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GJB2遺伝子の出生前診断は可能?保因者と再発リスク

仲田洋美 医師

この記事の監修:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

上のお子さんがGJB2遺伝子の変化による難聴と分かっていると、次の妊娠が「喜び」だけで始まらないことがあります。「また同じことが起きたらどうしよう」という気持ちは、とても自然なものです。最初にお伝えしたいのは、GJB2遺伝子は日本人の先天性難聴でいちばん多く見つかる原因遺伝子で、日本人のおよそ27人に1人が保因者であること、そしてご両親がともに保因者なら、次のお子さんが同じ難聴になる確率は妊娠ごとに25%だということです。上のお子さんとご両親の遺伝子の変化が分かっていれば、妊娠中に赤ちゃんの状態を調べることもできます。

この記事でわかること
📖 読了時間:約13分
🧬 GJB2・保因者・出生前診断
★ 臨床遺伝専門医監修
  • ➤GJB2遺伝子とは何か、日本人の難聴でどのくらい多い原因なのか
  • ➤潜性遺伝(常染色体劣性遺伝)と「再発リスク25%」の正しい意味
  • ➤保因者の頻度(約27人に1人)と、家族に難聴の人がいなくても起こる理由
  • ➤GJB2の難聴は進行するのか、遺伝子の変化の種類で重さが違うのか
  • ➤妊娠前の保因者検査、妊娠中のNIPT・羊水検査・絨毛検査で何が分かるか

⏱️ 30秒でわかる要約

🧬 Q. GJB2遺伝子の難聴は遺伝する?進行する?

GJB2遺伝子は日本人の遺伝性難聴でいちばん多く見つかる原因遺伝子で、多くは潜性遺伝です。ご両親がともに保因者なら、妊娠ごとに25%の確率でお子さんが同じ難聴になります。生まれつき聞こえにくいことが多い一方、聴力が残っている子どもの約半数で、成長とともに聴力が下がったという報告もあり、定期的な聴力検査が大切です。

🤔 Q. NIPTはダウン症候群だけで大丈夫?

ダウン症候群(21トリソミー)は大切な項目ですが、赤ちゃんの病気はそれだけではありません。当院のNIPTはスタンダードプランでも22q11.2欠失症候群などの微小欠失を調べ、ダイヤモンドプランでは56、インペリアルプランでは最大155の遺伝子の病気まで調べます。GJB2のように調べたい病気がはっきりしている場合は、ご家族ごとに個別に相談して検査を決めます。

🌸 Q. 妊娠中にGJB2の難聴は調べられる?

上のお子さんとご両親のGJB2の変化が分かっていることが前提です。そのうえで、羊水検査・絨毛検査で赤ちゃんの遺伝子を直接調べる方法(当院は院内で実施)と、NIPTで調べる方法(個別に相談して対応)があります。これから妊娠を考える段階なら、まずご両親の保因者検査がいちばん確実な出発点です。

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【結論】GJB2の難聴で、いま分かること・分からないこと

GJB2(ジー・ジェイ・ビー・ツー)遺伝子は、内耳で働く「コネキシン26」というたんぱく質の設計図です。日本で1万人を超える難聴の患者さんの遺伝子を調べた研究では、GJB2は最も多く見つかった原因遺伝子でした[1]。

GJB2による難聴の多くは、ご両親から1つずつ変化を受け継いだときに起こる潜性遺伝(常染色体劣性遺伝)です。ご両親がともに保因者であれば、次のお子さんが同じ難聴になる確率は妊娠ごとに25%です[5]。

妊娠中に赤ちゃんの状態を調べるには、上のお子さんとご両親のGJB2の変化が特定されていることが大きな前提になります。そのうえで、羊水検査・絨毛検査で赤ちゃんの遺伝子を直接調べる方法と、NIPTで調べる方法があります。一方、聞こえの程度や将来の言葉の発達までは、遺伝子の検査だけで言い切ることはできません。検査は早さより正確さが大切で、結果が出た後の支えまで含めて選ぶ必要があります。

💡 用語解説:GJB2と「コネキシン26」

コネキシン26は、内耳の細胞どうしをつなぐ小さな通り道(ギャップ結合)をつくるたんぱく質です。GJB2に病的な変化があると内耳の環境が保てず、両耳の感音難聴が起こることがあります。難聴以外の症状を伴わないタイプ(非症候群性難聴)が多い一方、聞こえの程度には個人差があります。GJB2遺伝子そのもののはたらきはGJB2遺伝子のページで、遺伝性難聴の全体像は遺伝性難聴 総論で解説しています。

遺伝形式と「再発リスク25%」の意味

GJB2による難聴の多くは、常染色体潜性(劣性)遺伝という形式で受け継がれます。言葉は難しいのですが、しくみはシンプルです。私たちは遺伝子を2つずつ(父親由来と母親由来)持っていて、GJB2の場合は2つとも働かない変化になったときに難聴が起こります。1つだけ変化を持つ人は「保因者」と呼ばれ、ふつうは聞こえに影響がありません。

ご両親がともに保因者のとき、お子さんごとの確率は次のとおりです[5]。

🧬 両親がともにGJB2の保因者のとき(妊娠1回ごと)

お子さんが受け継ぐ組み合わせ 確率 聞こえへの影響
両親から1つずつ変化を受け継ぐ 25% 難聴になる
どちらか一方から1つだけ受け継ぐ(保因者) 50% ふつうは影響なし
どちらからも受け継がない 25% 影響なし

この確率は、上のお子さんの結果にかかわらず、妊娠のたびに同じです。

両親がGJB2の保因者のときの潜性遺伝の図:25%で難聴、50%で保因者、25%で受け継がない

⚠️ 「25%」の大切な補足

25%は、妊娠するたびに毎回ゼロから起こる確率です。上のお子さんが難聴だったからといって、次が必ず同じになるわけではありませんし、「4人に1人だから次は大丈夫」ということでもありません。確率は未来を決めるものではなく、次の選択を考えるための地図です。そして遺伝はしくみであって、誰かの責任ではありません。

なお、GJB2の変化の中には、1つだけで難聴を起こす顕性(優性)遺伝のタイプや、皮膚の症状を伴うタイプもまれにありますが、典型ではありません[5]。ご家族の遺伝形式は、上のお子さんの検査結果をもとに確認します。

GJB2の保因者頻度:日本人の約27人に1人

「うちの家系に難聴の人はいなかったのに」と感じる方は少なくありません。けれども、潜性遺伝の病気では、何世代も症状が出ないまま、保因者として受け継がれていることがあります。ご両親が健聴でも、たまたまお二人とも保因者であれば、お子さんが難聴として生まれる可能性があります。

日本人の一般集団509人を調べた研究では、GJB2の病的な変化を1つ持つ保因者は3.73%(19人)、およそ27人に1人でした。内訳は、c.235delCが1.57%、p.V37Iが1.77%などです[2]。

📊 日本人に多いGJB2の変化

変化 一般集団の保因者頻度 特徴
c.235delC 1.57% 日本人の難聴の患者さんで最も多く見つかる変化。東アジアに多い[1][3]
p.V37I 1.77% 軽度〜中等度の難聴に関係することが多い[1]
合計(すべての病的な変化) 3.73% およそ27人に1人

出典:Taniguchiら(J Hum Genet, 2015)[2]。509人を調べた結果で、頻度には誤差があります。

欧米で多いc.35delGという変化は、日本人ではほとんど見つかっていません[3]。海外の検査やデータをそのまま当てはめず、日本人に多い変化を含めて調べることが大切です。

GJB2遺伝子の難聴は進行する? 変化の種類で重さは違う?

GJB2による難聴は、生まれつき(先天性)両耳に見られることが多く、新生児聴覚スクリーニングをきっかけに見つかることもよくあります。では、その後は変わらないのでしょうか。

聴力が残っている子どもの約半数で進行がみられた報告

米国でGJB2による難聴の子ども126人を追った研究では、聴力の測れる部分が残っていた84人のうち47人(56%)で、経過中に聴力の低下がみられました。低下が始まる時期は1か月〜110か月と幅がありました[4]。同じ研究では、どの変化を持っているかで、進行するかどうかは予測できませんでした。

つまり、「生まれたときの聞こえ」がずっと同じとは限りません。補聴器や人工内耳の調整、言葉の支援を適切な時期に行うために、診断がついた後も定期的に聴力を確かめることが大切です。

変化の組み合わせで、聞こえの程度に傾向がある

一方、聞こえの程度(重さ)には、変化の種類による傾向があります。たんぱく質が途中で途切れるタイプの変化を2つ持つ場合は、重い難聴になりやすいと報告されています[4]。日本人に多いc.235delCはこのタイプです。反対に、p.V37Iに関係する難聴は軽度〜中等度のことが多く、学校や職場の健診で見つかる人も多いとされています[1]。

ただし、これはあくまで傾向で、同じ変化の組み合わせでも聞こえには個人差があります。出生前の検査で将来の聞こえや言葉の発達を言い切ることはできない、という点も知っておいてください。

出生前に調べる選択肢を「順番」で整理します

GJB2の難聴について妊娠前・妊娠中にできる検査は複数あります。大切なのは、検査を並べて比べることより、どの順番で何を確かめるかを知ることです。

① 上のお子さんの検査原因となるGJB2の変化を特定
▶
② ご両親の保因者検査どちらがどの変化を持つか確認
▶
③ 妊娠中の検査NIPT(個別相談)/羊水・絨毛
▶
④ 結果の解釈遺伝カウンセリングで次の一手

🔍 GJB2の難聴に関わる検査の位置づけ

検査 時期 分かること
保因者検査(ご両親の血液) 妊娠前〜妊娠初期 ご両親がGJB2の変化を持っているか。両方が保因者なら次の子の確率は25%
NIPT(お母さんの採血) 妊娠9週から GJB2は標準の項目ではなく、変化が分かっているご家族で個別に相談して対応
絨毛検査 妊娠11週ごろから 赤ちゃん由来の組織で、分かっている変化を直接確認(確定検査)
羊水検査 妊娠15週ごろから 羊水中の赤ちゃんの細胞で、分かっている変化を直接確認(確定検査)

確定検査の時期は一般的な目安です。妊娠週数や経過により個別に判断します。

これから妊娠を考える段階であれば、ご両親の保因者検査が最も確実な出発点です。お二人の変化が分かっていれば、妊娠した後にどの検査で何を確かめればよいかがはっきりします。保因者検査については妊娠前遺伝子検査(保因者検査)と保因者スクリーニング検査とはで、上のお子さんの原因を調べる検査は難聴遺伝子パネル検査で解説しています。

⚠️ ここは正直に

出生前の検査は、「見つけること」自体が常に利益になるとは限りません。GJB2による難聴は命に直接関わることは少なく、聞こえの程度にも幅があります。何を知りたいのか、知ったあとどう支え合うのかまで含めて考えることが大切です。

NIPTでGJB2の難聴は調べられる?

NIPTは、お母さんの血液に含まれる赤ちゃん(胎盤)由来のDNAの断片を調べる検査です。GJB2の難聴をNIPTで調べるのは、実は簡単ではありません。理由は、潜性遺伝の病気ではお母さん自身も同じGJB2の変化を1つ持っているからです。血液の中のDNAは大部分がお母さんのものなので、変化が見えても、それが赤ちゃんのものなのか、お母さんのものなのかを区別する必要があります。

そのため、当院の各NIPTプランで標準として調べている単一遺伝子の病気は、主に両親から受け継がずに新しく起こる変化(de novo変異)による顕性遺伝の病気です。GJB2はプランの標準の項目には入っていません。

そのうえで当院では、上のお子さんとご両親のGJB2の変化が分かっているご家族について、NIPTでGJB2を調べる検査を個別にご相談のうえ対応しています。変化の組み合わせによって調べられるかどうかや方法が変わるため、まず遺伝カウンセリングで、ご家族の検査結果を確認してから判断します。

💡 NIPTは「確定」ではありません

NIPTはスクリーニング検査です。GJB2を調べた場合も、結果をもとに方針を決める前に、羊水検査・絨毛検査で確かめるかどうかを遺伝カウンセリングで相談します。当院のNIPTは妊娠9週から受けられ(妊娠6〜8週は臨床研究として実施)、陽性のときのカウンセリングは何度でも無料です。

遺伝性難聴のお子さんがいるご夫婦が、次の妊娠でNIPTを選ぶまでの遺伝カウンセリングの流れは、遺伝性難聴のお子さんがいるご夫婦のNIPT遺伝カウンセリングで詳しく紹介しています。この記事はGJB2の遺伝のしくみと検査の選び方、そちらは実際のカウンセリングの進め方を扱っています。

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羊水検査・絨毛検査 | 単一遺伝子疾患の出生前診断

出生前の確定診断:羊水検査・絨毛検査で直接調べる

「GJB2の変化は、妊娠中に確定できますか?」という質問には、医学的には「ご家族の変化が特定されていれば可能」とお答えできます。羊水検査や絨毛検査で得た赤ちゃん由来の細胞から、ご家族で分かっている変化があるかどうかを直接確かめます[5]。採血で推定するNIPTとは、目的も確かさも異なります。

ミネルバクリニックでは、2025年6月から羊水検査・絨毛検査を院内で行っています。染色体の主要な検査項目は3日以内に、マイクロアレイ検査は2週間ほどで結果が出ます。GJB2のように特定の遺伝子の変化を調べる場合の日数は、検査の内容によって異なるため、事前にご案内します。

日本では、施設ごとの個別判断になります

日本では、命に直接関わることが少ない病気や、支援によって社会生活を送れる病気の出生前診断は、慎重に扱われてきた経緯があります。GJB2の難聴だけを目的とした出生前の確定診断を行っている医療機関は限られており、希望すればどこでも受けられる状況ではありません。

  • 適応は、妊娠週数・家族歴・原因となる変化が特定されているかで判断されます
  • 十分な遺伝カウンセリングが前提になります
  • 倫理的な配慮が強く求められる領域です

また、羊水検査・絨毛検査はおなかに針を刺す検査で、流産などのリスクはゼロではありません。だからこそ、医学的な適応、妊娠週数、ご家族の価値観を含めて総合的に判断します。検査の詳しい内容は羊水検査・絨毛検査で解説しています。

海外との違い

欧米では、家族内で原因となる変化が分かっている単一遺伝子の病気について、命に関わることが少ない場合でも出生前診断の対象になることがあります。日本では社会的背景や倫理的議論をより重視する傾向があり、制度として一律に認められているわけではなく、医療機関ごとの判断になっています。

技術的には可能でも、実際に受けられる施設が限られているという状況は、当事者のご家族にとって重いものです。「知りたい」と思っても簡単にはたどり着けないことが、不安をさらに深くすることもあります。その葛藤は、決してわがままではありません。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「できる」と「行う」は同じではありません】

技術があることと、実際にその検査を行うことは同じではありません。日本では「命に直接関わることが少ない病気を、出生前の検査でどこまで対象にするか」という議論が続いています。

私が大切だと考えているのは、検査の可否そのものよりも、その結果をどう受け止め、どう支えるかです。検査は手段であって目的ではありません。知る権利と、知らないでいる権利の両方が尊重されるべきで、どの選択をしても医療として支えることが前提だと考えています。

出生後の検査:血液の遺伝子検査が中心です

新生児聴覚スクリーニングで「要再検」となったり、難聴が疑われたりした場合は、精密な聴力検査とあわせて、血液で遺伝子を調べて原因を特定していく流れが一般的です。日本では、難聴の遺伝学的検査は保険で受けられる検査として行われてきました[1]。

原因がGJB2と分かれば、ご両親の保因者検査や、次の妊娠での検査の選択肢を具体的に考えられるようになります。難聴の原因遺伝子は100以上あり、GJB2以外の原因が見つかることもあります。多くの遺伝子をまとめて調べる方法は難聴遺伝子パネル検査をご覧ください。

施設選びで大切なこと:結果の後を想像する

出生前の検査は、検査を受けた瞬間がいちばんつらいわけではありません。多くの方が苦しいのは、結果を受け取った後の時間です。

💡 迷ったときの確認ポイント

➤ 検査の説明だけでなく、結果の解釈と次の手順まで説明があるか
➤ 不安が強いときに、相談し直せる仕組みがあるか
➤ 必要になったときに、羊水検査・絨毛検査など確定検査へつながるか
➤ 最初から最後まで、誰が説明と判断を担当するか

ミネルバクリニックには臨床遺伝専門医が常駐し、遺伝カウンセリングから結果の説明、陽性後の対応までを担当します。NIPTで陽性だった場合のカウンセリングは何度でも無料で、確定検査(羊水検査・絨毛検査)も院内で受けられます。

症例:上のお子さんがGJB2の難聴だったご夫婦

当院で検査を受けられたAさんご夫妻の経過を、要約してご紹介します。

Aさんの第1子は先天性の難聴で、遺伝子検査の結果、GJB2遺伝子に病的な変化を2つ持っていることが分かっていました。次のお子さんを妊娠されたとき、「おなかの赤ちゃんのGJB2の状態を知っておきたい」と希望され、当院でGJB2を含むNIPTを受けられました。その結果、赤ちゃんは変化を片方しか持っていない保因者(難聴は起こらないと考えられる状態)と分かりました。

この経過は、上のお子さんの原因が特定されていたからこそ、妊娠中に調べる検査を組み立てられたことをよく表しています。原因がまだ分かっていない場合は、上のお子さんの検査とご両親の保因者検査から始めることになります。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「次の子のことを知っておきたい」という気持ち】

補聴器をつければ聞こえ方が健聴の人と同じになる、というわけではありません。聞こえにくさがあると、話し言葉でのやりとりに工夫が必要になり、インターホンや車の音、災害時の放送など、音で知らせる情報に気づきにくい場面もあります。人は言葉を使って考える力を育てていくので、言葉を身につける時期には、ご家族からの声かけや療育など、毎日の積み重ねが大きな意味を持ちます。

こうした日々を知っているご家族だからこそ、「次のお子さんの状態を前もって知り、準備したい」と考えるのは自然なことだと考えています。知ることは、選ぶためだけでなく、生まれてくるお子さんを迎える準備のためにもあります。

ダウン症候群だけで大丈夫? ― 「値段」ではなく「調べられる範囲」で選ぶ

NIPTというと、ダウン症候群(21トリソミー)・18トリソミー・13トリソミーの「三大トリソミー」を思い浮かべる方が多いと思います。三大トリソミーは出生前検査で広く調べられている基本の項目です。けれども、赤ちゃんの病気はそれだけではありません。例えば22q11.2欠失症候群は、心臓の病気や免疫、発達に関わることがある染色体の微小欠失で、当院ではスタンダードプランから調べています。

GJB2のように潜性遺伝の病気はプランの標準の項目ではありませんが、ダイヤモンドプラン(56遺伝子)やインペリアルプラン(最大155遺伝子202疾患)では、両親から受け継がずに新しく起こる遺伝子の変化による病気まで調べます。検査を選ぶときは、料金だけでなく何を、いくつ調べているかを比べてみてください。

🧮 1つの病気あたりで考える(事前学習割引後・税込)

プラン 調べる病気の数(目安) 料金 1つの病気あたり
三大トリソミーのみ(仮に10万円とした場合) 3 100,000円(仮) 約33,333円
スタンダード 14(トリソミー3・性染色体4・微小欠失7) 220,000円 約15,714円
プレミアム 23(トリソミー6・性染色体4・微小欠失13) 264,000円 約11,478円
ダイヤモンド 79(上記+単一遺伝子56) 407,000円 約5,152円
双子マックス 114+α(全常染色体22・微小欠失重複92+5Mb超の構造異常) 440,000円 約3,860円
インペリアル 320+α(全常染色体22・性染色体4・微小欠失重複92・単一遺伝子202疾患+5Mb超の構造異常) 550,000円 約1,719円

「三大トリソミーのみ」の料金は比較のための仮の数字です。調べる病気の数は数え方の目安で、各プランの対象は各プランのページでご確認ください。料金には遺伝カウンセリング・4Dエコー・性別判定が含まれ、別途、検査結果の作成費用(3,300円)と互助会の会費(カトレア会8,000円・安心検査結果保障制度6,000円)がかかります。結果が出るまでの目安は10〜14日で、インペリアルプランの単一遺伝子の結果だけは3〜4週間です。

どのプランが合うかは、ご年齢や家族歴、上のお子さんの病気によって変わります。GJB2のように気になる病気がはっきりしている場合は、プランを選ぶ前に遺伝カウンセリングでご相談ください。

臨床遺伝専門医からのメッセージ

ここまで読んでくださった方は、「答え」だけではなく、気持ちの置き場を探しているのかもしれません。妊娠は本来、祝福のはずです。それでも不安が出るのは、赤ちゃんを大切に思うからです。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「知る権利」と「知らないでいる権利」】

出生前の検査で大切だと考えているのは、知る権利と、知らないでいる権利の両方です。検査を受けることも、受けないことも、どちらも尊重されるべき選択です。医師は決定者ではなく、情報を提供し、意思決定を支える立場だと考えています。

生涯に関わる情報だからこそ、早さより正確さを優先し、結果が出たあとも相談し直せる体制で支える。どの結論になっても、医療として支える姿勢は変わりません。

🏥 GJB2の難聴が気になる妊娠を、ひとりで抱えないために

ミネルバクリニックには臨床遺伝専門医が常駐し、ご家族の検査結果をもとに、保因者検査・NIPT・羊水検査・絨毛検査のどれで何を確かめるかを一緒に整理します。確定検査は院内で受けられます。NIPT専用ダイヤル:03-3408-3768

よくある質問(FAQ)

Q1. NIPTはダウン症候群だけで大丈夫ですか?

ダウン症候群は大切な項目ですが、赤ちゃんの病気はそれだけではありません。当院のNIPTはスタンダードプランでも22q11.2欠失症候群などの微小欠失を調べ、ダイヤモンドプランでは56、インペリアルプランでは最大155の遺伝子の病気まで調べます。GJB2の難聴のように気になる病気がはっきりしている場合は、ご家族ごとに個別に相談して検査を決めます。

Q2. GJB2遺伝子の難聴は進行しますか?

生まれつきの難聴として見つかることが多い一方、進行することもあります。米国の研究では、聴力の測れる部分が残っていた子どもの56%で、経過中に聴力の低下がみられました。どの変化を持っているかでは進行を予測できなかったため、診断後も定期的に聴力を確かめることが大切です。

Q3. GJB2遺伝子の保因者はどのくらいいますか?

日本人509人を調べた研究では、GJB2の病的な変化を1つ持つ保因者は3.73%、およそ27人に1人でした。日本人に多いのはc.235delCとp.V37Iです。保因者は聞こえに影響がないことがふつうなので、家族に難聴の人がいなくても、ご両親がともに保因者ということはあり得ます。

Q4. 再発リスク25%は「次も必ず」という意味ですか?

いいえ。ご両親がともに保因者のとき、妊娠するたびに毎回25%の確率でお子さんが同じ難聴になる、という意味です。上のお子さんが難聴でも、次が必ず同じになるわけではありませんし、「次は大丈夫」とも言い切れません。

Q5. NIPTでGJB2の難聴は調べられますか?

GJB2は当院のNIPTプランの標準の項目ではありません。潜性遺伝の病気ではお母さんも同じ変化を持っているため、血液から赤ちゃんの状態を調べるのが難しいからです。当院では、上のお子さんとご両親のGJB2の変化が分かっているご家族について、NIPTでGJB2を調べる検査を個別にご相談のうえ対応しています。

Q6. 妊娠中にGJB2の難聴を確定するには何が必要ですか?

ご家族で原因となるGJB2の変化が特定されていることが前提です。そのうえで、絨毛検査(妊娠11週ごろから)や羊水検査(妊娠15週ごろから)で赤ちゃん由来の細胞を採り、分かっている変化があるかを直接確かめます。当院では羊水検査・絨毛検査を院内で行っています。

Q7. GJB2の難聴は「重い病気」なのですか?

命に直接関わることは少ない一方、言葉の発達や教育の環境に関わることがあります。たんぱく質が途中で途切れるタイプの変化を2つ持つ場合は重い難聴になりやすく、p.V37Iに関係する難聴は軽度〜中等度のことが多いと報告されていますが、個人差があり、出生前に将来を言い切ることはできません。

Q8. 次の妊娠の前にできることはありますか?

上のお子さんの原因となる変化が分かっていれば、ご両親の保因者検査でお二人の変化を確認しておくことがいちばん確実な準備です。お二人の変化が分かっていると、妊娠した後にNIPTや羊水検査・絨毛検査で何を確かめればよいかがはっきりします。

Q9. 遺伝カウンセリングは「結論を出す場」ですか?

いいえ。遺伝カウンセリングは、情報を提供し、意思決定を支える場です。医師が結論を誘導するのではなく、ご家族の価値観と状況に合わせて選択肢を整理します。どの選択でも、医療として支える姿勢は変わりません。

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参考文献

  • [1] Usami S, Nishio SY. The genetic etiology of hearing loss in Japan revealed by the social health insurance-based genetic testing of 10K patients. Hum Genet. 2022;141(3-4):665-681. [DOI 10.1007/s00439-021-02371-3]
  • [2] Taniguchi M, Matsuo H, Shimizu S, et al. Carrier frequency of the GJB2 mutations that cause hereditary hearing loss in the Japanese population. J Hum Genet. 2015;60(10):613-617. [DOI 10.1038/jhg.2015.82]
  • [3] Abe S, Usami S, Shinkawa H, Kelley PM, Kimberling WJ. Prevalent connexin 26 gene (GJB2) mutations in Japanese. J Med Genet. 2000;37(1):41-43. [DOI 10.1136/jmg.37.1.41]
  • [4] Kenna MA, Feldman HA, Neault MW, et al. Audiologic phenotype and progression in GJB2 (Connexin 26) hearing loss. Arch Otolaryngol Head Neck Surg. 2010;136(1):81-87. [DOI 10.1001/archoto.2009.202]
  • [5] Smith RJH, Azaiez H, Odell AM. Nonsyndromic Hearing Loss and Deafness, DFNB1. In: GeneReviews®. Seattle (WA): University of Washington, Seattle. [NCBI Bookshelf NBK1272]

※本記事は一般の方に向けた情報提供を目的とするもので、個別の診断・治療方針を示すものではありません。検査の選択については、主治医・専門医にご相談ください。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

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