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出生前診断とダウン症について知っておくべきこと

妊娠期間中に行われる「出生前診断」は、未来の赤ちゃんの健康状態や発達に関する重要な情報を提供する手段として注目されています。この記事では、出生前診断の基本概念と、特に焦点を当てるべき一つの疾患である「ダウン症」(トリソミー21)について基本的な情報を掘り下げていきます。妊婦やパートナーとして、これらの情報を理解することは将来の家族計画において不可欠です。では、まずは出生前診断についての基本的な知識から始めましょう。

ダウン症に関する基本情報

1. ダウン症とは?

ダウン症は、染色体異常に起因する症候群で、主に21番染色体の三本目のコピーが存在することによって引き起こされます。この染色体異常により、身体や知的な発達に異常が見られる特徴的な症状が現れます。

2. 症状と特徴

  • 身体的な特徴: 一般的な特徴には、特に目の形状、平たい顔立ち、小さな耳、短い首、指の短さなどが挙げられます。
  • 知的な発達: 多くの場合、知的な遅れが見られますが、その程度は個人差があります。IQは高くても70くらいです。
  • 健康の課題: 共通する健康上の課題としては、心臓病、耳の感音性の問題、甲状腺の機能不全などがあります。
  • 言語の発達: 言葉の遅れや理解力の低下が見られることがあります。
  • 運動の発達: 筋力の低下や運動の協調性の低下が見られることがあります。
  • 心臓病: 50%以上のダウン症患者が心臓病を抱えていることがあります。

3. 発生率と確率

ダウン症のお子さんが生まれるのは、新生児700人に一人程度です。ダウン症は一般的に、母親の年齢が上がるにつれて発生率が増加します。ただし、全てのダウン症の症例の約80%は、母親が35歳未満で生まれます。出生前診断によってダウン症のリスクを評価する際、母体年齢や検査結果に基づいた確率が示されます。

4. 出生前診断の役割

ダウン症の診断には、NIPT新型出生前診断)や絨毛検査羊水検査確定検査)などが利用されます。これらの検査は、胎児がダウン症を有している可能性をより正確に評価するのに役立ちます。

5. サポートと治療

ダウン症のある子供やその家族は、多職種にわたるサポートが必要です。特に、早期の介入や教育プログラムが重要です。心臓病やその他の健康課題に対する治療も含め、専門的な医療チームのサポートが重要です。これらの基本情報を把握することで、出生前診断においてより意識的な選択ができ、将来の子供とその家族へのサポートが向上します。

出生前診断とは?

出生前診断(Prenatal Diagnosis)は、妊娠中に行われるさまざまな医学的検査や検査技術を指し、胎児の健康状態や発達に関する情報を提供することを目的とします。これらの検査は通常、妊娠初期から中期にかけて行われます。

主な出生前診断の手法には以下のようなものがあります。

確定検査:これで陽性になると確定診断となります。
  • 絨毛検査(Chorionic Villus Sampling, CVS):
    妊娠10週から13週ごろに行われ、絨毛組織を採取し染色体異常や遺伝子異常を評価します。
  • 羊水検査(Amniocentesis):
    妊娠15週から20週ごろに行われ、羊水を採取して胎児の染色体や遺伝子異常、および特定の先天性疾患を検査します。
非確定検査スクリーニング):これで陽性になっても疑われるだけで、診断確定には確定検査が必要です
  • 超音波検査(Ultrasound):
    妊娠週数や胎児の発育、器官の形成などを観察するために使用されます。異常が疑われる場合、さらなる検査が推奨されることがあります。
  • 侵襲的出生前診断、新型出生前診断(Non-Invasive Prenatal Testing, NIPT):
    血液検査を通じて胎児のDNAを解析し、主に染色体異常(例: トリソミー21、18、13)を検出します。この検査は比較的安全で非侵襲的です。
  • 胎児心拍数モニタリングや胎児心電図などの検査:
    胎児の心拍数や心電図をモニターすることで、胎児の健康状態を確認します。

これらの検査は、異常が検出された場合には適切な医療ケアやサポートを提供するため、また親が将来の出産に関する意思決定を行うために利用されます。ただし、これらの検査には一定のリスクが伴うため、医師との十分な相談が重要です。

出生前診断の目的と意義

1. 異常や疾患の早期発見:
出生前診断の主な目的は、胎児の異常や疾患を早期に発見することです。これにより、妊娠中や出産後に必要な医療ケアが適切に提供され、適切な対応が可能となります。
2. 健康な妊娠と出産の促進:
出生前診断は、妊娠中の潜在的なリスクを特定し、妊婦が健康で安全な状態で妊娠および出産を経るための条件を整えます。これにより、母体と胎児の健康が最大限に保たれます。
3. 親の意思決定のサポート:
異常が検出された場合、親には将来の出産に関する重要な意思決定が求められます。出生前診断は、親に対してその情報を提供し、異常の程度や将来のケアについての理解を深め、適切な意思決定をサポートします。
4. 精密医療と治療の提供:
出生前診断によって特定された異常や疾患に対しては、早期の治療や介入が可能となります。これにより、胎児や新生児の健康状態を最大限に改善することが期待されます。
5. 遺伝的リスクの評価:
親の遺伝的な特性や家族歴に基づいて、特定の遺伝子疾患や染色体異常のリスクを評価することができます。これにより、遺伝的なリスクが高い家族にとっては早期の対応が可能となります。
6. 心理的サポートとカウンセリング:
出生前診断の結果には精神的な影響があることから、カウンセリングが提供されます。親が結果に対処し、将来にわたるケアプランを立てる際に心理的なサポートが非常に重要です。
7. 健康な妊娠をサポートする総合的なアプローチ:
出生前診断は、妊娠中における健康管理を促進する総合的なアプローチの一環として位置づけられます。これにより、健康な出産と新生児の誕生がサポートされます。

出生前診断の目的と意義は、未来の子供とその家族が健康で幸福な生活を送るために不可欠な要素となっています。

出生前診断でなぜダウン症がターゲットになってきたのか

出生前診断が主にダウン症をターゲットにする理由は、ダウン症が比較的頻繁に発生し、また知的障害や健康上の課題を伴う可能性が高いためです。

高い発生率:
ダウン症は染色体の異常によるもので、他の染色体異常よりも比較的頻繁に発生します。一般的に、21番染色体の三本目のコピーが存在するトリソミー21型が最も一般的です。そのため、出生前診断で対象になる異常の中でダウン症が最もよく調査されることがあります。
知的障害や健康上の課題:
ダウン症は知的障害を伴いやすく、心臓病やその他の健康上の課題も一般的です。出生前にこれらの状態を特定することは、早期の介入や治療を可能にし、将来の子供と家族に対するサポートを提供するために重要です。
妊婦の年齢との関連:
妊娠中の女性の年齢が高いほど、ダウン症の発生率が上昇します。そのため、35歳以上の妊婦において、ダウン症の検査がより頻繁に勧められることがあります。これは、出生前診断が主に高齢妊婦においてダウン症のリスクを評価するために行われる一因です。
検査の進化と安全性の向上:
出生前診断の検査方法が進化し、非侵襲的な方法が増えたことで、多くの親が検査を受ける選択をしやすくなりました。特にNIPT(非侵襲的出生前診断)などの技術が発展したことで、妊娠初期からより安全にダウン症を含む染色体異常の検査が可能になりました。

これらの理由から、ダウン症は出生前診断の対象として選ばれ、親がより正確な情報を得て意識的な意思決定を行うことが支援されるようになっています。ただし、これはあくまで一つの側面であり、検査の選択や結果に関しては個々の家族や医療専門家との相談が必要です。

ダウン症検査の種類とその違い

ダウン症検査にはいくつかの異なる方法があり、それぞれ異なる特徴や利点があります。以下に、主なダウン症検査の種類とその違い、およびNIPTの特徴と利点について説明します。

ダウン症検査の主な種類とその違い

絨毛検査(Chorionic Villus Sampling, CVS)

特徴: 妊娠10週から13週ごろに行われ、絨毛組織を採取します。
利点: 早期に結果が得られ、高い診断精度があります。
注意点: 流産のリスクがわずかに高まる可能性があります。

羊水検査(Amniocentesis)

特徴: 妊娠15週から20週ごろに行われ、羊水を採取します。
利点: 高い診断精度があり、広範な染色体異常や遺伝子異常の検査が可能です。
注意点: 流産のリスクが少し高まります。

非侵襲的出生前診断、新型出生前診断(Non-Invasive Prenatal Testing, NIPT)

特徴: 妊娠10週以降、母体の血液中の胎児DNAを解析します。
利点: 非侵襲的で安全、高い診断精度があります。
注意点: 異常が検出された場合、確定診断のために絨毛検査や羊水検査が必要な場合があります。

NIPTの特徴と利点

非侵襲的:NIPTは血液検査のため、胎児への侵襲がなく、安全でリスクが低いです。
高い診断精度:NIPTは特にトリソミー21(ダウン症)、トリソミー18、トリソミー13の検査において高い診断精度を持っています。
早期に実施可能:妊娠10週以降から実施可能で、他の一部の検査よりも早い段階で結果が得られます。
広範な染色体異常検査:NIPTは主に染色体異常(トリソミー)の検査に用いられますが、その他の染色体異常や性染色体異常も検出可能です。

その他の検査方法と比較

超音波検査

特徴: 胎児の形態や発育を観察するための非侵襲的な検査。
利点: 出生前診断の初期段階で使用され、胎児の異常が疑われる場合に進行検査に導く。

着床前診断(Preimplantation Genetic Diagnosis, PGD)

特徴: 体外受精前に受精卵を遺伝子的に検査する方法。
利点: 遺伝的な異常が確認された胚を選択して移植し、染色体異常のリスクを低減する。

各検査方法は状況によって異なり、医師との十分な相談のもとで最適な検査が選択されるべきです。

ダウン症の現状と治療法

ダウン症に対する根本的な治療法はありません。ダウン症の人々は個々に異なるが、適切な教育やサポートを受けることで、多くの人が満足できる生活を送っています。社会的な意識向上と共に、ダウン症の個人たちが幅広い分野で活躍する例も増えています。
ダウン症自体は治癒不能ですが、症状や合併症に対しては症状に応じた治療や支援が提供されます。幼少期から早期介入プログラムが提供され、言語や運動の発達などをサポートします。また、個々のニーズに合わせた特殊教育が提供され、最大限の可能性を引き出すサポートが行われます。心臓病やその他の健康上の課題に対する医療的ケアも提供されます。
医療の進歩により、50年前は2歳だったダウン症の平均寿命は、現在では60歳となっています。
ダウン症に関する理解が進むにつれ、その個々の特性や潜在的な可能性に焦点を当てたアプローチが進展しています。医療、教育、社会的なサポートを通じて、ダウン症の個人が豊かで充実した生活を送ることが期待されています。

出生前診断を受ける際の注意点

医師との相談
出生前診断を検討する際には、信頼できる医師との十分な相談が重要です。医師は検査のリスクやメリットについて詳しく説明し、患者の個別の状況を考慮したアドバイスを提供します。
検査目的の理解
出生前診断の目的や検査が特定の異常や疾患を評価するために行われることを理解することが重要です。どの検査が何を評価するものかを理解しておくと、より意識的な意思決定が可能です。
リスクと合併症の理解
検査には一定のリスクが伴います。例えば、絨毛検査や羊水検査は流産のリスクがわずかに高まります。これらの合併症について理解し、リスクと利益のバランスを検討することが重要です。
カウンセリングの受け入れ
検査前には、遺伝カウンセリングや精神的なサポートを受け入れることが役立ちます。検査結果が出た際には、その結果に対処するためのサポートが大切です。

出生前診断の合併症やリスクについて理解する

出生前診断(Prenatal Diagnosis)は一般的に安全な手順ですが、合併症やリスクが存在することがあります。以下に、主な出生前診断手法とそれに伴う合併症やリスクについて説明します。

1. 絨毛検査(Chorionic Villus Sampling, CVS)
合併症とリスクは以下が挙げられます。
流産: 絨毛検査は流産のリスクをわずかに増加させる可能性があります。一般的なリスクは0.5〜1%程度です。
感染: 稀に感染が発生することがあります。
2. 羊水検査(Amniocentesis)
合併症とリスクは以下があります。
流産: 羊水検査も絨毛検査と同様に、わずかに流産のリスクを増加させる可能性があります。一般的なリスクは0.3〜0.5%程度です。
感染: 稀に感染が発生することがあります。
羊水漏れ: 羊水を採取する際に羊水が漏れることがありますが、通常これは自然に治ります。
非侵襲的出生前診断、新型出生前診断(Non-Invasive Prenatal Testing, NIPT)
合併症は採血時のトラブル以外はありません。
偽陽性または偽陰性の可能性: NIPTは非常に正確ではありますが、偽陽性または偽陰性の結果が発生する可能性があります。
確定診断の必要性: 異常が検出された場合、確定診断のために絨毛検査や羊水検査が必要です。

一般的な注意事項としては、出生前診断は特定の妊娠週数において行われるべきであり、これを逸脱するとリスクが増加する可能性があります。また、出生前診断の手法を実施する医師の経験とスキルは重要です。経験豊富な医療チームによる検査が安全性を確保します。出生前診断を受ける前に遺伝カウンセリングを受けることは、検査の理解と結果に対する心理的なサポートを提供されるのが望ましいでしょう。検査前には医師との十分な相談が重要であり、検査のリスクと利益について理解した上で意思決定を行うべきです。

NIPTのメリットと特集

NIPTの利点と注意点を述べていきましょう。

NIPTの利点

非侵襲的: NIPTは母体の血液サンプルから行われる非侵襲的な検査であり、胎児へのリスクが少ない。
早期検査: 妊娠10週以降(クリニックによっては妊娠6週)から実施可能で、他の一部の出生前検査よりも早い段階で結果が得られます。
高い精度: 特に主要な染色体異常の検出において高い精度を有しています。

NIPTの注意点

確定診断の必要性: NIPTはスクリーニング検査であり、異常が疑われる場合には確定診断のために絨毛検査や羊水検査が必要です。
費用: 他の一部の検査に比べて費用が高いことがあります。保険が適用されるか、クリニックによる料金体系を確認する必要があります。
一部の染色体異常のみ検出可能: NIPTは特定の染色体異常のスクリーニングに特化しており、他の遺伝子異常や先天性異常には効果的ではありません。ただし、最近ではNIPTの技術革新により、NIPTで検査可能な疾患は増えています。ミネルバクリニックでは、日本で一番多い疾患を対象としたNIPTメニューを提供しております。

まとめ

出生前診断とダウン症について知っておくべきことを、のべてきました。
出生前診断についての疑問や懸念を持った場合、信頼できる医師との相談が重要です。遺伝カウンセリングがしっかり提供されている医療機関で受けてください。また、患者さんのほうでも最新の医学情報を入手し、検査や治療法に関する進展を追いかけることが大切です。信頼性のある情報源を利用しましょう。
出生前診断は感情的に負担がかかることがあります。自分やパートナーの感情や価値観を整理し、心理的なサポートを検討することが大切です。家族や友人、信頼できる支援団体からサポートを受けることは重要です。経験を共有し、専門家の助言を得ることができます。出生前診断は個々の状況によって異なりますので、医師のアドバイスを重視し、検査に関する決定を慎重に行うよう心がけましょう。

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ミネルバクリニックでは、NIPT検査を提供しています。少子化の時代、より健康なお子さんを持ちたいという思いが高まるのは当然のことと考えています。そのため、当院では世界の先進的特許技術に支えられた高精度、かつ、ご希望に合わせてたくさんの疾患検査を提供してくれる確かな技術力のある検査会社を遺伝専門医の目で選りすぐりご提供しています。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 (がん薬物療法専門医認定者名簿)、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医(臨床遺伝専門医名簿:東京都)として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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