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染色体異常とは?どのような種類があるのか、詳しく解説!

赤ちゃんは稀に、染色体異常を持って生まれることがあります。
23対46本ある染色体の、どの部分にどのような異常があるかによって、引き起こされる疾患症状の種類や度合いは千差万別です。
染色体異常には、数的異常、構造異常、性染色体異常の3つの種類があり、それぞれの症状傾向については分かってきていることが多く、染色体異常を見つけるための検査も発展しつつあります。本記事は、染色体異常や、染色体異常を調べる方法について詳しく解説します。

染色体異常が起こる原因

染色体異常が起こる原因は、主に次の2つです。

・染色体の数が通常とは異なる
・染色体の構造が通常とは異なる

これだけではピンと来ない方も多いかもしれませんが、染色体のつくりや仕組みを理解すれば、もう少し染色体異常のイメージがしやすくなるはずです。そこで、まずは染色体とはどのようなものなのかを簡単に説明します。

そもそも染色体とは?

染色体とはDNAのかたまりであり、デオキシリボ核酸という物質でできています。
DNAは細長いヒモのようになっており、1つの細胞に含まれるDNAは2mにも及びます。この長いDNAが、幾重にも折り重なり集まって、染色体を作っています。
DNAは生命に関するさまざまな情報を持っていますが、その中でも遺伝にまつわる情報を含んでいる部分を遺伝子と呼んでいます。

通常の染色体は23対46本

生き物の種類によって染色体の数や形は異なりますが、わたしたちヒトの細胞に存在する染色体の数は、23対46本です。(卵子精子を除く)
もう少し細かくいえば、1~22番の名前がついた22対の常染色体と、性別を決める性染色体1対の計23対46本から構成されています。この染色体群が、わたしたちの組織をつくっている細胞1つ1つに存在しています。
以上のことを踏まえて説明すると、染色体異常とは「本来であれば23対46本存在する染色体の本数や形が異なっていること」となります。

受精時に染色体の数や形に異常が起こることがある

なぜこのように染色体異常が起こってしまうのか、はっきりとしたことはわかっていません。しかし、一部の染色体異常については、卵子と精子の減数分裂(*1)の過程で、不具合を起こしてしまうことが原因ではないかと言われています。

*1減数分裂とは?
ヒトの細胞の染色体は通常23対46本ですが、卵子と精子は、受精卵になった際に23対46本をつくるため、あらかじめお互いの染色体数を23本に減らしておく必要があります。(46本同士だと受精後92本になってしまうため。)この染色体の本数を減らす工程を減数分裂といいます。

次の章からは、染色体異常の代表的なものである数的異常、構造異常、性染色体異常についてそれぞれ解説していきます。

数的異常

染色体異常_種類3

染色体の数が通常とは異なることを数的異常といい、数的異常は以下のように、細かく分類することができます。

・異数体
・三倍体
・四倍体

分類によって染色体の状態や症状に違いがあるため、それぞれ順に解説していきます。

異数体

異数体とは、染色体の数が1本少なかったり増えたりしている個体を指します。
たとえば、21番目の染色体の数が本来2本のところ1本だったり3本だったりすれば、その個体は異数体です。
異数体はその状態によって呼び名が変わり、染色体の数が1本多い(=3本存在)場合はトリソミー、逆に1本足りない場合はモノソミーと呼びます。
数的異常はどの染色体でもおこりうるものですが、もっとも頻度が高いのは21トリソミーダウン症)、18トリソミー13トリソミーです。性染色体以外の常染色体で異数体を持つ胎児は、そのほとんどが流産してしまうことが分かっています。

三倍体・四倍体

三倍体・四倍体の染色体の数的異常は、染色体異常による流産の4分の1を占めています。
〇倍体とは、わかりやすく言えば染色体のペア数です。通常の染色体は2ペアであるため2倍体、卵子や精子はペアを持たないため一倍体と表現されます。
しかし、何らかの原因で1個の卵子に2本の精子が受精してしまうと、23本+23本+23本の染色体を持つ受精卵ができてしまいます。これが三倍体です。同じように1つの卵子に3つの精子が受精すると4倍体になります。
倍数体となる受精自体は高頻度で起こるとされていますが、そのほとんどが流産となり、出産まで至るケースは非常に稀です。

構造異常

染色体の一部分が失われていたり重複していたりと、形に異常が見られるものを構造異常といいます。構造異常には次のようなものがあります。

欠失
・環状染色体
・重複
・逆位
挿入
・同腕染色体
・相互転座
・二動原体染色体

それぞれによって症状が異なるほか、中には構造異常があっても症状には現れないものもあります。

欠失

欠失とは、染色体の一部分が切断されてしまい無くなっている状態です。本来であれば同じ形の染色体が2本ペアとなり、染色体の機能を果たしています。
しかし、欠失状態になってしまうと2本の差異から不均衡が生まれ、機能不全を起こしてしまいます。
どのような症状がどれくらい出現するかは、欠失した部分の大きさ、失われた遺伝子数や機能によります。欠失は染色体の端部や中間部でよく見られます。

環状染色体

環状染色体とは、染色体の両端が切断され、切断された両端がくっついてリング状になったものをいいます。すべての染色体に起こる可能性がありますが、このうち20番染色体に起こるものについては、環状20番染色体症候群として難病指定を受けています。
環状20番染色体症候群は、てんかん発作やさまざまな程度の知的障害や行動障害などをともなうことが報告されています。

重複

染色体の一部が余計にコピーされ、くっついていることを重複といいます。遺伝子に不足がないため目立った症状が見受けられることはないものの、遺伝物質が余分にあることが要因となり、学習障害や発達障害などの問題が生じる可能性が懸念されます。
また、重複染色体を持つ子に症状が見られなかったとしても、その子が将来的に子どもを授かる際に、重複部分が子孫に何らかの染色体異常を及ぼす可能性も指摘されています。

逆位

逆位とは、1本の染色体の2か所が切断され、切断部分に挟まれた中間部分が反対向きになり、再結合してしまうことをいいます。遺伝子情報の過不足がないため、このような遺伝子を持った場合に症状が現れることはないとされていますが、重複と同じように、子孫に何らかの影響が懸念されます。

挿入

挿入とは、染色体の中間部分が切断され、切断された中間部分が浮遊し、他の染色体部分に入り込むことをいいます。染色体の3か所に切断が必要な現象であるため、頻度は非常に稀です。
挿入も遺伝情報に過不足はないため、症状が現れることはありませんが、子孫に染色体異常を起こす可能性があります。

同腕染色体

同腕染色体とは染色体の一方の腕が消失し、代わりに片方の腕が複製されくっついたことをいいます。通常の染色体は、セントロメアという中心部分からテロメアという腕が伸びた形をしています。テロメアは短腕と長腕の2本あり、セントロメアから相反する方向に向かってそれぞれ伸びています。
文字通り、短腕は短く、長腕は長い見た目をしています。この腕のどちらかが何らかの理由で無くなってしまい、代わりに一方の腕が複製され、くっついたのが同腕染色体です。
つまり、本来は短腕×長腕で構成されている染色体が、短腕×短腕や長腕×長腕で構成されてしまう、ということです。
もっとも有名な同腕染色体に関係する疾患はターナー症候群であり、X染色体が同腕染色体となっています。

相互転座

相互転座とは、異なる2本以上の染色体が切断され、切り離された断片同士が他方に結合(転座)することをいいます。
たとえば、13番染色体と15番染色体が交差したとき、何らかのきっかけで、13番と15番のそれぞれの染色体の一部が入れ替わってしまうといったようなことが相互転座です。
相互転座も、染色体の断片が交換されているだけのため、遺伝子情報の量には問題なく症状が現れることは通常ありません。
しかし、相互転座を持っていると子孫の染色体異常のリスクが高くなるほか、相互転座を持っているカップルや男性は不妊や流産の頻度が一般集団よりも高くなることが報告されています。

二動原体染色体

二動原体染色体とは、セントロメアを持っている異なる2つの染色体が結合したもののことをいいます。動原体というのはセントロメアのことを指すため、二“動原体”染色体と呼ばれます。(正式には、偽性二動原体と呼ばれています。)
セントロメアを2つ有することで染色体の構造が不安定になり、多くのケースで遺伝物質の一部が欠損してしまうとされています。

◎セントロメアについてもう少し詳しく
セントロメアは染色体中央部でテロメアをくっつける役割以外にも、細胞分裂が適切に行われるようコントロールしたり、細胞分裂をする際には、娘細胞に染色体を均等に分配したりする重要な役割を担っています。

性染色体異常

染色体異常_種類2

ヒトは22対の常染色体と、性別を決める性染色体1対の計46本の染色体を持つと説明しました。性染色体にはX染色体とY染色体とがあり、2本の組み合わせがXXであれば女性、XYであれば男性が生まれます。
性染色体の染色体異常も、常染色体と同じように、数の異常や構造の異常がその原因とされています。
性染色体異常の多くは、数の異常によるものが多く報告されています。以下、性染色体異常の種類や症状について、詳しく解説していきます。

数の異常

性染色体の場合も、本来であれば2本あるうちの染色体が1本しかなかったり、逆に3本あったりする数の異常が起こりえます。こちらも常染色体と同じように、1本少ない場合をモノソミー、多い場合をトリソミーと呼んでいます。(XXY、X、XYYなど)常染色体との大きな違いは、性染色体の数の異常は頻度が高く、臨床上の影響や症状が比較的少ない点です。
たとえば、X染色体のトリソミーを持つ女性は、精神や身体は正常に見え妊娠も可能です。中には、性染色体異常を思春期になって初めて診断される例や、出生前検査をするために両親のDNAを検査した際に発覚するという例もあります。性染色体の数の異常によく見られる症状には、身体や発達面の問題などが挙げられます。

構造異常

性染色体にも、X染色体やY染色体の一部の構造が通常とは異なることで起こる性染色体異常があります。以下に染色体異常の構造異常による症状の例を一部ご紹介します。

◎性染色体異常の構造異常の例

構造異常の例 症状例
X染色体の長腕部の欠失
⇒身長に影響するSHOX遺伝子部分
・低身長
【女性に見られる症状】
・第4中手骨の短縮
・橈骨骨頭の変形(ひじの関節部分)
・外反肘の可能あり
X染色体の短腕部の欠失
⇒リンパ管を形成する遺伝子部分
・末梢浮腫(むくみ)
・翼状頚(首から肩の皮膚がたるむ)
・大動脈縮窄(大動脈が狭くなる)
・馬蹄腎(左右の腎臓がくっつく)
X染色体の環状 ・知的障害
・多発奇形(成長障害や発達遅延など3つ以上の多臓器奇形)
Y染色体の欠失 男性不妊

脆弱X症候群

脆弱X症候群とは、X染色体の中に、小さなDNAのコピー断片が200以上みられることをいいます。症状としては、ほとんどのケースで知的障害が見られ、女児よりも男児に発症が多く報告されています。
その他の症状としては、身体面、知能面、行動面の異常、関節の柔軟さ、心臓病などがありますが、いずれも他の染色体異常症状に比べると軽微である場合が多いです。
DNAコピーが少ない場合(50~200程度)には、特に症状が見られないこともありますが、本人に発症が認められなくても、子孫に何らかの染色体異常が起こるリスクが高くなるとされています。

染色体異常により引き起こされる疾患

染色体異常によって引き起こされる先天性疾患にはどのようなものがあるのでしょうか。以下の記事で詳しく説明しているので、ご覧ください。

>>染色体異常とは?原因や引き起こされる疾患を解説

染色体異常に由来する先天性疾患の検査はNIPTがおすすめ

生まれてくる赤ちゃんに先天性の疾患がないのか調べるには、様々な方法があります。
事前に赤ちゃんを調べることで、妊娠中の両親の不安を軽減したり、生まれてくる赤ちゃんへの準備をより早く行ったりすることができます。とくにNIPTでは従来の出生前診断よりも高い精度での検査が可能です。

NIPTとは?

NIPT(新型出生前診断)とは、お母さんの採血結果から胎児のDNAを分析し、染色体・遺伝子異常を特定する検査のことです。採血だけで行える検査となっており母体への侵襲が少ないため、比較的受けやすい検査になっています。
検査から10日程度で結果が分かる上に、精度も99%と非常に高いことから希望する妊婦さんも多いようです。
ただし、NIPTは非確定的診断です。陽性反応だからと言って、生まれてくる赤ちゃんが確実に染色体異常に由来する先天性疾患を持っているとは限らないことを理解しておきましょう。
NIPTで陽性反応が出た場合に、確定診断を受けたいなら、確定的検査である絨毛・羊水検査を行う必要があります。NIPTの費用は施設により異なりますが、およそ15〜20万円前後であり、検査時間は採血のみなので10分程度です。

>>>日本産科婦人科学会「出生前に行われる検査および診断に関する見解」改定案

NIPTを受けるならミネルバクリニックで

東京の「ミネルバクリニック」は臨床遺伝専門医が在籍するNIPT実施施設です。
たくさんの妊婦さんの悩みや不安と真摯に向き合い、笑顔になれる出産に導いてきました。
ミネルバクリニックでは、妊娠9週から(ご希望があれば6週から)受けられる赤ちゃんの健康診断「NIPT」を業界最新の技術と業界随一の対象疾患の広さで行っております。遺伝のエキスパートである臨床遺伝専門医が出生前診断を提供しておりますので、安心してご相談ください。

>>ミネルバクリニックのNIPTについて詳しく見る

まとめ

染色体異常とは、通常であれば23対46本ある染色体の数や構造が異なることを指します。染色体の数や構造に異常があることで、身体面、知能面、行動面などあらゆる面で問題を抱えてしまう可能性があります。どのような症状がどれくらい出現するかどうかは、染色体異常が起こっている部位や、どれくらいの遺伝子量に影響が出ているかによってさまざまです。
染色体異常は遺伝や突然変異によるものではないかと言われていますが、はっきりとした原因はわかっていません。
しかし、現代では新型出生前診断(NIPT検査)というものがあり、お母さんの採血結果から、赤ちゃんの染色体異常の有無の可能性を調べることができるようになりました。
NIPT検査は、母子への負担が少なく、スピーディーで従来の出生前検査よりも高精度な検査であるため、先天性疾患の検査におすすめです。NIPT検査を行う病院は全国に多数ありますが、当院ミネルバクリニックでは、遺伝子の専門家である臨床遺伝専門医が在籍しており、業界随一の対象疾患の広さを誇っております。
見つけられる染色体異常の幅が広く、染色体疾患に関する知識も豊富に持ち合わせているため、専門的な内容についても安心してご相談いただけます。赤ちゃんの染色体異常の不安を持つ方やNIPT検査をご検討の方は、まずは当院にご相談ください。一緒に不安や悩みと向き合って、1人1人にとってのベストな選択を考えていきましょう。

この記事の著者:仲田洋美(医師)

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ミネルバクリニックでは、以下のNIPT検査を提供しています。少子化の時代、より健康なお子さんを持ちたいという思いが高まるのは当然のことと考えています。そのため、当院では世界の先進的特許技術に支えられた高精度な検査を提供してくれる検査会社を遺伝専門医の目で選りすぐりご提供しています。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 (がん薬物療法専門医認定者名簿)、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医(臨床遺伝専門医名簿:東京都)として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

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