InstagramInstagram

嚢胞性ヒグローマと言われたら|無事出産の可能性・消えるケースとNIPT陽性時の確定検査

仲田洋美 医師

この記事の監修:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

妊娠初期の超音波検査で「首の後ろに嚢胞(のうほう)がある」「嚢胞性ヒグローマかもしれない」と言われ、この記事にたどり着いた方もいると思います。最初にお伝えしたいのは、嚢胞性ヒグローマは染色体の変化などを伴うことが多い所見である一方で、染色体が正常で、ほかに異常が見つからなければ、健康に生まれてくる赤ちゃんもいるということです。見通しは原因によって大きく変わるため、まず原因を確かめることが出発点になります。この記事では、原因、無事に出産できる可能性、確定検査で何を調べるか、NIPTで陽性だったときの考え方までを、論文の数字にもとづいて臨床遺伝専門医が解説します。

この記事でわかること
📖 読了時間:約15分
🧬 嚢胞性ヒグローマ・確定検査・NIPT
★ 臨床遺伝専門医監修
  • ➤嚢胞性ヒグローマとは → 何週ごろ見つかるか、隔壁の意味、NT(首のむくみ)との違い
  • ➤原因 → 約半数に見つかる染色体の変化と、ヌーナン症候群などの単一遺伝子疾患
  • ➤無事出産の可能性 → 消えるケースと、健康に生まれる条件を数字で整理
  • ➤何を調べるか → 絨毛検査・羊水検査、マイクロアレイ、単一遺伝子の検査の順番
  • ➤NIPT陽性のとき → 陽性とヒグローマがそろっても確定検査で確かめる理由

⏱️ 30秒でわかる要約

🩺 Q. 嚢胞性ヒグローマと言われたら、無事に出産できますか?

米国の約3万8千人の研究では、妊娠初期に見つかったヒグローマの約半数(51%)に染色体の変化があり、全体で健康に育つことが確認できたのは17%でした。ただし、染色体が正常で、妊娠中期の終わりまでの詳しい検査で異常がなければ、多くが健康に生まれていました。

❓ Q. ダウン症候群だけ調べれば大丈夫ですか?

大丈夫とは言えません。ヒグローマの原因には、ダウン症候群のほかにターナー症候群、18トリソミー、微小欠失、ヌーナン症候群などの単一遺伝子疾患があります。当院のNIPTはダイヤモンドプラン・インペリアルプランでヌーナン症候群まで調べられます。

🔬 Q. NIPTで陽性、エコーでもヒグローマ。確定検査は必要?

必要です。NIPTはスクリーニング検査で、ヒグローマの原因がNIPTの陽性項目と同じとは限りません。早く確かめたい場合は、妊娠11週ごろから受けられる絨毛検査という選択肢があります。当院では確定検査を院内で行い、主要な項目は3日以内に結果が出ます。

\ ダウン症候群だけで大丈夫ですか? 当院のNIPTは、ターナー症候群や微小欠失、ヌーナン症候群などの単一遺伝子疾患まで調べられます /

📅NIPTを予約する

東京のNIPTプランを見る | 羊水検査・絨毛検査

嚢胞性ヒグローマと言われたら ― まず知っておきたいこと

嚢胞性ヒグローマ(のうほうせいヒグローマ)は、赤ちゃんの首の後ろから背中にかけて、液体のたまった袋(嚢胞)が見える状態です。英語ではcystic hygroma(システィック・ヒグローマ)と呼ばれ、日本語の資料では「頸部嚢胞性リンパ管腫」と書かれることもあります。

首のまわりのリンパ液は、本来、首の太い静脈へ流れ込みます。この合流がうまくいかないと、行き場を失ったリンパ液が首の後ろにたまり、袋のようにふくらみます。リンパ管の発達の異常なので、それ自体は赤ちゃんの「病名」というより、何かの原因で起きている「所見(エコーで見える変化)」と考えるのが正確です[4]。

嚢胞性ヒグローマの超音波画像

(超音波検査で見える嚢胞性ヒグローマ)

何週ごろ、どのくらいの頻度で見つかる?

多くは、妊娠10〜13週ごろの超音波検査で見つかります。米国で妊娠初期の超音波検査を受けた38,167人を調べた研究(FASTER研究)では、首の後ろに隔壁(しきり)のある嚢胞性ヒグローマが285人に1人の割合で見つかりました[1]。決してまれな所見ではない、ということです。

エコーで袋の中に何本もの「しきり」が見えるのが特徴で、この隔壁があるかどうかが、単なる首のむくみとの見分けの目安になります。嚢胞が大きいほど、またしきりがはっきりしているほど、後で説明する染色体の変化や心臓の病気を伴う割合が高くなる傾向があります[2]。用語としての詳しい説明は嚢胞性ヒグローマとは|原因、症状、治療、NTとの違いにまとめています。

NT(首のむくみ)との違い

妊娠11〜13週の赤ちゃんには、誰でも首の後ろにうすい透明な層があり、その厚さをNT(後頸部透亮像:こうけいぶとうりょうぞう)と呼びます。NTが厚いことと嚢胞性ヒグローマは連続した変化で、しきりのない、首の後ろに限られた厚みは「NTが厚い」、しきりのある大きな袋が背中まで広がるものは「嚢胞性ヒグローマ」と呼び分けるのが一般的です。ただし境目ははっきりしておらず、国際超音波産婦人科学会(ISUOG)の教育資料では、非常に厚いNTと妊娠初期のヒグローマは見通しも検査の進め方も同じなので、厳密に区別する必要は乏しいとしています[4]。施設によって呼び方が違うことがあるので、「どのくらいの厚さで、しきりはあるか」を主治医に確認しておくとよいでしょう。NTの正常値や厚さごとの考え方はNTの正常値は?妊娠11週・12週・13週の基準値と首のむくみが示すことで解説しています。

💡 用語解説:隔壁(かくへき)と所見(しょけん)

隔壁は、袋の中を区切る「しきり」のことです。エコーでは、黒く見える液体の中に白い線が何本か走って見えます。所見は、検査で見つかった変化のことで、病名とは違います。嚢胞性ヒグローマは所見なので、「なぜそれが起きているのか」を調べることで、はじめて見通しが分かります。

原因:染色体の変化と単一遺伝子疾患

嚢胞性ヒグローマの原因を調べると、大きく「染色体の数の変化」「染色体のごく一部の欠け・重なり(微小欠失・重複)」「一つの遺伝子の変化(単一遺伝子疾患)」「心臓などの体のつくりの病気」に分けられます。どれが原因かで、赤ちゃんの見通しも、次の妊娠での再発の考え方もまったく違います。

約半数に染色体の変化 ― ダウン症候群、ターナー症候群、18トリソミー

FASTER研究では、隔壁のある嚢胞性ヒグローマの51%(132例中67例)に染色体の変化が見つかりました。内訳は、21トリソミー(ダウン症候群)25例、ターナー症候群(X染色体が1本)19例、18トリソミー(エドワーズ症候群)13例、その他10例でした[1]。10年間で944例を集めた別の研究でも、染色体を調べた例の54.9%に変化があり[2]、ほかに異常のない「単独の」ヒグローマに絞った総説でも約48%でした[3]。どの研究でも、おおむね半数前後という数字は共通しています。

ここで注目していただきたいのが、ターナー症候群の多さです。妊娠初期のNTが厚いだけの場合はダウン症候群が中心ですが、大きなヒグローマではターナー症候群が2番目に多い原因になります。ターナー症候群は、首の後ろのリンパ液のたまりが大きく、全身のむくみ(胎児水腫)に進みやすいことが知られています。ターナー症候群の特徴や生まれた後の経過はターナー症候群とは?原因・症状・知的障害・寿命の不安に臨床遺伝専門医が答えますで、18トリソミーは18トリソミー(エドワーズ症候群)とは?で解説しています。

染色体が正常でも ― 微小欠失、ヌーナン症候群、心臓の病気

染色体の数が正常だった場合でも、それで原因の検索が終わるわけではありません。944例の研究では、染色体が正常だった赤ちゃんの28.8%に心臓などの大きな体のつくりの異常が見つかりました[2]。そのため、染色体が正常でも、妊娠中期に心臓を中心とした詳しい超音波検査(胎児心エコー)が欠かせません。先天性心疾患については先天性心疾患の解説もご覧ください。

さらに、通常の染色体検査(Gバンド法)では見えない、染色体のごく一部の欠け(微小欠失)や重なりが、マイクロアレイ検査で見つかることがあります。そして、染色体もマイクロアレイも正常なときに考えるのが、ヌーナン症候群をはじめとする「RAS(ラス)経路」の単一遺伝子疾患です。ある施設の報告では、ヒグローマでマイクロアレイまで正常だった赤ちゃんを遺伝子パネル検査で調べると、12%にこのグループの病気が見つかりました[3]。1施設の小さな集団のデータですが、染色体が正常でも、ヌーナン症候群などを考える意味は十分にあることを示しています。ヌーナン症候群の特徴はヌーナン症候群とは?特徴・顔つき・寿命を専門医が解説をご覧ください。

🧬 嚢胞性ヒグローマの主な原因と、見つけるための検査

原因の種類 代表的な病気 見つけるための検査
染色体の数の変化 21トリソミー、ターナー症候群、18トリソミー、13トリソミー 絨毛検査・羊水検査の染色体検査(主要な項目は迅速検査でも確認)
微小欠失・重複 22q11.2欠失症候群など マイクロアレイ検査
単一遺伝子疾患 ヌーナン症候群などのRAS経路の病気 遺伝子パネル検査、エクソーム検査
体のつくりの異常 先天性心疾患など 妊娠中期の詳しい超音波検査、胎児心エコー

💡 用語解説:ヌーナン症候群とRAS(ラス)経路

ヌーナン症候群は、細胞の増え方を調節する「RAS経路」という仕組みにかかわる遺伝子の変化で起こる病気です。心臓の病気(肺動脈弁狭窄や心筋の肥大)、低身長、特徴的な顔つきなどがみられ、胎児期には首のむくみやヒグローマ、羊水の多さとして見つかることがあります。多くは親から受け継いだものではなく、新しく起きた変化です。染色体の検査では見つからないため、遺伝子を調べる検査が必要です。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「ヒグローマ」は答えではなく、問いの始まり】

嚢胞性ヒグローマと言われると、その言葉自体が重い診断のように聞こえるかもしれません。けれども臨床遺伝の立場から見ると、ヒグローマは「なぜリンパ液がたまっているのか」という問いを投げかけている所見です。答えは、ダウン症候群のこともあれば、ターナー症候群のことも、ヌーナン症候群のことも、原因が見つからないまま消えていくこともあります。

原因ごとに、赤ちゃんの見通しも、ご両親が考えることも大きく違います。だからこそ私は、まず原因を一つずつ確かめることが大切だと考えています。染色体、マイクロアレイ、必要なら遺伝子と、順番に調べることで、ご家族にとっての判断材料がそろっていきます。

無事に出産できる可能性は?消えるケースと見通し

「ヒグローマ 無事出産」と検索された方が一番知りたいのは、この点だと思います。結論から言うと、ヒグローマ全体で見ると見通しは厳しいものの、条件がそろえば健康に生まれる赤ちゃんも多い、というのが論文の示すところです。数字を、全体と「条件がそろった場合」に分けて見ていきます。

全体で見た数字

FASTER研究では、隔壁のあるヒグローマ132例のうち、生まれた後の発達まで正常と確認できたのは22例、全体の17%でした[1]。944例の研究では、中絶を選ばなかった妊娠のうち39%が、お腹の中で亡くなるか生後まもなく亡くなっていました。さらに、首のむくみが1mm厚くなるごとに、染色体の変化、大きな体のつくりの異常、お腹の中で亡くなる可能性のいずれもが高くなっていました[2]。

この「17%」には、染色体の変化があった例も、ご家族が妊娠を続けないことを選んだ例も含まれています。つまり、あなたの赤ちゃんが無事に生まれる確率が17%という意味ではありません。原因を調べる前の段階では、集団の数字を一人ひとりの確率としてそのまま当てはめることはできないのです。

条件がそろえば、健康に生まれる赤ちゃんも多い

同じFASTER研究は、もう一つ大事な結果を示しています。染色体が正常で、妊娠中期の終わりまでの詳しい超音波検査や心臓の検査で異常がなかった場合は、ほとんどが健康な赤ちゃんとして生まれ、その後の発達も正常だったのです[1]。生まれた後の発達が確認できた23人のうち、脳性まひと発達の遅れがみられたのは1人でした[1]。

ですから、検査を一つ終えるごとに、見通しは少しずつ具体的になっていきます。次のような流れで、一段ずつ確かめていきます。

① 確定検査染色体・マイクロアレイは正常か
▶
② 詳しいエコー心臓など体のつくりに異常はないか
▶
③ 経過の確認ヒグローマは小さくなるか、水腫に進まないか
▶
④ 見通しが具体的にすべて問題なければ良好な経過が多い

ヒグローマは消えることがある?

あります。妊娠初期のヒグローマや首のむくみは、週数が進むにつれて小さくなったり、見えなくなったりすることがあります。リンパ管と静脈のつながりが遅れて整うと、たまっていたリンパ液が流れ出すためと考えられています。

ただし、消えたからといって、原因がなかったことにはなりません。ダウン症候群やヌーナン症候群でも、首のむくみが途中で目立たなくなることがあるからです。厚いNTを対象にした総説でも、14週までにむくみが小さくなった赤ちゃんは、それでも一般の妊婦さんより病気の割合が高かったと報告されています[3]。「消えたからもう検査は不要」ではなく、消えても、確定検査と妊娠中期の詳しいエコーは予定どおり受けることが大切です。

一方、ヒグローマが大きくなり、皮膚のむくみや胸・お腹の水が加わると「胎児水腫」になります。胎児水腫に進んだ場合は見通しが厳しくなるため、経過を追うエコーが重要です(胎児水腫に進んだら)。

何を調べる?確定検査の選び方

嚢胞性ヒグローマが見つかったときに勧められるのは、赤ちゃんの細胞を直接調べる確定検査です。米国産婦人科学会(ACOG)は、超音波で赤ちゃんの体のつくりの異常が見つかり、確定検査を受ける場合には、通常の染色体検査に加えてマイクロアレイ検査を行うことを勧めています[5]。

絨毛検査(11週ごろ〜)と羊水検査(15週以降)

確定検査には、胎盤のもとになる組織を採る絨毛検査(じゅうもうけんさ)と、羊水を採る羊水検査があります。ヒグローマは妊娠初期に見つかることが多いため、早く結果を知りたい場合は、妊娠11週ごろから受けられる絨毛検査が選択肢になります。羊水検査は妊娠15週以降に行います。

絨毛検査は早い時期に受けられる反面、胎盤だけに染色体の違いがある「胎盤限局性モザイク」で結果の解釈が難しくなることがまれにあり、その場合は羊水検査で確かめ直します。2つの検査の違いは絨毛検査と羊水検査の違いは?リスクと選び方を専門医が解説で、羊水検査の時期まで待てないと感じている方に向けた絨毛検査の考え方はNIPT陽性で羊水検査まで待てない方へ|絨毛検査で早期確定診断で解説しています。NTが厚いと言われた後に、早く確定させる道筋はNT(首のむくみ)指摘後どうする?にもまとめています。

染色体 → マイクロアレイ → 単一遺伝子の順に調べる

採った細胞で何を調べるかは、次の順番で考えます。最初に、ダウン症候群やターナー症候群などの数の変化を調べます。主要な染色体は迅速検査で早く結果が出せます。次に、マイクロアレイ検査で微小欠失・重複を調べます。ヒグローマでは、通常の染色体検査が正常でも、マイクロアレイで追加の原因が見つかることがあり、ある施設のヒグローマのデータでは、通常の染色体検査に約4%上乗せして原因が見つかっています[3]。

それでも原因が見つからず、ヒグローマが続く場合や心臓の所見がある場合は、ヌーナン症候群などを調べる遺伝子パネル検査や、エクソーム検査を検討します。総説では、NTが3.5mm以上でほかの異常も伴う場合、マイクロアレイに上乗せしてエクソーム検査で約23%に原因が見つかったと報告されています[3]。検査の詳細は、マイクロアレイ染色体検査(CMA)、Noonan症候群・RASopathies遺伝子パネル検査、出生前全エクソーム(WES)検査のページをご覧ください。

🔬 ヒグローマが見つかったときの主な検査

検査 受ける時期の目安 分かること
絨毛検査 妊娠11週ごろ〜 染色体の数の変化、マイクロアレイ、必要に応じて遺伝子
羊水検査 妊娠15週以降 染色体の数の変化、マイクロアレイ、必要に応じて遺伝子
マイクロアレイ検査 絨毛・羊水の細胞で実施 微小欠失・重複
遺伝子パネル・エクソーム検査 染色体・マイクロアレイが正常なとき ヌーナン症候群などの単一遺伝子疾患
胎児心エコー・詳しい超音波検査 妊娠中期(18〜22週ごろ) 心臓などの体のつくりの異常

💡 用語解説:マイクロアレイ検査とエクソーム検査

マイクロアレイ検査は、染色体の全体を細かく調べて、顕微鏡では見えないほど小さな欠け(欠失)や重なり(重複)を見つける検査です。エクソーム検査は、約2万個の遺伝子のうち、たんぱく質の設計図になる部分をまとめて読む検査で、一つの遺伝子の変化で起こる病気を探すときに使います。

NIPTで陽性、エコーでもヒグローマ ― それでも確定検査で確かめる理由

NIPTで陽性と言われ、さらにエコーでもヒグローマが見つかると、「もう結果は決まっているのでは」と感じるかもしれません。それでも、確定検査で確かめることが原則です。理由は3つあります。

1つめは、NIPTがスクリーニング検査であることです。NIPTは、お母さんの血液中にある主に胎盤由来のDNAを調べて可能性を推定する検査で、陽性でも実際には赤ちゃんに変化がない「偽陽性」があります。陽性的中率(陽性のときに本当にその病気である割合)は、項目や年齢によって変わります。

2つめは、ヒグローマの原因が、NIPTで陽性になった項目と同じとは限らないことです。たとえば、ある項目でNIPTが陽性でも、ヒグローマは別の原因、たとえばヌーナン症候群や心臓の病気で起きている可能性があります。原因を取り違えると、赤ちゃんの見通しも、次の妊娠での再発の考え方も変わってしまいます。

3つめは、確定した診断名が、その後の判断の土台になることです。たとえばターナー症候群なら、お腹の中で亡くなる可能性がある一方、生まれた場合は知的発達が保たれることが多い病気です。妊娠を続けるにしても、続けないにしても、確かな診断にもとづいて考えることが、後になってご自身を支える材料になります。

反対に、NIPTが陰性でもヒグローマがあれば、確定検査を考えます。NIPTでは調べていない微小欠失や単一遺伝子疾患が原因のことがあるためです。陽性の項目ごとの確定検査の選び方はNIPT陽性後の確定検査:絨毛検査と羊水検査の選び方で、ダウン症候群の確定診断はダウン症の検査と確定診断とは?で解説しています。

ミネルバクリニックの確定検査

ミネルバクリニックは2025年6月から産婦人科を併設し、絨毛検査・羊水検査を院内で行っています。主要な検査項目は3日以内に、マイクロアレイ検査は2週間ほどで結果が出ます。当院でNIPTを受けて陽性だった方は、陽性後の遺伝カウンセリングを何度でも無料で受けられ、全員加入の互助会(カトレア会・8,000円)で羊水検査の費用が補助されます(補助の上限はありません)。

また、ヒグローマのように妊娠初期に見つかる所見に備えるには、NIPTを早い時期に受けることも一つの考え方です。当院のNIPTは通常妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。

胎児水腫に進んだら

ヒグローマに、全身の皮膚のむくみや、胸・お腹・心臓のまわりの水が加わった状態を胎児水腫(たいじすいしゅ)といいます。ヒグローマから胎児水腫に進んだ場合は、お腹の中で亡くなる可能性が高くなります。ターナー症候群では特にこの経過をたどりやすいことが知られています。

一方、胎児水腫の原因は染色体だけでなく、心臓の病気、貧血、感染症、RAS経路の病気などさまざまで、原因によって見通しは大きく変わります。胎児水腫の原因と、無事に出産できたケースの条件は胎児水腫の原因・診断・予後と無事出産できるケースで、原因遺伝子をまとめて調べる検査は非免疫性胎児水腫(NIHF)包括的遺伝子パネル検査で解説しています。

産む・産まない、どちらを選んでも

確定検査の結果が出たあと、ご家族は妊娠を続けるかどうかを考えることになります。どちらを選ぶかに、正解や不正解はありません。赤ちゃんの診断名と見通しを正確に知ったうえで、ご家族が自分たちで決めることが何より大切です。

妊娠を続ける場合

妊娠を続ける場合は、赤ちゃんの心臓や全身の状態を定期的に確認し、生まれた後すぐに小児科や小児外科の治療が受けられる施設での分娩を計画します。首のリンパ液のたまりが生まれた後も残る場合は、リンパ管の病気として、硬化療法や手術などの治療を検討します。診断名が分かっていれば、生まれた後に必要な検査や治療の準備を前もって進められます。

妊娠を続けないことを考える場合

日本では、人工妊娠中絶は妊娠22週未満まで認められています。妊娠12週以降は中期中絶となり、出産と同じように分娩の形で行われ、死産届の提出が必要です。時期ごとの違いはNIPT陽性時の中絶はいつまで?法律と期間を専門医が解説をご覧ください。なお、ミネルバクリニックでは人工妊娠中絶は行っていません。当院では、確定検査の結果説明と、その後の選択を考えるための遺伝カウンセリングを行います。

赤ちゃんの病気を理由に妊娠を終えたあとは、悲しみや罪悪感、安堵が入りまじることがあり、それは自然な反応です。心の反応については中絶後の心の反応|涙・罪悪感・安堵は普通?で解説しています。また、原因が確定していれば、次の妊娠で同じことが起こる可能性を具体的に見積もれます。染色体の数の変化の多くは偶然で、次の妊娠での再発は高くありませんが、親から受け継いだ変化や遺伝子の変化が原因なら、考え方が変わります。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【確かめることは、選ぶための土台】

ヒグローマが見つかると、一日でも早く結論を出したいという気持ちになるのは自然なことです。私は、その気持ちと、確定検査で確かめることは両立すると考えています。絨毛検査なら妊娠11週ごろから受けられ、主要な染色体は数日で結果が出ます。急ぐことと確かめることを、どちらか一方に決める必要はありません。

確定した診断名は、妊娠を続けるときには赤ちゃんを迎える準備の手がかりになり、続けないときには、その決断が確かな情報にもとづいていたという支えになります。そして、次の妊娠を考えるときの再発の見積もりにもつながります。どの道を選ぶにしても、その判断の土台を正確に整えることが、臨床遺伝専門医の役割だと考えています。

ダウン症候群だけで大丈夫? ― 「値段」ではなく「調べられる範囲」で選ぶ

ここまで見てきたように、ヒグローマの原因はダウン症候群だけではありません。ターナー症候群、18トリソミー、微小欠失、ヌーナン症候群などの単一遺伝子疾患と、原因は多岐にわたります。三大トリソミーだけを調べる検査では、ターナー症候群も、微小欠失も、ヌーナン症候群も分かりません。

ほかの病気も調べる意味は、それだけではありません。知的障害を伴う病気のお子さんのご家族を比べた研究をまとめた総説では、スミス・マゲニス症候群、ウィリアムズ症候群、プラダー・ウィリー症候群のご家族は、ダウン症候群のご家族と比べて子育てのストレスが高く、最も一貫してストレスと関係していたのは、お子さんの行動や情緒の問題でした[6]。当院では、22q11.2欠失症候群やスミス・マゲニス症候群、プラダー・ウィリー症候群をスタンダードプランから調べられます。

出生前検査は、その後の人生を左右するかもしれない検査です。「安さ」だけで選んで大丈夫でしょうか。ひとつの目安として、調べられる病気の数で割って考えてみます。三大トリソミーだけを調べる検査を仮に10万円とすると、調べる病気は3つなので、1つの病気あたりは約3万3千円です。当院のインペリアルプランは、数えられる病気だけで320になり、1つの病気あたりは約1,700円です。

🧬 調べられる範囲と「1つの病気あたり」の目安

プラン 主に調べる範囲 数えた病気の数 1つの病気あたり
三大トリソミーだけを調べる検査
(仮に10万円とした場合)
13・18・21トリソミー 3 約33,333円
スタンダード
(220,000円)
13・18・21トリソミー、性染色体の数の異常、微小欠失6種類7疾患 14 約15,714円
プレミアム
(264,000円)
13・18・21・15・16・22トリソミー、性染色体の数の異常、微小欠失12種類13疾患 23 約11,478円
ダイヤモンド
(407,000円)
プレミアムの範囲+単一遺伝子56(ヌーナン症候群を含む) 79 約5,152円
双子マックス
(440,000円)
全常染色体の数の異常、92種類の微小欠失・重複、5Mbを超える構造異常 114+α 約3,860円
インペリアル
(550,000円)
全常染色体の数の異常、性染色体の数の異常、92種類の微小欠失・重複、5Mbを超える構造異常、単一遺伝子最大155遺伝子202疾患(ヌーナン症候群を含む) 320+α 約1,719円

※価格は事前学習動画を見て来院した場合の当日割引後の税込価格です。最新の料金は料金ページをご確認ください。
※病気の数は、数の異常・微小欠失・重複・単一遺伝子疾患を1つずつ数えたものです。性染色体の数の異常は4種類(ターナー症候群・クラインフェルター症候群・トリプルX症候群・XYY症候群)として数えています。5Mbを超える構造異常は数に入れていないため、双子マックスとインペリアルは実際にはこれより多くの変化を調べています。

ヒグローマとのかかわりで見ると、ターナー症候群は性染色体を調べるスタンダード・プレミアム・ダイヤモンド・インペリアルで、ヌーナン症候群はダイヤモンドプランとインペリアルプランで調べられます。ダイヤモンドプランは、米国の3大遺伝子検査会社の一角が提供する新技術「COATE法」(SNP法とターゲット法の組み合わせ)※で、インペリアルプランは低深度全ゲノムシーケンスとターゲット法で検査します。COATE法の精度のデータはCOATE法のエビデンスで紹介しています。

※「3大遺伝子検査会社」は、遺伝性がんや周産期(出生前検査・保因者検査)を含む遺伝子検査全般を手がける米国の検査専業会社のうち、2025年通期の売上高が上位の3社を指します(各社の決算発表にもとづく当院調べ)。がん検診やリキッドバイオプシーに特化した会社は含みません。

NIPTで陽性になったときは、羊水検査・絨毛検査による確定検査で確かめます。微小欠失や単一遺伝子の結果は、数の異常より陽性的中率が低めの項目もあるため、陽性なら必ず確定検査で確かめることが前提です。施設を選ぶときは、陽性のときに誰が説明し、確定検査をどこで受けられるのかまで確認してください。選び方のポイントはNIPTクリニックの選び方に、遠方の方向けにはオンラインNIPTもご用意しています。

🏥 調べる範囲を選び、陽性のときは院内で確かめる

ミネルバクリニックは臨床遺伝専門医が運営し、NIPTの遺伝カウンセリングから結果の説明、絨毛検査・羊水検査による確定検査まで、終始責任をもって支援します。

よくある質問(FAQ)

Q1. 嚢胞性ヒグローマと言われました。無事に出産できる可能性はありますか?

あります。米国の大規模研究では、妊娠初期に見つかったヒグローマの約半数(51%)に染色体の変化があり、全体で生まれた後の発達まで正常と確認できたのは17%でした。一方、染色体が正常で、妊娠中期の終わりまでの詳しい超音波検査や心臓の検査で異常がなかった場合は、ほとんどが健康に生まれていました。まず確定検査で原因を確かめることが、見通しを知る出発点になります。

Q2. ダウン症候群だけ調べれば大丈夫ですか?

ダウン症候群だけを調べれば大丈夫、とは言えません。ヒグローマの原因には、ダウン症候群のほかに、ターナー症候群、18トリソミー、微小欠失、ヌーナン症候群などの単一遺伝子疾患があり、三大トリソミーだけを調べる検査では分かりません。当院ではスタンダードプランからターナー症候群などの性染色体の数の異常や22q11.2欠失症候群などの微小欠失を、ダイヤモンドプラン・インペリアルプランではヌーナン症候群などの単一遺伝子疾患まで調べられます。どこまで調べるかは、検査前の遺伝カウンセリングで一緒に考えます。

Q3. 嚢胞性ヒグローマは何週ごろに分かりますか?

多くは妊娠10〜13週ごろの超音波検査で見つかります。米国で妊娠初期の超音波検査を受けた約3万8千人の研究では、285人に1人の割合で見つかりました。首の後ろから背中にかけて、しきり(隔壁)のある袋が見えるのが特徴です。

Q4. 嚢胞性ヒグローマが消えたら、もう安心ですか?

消えることはありますが、それだけで安心とは言えません。ダウン症候群やヌーナン症候群でも、首のむくみが途中で目立たなくなることがあるためです。消えた場合でも、確定検査(染色体・マイクロアレイ)と、妊娠中期の心臓を含む詳しい超音波検査は予定どおり受けてください。それらに異常がなければ、良好な経過をたどることが多いと報告されています。

Q5. 嚢胞性ヒグローマとダウン症候群の関係は?

ダウン症候群はヒグローマの原因として最も多い染色体の変化の一つです。米国の研究では、染色体の変化が見つかった67例のうち25例がダウン症候群で、次いでターナー症候群が19例、18トリソミーが13例でした。ヒグローマ=ダウン症候群ではなく、ほかの原因も多いため、確定検査で確かめることが大切です。

Q6. NIPTで陽性、エコーでヒグローマ。羊水検査をしなくても診断は確定しますか?

確定しません。NIPTはスクリーニング検査で、ヒグローマの原因がNIPTの陽性項目と同じとは限らないため、絨毛検査や羊水検査による確定検査で確かめるのが原則です。早く結果を知りたい場合は、妊娠11週ごろから受けられる絨毛検査という選択肢があります。当院では確定検査を院内で行い、主要な項目は3日以内、マイクロアレイは2週間ほどで結果が出ます。

Q7. 嚢胞性ヒグローマとNT(首のむくみ)の違いは?

NTは妊娠11〜13週の赤ちゃんの首の後ろに誰でもある透明な層の厚さで、これが厚いことと嚢胞性ヒグローマは連続した変化です。しきり(隔壁)のある大きな袋が背中まで広がるものを嚢胞性ヒグローマと呼ぶのが一般的ですが、境目ははっきりしておらず、非常に厚いNTとヒグローマは同じように扱われます。

Q8. 染色体が正常だった場合、ほかに何を調べますか?

マイクロアレイ検査で微小欠失・重複を調べ、それも正常なら、ヌーナン症候群などを調べる遺伝子パネル検査やエクソーム検査を検討します。あわせて、妊娠中期に心臓を中心とした詳しい超音波検査を受けます。染色体が正常なヒグローマの約3割に心臓などの大きな異常が見つかったという報告があるためです。

関連記事

参考文献

  • [1] Malone FD, Ball RH, Nyberg DA, et al. First-trimester septated cystic hygroma: prevalence, natural history, and pediatric outcome. Obstet Gynecol. 2005;106(2):288-294. [DOI 10.1097/01.AOG.0000173318.54978.1f]
  • [2] Scholl J, Durfee SM, Russell MA, et al. First-trimester cystic hygroma: relationship of nuchal translucency thickness and outcomes. Obstet Gynecol. 2012;120(3). doi:10.1097/AOG.0b013e318264f829. [PubMed 22872145]
  • [3] Mastromoro G, Guadagnolo D, Khaleghi Hashemian N, et al. A Pain in the Neck: Lessons Learnt from Genetic Testing in Fetuses Detected with Nuchal Fluid Collections, Increased Nuchal Translucency versus Cystic Hygroma—Systematic Review of the Literature, Meta-Analysis and Case Series. Diagnostics. 2023;13(1):48. [DOI 10.3390/diagnostics13010048]
  • [4] ISUOG. VISUOG: Cystic hygroma. International Society of Ultrasound in Obstetrics and Gynecology. [ISUOG]
  • [5] American College of Obstetricians and Gynecologists. Practice Bulletin No. 162: Prenatal Diagnostic Testing for Genetic Disorders. Obstet Gynecol. 2016;127(5):e108-e122. [DOI 10.1097/AOG.0000000000001405]
  • [6] Fitzgerald J, Gallagher L. Parental stress and adjustment in the context of rare genetic syndromes: A scoping review. J Intellect Disabil. 2022;26(2):522-544. [DOI 10.1177/1744629521995378]

※本記事は一般の方に向けた情報提供を目的とするもので、個別の診断・治療方針を示すものではありません。超音波検査の所見や確定検査については、主治医・専門医にご相談ください。

プロフィール
仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続け、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、検査結果の数値そのものだけでなく、「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、日本人として異文化の中で生活した経験があります。価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。この経験は現在の診療においても、「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、36週6日で一人を死産した経験があります。その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、家族の未来に関わる重要な意思決定です。年齢や統計だけで判断するのではなく、医学的根拠と心理的支援の両面から、ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

関連記事