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NIPT陰性でも臨月で死産する原因とは?不育症の不安はいつまで続くのか

仲田洋美 医師

この記事の監修:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医として遺伝医療に携わっています。

「NIPTが陰性なら無事に生まれてくる」と信じて臨月を迎えたのに、赤ちゃんの心拍が止まっていた。こうした深い悲しみに直面するご家族がいます。NIPTはすべての異常を予測できる検査ではありません。臨月の死産の原因と、その背景にあることがある「不育症」について、臨床遺伝専門医が解説します。

この記事でわかること
📖 読了時間:約9分
🧬 NIPT・不育症・死産
★ 臨床遺伝専門医監修

Q. NIPTが陰性だったのに、なぜ流産や死産になるのですか?

A. NIPTは「決められた染色体異常」を調べるものであり、それ以外の原因(胎盤やへその緒のトラブル、感染、不育症など)による死産は予測できないからです。
妊娠初期だけでなく、妊娠後期や臨月でも、胎盤の血流が妨げられるなどの理由で赤ちゃんの心拍が止まってしまう悲しいケースがあります。

  • ➤NIPTの限界 → 陰性は「すべての異常の否定」ではない
  • ➤死産の原因 → 胎盤・産科的な合併症・感染・へその緒・赤ちゃん側の異常
  • ➤不育症の真実 → 初期流産だけでなく「全妊娠期間」でリスクになる
  • ➤治療と希望 → 適切な血液検査と抗血栓療法によるアプローチ
  • ➤検査の時期 → 妊娠10週以降の原因不明の胎児死亡は1回でも検査の対象

⏱️ 30秒でわかる要約

🧬 Q. NIPTが陰性なのに、臨月で死産するのはなぜ?

死産の原因で多いのは、常位胎盤早期剥離などの産科的な合併症、胎盤の異常、感染症、へその緒の異常です。NIPTが調べる染色体の異常は、死産の原因の一部にすぎません。

📅 Q. 不育症の不安はいつまで続くの?

抗リン脂質抗体症候群などは、妊娠初期だけでなく臨月まで胎盤の血流を妨げるリスクになります。何週を過ぎたら絶対に安心、という区切りはありません。

🌸 Q. 次の妊娠のために何をすればいい?

妊娠10週以降に原因の分からない胎児死亡があれば、1回でも抗リン脂質抗体症候群の検査の対象です。回数を待たずに不育症の検査を受け、必要なら抗血栓療法で備えます。

1. NIPTが陰性で順調だったのに…臨月や妊娠後期で死産になる原因とは

初めてのお子さんを妊娠したAさん(仮名)。高齢妊娠ということもあり、精度の高い検査と臨床遺伝専門医のカウンセリングを求めてミネルバクリニックでNIPTを受けられました。結果は「陰性」。早い時期にNIPTで安心を得て、お腹の赤ちゃんは臨月(正期産)まですくすくと育ちました。

しかし、出産のために都内の大学病院に入院したその日。超音波(エコー)検査で、赤ちゃんの心臓は動いていませんでした。

NIPTが陰性だったのになぜ、という疑問と絶望。わけもわからないまま、Aさんは亡くなっている我が子を分娩することになりました。どれほど健康に育っていても、NIPTの陰性は「すべてのトラブルの否定」ではありません。

💡 用語解説:NIPTで「わからないこと」

NIPTは、ダウン症などの決められた「染色体異常」(プランによっては一部の遺伝子の変化)を調べる検査です。しかし、臨月の死産の原因には、絨毛膜羊膜炎(子宮内の感染症)、常位胎盤早期剥離、胎盤の働きの低下、へその緒(臍帯)の結び目や巻き付きといった「胎盤・へその緒・環境のトラブル」もあり、これらはNIPTでは予測できません。

米国で死産512例を詳しく調べた研究では、原因として多かったのは、常位胎盤早期剥離などの産科的な合併症(29.3%)、胎盤の異常(23.6%)、赤ちゃんの遺伝的・構造的な異常(13.7%)、感染症(12.9%)、へその緒の異常(10.4%)でした。胎盤の病理検査や赤ちゃんの解剖などをそろえて調べると、約6割で原因がほぼ特定できています[2]。死産の原因の多くは、染色体の数を調べるNIPTの守備範囲の外にあるということです。常位胎盤早期剥離については常位胎盤早期剥離の解説をご覧ください。

また、赤ちゃん側の遺伝的な原因でも、NIPTで調べていない小さな染色体の欠失・重複が死産に関わることがあります。同じ研究グループは、死産した赤ちゃんの組織をマイクロアレイ検査で調べると、従来の染色体検査より結果が得られやすく、異常が見つかる割合も高かった(8.3%対5.8%)と報告しています[3]。マイクロアレイは生きた細胞を必要としないため、亡くなってから時間がたった組織でも調べられるのが利点です。米国産婦人科学会(ACOG)なども、死産の原因を調べる際には、胎盤・臍帯の検査と赤ちゃんの遺伝学的な検査を含めることを勧めています[4]。

NIPTの陰性後に起こる妊娠初期の流産についてはNIPT陰性だったのに流産したのはなぜ?で、陰性なのにダウン症の赤ちゃんが生まれる偽陰性の確率と原因はNIPT陰性だったのにダウン症…偽陰性の確率と原因で解説しています。

原因不明と言われても、自分を責めないでください

結局、大学病院では「どういう原因かわからない」と言われたそうです。死産の原因は、詳しく調べても特定できないことがあります。ですが、お母さんの行動のせいで起こるわけではありません。「私のせいかもしれない」とご自身を責め続ける必要は決してないのです。そのうえで、胎盤や赤ちゃんの検査、お母さんの血液検査の結果が残っていれば、次の妊娠の計画を立てる大切な手がかりになります。

2. 妊娠初期だけではない「不育症」の真実(不安はいつまで続くのか)

Aさんはその後、次のお子さんを授かるために、不育症の診療を専門とするクリニックを受診しました。ここで多くの方が抱いている、ある「誤解」に直面します。

【真実】不育症=「妊娠初期に流産を繰り返す病気」というイメージが強いですが、日本では妊娠中期・後期や臨月(正期産)での死産、生まれてすぐの新生児死亡も含めて、妊娠しても赤ちゃんが得られない状態として扱われています[6]。

血栓が赤ちゃんの命を絶つ

不育症の代表的な原因の一つに、自己免疫の病気である抗リン脂質抗体症候群があります。血液が固まりやすくなり、胎盤の血管に血栓(血の塊)ができたり、胎盤に炎症が起きたりして、赤ちゃんへの酸素と栄養の供給が妨げられます。血液を固まりにくくする因子が生まれつき少ない体質(プロテインS欠乏症など)が関わることもあります。

「〇週の壁」という幻想

この血栓や胎盤の血流のリスクは、妊娠の初期に限らず妊娠期間中ずっと(いつまでも)つきまといます。実際、妊娠10週以降に原因の分からない胎児死亡が1回でもあれば、抗リン脂質抗体症候群を疑う根拠になります[5]。「安定期に入ったから絶対安心」という医学的根拠はなく、生まれるまで何が起こるか分からないのが妊娠の真実です。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【言葉にできないほどの辛さ、私にもわかります】

正期産までお腹の中で大切に育てた赤ちゃんが亡くなってしまった辛さ。実は、私自身も1回目の妊娠で辛い経験をしているため、言葉にできないほどの悲しみが痛いほどわかります。

初期の流産も悲しいですが、出産を心待ちに入院着に着替えたその日に赤ちゃんの死を知らされる絶望は、筆舌に尽くしがたいものです。だからこそ私は、二度と同じ悲しみを繰り返さないための「事前の検査」が大切だと考えています。

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3. 【患者様の実体験】突然の死産から不育症治療を経て、無事に出産へ

Aさんは不育症の専門クリニックで検査を受けた結果、少し引っかかる項目が見つかりました。そこから不育症の治療をしつつ、次の妊娠への準備を始めました。

それから数年がたち、Aさんは2回目の妊娠を果たします。そして今回もまた、ミネルバクリニックでNIPTを受けることを選んでくださいました。

結果は今回も陰性でした。しかし、Aさんは「陰性でも生まれるまで安心はできない」ことを痛感していました。それでも前回と明確に違っていたのは、不育症の専門施設で適切な治療を受けながら、NIPTの結果の説明やその後の相談も継続して受けられる体制がそろっていたことです。

NIPTによる染色体異常のスクリーニングと、母体側の環境を整える不育症治療の両輪。この医学的アプローチが実を結び、Aさんはその後、無事に出産されました。

アスピリンやヘパリンを使いながらNIPTを受ける場合の注意点は、バイアスピリン服用中のNIPTとヘパリン注射とNIPTで解説しています。

4. 辛い経験を繰り返さないために。次にむけて受けるべき検査と治療

不育症は、検査や治療の考え方が医療機関によって異なりやすい領域です。

以前は「流産を3回繰り返してから原因を調べる」とされることもありましたが、現在は2回以上の流産・死産で不育症として検査を考えます[1]。さらに、妊娠10週以降に原因の分からない胎児死亡が1回でもあれば、回数にかかわらず抗リン脂質抗体症候群の検査の対象になります[5]。患者様ご本人にしてみたら、1回でもあんなに辛い目に遭うのは絶対に嫌なはずです。臨月の死産を経験された方は、回数を待たずに検査を考えてよいのです。

血液検査から始まる予防策

不育症の原因のすべてが分かるわけではありませんが、近年は医学の進歩でだいぶ解明されてきました。血液検査によって、抗リン脂質抗体などの自己免疫の異常や、血液の固まりやすさを事前に調べることができます。

アスピリン・ヘパリンによる抗血栓療法

抗リン脂質抗体症候群などで血栓のリスクが判明した場合、低用量アスピリンの内服やヘパリンの自己注射などの具体的な予防治療を行うことで、出産に至る可能性を高めることが期待できます。治療の対象や薬の選び方は検査結果によって異なるため、不育症を専門とする医師と相談して決めます。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【あなたを守るための「検査」です】

「検査をして異常が見つかるのが怖い」と感じる方もいらっしゃると思います。しかし、医学的な原因を知ることは、決してあなたを追い詰めるものではありません。治療という「希望の道筋」を立てるための最初の一歩なのです。

NIPTも同じだと考えています。単に確率を出すだけではなく、結果をどう受け止め、次に向けてどのように命を守っていくか。臨床遺伝専門医として、ご家族を孤独にさせない医療を大切にしています。

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5. 専門医からのメッセージ:一人で抱え込まず、まずはご相談ください

少子化の時代、より健康なお子さんを持ちたいという思いが高まるのは当然のことです。流産や死産を経験したご家族の不安は計り知れません。

ミネルバクリニックでは、臨床遺伝専門医が検査の内容と限界を見きわめたうえで、NIPTを提供しています。

💡 ミネルバクリニックのNIPT検査体制

  • ➤COATE法による検査:プレミアムプラン・ダイヤモンドプランでは、SNP法とターゲット法を組み合わせたCOATE法で、微細欠失まで判定します(精度のデータはCOATE法のエビデンス)。
  • ➤ダイヤモンドプランの対象:常染色体トリソミー・性染色体の数の変化・微細欠失12領域に加え、父親の加齢とともに精子で起こりやすくなる新生突然変異など、56遺伝子まで調べます。
  • ➤互助会制度:受検者全員が加入する互助会(8,000円)により、万が一陽性となった場合の確定検査(羊水検査等)の費用が全額補助されます。
  • ➤一貫した院内サポート:常駐する臨床遺伝専門医による遺伝カウンセリングから検査、そして2025年6月からは院内での羊水・絨毛検査も可能になり、転院して待つ不安な時間を短くしています。

父親由来の遺伝子変異が子へ伝わるイメージ

(父親由来の遺伝子変異が子へ伝わるイメージ)

ネットの心無い情報に疲れ、不安で押し潰されそうになったら、どうか一人で抱え込まずに一度ご相談にいらしてください。のべ10万人以上のご家族と向き合ってきた専門医として、あなたの決断を全力でサポートいたします。

よくある質問(FAQ)

Q1. NIPTが陰性なら、流産や死産の心配はありませんか?

心配がゼロになるわけではありません。NIPTはダウン症などの決められた染色体異常を調べる検査であり、胎盤やへその緒のトラブル、感染、母体側の不育症(血栓など)による流産・死産のリスクを予測できるものではありません。

Q2. 不育症は妊娠初期だけの問題ですか?いつまで不安が続きますか?

不育症の原因となる抗リン脂質抗体症候群などは、妊娠初期だけでなく、中期・後期、そして臨月に至るまで、胎盤の血流を妨げて赤ちゃんへの栄養供給を絶つリスクになります。何週を過ぎたら絶対に安心、ということはありません。

Q3. 流産や死産を何回繰り返したら、不育症の検査を受けるべきですか?(産後いつから可能ですか?)

以前は「3回繰り返してから」と言われることもありましたが、現在は2回以上の流産・死産で不育症の検査を考えます。さらに、妊娠10週以降に原因の分からない胎児死亡があった場合は、1回でも抗リン脂質抗体症候群の検査の対象になります。臨月の死産を経験された方は、回数を待たずに次の妊娠に向けて備えることをお勧めします。なお、死産後の検査時期は、母体の回復を待ち、悪露(おろ)が落ち着いて月経が再開した頃(産後1〜1.5ヶ月以降)が一つの目安となります。まずは無理をせず、専門医にご相談ください。

Q4. 不育症の治療とはどのようなものですか?

原因により異なりますが、抗リン脂質抗体症候群など血栓ができやすい状態が判明した場合は、低用量アスピリンの内服とヘパリンの注射を組み合わせた抗血栓療法を行い、胎盤の血流を保つ治療が一般的です。

Q5. ダイヤモンドプランでは何がわかるのですか?

13・18・21番をはじめとする常染色体トリソミー、性染色体の数の変化、微細欠失12領域に加え、父親の加齢などで起こりやすくなる新生突然変異による56遺伝子の病気を対象にしています。

Q6. ミネルバクリニックは非認証施設ですが、検査の質は大丈夫ですか?

当院は非認証施設ですが、常駐する臨床遺伝専門医が、事前のカウンセリングから結果の説明、陽性後のケア、さらには確定検査(羊水・絨毛検査)までを院内で一貫して行う体制を整えています。「非認証=質が低い」というわけではありませんのでご安心ください。

🏥 不安を、ひとりで抱えないために

どんな悲しみや不安も、ご家族だけで抱え込む必要はありません。
ミネルバクリニックは臨床遺伝専門医が運営し、NIPTのカウンセリングから結果の説明、確定検査まで、正確な診断と心の安全を大切に支援します。

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参考文献

  • [1] ESHRE Guideline Group on RPL. ESHRE guideline: recurrent pregnancy loss: an update in 2022. Hum Reprod Open. 2023;2023(1):hoad002. [DOI 10.1093/hropen/hoad002]
  • [2] Stillbirth Collaborative Research Network Writing Group. Causes of death among stillbirths. JAMA. 2011;306(22):2459-2468. [PubMed 22166605]
  • [3] Reddy UM, Page GP, Saade GR, et al. Karyotype versus microarray testing for genetic abnormalities after stillbirth. N Engl J Med. 2012;367(23):2185-2193. [PubMed 23215556]
  • [4] American College of Obstetricians and Gynecologists; Society for Maternal-Fetal Medicine. Management of Stillbirth: Obstetric Care Consensus No. 10. Obstet Gynecol. 2020;135(3):e110-e132. [DOI 10.1097/AOG.0000000000003719]
  • [5] 横浜市立大学附属市民総合医療センター. 連携NEWS「不育症について」. [横浜市立大学附属市民総合医療センター]
  • [6] 厚生労働科学研究 不育症研究班. Fuiku-Labo(フイク・ラボ). [Fuiku-Labo]

※本記事は一般の方に向けた情報提供を目的とするもので、個別の診断・治療方針を示すものではありません。死産後の検査や次の妊娠については、主治医・専門医にご相談ください。

プロフィール
仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、
臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。
のべ10万人以上のご家族の意思決定と向き合ってきた臨床遺伝専門医です。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、
検査結果の数値そのものだけでなく、
「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、
一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、
日本人として異文化の中で生活した経験があります。
価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。
この経験は現在の診療においても、
「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、
36週6日で一人を死産した経験があります。
その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、
そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。
現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、
出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、
家族の未来に関わる重要な意思決定です。
年齢や統計だけで判断するのではなく、
医学的根拠と心理的支援の両面から、
ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/
日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。

2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、
複数の海外メディア・専門誌で特集掲載
されました。

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