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NIPT(新型出生前診断)を受けて「陰性」と判定されれば、多くの妊婦さんはほっと胸をなで下ろすことでしょう。しかし、ブログやSNSで「陰性だったのにダウン症だった」「陰性判定後に流産してしまった」という体験談を目にして、強い不安を抱える方も少なくありません。この記事では、NIPTの限界と、検査後に後悔しないための正しい備えについて、臨床遺伝専門医の立場から解説します。
Q. NIPTの結果が陰性なら、絶対に安心と言い切れますか?
A. 残念ながら「絶対」ではありません。
NIPTは精度の高い検査ですが、非確定的検査(スクリーニング検査)である以上、ごくまれに「偽陰性」が起こります。また、赤ちゃんの形態異常(からだのつくりの異常)や、子宮腺筋症のような母体側の病気はNIPTでは分かりません。限界を知らずに安心しきってしまうことが、いちばんの後悔につながります。
- ➤安心できない理由 → 偽陰性が起こる仕組みと、検査の対象外の病気
- ➤体験談から学ぶ → 陰性判定後に子宮の病気で流産を経験した方の教訓
- ➤次の一手 → 超音波検査(エコー)と羊水検査の正しい活用法
- ➤専門医の役割 → 検査を出して終わりではなく、結果の後まで伴走する意味
⏱️ 30秒でわかる要約
🧬 Q. NIPTが陰性だったのにダウン症ということはある?
まれですが、あります。ダウン症に対するNIPTの検出率は約99.7%で、ダウン症の赤ちゃん1,000人のうち3人ほどは陰性と判定されます。赤ちゃん由来のDNAが少なすぎるときや、胎盤と赤ちゃんの染色体が食い違っているときに起こります。
🔍 Q. NIPTでわからないことは?
心臓の形の異常などの形態異常、知的障害や自閉症の原因の多く、子宮腺筋症のような母体側の病気は、NIPTでは分かりません。陰性でも流産や障害がありうるのはこのためです。
🌸 Q. 後悔しないために何をすればいい?
妊娠中期以降の精密超音波検査で形態異常を確認し、陽性や判定保留のときは羊水検査・絨毛検査で確定させます。結果を説明し、その後まで相談できる専門医のもとで受けることが大切です。
1. NIPT陰性だったのにダウン症?「安心できない」と言われる本当の理由
「NIPTで陰性と言われたのに、生まれてみたらダウン症だった」。ブログやSNSでこうした書き込みを目にして、強い不安を抱える妊婦さんは少なくありません。なぜ、このようなことが起こるのでしょうか。
医学的な結論から申し上げると、NIPTはあくまで「非確定的検査(スクリーニング検査)」であり、感度が100%ではないためです。
NIPTは、お母さんの血液中に流れ出ている赤ちゃん由来のDNAの断片を分析して、染色体の数の異常の可能性を判定する検査です。ダウン症などの代表的なトリソミーについては、現在ある出生前のスクリーニング検査のなかで最も感度・特異度が高い方法とされ[1][4]、ダウン症(21トリソミー)の検出率は、多くの研究をまとめた解析で約99.7%と報告されています[2]。
しかし裏を返せば、ダウン症の赤ちゃん1,000人のうち3人ほどは、検査で陰性と判定されることがあるということです。これが「偽陰性(ぎいんせい)」です。
💡 専門医が解説:なぜ「偽陰性」は起こるのか?
お母さんの血液中に流れているDNAの大部分はお母さん自身のもので、NIPTが手がかりにする「赤ちゃん由来」のDNAは、実際には赤ちゃん本人ではなく胎盤の細胞から流れ出たものです。そのため、血液中の赤ちゃん由来のDNAの割合(胎児分画)が少なすぎたり、胎盤の染色体は正常なのに赤ちゃんの染色体にだけ異常がある(胎盤と赤ちゃんの染色体の食い違い)場合には、異常を拾いきれないことがあります。「陰性=染色体異常がゼロであるという証明」ではないのです。だからこそ、この限界を検査前に正しく理解し、過信しすぎないことが、後悔を防ぐ第一歩となります。
偽陰性の確率と原因についてはNIPT陰性だったのにダウン症…体験談やブログで語られる確率と原因で、胎児分画やモザイクといった技術的な仕組みはNIPTの偽陰性(第5章)で詳しく解説しています。実際に陰性からダウン症の出産に至った症例はNIPT陰性だったのに20代で2回もダウン症出産でご紹介しています。
2. 【実体験ブログ】NIPT陰性でも訪れた予期せぬ悲劇と、そこから学ぶべき備え
ダウン症などの染色体異常の「偽陰性」についてお話ししましたが、陰性のあとに起こる悲しい出来事の原因は、それだけではありません。赤ちゃんの染色体が正常であっても、母体側の病気が原因で妊娠が続かないことがあります。「検査結果が陰性なら、あとは無事に出産を待つだけ」と思い込んでしまうことの怖さを、Aさんの体験談を通して考えてみましょう。
Aさんは長年の不妊治療(体外受精)の末、念願の妊娠をしました。ご年齢のこともあり、ダウン症などの染色体異常を強く心配されていたため、妊娠10週でNIPTを受検。結果は「すべて陰性」でした。Aさんご夫婦は心の底から安心し、ベビー服を買いそろえながら出産に向けた準備を進めていました。
しかし、妊娠中期に入ったころ、悲劇がAさんを襲います。
Aさんは重度の子宮腺筋症という持病を抱えていました。
🩺 疾患解説:子宮腺筋症(しきゅうせんきんしょう)とは?
子宮内膜に似た組織が子宮の筋肉(筋層)に入り込み、子宮の壁が厚く硬くなってしまう病気です。子宮腺筋症のある女性では、ない女性に比べて流産のリスクが約2.3倍と報告されており、早産や妊娠高血圧腎症などのリスクも高くなります[3]。
赤ちゃんの染色体は正常でした。しかし、妊娠が進んで赤ちゃんが大きくなるにつれ、硬い子宮がそれに耐えきれず、Aさんは最終的に流産という非常につらい結果を経験することになりました。
この体験が教えてくれるのは、「赤ちゃんの染色体」だけを見ていては、妊娠・出産を守り切ることはできないという事実です。母体側の病気や環境を含めた総合的な妊娠管理があって初めて、無事な出産を目指すことができます。
その後、Aさんは深い悲しみを乗り越え、子宮腺筋症の治療を専門とする医師を探し出し、手術を決意されました。手術後に再び体外受精に挑戦して再妊娠。2回目のNIPTも陰性を確認し、子宮破裂という命に関わるリスクを抱えながらも、専門医による厳重な管理のもと、元気な赤ちゃんをその腕に抱くことができました。あきらめずに適切な専門医のサポートを受けることが、いかに大切かを示すエピソードです。
なお、妊娠初期の流産で最も多い原因は、受精の段階で偶然生じた赤ちゃん側の染色体異常です。その多くは16トリソミーなど、一般的なNIPTが調べていない種類の異常のため、NIPTが陰性でも流産は起こりえます。NIPT陰性後の流産の原因や流産率、次の妊娠のための検査はNIPT陰性だったのに流産したのはなぜ?原因・流産率と次の妊娠のための検査で詳しく解説しています。
🩺 院長コラム【検査結果の紙切れ一枚で、あなたの妊娠は完結しません】
Aさんのエピソードは、決して他人事ではありません。NIPTは「ゴール」ではなく、元気な赤ちゃんを迎えるための「スタートライン」にすぎないと考えています。
ただ採血をして、結果の紙を送って終わるような体制では、ご夫婦の本当の不安は消えないのではないでしょうか。検査の結果を、母体と赤ちゃんの両方のリスクのなかに位置づけて説明できる専門医の存在が欠かせないと、臨床遺伝専門医として考えています。
3. 偽陰性だけじゃない。NIPTで「わかること」と「わからないこと」
NIPTを受ければ「赤ちゃんの障害がすべてわかる」と誤解されている方は少なくありません。NIPTには明確な対象疾患があり、それ以外の病気は見つけることができません。
🧬 NIPTで「わかること」と「わからないこと」
| 区分 | 主な内容 |
|---|---|
| 〇 わかること | 基本はダウン症(21番)・18番・13番などの特定の染色体の数の異常。プランによっては、性染色体の数の変化、染色体のごく一部が欠ける微細欠失、一部の単一遺伝子疾患まで対象にできます。 |
| ✕ わからないこと | 心臓の形の異常、手足の欠損、口唇口蓋裂といった形態的な異常、知的障害や自閉症の原因の多く、出産時の低酸素性虚血性脳症など後から生じる障害、子宮腺筋症など妊娠に影響する母体側の病気。 |
ミネルバクリニックのダイヤモンドプランは、SNP法とターゲット法を組み合わせたCOATE法で、常染色体トリソミー6種・性染色体の数の変化4種・微細欠失12領域に加えて56遺伝子を対象にしています。精度のデータはCOATE法のエビデンスでご確認いただけます。
さらに、高齢出産の文脈では「ダウン症」ばかりが注目されがちですが、父親の年齢が上がると、精子に「新生突然変異」が生じることもわかっています。

(父親由来の遺伝子変異が子へ伝わるイメージ)
新生突然変異による単一遺伝子疾患には、知的発達に重い影響を及ぼすものや、合併症を伴う「症候性自閉症」の原因になるものも含まれます。一般的なNIPTではこれらは対象外で、56遺伝子を調べるダイヤモンドプランでも、その一部を調べられるにとどまります。知的障害や自閉症の原因の多くは、どのNIPTでも陰性・陽性を判定できないことを知っておいてください。陰性なのに障害がわかった場合の考え方は偽陰性の確率と原因でも整理しています。
4. 検査後に後悔しないための「次の一手」:エコー検査と羊水検査の重要性
NIPTの限界をお話ししてきましたが、では不安をどう解消すればよいのでしょうか。
答えは、複数の検査を組み合わせて、赤ちゃんの状態を多角的に把握することです。
NIPTで染色体や遺伝子を調べた後は、妊娠中期以降に専門的な精密超音波検査(エコー)を受けることをお勧めします。NIPTではわからない赤ちゃんの形態的な異常(心臓の病気など)は、主に超音波検査で確認します。ミネルバクリニックでは、高性能の産婦人科用超音波で赤ちゃんの心拍と発育を確認してから採血に進みます。
また、NIPTで「陽性」や「判定保留」という結果が出た場合は、確定検査として羊水検査または絨毛検査が必要になります。出生前に赤ちゃんの染色体を確定させるには、羊水や絨毛を採って直接調べるしかありません(染色体の微細な変化は、採った検体でマイクロアレイ検査を行って調べます)。
しかし、羊水検査には10〜20万円ほどの費用がかかるため、検査をためらってしまい、不確かな情報のまま重い決断を迫られて後悔する方もいます。
ミネルバクリニックではそうした経済的な不安をなくすため、互助会(8,000円)により、羊水検査費用が全額補助されます。これは強制加入の制度で、ミネルバクリニックでNIPTを受けるすべての妊婦さんが、金銭的な心配なく確定検査へ進めるセーフティネットになっています。
🩺 院長コラム【孤独な決断をさせないために】
NIPTは確率を出す検査であり、確定検査である羊水検査に進む道は、決して平坦ではありません。結果を待つあいだの不安な時間は、できるだけ短くあるべきだと考えています。
そのため、ミネルバクリニックでは2025年6月から羊水検査・絨毛検査を院内で行えるようにしました。転院の手間をなくし、結果の説明から確定検査まで一貫して対応します。どのような結果であっても、医師として中立的・非指示的な立場で、ご夫婦が納得できる選択を支えることが大切だと考えています。
5. 陰性後の孤独と不安に寄り添う、専門医による「伴走型」のサポート
一部の施設では、「採血して検査会社に送り、結果をアプリや郵送で返すだけ」という簡易的なNIPTも行われています。ブログでは、陽性が出たときや、陰性なのに不安が消えないときに「誰にも相談できず孤立してしまった」という声も見られます。国の専門委員会の報告書も、出生前検査では検査前後の十分な説明と支援の体制が欠かせないとしています[5]。
ミネルバクリニックは非認証施設ですが、常駐する臨床遺伝専門医が、検査前の遺伝カウンセリングから結果の説明、その後のフォローまでを一貫して行っています。「非認証=質が低い」というのは誤解であり、検査の選び方から結果の後まで、臨床遺伝専門医が責任をもって対応します。
遺伝カウンセリング料金は検査費用に含まれており、当日のご説明はもちろん、陽性時や、妊娠中の新たな不安(サイトメガロウイルス初感染など)に対しても、追加費用なしで何度でも専門医に相談できる体制を整えています。
ネットの情報に疲れてしまったら、どうか一人で抱え込まず、専門医の話を聞きに来てください。「あなたにとっての正解」を見つけるために、最後まで伴走します。
よくある質問(FAQ)
Q1. NIPTの結果が陰性なら、絶対に安心と言い切れますか?
NIPTは精度の高い検査ですが、100%ではありません。ごくまれに偽陰性(実際は病気があるのに陰性と出ること)が起こる可能性や、NIPTでは調べられない病気もあるため、超音波検査などと組み合わせた慎重な経過観察が大切です。
Q2. ブログなどで「NIPT陰性だったのにダウン症だった」という体験談を見て不安です。
ダウン症に対するNIPTの検出率は約99.7%と報告されており、偽陰性はダウン症の赤ちゃん1,000人のうち3人ほどとまれです。ネット上の体験談は不安をあおりやすいため、検査の仕組みと限界を正確に説明できる専門医に相談することをお勧めします。
Q3. NIPTで陰性でも流産してしまうことはあるのでしょうか?
はい、あります。妊娠初期の流産で最も多い原因は赤ちゃん側の染色体異常ですが、その多くは16トリソミーなど一般的なNIPTの対象外の異常です。また、子宮腺筋症など母体側の病気が原因になることもあるため、産婦人科での総合的な妊娠管理が重要です。
Q4. 陰性判定後、さらに安心を得るためにできる検査はありますか?
妊娠中期以降の精密超音波検査(エコー)が有効です。NIPTではわからない赤ちゃんの形態的な異常(心臓の形など)を確認することができます。
Q5. 羊水検査はどのような場合に受けるべきですか?
一般的にはNIPTで「陽性」や「判定保留」となった場合に、出生前の確定検査として行われます。超音波検査で何らかの異常が疑われた場合にも、医師とご家族で相談のうえで検討されることがあります。ミネルバクリニックでは互助会により羊水検査の費用が補助されます。
Q6. 検査を受けた後、不安な気持ちを聞いてもらうことはできますか?
はい。ミネルバクリニックでは、検査結果をお伝えして終わりではなく、出産を迎えるまで、臨床遺伝専門医がご夫婦の不安や悩みに何度でも対応します。
🏥 不安を、ひとりで抱えないために
検査の限界やリスクを知ることは、怖いことかもしれません。
しかし、正確な事実を知ることが、結果的にいちばんの心の安心につながると考えています。
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参考文献
- [1] American College of Obstetricians and Gynecologists’ Committee on Practice Bulletins—Obstetrics; Committee on Genetics; Society for Maternal-Fetal Medicine. Screening for Fetal Chromosomal Abnormalities: ACOG Practice Bulletin, Number 226. Obstet Gynecol. 2020;136(4):e48-e69. [PubMed 32804883]
- [2] Gil MM, Accurti V, Santacruz B, Plana MN, Nicolaides KH. Analysis of cell-free DNA in maternal blood in screening for aneuploidies: updated meta-analysis. Ultrasound Obstet Gynecol. 2017;50(3):302-314. [PubMed 28397325]
- [3] Association between adenomyosis and maternal and neonatal outcomes: a systematic review and meta-analysis. Front Med. 2026. [PubMed 41987792]
- [4] Dungan JS, Klugman S, Darilek S, et al. Noninvasive prenatal screening (NIPS) for fetal chromosome abnormalities in a general-risk population: An evidence-based clinical guideline of the American College of Medical Genetics and Genomics (ACMG). Genet Med. 2023;25(2):100336. [PubMed 36524989]
- [5] 厚生労働省「NIPT等の出生前検査に関する専門委員会報告書」 [厚生労働省]
※本記事は一般の方に向けた情報提供を目的とするもので、個別の診断・治療方針を示すものではありません。検査の結果や妊娠経過については、主治医・専門医にご相談ください。






