目次
- ➤ 胎児ドックの受診に最適な時期:妊娠初期・中期・後期それぞれのタイミング
- ➤ 各時期の胎児ドックで分かることと検査内容の違い
- ➤ NIPT(新型出生前診断)と胎児ドックの違いと併用するメリット
- ➤ 胎児ドックを受ける際の費用と医療機関の選び方
- ➤ 検査を受けるべきかどうか迷った時のアドバイス
妊娠中のお母さんにとって、お腹の赤ちゃんの健康状態は最大の関心事です。胎児ドックは超音波検査を用いて赤ちゃんの形態や発育状態を詳しく調べる検査で、一般的な妊婦健診よりも詳細に胎児の状態を確認することができます。しかし、いざ受けようと思っても、「いつ受ければよいのか」「どの時期にどんなことがわかるのか」など、疑問や不安を持つ方も多いでしょう。
この記事では、胎児ドックの受診時期とそれぞれの時期で分かることについて解説します。また、NIPT(新型出生前診断)との違いや、検査を受けるべきかどうか迷っている方へのアドバイスもご紹介します。安心して妊娠期間を過ごすための参考にしていただければ幸いです。
胎児ドックとは?一般的な妊婦健診との違い
胎児ドックとは、高精度の超音波診断装置を使って、お腹の赤ちゃんの形態や発育状態を詳しく調べる検査です。通常の妊婦健診の超音波検査よりもさらに詳細に、赤ちゃんの体の状態を確認することができます。
- ✓ 通常の妊婦健診では見つかりにくい形態異常を早期に発見できる可能性がある
- ✓ 高精度の超音波装置で赤ちゃんの状態を詳細に観察できる
- ✓ 異常が見つかった場合、出生前または出生後の早期対応が可能になる
- ✓ 母体への負担がなく、安全に検査を受けることができる
- ✓ 赤ちゃんの様子を詳しく見ることで安心感を得られる
胎児ドックを受ける理想的な時期
日本産婦人科学会では、胎児ドックを受ける時期として、妊娠初期(10~13週)、妊娠中期(18~20週)、妊娠後期(28~31週)の3回を推奨しています。それぞれの時期で確認できる内容が異なるため、可能であれば3回すべて受けることが理想的です。
しかし、すべての時期に受診するのが難しい場合は、特に妊娠中期(18~20週)の胎児ドックが最も重要だと言われています。この時期は赤ちゃんの臓器がある程度発達し、観察しやすい大きさになっているため、多くの形態異常を発見できる可能性が高くなります。
妊娠初期(10~13週)の胎児ドック
胎児の首の後ろのむくみの厚さを測定し、染色体異常のリスク評価を行います。
赤ちゃんの頭部、脳、顔、心臓、四肢などの大まかな形態を確認します。
ダウン症などの染色体異常を示唆する所見がないか確認します。
妊娠初期の胎児ドックでは、NT測定と合わせてコンバインド検査を実施することで、より高精度でダウン症などのリスク評価を行うことができます。この時期は主に大まかな形態確認と染色体異常のスクリーニングが中心となります。
妊娠初期にわかること:ダウン症候群(21トリソミー)、エドワーズ症候群(18トリソミー)、パトー症候群(13トリソミー)などの染色体異常の可能性、赤ちゃんの性別、発育状態、推定体重、羊水量、主な臓器の有無など。
妊娠中期(18~20週)の胎児ドック
大脳、小脳、顔、心臓、肺、胃腸、肝臓、腎臓などの詳細な形態を確認します。
心臓の構造異常、脊椎の形成不全、腹壁欠損、内臓の異常などをチェックします。
外性器の発達が進み、性別をより正確に確認できるようになります。
妊娠中期は胎児ドックにおいて最も重要な時期と言われています。この時期には赤ちゃんの臓器がほぼ形成され、超音波でも細部まで観察できるようになるため、多くの先天性異常を発見することができます。特に心臓の四腔断面や大血管の確認など、詳細な観察が可能になります。
妊娠中期にわかること:脳や心臓などの臓器の詳細な構造、無脳症や二分脊椎などの神経管閉鎖障害、心臓奇形、腹壁欠損、消化管閉鎖など、より詳細な形態異常の有無。また羊水検査のタイミングとしても適しています。
妊娠後期(28~31週)の胎児ドック
赤ちゃんの成長が順調かどうか、推定体重や各部位の大きさを測定します。
心臓の動き、胃腸の蠕動、腎臓の機能など、臓器の機能面も含めて確認します。
胎位(頭位か逆子か)、臍帯の状態、胎盤の位置や成熟度などを確認します。
妊娠後期の胎児ドックでは、中期で見つからなかった異常や、発育の過程で現れる可能性のある問題を発見することができます。また、出産に向けた準備として、胎児の推定体重や位置を確認することも重要です。
妊娠後期にわかること:発育状態(推定体重や各部位の計測値)、臓器の機能面の評価、胎児発育不全(FGR)の有無、胎位、臍帯や胎盤の状態、出産に向けた評価など。
胎児ドックの時期による違い
初期で分かること
- NT測定
- 染色体異常のスクリーニング
- 大まかな形態の確認
- 妊娠週数の確認
- 多胎妊娠の有無
中期で分かること
- 臓器の詳細な構造確認
- 心臓や脳の形態異常
- 手足や骨格の発達
- 性別の確認
- 羊水量や胎盤の状態
後期で分かること
- 発育状態の再確認
- 臓器の機能面の評価
- 胎児発育不全の有無
- 胎位・臍帯の確認
- 出産に向けた評価
NIPT(新型出生前診断)と胎児ドックの違い
NIPT(新型出生前診断)と胎児ドックは、どちらも出生前診断の一種ですが、検査方法や何が分かるかという点で大きく異なります。両方の検査の特徴を理解して、自分に合った検査を選ぶことが大切です。
NIPTと胎児ドックは検査の目的が異なるため、どちらか一方だけを受けるのではなく、両方を併用することで、より広範囲なスクリーニングが可能になります。
NIPTでは染色体異常の可能性を高精度で調べることができますが、形態異常はわかりません。一方、胎児ドックでは形態異常を調べることはできますが、染色体異常の検出精度はNIPTより低い場合があります。そのため、両方の検査を受けることで、より広範囲なスクリーニングが可能になります。
NIPTと胎児ドックを併用する場合は、まずNIPT(妊娠10週以降)を受け、その後に胎児ドック(特に妊娠中期18~20週)を受けるという流れが一般的です。どちらの検査も任意であり、費用は自己負担となることがほとんどです。
検査を受けるかどうかは、妊婦さんとパートナーがよく話し合って決めることが大切です。また、検査前には医師との遺伝カウンセリングを受けることで、検査の意義や限界についても理解を深めることができます。
胎児ドックの費用と医療機関の選び方
胎児ドックの費用
胎児ドックは保険適用外の自費診療となることがほとんどです。費用は医療機関によって異なりますが、一般的には1回あたり3万円~5万円程度です。複数回受診する場合はセット料金を設定している医療機関もあります。
初期胎児ドック(10~13週):約3~4万円
中期胎児ドック(18~20週):約3~5万円
後期胎児ドック(28~31週):約3~4万円
3回セット(初期・中期・後期):約8~12万円(単発で受けるより割引あり)
費用は医療機関によって異なりますので、受診前に必ず確認しましょう。また、胎児ドックに加えて追加検査(NT測定やコンバインド検査など)を同時に行う場合は、別途費用がかかることがあります。
医療機関の選び方
胎児ドックを受ける医療機関を選ぶ際は、以下のポイントをチェックすることをおすすめします。
専門性
- → 産婦人科専門医や周産期専門医がいるか
- → 超音波検査の専門資格を持つ医師がいるか
- → 先天異常の診断経験が豊富か
設備
- → 高精度の超音波診断装置を使用しているか
- → 3D/4Dエコーがあるか
- → 異常が見つかった場合の対応体制は整っているか
サポート体制
- → 丁寧な説明やカウンセリングがあるか
- → 異常が見つかった場合のフォロー体制
- → 高次医療機関との連携体制がとられているか
初めて胎児ドックを受ける場合は、まず「妊娠中期(18~20週)」の胎児ドックを優先的に受けることをおすすめします。この時期は赤ちゃんの臓器がある程度形成され、超音波でも観察しやすい大きさになっており、最も多くの異常を発見できる可能性が高いためです。予算や時間の都合で全ての時期に受診できない場合は、中期を優先して検討してみてください。
また、医療機関のホームページや口コミだけでなく、かかりつけの産婦人科医に相談したり、実際に電話で質問したりして情報収集することも大切です。
胎児ドックは受けるべき?考慮すべきポイント
胎児ドックを受けるかどうかは、個人の価値観や状況によって異なります。検査を検討する際には、以下のポイントを考慮することが大切です。
受診を検討する方の特徴
- 1 高齢出産(35歳以上)の方
- 2 過去の妊娠で異常があった方
- 3 家族歴に先天性異常や遺伝性疾患がある方
- 4 妊婦健診で何らかの異常を指摘された方
- 5 不安が強く、より詳細な検査を希望する方
上記に当てはまる方は、胎児ドックを受けることで、不安の軽減や早期発見のメリットが大きい可能性があります。ただし、特にリスク要因がない方でも、希望があれば検査を受けることができます。
メリットとデメリット
- ✓ パートナーと一緒に検査を受ける:重要な決断を二人で共有することで、心理的サポートになります。
- ✓ 事前に質問リストを作成する:気になることや不安なことをメモしておき、医師に質問しましょう。
- ✓ 検査結果についての理解を深める:検査の限界や結果の解釈について事前に理解しておきましょう。
- ✓ 結果に対する心の準備をする:異常が見つかった場合の対応についても考えておくと良いでしょう。
よくある質問(FAQ)
まとめ:最適な胎児ドック受診のタイミングと選び方
胎児ドックは超音波検査を用いて赤ちゃんの形態や発育状態を詳しく調べる検査で、妊娠初期(10~13週)、中期(18~20週)、後期(28~31週)の3回受けることが理想的です。特に妊娠中期の胎児ドックは最も重要とされており、多くの形態異常を発見できる可能性が高いため、すべての時期に受診することが難しい場合は、中期を優先的に検討することをおすすめします。
NIPTと胎児ドックは検査の目的が異なるため、両方を併用することでより包括的な出生前診断が可能になります。ただし、検査を受けるかどうかは個人の価値観や状況によって異なりますので、メリットとデメリットをよく理解した上で、パートナーと一緒に考えることが大切です。
医療機関を選ぶ際は、専門性や設備、サポート体制などをチェックし、質の高い検査と丁寧な説明が受けられる施設を選ぶことが重要です。胎児ドックは自費診療となることがほとんどですので、費用についても事前に確認しておきましょう。
最後に、胎児ドックの結果はあくまでスクリーニング検査であり、100%の確定診断ではないこと、すべての異常が発見できるわけではないことを理解しておくことも大切です。検査結果に不安がある場合は、遠慮なく医師に相談し、必要に応じて追加検査や専門医の意見を求めることをおすすめします。
当院では、NIPT(新型出生前診断)を提供しております。検査前後の遺伝カウンセリングでは、検査の内容や意味、結果の解釈について詳しくご説明いたします。出生前診断についてのご不安やご質問があれば、お気軽にご相談ください。
引用・参考文献
- 日本産科婦人科学会 – 産婦人科診療ガイドライン
- 日本医学会 – 遺伝子関連検査に関するガイドライン
- 日本周産期・新生児医学会 – 出生前診断に関する見解
- 各医療機関の公式サイト掲載情報
※本記事の内容は、上記を参考に作成しておりますが、最新の医学的知見や各医療機関の方針によって異なる場合があります。詳細は必ず医師にご相談ください。
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