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出産したら生まれた赤ちゃんの性別とNIPTの性別の結果が違う!!生まれた赤ちゃんの性別間違い?病気?どうしたらいいの?
NIPTは母体の血液を採取して赤ちゃんのトリソミーなどの染色体異常を調べる検査なのですが、赤ちゃんの性別をいち早く知りたくてNIPT(新型出生前診断)を受ける妊婦さんたちも多いでしょう。ところが、時々赤ちゃんの性別とNIPT(新型出生前診断)の結果が違うことがあります。落ち着いてください。といっても落ち着かなくてわなわなするかもしれませんが。NIPTの性別判定と実際の赤ちゃんの性別が違う場合でも、その性別の違いは間違いではないかもしれないのです。
NIPT(新型出生前診断)の検査結果で男の子って聞いてたのに出産したら外性器の性別判定は女の子。こういう症例はミネルバクリニックでも今までに2例あります。この記事ではNIPTの性別判定と超音波検査の性別判定、生まれた赤ちゃんの性別判定が違う場合、何が考えられるのかについてお伝えします。
NIPT(新型出生前診断)の赤ちゃんの性別と妊婦検診の超音波検査の性別とが違う場合の管理の仕方は上の画像にある通りです。
流れとしてはまずもってNIPTを行った検査会社に連絡して結果が本当に間違ってないのか、たとえばミスプリントなどがないのかを問い合わせます。
NIPTと妊婦検診の超音波検査で胎児の性別が違うとき
胎児のNIPT結果の性別と妊婦検診の超音波検査で実際に見える性器の性別が違う場合でも、その性別違いは間違いではないかもしれません。考えられる理由は以下の通りです。
- 1.バニシングツインだったかもしれない
- 2.妊娠中の内服薬や母体の疾患の影響
- 3.胎児に表現型の性別が変わってしまう性分化疾患がある
- 4.性別の誤判定(間違い)
関連記事:表現型の性別が不一致な性分化疾患
以下、それぞれを詳しく解説していきます。
新型出生前診断の性別判定と超音波検査の胎児の性別が違う場合|1.バニシングツインだったかもしれない
新型出生前診断の性別判定と妊婦検診の超音波検査で胎児の性別が違う場合、双子のうち一人が死亡などという既往がないかを確認しましょう。男女性別の違う双子で、たとえば男の子の性別の胎児のほうが先にバニシング(消失)した場合、つまりバニシングツインになる場合、実際の胎児の性別は女の子ですが、男の子の性別の胎児が実際にいたのでDNAはしばらく存在することになります。大体は4週間くらいでバニシングツインのセルフリーDNAは検出されなくなるのですが、最長8週間くらい残っているという報告もあります。この微量な男の子の性別の消えた胎児のDNAを拾ってしまって性別を誤判定(間違い)する可能性があります。こういう場合はNIPTの性別結果は間違いとは言えないのですが、結局のところ、妊娠が判明する前に消失してしまっていてご本人も産婦人科医も気が付いていない消えた男の子の性別の胎児の存在を肯定する証拠も否定する証拠もありませんので、『間違いだ』、『いや間違いじゃなくて病気かもしれない』「いやきっとNIPT施設が悪いに違いない」とか悶々とするのではなく、こういうこともあるのだとお考えいただいたほうがよろしいかと思います。
新型出生前診断の性別判定と超音波検査の胎児の性別が違う場合|2.妊娠中の内服薬や母体の疾患の影響
新型出生前診断の性別判定と妊婦検診の超音波検査で胎児の性別が違う場合、母体の既往歴を確認して内服薬などのチェックもしましょう。特にステロイドホルモンなどのチェックをしないといけません。この場合、NIPTの性別の判定は間違いというわけではありません。
新型出生前診断(NIPT)では男児なのにエコーでは女児な場合
妊婦の既往歴の確認が特に胎児がXY、つまり出生前診断では男の子なのにエコーでは女の子に見える場合には、上述のバニシングツインの既往歴をチェックすることが必要になります。
また、ヒトは何もなければ女性として発生します。男性の性分化にはアンドロゲン(男性ホルモン)が必須です。男性胎児の性分化に対して母体の内因性エストロゲン(女性ホルホン)はほとんど影響しないと考えられていますが、たとえば流産の治療に使うような量の外因性(外から投与したという意味です)の女性ホルモンは性分化異常を来すおそれがあります。胎児がつくるアンドロゲンの作用を上回る外因性エストロゲンの作用が男性器の分化(発達)を邪魔してしまい、男性胎児の女性化がおこることがあります。母体-胎盤経由のエストロゲン製剤、プロゲステロン製剤以外にも、いわゆる内分泌撹乱物質(エストロゲン作用があるものをこう呼びます)やテストステロンの生合成に必要な酵素を阻害剤するなどしてアンドロゲンが働くのを阻害する物質や薬剤などが原因となって男性器の女性化がおこることがあります。性の分化の基本型は先ほどもお伝えした通り女性型で、男性化は発生の段階の適切な時期にアンドロゲンが働かないといけないのです。適切な時期に男性化に失敗するとたとえ染色体の型は男性(46,XY)でもそれ以降外性器は女性として発生することになります。
新型出生前診断(NIPT)では女児なのにエコーでは男児な場合
この場合も、新型出生前診断(NIPT)の結果が間違いとは限りません。胎児のときの出生前診断の性別判定がXX、つまり女児という結果だったのに外性器が男児だった場合も母体の内服歴をチェックします。女性胎児の男性化はアンドロゲン作用のためで、アンドロゲンが母体内で産生される場合(たとえば母体のアンドロゲン産生腫瘍)と、母体の外からの外因性の場合があります。外因性アンドロゲンにはアンドロゲン、流産の治療につかうプロゲステロン製剤、ジエチルスチルベストロール(DES)、タンパク同化ステロイド、男性ホルモンの内服薬、ダナゾールなどが女性胎児の男性化原因となります。
新型出生前診断の性別判定と超音波検査の胎児の性別が違う場合|3.胎児に見た目の性別が変わってしまう性分化疾患がある
新型出生前診断の性別判定と妊婦検診の超音波検査で胎児の性別が違う場合に考えられる3つ目は、聞きなれない赤ちゃんの『性分化疾患』の可能性です。先ほどもお伝えした通り、アンドロゲンがなければたとえ染色体の型がXY、つまリ男性であっても女性として発生します。
赤ちゃんを作るための卵子、精子といった配偶子は減数分裂という特殊な分裂方法で作られることを生物でお勉強したと思います。減数分裂と体細胞分裂(普通の分裂)で一番違うところは、減数分裂のときだけ相同染色体がピタッとくっついて組換え(相同組換え)を起こすことです。男性器の発生になくてはならないY染色体もX染色体と相同組換えをする領域(偽常染色体領域と言います)があり、この偽常染色体領域付近にSRY遺伝子と呼ばれる遺伝子があります。この遺伝子が間違えてうっかりとX染色体にうつってしまったら、Y染色体なのに大事なSRY遺伝子がない!X染色体なのにSRY遺伝子がある!!ということになり、XX染色体なのに男児が生まれる、XY染色体なのに女児が生まれる、という性別があわない原因となります。性分化疾患自体は約1/4000とそう少なくはないものです。
新型出生前診断の性別判定と超音波検査の胎児の性別が違う場合にすべきこと
赤ちゃんの性別チェックのために超音波検査を繰り返し、胎児の性器を確認しましょう。NIPTの性別の判定間違いならよいのですが、性染色体の型と表現型の性別が合わない疾患(性分化疾患)も1/4000人くらいで起こります。
それでもNIPT(新型出生前診断)の性別と実際の赤ちゃんの性別が違う場合は、羊水穿刺(羊水検査)や絨毛採取(絨毛検査)をして赤ちゃんの染色体型(核型)を検査してNIPTの性別と実際の赤ちゃんの性別の違いを解決しましょう。
絨毛検査や羊水検査の染色体検査をしてもNIPT(出生前診断)の性別と胎児の性別の違いが解決しない場合でも、NIPT(新型出生前診断)の結果は間違いではないかもしれなくて、上で述べたバニシングツインの疑いが強まります。胎児が絨毛検査や羊水検査の染色体検査、女児(46,XX)と判明し、NIPT(新型出生前診断)では46,XY(男児)だった場合は特にバニシングツインを疑います。
異常のどこかの時点でNIPTの性別や染色体型による性別と胎児の性別の違いが解決した場合、通常の妊娠管理となります。
安心しましょう。