目次
37歳で妊娠を考えるとき、多くの方が気にするのは「自然に妊娠できるのか」「流産しやすくなるのか」「赤ちゃんに障害が出る確率はどのくらいか」の3つです。結論からお伝えすると、37歳でも1年以内に妊娠する方は多く、ダウン症候群の出生時の頻度は約200人に1人です。年齢とともに数字は上がりますが、大多数のお子さんには当てはまらない数字でもあります。この記事では、37歳の妊娠率・流産率・染色体異常の確率を原典のデータで整理し、心配される方の多い自閉症・発達障害について、一部はNIPTでわかること、わからないことまで、臨床遺伝専門医の立場から解説します。
- ➤37歳で自然妊娠できる確率と、経産婦(2人目・3人目)の場合
- ➤37歳の流産率と、年齢で流産が増える理由
- ➤出生時と妊娠初期で違う、37歳のダウン症・染色体異常の確率
- ➤自閉症・発達障害・知的障害のうち、NIPTでわかる一部とわからない部分
- ➤初産と経産婦で違う出産のリスクと、陽性になったときの院内の体制
⏱️ 30秒でわかる要約
🌱 Q. 37歳で自然妊娠できる確率は?
35〜39歳の女性で、週2回程度の性交渉を続けた場合、約82%が1年以内に妊娠すると推定されています。1か月ごとの確率は20代より下がりますが、続けることで多くの方が妊娠します。
🧬 Q. ダウン症候群だけ調べれば大丈夫ですか?
大丈夫とは言えません。子育ての負担を最も大きく左右するのは、知的障害の程度よりも、攻撃的な行動や自傷、睡眠の問題といった行動の問題です。それを伴いやすいのは、ダウン症候群よりも微小欠失症候群や単一遺伝子疾患で、三大トリソミーだけの検査では調べられません。当院のNIPTはこれらの病気まで調べられます。
📊 Q. 37歳の流産率とダウン症の確率は?
流産率は35〜39歳で約17%と報告されています。ダウン症候群の出生時の頻度は37歳で約200人に1人(0.5%)です。妊娠初期は流産する分を含むため、これより少し高くなります。
🧩 Q. NIPTで自閉症や発達障害はわかりますか?
一部はわかります。フェラン・マクダーミッド症候群、16p11.2欠失・重複、レット症候群など、自閉症や発達障害の原因になる染色体・遺伝子の変化の一部を、当院のNIPTで調べられます。ただし大半の自閉症は原因が特定できないため、陰性でも自閉症・発達障害がないとは言えません。
👶 Q. 37歳で3人目だと障害の確率は上がる?
染色体の数の異常の確率は、主に出産時のお母さんの年齢で決まります。37歳の3人目は、37歳の1人目とほぼ同じ確率と考えてください。
ダウン症候群だけで大丈夫ですか? 当院のNIPTは、子育ての負担につながりやすい微小欠失症候群や単一遺伝子疾患まで調べられます。どこまで調べるかは、90分の受診枠の中で臨床遺伝専門医と一緒に決められます。
37歳の妊娠率:自然妊娠できる確率と、1年以内に妊娠する割合
37歳の妊娠率を一言で答えるなら、1か月ごとの妊娠の確率は20代より下がるものの、1年続ければ多くの方が妊娠する年齢です。1周期あたりの数字は調査の方法や対象によって大きく変わります。妊娠を考えるうえでは、1回ごとの確率より、「一定期間続けたときに何割の方が妊娠するか」を見るほうが実際に近い目安になります。
1年続けた場合の妊娠率
欧州の7都市で、妊娠を希望して避妊をやめた782組の夫婦を追跡した研究では、週2回程度の性交渉を続けた場合に12か月以内に妊娠しなかった割合は、19〜26歳で8%、27〜34歳で13〜14%、35〜39歳で18%と推定されました[1]。裏を返すと、35〜39歳でも約82%は1年以内に妊娠するという計算です。この研究では、1年で妊娠しなかったカップルでも、もう1年続けることで半数前後が妊娠すると見積もられています[1]。
一方で、同じ研究ではパートナーの年齢も影響することが示されました。35歳の女性で、男性が35歳から40歳になると、1年以内に妊娠しない割合は18%から28%へ上がると推定されています[1]。妊娠のしやすさは、女性の年齢だけで決まるものではありません。年齢別の妊娠確率の全体像は年齢別に見た妊娠確率で整理しています。
経産婦(2人目・3人目)の妊娠率と、AMHの数値
「37歳 妊娠確率 経産婦」という検索も多くみられます。経産婦の方は、過去に妊娠・出産できたことから、子宮や卵管に大きな問題がない可能性が高いといえます。ただし、卵子の数と質は、出産経験があっても年齢とともに変わります。2人目・3人目だから必ず妊娠しやすいとは言えず、年齢のデータどおりに考えるのが妥当です。
卵巣にどれくらい卵子が残っているかの目安として、AMH(抗ミュラー管ホルモン)という血液検査がよく話題になります。ただ、30〜44歳で妊娠を希望して3か月以内の女性を追跡した研究では、AMHが低い人と正常な人で、12周期までに妊娠した割合に差はみられませんでした(低い群84%、正常群75%)[2]。AMHは体外受精で採れる卵子の数の予測には使われますが、自然妊娠のしやすさを予測する検査ではありません。
💡 用語解説:AMH(エーエムエイチ/抗ミュラー管ホルモン)
卵巣の中で育ち始めた卵胞(らんぽう:卵子を包む袋)から出るホルモンです。卵胞が多いほど値が高くなるため、卵巣に残っている卵子の数の目安(卵巣予備能)として使われます。ただし、卵子の質や、自然に妊娠できるかどうかは示しません。
体外受精を受ける場合の37歳の成績
不妊治療を受けている37歳の方も少なくありません。日本産科婦人科学会が毎年まとめている生殖補助医療(ART)の全国データでは、年齢が上がるにつれて、移植あたりの妊娠率と出産率が下がり、流産率が上がることが一貫して示されています[3]。治療の方針は、通院先の生殖医療の専門医と相談してください(ミネルバクリニックでは体外受精・人工授精は行っていません)。
なぜ37歳で妊娠率が下がるのか:卵子の染色体の分かれ方
妊娠率が下がる最大の理由は、卵子の染色体の異常が増えることです。卵子のもとになる細胞は、お母さんがまだ胎児のときに減数分裂(げんすうぶんれつ)を始め、そのまま排卵の直前まで分裂を止めています。37歳で排卵される卵子は、37年以上この途中の状態で待っていたことになります。この間に、2本の染色体をつなぎとめているコヒーシンというタンパク質が少しずつ弱まり、排卵の直前に分裂が再開したとき、染色体がうまく2つに分かれないことが起こりやすくなります。これが染色体不分離です。
染色体の数に異常がある受精卵の多くは、着床しなかったり、ごく早い時期に流産したりします。そのため、受精が起きても妊娠として続く割合が下がり、妊娠率の低下や流産率の上昇として表れます。母体の年齢と卵子の異数性の関係はなぜ卵子で染色体異常(異数性)が起こるのかで詳しく解説しています。
37歳の流産率と、その理由
37歳の流産率は、35〜39歳の女性で約17%という報告があります[4]。ノルウェーで2009〜2013年の約42万件の妊娠を調べたこの研究では、流産のリスクは25〜29歳で最も低く(9.8%)、30歳を過ぎると上がり始め、45歳以上では53.6%に達しました[4]。37歳は、上がり方がはっきりしてくる年代にあたります。
この数字は、医療機関で確認された妊娠(臨床的妊娠)を対象にしたものです。妊娠検査薬で陽性が出たあと、胎嚢(たいのう)が見える前に終わる「化学流産」はこの数字に十分には含まれていないため、それも含めると妊娠が途中で終わる割合はさらに高くなります。流産率は、調査の時代や対象、何を流産として数えるかによって数字が変わります。どの数字にも幅があることを知っておいてください。
流産の原因として最も多いのは、前の章で説明した受精卵の染色体の数の異常です。お母さんの仕事や運動、軽いストレスといった日常の行動で起こるものではありません。1回の流産は、多くの場合、その受精卵に偶然起きた染色体の変化によるもので、次の妊娠で同じことが起こるとは限りません。流産を2回以上くり返す場合は、不育症として原因を調べる段階になるため、主治医と相談してください。
💡 用語解説:化学流産(かがくりゅうざん)
妊娠検査薬や血液検査で妊娠反応が出たものの、超音波検査で胎嚢が確認される前に妊娠が終わることです。生理のような出血として気づかないことも多く、統計上の流産率には含まれにくいため、実際の妊娠の喪失は報告される流産率より多いと考えられています。
37歳で出産したときのダウン症・染色体異常の確率
37歳で出産したときのダウン症候群の頻度は、出生時で約200人に1人(約0.5%)です[5]。言いかえれば、約99.5%の赤ちゃんはダウン症候群ではありません。大多数のお子さんには当てはまらない確率です。
出生時の頻度:36歳・37歳・38歳の比較
年齢別の出生時の頻度は、英国の全国ダウン症候群登録(NDSCR)の約1万2千例をもとにした推計がよく使われます[5]。この推計に当てはめると、1歳の違いでも数字はかなり動きます。
📊 出産時の年齢とダウン症候群の頻度(出生時)
| 出産時の年齢 | 出生時の頻度 | ダウン症候群ではない割合 |
|---|---|---|
| 36歳 | 約268人に1人 | 約99.6% |
| 37歳 | 約200人に1人 | 約99.5% |
| 38歳 | 約149人に1人 | 約99.3% |
出典:Morrisら(J Med Screen, 2002)の年齢別推計式で算出[5]。出生時(生まれた時点)の数字です。20代から40代までの一覧は年齢別のダウン症の確率、前後の年齢の詳しい話は36歳の妊娠・出産と38歳の妊娠・出産をご覧ください。
ダウン症候群(21トリソミー)は、21番染色体が通常の2本より1本多い3本になっている状態です。特徴や原因については21トリソミー(ダウン症)の解説で詳しく説明しています。
妊娠初期(NIPTを受ける時期)の頻度のほうが高い理由
ここで注意したいのは、出生時の頻度と、妊娠初期の頻度は同じではないということです。ダウン症候群の赤ちゃんは、妊娠中に自然に流産・死産となることが多く、英国の登録データの解析では、ダウン症候群の妊娠全体で、絨毛検査の時期から出産までの胎児喪失率は平均約32%、羊水検査の時期から出産までは平均約25%と推定されています[6]。この割合は母体年齢とともに上昇し、絨毛検査の時期から出産まででは25歳の約23%から45歳の約44%、羊水検査の時期から出産まででは約19%から約33%へ上昇しました[6]。
そのため、NIPTを受ける妊娠10〜12週ごろの頻度は、出生時より高くなります。37歳の出生時の頻度(約1/200)に、絨毛検査時期から出産までの平均胎児喪失率約32%を単純に当てはめると、妊娠11〜12週ごろでは約140人に1人前後と概算されます。これは37歳に固有の実測値ではなく、平均胎児喪失率を用いた目安です。NIPTの結果を考えるときは、この「検査の時点の頻度」を基準にします。
18トリソミー・13トリソミー・性染色体の数の異常
ダウン症候群以外の染色体の数の異常も、母体の年齢とともに増えます。英国の登録データでは、35歳の出生時の頻度は、18トリソミー(エドワーズ症候群)が約3,500人に1人、13トリソミー(パトウ症候群)が約5,100人に1人で、ダウン症候群(約350人に1人)よりずっと少なくなっています[7]。この2つは妊娠中に流産・死産となる割合が高いため、生まれてくる数はさらに少なくなります。
X染色体やY染色体の数の変化(性染色体の数の異常)は、症状が軽く、生まれてから気づかれないことも多い変化です。学習面や発達面の特性がみられることもあります。
37歳の出産と自閉症・発達障害・知的障害|一部はNIPTでわかる
年齢を重ねてからの妊娠では、ダウン症候群だけでなく、自閉症や発達障害、知的障害を心配される方が少なくありません。結論を先にお伝えすると、自閉症・発達障害・知的障害の一部は、当院のNIPTでわかります。原因になる染色体や遺伝子の変化の一部を、妊娠中に調べられるからです。一方で、大半の自閉症は原因が特定できないため、NIPTが陰性でも自閉症や発達障害の心配がなくなるわけではありません。
原因の一部は、染色体や遺伝子の変化
自閉症や発達障害、知的障害の原因はさまざまで、多くは特定できません。ただ、その一部は染色体や遺伝子の変化で起こることが分かっています。知的障害の遺伝的な原因として最も多いのは、ダウン症候群です。18トリソミーや13トリソミーも重い知的障害を伴います。
さらに、顕微鏡では見えないほど小さな染色体の欠け(微小欠失)や重なり(微小重複)も原因になります。原因の分からない発達の遅れ・知的障害・自閉症・多発奇形のある方に染色体マイクロアレイ検査を行うと、15〜20%で原因が見つかると報告されています。従来の染色体検査(Gバンド法)では約3%だったのに比べ、大きな差です[8]。
母親の年齢・父親の年齢との関係
母親の年齢については、母親が35歳以上の場合、25〜29歳と比べて子どもの自閉症のリスクが約1.3倍になるという解析があります[9]。影響は小さいもののゼロではない、という程度の差です。もともとの頻度が低いため、1.3倍になっても、大多数のお子さんには当てはまりません。
父親の年齢については、新生突然変異(de novo変異)が関係します。精子のもとになる細胞は生涯分裂を続けるため、DNAの写し間違いが少しずつ増えていきます。アイスランドの親子の全ゲノム解析では、父親の年齢が1歳上がるごとに、子どもに生じる新生突然変異が約2個ずつ増え、約16.5年で倍になると推定されました[10]。37歳の妊婦さんのパートナーは同年代以上のことが多いため、この点も知っておく価値があります。詳しくは父親の高齢化で赤ちゃんの病気が増えるのはなぜ?で解説しています。
ダウン症候群だけを調べればよいわけではない
知的障害を伴う病気のお子さんのご家族を比べた研究では、スミス・マゲニス症候群、ウィリアムズ症候群、プラダー・ウィリー症候群のご家族は、ダウン症候群のご家族より子育てのストレスが高いと報告されています[15]。ストレスを最も強く左右していたのは、知的障害の程度よりも、攻撃的な行動や自傷などの行動の問題、睡眠の問題でした[15]。アンジェルマン症候群やスミス・マゲニス症候群では他人への攻撃的な行動が、コルネリア・デ・ランゲ症候群やスミス・マゲニス症候群、プラダー・ウィリー症候群では自傷が多いことが分かっています[16]。こうした病気はどれも当院のNIPTで調べられます(スミス・マゲニス症候群・プラダー・ウィリー症候群・アンジェルマン症候群は全プラン、コルネリア・デ・ランゲ症候群はダイヤモンドプラン・インペリアルプラン、ウィリアムズ症候群は双子マックスプラン・インペリアルプラン)。ダウン症候群だけを調べればよいのか、検査を選ぶ前に考えていただきたい点です。
また、22q11.2欠失症候群は、妊娠中の赤ちゃんのおよそ1,000人に1人にみられ、微小欠失症候群の中で最も多い病気です。多くは新しく起こる変化で、母親の年齢とは関係がありません。心臓の病気、免疫の働きの低下、低カルシウム血症、口蓋裂、発達の遅れなどを伴うことがあり、自閉スペクトラム症を伴う割合も一般より高いと報告されています[18]。米国臨床遺伝・ゲノム学会(ACMG)は、年齢にかかわらずすべての妊婦さんに、22q11.2欠失症候群のNIPTを提供することを提案しています[17]。一方、米国母体胎児医学会(SMFM)は、22q11.2欠失を調べる場合は検査前に十分な説明を受けて選ぶことを求めており、学会によって考え方が分かれています。当院ではスタンダードプランから22q11.2欠失症候群を調べられますが、微小欠失は数の異常より陽性的中率が低めなので、陽性なら必ず確定検査で確かめます。
当院のNIPTでわかること(プラン別)
当院のNIPTでは、染色体の数の異常に加えて、自閉症や発達障害、知的障害と関係が知られている微小欠失・重複や、新生突然変異で起こる単一遺伝子疾患の一部を調べられます。どこまで調べられるかはプランによって違います。
🧩 プラン別:自閉症・発達障害・知的障害に関係する主な対象
| プラン | 染色体の数の異常 | 微小欠失・重複 | 単一遺伝子(新生突然変異) | 知的障害・発達の遅れを伴うことがある主な疾患 |
|---|---|---|---|---|
| スタンダード | 13・18・21番+性染色体 | 6種類7疾患 | なし | ダウン症候群、22q11.2欠失、1p36欠失、プラダー・ウィリー、アンジェルマン、ウォルフ・ヒルシュホーン、猫鳴き、スミス・マゲニス |
| プレミアム | 13・18・21・15・16・22番 | 12種類13疾患 | なし | 上記+ジェイコブセン、ランガー・ギーディオンなど |
| ダイヤモンド | プレミアムと同じ | 12種類13疾患 | 56遺伝子 | 上記+レット、ソトス、コルネリア・デ・ランゲ、CHARGE |
| インペリアル | 全常染色体(1〜22番) | 92種類+5Mbを超える構造異常 | 最大155遺伝子(202疾患) | 上記+ウィリアムズ、16p11.2欠失・重複、フェラン・マクダーミッド、ピット・ホプキンス、KBG、ルビンシュタイン・テイビなど |
16p11.2欠失・重複は、92種類を調べるインペリアル(双子の方は双子マックス)だけが対象です。単一遺伝子の詳しい対象は56遺伝子のde novo変異NIPTと最大155遺伝子202疾患のde novo変異NIPTをご覧ください。
年齢に応じたプランの考え方
37歳という年齢で増えるのは、主に染色体の数の異常です。染色体の数を広く見たい場合は、15・16・22番まで見るプランや、全常染色体と微小欠失・重複を広く見るプランが選択肢になります。パートナーの年齢が高く、新生突然変異が気になる場合は、単一遺伝子を対象に含むダイヤモンドやインペリアルが選択肢になります。どれを選ぶかに正解があるわけではありません。何を知りたいか、結果をどう使いたいかを、臨床遺伝専門医による遺伝カウンセリングで整理してから決めることができます。
NIPTでわからないこと(限界)
「一部がわかる」からこそ、わからないことも正確にお伝えします。第一に、NIPTは自閉症そのものを診断する検査ではありません。自閉症の原因になりうる染色体・遺伝子の変化の一部を調べる検査です。第二に、陰性でも自閉症・発達障害・知的障害がないとは言えません。大半は、染色体や遺伝子の検査をしても原因が見つからないからです。第三に、微小欠失・重複は、対象疾患・欠失サイズ・検査方式・事前確率によって陽性的中率が大きく異なり、陽性なら必ず確定検査で確かめる必要があります。第四に、脆弱X症候群(ぜいじゃくエックスしょうこうぐん)のように、NIPTでは調べられない原因もあります。第五に、同じ変化をもっていても、症状の出方や重さには幅があり、NIPTではそこまで予測できません。
🩺 院長コラム【「一部わかる」を正確に伝えるということ】
自閉症や発達障害について「NIPTではわからない」とだけ説明するのは、半分しか正しくないと考えています。フェラン・マクダーミッド症候群や16p11.2の欠失・重複、レット症候群のように、自閉症や発達の遅れの原因になる変化には、妊娠中に調べられるものがあります。それを知っていれば調べたかった、という方がいる以上、検査でわかる範囲をきちんとお伝えするのは遺伝医療に携わる者の役割です。
同時に、「一部」という言葉を外してはいけないとも考えています。陰性の結果は、調べた変化については可能性が低いという意味で、お子さんの発達のすべてを保証するものではありません。わかることとわからないことの両方を知ったうえで選んでいただくことが、臨床遺伝専門医が行う遺伝カウンセリングの土台だと考えています。
初産と経産婦(2人目・3人目)で違う37歳の出産リスク
「37歳の出産」といっても、初めての出産か、2人目・3人目かで、気をつけたい点は少し違います。ただし、染色体の数の異常の確率は、何人目かではなく出産時の年齢で決まることは共通です。高齢出産の定義や全体像は高齢出産は何歳から?初産と経産婦のちがいで整理しています。
37歳の初産
35歳以上で初めて出産する方は「高年初産婦」と呼ばれます。初めての出産では、子宮の出口や産道がやわらかくなるのに時間がかかり、お産が長引きやすい傾向があります。また、年齢とともに、妊娠高血圧症候群や前置胎盤、帝王切開の割合が上がることが、日本の周産期登録データでも示されています[11]。初産であることと年齢の両方が重なるため、妊婦健診での血圧や体重の管理がとくに大切です。
37歳の経産婦・3人目:何人目かで障害の確率は変わる?
「3人目 障害児 確率」という検索は多いのですが、答えははっきりしています。ダウン症候群などの染色体の数の異常の確率は、何人目の出産かではなく、出産時のお母さんの年齢で決まります。年齢別の頻度の推計も、年齢だけをもとに作られています[5]。37歳で3人目を出産する場合も、37歳で1人目を出産する場合も、染色体の数の異常の確率はほぼ同じと考えてください。3人目のほうが確率が高く見えるのは、3人目を産む方の年齢が高いことが多いためです。
2023年の統計では、35〜39歳の女性1,000人あたりの出生数は52.4で[12]、30代後半で2人目・3人目を出産することは珍しくありません。経産婦の方はお産の進み方が早いことが多く、初産に比べて分娩にかかる時間は短い傾向があります。ただし、年齢による妊娠中の合併症のリスクは、初産か経産かで大きくは変わりません。
妊娠高血圧症候群・妊娠糖尿病・早産
年齢とともに、血管の変化や体重、持病の影響で、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病が増えます。妊娠高血圧症候群が重くなると、お母さんと赤ちゃんを守るために、予定より早く出産を進めることがあり、これが早産につながります。とくに早い時期の早産は、赤ちゃんの脳の未熟さから、脳性麻痺などの後遺症の原因になることがあります。NIPTで染色体の異常の可能性が低いと分かったあとも、妊婦健診で血圧・血糖・体重を確認していくことが、赤ちゃんの健康を守るうえで欠かせません。
帝王切開と無痛分娩
年齢が上がると帝王切開の割合が上がることは、先ほどの日本のデータでも示されています[11]。前置胎盤などの合併症が増えることや、お産が進まない場合に安全を優先することが理由です。最近は、出産時の疲労を抑える目的で無痛分娩を選ぶ方も増えています。メリットとデメリットは無痛分娩のデメリットとリスクで解説しています。分娩方法は、出産する施設で相談して決めてください(ミネルバクリニックでは分娩は行っていません)。
37歳でNIPTを受けるときに知っておきたいこと
NIPT(非侵襲性出生前遺伝学的検査)は、お母さんの血液に含まれる赤ちゃん由来のDNAの断片を調べ、染色体などの変化の可能性を推定するスクリーニング検査です。採血だけで行えるため流産のリスクはありませんが、陽性のときは羊水検査や絨毛検査で確かめる必要があります。37歳でNIPTを考えるときに知っておきたい点を整理します。
37歳での陽性的中率
陽性的中率とは、「陽性」と出た人のうち、実際に赤ちゃんにその異常がある人の割合です。同じ検査でも、もともとの頻度が高いほど陽性的中率は高くなります。ダウン症候群のNIPTの検出率は約99.7%、偽陽性率は約0.04%とまとめられています[13]。この数字を37歳の妊娠11〜12週ごろの頻度(概算約1/140)に当てはめると、陽性的中率は約95%と試算されます。25歳の場合は約75%前後となり、年齢が高いほど陽性の結果が正しい可能性は高くなります。ただし、これは試算であり、個々の結果の確からしさは、臨床遺伝専門医が検査の種類や超音波の所見とあわせて判断します。
検査方式:COATE法と低深度全ゲノム+ターゲット法
ミネルバクリニックのダイヤモンドプランは、米国の3大遺伝子検査会社の一角が提供する新技術「COATE法」(SNP法とターゲット法の組み合わせ)※で検査します。SNP法は、お母さんと赤ちゃんのDNAの違いを見分けることができる方法で、ターゲット法は調べたい領域を集中的に読む方法です。精度のデータはCOATE法のエビデンスでご紹介しています。
※「3大遺伝子検査会社」は、遺伝性がんや周産期(出生前検査・保因者検査)を含む遺伝子検査全般を手がける米国の検査専業会社のうち、2025年通期の売上高が上位の3社を指します(各社の決算発表にもとづく当院調べ)。がん検診やリキッドバイオプシーに特化した会社は含みません。
インペリアルプランは、低深度全ゲノムシーケンスとターゲット法を組み合わせ、全常染色体の数の異常、92種類の微小欠失・重複、最大155遺伝子202疾患の新生突然変異を調べます。インペリアルプランの単一遺伝子の検査は、検証研究で陽性的中率96.9%、感度100%、特異度99.9%と報告されています[14]。
PGT-Aで妊娠した場合もNIPTを考える理由
37歳で体外受精を受け、移植前に胚の染色体を調べるPGT-A(着床前胚染色体異数性検査)を受けた方もいるでしょう。PGT-Aで調べるのは、将来胎盤になる部分(栄養外胚葉)から採った数個の細胞で、赤ちゃんになる部分(内細胞塊)は調べません。そのため、胎盤と赤ちゃんの染色体が食い違う「モザイク」があると、PGT-Aの結果と赤ちゃんの実際が一致しないことがあります。また、PGT-Aでは小さな微小欠失は見つけにくいことがあります。
このような理由から、PGT-Aで妊娠した場合でも、妊娠10週以降にNIPTで改めて確認するという考え方があります。NIPTもモザイクの影響は受けますが、調べる範囲や時点が違うため、互いを補う関係にあります。仕組みはNIPTのモザイクとは?で、PGT-AとNIPTの関係はPGT-A後もNIPTは必要?で詳しく解説しています。
💡 用語解説:胎盤限局性モザイク(たいばんげんきょくせいモザイク)
モザイクとは、同じ体の中に染色体の数が違う細胞が混ざっている状態です。胎盤限局性モザイクは、その違う細胞が胎盤だけにあり、赤ちゃん本人にはない状態をいいます。NIPTやPGT-Aは胎盤由来の細胞やDNAを見ているため、結果が赤ちゃんの実際と一致しない原因になります。
陽性になっても迷わないための当院の体制
NIPTを受けるときは、陽性だった場合にどうなるかまで確認しておくことが大切です。ミネルバクリニックでは、2025年6月から産婦人科を併設し、羊水検査・絨毛検査を院内で行っています。確定検査の主要な検査項目は3日以内に、マイクロアレイ検査は2週間ほどで結果が出るため、転院の手間がなく、結果を待つ時間も短くできます。
費用の面では、2つの互助会があります。1つ目は羊水検査互助会(カトレア会)で、1回のNIPTにつき8,000円の会費で、陽性時の確定検査の費用を補助します。当院のNIPT受検者は全員加入となります。補助の上限はありません。2つ目は安心検査結果保障制度で、こちらも全員加入です。1回のNIPTにつき6,000円の会費で、再検査が必要になったのに、流産により再検査ができず結果が出なかった場合に、検査代金(諸費用を除く)を返金します。37歳は流産率が上がる年齢でもあるため、こうした仕組みも事前に確認しておいてください。
90分の受診枠の中で、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行います。NIPTの料金には、遺伝カウンセリング、4Dエコー、性別判定が含まれます(検査結果の作成費用3,300円は別途)。陰性の場合は結果をマイページでお知らせし、陽性の場合は陽性後のカウンセリングを何度でも無料で受けられます。当院には臨床遺伝専門医が常駐しています。料金はNIPTの費用・料金で、遠方の方はZoomでのカウンセリングと全国110か所の提携施設での採血で受けられるオンラインNIPTもご確認ください。
🩺 院長コラム【37歳という数字の読み方】
医学生のころ、母体の年齢とダウン症候群の頻度のグラフを初めて見たとき、35歳を過ぎると線が急に立ち上がるのが強く印象に残りました。けれども、数字を分母まで読むと、37歳でも約200人のうち199人の赤ちゃんはダウン症候群ではありません。年齢による変化は確かにありますが、それは「多くの人に起こる」という意味ではないのです。
37歳での妊娠は、仕事や生活の基盤が整い、落ち着いて子育てに向き合える時期でもあると考えています。大切なのは、確率を正しく知り、何を調べて何を調べないかを自分で選ぶことです。そのための材料を、正確な数字と検査の限界とあわせてお伝えすることが、臨床遺伝専門医の役割だと考えています。
ダウン症候群だけで大丈夫? ― 「値段」ではなく「調べられる範囲」で選ぶ
「ダウン症候群だけが心配」という方は少なくありません。けれども、出生前検査で調べる病気は、どれも赤ちゃんとご家族の暮らしに大きくかかわるものです。そして、ご家族の子育ての負担を最も大きく左右するのは、知的障害の程度よりも、攻撃的な行動や自傷、睡眠の問題といった「行動の問題」だと分かっています[15]。こうした行動の問題を伴いやすい病気には、ダウン症候群ではなく、微小欠失症候群や単一遺伝子疾患が多く含まれます[15][16]。三大トリソミーだけを調べる検査では、これらの病気は調べられません。
出生前検査は、その後の人生を左右するかもしれない検査です。「安さ」だけで選んで大丈夫でしょうか。
三大トリソミーだけを調べる検査を仮に10万円とすると、1つの病気あたりは約3万3千円です。当院のインペリアルプランは、全常染色体と性染色体の数の異常、92種類の微小欠失・重複、202の単一遺伝子疾患を調べます。性染色体の数の異常も含めて、数えられる病気だけで320になり、1つの病気あたりは約1,700円です。さらに、5Mbを超える欠失・重複はすべての染色体が対象なので、数えきれないほどの変化を調べていることになります。数えられる分だけでも、これだけの範囲を調べられます。
🧬 調べられる範囲と「1つの病気あたり」の目安
| プラン | 主に調べる範囲 | 数えた病気の数 | 1つの病気あたり |
|---|---|---|---|
| 三大トリソミーだけを調べる検査 (仮に10万円とした場合) |
13・18・21トリソミー | 3 | 約33,333円 |
| スタンダード (220,000円) |
13・18・21トリソミー、性染色体の数の異常、微小欠失6種類7疾患 | 14 | 約15,714円 |
| プレミアム (264,000円) |
13・18・21・15・16・22トリソミー、性染色体の数の異常、微小欠失12種類13疾患 | 23 | 約11,478円 |
| ダイヤモンド (407,000円) |
プレミアムの範囲+単一遺伝子56 | 79 | 約5,152円 |
| 双子マックス (440,000円) |
全常染色体の数の異常、92種類の微小欠失・重複、5Mbを超える構造異常 | 114+α | 約3,860円 |
| インペリアル (550,000円) |
全常染色体の数の異常、性染色体の数の異常、92種類の微小欠失・重複、5Mbを超える構造異常、単一遺伝子202疾患 | 320+α | 約1,719円 |
※価格は事前学習動画を見て来院した場合の当日割引後の税込価格です。最新の料金は料金ページをご確認ください。
※病気の数は、数の異常・微小欠失・重複・単一遺伝子疾患を1つずつ数えたものです。性染色体の数の異常は4種類(ターナー症候群・クラインフェルター症候群・トリプルX症候群・XYY症候群)として数えています(性染色体を調べるのはスタンダード・プレミアム・ダイヤモンド・インペリアル。双子マックスは調べません)。5Mbを超える構造異常は数に入れていないため、双子マックスとインペリアルは実際にはさらに多くの変化を調べています。
※「三大トリソミーだけを調べる検査」は計算のための仮の例で、特定の施設の価格ではありません。
ただし、病気の数が多いほど良い検査、というわけではありません。調べる範囲が広がると、陽性になる可能性も、確定検査が必要になる場面も増えます。だからこそ、検査前の遺伝カウンセリングでプランを選ぶことが大切です。どこまで調べたいかは、ご家族によって違います。90分の受診枠の中で、常駐する臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、どのプランが合うかを一緒に考えます。
🏥 37歳の妊娠のNIPTを、正確な情報にもとづいて選ぶために
ミネルバクリニックは臨床遺伝専門医が常駐し、NIPTの遺伝カウンセリングから結果の説明、院内での確定検査まで一貫して対応します。
よくある質問(FAQ)
Q1. 37歳で自然妊娠できる確率はどのくらいですか?
欧州の研究では、35〜39歳の女性で週2回程度の性交渉を続けた場合、約82%が12か月以内に妊娠すると推定されています。1か月ごとの確率は20代より下がりますが、続けることで多くの方が妊娠します。パートナーの年齢が高いと、この割合は下がります。
Q2. ダウン症候群だけ調べれば大丈夫ですか?
ダウン症候群だけを調べれば大丈夫、とは言えません。知的障害を伴う病気のお子さんのご家族を比べた研究では、スミス・マゲニス症候群、ウィリアムズ症候群、プラダー・ウィリー症候群のご家族は、ダウン症候群のご家族より子育てのストレスが高く、ストレスを最も強く左右していたのは知的障害の程度よりも行動の問題でした。こうした病気は三大トリソミーだけを調べる検査ではわかりません。当院ではスタンダードプランから22q11.2欠失症候群やプラダー・ウィリー症候群、アンジェルマン症候群などの微小欠失を、ダイヤモンドプラン・インペリアルプランでは単一遺伝子疾患まで調べられます。どこまで調べるかは、検査前の遺伝カウンセリングで一緒に考えます。
Q3. 37歳の経産婦は妊娠しやすいですか?
過去に妊娠・出産できたことから、子宮や卵管に大きな問題がない可能性は高いといえます。ただし、卵子の数と質は出産経験があっても年齢とともに変わるため、2人目・3人目だから必ず妊娠しやすいとは言えません。妊娠しにくいと感じたら、年齢を考えて早めに相談してください。
Q4. 37歳の流産率はどのくらいですか?
ノルウェーの大規模な研究では、35〜39歳の流産率は約17%で、25〜29歳の9.8%より高くなっていました。流産の主な原因は受精卵の染色体の数の異常で、お母さんの日常の行動で起こるものではありません。
Q5. 37歳で出産するとダウン症の確率はどのくらいですか?
出生時の頻度は約200人に1人(約0.5%)で、約99.5%の赤ちゃんはダウン症候群ではありません。NIPTを受ける妊娠11〜12週ごろは、その後に自然に流産する分を含むため、出生時より頻度が高くなります。出生時約1/200に報告された平均胎児喪失率を単純に当てはめると、約140人に1人前後の概算になります。
Q6. 37歳で3人目を出産すると、障害の確率は上がりますか?
ダウン症候群などの染色体の数の異常の確率は、何人目の出産かではなく、出産時のお母さんの年齢で決まります。37歳の3人目は、37歳の1人目とほぼ同じ確率と考えてください。
Q7. 37歳で出産する人はどのくらいいますか?
2023年の統計では、35〜39歳の女性1,000人あたりの出生数は52.4で、30代後半での出産は珍しいことではありません。第2子・第3子を30代後半で出産する方も多くいます。
Q8. 夫が年下なら、子どものリスクは下がりますか?
ダウン症候群などの染色体の数の異常は、主に卵子の年齢で決まるため、夫が若くてもこのリスクは下がりません。一方、新生突然変異は父親の年齢とともに増えるため、パートナーが若い場合は、その点のリスクは相対的に低くなります。
Q9. NIPTで自閉症や発達障害はわかりますか?
一部はわかります。フェラン・マクダーミッド症候群、16p11.2欠失・重複、レット症候群など、自閉症や発達障害の原因になる染色体・遺伝子の変化の一部を、当院のNIPTで調べられます。ただし大半の自閉症は原因が特定できないため、陰性でも自閉症・発達障害がないとは言えません。調べられる範囲はプランによって違います。
Q10. PGT-Aで妊娠した場合もNIPTは必要ですか?
PGT-Aは将来胎盤になる部分の数個の細胞を調べる検査で、赤ちゃんになる部分そのものは調べません。モザイクや小さな微小欠失の見逃しがありうるため、妊娠10週以降にNIPTで改めて確認するという考え方があります。受けるかどうかは、遺伝カウンセリングで相談して決められます。
Q11. 37歳は帝王切開になりやすいですか?
日本の周産期データでも、年齢とともに帝王切開の割合は上がります。前置胎盤などの合併症が増えることや、お産が進まない場合に安全を優先することが理由です。分娩方法は、出産する施設で相談して決めてください。
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※本記事は一般の方に向けた情報提供を目的とするもので、個別の診断・治療方針を示すものではありません。妊娠・出産や検査については、主治医・専門医にご相談ください。






