目次
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「NIPTはどこで受けても同じ」と思われがちですが、医療機関ごとに契約している検査会社(検査室)が違い、それによって結果が出るまでの日数や、調べられる範囲が変わります。さらに、同じ「NIPT」という名前でも、解析の方式、胎児由来のDNAをどれだけ集められるか、使う試薬と工程の管理、そして陽性・陰性を決める判定プログラムによって、結果の確かさそのものが変わります。この記事では、検査会社によって何が違うのかを、論文で確かめられる事実にもとづいて、臨床遺伝専門医が解説します。
- ➤同じNIPTでも検査会社によって結果の確かさが変わる理由
- ➤全ゲノム法・ターゲット法・SNP法という3つの解析方式の違い
- ➤胎児分画・採血管・試薬・判定プログラムが精度に与える影響
- ➤「精度99%」の読み方と、CLIA・CAPなど品質管理の見方
- ➤陽性的中率が低いと「無駄な確定検査」は増えるのか(がん検診との比較)
- ➤「ダウン症候群だけで大丈夫?」調べる範囲の考え方
- ➤検査を選ぶ前に確認しておきたいポイント
⏱️ 30秒でわかる要約
🧬 Q. NIPTは検査会社によって違うのですか?
はい。同じNIPTでも、解析の方式、胎児由来DNAの集め方、試薬と工程の管理、判定プログラムが違えば、結果の確かさや判定保留(結果が出ないこと)の起こりやすさが変わります。
💡 Q. ダウン症候群だけ調べれば大丈夫ですか?
大丈夫とは言えません。検査会社や方式を比べる前に知っておきたいのは、子育ての負担を最も大きく左右するのが、知的障害の程度よりも、攻撃的な行動・自傷・睡眠の問題といった行動の問題だという点です。行動の問題を伴いやすいのは、ダウン症候群よりも微小欠失症候群や単一遺伝子疾患で、これらは三大トリソミーだけの検査では調べられません。当院のNIPTには、こうした病気まで調べられるプランがあります。
🔍 Q. 何を見て選べばよいですか?
「何を調べる検査か(対象範囲)」「胎児分画が低いときにどう扱うか」「品質管理の体制」「陽性のときに確定検査までつながるか」の4つを、受ける前に確認することが大切です。
🌸 Q. 「精度99%」ならどこも同じでは?
検出率が高くても、陽性的中率(陽性のうち本当に該当する割合)は100%ではありません。NIPTはスクリーニング検査なので、陽性のときは羊水検査・絨毛検査で確かめる必要があります。
\ ダウン症候群だけで大丈夫ですか? /
検査会社や方式を比べる前に、まず「どこまで調べるか」を決める必要があります。当院のNIPTには、子育ての負担につながりやすい微小欠失症候群や単一遺伝子疾患まで対象にしたプランがあり、どこまで調べるかは90分の受診枠の中で臨床遺伝専門医と決められます。
NIPTのプランを見る | 料金を確認する | 施設の選び方
NIPTにはどんなことを求めますか?
「赤ちゃんの染色体の数の変化がわかれば十分」という方もいれば、もっと多くを知りたい方もいます。NIPTに求めることは、人によってまちまちです。たとえば、次のような希望があります。
- もし陽性なら確定検査を受けたいので、1日でも早く結果を知りたい
- できるだけ精度の高い検査を受けたい
- 13・18・21トリソミー以外も調べる範囲を広げたい
- 双子だけれどNIPTを受けたい
こうした希望にどこまで応えられるかは、医療機関が契約している検査会社(検査室)と、その検査の中身によって変わります。結果までの日数、調べられる範囲、双子への対応は検査ごとに違い、精度も「NIPT」という名前だけでは決まりません。次の章で、何が違いを生むのかを順番に見ていきます。
💡 用語解説:胎児分画(Fetal Fraction)とは
お母さんの血液には、細胞の外に漂う短いDNA(セルフリーDNA)が流れています。その大部分はお母さん自身のもので、一部が胎盤から出てきた胎児由来のDNAです。この胎児由来DNAが全体の何%を占めるかを胎児分画といいます。胎児分画が低いと、赤ちゃん側の変化が見えにくくなり、判定保留や見落としの原因になります。NIPTの精度を考えるうえで、もっとも大事な数字のひとつです。
同じ「NIPT」でも結果の確かさが変わる——5つの段階
NIPTは、採血してから結果が出るまでにいくつもの工程を通ります。どの段階でも、やり方の違いが精度に響きます。検査会社の違いとは、つまりこの工程の一つひとつの違いです。
各工程の品質管理については、NIPTの検査精度に影響を与える5つの要因でも解説しています。
解析の方式:全ゲノム法・ターゲット法・SNP法
血液中のDNAを読む方法は、大きく3つに分かれます。ゲノム全体の断片をランダムに読んで染色体ごとの量を数える全ゲノム法、調べたい領域だけを選んで深く読むターゲット法、そしてお母さんと赤ちゃんの一塩基多型(SNP)の違いから胎児由来DNAを見分けるSNP法です。それぞれに得意なことと注意点があります。
🧬 3つの解析方式の比較
| 方式 | 何を見るか | 得意なこと | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 全ゲノム法 | ゲノム全体の断片をランダムに読み、染色体ごとの量の偏りを数える | 全染色体を一度に見渡しやすい | GC含量による偏りの補正など、判定プログラムの性能に結果が左右されやすい[9][10] |
| ターゲット法 | 調べたい染色体・領域だけを選んで読む | 対象の領域を効率よく、深く読める | 対象にしていない領域はわからない。胎児分画の下限を設けて判定するのが一般的[14][17] |
| SNP法 | 母と胎児のSNPの違いから、胎児由来DNAを見分けて評価する | 胎児分画を推定しやすい。双子の卵性(一卵性か二卵性か)の判定にも使われる[16] | 決めた胎児分画の下限を下回ると判定を出さない(改良版の下限は2.8%)[12] |
方式の名前が同じでも、実際の工程や対象範囲は検査ごとに異なります。方式ごとの成績は、対象集団や時期が違う研究から得られたものなので、横に並べて優劣をつけることはできません。
第1世代から次世代への技術の流れはNIPTの世代別比較で、ターゲット法とSNPの考え方を組み合わせたCOATE法のしくみはCOATE法と従来法の違いで詳しく解説しています。
胎児由来DNAをどれだけ集められるか
母体血漿中にもともと存在する胎盤由来cfDNAの割合は、妊娠週数や妊婦さんの体格など複数の生物学的要因の影響を受けます。一方、検査法によっては、胎盤由来cfDNAに多い短い断片を相対的に濃縮する前処理を行い、解析に用いるDNA中の胎児分画を高めることができます。
その手がかりになるのが、DNA断片の「長さ」です。お母さん由来のDNAは166塩基対(bp)付近に大きな山があり、胎児由来のDNAは166bpの断片が少なく、150bp未満の短い断片が多いことがわかっています[4]。この差を利用して短い断片を選んで集めると、胎児分画を上げられます。
- 通常の検査1,404例に短い断片を選ぶ方法を使った研究では、胎児分画が平均11.3%から22.6%に上がり、検査不成功は0.7%から0.1%に減りました。従来法で見落とされていた11例のうち5例で、トリソミーを検出できています[5]。
- 双子や胎盤限局性モザイクの例でも、短い断片を選ぶことで見落としを減らせたと報告されています[6]。
- 全ゲノム法に胎児分画を高める工程を組み込んだ検証(1,264検体)では、工程なしでは25人に1人いた胎児分画4%未満の方がゼロになり、胎児分画は全体で平均2.3倍になりました[7]。
つまり、「胎児分画が低くて判定保留になった」という結果は、生物学的な胎児分画だけでなく、検査法に胎盤由来cfDNAを相対的に濃縮する前処理があるか、また低胎児分画検体をどのように解析・判定するかにも左右されます。判定保留になったときの考え方はNIPT判定保留で諦める前にをご覧ください。
採血管・抽出・ライブラリ作製の試薬と工程管理
採血したあとの扱いでも、胎児分画は変わります。ふつうのEDTA採血管では、時間がたつほど血液中の白血球などが壊れてお母さん由来の長いDNAだけが増え、胎児由来DNAの量は変わらないため、胎児分画が下がっていきます。細胞を安定させる専用の採血管では、この増加はわずかでした[8]。同じ研究では、DNA抽出キットの違いでも検査が成功するかどうかが変わり、抽出キットを変えると、判定できなかった14検体のうち11検体で性別を判定できたと報告されています[8]。
さらに、シーケンスのためのライブラリ作製でも差が生まれます。DNAのGC含量によって読まれやすさが偏る「GCバイアス」は、ライブラリ作製時のPCRなどで生じると考えられています。この偏りは同じ実行回の中より実行回どうしの間で大きく、試薬の組成や温度のわずかな違いが原因として挙げられています[9]。海外の検査室に検体を送る場合は、採血管の種類と輸送にかかる時間も、結果の安定性に関わる要素になります。
💡 用語解説:GCバイアスとは
DNAはA・T・G・Cの4種類の塩基でできています。GとCの割合(GC含量)によって、PCRで増えやすさやシーケンスでの読まれやすさが変わることがあり、これをGCバイアスといいます。NIPTは染色体ごとのDNAの量のわずかな差を見る検査なので、この偏りを補正しないと、本当は変化がないのに量が多く見えたり、変化があるのに見えなかったりします。
判定プログラム(バイオインフォマティクス)の性能
同じ機械で同じデータを読んでも、データの偏りをどう補正し、何と比べて陽性・陰性を決めるかで成績は変わります。判定プログラムの良しあしは、検査の中身そのものです。
- 同じ392例のデータで、標準的な計算方法だけでは13トリソミーの36.0%、18トリソミーの73.0%しか検出できませんでした。参照ゲノムの使い方を変えてGCバイアスを補正すると、13トリソミーは25例すべて(特異度98.9%)、18トリソミーは91.9%(特異度98.0%)を検出できました[10]。
- トリソミーを判定する計算方法には、標準的なzスコア、正規化した染色体の値(NCV)など複数あり、ばらつきをより小さくする工夫で感度が上がることが示されています[20]。
- 胎児分画の値そのものも、解析プログラムによって大きく変わりうることが報告されています[11]。そのため、「胎児分画が何%以上なら安心」という一律の数字はありません。
胎児分画が低いとき・双子のとき
多くの検査は、胎児分画が一定の値(多くは2〜4%)を下回ると判定を出さず、判定保留はおおむね2〜5%で起こると総説にまとめられています[17]。全ゲノム法では、単胎で検出できる胎児分画の下限を4%とした研究が複数あります[14]。
胎児分画は、赤ちゃんの染色体の状態によっても変わります。21トリソミーでは高めに、18トリソミー・13トリソミー・モノソミーXでは低めに出ることが示されています[13]。「胎児分画が低くて結果が出なかった」ことが、単なる検査上のつまずきとは言い切れない場合があるのはこのためで、判定保留のあとは遺伝の専門家と次の選択肢を考えることが大切です。
双子の場合は、赤ちゃん一人ひとりの胎児由来DNAが少なくなるため、単胎より多くの胎児由来DNAが必要になります。消失した双子(バニシングツイン)のDNAが残って、生きている赤ちゃんの結果と食い違う例も報告されています[14]。双子での成績は、21トリソミーの検出率99.0%、偽陽性率0.02%と高い一方で、単胎よりは検出率がやや低いと結論されています[15]。全ゲノム法、SNP法のいずれでも双子の検証研究が出ており[16][19]、双子に対応しているかどうかと、どんな条件で受けられるかは検査ごとに確認が必要です。
精度の数字と品質管理の見方
「精度99%」をどう読むか
単胎の研究をまとめたメタ解析では、NIPTの検出率と偽陽性率は次のとおりでした[1]。
📊 単胎でのNIPTの検出率と偽陽性率(メタ解析)
| 対象 | 検出率 | 偽陽性率 |
|---|---|---|
| 21トリソミー(ダウン症候群) | 99.7% | 0.04% |
| 18トリソミー | 98.2% | 0.05% |
| 13トリソミー | 99.0% | 0.04% |
ただし、検出率が高いことと、「陽性と出たら本当にその病気である」ことは別の話です。8万6千例を超える臨床データでは、陽性と出た方のうち実際に該当した割合(陽性的中率)は全体で83.5%で、トリソミーの種類によって50.0〜92.8%と幅がありました[2]。一般妊婦を対象にした大規模研究でも、21トリソミーの可能性が高いと出た47例のうち9例は偽陽性でした[3]。NIPTはスクリーニング検査であり、陽性のときは羊水検査・絨毛検査で確かめる必要があります。
💡 用語解説:検出率と陽性的中率
検出率(感度)は「その病気の赤ちゃんのうち、検査で陽性と出る割合」、陽性的中率は「陽性と出た人のうち、本当にその病気だった割合」です。陽性的中率は、もともとその病気がどれくらいの頻度で起こるか(妊婦さんの年齢など)によって変わるため、同じ検査でも人によって違います。
陽性的中率が低いと「無駄な確定検査」が増える? ― がん検診と比べて考える
上で見たとおり、NIPTの陽性的中率は100%ではありません。微小欠失など、調べる範囲を広げた検査では、染色体の数の異常より低めになります。そのため、「陽性的中率が低い検査は、受けなくてよい確定検査を増やす」という批判があります。この点を、同じ「拾い上げる検査」であるがん検診と比べて考えます。
がん検診も、陽性的中率は数%です。胸部X線で行う日本の自治体の肺がん検診では、国が2008年の報告書で示した陽性反応適中度(要精密検査とされた人のうち、実際に肺がんだった人の割合)の許容値は「1.3%以上」です[23]。米国の大規模試験(NLST)では、低線量CTで2.4〜5.2%、胸部X線で4.4〜6.7%でした[21]。それでも、低線量CTによる検診は肺がんによる死亡を減らすことが示されています[22]。X線は「怪しい」と判定する人がCTより少ないぶん、陽性的中率は少し高くなりますが、そのかわり見逃しも多くなります。CTは拾い上げを広げたぶん陽性的中率が下がりましたが、死亡を減らしました。陽性的中率が低いことが、そのまま「悪い検査」を意味するわけではありません。
精密検査に危険があるのも、がん検診と出生前検査で共通です。米国の診療データ(保険請求データ)を使った調査では、肺の異常を調べる精密検査を受けた人は、受けなかった人に比べて、重い合併症が針生検で4.0%、気管支鏡で13.4%、胸部手術で11.3%多く起きていました[24]。出生前検査の確定検査については、英国の1施設で行われたコホート研究で、絨毛検査・羊水検査を受けた人と受けなかった人の流産の割合に、統計的な差は見られませんでした(絨毛検査0.29%、羊水検査−0.36%で、どちらも統計的な差なし)[25]。研究の規模や方法が違うので、数字を直接並べて比べることはできません。ただ、「陽性的中率が低いと、体に負担のかかる確定検査が増える」という心配は、少なくとも肺がん検診にも同じように当てはまり、がん検診ではそれでも検診が行われています。
それでも、出生前検査では慎重な意見があります。理由は次の4つで、どれも大切な指摘です。
- 検査の結果が、「妊娠を続けるかどうか」の判断に直結すること
- 陽性のあと、確定検査を受けないまま妊娠をやめる選択をしてしまうおそれがあること。陽性的中率が低いと、本当は病気のない赤ちゃんが失われるおそれがあり、これがいちばん大きな危険です
- 結果を待つ間の不安が大きく、判断できる期間にも限りがあること
- 微小欠失などは症状の幅が広く、わかっても見通しが立てにくいことがあり、学会によって考え方が分かれていること
一方で、陽性的中率だけに注目すると、「外れの陽性」ばかりが目に入ります。けれども、拾い上げなければ、本当に病気がある赤ちゃんについて、ご家族が生まれる前に知り、出産する施設や生まれてすぐの治療を準備するか、妊娠を続けるかどうかを考える機会そのものがなくなります。見逃しにも、外れの陽性と同じように重い結果があります。実際に、先天的な病気が生まれる前にわかったお母さんは、生まれてから初めて知ったお母さんに比べて、心の面の生活の質が高かったという報告があります[26]。また、重い心臓の病気では、生まれる前にわかっていると生まれてすぐの治療を早く始められ、大血管転位症では手術の前後に亡くなる赤ちゃんが減ったと報告されています[27]。ただし、前者は小規模な研究で、生まれる前に知ることで出産までの不安やつらさが増えるという報告もあり、研究によって結果は分かれています。
弱点は検査そのものではなく、「確定検査で確かめる前に決めてしまうこと」にあります。そのため当院では、陽性になった場合に院内で確定検査(絨毛検査・羊水検査)を受けられ、主要な検査項目は3日以内に、マイクロアレイ検査は2週間ほどで結果が出る体制をとっています。陽性後の遺伝カウンセリングは何度でも無料で、確定検査の費用は互助会で補助されます(補助の上限はありません)。NIPTは、可能性のある赤ちゃんを見逃さずに拾い上げるための検査です。陽性になったときに大切なのは、確定検査で本当にそうかを確かめてから考えることです。当院では、その確定検査まで院内で受けられます。
🩺 院長コラム【内科医として、がん検診と同じ目で見る】
肺がん検診で「要精密検査」とされた方の多くは、精密検査の結果、肺がんではありません。それでも検診が続けられているのは、まず広く拾い上げ、そのあと精密検査で確かめるという二段構えに意味があるからだと考えています。
出生前検査も、考え方の骨組みは同じだと考えています。違うのは、結果が妊娠を続けるかどうかの判断にかかわるという重さです。だからこそ、陽性の段階で結論を出さず、確定検査で確かめてから考えられる体制が欠かせないと考えています。
CLIA・CAPなど品質管理の見方
海外の検査室の資料では、「CLIA」「CAP」という言葉をよく見かけます。CLIAは米国の臨床検査室が守るべき連邦の基準で、CAP(米国病理医協会)は、米国の公的機関(CMS)から認められてCLIAへの適合を確認する認定機関です[18]。
これらは検査室の運営と品質管理の体制を示す目安のひとつです。一方で、その検査が何を調べられるか、どの方式で判定しているかまでを示すものではありません。認定の有無とあわせて、対象範囲・胎児分画の扱い・判定保留の条件を確認することが大切です。施設選びのポイントはNIPTの施設選びで後悔しないための3つのポイントでまとめています。
✅ 検査を選ぶ前に確認したいこと
①何を調べる検査か(13・18・21トリソミーだけか、それ以外も含むか)
②胎児分画が低いときの扱いと、判定保留になったときの対応
③検査室の品質管理の体制
④双子に対応しているか
⑤陽性のとき、確定検査までどうつながるか
第1世代から今のNIPTへ
この記事でご紹介した検出率や陽性的中率の多くは、NIPTが広まりはじめた時期(第1世代)の研究にもとづく数字です。その後、方式の改良や胎児由来DNAを集める技術、判定プログラムの進歩によって、検査の設計は変わってきています。世代ごとの違いはNIPTの世代別比較で、COATE法のしくみと精度はCOATE法と従来法の違いで解説しています。
ミネルバクリニックのNIPT
ミネルバクリニックのNIPTは、プランによって調べる範囲と方式が異なります。
- COATE法を使うのは、ダイヤモンドプランです。
- インペリアルプランは、全常染色体の数の異常、性染色体の数の異常、5Mbを超える染色体構造異常、92種類の微小欠失・重複、最大155遺伝子・202疾患の単一遺伝子疾患を対象とします。
- ダイヤモンドプランは、6種類の常染色体トリソミー、4種類の性染色体の数の異常、12種類13疾患の微小欠失、56遺伝子の単一遺伝子疾患を対象とします。
- 確定検査(羊水検査・絨毛検査)は院内で行い、主要な検査項目は3日以内に、マイクロアレイ検査は2週間ほどで結果が出ます。
臨床遺伝専門医が常駐し、検査前に「何がわかり、何がわからないか」を説明したうえでNIPTを実施しています。陽性の場合は、必要に応じて院内の羊水検査・絨毛検査へつなげる体制があります。
検査会社や方式より先に決めたい「どこまで調べるか」
検査会社や方式を比べるときは精度の数字に目が向きますが、その前に決めておきたいのが「どの病気まで調べるか」です。知的障害を伴う病気のお子さんのご家族を比べた研究では、子育てのストレスを最も強く左右していたのは、知的障害の程度よりも、攻撃的な行動や自傷などの行動の問題と、睡眠の問題でした[28]。スミス・マゲニス症候群、ウィリアムズ症候群、プラダー・ウィリー症候群のご家族は、ダウン症候群のご家族より子育てのストレスが高いとも報告されています[28]。他人への攻撃的な行動はアンジェルマン症候群とスミス・マゲニス症候群で、自傷はコルネリア・デ・ランゲ症候群、スミス・マゲニス症候群、プラダー・ウィリー症候群で多いことが分かっています[29]。当院では、スミス・マゲニス症候群・プラダー・ウィリー症候群・アンジェルマン症候群はすべてのプランで、コルネリア・デ・ランゲ症候群はダイヤモンドプランとインペリアルプランで、ウィリアムズ症候群はインペリアルプランと双子マックスプランで調べられます。
22q11.2欠失症候群も、三大トリソミーだけの検査では対象に入らない病気です。妊娠中の赤ちゃんのおよそ1,000人に1人にみられ、微小欠失症候群の中で最も多く、多くは親から受け継いだものではない新しい変化なので、母親の年齢とは関係なく起こります[30]。心臓の病気、免疫の働きの低下、低カルシウム血症、口蓋裂、発達の遅れなどを伴うことがあり、自閉スペクトラム症を伴う割合も一般より高いと報告されています[32][30]。米国臨床遺伝・ゲノム学会(ACMG)は、妊婦さんの年齢にかかわらず、22q11.2欠失症候群のNIPTをすべての妊婦さんに提供することを提案しています[31]。一方、米国母体胎児医学会(SMFM)は、22q11.2欠失を調べる場合は検査前に十分な説明を受けて選ぶことを求めており、学会によって考え方は分かれています。だからこそ、検査前の遺伝カウンセリングが大切です。生まれる前に分かっていれば、出産する施設を選んだり、生まれてすぐに心臓・カルシウム・免疫の検査をしたりと、赤ちゃんを迎える準備ができます。当院ではスタンダードプランから調べられますが、陽性的中率は染色体の数の異常より低めなので、陽性のときは必ず確定検査で確かめます。
ダウン症候群だけで大丈夫? ― 「値段」ではなく「調べられる範囲」で選ぶ
検査会社や方式の違いを調べていくと、「ダウン症候群さえ分かれば十分」と考えて、調べる範囲がいちばん狭い検査に目が向くことがあります。実際、心配なのはダウン症候群だけ、という方は少なくありません。ただ、出生前検査の対象になる病気は、どれも赤ちゃんとご家族の暮らしに大きくかかわります。そして前の項で見たように、子育ての負担をいちばん大きく左右するのは、知的障害の程度よりも、攻撃的な行動・自傷・睡眠の問題といった「行動の問題」のほうです[28]。行動の問題を伴いやすい病気の多くは、ダウン症候群ではなく、微小欠失症候群や単一遺伝子疾患のほうに含まれています[28][29]。こうした病気は、三大トリソミーだけを調べる検査の対象には入っていません。
出生前検査は、その後の人生を左右するかもしれない検査です。「安さ」だけを物差しにして選んで、大丈夫でしょうか。
ここで、検査の費用を「調べられる病気の数」で割ってみます。三大トリソミーだけを調べる検査を仮に10万円とすると、1つの病気あたりは約3万3千円です。一方、当院のインペリアルプランが調べるのは、全常染色体と性染色体の数の異常、92種類の微小欠失・重複、202の単一遺伝子疾患です。性染色体の数の異常も含め、数えられる病気だけで320になり、同じ計算では1つの病気あたり約1,700円です。しかも、5Mbを超える欠失・重複はすべての染色体が対象なので、実際には数えきれないほどの変化を調べていることになります。
| プラン | 主に調べる範囲 | 数えた病気の数 | 1つの病気あたり |
|---|---|---|---|
| 三大トリソミーだけを調べる検査 (仮に10万円とした場合) |
13・18・21トリソミー | 3 | 約33,333円 |
| スタンダード (220,000円) |
13・18・21トリソミー、性染色体の数の異常、微小欠失6種類7疾患 | 14 | 約15,714円 |
| プレミアム (264,000円) |
13・18・21・15・16・22トリソミー、性染色体の数の異常、微小欠失12種類13疾患 | 23 | 約11,478円 |
| ダイヤモンド (407,000円) |
プレミアムの範囲+単一遺伝子56 | 79 | 約5,152円 |
| 双子マックス (440,000円) |
全常染色体の数の異常、92種類の微小欠失・重複、5Mbを超える構造異常 | 114+α | 約3,860円 |
| インペリアル (550,000円) |
全常染色体の数の異常、性染色体の数の異常、92種類の微小欠失・重複、5Mbを超える構造異常、単一遺伝子202疾患 | 320+α | 約1,719円 |
※価格は事前学習動画を見て来院した場合の当日割引後の税込価格です。最新の料金は料金ページをご確認ください。※病気の数は、数の異常・微小欠失・重複・単一遺伝子疾患を1つずつ数えたものです。性染色体の数の異常は4種類(ターナー症候群・クラインフェルター症候群・トリプルX症候群・XYY症候群)として数えています(性染色体を調べるのはスタンダード・プレミアム・ダイヤモンド・インペリアル。双子マックスは調べません)。5Mbを超える構造異常は数に入れていないため、双子マックスとインペリアルは実際にはさらに多くの変化を調べています。※「三大トリソミーだけを調べる検査」は計算のための仮の例で、特定の施設の価格ではありません。
各プランで調べられる内容は、スタンダードプラン・プレミアムプラン・ダイヤモンドプラン・双子マックスプラン・インペリアルプランの各ページで確認できます。
ただし、調べる病気の数が多いほど良い検査、ということではありません。範囲を広げれば、陽性になる可能性も、確定検査が必要になる場面も増えます。そのため当院では、検査前の遺伝カウンセリングで、ご家族に合ったプランを選びます。
🩺 院長コラム【「どこの検査会社か」より先に確かめてほしいこと】
検査会社の名前やブランドだけで、NIPTの良しあしは決められないと考えています。同じ方式でも、採血管、DNAの抽出、胎児由来DNAの集め方、試薬、判定プログラムという工程の一つひとつの積み重ねが、結果の確かさを決めるからです。
大切なのは、何を調べる検査なのか、胎児分画が低いときや判定保留のときにどう扱うのか、陽性のときに確定検査までどうつながるのかを、受ける前にきちんと説明してもらえることだと考えています。数字の大きさよりも、その説明の丁寧さのほうが、ご家族の判断を支えると考えています。
🏥 検査会社の違いが分かったら、次は「どこまで調べるか」です
90分の受診枠の中で、常駐する臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、調べる範囲、方式、判定保留のときの対応までご説明したうえで、ご家族に合うプランを一緒に考えます。来院が難しい方は、オンラインNIPT(Zoomでの遺伝カウンセリングと、全国110か所の提携施設での採血)もご利用いただけます。
ミネルバクリニックの特徴
✓ 臨床遺伝専門医が常駐
✓ カウンセリング・判定・陽性後のケア・確定検査まで一貫対応
✓ 確定検査(羊水検査・絨毛検査)は院内で実施。主要な検査項目は3日以内に、マイクロアレイ検査は2週間ほどで結果が出ます
よくある質問(FAQ)
Q1. NIPTは検査会社によって精度が違いますか?
違いが出ます。同じNIPTでも、解析の方式、胎盤由来cfDNAの濃縮・前処理、採血管や試薬などの工程管理、判定プログラムによって、結果の確かさや判定保留の起こりやすさが変わります。ただし、研究ごとに対象集団や時期が違うため、会社どうしを数字だけで横に並べて優劣をつけることはできません。何を調べる検査か、胎児分画が低いときにどう扱うかを確認することが大切です。
Q2. ダウン症候群だけ調べれば大丈夫ですか?
ダウン症候群だけを調べれば大丈夫、とは言えません。検査会社や方式によって、調べられる病気の範囲そのものが違うからです。知的障害を伴う病気のお子さんのご家族を比べた研究では、子育てのストレスを最も強く左右していたのは知的障害の程度よりも行動の問題で、スミス・マゲニス症候群、ウィリアムズ症候群、プラダー・ウィリー症候群のご家族は、ダウン症候群のご家族よりストレスが高いと報告されています。こうした病気は、三大トリソミーだけを調べる検査ではわかりません。当院では、22q11.2欠失症候群、プラダー・ウィリー症候群、アンジェルマン症候群などの微小欠失をスタンダードプランから、単一遺伝子疾患をダイヤモンドプランとインペリアルプランで調べられます。どこまで調べるかは、検査前の遺伝カウンセリングで決めていきます。
Q3. 胎児分画が低いと言われたのはなぜですか?
胎児分画は、妊娠週数やお母さんの体格などの生物学的要因に加え、採血後の検体の扱いの影響を受けます。また、検査法によっては短い胎盤由来cfDNAを相対的に濃縮する前処理が行われ、胎児分画の推定値は計算方法によっても異なります。また、赤ちゃんの染色体の状態によっても変わり、18トリソミーや13トリソミーなどでは低めに出ることが知られています。結果が出なかったときは、再検査や確定検査を含めて、遺伝の専門家と次の選択肢を考えることをおすすめします。
Q4. 判定保留(結果が出ないこと)はどのくらい起こりますか?
総説では、胎児分画の下限は多くの検査で2〜4%に設定され、判定保留はおおむね2〜5%で起こるとまとめられています。頻度は検査の方式や、胎児由来DNAを集める技術によって変わり、双子では単胎より結果が出にくい傾向があります。
Q5. 双子でもNIPTは受けられますか?
双子を対象にした研究は、全ゲノム法・SNP法のいずれでも報告されています。研究をまとめた解析では、双子の21トリソミーの検出率は99.0%、偽陽性率は0.02%と高い一方、単胎よりは検出率がやや低いとされています。双子に対応しているか、どんな条件で受けられるかは検査ごとに違うため、事前の確認が必要です。
Q6. CAP認定の検査会社なら安心ですか?
CAPは、米国の臨床検査室がCLIAという基準を満たしているかを確認する認定機関で、検査室の運営と品質管理の体制を示す目安のひとつです。ただし、その検査が何を調べられるかや、どの方式で判定しているかまでを示すものではありません。認定の有無とあわせて、対象範囲や判定保留の条件を確認することが大切です。
Q7. ミネルバクリニックのNIPTはどの方式ですか?
プランによって異なります。COATE法を使うのはダイヤモンドプランです。インペリアルプランは全常染色体の数の異常、性染色体の数の異常、5Mbを超える染色体構造異常、92種類の微小欠失・重複、最大155遺伝子・202疾患の単一遺伝子疾患を対象とします。ダイヤモンドプランは6種類の常染色体トリソミー、4種類の性染色体の数の異常、12種類13疾患の微小欠失、56遺伝子の単一遺伝子疾患を対象とします。陽性の場合の確定検査(羊水検査・絨毛検査)は院内で実施しています。
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※本記事は一般の方に向けた情報提供を目的とするもので、個別の診断や検査の選択を示すものではありません。検査の内容や結果については、臨床遺伝専門医にご相談ください。






