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20代NIPT陽性事例と出生前診断の選択・受ける割合【ミネルバクリニック専門医解説】

仲田洋美 医師

この記事の監修:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

20代で出生前診断を受けるべきか、迷っている方は多いと思います。ミネルバクリニックでは、20代でNIPT(新型出生前診断)を受けて陽性になり、羊水検査でも診断が確定した症例を経験しています。出生前診断を受けなければ、生まれるまで分からなかった症例です。この記事では、20代のNIPT陽性の実例を紹介しながら、若くてもNIPTを考える理由と、陽性と出たあとにどうすればよいかを、臨床遺伝専門医の立場からお伝えします。

この記事でわかること
📖 読了時間:約15分
🧬 20代・NIPT・陽性
★ 臨床遺伝専門医監修
  • ➤20代でも出生前診断を考える理由と、20代が出生前診断を受ける割合
  • ➤20代のダウン症候群の確率(20〜30歳の年齢別)と、障害をもって生まれる確率
  • ➤年齢に関係なく起こる病気(微小欠失・新生突然変異)と、NIPTで調べられる範囲
  • ➤20代ではNIPTの「偽陽性」の割合が高くなる理由と、陽性のときの確定検査
  • ➤20代でNIPT陽性となった18トリソミーの症例と、軟骨無形成症で中絶を経験した方の次の妊娠

⏱️ 30秒でわかる要約

🧬 Q. 20代でもNIPTで陽性になることはある?

あります。20代のダウン症候群の頻度は出生時で約1,000〜1,500人に1人と低いものの、ゼロではありません。ミネルバクリニックでも、28歳で18トリソミー陽性となり、羊水検査で確定した症例があります。

🔍 Q. ダウン症候群だけで大丈夫?

年齢とともに増えるのは染色体の数の異常です。一方、22q11.2欠失症候群などの微小欠失や、新生突然変異による単一遺伝子の病気は、母体の年齢に関係なく起こります。20代こそ、ダウン症候群以外に何を調べるかで検査を選ぶ意味があります。

🌸 Q. 20代でNIPT陽性と出たら?

若い方ほど「偽陽性」の割合が高くなるため、陽性の結果だけで判断せず、絨毛検査・羊水検査で確かめます。ミネルバクリニックでは確定検査を院内で行い、主要な検査項目は3日以内に結果が出ます。陽性のカウンセリングは何度でも無料です。

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20代で出生前診断を受けるべきか

20代はまだ若いですが、ミネルバクリニックとしては20代でも出生前診断を考える意味があると考えています。35歳未満の妊娠は数が多いため、ダウン症候群の赤ちゃんのうち、35歳未満のお母さんから生まれる割合は決して小さくないからです。かつては「ダウン症候群の約8割は35歳未満の母親から生まれる」と言われていました。出産年齢が上がった今はこの割合は下がっていますが、「若いから関係ない」とは言えません。

20代は確率が低いため、母体血清マーカー検査(クアトロテスト)なども勧められず、出生前診断の情報に触れる機会がほとんどないのではないでしょうか。しかし、20代なら健康な赤ちゃんが必ず生まれる、というわけではありません。さらに、後で説明するように、微小欠失や新生突然変異による病気は、母体の年齢に関係なく起こります。

💡 出生前診断は採血だけの検査ではありません

出生前診断を手軽に受けられる施設が増えましたが、検査の前に「何が分かり、何が分からないか」「陽性ならどうするか」を整理しておかないと、結果を受け取ったときに迷ってしまいます。出生前診断は、遺伝カウンセリング抜きで、採血だけで行うものではないと考えています。

35歳未満が出生前診断を受ける割合は2.4%

2020年11月20日の第2回NIPT等の出生前検査に関する専門委員会(厚生労働省)では、出産ジャーナリストの河合蘭氏らが行ったインターネット調査(448人)の結果が報告されました。この資料によると、出産時に35歳未満だった286人のうち、NIPTを受けた人は2.4%でした[1]。同じ資料では、35歳未満の8割以上が出生前検査を何も受けていませんでした。

35歳未満のデータしかありませんが、その多くは30代前半で、20代、とくに20代前半はさらに少ないと考えられます。20代は確率が低いことから、クアトロテスト(母体血清マーカー検査)などをすすめられる機会も少なく、出生前診断を受ける20代はごく一部にとどまっているのが現状です。

年齢ごとの受ける割合や「受けるべきか」の判断基準は35歳でNIPTを受ける割合は?「受けるべきか」迷う方へ3つの判断基準で、20代・30代前半の方が受ける意味は20代・30代前半が出生前診断を受ける割合は?ダウン症とNIPTで詳しく解説しています。このページでは、20代で実際に陽性となった例と、そのあとどうするかを中心にお伝えします。

20代のダウン症・染色体異常の確率と推移

20代で出生前診断を検討するとき、「実際にどのくらいの確率なのか」という客観的な数字を知っておくことは大切です。英国の統計データ(Morrisら)にもとづく、20歳から30歳までのダウン症候群(21トリソミー)の出生時の頻度を、比較のための35歳とあわせてまとめました[2][3]。

📊 母体年齢別のダウン症候群の頻度(出生時)

母体年齢 ダウン症候群の頻度(出生時・推定値)
20歳 1/1,476
21歳 1/1,461
22歳 1/1,441
23歳 1/1,415
24歳 1/1,381
25歳 1/1,339
26歳 1/1,285
27歳 1/1,219
28歳 1/1,140
29歳 1/1,045
30歳 1/938
(参考)35歳 1/352

出典:Morris JK, et al. J Med Screen. 2002[2](2005年の訂正[3]を反映した予測値)。生まれた時点の頻度で、NIPTを受ける妊娠初期の頻度はこれより高くなります。

表のとおり、35歳と比べると20代の確率は数字の上ではかなり低く見えます。これが、一般的な妊婦健診で20代の方に出生前診断が積極的に提案されない理由の一つです。

20代で赤ちゃんが障害をもって生まれる確率は?

「障害をもって生まれる確率」は、ダウン症候群などの染色体異常だけの数字ではありません。心臓の病気や体のつくりの異常なども含めた大きな先天異常は、母体の年齢にかかわらず生まれた赤ちゃんの約3%(およそ33人に1人)にみられると報告されています[8]。このうち母体の年齢とともに増えるのは染色体の数の異常で、20代ではその割合が低くなる一方、年齢と関係なく起こる原因が相対的に大きな部分を占めます。何が年齢と関係なく起こるのかは、後の「ダウン症候群だけで大丈夫?」で説明します。

💡 「確率は低い」けれど「ゼロ」ではありません

統計の数字は、あくまで集団全体を見たときのものです。確率が1,000分の1であっても、当事者となるご家族にとっては「0か100か」の結果になります。「数字の低さ」と「一人ひとりの不安」は別のものです。「確率が低いから安心する」のか、「確率は低くても、はっきりさせて安心したい」のか。ここをご自身の価値観と照らし合わせることが、後悔のない選択につながります。

出生前診断の種類

出生前診断には、非確定的検査と確定的検査の2種類があります。それぞれにメリット・デメリットがあるので、特徴を見ていきましょう。

非確定的検査とは

非確定的検査とは、この検査だけでは結果を確定できない検査です。母体の年齢によって陽性的中率が変わり、若い方ほど偽陽性の割合が高くなります。非確定的検査で陽性だった場合は、結果を確かめるために確定的検査を受ける必要があります。非確定的検査には、次のようなものがあります。

NIPT(新型出生前診断)

母体の採血だけで行う非確定的検査です。お母さんにも赤ちゃんにも流産などのリスクがなく、検査の精度も高いため、近年受ける方が増えています。

ミネルバクリニックでは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。ダウン症候群(21トリソミー)、18トリソミー(エドワーズ症候群)、13トリソミー(パトウ症候群)のほか、プランによって微小欠失症候群や単一遺伝子の病気も調べられます。

調べられる範囲は、日本医学会の認証施設か非認証施設か、どのプランを選ぶかで大きく異なるため、事前に確認してから受けましょう。なお、NIPTのダウン症候群の検出感度は99%以上とされますが、施設や検査方法によって違いがあります。

コンバインド検査

母体の採血と、超音波で赤ちゃんの首の後ろのむくみ(NT:Nuchal Translucency)を測ることを組み合わせた検査です。コンバインド検査も、母体や赤ちゃんに流産などのリスクはありません。

💡 用語解説:NT(ヌーカル・トランスルーセンシー)

赤ちゃんの首の後ろに見られる「むくみ」のことです。厚みがある場合、染色体異常や心臓の病気の可能性の手がかりになります。

受ける時期は妊娠11〜13週とNIPTより遅く、対象はダウン症候群と18トリソミーです。ダウン症候群の検出感度は83%とされています。

母体血清マーカー(クアトロテストなど)

母体の採血だけで行い、流産などのリスクはありません。妊娠15〜17週に受けるため、ほかの検査より時期は遅めです。ダウン症候群と18トリソミーに加えて、開放性神経管障害の可能性を知ることができます。ダウン症候群の検出感度は80%とされています。

確定的検査

確定的検査とは、病気を診断するための検査です。非確定的検査で陽性だったあとに確定的検査でも陽性であれば、診断はほぼ確定します。確定的検査は妊娠初期の終わりから中期にかけて行うため、時期はやや遅めと考えておきましょう。

⚠️ 確定的検査のリスク

どちらもお腹に針を刺して行う検査です。以前は0.3〜1%程度の流産のリスクがあると言われてきましたが、2019年の大規模な解析では、検査によって上乗せされる流産のリスクは羊水検査で約0.3%、絨毛検査で約0.2%と報告されています[4]。低いとはいえゼロではないため、NIPTで陽性だった方など、必要な方が受ける検査です。

絨毛検査

お腹から針を刺して胎盤のもとになる組織(絨毛)を採り、検査します。受ける時期は妊娠11〜14週です。絨毛検査を行っている医療機関は多くありませんが、ミネルバクリニックでは絨毛検査を院内で行っています。ダウン症候群の検出感度はほぼ100%です。

羊水検査

お腹から針を刺して羊水を採り、検査します。羊水には赤ちゃんからはがれ落ちた細胞が含まれているため、赤ちゃんのDNAを調べられます。受ける時期は妊娠15週以降で、妊娠中期に入ります。ダウン症候群の検出感度はほぼ100%とされています。確定検査の詳細は羊水検査・絨毛検査のページで説明しています。

ダウン症候群だけで大丈夫? ― 「値段」ではなく「調べられる範囲」で選ぶ

20代の方がNIPTを考えるとき、いちばん大切なのは「何を調べるか」です。母体の年齢とともに増えるのは、ダウン症候群などの染色体の数の異常です。20代ではこの確率が低いぶん、年齢に関係なく起こる病気の割合が相対的に大きくなります。

年齢に関係なく起こる病気がある

染色体のごく一部が欠ける微小欠失(22q11.2欠失症候群など)は、母体の年齢とは関係なく起こります。米国臨床遺伝・ゲノム学会(ACMG)は、一般の妊婦さん向けのNIPTの指針で、22q11.2欠失症候群のスクリーニングをすべての妊婦さんに提供することを提案しています[5]。一方で、微小欠失を全員に勧めることに慎重な学会もあり、考え方が分かれる項目だからこそ、検査前の遺伝カウンセリングで納得して選ぶことが大切です。

また、ご両親には病気がなく、精子や卵子ができる過程で遺伝子が書き換わる新生突然変異(de novo変異)による病気もあります。新生突然変異は主に父親側で生じ、父親の年齢とともに増えることが分かっています[6]。この記事の後半で紹介する軟骨無形成症も、新生突然変異で起こることが多い病気です。父親の年齢と赤ちゃんの病気の関係は父親の高齢化リスクはNIPTで分かる?で解説しています。

こうした病気の中には、知的障害や発達の遅れを伴うことがあるものも含まれます。ミネルバクリニックのNIPTでは、自閉症・発達障害・知的障害の原因の一部(微小欠失や、レット症候群・ソトス症候群などの単一遺伝子の病気)を調べられます。すべての自閉症・発達障害が分かるわけではなく、陰性でも心配がゼロになるわけではありませんが、20代の方にとって検査を選ぶ大きな理由になります。

1つの病気あたりで考える

NIPTの料金は、調べられる病気の数で割ってみると見え方が変わります。三大トリソミー(13・18・21番)は出生前検査で広く調べられている基本の項目です。ここでは比較のため、三大トリソミーだけを調べる検査を仮に10万円として並べました。

🧬 プランごとの調べられる範囲と、1つの病気あたりの料金

検査 調べられる病気の数 料金 1つの病気あたり
三大トリソミーのみ(仮定) 3 100,000円(仮定) 約33,333円
スタンダード 14(トリソミー3+性染色体4+微小欠失7) 220,000円 約15,714円
プレミアム 23(トリソミー6+性染色体4+微小欠失13) 264,000円 約11,478円
ダイヤモンド 79(プレミアムの範囲+単一遺伝子56) 407,000円 約5,152円
双子マックス 114+α(全常染色体22+微小欠失・重複92+5Mb超の構造異常) 440,000円 約3,860円
インペリアル 320+α(全常染色体22+性染色体4+微小欠失・重複92+単一遺伝子202疾患+5Mb超の構造異常) 550,000円 約1,719円

料金は事前学習動画を見て来院した場合の当日割引後・税込。遺伝カウンセリング・4Dエコー・性別判定を含みます。別途、検査結果の作成費用3,300円と互助会の会費(カトレア会8,000円・安心検査結果保障制度6,000円)がかかります。双子マックスは性染色体を調べません。

各プランの検査方式は、スタンダードプランが標的捕捉濃縮法、ダイヤモンドプランが米国の3大遺伝子検査会社の一角が提供する新技術「COATE法」(SNP法とターゲット法の組み合わせ)※、インペリアルプランが低深度全ゲノムシーケンス+ターゲット法です。

※「3大遺伝子検査会社」は、遺伝性がんや周産期(出生前検査・保因者検査)を含む遺伝子検査全般を手がける米国の検査専業会社のうち、2025年通期の売上高が上位の3社を指します(各社の決算発表にもとづく当院調べ)。がん検診やリキッドバイオプシーに特化した会社は含みません。

超音波検査で赤ちゃんの異常が疑われた妊婦さんを対象にした研究では、染色体の検査に加えて単一遺伝子の病気も調べると、見つかった病気の数が約1.6倍(61件→98件、60.7%増)に増えたと報告されています[7]。ダイヤモンドプラン(56遺伝子)は結果まで10〜14日、インペリアルプラン(最大155遺伝子202疾患)は単一遺伝子の結果だけ3〜4週間かかります。

20代が出生前診断を受けるときに注意すべきこと

注意したいのは、年齢が若いほど、NIPTの「偽陽性」の割合が高くなることです。NIPTそのものの感度・特異度は年齢で変わりませんが、もともとの病気の頻度が低いと、陽性と出た人のうち本当に病気である人の割合(陽性的中率)が下がるためです。

📊 20代のNIPTの陽性的中率は?年齢による違い(ダウン症候群の計算例)

検査時期の頻度(仮定) 陽性的中率(計算値)
約1,000人に1人(20代後半の目安) 約50%
約150人に1人(38歳前後の目安) 約87%

感度99%・特異度99.9%と仮定して計算した例です。実際の値は検査方式や施設、対象の病気によって異なります。

💡 用語解説:陽性的中率・偽陽性

陽性的中率とは、「検査で陽性と出たときに、本当に病気である確率」のことです。偽陽性(ぎようせい)とは、「陽性と判定されたけれど、実際には赤ちゃんにその異常がない」状態のことです。若い方はもともと病気の頻度が低いため、偽陽性の割合が高くなります。

20代の方は、NIPTで陽性だったからといって診断が確定したわけではないことを理解しておくことが重要です。若い妊婦さんと偽陽性の関係はNIPTは若い妊婦さんに必要?偽陽性の可能性を解説でも説明しています。

⚠️ 陽性なら必ず確定検査で確かめる

過去には、NIPTの結果だけで確定的検査を受けず、実は健康だった赤ちゃんを中絶してしまった妊婦さんがいました。このようなことは決してあってはなりません。ミネルバクリニックでは、陽性のカウンセリングは何度でも無料で、絨毛検査・羊水検査を院内で行い、主要な検査項目は3日以内、マイクロアレイ検査は2週間ほどで結果が出ます。

📋 35歳未満でNIPT陽性となった方の経過(症例の要約)

「自分は若いから大丈夫」と感じている方も多いですが、35歳未満でも染色体異常のある赤ちゃんを妊娠することはあります。ミネルバクリニックでNIPTを受けた方の経過を、個人が特定されないよう要約して紹介します。

Aさん(32歳・第2子):NIPTで21トリソミー陽性となり、羊水検査で確定しました。ご夫婦で話し合い、妊娠を継続しないことを選ばれました。その後、再び妊娠してNIPTを受け、結果は陰性でした。

Dさん(第1子を26歳で出産):第1子がダウン症候群でした。第2子・第3子の妊娠ではNIPTを受けています。厚生労働省の指針でも、「染色体数的異常を有する児を妊娠した既往のある妊婦」はNIPTの対象として挙げられています。前のお子さんに染色体の異常があった方は、年齢にかかわらず受検を検討してください。

20代のNIPT症例①:18トリソミー(エドワーズ症候群)

ここからは、ミネルバクリニックでNIPTを受けた20代の方の症例をお伝えします。

不安で仕方がない

産婦人科医が何も説明してくれないので、と不安になってミネルバクリニックに来院された28歳の女性です。

健診のとき、医師がカルテに「NT?」(赤ちゃんの首の後ろのむくみ)と書いたのを、彼女は見逃しませんでした。しかし医師は何も説明せず、翌週来るようにとだけ告げたそうです。1週間後、NTはなくなっていたようで、医師は「気になることはない」とだけ言いました。

彼女は自分なりに「NTって何?」とインターネットで調べました。妊娠12週未満で、まだNTを評価する時期ではなかったことも説明したのですが、不安は増す一方でした。

大学病院には、NIPTが始まるずっと前から「近くの産婦人科でNTが厚いと言われた」と慌てて電話してくる方がいらっしゃいました。専門の施設で測りなおすと、ほとんどの場合は問題のないレベルでした。NTの測り方や正常値はNTの正常値は?妊娠11週・12週・13週の基準値で解説しています。

そうしたこともお伝えし、当時はNIPTを始めたばかりで経験が少なかったこともあって、「世界のガイドライン上も35歳未満は推奨されていない」とお伝えしてしまったのですが…。ご夫婦の不安が本当に強く、検査をしないと生まれるまでこのまま過ごせない、と強い決意を示しておられたので、検査をすることにしました。

NIPTの結果は陽性

結果は、18トリソミー陽性でした。

18トリソミーとは、18番染色体が本来2本のところ3本になることで起こる染色体異常です。彼女の年齢では陽性的中率(PPV)は30%ほどと低いので、「はずれが7割、つまりほとんどははずれだから、落ち着いて羊水検査を受けてきてね」とお伝えしました。実は彼女は、結果を聞きに来たとき、わたしの顔を見た瞬間に泣き出してしまいました。不安にさせないようにニコニコしていたつもりだったのですが、勘のいい方だったのだと思います。

絨毛検査の時期は過ぎていたので、羊水検査を行いました。NIPTは非確定的検査なので、陽性になれば確定的検査(絨毛検査か羊水検査)で確かめる必要があります。

羊水検査の結果も18トリソミー

羊水検査で18トリソミーが確定した彼女は、「18トリソミーの子どもは育てられない」と、赤ちゃんとさよならすることを選んだそうです。

初めての妊娠がこのような結末となり、妊娠するのが本当に怖くなってしまったそうです。次に同じことが起こる可能性はとても低いとお伝えしましたが、そんな言葉でご本人の受けた衝撃をどれだけ和らげられたのか、自分の力不足を強く感じました。

この症例で考えたこと

初めての妊娠で、しかも28歳で18トリソミー。年齢から考えると確率は数千分の1です。確率が低いことと、当たらないことは違うと実感させられた症例でした。

また、なぜきちんと説明しないのか、なぜあんなに患者さんを不安にさせるのか、とも思いました。不安を残したままにしないことも、医療者の大切な役割だと考えています。

若いから大丈夫ということはありません。こうした症例に接していると、「妊婦の不安をあおって出生前診断に駆り立てている」という批判には、こう答えたくなります。

不安をあおるのではなく、不安を解消したいから検査をするのです。
安心して産みたいからこそ、出生前診断を受けようとするのです。

「放っておいてもほとんどが流産・死産になるのに、早い時期に検査に駆り立てることに何の意味があるのか」という趣旨の意見を新聞で見たこともあります。けれども、流産や死産が女性の心にどれほどの悲しみをもたらすかを考えると、わたしはそうは思いません。

生まれたお子さんが病気を抱えていて、生後まもなく亡くなってしまうと、その後立ち直れずに苦しみ続ける方もいます。がんの専門医として、そうした方に接したこともあります。わたし自身も、妊娠36週6日で一卵性双生児の一人を死産しました。その後もずっと、双子用のベビーカーをまともに見ることができません。

苦しい思いをしたからこそ、患者さんたちを同じ苦しみから守りたいと思います。生まれたお子さんが病気で苦しみ、亡くなってしまったとき、ご両親は計り知れない衝撃を受けます。その衝撃は、出生前診断の時点であればずっと小さいのではないでしょうか。もちろん、中絶したことを一生つらく思い続ける女性もいます。だからこそ、心の負担を和らげることも含めて出生前診断をしていかなければならない、と心から思った症例でした。

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20代のNIPT症例②:前の妊娠が軟骨無形成症で人工妊娠中絶に至った

続いて、ミネルバクリニックに来院された2人目の20代の方の症例をお伝えします。

20代前半、初めての妊娠

初めての妊娠で、それは突然やってきました。妊娠20週で妊婦健診に行ったところ、突然「赤ちゃんは軟骨無形成症の疑いがあります」と言われ、専門の医療センターを紹介されました。

彼女はこのとき、都内のクリニックで胎児ドックを受けていました。さらに20代では珍しく、クアトロテスト(母体血清マーカー検査)も受けていて、結果は「陰性」でした。

軟骨無形成症とは?

軟骨無形成症は、手足が短いタイプの低身長をもたらす病気です。骨は軟骨が骨に置き換わっていくことで伸びるため、この仕組みがうまく働かないと伸びていきません。

軟骨無形成症は、骨系統疾患と呼ばれる骨の病気の中で最も多いもので、1〜3万人に1人くらいの頻度で起こるとされています。

程度は軽いものから重いものまでさまざまですが、代表的な症状には、低身長、手足が短い、額が出ている、鼻の付け根がくぼんでいる、顔の中央部の発達が弱い、頭が大きい、などがあります。

軟骨無形成症はいつからわかる?

軟骨無形成症などの骨系統疾患(骨に全体的な異常が出る病気をこう呼びます)は、妊娠20週近くにならないと分かりません。

妊娠初期の赤ちゃんは、頭が大きく、体幹も小さく、手足は短く、もともとバランスが違うからです。人としてのバランスがとれた体型になってくるのが20週くらいなので、骨系統疾患は妊娠20週ごろにやっと診断がつくか、見逃されて22週以降、つまり人工妊娠中絶ができない時期に見つかるか、生まれてから見つかるか、のいずれかの経過をたどります。

彼女は妊娠中に胎児ドックを受けていましたが、その時点では見つかりませんでした。胎児ドックとクアトロテストで「正常です」と安心した矢先に、突然「赤ちゃんに異常があるので専門の施設を受診するように」と言われたのです。その驚きは言葉にできないものだったと思います。

初めての妊娠のその後

専門の施設を受診し、赤ちゃんのレントゲン写真で診断が確定しました。そして、あわただしく人工妊娠中絶をすることになりました。

診断がついてから中絶まで1週間ほどしかなく、気持ちを整理する時間はほとんど持てませんでした。人工妊娠中絶ができるのは、母体保護法で妊娠22週未満と決まっています。22週になると中絶できなくなるため、すぐに決断し、入院の予約などの手続きに進まなければなりません。

中期中絶の体験は本当に壮絶です。出産とまったく変わらないからです。

ご夫婦ともに20代前半で、まさか自分たちの赤ちゃんに病気があるとは想像したこともなかったでしょう。気持ちの整理をする時間も、何かを考える余裕もなく、ただ「早くしないと」とせかされて、妊娠21週というぎりぎりの時期に中期中絶に至るしかなかったそうです。

2回目の妊娠でNIPT

それから2年近くたって、ようやく「妊娠してもいいかな」という気持ちになり、彼女は妊娠しました。前の妊娠のときにインターネットで調べ続け、出生前診断があることを知り、次に妊娠したら絶対にNIPTを受けようと、そのときから決めていたそうです。当時、ミネルバクリニックでは「スーパーNIPTジーンプラス」が最も広く調べられるNIPTでした。

「軟骨無形成症は分かるようにならないのですか?」という質問を受けました。軟骨無形成症の多くは新生突然変異(de novo)で起こります。ご両親には病気がなく、精子や卵子ができる過程で遺伝子が書き換わることで起こる病気です。

💡 用語解説:新生突然変異(デノボ)

ご両親の遺伝子には変化がなく、赤ちゃんの遺伝子に初めて変化が起こることです。親から受け継いだものではないため、年齢にかかわらず誰にでも起こる可能性があります。軟骨無形成症の多くもこの仕組みで起こります。

当時、ミネルバクリニックでは新生突然変異を調べる検査の契約ができていませんでした。世界では一部検査できるようになっていましたが、契約まで至っていない、と正直にお答えしました。

NIPTの結果

このご夫婦のNIPTの結果は陰性でした。とても安心したご様子でした。軟骨無形成症は調べられなかったものの、当時いちばん広い範囲のNIPTを受けたご夫婦は、それから落ち着いて妊娠期間を過ごし、待望の赤ちゃんを迎えられました。

この症例で考えたこと

このご夫婦から「日本でもちゃんと検査できるようになってほしい」と言われたことは、臨床遺伝専門医のわたしにとって、とても重いことでした。

こうしたご夫婦の妊娠・出産のトラウマを癒すためには、新生突然変異の検査が必要だと痛感しました。ご本人たちにとって「もらい事故のようなものだから」という言葉は、何の慰めにもなりません。「なぜ自分たちが?」という思いが強くなるだけです。

また、新生突然変異による病気は父親の年齢が高いことと関係していることが多いのですが、若くてもゼロではありません。新生突然変異の検査は必要だと強く考え、検査を提供できる会社を探して、それから半年ほどかけて契約にこぎつけました。

2020年7月から新生突然変異(de novo変異)を調べるNIPTを取り扱っています。現在は、ダイヤモンドプランで56遺伝子、インペリアルプランで最大155遺伝子(202疾患)の単一遺伝子の病気を調べられます。対象の病気は各プランのページでご確認ください。

NIPT(新型出生前診断)の未来

NIPTはダウン症候群(21トリソミー)から始まり、18トリソミー(エドワーズ症候群)、13トリソミー(パトウ症候群)、性染色体の数の異常、微小欠失症候群へと対象を広げてきました。今では新生突然変異による病気や、常染色体潜性(劣性)の重い遺伝病の検査にも広がっています。

これからは、デュシェンヌ型筋ジストロフィーなどの神経・筋の病気も、お母さんのお腹にいる間にNIPTで分かるようになっていくでしょう。海外では、母親が保因者であることがはっきりしている場合に限って、デュシェンヌ型筋ジストロフィーのNIPTがすでに始まっています。

赤ちゃんの全エクソーム解析(ゲノムのうち、たんぱく質の設計図として働く部分をすべて調べる方法)も研究が進んでいますが、NIPTとして臨床で使える段階にはまだありません。

染色体の本数の異常(異数性)の検査から、遺伝子レベルの変化を調べる検査へ。NIPTの対象は、これからも広がっていくと考えられます。

まれな常染色体顕性(優性)の遺伝性疾患の当事者であるわたしにとっても、時代が進めば、自分が生まれてこられなかった可能性を考えずにはいられません。複雑な思いを抱えながら、出生前診断に向き合っています。

筆者の思い

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【知ることは、悪いことではない】

知る権利。知らないでいる権利。母体の権利。物言わぬ胎児の権利。

わたしは昔、20歳を過ぎたデュシェンヌ型筋ジストロフィーの患者さんを在宅で診ていました。人工呼吸器につながれていましたが、カフ圧をうまく調節して話すことができたので、いろいろな思いを聞かせてもらいました。その家庭では、お父さんが家を出ていってしまいました。遺伝子の変化による重い病気のお子さんをもつと、本人も家族も人生が変わります。

生まれる前に分かって、事前に準備ができるなら、そうしたいと考える方は多いのではないでしょうか。知ることは悪いことではない、そう思います。そして、人生に賭けはいらない。妊娠・出産が賭けである時代が終わるよう願っています。わたし自身も、妊娠36週6日で一卵性双生児の一人を死産し、とてもつらい思いをしました。

不安なまま妊婦生活を送り、賭けのように出産する時代に終わりを。妊娠・出産でつらい思いをした一人として、心から願っています。

🏥 20代でも、調べる範囲から選べるNIPTを

ミネルバクリニックには臨床遺伝専門医が常駐し、NIPTは妊娠9週から(6〜8週は臨床研究として)受けられます。陽性のカウンセリングは何度でも無料。絨毛検査・羊水検査は院内で行い、主要な検査項目は3日以内に結果が出ます。

NIPT専用ダイヤル:03-3408-3768

よくある質問(FAQ)

Q1. 20代でもNIPTを受けるべきですか?

20代のダウン症候群の確率は30代後半に比べて低いですが、ゼロではありません。35歳未満の妊娠は数が多いため、ダウン症候群の赤ちゃんのうち35歳未満のお母さんから生まれる割合は小さくありません。また、微小欠失や新生突然変異による病気は年齢に関係なく起こります。「もしも」のときにどうするかをパートナーと話し合ったうえで、不安を解消するために検査を受けることは、意味のある選択の一つです。

Q2. ダウン症候群だけで大丈夫ですか?

母体の年齢とともに増えるのは染色体の数の異常で、20代ではその確率が低くなります。一方、22q11.2欠失症候群などの微小欠失や、新生突然変異による単一遺伝子の病気は、年齢に関係なく起こります。ミネルバクリニックのNIPTでは、スタンダードプランでも22q11.2欠失症候群を含む微小欠失を調べ、ダイヤモンドプランは56遺伝子、インペリアルプランは最大155遺伝子の単一遺伝子の病気まで調べられます。何を調べるかで検査を選ぶことが大切です。

Q3. 20代で赤ちゃんが障害をもって生まれる確率はどのくらいですか?

心臓の病気や体のつくりの異常などを含めた大きな先天異常は、母体の年齢にかかわらず生まれた赤ちゃんの約3%(およそ33人に1人)にみられると報告されています。ダウン症候群に限ると、出生時の頻度は20歳で約1,500人に1人、29歳で約1,000人に1人です。20代では染色体の数の異常は少ない一方、微小欠失や新生突然変異のように年齢と関係なく起こる原因もあります。

Q4. 20代だとNIPTの偽陽性が増えるというのは本当ですか?

はい、本当です。NIPTそのものの感度・特異度は年齢で変わりませんが、20代では対象の病気の頻度が低いため、陽性的中率が下がります。つまり、陽性と出ても実際には赤ちゃんにその異常がない(偽陽性)割合が、年齢の高い方より高くなります。そのため、陽性の場合は必ず絨毛検査・羊水検査で確かめる必要があります。

Q5. NIPTの費用は保険適用になりますか?

いいえ。NIPTは自費診療で、健康保険は適用されません。費用は施設や検査プランによって異なります。ミネルバクリニックの料金は、事前学習動画を見て来院した場合の当日割引後でスタンダードプラン220,000円からです。

Q6. 認証施設と非認証施設の違いは何ですか?

認証施設は、日本医学会の出生前検査認証制度にもとづいて認証された施設で、NIPTの対象は13・18・21トリソミーの3つです。ミネルバクリニックは認証施設ではありませんが、臨床遺伝専門医が常駐し、20代の方も受けられます。微小欠失や単一遺伝子の病気まで、調べる範囲をプランで選べます。

Q7. NIPTで陽性が出た場合、どうすればよいですか?

NIPTは非確定的検査なので、陽性の場合は絨毛検査または羊水検査で診断を確かめます。ミネルバクリニックでは陽性のカウンセリングを何度でも無料で行い、確定検査も院内で受けられます。主要な検査項目は3日以内、マイクロアレイ検査は2週間ほどで結果が出ます。

Q8. NIPTはいつから受けられますか?

ミネルバクリニックでは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。早い時期に結果が分かると、どのような選択をするにしても、考える時間を十分に確保できます。結果までの目安は10〜14日で、インペリアルプランの単一遺伝子の結果だけは3〜4週間かかります。

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参考文献

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※本記事は一般の方に向けた情報提供を目的とするもので、個別の診断・治療方針を示すものではありません。症例は個人が特定されないよう一部を要約しています。

プロフィール
仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続け、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、検査結果の数値そのものだけでなく、「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、日本人として異文化の中で生活した経験があります。価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。この経験は現在の診療においても、「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、36週6日で一人を死産した経験があります。その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、家族の未来に関わる重要な意思決定です。年齢や統計だけで判断するのではなく、医学的根拠と心理的支援の両面から、ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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