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ダウン症新生児の目や耳など顔の特徴は?手や足などの身体的特徴も紹介

この記事のポイント
  • ダウン症について理解しておきたい基本的な情報
  • ダウン症の新生児の顔に現れる特徴とは
  • ダウン症児の身体的・精神的な特徴について
  • ダウン症の赤ちゃんが生まれた場合に利用できる支援制度

ダウン症は、遺伝に関わる染色体の異常によって起こる疾患で、正式にはダウン症候群といいます。細胞内に2対で23組あるうちの21組目の染色体が1本多くなっており、このことから21トリソミーとも呼ばれている先天性の疾患です。ダウン症の赤ちゃんは、出生児の中で約1000人に1人の割合で生まれてきます。ただ、ダウン症の赤ちゃんが生まれる確率はママの出産年齢によって違いがあり、出産年齢が上昇するにつれて確率が高くなる傾向にあります。

待望の赤ちゃんが生まれ、パパとママが最初に気になるのは、赤ちゃんが健康であるかどうかです。明らかに息をしていないなどの異変があるときには病院の先生もすぐに処置を行いますが、生まれた瞬間すぐに先天性の異常があるかわからない場合もあります。

しかし、ダウン症の新生児には共通する特徴がいくつかあるため、経験を積んだ医師や看護師の中には顔の特徴を見てダウン症の疑いがあると判断することも。顔の見た目だけでダウン症と確定はできませんが、ひとつの判断材料になる場合もあります。

そこでこの記事では、ダウン症の新生児の顔に現れる特徴とその診断についてご紹介します。

ダウン症の新生児の顔に現れる特徴

ダウン症の新生児には目や鼻などのさまざまな場所に特徴が現れ、その子によって現れている場所が異なります。ここでは、ダウン症の新生児の顔に現れる特徴をご紹介します。

ダウン症の人は、その特徴であるはっきりとした顔貌(顔つき)を示すことが多いです。これらの特徴は個人差があり、すべてのダウン症患者がこれらの特徴を持つわけではないことに注意することが重要です。

特徴 説明
平坦な顔貌 ダウン症の人は一般的に平坦な顔立ちをしています。これは鼻筋が平坦で、顔面中部が小さい、つまり顔面中部の形成不全があることを意味します。
斜め上向きの目 つり上がった目は、ダウン症の新生児の顔でまず思い浮かべる方が多い特徴です。ただこれはあくまでも特徴なので、つり目の赤ちゃんがすべてダウン症であるというわけではありません。とくに日本人は目が切長でつり目に見える場合も多く、生まれてすぐにつり目だったからといって、ダウン症だとは決めつけられないのです。
上眼瞼ひだ 多くのダウン症患者には、目尻を覆う皮膚のひだである上眼瞼ひだがあります。上眼瞼ヒダとは、目頭を覆う皮膚のヒダのことで、目頭の上に小さく水平な皮膚のヒダができます。内眼角贅皮(ないがんかくぜいひ)とも言われます。
目の位置が離れている ダウン症の新生児はほとんどの場合、目の位置が離れていますが、一見わからない程度の場合もあり、個人差が大きい部分です。また、両親の目が離れている場合などは遺伝である可能性も十分にあります。
鼻が低い ダウン症の人々の鼻梁は通常、他の個体と比べて平たい形状をしています。これが、鼻全体が低く見える主な要因です。鼻根(鼻と目の間の鼻の付け根)部分が低い位置にあることがあります。
小さい耳 ダウン症でない人に比べて耳が小さく、形が少し異なることがあります。ダウン症の一部の個体では、小さな耳や耳介低位が見られることがあります。これは通常の耳の形や位置に比べて、耳が低い位置にあることを指します。
突出した舌 通常、赤ちゃんは新生児のうちから舌を出す仕草をすることがあります。しかしそれはダウン症児とは違い、新生児模倣である可能性が高く、生後2ヶ月程度で消失するとされてる能力です。ダウン症児が舌を出すのは、舌が口に収まらないほど大きいことが理由ですが、舌が大きいというよりは、周囲が低形成で小さいので相対的に舌が大きく見えるのです。
首が短い 首が短いと感じられることは、一部のダウン症の個体で見られる特徴の一つです。ダウン症の個体は一般的に筋肉の緊張が低く、だらっとしている傾向があります。これは全身の筋肉に影響を及ぼすため、首の筋肉もその影響を受ける可能性があります。
平らな後頭部 ダウン症の一部の個体では、平らな後頭部が見られることがあります。平らな後頭部は、頭蓋骨の形状が通常よりも平らであることに起因する可能性があります。これは個体差があり、全てのダウン症の個体で見られるわけではありません。
筋緊張の低下 ダウン症の個体は、一般的に筋緊張が低下しているとされています。これは筋肉のトーンが通常よりも低い状態であることを指します。筋緊張の低下は、歩行や動作などの運動の発達に影響を与える可能性があります。
重要なポイント

ダウン症の顔の特徴は個人によって現れ方が異なります。上記のすべての特徴が同一人物に現れるわけではなく、また一部の特徴のみが現れる場合もあります。顔の特徴だけでダウン症と診断することはできず、確定診断には染色体検査が必要です。

ダウン症児の身体的な特徴

顔以外に現われる身体的な特徴は低身長なことです。特に幼児は背が低いことが多く見られます。筋肉量が少なく自分の体を支えるための筋肉の張りが弱い状態なので、ハイハイや歩けるようになるまで時間を要する場合があります。

手の特徴

  • 短く幅広い手
  • 小指が内側に曲がっている場合がある
  • 手の平に一本のまっすぐなしわがある(単一手掌線)

足の特徴

  • 親指と人差し指の間が広くなっている
  • 扁平足の傾向がある
  • 疲れやすく、転びやすい

また、手は短く横幅が広くなる傾向にあります。手の平のしわは、手相で言う感情線や頭脳線のように両側から真ん中に向かって2本の線があるのではなく、手の平を横切るようにまっすぐな1本のしわが見られるのも特徴です。足は親指と人差し指の間が広くなっているケースも見られます。

他の子に比べて肥満リスクが高いのも特徴ですので、親御さんのほうで注意してあげてください。

ダウン症児の精神的な特徴

個人差はありますが、ダウン症児の性格は大人しいのが特徴です。幅があるものの健康な子よりも知能は低い傾向にあります。

言語発達もゆっくりで、不明瞭だったり、抑揚のない話し方をしたりします。行動面では注意欠如や自閉的行動などが見受けられます。また、幼児期や青年期にうつ病になるリスクが高いので早い段階による教育などの介入が必要です。

注意点

ダウン症の精神的特徴は個人差が大きく、適切な支援と環境によって発達の可能性は大きく広がります。画一的なイメージを持たず、一人ひとりの特性や強みを理解することが重要です。

ダウン症の赤ちゃんが生まれてきたら

ダウン症の赤ちゃんは、乳児期からさまざまな療育、また合併症を予防する検診も必要です。そして言語発達と比べて視覚認知は得意な子も多い傾向です。そのため言葉で話しかけるよりもジェスチャーや絵・写真を使った方がコミュニケーションをとりやすい場合があります。

普段の生活の中では刺激をたくさん与え、興味を持ってもらうような関わりをしましょう。赤ちゃんが手を伸ばしたり、ハイハイをしたりするように促してあげるといいかもしれません。

合併症に関して、先天性心疾患がある場合は心臓手術が必要になるかもしれません。もし手術を受けたら、退院後も定期的な通院が必要です。他にも見られる合併症として筋肉の緊張が弱く、足の裏が扁平足のために疲れやすかったり、転びやすかったりすることもあります。特に頚椎の靭帯が弱いため、転倒した際には運動麻痺がないか注意してください。

ダウン症の赤ちゃんが生まれてきたら受けられる公的支援

ダウン症児に向けての公的支援は以下の通りです。

  • 療育手帳
  • 身体障害者手帳の交付
  • 特別児童扶養手当
  • 障害児福祉手当
  • 小児慢性特定疾病医療費助成

公的支援は生活上の困難さによって利用できるものとできないものがあります。愛の手帳などの療育手帳は、知的障害によって生活する上で支援が必要だと判断された場合のみに発行されるものです。ダウン症と診断されただけでは受けられませんのでご注意ください。このように、受けられる支援は障害の程度やお住まいの地域によって違いがあるためお住まいの市区町村役所に問い合わせをして確認をしましょう。

また、ダウン症児への公的な支援は申告をしないと受けられませんので必ず申請をしてください。

専門的な相談やサポートが必要な場合は

ダウン症のお子さんを育てる上での悩みや不安がある場合は、小児科医や専門家に相談することをお勧めします。また、ダウン症児を持つご家族の交流会や支援団体なども各地域にありますので、ぜひそうした場所で情報交換をしてみてください。

まとめ

ダウン症児といっても個人個人で違いがあるため一概には言い切れません。なぜならダウン症児もみんな個性があり、長所や短所、性格も含めて一人ひとり違うからです。

ただ、実際にダウン症児を見たことがない親御さんが多いので戸惑いを持っている方がたくさんいらっしゃいます。しかし実際にダウン症の子を育てるということは、意外にも普通の子と変わらない場面が数多くあるのです。そういった情報が流れてこないのが現在の問題点かもしれません。

しかしながら周りからの支援やサポートは健康な子よりも必要です。そういったコミュニティやサポートがあるのかどうかも含めて、産むのかどうかを判断してほしいと思います。

最後に

この記事ではダウン症の特徴について医学的な観点からご紹介しましたが、ダウン症のお子さんたちはそれぞれに個性があり、素晴らしい才能や魅力を持っています。適切な支援と愛情があれば、多くのダウン症のお子さんは充実した生活を送ることができます。不安や疑問がある場合は、専門家に相談し、正確な情報を得ることが大切です。

ダウン症に関するよくある質問

この記事のポイント
  • ダウン症の新生児には顔の特徴として、斜め上向きの目、平坦な顔貌、小さな鼻などが見られます
  • 手足の特徴には、短く幅広い手、単一手掌線(猿線)、親指と人差し指の間が広いなどがあります
  • 筋緊張の低下は全身に見られ、発達の遅れにつながることがあります
  • すべての特徴は個人差があり、一部の特徴だけでダウン症と確定はできません
  • ダウン症の診断には染色体検査による確定診断が必要です

Q1: ダウン症の新生児にはどのような顔の特徴がありますか?

ダウン症の新生児には、以下のような顔の特徴が見られることがあります:

  • 斜め上向きの目(つり目)
  • 平坦な顔貌(顔の中心部が凹んでいない)
  • 目と目の間が広い(眼間開離)
  • 上眼瞼ひだ(内眼角贅皮)
  • 小さく低い鼻
  • 小さな口と相対的に大きく見える舌
  • 小さく低位置にある耳

※これらの特徴には個人差があり、すべての特徴が現れるわけではありません。また、これらの特徴があってもダウン症でない場合もあります。

Q2: ダウン症の赤ちゃんの手足には、どのような特徴がありますか?

ダウン症の赤ちゃんの手足には、以下のような特徴的な所見が見られることがあります:

手の特徴:

  • 短く幅広い手
  • 小指が内側に曲がっている(第5指弯曲)
  • 手のひらに「猿線」と呼ばれる一本の横線がある(単一手掌線)
  • 指が短い

足の特徴:

  • 親指と人差し指の間の隙間が広い
  • 足の裏に特徴的なシワがある
  • 扁平足になりやすい

Q3: ダウン症の新生児はどのようにして診断されますか?

ダウン症の診断は、主に以下のプロセスで行われます:

  1. 身体的特徴の観察:医師が特徴的な顔貌や手足の特徴を確認します。
  2. 身体診察:筋緊張の低下など、全身の状態をチェックします。
  3. 染色体検査(確定診断):血液検査による染色体分析で21トリソミーを確認します。これが最終的な確定診断となります。

確定診断後は、心臓や消化器、聴覚、視覚など、ダウン症に伴う可能性のある合併症の有無を調べるための検査が行われます。これらの情報は、将来の医療ケアや支援計画を立てる上で重要です。

Q4: ダウン症の子どもによく見られる合併症は何ですか?

ダウン症の子どもには、以下のような合併症が見られることがあります:

  • 先天性心疾患:約40-60%のダウン症児に見られ、心室中隔欠損症や心内膜床欠損症などが多いです。
  • 消化器系の問題:十二指腸閉鎖や鎖肛などの先天性消化器異常がある場合があります。
  • 甲状腺機能低下症:甲状腺ホルモンの分泌が少なくなる疾患で、成長や発達に影響します。
  • 聴覚障害:耳の構造上の問題や中耳炎を起こしやすく、聴力低下のリスクがあります。
  • 視覚障害:白内障や近視、乱視などの視力の問題が生じることがあります。
  • 頸椎不安定性:頸椎の靭帯が弱く、特に第1・2頸椎の間の不安定性があることがあります。
  • 免疫系の問題:免疫機能が低下しており、感染症にかかりやすいことがあります。
  • 白血病:ダウン症児は白血病のリスクが高いとされています。

これらの合併症はすべてのダウン症児に現れるわけではなく、適切な医療ケアによって管理できるものも多くあります。定期的な健康チェックと適切な専門医による診察が重要です。

Q5: ダウン症の子どもを育てる上で利用できる公的支援にはどのようなものがありますか?

ダウン症の子どもを育てる上で利用できる主な公的支援には以下のようなものがあります:

  • 療育手帳:知的障害があることを証明する手帳で、各種サービスや手当てを受ける際に必要となります。
  • 身体障害者手帳:心臓疾患などの合併症がある場合に交付されることがあります。
  • 特別児童扶養手当:障害のある20歳未満の子どもを養育している保護者に支給される手当です。
  • 障害児福祉手当:重度の障害があり、日常生活において常時介護を必要とする20歳未満の在宅障害児に支給される手当です。
  • 小児慢性特定疾病医療費助成:対象となる疾患の医療費の自己負担分が軽減されます。
  • 自立支援医療(育成医療):身体の障害を軽減するための手術等の医療費の自己負担が軽減されます。
  • 児童発達支援・放課後等デイサービス:療育や集団生活の経験、生活能力向上のためのサポートを受けられます。
  • 保育所等訪問支援:保育所等に訪問して、集団生活の適応のための専門的な支援を行います。

これらの支援は、障害の程度やお住まいの地域によって利用できるサービスや条件が異なります。最新の情報やご自身の状況に合った支援については、お住まいの市区町村の福祉課や障害福祉課にご相談ください。また、支援を受けるためには申請が必要なものがほとんどですので、早めに情報収集をすることをお勧めします。

Q6: ダウン症の子どもの発達はどのような特徴がありますか?

ダウン症の子どもの発達には、以下のような特徴が見られることがあります:

  • 運動発達の遅れ:筋緊張が低いことから、首のすわり、寝返り、お座り、ハイハイ、歩行などの運動発達が遅れることが多いです。
  • 言語発達の遅れ:言葉の理解や表現の発達が遅れることがあります。手話やジェスチャーなどの視覚的な補助を用いることで、コミュニケーション能力を高めることができます。
  • 認知発達の特性:個人差はありますが、認知能力には遅れがあることが多いです。特に抽象的な概念の理解が難しい場合があります。
  • 視覚的学習の強み:多くのダウン症児は視覚的な情報処理が得意で、絵や写真、ジェスチャーなどを使った学習が効果的なことがあります。
  • 社会的スキル:温かく社交的な性格の子どもが多く、基本的な社会的スキルを身につけることができます。

ダウン症の子どもたちの発達には大きな個人差があります。早期からの適切な療育や支援を受けることで、多くの子どもたちが自分のペースで成長し、様々なスキルを身につけることができます。一人ひとりの強みを生かした支援が重要です。

Q7: 出生前にダウン症を検査する方法にはどのようなものがありますか?

出生前にダウン症を検査する方法には、主に以下のようなものがあります:

非確定的検査(スクリーニング検査):

  • 超音波検査(NT測定):妊娠11〜13週頃に胎児の首の後ろの透明な層(NT)の厚さを測定します。NTが厚い場合、ダウン症などの染色体異常のリスクが高くなる可能性があります。
  • NIPT(新型出生前診断):妊娠10週以降に母体血液から胎児のDNAを分析し、ダウン症などの染色体異常の可能性を高い精度(99%以上)で調べることができます。
  • 母体血清マーカー検査:妊娠15〜20週頃に母体の血液中の特定のタンパク質やホルモンの値を測定し、ダウン症のリスクを評価します。

確定的検査:

  • 羊水検査:妊娠15週以降に羊水を採取して胎児の染色体を直接分析します。確定診断ができますが、流産のリスク(約0.5%)があります。
  • 絨毛検査:妊娠10〜13週頃に胎盤の一部(絨毛)を採取して染色体を分析します。早期に結果がわかりますが、羊水検査よりもやや流産リスクが高いとされています。
  • 臍帯血検査:妊娠後期に臍帯(へその緒)から血液を採取して染色体を分析します。

検査を受けるかどうかは個人の選択です。それぞれの検査の特性、限界、リスクを理解した上で判断することが大切です。検査前後の遺伝カウンセリングを受けることをお勧めします。特にNIPTなどの新しい検査方法については、最新の情報と専門家の助言を得ることが重要です。

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プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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