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生まれたばかりの赤ちゃんの顔を見て、「目がつり上がっているように見える」「耳が小さい気がする」「手のひらのしわが一本だった」——そんなことが気になって、この記事にたどり着かれた方が多いのではないでしょうか。その心配は、けっして大げさなものではありません。ただ、最初にお伝えしておきたいことがあります。
新生児の見た目だけで、21トリソミー(ダウン症候群)かどうかを決めることはできません。ここで挙げる所見は、ダウン症のないお子さんにもごくふつうに見られるものばかりです。この記事では、新生児期に実際にどんな所見が見られるのか、生理的なむくみとどう違うのか、気になったときにどう確かめればよいのかを、臨床遺伝専門医の立場から順に整理します。次の妊娠で調べる方法はNIPT(新型出生前診断)のページで解説しています。
⏱️ 30秒でわかる要約
👶 Q. 生まれたての新生児の顔で、ダウン症かどうかわかりますか?
顔だけでは決められません。生まれたての赤ちゃんは、まぶたや顔がむくんで平たく見えるのがふつうで、多くは生後数日〜1週間ほどで変わります。ダウン症候群に関係する顔立ちは、むくみが引いたあとも残る骨格の特徴です。抱っこしたときの体のやわらかさや哺乳の様子とあわせて医師が判断し、確定は採血による染色体検査で行います。
🖐 Q. ますかけ線があると、ダウン症ですか?
ますかけ線(単一手掌屈曲線)はおよそ30人に1人にみられ、多くは病気と関係ありません。ダウン症候群のある方では報告により約半数〜9割にみられますが、ないこともあります。ますかけ線だけでは決め手になりません。
🧬 Q. 次の妊娠では、生まれる前に調べられますか?
NIPT(新型出生前診断)は採血で行うスクリーニング検査で、当院では妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。ダウン症候群のほか、一部の自閉症・発達障害の原因(22q11.2欠失症候群など)も調べられます。陽性なら確定検査(羊水検査・絨毛検査)まで院内で受けられます。
生まれたての顔は、みんなむくんでいる ― 一時的な変化と、残る特徴の違い
産まれた直後の赤ちゃんの顔は、多かれ少なかれむくんでいます。狭い産道を通るときの圧力や、出生後しばらく続く体の水分バランスの変化などによって、まぶたが腫れぼったくなり、顔全体が平べったく見えることは珍しくありません。「目が細い」「鼻がぺちゃんこ」「顔が四角い」と感じても、その多くは生後数日から1週間ほどでみるみる変わっていきます。
一方、21トリソミーに関連する顔立ちの特徴は、むくみが引いたあとも残ります。顔の中央部(鼻の付け根から上あごにかけて)の骨の育ち方がゆっくりであることによる平坦さ、後頭部が平らで頭が前後に短い形(短頭)などは、水分が抜けても変わらないためです。つまり、「時間が経っても同じ印象が続くかどうか」が、ひとつの分かれ目になります。
「鼻が低い・ぺちゃんこ」に見えるとき
赤ちゃんの鼻は、もともと鼻すじ(鼻根部)が低く、横から見ると平らに見えるのがふつうです。生まれた直後はむくみも重なるため、「鼻が低い」と感じるのは多くの赤ちゃんに共通することです。
21トリソミーでは、顔の中央部の骨の育ちがゆるやかなため、鼻すじが平らに見える所見(鼻根部平坦)が多く、トルコでダウン症候群のある100人(1か月〜33歳)を調べた研究では79%にみられました[6]。ただしこれは成長後を含む数字で、赤ちゃんの鼻の高さだけで判断することはできません。鼻だけを見るのではなく、むくみが引いたあとの顔全体の印象と、筋肉の張りや哺乳の様子をあわせて見ることが大切です。
⚠️ 大前提として
ここから挙げる所見は、いずれもダウン症のないお子さんにも普通に見られます。所見の数を数えて判断するものではありません。確かめる方法は後半でご説明します。
なお、産院の医師や助産師は、顔つきだけでなく全身の様子(筋肉の張り、泣き方、哺乳、心臓の音)をあわせて見ています。トルコの研究では、ダウン症候群のある100人の97%に内眼角贅皮や眼裂斜上がみられた一方[6]、その一つひとつは一般の方にも見られる特徴です。単独の所見に診断的な意味はありません。
💡 用語解説:21トリソミー/顔面中部低形成
21トリソミー…21番染色体が通常より1本多い状態のこと。ダウン症候群の原因です。染色体が1本増えることで、その上にある多くの遺伝子の量が1.5倍になり、体のさまざまな場所の育ち方に影響します(遺伝子量のしくみ)。
顔面中部低形成…目と目の間から上あごにかけての骨の育ちがゆるやかで、横から見たときに顔の中央がへこんで見える状態。むくみと違い、時間が経っても続くのが特徴です。
🩺 院長コラム【夜中にスマホで検索している、あなたへ】
産後の入院中や退院して間もない時期に、赤ちゃんの顔を見ては検索し、また見ては検索する、ということは誰にでも起こりうることだと考えています。けれども、画像検索で似た写真を探し続けても、不安が増えることはあっても答えには近づきません。
臨床遺伝専門医でも、見た目だけで判断することはしません。新生児期は顔つきがいちばん分かりにくい時期でもあります。確かめる方法は赤ちゃんの採血による染色体検査で、結果も1〜2週間ほどで出ます。気になったときは、産院の小児科の先生に「顔つきが気になっています」と伝えることが、確かめるための最初の一歩だと考えています。
目のこと ― つり目に見える理由、目が開かないとき
「つり目」は、まぶたの傾きと目頭のひだで決まる
21トリソミーでよく挙げられる「つり目」は、医学的には眼裂斜上といい、目のふちのラインが目頭から目尻に向かって少し上がっている状態を指します。これに、目頭を覆う皮膚のひだ(内眼角贅皮)が加わると、いっそうつり上がって見えます。
ここで大切なのは、内眼角贅皮も眼裂斜上も、日本を含む東アジアの赤ちゃんにはごくありふれた特徴だということです。とくに乳児期は鼻の付け根がまだ低く、目頭のひだが目立ちやすいため、多くの赤ちゃんが「つり目」に見えます。成長して鼻筋が高くなるにつれ、自然に目立たなくなっていきます。
👁 用語解説:眼裂斜上・内眼角贅皮
眼裂斜上(がんれつしゃじょう)…まぶたの開き口のラインが、目尻に向かって上向きに傾いていること。いわゆる「つり目」の医学的な言い方です。
内眼角贅皮(ないがんかくぜいひ)…目頭をおおう三日月形の皮膚のひだ。かつては別の呼び方をされていましたが、現在はこの用語を使います。乳幼児にはとても多く見られる、正常範囲の特徴です。まぶたが一重か二重かは、このひだの張り方でも変わります。
「新生児の目が開かない」と感じたとき
「生まれてから何日も、ほとんど目を開けてくれない」と心配になる方もいます。新生児がまぶたを閉じている時間が長いのは、出生直後のまぶたのむくみ、明るさへの反応、そして一日の大半を眠って過ごすという生理的な理由によるものがほとんどです。むくみが引く生後数日から1週間で、開いている時間は自然に増えていきます。
ただし、まぶたが片方だけ下がったままである、目やにや充血がずっと続く、光に対してまったく反応が乏しい、といった場合は別です。21トリソミーのあるお子さんでは、鼻涙管が詰まりやすい、斜視や強い屈折異常が出やすいなど、目のトラブルが60〜80%に見られると報告されており(生まれつきの白内障は1%未満〜3%)[1]、いずれにしても眼科での確認が役に立ちます。これはダウン症かどうかとは別に、受診する価値のあるサインです。
耳のこと ― 形・位置・折れ耳・副耳
耳は、赤ちゃんの外見の中でもとくに個人差が大きい部分です。21トリソミーでは耳が小さめで、上のふち(耳輪)が内側に折れ込んでいる、耳たぶが小さい、耳の位置がやや低いといった所見が挙げられます。ただ、これらはいずれも程度の問題で、はっきりと線を引けるものではありません。
「耳の位置が低い」とはどういう状態か
医学的な耳介低位は、見た目の印象ではなく、目尻を結んだ線より耳の付け根の上端が下にあるかどうかで判断します。赤ちゃんは首が短く、寝かせた姿勢だと耳が低く見えやすいため、ご自宅で正確に見るのは難しい所見です。気になるときは、健診で「耳の位置はどうですか」と一言たずねるのが確実です。
折れ耳・副耳は、ダウン症の所見ではありません
耳の上のふちが折れている「折れ耳」は、子宮の中での姿勢や産道での圧迫でも起こり、多くは自然に、あるいは新生児期の簡単な矯正で形が整います。
耳の前に小さな皮膚のふくらみがある副耳は、出生1,000人あたりおよそ5〜10人と、比較的よく見られる所見です。副耳だけが単独である場合、染色体の病気を疑う理由にはなりません。ほかに気になる所見がなければ腎臓の超音波検査も通常は不要とされ、一方で、副耳の有無にかかわらず、すべての赤ちゃんに聴覚スクリーニングを行うことがすすめられています[7]。副耳や耳の前の小さなくぼみが、難聴や腎臓の所見と一緒に見られる場合は、鰓耳腎症候群など別の病気を考えることがあります。
👂 耳の所見で本当に大事なのは「形」より「聞こえ」
21トリソミーのあるお子さんは、中耳炎が50〜70%、難聴が約75%にみられると報告されており[1]、新生児聴覚スクリーニングとその後の定期確認が重要になります。
聞こえの問題はことばの育ちに直結します。スクリーニングで「要再検」となったときは、感音難聴と伝音難聴のどちらなのかを含めて、耳鼻科で早めに確認していただくことをおすすめします。原因を詳しく調べる場合には難聴の遺伝子検査という選択肢もあります。
ますかけ線(単一手掌屈曲線)― なぜできる?あったらどうなる?
手のひらを横切るしわが2本ではなく1本につながっているもの——手相の世界でますかけ線と呼ばれるこの線は、医学では単一手掌屈曲線といいます。赤ちゃんの手を開いたときにこれを見つけて、不安になって調べ始めた方も多いと思います。順を追って整理します。
なぜできるのか ― 妊娠12週ごろまでに決まる
手のひらのしわは、生まれてからの手の使い方でできるのではありません。おなかの中にいるうちに、多くは妊娠12週までにできあがります[4]。この時期の手のひらの形や指の動きのわずかな違いで、本来2本に分かれるはずのしわが1本につながることがあると考えられています。
21トリソミーのあるお子さんに単一手掌屈曲線が多いのは、この時期の手の育ち方や筋肉の張り方に違いが出やすいためと考えられています。つまり「ますかけ線があるから何かが起きる」のではなく、おなかの中での育ち方の結果が線として残っている、という関係です。
どのくらいの人にあるのか ― 数字で見る
🖐 単一手掌屈曲線(ますかけ線)がある割合
トルコの研究は、1か月〜33歳のダウン症候群のある方100人を対象にしたものです。
この2つの数字から、大切なことが2つ読み取れます。ひとつは、21トリソミーのあるお子さんでも、ますかけ線がないことは珍しくないということ。もうひとつは、ますかけ線がある人の大多数は、何の病気もないということです。男性は女性の約2倍みられることも知られています[4]。
🖐 用語解説:単一手掌屈曲線/ますかけ線
手のひらを横切る「感情線」と「頭脳線」にあたる2本のしわが、1本につながったもの。医学用語では単一手掌屈曲線と呼びます。かつて霊長類にたとえた古い呼び方もありましたが、現在は使いません。片手だけのことも、両手のこともあります。両手にあると気になりやすいのですが、それだけで疑いが強まるという明確な基準はありません。ほかの所見と一緒に見て、はじめて意味を持つ「手がかり」のひとつです。
「ますかけ線=遺伝子の異常」ではありません
検索すると「染色体異常のサイン」といった表現に行き当たりますが、これは正確ではありません。単一手掌屈曲線は、21トリソミーのほかにも複数の染色体の病気で見られることが知られている一方、それ単独では診断の根拠になりません。ご両親やごきょうだいに、ほかの症状なく同じ線がある方もいます。
医師が気にするのは、ますかけ線に加えて、筋肉のやわらかさ・哺乳のしにくさ・心臓の雑音・顔立ちなど、複数のことが重なっているときです。逆にいえば、健診で体重が順調に増え、しっかり泣き、おっぱいやミルクを問題なく飲めているなら、手のひらのしわ1本を心配しすぎる必要はありません。
🩺 院長コラム【手のひらのしわを、何度も確かめてしまうとき】
ますかけ線に気づいてから、授乳のたびに赤ちゃんの手を開いて確かめてしまう。そうなるのは自然なことだと考えています。小さな違いに気づけるのは、それだけ赤ちゃんをよく見ているからです。
ただ、しわを見つめ続けても答えは出ません。ご心配が消えないときは、遠慮なく「調べてください」とおっしゃってよいのです。染色体を調べるのは採血だけで、結果が出れば、心配し続ける時間そのものから解放されます。確かめることを選ぶのも、赤ちゃんのための大切な判断だと考えています。
手と足のほかの特徴 ― 指の長さ、小指、足の親指
✋ 手
手のひらは幅広く、指は短めの傾向があります。
小指が薬指側に軽く曲がる(第5指弯曲)ことがあり、小指の関節のしわが1本少なく見えることもあります。
単一手掌屈曲線も、この手の特徴のひとつです。
🦶 足
足の親指と人差し指のあいだが広く空く(サンダルギャップ)ことがあります。
足の裏の、親指の付け根から続く深いしわが目立つこともあります。
関節がやわらかく、歩き始めてから扁平足になりやすい傾向があります。
❌ よくある誤解:「指が長いとダウン症」
事実は逆です。21トリソミーでは手も指も短めになる傾向があります。指が細く長いことは、まったく別の体質や、ごくまれに別の病気で話題になるもので、ダウン症の所見ではありません。
サンダルギャップも第5指弯曲も、ダウン症のないお子さんに普通に見られます。足の指の開き具合は、赤ちゃんの姿勢や靴下の履かせ方でも印象が変わります。手足の所見は、あくまで全体像の一部として見てください。
抱っこした感じと哺乳 ― 見た目より大切なサイン
新生児期に医師がもっとも重視するのは顔立ちではなく、抱いたときの筋肉の張り具合です。21トリソミーのある赤ちゃんのほぼ全員に筋緊張の低さがみられ[5]、抱き上げたときに体が全体にやわらかく、手足がだらんと下がりやすい状態(フロッピーインファント)になります。
筋緊張の低さは、そのまま吸う力の弱さにつながります。おっぱいに吸いつくまでに時間がかかる、途中で疲れて眠ってしまう、飲む量がなかなか増えない——こうしたことが続くと、体重の増え方もゆっくりになります。授乳がうまくいかないことは、顔立ちより先に気づかれる手がかりになることがあります。
🍼 吸う力が弱い理由はたくさんあります
早産、黄疸、舌小帯の張り、単に眠りがちな時期であること——どれもよくある原因です。まずは体重の増え方を助産師さんと一緒に確認してください。
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運動の発達も、首すわり・寝返り・おすわりと、全体にゆっくり進みます。ただしこれは新生児期に分かることではありません。乳児期の発達の節目を目安にしながら、健診で相談していくのが現実的です。なお、呼吸が止まりがちに見えるときは新生児の無呼吸発作など別の観点からの確認も必要になります。
気になったときに、どう確かめるか
ここまで読んで、それでも心配が残る方へ。確かめる道すじは、はっきりしています。
まずは産院の小児科医・新生児科医に伝えることです。「顔つきと手のひらのしわが気になります」で十分で、遠慮は要りません。全身の診察では、筋緊張、心臓の音、哺乳、体重の増え、目と耳の確認をあわせて行います。そのうえで、21トリソミーかどうかは、染色体検査(採血)でしか決まりません。
確定に用いるのは、赤ちゃんの血液から細胞を培養して染色体を1本ずつ並べて見るG分染法という方法で、結果は核型として報告されます。採血のみで、結果が出るまではおおむね1〜2週間です[12]。急ぐ場合は、21番染色体の数だけを数時間〜数日で調べるFISH法などの迅速検査を先に行うこともあります[12]。標準型・転座型・モザイク型のどれにあたるかも、この検査で分かります。
より細かい染色体の過不足を調べる場合にはマイクロアレイ染色体検査を追加することもあります。当院でも染色体検査と、その前後の臨床遺伝専門医による説明をお受けいただけます。
新生児マススクリーニングや聴覚検査で、ダウン症はわかる?
生まれて数日のうちに受ける新生児マススクリーニング(かかとからの採血)は、先天性甲状腺機能低下症や先天代謝異常症などを調べる検査で、ダウン症候群などの染色体の病気は対象になっていません[11]。新生児聴覚スクリーニングも聞こえを調べる検査です。これらで「異常なし」でも、染色体について分かったことにはならず、反対に何か指摘されても、それだけでダウン症候群と決まるわけではありません。染色体を調べるのは、医師が必要と判断して行う染色体検査です。
新生児期に確認される合併症と、その後の支援
21トリソミーと分かった場合、生まれてすぐに確認しておきたいことがいくつかあります。米国小児科学会の健康管理ガイドライン[1]にもとづく主なものを整理します。いずれも「早く見つけて対応する」ことに意味があり、多くは治療や管理が可能です。
🩺 新生児期に確認すること
| 確認すること | 頻度の目安 | 新生児期の対応 |
|---|---|---|
| 先天性心疾患 | 約50% | すべての赤ちゃんに心臓超音波検査を行う。多くは手術で治療できます |
| 聞こえの問題 | 難聴約75% 中耳炎50〜70% |
新生児聴覚スクリーニングと、その後の定期確認 |
| 目の問題 | 60〜80% | 白内障(1%未満〜3%)の有無を確認。斜視や屈折異常は成長後も定期的に |
| 消化管の閉鎖 | 約12% | 十二指腸閉鎖など。嘔吐や排便の様子を確認し、必要なら手術 |
| 甲状腺の機能 | 先天性は2〜7% | 新生児マススクリーニングで確認します(日本では先天性甲状腺機能低下症が対象) |
| 血液の異常(TAM) | 約4〜10% | 生後3日までに血算を確認。多くは自然に落ち着きます |
| 症状のある環軸椎不安定性 | 1〜2% | 新生児期の検査は不要。成長後、症状があれば評価します |
出典:米国小児科学会のガイドライン[1]。
新生児期に一時的に白血球が増えるTAM(一過性骨髄異常増殖症)は、多くが生後3か月ほどで自然に落ち着きます。ただし、TAMがあったお子さんは4歳までに約30%が白血病を発症すると報告されており、その後の経過観察が欠かせません。21トリソミーのお子さん全体でみると、白血病はまれ(約1%)です[1]。
受けられる支援 ― 申請しないと始まらないものがあります
日本の支援制度は、多くが申請してはじめて使えるしくみです。療育手帳(自治体により愛の手帳などの名称)、心疾患などがある場合の身体障害者手帳[8]、特別児童扶養手当、小児慢性特定疾病医療費助成、手術費用の負担を軽くする自立支援医療(育成医療)、通所で療育を受ける児童発達支援などがあります。内容と基準は自治体で異なるため、お住まいの市区町村の障害福祉の窓口へ早めにご相談ください。
知的発達や将来の見通しについては、数字だけが独り歩きしやすい領域です。知能指数と特徴や平均寿命の実際もあわせてご覧いただくと、全体像がつかみやすくなります。より医学的な総論はダウン症候群(21トリソミー)の総論と21番染色体の異常にまとめています。
次の妊娠を考えるときに
日本では、21トリソミーのある赤ちゃんは年間およそ2,200人、出生1万人あたり約22人と推計されており[2]、日本産婦人科医会の先天異常モニタリングでは、2019年は出生734人に1人と報告されています[3]。決してまれな存在ではありません。
上のお子さんに21トリソミーがあった場合、次の妊娠での再発リスクは核型のタイプによって考え方が変わります。転座型では、ご両親の染色体を調べることが次の妊娠の見通しに直接つながるため、まず赤ちゃんの核型を確認しておくことが大切です。
妊娠中の検査については、NIPTは採血で行う非確定的検査であり[9]、確定には羊水検査・絨毛検査が必要です[10]。当院ではNIPT陽性後の確定検査まで院内で受けられます。エコー所見だけで判断できないこと、エコーで異常なしでも分からない場合があることも、あらかじめ知っておいていただきたい点です。受けるかどうかも含めて、オンラインでもご相談いただけます。
次の妊娠でNIPTを考えるときに、知っておいていただきたいことがあります。当院のNIPTは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。そして、ダウン症候群だけを調べれば十分でしょうか。当院のNIPTは、スタンダードプランから22q11.2欠失症候群などの微小欠失症候群を、ダイヤモンドプラン・インペリアルプランでは単一遺伝子の病気まで調べられ、その中には一部の自閉症・発達障害の原因も含まれます。陰性でも自閉症・発達障害がないとは言えませんが、ダウン症候群のほかにも生まれる前に調べられる病気があることは、検査を選ぶ前に知っておいてよいことだと考えています。
\ 次の妊娠でNIPTを考えている方へ /
まだプランを決めていない方は、調べられる範囲を各プランのページで比べられます。
スタンダード | プレミアム | ダイヤモンド | 双子マックス | インペリアル
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まとめ
📌 重要ポイントのまとめ
- ➤むくみとの違い:生理的なむくみは生後数日〜1週間で引く。骨格による特徴は引いたあとも残る
- ➤目・耳・鼻:つり目・内眼角贅皮・低い鼻すじは東アジアの乳児にごく多い。副耳が単独であればダウン症の所見ではない
- ➤ますかけ線:多くは妊娠12週までにできる。一般で約30人に1人、21トリソミーでも報告により約半数〜9割=あってもなくても決め手にならない
- ➤見た目より大切なサイン:抱っこしたときのやわらかさ、吸う力、体重の増え方
- ➤確かめ方:まず産院の小児科医へ。新生児マススクリーニングでは分からず、確定は採血による染色体検査(結果は1〜2週間)
赤ちゃんの小さな違いに気づけるのは、それだけ丁寧に見つめている証拠です。その気づきは、心配を抱え続けるためではなく、確かめて安心するために使ってください。どんな結果であっても、そこから先の道すじは必ずあります。
よくある質問(FAQ)
Q1. ダウン症の新生児には、どんな特徴がありますか?
顔では平坦な顔立ち、つり目(眼裂斜上)、内眼角贅皮、低い鼻、小さめの耳、体では筋緊張の低さ、手のひらの単一手掌屈曲線(ますかけ線)、第5指弯曲、サンダルギャップなどが挙げられます。ただし個人差がとても大きく、すべてがそろうわけではありません。また一つひとつはダウン症のないお子さんにも見られるため、見た目だけで判断することはできません。
Q2. ますかけ線があると、ダウン症の可能性は高いですか?
ますかけ線(単一手掌屈曲線)は一般の方の約30人に1人に見られ、21トリソミーのある方では報告により約半数〜9割にみられます。つまり、ますかけ線がある方の大多数には何の病気もなく、逆に21トリソミーがあってもこの線がないことがあります。単独では判断材料になりません。筋緊張の低さや哺乳のしにくさなど、ほかの所見と重なっているかどうかが大切です。
Q3. ますかけ線はなぜできるのですか?
手のひらのしわは、おなかの中にいるうちに、多くは妊娠12週までにできあがります。この時期の手のひらの形や指の動きのわずかな違いで、本来2本に分かれるしわが1本につながることがあると考えられています。生まれてからの手の使い方でできるものではありません。
Q4. 新生児のむくみと、ダウン症の顔立ちはどう見分けますか?
生理的なむくみは生後数日〜1週間ほどで引いていきます。一方、顔の中央部の骨の育ち方による平坦さなどは、むくみが引いたあとも続きます。つまり「時間が経っても同じ印象が続くか」がひとつの目安です。ただし顔だけで判断せず、筋緊張や哺乳の様子とあわせて医師に見てもらうことが大切です。
Q5. 新生児が目を開けないのですが、ダウン症でしょうか?
新生児がまぶたを閉じている時間が長いのは、出生直後のまぶたのむくみや、一日の大半を眠って過ごす生理的な理由によることがほとんどで、生後数日〜1週間で自然に開いている時間が増えます。ただし片方だけ下がったままである、目やにや充血が続く、光への反応が乏しいといった場合は、ダウン症かどうかとは別に眼科での確認をおすすめします。
Q6. 耳の形や副耳は、ダウン症のサインですか?
21トリソミーでは耳が小さめ、耳輪が折れ込む、位置がやや低いといった所見が挙げられますが、いずれも程度の問題です。耳の前の小さなふくらみである副耳は出生1,000人あたり5〜10人と比較的多く、単独であれば染色体の病気を疑う理由にはなりません。聴覚スクリーニングは、副耳の有無にかかわらずすべての赤ちゃんに行うことがすすめられています。
Q7. 「指が長いとダウン症」と聞きましたが本当ですか?
事実は逆で、21トリソミーでは手も指も短めになる傾向があります。小指が薬指側に軽く曲がる第5指弯曲が見られることもあります。指が細く長いことは、ダウン症の所見ではありません。
Q8. どうすればはっきりさせられますか?結果はいつ出ますか?
まず産院の小児科医・新生児科医に「気になっています」とお伝えください。全身の診察のうえで、必要と判断されれば赤ちゃんの採血による染色体検査(G分染法)を行います。これが確定の方法で、結果はおおむね1〜2週間で出ます。標準型・転座型・モザイク型のどれかも同時に分かり、次の妊娠を考えるうえでも重要な情報になります。
Q9. 赤ちゃんの鼻が低いのはダウン症のサインですか?
赤ちゃんの鼻は、もともと鼻すじが低く平らに見えるのがふつうで、生まれた直後はむくみも重なります。21トリソミーでは鼻すじが平らに見える所見が多いものの、鼻の高さだけで判断することはできません。むくみが引いたあとの顔全体の印象や、筋肉の張り・哺乳の様子とあわせて医師が判断します。
Q10. 新生児マススクリーニングでダウン症はわかりますか?
わかりません。新生児マススクリーニングは先天性甲状腺機能低下症や先天代謝異常症などを調べる検査で、ダウン症候群などの染色体の病気は対象になっていません。染色体を調べるには、医師が必要と判断して行う染色体検査(採血)が必要です。
🏥 次の妊娠を考えるときに
当院のNIPTは、ダウン症候群のほか、一部の自閉症・発達障害の原因(22q11.2欠失症候群などの微小欠失や単一遺伝子の変化)まで調べられます。臨床遺伝専門医が常駐し、陽性なら確定検査(羊水検査・絨毛検査)まで院内で受けられます。主要な検査項目は3日以内、マイクロアレイ検査は2週間ほどで結果が出ます。
まだ決めていない方は:出生前診断(NIPT)を受けるべきか迷う方へ | NIPTの費用・料金
NIPT専用ダイヤル 03-3408-3768(2025年6月に産婦人科を併設し、羊水検査・絨毛検査とも院内で実施しています)
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参考文献
- [1] Bull MJ, Trotter T, Santoro SL, Christensen C, Grout RW; Council on Genetics. Health Supervision for Children and Adolescents With Down Syndrome. Pediatrics. 2022;149(5):e2022057010. [DOI 10.1542/peds.2022-057010]
- [2] Sasaki A, Sago H. Equipoise of recent estimated Down syndrome live births in Japan. Am J Med Genet A. 2019;179(9):1815-1819. [PubMed 31313514]
- [3] Sugo Y, Kurasawa K, Saigusa Y, Hamanoue H, Hirahara F, Miyagi E. Changes in the number of babies born with Down syndrome in Japan. J Obstet Gynaecol Res. 2022;48(9):2385-2391. [PubMed 35762191]
- [4] MedlinePlus Medical Encyclopedia. Single palmar crease(米国国立医学図書館, 2025年4月改訂) [MedlinePlus]
- [5] Pal A, Daley SF. Down Syndrome. StatPearls. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing(2026年2月更新) [NCBI Bookshelf]
- [6] Kaya G, Alavanda C. Comprehensive Assessment of Dermatologic and Dysmorphic Manifestations in Patients With Down Syndrome. Skin Res Technol. 2024;30(10):e70077. [DOI 10.1111/srt.70077]
- [7] Dancel R, Price D, Kaufmann L. Evaluation of Newborns with Preauricular Skin Lesions. Am Fam Physician. 2012;85(10):993-998. [米国家庭医学会]
- [8] 厚生労働省「障害者手帳」 [厚生労働省]
- [9] 出生前検査認証制度等運営委員会「NIPT(非侵襲性出生前遺伝学的検査)とは」 [公式サイト]
- [10] 出生前検査認証制度等運営委員会「羊水検査とは」 [公式サイト]
- [11] 大阪府「新生児マススクリーニング検査」(対象疾患の一覧) [大阪府]
- [12] Mayo Clinic Laboratories. Chromosome Analysis, Congenital Disorders, Blood(Test ID: CHRCB) [Mayo Clinic Laboratories]
※本記事は一般の方に向けた情報提供を目的とするもので、個別の診断・検査の選択を示すものではありません。検査については臨床遺伝専門医にご相談ください。






