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【医師監修】39歳妊娠の「崖」と現実|流産率とダウン症確率・NIPTの必要性

仲田洋美 医師

この記事の監修:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医として遺伝医療に携わっています。

39歳は、妊孕性の低下と流産率の上昇がより意識される30代後半にあたります。ただ、数字の意味を正しく知り、自分に合った検査(NIPT)を選べば、分からないまま過ごす不安を減らし、考える時間を持つことができます。

この記事でわかること
📖 読了時間:約15分
👩‍⚕️ 39歳の妊娠・流産率・NIPT
★ 臨床遺伝専門医監修
  • ➤39歳で知っておきたい妊孕性の変化 → 1周期あたりの自然妊娠率は30歳で約20%、40歳ごろには5〜10%程度まで下がる
  • ➤ダウン症確率とNIPT → 出生時で約1/110。妊娠初期(検査の時期)はそれより高い
  • ➤自閉症と父親の年齢 → 父親の年齢とともに増えるde novo変異と、NIPTで調べられる範囲
  • ➤PGT-A後のNIPT → 正常胚の移植後でも出生前検査の選択肢が示される理由
  • ➤トリプルリスクヘッジ → 確定検査費用の補助・院内での確定検査・臨床遺伝専門医による遺伝カウンセリング

⏱️ 30秒でわかる要約

📊 Q. 39歳の妊娠率と流産率はどのくらいですか?

1周期あたりの自然妊娠率は、30歳で約20%、40歳ごろには5〜10%程度とされ、39歳はおおむね10%前後が目安です。流産率は、体外受精などの登録データで約25〜30%と、年齢とともに上がります。

🔎 Q. ダウン症候群だけ調べれば大丈夫ですか?

大丈夫とは言えません。子育ての負担を最も大きく左右するのは、知的障害の程度よりも、攻撃的な行動や自傷、睡眠の問題といった行動の問題です。それを伴いやすいのは、ダウン症候群よりも微小欠失症候群や単一遺伝子疾患で、三大トリソミーだけの検査では調べられません。当院のNIPTはこれらの病気まで調べられます。

🧬 Q. 39歳でダウン症候群の赤ちゃんが生まれる確率は?

出生時の頻度は約110人に1人です。妊娠初期(NIPTを受ける時期)は、その後に流産・死産となる妊娠も含まれるため、およそ70〜80人に1人と出生時より高くなります。どちらも、大多数の赤ちゃんには当てはまらない数字です。

🌸 Q. NIPTで自閉症や発達障害はわかりますか?

一部はわかります。当院のNIPTは、自閉症・発達障害・知的障害の原因になる遺伝子や染色体の変化の一部を調べられます。ただし、陰性でも自閉症や発達障害がないとは言えません。

\ ダウン症候群だけで大丈夫ですか? /

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当院のNIPTは、子育ての負担につながりやすい微小欠失症候群や単一遺伝子疾患まで調べられます。どこまで調べるかは、90分の受診枠の中で臨床遺伝専門医と一緒に決められます。
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1. 序論:39歳で知っておきたい妊孕性の変化

女性の妊孕性は年齢とともに連続的に低下し、35歳以降はその影響をより意識して妊娠計画を考える時期になります。39歳だけを境に急に変化する「崖」が医学的に定義されているわけではありません。

「まだ生理があるから大丈夫」という感覚と、実際に妊娠・出産に至る確率とのあいだには、39歳の時点で差が開き始めます。ここでは、漠然とした不安ではなく、データにもとづいて「39歳の現実」を整理します。

2. 自然妊娠率の急落と「流産率との逆転現象」

米国生殖医学会(ASRM)は、健康な30歳の女性が1周期(1か月)で妊娠する確率を約20%、40歳ごろには5%未満としています[1]。米国産科婦人科学会(ACOG)は、20代〜30代前半で約4人に1人、40歳で約10人に1人としており[2]、資料によって幅があります。39歳だけを取り出した数字は多くありませんが、これらから考えると、39歳の1周期あたりの自然妊娠率はおおむね10%前後が目安になります(ただし個人差が大きく、一律には決められません)。

つまり39歳でも自然妊娠は可能ですが、1周期あたりの妊娠確率には個人差があり、年齢だけから一人ひとりの確率を決めることはできません。ある年を境に突然下がるわけではありませんが、30代後半から下がり方が急になり、40代に入るとさらに低くなります。妊娠を望む方にとって、1年1年の重みが大きくなる時期といえます。

💡 流産率が上がり、生産率が下がる「クロスオーバー」

日本産科婦人科学会(JSOG)が毎年まとめている生殖補助医療(体外受精など)の登録データでは、妊娠あたりの流産率は年齢とともに上がり、39歳で約25〜30%、40歳以上では3割を超えます。一方、治療あたりの生産率(赤ちゃんが生まれる割合)は年齢とともに下がり、40歳以上では胚移植あたり1割前後になります[3]。自然妊娠を含む約42万件の妊娠を調べたノルウェーの研究でも、流産の割合は25〜29歳で最も低く(約10%)、30歳を過ぎると上がり続け、45歳以上では約53%でした[4]。おもな原因は、卵子の加齢に伴って偶然起こる染色体の数の異常です。

3. 「まだ自然妊娠できるか?」専門医が提示するタイムリミットと具体的行動

39歳の自然妊娠率が1周期あたり10%前後だと知ると、「自分はまだ大丈夫だろうか」「いつまで自然妊娠を目指してよいのか」と迷うのは自然なことです。ここでは、限られた時間を大切に使うための考え方を整理します。

💡 用語解説:AMH(アンチミュラー管ホルモン)検査

卵巣に残っている卵子の数の目安(卵巣予備能)を調べる血液検査です。同じ39歳でも値には個人差が大きく、年齢の平均より低い場合は、治療を急いだほうがよいことがあります。ただし、AMHは卵子の「数」の目安であり、卵子の「質」や、妊娠できるかどうかを直接示すものではありません。

ACOGは、35歳を過ぎて6か月たっても妊娠しない場合は検査を受けること、40歳を過ぎている場合は妊娠を目指す前に検査を受けることを勧めています[2]。39歳で自然妊娠(タイミング法など)を目指す期間も、「最大でも半年」を一つの区切りと考えるのが現実的です。

40歳を過ぎると妊娠率はさらに下がり、流産率は上がります。半年たっても結果が出ない場合は、人工授精や体外受精(IVF)など次の段階に進むかどうかを、不妊治療の専門施設で早めに確認してください。なお、当院は遺伝子診療と出生前検査を専門としており、不妊治療(人工授精・体外受精)は行っていません。

4. 流産率の逆転に立ち向かう「具体的な防衛策」

年齢とともに流産率が上がるというデータを見ると不安になりますが、ただ怖がる必要はありません。卵子の加齢に伴って偶然起こる染色体の異常は、いまの医学では防ぐことができません。一方で、それ以外の原因の中には、検査で見つけて対処できるものがあります。

💡 「不育症」リスクのスクリーニング

妊娠はするものの流産を2回以上くり返す場合は「不育症」として、抗リン脂質抗体症候群(血液が固まりやすくなる自己免疫の病気)、甲状腺の働き、子宮の形などを調べます。原因が見つかった場合は、治療によって次の妊娠の経過がよくなることが期待できるものもあります。

卵子の年齢を巻き戻すことはできません。そのうえで、妊娠を考える時期から整えておきたいことがあります。

  • 葉酸サプリメント:赤ちゃんの神経管閉鎖障害のリスクを下げるため、妊娠を考えた段階から1日400µgをとることが勧められています。
  • 抗酸化物質(ビタミンC・E、コエンザイムQ10など):卵子の質を上げる、流産を減らすといった効果は、現時点でははっきり証明されていません。使う場合は主治医に確認してください。
  • 生活習慣:喫煙や肥満は、妊娠しにくさや流産と関連することが知られています。禁煙、適正体重、十分な睡眠を、無理のない範囲で整えましょう。

5. 39歳における染色体異常リスクとNIPTの価値

39歳でダウン症候群(21トリソミー)の赤ちゃんが生まれる頻度は、出生時で約110人に1人と推定されています[5](以前から使われてきた古い表では、約137人に1人とされてきました)。これは、無事に出産に至った場合の数字です。

ダウン症候群のある妊娠は、検査を受ける時期から出産までのあいだに、およそ3割が流産・死産になると報告されており、その割合は年齢が高いほど上がります[6]。そのため、NIPTを受ける妊娠初期(10週前後)の時点では出生時より高く、およそ「70〜80人に1人」と概算できます。どちらの数字も、裏を返せば、大多数の赤ちゃんには当てはまらないということです。

当院のNIPTは通常妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。できるだけ早い時期に結果を知りたい方のために、妊娠4週から申込みが可能で、実際の採血時期は妊娠週数と検査プランに応じてご案内しています。早い時期に結果を知ることで、考える時間を持てます。ただし、週数が早いほど、血液中の赤ちゃん由来のDNAが少なく、判定できずに再検査になることがあります。

💡 NIPTの陽性的中率:39歳のダウン症候群では約90%を超える

陽性的中率とは、「陽性」と出た人のうち、実際に赤ちゃんにその病気がある人の割合です。同じ検査でも、もともとの頻度が高い年齢ほど陽性的中率は高くなり、39歳のダウン症候群(21トリソミー)では計算上およそ9割を超えます。ただし、これはダウン症候群についての数字で、18トリソミー・13トリソミーや微小欠失ではこれより低くなります。NIPTは確定検査ではないため、陽性の場合は必ず羊水検査や絨毛検査で確かめる必要があります。陰性の場合も、まれですが偽陰性の可能性はあります。

陽性の結果が出たときに大切なのは、確定検査で本当にそうかを確かめてから考えることです。当院では確定検査(絨毛検査・羊水検査)まで院内で受けられ、主要な検査項目は3日以内に、マイクロアレイ検査は2週間ほどで結果が出ます。NIPTの精度について詳しくはNIPTの精度データをご覧ください。

6. 胎児だけではない、39歳妊娠の「母体リスク」の現実

39歳の妊娠では、ダウン症候群など赤ちゃんの染色体のことに目が向きがちです。けれども、忘れてはならないのが「お母さん自身の体への負担と合併症リスク」です。総合内科専門医の立場からも、妊娠中の血圧や血糖の管理は、年齢が上がるほど大切になると考えています。

年齢が上がると、「妊娠高血圧症候群」や「妊娠糖尿病」が起こりやすくなります。日本の周産期登録データを使った研究でも、年齢の高い妊婦さんでは、帝王切開、妊娠高血圧腎症、前置胎盤などが多いことが示されています[7]。これらは早産や赤ちゃんの発育の遅れにつながることがあるため、妊婦健診をきちんと受け、血圧や体重の変化を早めにとらえることが大切です。

また、年齢とともに、分娩に時間がかかる「遷延(せんえん)分娩」になりやすく、お母さんと赤ちゃんの安全のために帝王切開が選ばれる割合も高くなります。

7. 不妊治療(PGT-A)後のNIPT:専門医の視点

39歳は、体外受精(IVF)や着床前診断(PGT-A)を経て妊娠される方が多い年齢です。「PGT-Aで正常胚だったから、NIPTは要らないのでは?」という疑問はもっともです。ただ、ACOGは、PGT-Aを受けた方にも、ほかの妊婦さんと同じように出生前の検査(スクリーニング検査や確定検査)の選択肢を示すよう勧めています[8]。

💡 PGT-Aの死角を補うNIPTの役割

PGT-Aは、胚のうち将来胎盤になる部分から数個の細胞だけを採って調べる検査です。そのため、細胞によって染色体の構成が違う「モザイク」(胎盤性モザイクなど)を見落とすことがあり、小さな欠失(微細欠失)や、1つの遺伝子の変化による病気(単一遺伝子疾患)は基本的に対象外です。妊娠してから受けるNIPTは、PGT-Aでは見ていない範囲を確かめる手段の一つになります。受けるかどうかは、ご夫婦の考え方で決めてよいことです。

8. 「父親の年齢」と自閉症リスク

39歳の女性のパートナーは、同年代か40代以上であることが少なくありません。ダウン症候群などの染色体の数の異常はおもに母親の年齢と関係しますが、「父親の年齢」は、精子で新しく起こる遺伝子の変化(de novo変異)と関係することが分かっています[9]。

💡 用語解説:新生突然変異(De novo変異)

両親にはなく、精子や卵子ができるときに新しく起こる遺伝子の変化のことです。精子は生涯つくられ続けるため、父親の年齢が1歳上がるごとに、子どもに伝わる新しい変異がおよそ2個ずつ増えると報告されています[9]。こうした変異の一部は、自閉スペクトラム症や知的障害を伴う病気の原因になります。ただし、ほとんどの変異は病気に結びつかず、大多数のお子さんには当てはまりません。一般的なNIPTやPGT-Aでは、de novo変異は調べられません。

当院では、de novo変異による単一遺伝子疾患を調べるプランとして、ダイヤモンドプラン(56遺伝子)とインペリアルプラン(最大155遺伝子・202疾患)を用意しています。父親の年齢が高い場合に、こうしたプランを選ぶという考え方もあります。

ダウン症候群だけでなく、一部の自閉症・発達障害・知的障害の原因もNIPTでわかる

出生前検査で調べる病気は、どれも赤ちゃんの命や発達、ご家族の暮らしに大きくかかわりますが、その中身は病気によって異なります。自閉スペクトラム症を伴う割合は、レット症候群で61%、コルネリア・デ・ランゲ症候群で43%、アンジェルマン症候群で34%と報告されており、ダウン症候群(16%)は、出生前検査で調べるほかの病気と比べて少ないことが分かっています[10]。ダウン症候群だけでなく、こうした病気まで調べられるかどうかは、検査を選ぶうえで大切なポイントです。

知的障害を伴う病気のお子さんのご家族を比べた研究では、スミス・マゲニス症候群、ウィリアムズ症候群、プラダー・ウィリー症候群のご家族は、ダウン症候群のご家族より子育てのストレスが高く、そのストレスを最も強く左右していたのは、知的障害の程度よりも、攻撃的な行動や自傷、睡眠の問題といった行動の問題でした[11]。スミス・マゲニス症候群とプラダー・ウィリー症候群は全プランで、ウィリアムズ症候群はインペリアルプラン・双子マックスプランで調べられます。また、微小欠失症候群の中で最も多い22q11.2欠失症候群(およそ1,000人に1人)は母親の年齢と関係なく起こり[12]、米国臨床遺伝・ゲノム学会(ACMG)は年齢にかかわらずすべての妊婦さんにこの病気のNIPTを提供することを提案しています[13]。当院ではスタンダードプランから調べられます。

当院のNIPTでは、自閉症・発達障害・知的障害を伴うことがある病気の一部を調べられます。アンジェルマン症候群、プラダー・ウィリー症候群、22q11.2欠失症候群は全プラン、レット症候群、コルネリア・デ・ランゲ症候群、CHARGE症候群はダイヤモンドプラン(56遺伝子)とインペリアルプラン(最大155遺伝子・202疾患)、フェラン・マクダーミッド症候群、ピット・ホプキンス症候群、16p11.2欠失・重複はインペリアルプランの対象です。

ただし、NIPTは自閉症そのものを診断する検査ではありません。陽性の場合は確定検査が必要で(当院は院内で実施しています)、微小欠失は陽性的中率が項目によって60〜70%程度と低めです。陰性でも、自閉症・発達障害・知的障害がないとは言えません。脆弱X症候群などNIPTで調べられない原因もあり、症状の出方や重さも予測できません。

9. 当院の独自技術と「トリプルリスクヘッジ」

当院では、臨床遺伝専門医が検査の内容と根拠を確かめたうえで、NIPTのプランを用意しています。「ダイヤモンドプラン」は、13・18・21・15・16・22トリソミーと微小欠失12種類13疾患に加えて、56遺伝子の単一遺伝子疾患(de novo変異)まで調べられるプランです。さらに広く調べたい方には、全常染色体の数の異常、最大92種類の微小欠失・重複、最大155遺伝子・202疾患の単一遺伝子疾患を対象にしたインペリアルプランがあります(どちらも単胎のみ)。料金はNIPTの料金ページでご確認ください。

また、検査を受けて終わりではなく、陽性だった場合の負担をできるだけ小さくするために、次の「3つのリスクヘッジ」を用意しています。

  • 金銭的リスクヘッジ(互助会):羊水検査互助会(カトレア会)は、1回のNIPTにつき8,000円で、陽性時の確定検査費用を補助します(補助の上限はありません)。これとは別に、安心検査結果保障制度(1回のNIPTにつき6,000円)があり、再検査が必要になったのに、流産して再検査ができず結果が出なかった場合に、検査代金(諸費用を除く)を返金します。
  • 時間的リスクヘッジ(院内完結):2025年6月から産婦人科を併設し、確定検査(羊水検査・絨毛検査)を院内で受けられます。主要な検査項目は3日以内に、マイクロアレイ検査は2週間ほどで結果が出ます。
  • 心理的リスクヘッジ(専門医サポート):90分の受診枠の中で、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行います。陽性の場合は、陽性後のカウンセリングを何度でも無料で受けられます。転院先を探す必要はありません。

料金には、遺伝カウンセリング、4Dエコー、性別判定が含まれます。検査結果の作成費用は料金に含まれず、別途3,300円かかります。検査料金とは別に必ずかかる費用(検査結果の作成費用、カトレア会・安心検査結果保障制度の会費など)は、合計17,850円です。来院が難しい方は、オンラインNIPT(Zoomでのカウンセリング+全国110か所の提携施設で採血)もご利用いただけます。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【数字は「あなた」の答えではありません】

39歳の妊娠について調べるほど、「流産」「ダウン症」「崖」といった言葉ばかりが目に入り、不安が大きくなってしまうのは自然なことです。ただ、妊娠率も、流産率も、染色体の病気の確率も、すべて「同じ年齢の人たち全体」の数字であって、お一人おひとりの結果を言い当てるものではありません。

臨床遺伝専門医として大切だと考えているのは、数字を並べることではなく、いまの医学で何が分かり、何が分からないのかを正確にお伝えすることです。NIPTは結果を約束する検査ではありませんが、分からないまま過ごす時間を短くし、ご夫婦で考える時間をつくる助けになります。

ダウン症候群だけで大丈夫? ― 「値段」ではなく「調べられる範囲」で選ぶ

「ダウン症候群だけが心配」という方は少なくありません。けれども、出生前検査で調べる病気は、どれも赤ちゃんとご家族の暮らしに大きくかかわるものです。そして、ご家族の子育ての負担を最も大きく左右するのは、知的障害の程度よりも、攻撃的な行動や自傷、睡眠の問題といった「行動の問題」だと分かっています[11]。こうした行動の問題を伴いやすい病気には、ダウン症候群ではなく、微小欠失症候群や単一遺伝子疾患が多く含まれます[11][14]。三大トリソミーだけを調べる検査では、これらの病気は調べられません。

出生前検査は、その後の人生を左右するかもしれない検査です。『安さ』だけで選んで大丈夫でしょうか。

三大トリソミーだけを調べる検査を仮に10万円とすると、1つの病気あたりは約3万3千円です。当院のインペリアルプランは、全常染色体と性染色体の数の異常、92種類の微小欠失・重複、202の単一遺伝子疾患を調べます。性染色体の数の異常も含めて、数えられる病気だけで320になり、1つの病気あたりは約1,700円です。さらに、5Mbを超える欠失・重複はすべての染色体が対象なので、数えきれないほどの変化を調べていることになります。数えられる分だけでも、これだけの範囲を調べられます。

プラン 主に調べる範囲 数えた病気の数 1つの病気あたり
三大トリソミーだけを調べる検査
(仮に10万円とした場合)
13・18・21トリソミー 3 約33,333円
スタンダード
(220,000円)
13・18・21トリソミー、性染色体の数の異常、微小欠失6種類7疾患 14 約15,714円
プレミアム
(264,000円)
13・18・21・15・16・22トリソミー、性染色体の数の異常、微小欠失12種類13疾患 23 約11,478円
ダイヤモンド
(407,000円)
プレミアムの範囲+単一遺伝子56 79 約5,152円
双子マックス
(440,000円)
全常染色体の数の異常、92種類の微小欠失・重複、5Mbを超える構造異常 114+α 約3,860円
インペリアル
(550,000円)
全常染色体の数の異常、性染色体の数の異常、92種類の微小欠失・重複、5Mbを超える構造異常、単一遺伝子202疾患 320+α 約1,719円

※価格は事前学習動画を見て来院した場合の当日割引後の税込価格です。最新の料金は料金ページをご確認ください。※病気の数は、数の異常・微小欠失・重複・単一遺伝子疾患を1つずつ数えたものです。性染色体の数の異常は4種類(ターナー症候群・クラインフェルター症候群・トリプルX症候群・XYY症候群)として数えています(性染色体を調べるのはスタンダード・プレミアム・ダイヤモンド・インペリアル。双子マックスは調べません)。5Mbを超える構造異常は数に入れていないため、双子マックスとインペリアルは実際にはさらに多くの変化を調べています。※『三大トリソミーだけを調べる検査』は計算のための仮の例で、特定の施設の価格ではありません。

ただし、調べる範囲が広がるほど、陽性になる可能性も、確定検査が必要になる場面も増えます。病気の数が多ければ誰にとってもよい検査、というわけではありません。どこまで調べたいかは、ご家族によって違います。90分の受診枠の中で、常駐する臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、どのプランが合うかを一緒に考えます。

まとめ:39歳の妊娠、後悔しない選択を

39歳の妊娠は、医学的にも、人生設計のうえでも大きな節目です。自然妊娠率の低下、流産率の上昇、ダウン症候群など染色体の病気の確率、お母さん自身の体への負担、そして子育てと親の介護が重なる可能性。どれも避けて通れない現実ですが、数字の意味を知っていれば、必要以上におそれることはありません。

NIPTは、採血だけで赤ちゃんの染色体や遺伝子の変化の一部を調べられる検査です。39歳ではダウン症候群の陽性的中率が計算上9割を超えますが、確定検査ではないため、陽性の場合は羊水検査や絨毛検査が必要です。PGT-Aでは見ていない範囲や、父親の年齢と関係するde novo変異まで調べたい方には、「ダイヤモンドプラン」(56遺伝子)やインペリアルプラン(最大155遺伝子・202疾患)という選択肢があります。どの検査を受けるか、受けないかは、ご夫婦で決めてよいことです。

よくある質問(FAQ)

Q1. 39歳の自然妊娠率はどのくらいですか?

1周期あたりの自然妊娠率は、30歳で約20%、40歳ごろには5〜10%程度とされており、39歳はおおむね10%前後(5〜15%程度)が目安です。ある年を境に急に下がるわけではありませんが、30代後半から下がり方が急になります。35歳以上で6か月たっても妊娠しない場合は、早めに検査を受けることが勧められています。

Q2. ダウン症候群だけ調べれば大丈夫ですか?

ダウン症候群だけを調べれば大丈夫、とは言えません。知的障害を伴う病気のお子さんのご家族を比べた研究では、スミス・マゲニス症候群、ウィリアムズ症候群、プラダー・ウィリー症候群のご家族は、ダウン症候群のご家族より子育てのストレスが高く、ストレスを最も強く左右していたのは知的障害の程度よりも行動の問題でした。こうした病気は三大トリソミーだけを調べる検査ではわかりません。当院ではスタンダードプランから22q11.2欠失症候群やプラダー・ウィリー症候群、アンジェルマン症候群などの微小欠失を、ダイヤモンドプラン・インペリアルプランでは単一遺伝子疾患まで調べられます。どこまで調べるかは、検査前の遺伝カウンセリングで一緒に考えます。

Q3. 39歳でNIPTを受けるメリットは何ですか?

採血だけで受けられ、検査による流産のリスクがないことです。39歳ではダウン症候群(21トリソミー)の陽性的中率が計算上9割を超え、陽性という結果の重みが若い年齢より大きくなります。ただしNIPTは確定検査ではないため、陽性の場合は羊水検査や絨毛検査で確かめる必要があります。陰性の場合も、まれですが偽陰性の可能性はあります。

Q4. PGT-Aで正常胚を移植しましたが、NIPTは必要ですか?

必ず受けなければならない検査ではありませんが、選択肢として知っておく意味があります。PGT-Aは胚の一部の細胞だけを調べる検査で、モザイクを見落とすことがあり、微細欠失や単一遺伝子疾患は基本的に対象外です。米国産科婦人科学会も、PGT-Aを受けた方に、ほかの妊婦さんと同じように出生前検査の選択肢を示すよう勧めています。

Q5. 夫が40代ですが、自閉症のリスクはありますか?

父親の年齢が上がるほど、子どもに伝わる新しい遺伝子の変化(de novo変異)が増えることが報告されており、その一部は自閉スペクトラム症や知的障害を伴う病気の原因になります。ただし、大多数のお子さんには当てはまりません。ミネルバクリニックのダイヤモンドプラン(56遺伝子)とインペリアルプラン(最大155遺伝子・202疾患)では、de novo変異による単一遺伝子疾患の一部を調べられます。陰性でも自閉症がないとは言えない点にご注意ください。

Q6. NIPTで自閉症や発達障害はわかりますか?

一部はわかります。ミネルバクリニックのNIPTは、自閉症・発達障害・知的障害の原因になる遺伝子や染色体の変化の一部(アンジェルマン症候群、22q11.2欠失症候群、レット症候群など。対象はプランによって異なります)を調べられます。ただし、自閉症そのものを診断する検査ではなく、陰性でも自閉症や発達障害がないとは言えません。

🏥 39歳の妊娠とNIPTを、正確な情報にもとづいて考えるために

ダウン症候群だけでなく、18・13トリソミーや微小欠失症候群、自閉症・発達障害・知的障害を伴うことがある特定の染色体・遺伝子疾患の一部を、当院のNIPTでスクリーニングできます。陽性でも、確定検査(羊水検査・絨毛検査)まで院内で受けられ、主要な検査項目は3日以内に、マイクロアレイ検査は2週間ほどで結果が出ます。90分の受診枠の中で、常駐する臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、どのプランが合うかを一緒に考えます。

関連記事

参考文献

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※本記事は一般の方に向けた情報提供を目的とするもので、個別の診断・治療方針を示すものではありません。妊娠・出産や検査については、主治医・専門医にご確認ください。

プロフィール
仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続け、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、検査結果の数値そのものだけでなく、「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、日本人として異文化の中で生活した経験があります。価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。この経験は現在の診療においても、「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、36週6日で一人を死産した経験があります。その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、家族の未来に関わる重要な意思決定です。年齢や統計だけで判断するのではなく、医学的根拠と心理的支援の両面から、ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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