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ダウン症とわかり中絶しました。後悔の理由と専門医の視点|東京青山・ミネルバクリニック

仲田洋美 医師

この記事の監修:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

「ダウン症とわかり、中絶しました」。ブログやSNSで同じ経験をした人の言葉を探している方は、決断のあとも気持ちの置き場所が見つからずにいるのかもしれません。この記事では、NIPT(新型出生前診断)でダウン症(21トリソミー)の判定を受け、中絶という決断をした方を含む3人の体験談と、決断のあとに起こりうる心の反応、中絶ができる期間の法律上の決まり、確定検査の位置づけを整理します。どの選択が正しかったかを決めるための記事ではありません。誰も簡単に決めたわけではないこと、そして、決める前に何を確かめられるのかを、臨床遺伝専門医の立場からお伝えします。

⚠️ すぐに受診を検討してほしいサイン

眠れない・食べられない・過呼吸・涙が止まらない・日常が回らない状態が続く、または自分を傷つけたくなる考えが出てくる場合は、早めに医療機関へ相談してください。今は「気持ちの整理」より「体を守ること」が最優先です。

この記事でわかること
📖 読了時間:約12分
🧬 NIPT・ダウン症・中絶後の心
★ 臨床遺伝専門医監修
  • ➤ダウン症とわかり中絶した方・産むと決めた方の3つの体験談
  • ➤中絶後に起こりうる心の反応と、受診を考えたいサイン
  • ➤中絶ができる期間(妊娠22週未満)と、法律上の位置づけ
  • ➤NIPTで陽性のとき、確定検査(羊水検査・絨毛検査)で確かめる意味
  • ➤ダウン症候群と診断されたあと、妊娠継続・中絶を選ぶ割合のデータ

⏱️ 30秒でわかる要約

💗 Q. 中絶したことへの後悔や罪悪感が消えません。おかしいのでしょうか?

おかしくありません。喪失の体験と、時間に制限のある決断が重なると、後悔や罪悪感は強く出やすくなります。まずは眠る・食べる・呼吸を整えることが先で、それが難しい状態が続くときは医療機関に相談してください。

📊 Q. 出生前診断で陽性になった人は、みんな産まない選択をするの?

いいえ。米国の研究をまとめた解析では、ダウン症候群と出生前に診断されたあとに中絶を選んだ割合は、地域全体を対象にした7研究の加重平均で67%(研究により61〜93%)でした。国や地域、時代で数字は異なり、産むことを選ぶご家族もいます。

🔬 Q. NIPTで陽性と言われたら、決める前に何をすればいい?

NIPTは確定検査ではないため、陽性なら羊水検査や絨毛検査で確かめるのが基本です。ミネルバクリニックでは陽性のカウンセリングを何度でも無料で受けられ、確定検査も院内で行い、主要な検査項目は3日以内(マイクロアレイ検査は2週間ほど)に結果が出ます。

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Aさん(東京都三鷹市在住・34歳)の場合

女性の患者を励ます医師の手

NIPT(新型出生前診断)を受けようと思ったのは、妊婦健診で産婦人科の先生から「子どもに染色体異常があると厚くなるといわれている『NT』と呼ばれている部分が通常より厚い」と言われたからです。確か妊娠3か月(11週)くらいだったと思います。

聞いた瞬間、頭が真っ白になってしまい「どうしよう」と思っていると、「はっきりしたことが知りたければ、羊水中の胎児細胞を調べる羊水検査か新型出生前診断(NIPT)を受けるといい」と言われました。あとは、料金の話だけです。

あまりにも事務的な対応だったので、「検査機関を紹介する」と言われても断ってしまい、自分で調べることにしました。そこでミネルバクリニックを見つけたのです。先生が女性だったから話を聞いてもらえると思い、予約をしてクリニックへと向かいました。

そうしたらいろいろな話を聞いてくれて、私の気持ちを察してくれたのがとても助かりました。そのときに、ダウン症になっている確率やNIPTは確定検査ではないという説明も受けて、NIPTを受けようと決めました。

結果は陽性で、絨毛検査ができる病院で確定検査を受けても、結果は同じでした。

最初は、夫と「ダウン症だったら中絶しよう」と話していたのですが、結果が確定したら気持ちが揺らいでしまったのです。中絶という現実をいよいよ突きつけられ、抵抗感が生まれたのでしょう。それと、日に日に大きくなっていくこの赤ちゃんとどうやって別れればいいのかわからないのに、中絶を求められるのもイヤでした。夫は「絶対に育てられない」「中絶しないなら離婚しよう」とまで言ってきて、毎日口論が絶えなくなったのです。

私は、どうしたらいいのかわからない状態で2つの選択肢を突きつけられました。

  • 1つは、夫の言うとおり中絶をする。
  • もう1つは、離婚して一人で子どもを育てる。

このどちらかでした。私は最終的に夫の言うとおり中絶を選んだのです。決めるとなったら早く中絶をしたいと思い、病院に予約を入れました。急いだのは、妊娠20週に近づくと胎動を感じると聞いたからです。赤ちゃんが生きている実感があるのに、手術を受けるなんてできないと思いました。

そうしてすぐに病院に予約を入れて、入院までのわずかなひとときを三人でいた証を残そうと、マタニティフォトを撮影しました。撮り終わったあと、二人で泣きじゃくってしまい、どうしようもできませんでした。

そして中絶の手術を受けて、子どもは荼毘に付され、一緒に火葬場へと行きました。

それから、子どもがもういないつらさと、自分が決断してそうしたのだという罪悪感が襲ってきました。心理カウンセリングに行きたいと思ったのですが、どこに行ったらいいのかわからないんです。

でも、朝から晩までつらくて……。夜、ひとりで家にいると過呼吸の発作が起きてくるので、家中の窓を開け放って冷気の中で必死に息をしていました。夜も一晩中、寝ているのか寝ていないのかわからないような状態が続いて朝を迎える日々です。

食事も、食べようとすると「子どもはもう何も食べられないし、それは自分のせいだと思うと、自分だけが食べるなんて許されない」ような気になり、満足に食べることもできませんでした。

周りの人たちは優しくしてくれたけど、それも苦しかった。だから同じ境遇の人に会いたかった。同じ境遇の人に自分の話を聞いてもらいたいと思って、藁をも掴む思いでとある集まりに行って、ようやく自分の気持ちを伝えられたのです。

今でも子どもを中絶したことを責めてしまうことがあります。夫は「気にするな」と慰めてくれますけど、やっぱり無理です。「NIPT(新型出生前診断)を受けなければ……」なんて思ったりもします。

📝 この体験談のポイント

・NTの指摘で強いパニックが起こることは珍しくありません
・NIPTは確定検査ではないため、陽性のあとには確定検査という次の選択肢があります
・中絶後に不眠・過呼吸などが続く場合は、まず体を守る支援が必要です

👩‍⚕️ 仲田院長コメント

NTの指摘をきっかけに、一気に強い不安に包まれるのは自然なことです。ですが、NTが厚い=ダウン症候群と確定、ではありません。大切なのは「確率」「確定検査(羊水検査・絨毛検査)」「相談先」をその場で整理し、一人で抱え込まない道筋を確保しておくことです。

中絶後に起こりうる心理反応(医学的整理)

中絶後に「眠れない」「涙が止まらない」「過呼吸が起きる」「自分を責め続けてしまう」といった症状が出ることは、決して珍しいことではありません。医学的には、次のように整理されます。

  • 急性ストレス反応(出来事の直後の強い動悸・過呼吸・不眠)
  • 抑うつ状態(罪悪感・自分には価値がないという感覚・食欲の低下)
  • PTSD様の症状(フラッシュバック・思い出させるものを避ける・強い自責)
  • 複雑性悲嘆(長く続く喪失感)

とくに出生前診断のあとの中絶は、「時間に制限のある決断」と「喪失の体験」が重なるため、感情の揺れが強くなりやすい傾向があります。望んでいた妊娠であることが多く、周りに打ち明けにくいことも、気持ちを一人で抱え込む理由になります。

心が弱いからではなく、強い出来事に対する正常な反応であることが多いということを、まず知ってください。ただし、眠れない・食べられない・日常生活が回らない状態が続く場合は、医療的なサポートが必要です。一人で抱え込まず、早めに相談してください。

ダウン症で中絶はいつまで可能か(法律と医学)

日本では、人工妊娠中絶は母体保護法にもとづいて行われ、妊娠22週未満(21週6日まで)が期限とされています。なお、母体保護法には胎児の病気を理由とする規定(いわゆる胎児条項)はありません。中絶は「妊娠の継続又は分娩が身体的又は経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれのあるもの」などの条項にもとづいて、指定医師が行うものと定められています[3]。

また、妊娠週数が進むほど、体と心の負担は大きくなります。

  • 初期中絶(妊娠12週未満):日帰りの手術が一般的
  • 中期中絶(妊娠12週以降):入院が必要で、分娩に近い処置になる

出生前診断の結果待ちと法律上の期限が重なると、強い時間的プレッシャーが生じます。羊水検査は一般に妊娠15〜16週以降に行うため、結果が出るまでの日数によっては、考える時間がほとんど残らないこともあります。だからこそ、検査を受ける前に「陽性だった場合どうするか」をご夫婦である程度話し合っておくこと、そして結果が早く出る体制を選ぶことが大切です。ミネルバクリニックのNIPTは妊娠9週から(妊娠6〜8週は臨床研究として)受けられ、確定検査も院内で行い、主要な検査項目は3日以内に結果が出ます。

※週数や状況により、医療機関の対応や必要な手続きは異なります。手術の可否や方法などの具体的な判断は、手術を行う産婦人科で必ず個別に確認してください。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「あなたが弱い」のではなく、脳と心が限界反応を起こしているだけ】

中絶のあとに「眠れない」「過呼吸」「食べられない」「涙が止まらない」という状態になるのは、意志の弱さではありません。強い喪失の体験と、時間に制限のある決断が重なったとき、脳と自律神経が“非常事態モード”のまま戻れなくなることがあるからだと考えています。

まず大切なのは、結論を出し直すことではなく、今の体を守ることです。眠れない・食べられない・過呼吸が続くときは、気持ちの整理より先に、医療につながって安全を確保してください。

そのうえで、「検査の意味」「確定検査の位置づけ」「選択肢」「支援先」を一つずつ整理していくと、少しずつ呼吸が戻ってくるはずです。どんな選択だったとしても、孤独にしない医療を大切にしたいと考えています。

📘 医学的補足(ACOGの考え方:形態異常+NIPT陽性と確定検査)

NIPT(母体血中のcfDNAを調べる検査)は確定検査ではありません。米国産婦人科学会(ACOG)は、NIPTで陽性となった場合や、超音波検査で形態異常が疑われる場合には、遺伝カウンセリングと確定検査(絨毛検査・羊水検査)を「選択肢として提案(offer)」する立場です[1]。一方で、確定検査を受けるかどうかは強制ではなく、妊婦さんご本人の選択です。重要なのは、確定検査を含む選択肢を示し、その意味と限界を説明したうえで、最終的な判断を支えることです。

Bさん(千葉県千葉市在住・32歳)の場合

医師と患者がテーブルで話し合う様子

きちんと調べればよかった。今でも後悔しているんです。

私は30歳で結婚をしてすぐに妊娠をしました。新婚生活なんて気分は吹っ飛んでしまい、バタバタしながら妊婦健診を受けていたら、クアトロテスト(母体血清マーカー検査)を産婦人科の先生に勧められて受けたのです。

そうしたら「ダウン症候群の確率が35%」という結果だったので、NIPT(新型出生前診断)を受けることにしました。通っていた医院ではNIPTをやっていなかったので、ネットで検索したミネルバクリニックで遺伝カウンセリングを受けました。説明もわかりやすく、NIPTで陽性でも子どもがダウン症だと確定したわけではないと聞いたうえで検査を受けたら、陽性の判定が出たのです。

事前に聞いてはいたけれど、ショックで頭の中が真っ白になってしまい、なぜか「ダウン症の子どもを育てる自信がないから中絶するしかない」と思い込むようになりました。仲田先生は「羊水検査を受けてみましょう」と言ってくれたのですが、言うことを聞かずに中期中絶の手術を選んでしまったのです。

夫にも納得してもらって入院をして手術を受けたあと、なぜか涙が止まりませんでした。やっぱりどこかで罪の意識があったのかもしれません。数日は塞ぎ込んだままでしたけど、何とか体を動かせるくらいにまで回復しました。

それから数日過ぎたある日、近所にダウン症の子どもがいる家族が引っ越してきました。

その家族はみんな笑顔で過ごしていました。買い物に行くのも笑顔だし、ダウン症のお子さんも一人で出かけて遊んでいました。

気になって改めて調べてみると、ダウン症の人を受け入れる環境は昔よりも整っていて、地域によっては普通学級に通えるところもあると知りました。平均寿命も伸びてきて、60歳を超えても元気で暮らしている人もいるそうです。「ダウン症の子どもを持ったら大変だ」という思い込みだけで中絶を選んでしまった自分を責めてしまいました。自分の判断が間違っていたかもしれないと思うといたたまれない気持ちになり、誰かに話を聞いてもらいたくなって、ミネルバクリニックに行きました。

仲田先生は私の話を受け止めたうえで、「NIPT(新型出生前診断)を受けるからには、ちゃんと理解してほしい。陽性の場合には厳しい選択を迫られることがあるから、事前に説明していたの」と話してくれました。

幸いにして2年後に二人目の子どもを無事出産でき、家族で暮らしていますが、正しい情報を知らずに受けてしまったことを今でも後悔しています。

📝 この体験談のポイント

・陽性の直後は「中絶しかない」と視野が狭くなることがあります
・NIPTは確定検査ではないため、陽性なら確定検査で確かめるという選択肢があります
・あとから情報を知って、強い後悔が出ることもあります

NIPTの陽性は「可能性が高い」という意味で、陽性でも実際には赤ちゃんに染色体の変化がない「偽陽性」があります。確定検査をせずに中絶を決めることのリスクは、NIPT陽性で羊水検査なしの中絶は危険?偽陽性の真実を解説で詳しく解説しています。

👩‍⚕️ 仲田院長コメント

強いストレスのもとでは、考えの幅が急に狭くなることがあります。大切なのは、確定検査を含む選択肢を示し、その意味と限界を理解したうえで判断できる状態をつくることです。迷いが強いときほど、遺伝カウンセリングで「次の一手」を整理することが支えになると考えています。

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📅NIPTを予約する

羊水検査・絨毛検査 | NIPTのアフターサポート

Cさん(埼玉県川口市在住・40歳)の場合

相談する若いカップル

私には今、双子の女の子がいます。そのうち1人はダウン症です。

実はその前に、NIPT(新型出生前診断)でダウン症の陽性と判定されて中絶をした過去があります。結婚したのは7年前で、お互いに子どもが欲しかったのですぐに妊娠しました。そのときに近所のクリニックで、「NT(後頚部浮腫)と呼ばれる首の後ろのむくみが厚く、年齢と掛け合わせた表で見ると、染色体異常のある可能性が8分の1ある」と言われ、検査を受けたほうがいいと勧められました。

まだ9週だったので、NIPTを受けてみることにしました。ミネルバクリニックに予約を入れて、遺伝カウンセリングを受けてから検査になりました。検査自体は採血するだけであっさりと終わったのですが、結果は陽性。ダウン症の可能性が高いと言われたのです。

そこで仲田先生に「NIPTは非確定検査だから、まだ決まったわけではない」と説明を受け、羊水検査も受けてみることに。そこでも陽性が出てしまい、夫と相談をしたうえで、泣く泣く子どもを諦めました。

それから二度、妊娠したけれど、どちらも流産してしまい、私は「ダウン症だからと中期中絶をした自分のせいだ」と思うようになりました。夫は慰めてくれたけれど、そのときの私は中絶をした自分を責めてしまい、後悔の気持ちしかありませんでした。

二度目の流産から2年後、再び妊娠をしました。もうダメかと思っていたので喜びはひとしおです。でも気になったのは、子どもが先天性の病気を持っていないかどうかです。最初の子を妊娠したときにNIPTを受けて中絶した苦い過去があるので、今度は受けないと思っていました。

もしダウン症の子どもだったとしても、今度は産んで育てると二人で決めていたからです。そのためにいろいろと調べてみると、ダウン症の子どもが生まれたら準備しなくてはいけないことがたくさんあるのを知りました。昔よりも福祉の制度が整っていて、いろいろと相談できたり、申し込みができるようになっていたのです。

そこで、もう一度NIPTを受けようと思いました。今回は中絶を考えるためではなく、産むことが前提です。もしダウン症だったら、生まれてから保育園や学校へ行くための相談や、社会保障を受けるための準備をしたいと考えたからです。場合によっては引っ越しも視野に入れていました。

結果は陽性でした。羊水検査は受けていません。ダウン症でも産むつもりでしたし、検査を受けたのは、生まれてくるまでに準備をしておきたかったからです。一度後悔したからこそできた覚悟だったと思います。

📝 この体験談のポイント

・検査は「決めるため」だけでなく「準備のため」にも使われます
・一度の経験が、次の妊娠に影を落とすことがあります
・支援につながることで、心の負担が軽くなることがあります
・双子の妊娠では、NIPTで陽性でも、どちらの赤ちゃんかまでは分かりません

👩‍⚕️ 仲田院長コメント

Cさんの体験談が示しているのは、検査は「決めるため」だけでなく「備えるため」にも使えるということです。その前提を大切にしながら、結果の意味を医学的に整理し、必要な支援につなげていくことが大切だと考えています。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【検査は「お迎えする準備」にもなります】

Cさんのエピソードにもあるように、NIPTを受ける目的は中絶のためと決まっているわけではありません。事前にダウン症候群の可能性を知ることで、ご夫婦で話し合う時間を持ち、療育や支援の制度を調べ、環境を整えて赤ちゃんを迎える準備ができます。

「もし陽性だったらどうしよう」という不安は当然です。結果がどちらであっても、ご家族が納得して前に進めるように、医学的な知識と支援の道筋をお伝えすること。それが臨床遺伝専門医の役目だと考えています。

出生前診断後の選択割合について

ダウン症候群と出生前に診断されたあと、妊娠を続けるか中絶を選ぶかの割合は、国や地域、時代によって異なります。米国で1995〜2011年に発表された24の研究をまとめた系統的レビューでは、地域全体を対象にした7つの研究の加重平均で、中絶を選んだ割合は67%(研究により61〜93%)でした[2]。言い換えれば、診断を受けたあとに妊娠を続けることを選んだご家族も、一定の割合でいるということです。

重要なのは、「全員が同じ選択をしているわけではない」という事実です。中絶を選ぶ方もいれば、出産を選ぶ方もいます。どの選択も、それぞれの家庭の事情と価値観の中でなされた決断です。日本のNIPTで陽性となったあとの選択のデータはNIPT陽性後の中絶率は約9割|いつまで可能?で、確定診断のあとに産むことを選んだご家族の経過はNIPT陽性でも産んだ|羊水検査でダウン症確定後の決断で紹介しています。

医療の役割は、どちらかに誘導することではなく、十分な情報と支援のもとで決断できる状態を整えることです。

まとめ

この記事では、NIPTでダウン症(21トリソミー)の陽性判定を受けた妊婦さんの体験談を紹介してきました。どの方も、つらい決断をされています。出生前診断は「命の選別」という言葉で語られることもありますが、誰も簡単に決断したわけではないということを知っていただきたいと思います。

これからもNIPTを考える妊婦さんはいらっしゃいます。つらい結果が出たときにも支えられる体制をつくり、正しい情報をお伝えすることが医療の役割です。ブログで体験談を探す方へ向けた、NIPT陰性だったのに……という経験の読み方はNIPT陰性だったのにダウン症?ブログで知る後悔しない備えでまとめています。

次の妊娠でNIPTを考える方は、調べる範囲からプランを選べます。スタンダードプランは13・18・21トリソミーと性染色体、微小欠失6種類(7疾患)、プレミアムプランは15・16・22番を加えたトリソミーと微小欠失12種類(13疾患)、ダイヤモンドプランはプレミアムの範囲に単一遺伝子56を加えたプランです。全常染色体と92種類の微小欠失・重複を調べる双子マックスプランは双子の妊娠でも受けられ、インペリアルプランはその範囲に単一遺伝子(最大155遺伝子・202疾患)を加えています。陽性のときのカウンセリングは何度でも無料で、確定検査(羊水検査・絨毛検査)も院内で受けられます。

🏥 陽性でも、確定検査まで同じクリニックで

ダウン症候群だけで大丈夫?——どこまで調べるかは、ご夫婦の考え方で選んでいただけます。ミネルバクリニックには臨床遺伝専門医が常駐し、NIPTは妊娠9週から(6〜8週は臨床研究として)受けられます。陽性のときのカウンセリングは何度でも無料、羊水検査・絨毛検査も院内で行い、主要な検査項目は3日以内に結果が出ます。

よくある質問(FAQ)

Q1. NIPTは確定検査ですか?

いいえ。NIPTはスクリーニング検査(非確定検査)で、確定診断ではありません。陽性の場合は、確定検査(羊水検査・絨毛検査)で診断を確定します。

Q2. 出生前診断で陽性だった人は、みんな産まない選択をするのですか?

いいえ。米国の研究をまとめた系統的レビューでは、ダウン症候群と出生前に診断されたあとに中絶を選んだ割合は、地域全体を対象にした7研究の加重平均で67%(研究により61〜93%)でした。国や地域、時代で数字は異なり、妊娠を続けることを選ぶご家族もいます。また、NIPTの陽性は確定ではないため、決める前に確定検査で確かめることが大切です。

Q3. 超音波で形態異常があり、NIPTも陽性の場合は必ず確定検査が必要ですか?

米国産婦人科学会(ACOG)は、遺伝カウンセリングと確定検査(羊水検査・絨毛検査)を選択肢として提案(offer)する立場です。一方で、受けるかどうかは妊婦さんご本人の選択で、強制ではありません。

Q4. 確定検査を受けなかったら、医師が勧めなかったことになりますか?

重要なのは、確定検査を含む選択肢を示し、意味と限界を説明したうえで最終的な判断を支えることです。受けるかどうかは妊婦さんご本人の選択であり、強制されるものではありません。

Q5. 羊水検査の結果を待っています。中絶はいつまでに決めなければなりませんか?

日本では、人工妊娠中絶は妊娠22週未満(21週6日まで)が期限とされています。羊水検査は一般に妊娠15〜16週以降に行うため、結果が出るまでの日数によっては考える時間が短くなります。ミネルバクリニックでは確定検査を院内で行い、主要な検査項目は3日以内(マイクロアレイ検査は2週間ほど)に結果が出ます。手術の可否や方法は、手術を行う産婦人科で個別に確認してください。

Q6. 中絶後の後悔が強くて眠れません

眠れない・食べられない・過呼吸などが続く場合は、まず体を守る支援が必要です。早めに医療機関へ相談してください。自分を傷つけたくなる考えが出てくる場合は、すぐに受診してください。

Q7. 次の妊娠でNIPTを考えています。ダウン症候群だけで大丈夫?

何を調べたいかは、ご夫婦の考え方によって違います。NIPTで調べられる範囲はプランごとに異なり、ミネルバクリニックでは、ダウン症候群などの13・18・21トリソミーに加えて、性染色体の数の変化や微小欠失(スタンダードプランで6種類・7疾患)も調べます。さらに、ほかの染色体のトリソミーや単一遺伝子の病気まで対象にしたプランもあります。どこまで知りたいかを、検査の前に遺伝カウンセリングで一緒に整理することをお勧めします。

Q8. 遠方ですが相談できますか?

はい。オンラインNIPTで全国からご相談いただけます。採血は東京以外の46道府県にある全国110か所の提携施設で受けられます。

Q9. 予約や問い合わせはどこからできますか?

24時間受付のWEB予約、またはお問い合わせフォームをご利用ください。NIPTのご相談はNIPT専用ダイヤル(03-3408-3768)でも受け付けています。

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参考文献

  • [1] American College of Obstetricians and Gynecologists’ Committee on Practice Bulletins—Obstetrics; Committee on Genetics; Society for Maternal-Fetal Medicine. Screening for Fetal Chromosomal Abnormalities: ACOG Practice Bulletin, Number 226. Obstet Gynecol. 2020;136(4):e48-e69. [DOI 10.1097/AOG.0000000000004084]
  • [2] Natoli JL, Ackerman DL, McDermott S, Edwards JG. Prenatal diagnosis of Down syndrome: a systematic review of termination rates (1995-2011). Prenat Diagn. 2012;32(2):142-153. [PubMed 22418958]
  • [3] 母体保護法(昭和23年法律第156号). [e-Gov法令検索]

※本記事は一般の方に向けた情報提供を目的とするもので、個別の診断・治療方針を示すものではありません。心身の不調が続く場合は、医療機関にご相談ください。

プロフィール
仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続け、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、検査結果の数値そのものだけでなく、「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、日本人として異文化の中で生活した経験があります。価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。この経験は現在の診療においても、「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、36週6日で一人を死産した経験があります。その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、家族の未来に関わる重要な意思決定です。年齢や統計だけで判断するのではなく、医学的根拠と心理的支援の両面から、ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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