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NIPT事例|上のお子さんがディジョージ症候群

ディジョージ症候群は、第22番染色体の一部がなくなってしまう(微小欠失)ことにより起こる疾患です。

上のお子さんは健常児だったのですが、2番目のお子さんがディジョージ症候群でうまれたAさんご夫妻。
うまれたお子さんには心臓の奇形があり、2歳までの間に4回くらい手術したそうです。手術も2回って聞いていたのに、結合織もおかしいのか縫合不全で再手術って感じだったそうで。
小さいお子さんの場合、入院するたびに付き添わないといけません。
そのたびに、交代で仕事を休み頑張りました。

このお話を聞いて、わたしは友達のことを思い出しました。わたしの友人も一番下の兄弟が心臓疾患でうまれて、お母さんがずっとつきっきりで入院したり退院したりしていたそうです。このため、友人ともう一人の兄弟は母親との接触がほとんどなくなってしまいました。
一番下の兄弟の心疾患は具体的にはどういうものなのかということも知らされません。家族が揃って団らんするといった情景はなかったそうです。
20歳を迎えるか迎えないかというころ、一番下の兄弟はなくなりました。しかし、そのころにはわたしの友人もその上の兄弟も独立していて、家族がそろうことはありませんでした。
両親そろった家庭に育ちながら、あまり家庭らしさというものを味わったことがなく育った友人。
下の兄弟の看病ばかりしていたお母様は、もともと体調もよろしくなく、その後数年で亡くなりました。

世の中には障害を乗り越えて頑張ってます、と発信している人たちは大勢いますが、そういう人たちは発信できるくらいの人たちですよね。
やっぱ障害のある家族がいて、でも、「我慢しないといけない」、母親は障害のあるお子さんに付きっ切り、そのために母親の愛情がほしい年齢の他のお子さんたちが窮屈な思いをしているが、倫理的に問題があると決めつけられて自己主張もできず、うちに秘めた思いを抱き続ける。テレビも新聞もそういう人たちの声は取り上げません。障害のある家族を排除したいわけではないが、自分たちも少しはかまってほしかった…という思いを抱いてはいけないのでしょうか。

友達を見ていると、家族のなかに障害のあるお子さんを抱えて、家族間のバランスも保ち暮らしていくのは至難の業だなと感じました。言っておきますが、友達が家族に障害のある兄弟がいることを嫌だと思っていたわけではありません。でも、やっぱ普通にみんな揃って暮らしたかったよね、って感じでしょうか。特にこのご家庭は殆ど入院していたお子さんのためにお母さんがつきっきりだったので。

話をディジョージ症候群のお子さんがいるAさんに戻しましょう。ディジョージ症候群のお子さんが可愛くないわけではありません。ご自分のお子さんなので可愛くて仕方がありません。
でも。やっぱり何が困るのかというと、ディジョージ症候群では免疫力を育てるのに大事な胸腺という臓器が発達障害を起こしますので、低免疫状態となります。なので、ちょっと風邪をひいた、と思えばすぐ肺炎になり結構な頻度で入退院を繰り返すそうなのです。そうすると、「どちらかが仕事を休んで付き添い」ということをやらないといけないので、毎回、お互いの仕事を職場を巻き込んで調整して、という作業をして、交代交代、ってことになるらしいんですね。
ご夫婦とも仕事をしながらなので、それが大変だという事でした。
なので、「また障害のある子どもなら育てられない」ということを強く感じていて。ミネルバクリニックで精度の高いNIPTをディジョージ症候群に対して特にしたくなったようでした。

ミネルバクリニックには上のお子さんに障害があるご夫婦が検査に来られますので、そういう思いを一例一例真摯に拝聴しながら、倫理と法と現実のはざまで患者さんたちに医師としてたくさんのことを教えていただきました。
それが今日の私の診療に生きています。

やはり、事前にわかることに関しては知って、健常なお子さんを抱きたいというご両親の願いにこたえていくことは大事なことだと改めて思いました。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 (がん薬物療法専門医認定者名簿)、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医(臨床遺伝専門医名簿:東京都)として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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