気になり、話が入ってこない
- 思ったことをすぐに口に出してしまう
これらの特徴に対して、以下のことを工夫するとより円滑なコミュニケーションができます。
- 視覚的な情報で伝える
- 伝えたことを一緒に行う
- 集中できる環境で話す
- 相手の気持ちを代弁する
例えば、用紙に伝えたいことをメモして渡せば、思い出すきっかけになります。忘れないように声をかけることも大切ですが、本人が主体的に思い出せる仕組みを作ってあげるのも大切な関わりです。
また、行動を起こしてもらいたいなら、最初のうちはご両親や周りの大人たちが一緒に動いてあげましょう。一緒に動いてもらうことで他のことに気が散らず、集中して取り組めるメリットがあるからです。
思ったことをと衝動的に口にしてしまうのもADHDの特徴です。時には何気ない一言で周りの子どもを傷つけることもあるかもしれません。そこで、相手の気持ちを代弁してあげましょう。
ADHDの子どもはコミュニケーションに問題はないため、相手の気持ちさえわかれば次回以降は気をつけられます。
コツ②:したいことに関連づけて行動を促す
1つのことに集中して取り組めないイメージのあるADHDですが、実は興味のあることに対しては誰よりも集中して取り組めます。
そこでおすすめなのが、自分のしたいことに関連づけて行動を促す方法です。したいことなら積極的に取り組めたり、「あれをしなさい」「これをしなさい」と強制されるのではなく、自分の意思で行動する主体性を育めたりもできます。
例えば、学校に行く準備は嫌いだが、お友達と遊ぶのは大好きな子がいたとします。この場合は「早く準備できれば、それだけお友達と遊べる時間が増えるよ」と伝えてみましょう。大好きなことをするためなら、嫌いなことも積極的に集中して取り組めます。
こちらがしてほしいことだけを一方的に伝えるのではなく、ADHDの子どもが行動を起こしたくなるような伝え方ができるように工夫することも必要そうですね。
コツ③:スケジュール管理をする
多動や衝動行動が増える理由の一つに、スケジュール管理がされていないことがあげられます。やることが決まっていない、もしくは都度変更が伴うと様々なことに意識がいってしまい、結果として何もできていなくなります。
そこで、大人たちがスケジュール管理をしてあげると良いでしょう。スケジュールが決まっていればすべきことが明確になり、何をして良いのか迷うことはありません。
また、周りに意識がいきにくいため自然と多動や衝動行動が減り、一つのことに集中して取り組めるようになります。
ADHDの子どもと上手く付き合うなら、「なぜできないのか?」と悩むのではなく、「どうやったらできるようになるのか?」を考える必要があります。
ADHDの子どもが受けられる3つの社会的なサポート
ADHDをはじめとする発達障害に対しては、近年社会的な理解が進み、受けられるサポートも整備されてきました。
ADHDの子どもが受けられる社会的なサポートには、以下の3つです。
- サポート体制①:自立支援医療(精神通院医療)
- サポート体制②:障害者手帳の交付
- サポート体制③:障害年金
詳しくは「子どものADHDは見た目で分かる?診断と検査・治療法や相談先について解説」の記事で解説しているので、ぜひご覧ください。
まとめ: 症状をコントロールしてADHDと上手に付き合っていこう
子どものADHDを疑っても具体的に「どの病院」の「どの診療科」を受診して良いかイメージもつきませんよね。そのような時は、小児科や小児精神科、発達外来などを受診すると、必要な検査が受けられます。
そして、ADHDだからといって普通の日常生活が送れないわけではありません。重要なのは、適切な治療を受けて、症状をコントロールすることです。症状がコントロールできていれば、それほど日常生活に支障を及ぼすことはないでしょう。
具体的な治療法は以下の3つでしたね。
- 治療①:環境調整
- 治療②:カウンセリング
- 治療③:薬物療法
これらの治療により、日常生活に支障がでない程度まで症状をコントロールします。また、症状をコントロールすることで周りとの良好な人間関係を築け、抑うつや双極性障害などの精神疾患の合併予防も期待できます。
ADHDをはじめとする発達障害については、自宅で一人悩んでも解決することは決してありません。専門の医師に診断してもらい、適切な治療を受けることが、ADHDと向き合い、上手く付き合っていく第一歩になるのです。