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出生前診断を調べはじめると、NIPT、コンバインド検査、クアトロテスト、胎児ドック、羊水検査と、検査の名前が次々に出てきます。どれが何を調べる検査なのか、最初はわかりにくいものです。先に整理しておくと、出生前診断は「可能性を調べる非確定検査」と「診断を確定する確定検査」の2つに分かれます。この記事では、6つの検査を、受けられる時期・わかること・精度・費用の目安・流産リスクの5つの項目で一覧にしました。そのうえで、「何を知りたいか」から検査を選ぶ考え方を、国の報告書と論文の数字にもとづいて説明します。
- ➤出生前診断の種類と、非確定検査・確定検査の違い
- ➤6つの検査の時期・わかること・精度・費用の目安・流産リスクの一覧表
- ➤検出率と陽性的中率の違いなど、表の数字の読み方
- ➤「染色体か、形か」「妊娠週数」から検査を選ぶ考え方
- ➤非確定検査で陽性と出たあとの流れ
- ➤ダウン症候群だけを調べれば大丈夫か、という考え方
⏱️ 30秒でわかる要約
🧬 Q. 出生前診断にはどんな種類がありますか?
大きく2つです。非確定検査(NIPT・コンバインド検査・クアトロテスト・胎児ドック)は採血や超音波で行い、流産のリスクはありませんが、結果は「可能性」です。確定検査(絨毛検査・羊水検査)はお腹に針を刺して細胞を採るため診断が確定しますが、わずかに流産のリスクがあります。
🧩 Q. ダウン症候群だけ調べれば大丈夫ですか?
大丈夫とは言えません。子育ての負担を最も大きく左右するのは、知的障害の程度よりも、攻撃的な行動や自傷、睡眠の問題といった行動の問題です。それを伴いやすいのは、ダウン症候群よりも微小欠失症候群や単一遺伝子疾患で、三大トリソミーだけの検査では調べられません。当院のNIPTはこれらの病気まで調べられます。
🔍 Q. どれを受ければいいですか?
まず、染色体の数の変化を知りたいのか、体の形を見たいのかを分けて考えます。染色体ならNIPTなどの血液を使う検査、形なら胎児ドックです。調べているものが違うので、組み合わせて受ける方もいます。妊娠週数によって受けられる検査も変わります。
📋 Q. 非確定検査で陽性と出たら、診断は確定ですか?
確定ではありません。診断を確かめるには、絨毛検査か羊水検査が必要です。反対に、陰性でも、その検査が対象にしていない病気まで否定されたわけではありません。
ダウン症候群だけで大丈夫ですか?
当院のNIPTは、子育ての負担につながりやすい微小欠失症候群や単一遺伝子疾患まで調べられます。どこまで調べるかは、90分の受診枠の中で臨床遺伝専門医と一緒に決められます。
出生前診断の種類は大きく2つ|非確定検査と確定検査
出生前診断とは、お腹の赤ちゃんの状態を、生まれる前に調べる検査をまとめた呼び名です。厚生労働省の専門委員会報告書は、これらの検査を、結果にもとづいて診断を確定できる「確定的検査」と、確定できない「非確定的検査」に大きく分けています[1]。確定的検査にあたるのが羊水検査と絨毛検査、非確定的検査にあたるのが母体血清マーカー検査、コンバインド検査、NIPT、胎児超音波検査です[1]。この記事では、それぞれを「確定検査」「非確定検査」と呼びます。
検査の種類を見る前に、対象の広さを知っておくと全体がつかみやすくなります。同じ報告書によると、生まれつきの病気(先天性疾患)は赤ちゃんの約3〜5%にみられ、染色体の変化によるものはそのうち25%程度です[1]。さらに、13番・18番・21番の染色体が1本多い3つのトリソミーは、染色体の病気の70%程度を占めます[1]。つまり、どの検査も「生まれつきの病気すべて」を調べているわけではなく、それぞれ調べる範囲が決まっています。
非確定検査:可能性を調べる検査
非確定検査は、お母さんの採血や超音波で行う検査です。お腹に針を刺さないので、検査が原因で流産することはありません。そのかわり、結果は「陽性・陰性」や「300分の1」といった確率で示され、それだけで診断が決まることはありません。多くの人の中から可能性の高い人を見つけるスクリーニング検査にあたります。
なぜ確定できないのかというと、赤ちゃんの細胞そのものを調べているわけではないからです。血液中の物質の量、DNAの断片、超音波で見える形といった、いわば間接的な手がかりから可能性を見積もっています。そのため、陽性でも実際には病気がない「偽陽性」と、陰性でも実際には病気がある「偽陰性」が、どの検査でも一定の割合で起こります。非確定検査の役割は、確定検査を受けるかどうかを決めるための材料を得ることです。
確定検査:診断を確定する検査
確定検査は、お腹に細い針を刺して、胎児または胎盤に由来する細胞を採る検査です。胎盤のもとになる組織を採るのが絨毛検査(じゅうもうけんさ)、赤ちゃんを包む羊水を採るのが羊水検査(ようすいけんさ)です。採取した細胞を用いて染色体検査を行い、必要に応じて染色体マイクロアレイ検査や特定の遺伝子を対象とした検査など、目的に応じた解析法を追加します[1]。
ただし、針を刺すことによる流産のリスクがわずかにあります。そのため、まず非確定検査を受け、陽性だったときに確定検査へ進む、という順番をとる方が多くなっています。最初から確定検査を選ぶこともできます。どちらの進み方がよいかは、知りたいことと、流産のリスクをどう考えるかによって変わります。
💡 用語解説:「出生前診断」と「出生前検査」
国の報告書は「出生前検査」という言葉を使っています。非確定検査だけでは診断が確定しないので、それを「診断」と呼ぶと確定したかのように誤解されやすい、というのが理由です[1]。この記事では、一般に使われることの多い「出生前診断」を見出しに使っていますが、非確定検査の結果は診断ではないという点は同じです。
出生前診断の種類一覧表|時期・わかること・精度・費用・流産リスク
6つの検査を、同じ項目で並べたのが下の表です。精度の欄は、比べやすいようにダウン症候群(21トリソミー)についての数字でそろえました。費用は厚生労働省の資料(2020年)に示された目安で、実際の金額は施設によって違います[2]。
📋 出生前診断の種類一覧(非確定検査4つ・確定検査2つ)
| 検査 | 受けられる時期 | わかること | 精度(ダウン症候群) | 費用の目安 | 流産リスク |
|---|---|---|---|---|---|
| NIPT (非確定) |
妊娠9〜10週ごろ以降[1] | 13・18・21トリソミーの可能性 | 検出率99.7%、偽陽性率0.04%[3] | 約15〜20万円[2] | なし |
| コンバインド検査 (非確定) |
妊娠11〜13週[1] | 13・18・21トリソミーの確率 | 検出率82〜87%(偽陽性率5%のとき)[4] | 施設により異なる | なし |
| クアトロテスト (非確定) |
妊娠15〜18週ごろ[2] | 21・18トリソミー、神経管閉鎖障害の確率 | 検出率81%(偽陽性率5%のとき)[4] | 約2万円[2] | なし |
| 胎児ドック (非確定) |
妊娠11週ごろ以降[1] | 心臓・脳・手足など形の異常 | 形を見る検査。染色体の変化は確定できない | 約2〜5万円[2] | なし |
| 絨毛検査 (確定) |
妊娠11〜14週[1] | 染色体の数・構造など(目的に応じて追加解析) | 診断が確定する | 約10〜15万円[2] | あり(下の節で説明) |
| 羊水検査 (確定) |
妊娠15週以降[1] | 染色体の数・構造など(目的に応じて追加解析) | 診断が確定する | 約10〜15万円[2] | あり(下の節で説明) |
※クアトロテスト(母体血清マーカー検査)の時期は、資料によって「妊娠15〜20週」とも書かれています[1]。胎児ドックの費用は、資料中の「超音波マーカー検査」の目安です。コンバインド検査は超音波に採血が加わるため、受ける施設で確かめてください。NIPTの時期と調べる範囲は一般的な目安で、当院のNIPTについては下の節で説明しています。
表の読み方:検出率と陽性的中率は別のもの
表の「検出率」は、病気のある赤ちゃんのうち、検査で陽性と出る割合です。「偽陽性率」は、病気のない赤ちゃんのうち、まちがって陽性と出る割合です。偽陽性率5%なら100人に5人、0.04%なら1万人に4人が、病気がないのに陽性と判定されることになります。コンバインド検査とクアトロテストの数字は、38,167人の妊婦さんを対象にした米国の研究によるものです[4]。NIPTの数字は、単胎妊娠の研究をまとめた解析によるもので、18トリソミーは検出率97.9%、13トリソミーは99.0%と報告されています[3]。
ここで注意したいのは、検出率が高いことと、「陽性と出たら本当に病気がある確率」が高いことは同じではないという点です。後者を陽性的中率といいます。陽性的中率は、検査を受けた集団の中にその病気の赤ちゃんがどれくらいいるかで変わります。厚生労働省の資料にある試算では、NIPTの陽性的中率は、ダウン症候群の頻度が50人に1人の集団で95.3%、250人に1人で79.9%、1,000人に1人では49.8%でした[2]。一方、陰性と出たときに本当に病気がない確率(陰性的中率)は、この3つの集団のいずれでも99.98%以上でした[2]。それでも100%ではありません。詳しい考え方は感度・特異度と陽性的中率・陰性的中率で説明しています。
💡 用語解説:検出率・偽陽性率・陽性的中率
検出率(感度)は「病気のある人を陽性と判定できる割合」、偽陽性率は「病気のない人を陽性と判定してしまう割合」です。この2つは検査そのものの性能を表します。陽性的中率は「陽性と出た人のうち本当に病気がある割合」で、同じ検査でも、年齢などによって病気の頻度が違えば数字が変わります。集団についての数字なので、一人ひとりの確率をそのまま表すものではありません。
受けられる時期を週数で並べる
検査は、受けられる時期がそれぞれ決まっています。とくにコンバインド検査は妊娠11〜13週に限られ、この時期を過ぎると受けられません。妊娠週数の順に並べると、次のようになります。
| 妊娠週数 | 受けられる検査 | 補足 |
|---|---|---|
| 9〜10週ごろ | NIPT | 6つの中でいちばん早く受けられる |
| 11〜13週 | NIPT、コンバインド検査、胎児ドック(初期)、絨毛検査 | 選べる検査がいちばん多い時期。絨毛検査は14週まで |
| 15〜18週ごろ | NIPT、クアトロテスト、羊水検査 | 羊水検査は15週以降 |
| それ以降 | 胎児ドック(中期・後期)、羊水検査 | 形の検査は赤ちゃんの成長に合わせて行う |
非確定検査で陽性となり、確定検査の結果を待つ時間まで考えると、早い時期から受けられる検査ほど、そのあとを考える時間に余裕が生まれます。当院のNIPTは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。検査ごとの時期の詳しい説明は出生前診断はいつからいつまで?にまとめています。
非確定検査の種類と特徴
非確定検査の4つは、「何を材料にしているか」で性格が分かれます。NIPTはDNAの断片、コンバインド検査とクアトロテストは血液中の物質(と超音波)、胎児ドックは超音波の画像です。材料が違えば、わかることも限界も違ってきます。
NIPT(新型出生前診断)
NIPTは、お母さんの血液に含まれるDNAの断片を調べる検査です。妊娠中の血液には、赤ちゃんに由来するDNAの断片が少量流れています。妊娠9〜10週ごろ以降に採血し、どの染色体に由来する断片がどれくらいあるかを数えて、特定の染色体が1本多い状態(トリソミー)の可能性を調べます[1]。検出率はダウン症候群(21トリソミー)で99.7%、18トリソミーで97.9%、13トリソミーで99.0%、偽陽性率はいずれも0.04%と報告されています[3]。ただし13トリソミーは調べられた例が少なく、検出率の幅は65.8〜100%と広くなっています[3]。
非確定検査の中では精度の高い検査ですが、限界もあります。調べているDNAの多くは、赤ちゃん本人ではなく胎盤に由来します。胎盤と赤ちゃんの染色体が食い違っていると、結果がずれることがあります。また、年齢の若い妊婦さんでは病気の頻度が低いため、陽性的中率が低くなる傾向があります[1]。NIPTでわかるのは染色体の変化の可能性であり、赤ちゃんの形の異常や、症状の程度まではわかりません[1]。認証制度のもとで対象とされているのは13・18・21トリソミーの3つで、それ以外を調べるNIPTは、施設や検査の種類によって範囲も精度も違います[1]。当院のNIPTは、プランによって微小欠失症候群や単一遺伝子疾患まで調べられます(下の章で説明しています)。検査の内容はNIPTのページで確認できます。
💡 用語解説:胎盤限局性モザイク(たいばんげんきょくせいモザイク)
染色体の変化が胎盤だけにあり、赤ちゃん本人にはない状態です。NIPTや絨毛検査は胎盤に由来する材料を調べているため、この状態があると検査は陽性でも赤ちゃんには変化がないことがあります。絨毛検査で染色体のモザイクが見つかったときは、羊水検査で確かめる必要があるとされています[1]。
コンバインド検査
コンバインド検査は、超音波検査と採血を組み合わせる検査です。妊娠11〜13週に、超音波で赤ちゃんの首の後ろのむくみ(NT)などを測り、採血でPAPP-AとhCGという2つの物質を調べます。そこにお母さんの年齢などを合わせて、13・18・21トリソミーの確率を計算します[1]。ダウン症候群の検出率は、偽陽性率を5%としたとき、妊娠11週で87%、12週で85%、13週で82%と報告されており、早い週数ほど高くなります[4]。
NIPTと比べると検出率は低く、偽陽性も多くなります。そのかわり、超音波を使うので、同じ機会に赤ちゃんの形を見ることができます。超音波検査は検査する人による差があるとされており[1]、NTの測定にも技術が必要です。費用や結果の見方はコンバインド検査とは?で詳しく説明しています。
クアトロテスト(母体血清マーカー検査)
クアトロテストは、妊娠15〜18週ごろに採血だけで行う検査です。血液中の4つの物質(AFP、hCG、uE3、インヒビンA)の量が、赤ちゃんにトリソミーなどがあると増えたり減ったりすることを利用します。そこに年齢なども加えて、ダウン症候群、18トリソミー、神経管閉鎖障害の確率を計算します[1]。ダウン症候群の検出率は、偽陽性率5%のときに81%と報告されています[4]。
NIPTより精度は低いものの、費用を抑えられること、二分脊椎などの神経管閉鎖障害の確率がわかることは、NIPTにはない特徴です。結果は「250分の1」のような確率で示されるので、数字の受け取り方がわかりにくい面があります。検査のしくみや結果の見方はクアトロテストとはにまとめています。
胎児ドック(胎児超音波検査)
胎児ドックは、超音波で赤ちゃんの心臓、脳、手足などの形を詳しく見る検査です。妊娠11週ごろ以降に、形の異常の確認を目的として行います[1]。妊婦健診でふだん行う超音波検査は、赤ちゃんの成長の確認などが目的で、形の異常を見つけることを目的にしたものではありません[1]。同じ超音波でも、目的が違う別の検査です。
超音波で見えるのは形であって、染色体そのものではありません。染色体の変化があると出やすい所見はありますが、それだけで染色体の病気を確定することも否定することもできません。反対に、NIPTでは形の異常はわかりません。胎児ドックとNIPTは調べているものが違うので、どちらかがもう一方の代わりになるわけではありません。また、超音波検査は技術の習得に時間がかかり、検査する人による差が一定程度あるとされています[1]。時期ごとに見られる内容は胎児ドックとはで説明しています。
確定検査の種類と特徴
確定検査は絨毛検査と羊水検査の2つです。どちらも超音波で赤ちゃんの位置を確かめながら、お腹に細い針を刺して細胞を採ります。違いは、採るものと、受けられる時期です。
絨毛検査
絨毛検査は、妊娠11〜14週に、胎盤のもとになる絨毛という組織を採って調べる検査です[1]。羊水検査より早い時期に受けられるので、結果を早く知りたいときの選択肢になります。採取した絨毛を用いて染色体検査を行い、検査目的に応じて染色体マイクロアレイ検査や特定の遺伝子検査などを追加することがあります。
一方で、国内で絨毛検査を行っている施設は限られています[1]。また、絨毛は胎盤になる組織なので、先ほどの胎盤限局性モザイクの影響を受けることがあります。絨毛検査でモザイクが見つかったときは、羊水検査であらためて確かめることになります[1]。検査の流れは絨毛検査についてで説明しています。
羊水検査
羊水検査は、妊娠15週以降に、羊水を採って調べる検査です[1]。羊水の中には赤ちゃんに由来する細胞が浮かんでいて、その細胞を用いて染色体を調べます。必要に応じて染色体マイクロアレイ検査、特定の遺伝子検査、感染症に関する検査など、目的に応じた検査を追加することがあります。
赤ちゃん本人に由来する細胞を調べるため、絨毛検査のように胎盤だけの変化に左右されにくいという特徴があります。受けられる時期は絨毛検査より遅くなります。検査でわかることや費用は羊水検査とは?に、2つの検査の選び方は絨毛検査と羊水検査の違いにまとめています。
流産リスクの考え方
確定検査の流産リスクは、資料によって数字が違います。国の報告書は、羊水検査で「およそ300分の1〜500分の1」、絨毛検査で「およそ100分の1」としたうえで、お腹から針を刺す方法の絨毛検査のリスクは羊水検査と同じ程度と報告されている、とも書いています[1]。
一方、2019年に発表された、複数の研究をまとめた解析では、検査を受けた人と受けなかった人を比べて、検査によって上乗せされる流産の割合は羊水検査で0.30%、絨毛検査で0.20%と見積もられました[5]。この解析は、これまで説明されてきた数字より実際のリスクは低い、と結論しています[5]。数字に幅があるのは、研究の年代や、比べ方が違うためです。どの数字をとっても流産のリスクは低いといえますが、ゼロではありません。この点が、確定検査を受けるかどうかを考えるときの判断材料になります。詳しくは羊水検査のリスクで説明しています。
🩺 院長コラム【数字は「誰の、いつのデータか」で変わります】
出生前診断の説明では、「検出率99%」「流産300分の1」といった数字がよく使われます。けれども、同じ検査でも、調べた集団や年代が違えば数字は変わります。羊水検査の流産リスクが資料によって違うのも、どちらかがまちがっているからではありません。
検査の数字は1つだけを切り取るのではなく、「誰を対象に、何と何を比べた数字なのか」まで確認することが重要です。陽性的中率が事前確率によって変わるように、検査の数字は集団についてのものです。ご自身の場合にどう当てはまるかは、検査前の遺伝カウンセリングで確認する内容です。
出生前診断はどれを受ける?選び方の考え方
「どれがおすすめですか」という問いに、全員に当てはまる答えはありません。国の報告書も、医療者が特定の検査へ誘導するのは適当でなく、まず妊婦さんが検査で何を知りたいのかを聞き取るべきだとしています[1]。米国産婦人科学会は、年齢にかかわらずすべての妊婦さんに、非確定検査と確定検査の両方の選択肢を示すべきであり、受けるか受けないかは説明を受けたうえで本人が決めること、としています[6]。ここでは、選ぶときの考え方を順に説明します。
何を知りたいかで選ぶ(染色体か、形か)
最初に分けて考えたいのは、染色体の変化を知りたいのか、体の形を見たいのか、です。ダウン症候群などの染色体の数の変化について知りたいなら、NIPT、コンバインド検査、クアトロテストが候補になります。心臓の形や手足など、体のつくりを見たいなら胎児ドックです。
この2つは重なりません。染色体に変化がなくても形の異常があることはありますし、形に異常が見えなくても染色体の変化があることもあります。「どちらか1つで全部わかる」検査はない、と考えておくと選びやすくなります。2つの違いと受ける順番は胎児ドックとNIPTの違いで詳しく説明しています。
妊娠週数で選ぶ
いまの妊娠週数で受けられる検査は限られます。妊娠9〜10週ごろならNIPT、11〜13週ならコンバインド検査や初期の胎児ドックも選べます。15週を過ぎるとコンバインド検査は受けられず、染色体の検査はNIPTかクアトロテスト、または最初から羊水検査、という選び方になります。
週数は「結果が出たあとの時間」にも関係します。非確定検査で陽性となった場合、確定検査を受けて結果を待つ時間が必要です。早い時期に受けられる検査ほど、そのあとの時間に余裕ができます。
精度・費用・体への負担の何を優先するか
非確定検査の中で精度を優先するならNIPT、費用を抑えたいならクアトロテスト、形もあわせて見たいならコンバインド検査や胎児ドック、というのが大まかな整理です。偽陽性率の違いは、確定検査を受けることになる人の数に関係します。偽陽性率5%の検査では、病気のない赤ちゃんの100人に5人が陽性となり、確定検査を受けるかどうかを考えることになります。
はじめから診断を確定させたい場合は、流産のリスクを理解したうえで確定検査を選ぶことになります。費用は施設によって違うので、検査の代金だけでなく、陽性だったときの確定検査の費用まで含めて確かめてください。検査ごとの費用は出生前診断の費用一覧にまとめています。
検査を組み合わせる考え方
調べるものが違う検査は、組み合わせて受けることができます。たとえば、NIPTで染色体の数の変化の可能性を調べ、胎児ドックで形を見る、という受け方です。国の報告書も、超音波で異常な所見が見つかったあとに遺伝学的な検査を行う場合と、遺伝学的な検査で陽性となったあとに超音波で赤ちゃんの状態を確かめる場合の、両方があるとしています[1]。
ただし、同じものを調べる検査を重ねても、情報が増えるとはかぎりません。たとえば、NIPTを受けたあとにクアトロテストでダウン症候群の確率を調べ直しても、精度の低い検査の結果が加わるだけです。組み合わせるなら、「染色体」と「形」のように、調べるものが違う検査どうしで考えます。
受けるかどうか自体を迷うとき
出生前診断は、受けなければならない検査ではありません。受けないという選択もあります。迷うときは、「結果が陽性だったらどうするか」を先に考えてみると、自分にとって検査が必要かどうかが見えやすくなります。国の報告書も、検査の結果が出る前に、対象となる病気のこと、育てるうえで利用できる医療や福祉のことを知っておく必要があるとしています[1]。
検査の前に行う遺伝カウンセリングは、こうした点を整理する場です。臨床遺伝専門医などの専門職が、検査でわかること・わからないことを説明し、ご本人とパートナーが自分たちで決められるようにします。NIPTを受けるかどうかの考え方はNIPTは受けるべき?でも説明しています。
非確定検査で「陽性」と出たら
非確定検査の陽性は、診断が確定したという意味ではありません。診断を確かめるには確定検査が必要です[1]。陽性と出たあとの流れは、おおよそ次のようになります。
陽性と出たときに実際に病気がある割合は、検査と病気の種類によって違います。日本でNIPTの臨床研究を行ってきた施設の集計(2013〜2019年、72,526件、受けた方の平均年齢38.4歳)では、陽性は1.77%、判定保留は0.4%でした[2]。陽性となって確定検査を受けた方のうち、実際に病気があった割合は、21トリソミーで約96%、18トリソミーで約88%、13トリソミーで約52%でした[2]。陽性でも実際には病気がない場合が一定数あるので、確定検査を受けずに結論を出すことはできません。当院では、陽性後の遺伝カウンセリングは何度でも無料で、確定検査まで院内で受けられます。
陰性の場合にも注意が必要です。確率は低いものの偽陰性はありえますし、その検査が対象にしていない病気があるかどうかは、陰性という結果からは何もいえません[1]。NIPTで陽性となったあとの進み方はNIPTで陽性だったらで説明しています。
ミネルバクリニックで受けられる検査
ここまでは一般的な説明でした。最後に、当院で受けられる検査を整理します。当院で行っているのは、非確定検査のNIPTと、確定検査の絨毛検査・羊水検査です。
NIPTは、妊娠9週以降は通常の検査として受けられます。妊娠6週から8週については、臨床研究として行っています。検査の前には、90分の受診枠の中で、常駐する臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行います。料金には4Dエコーが含まれており、採血の前に赤ちゃんの様子を確認します。これは検査の前に赤ちゃんの状態を確かめるためのもので、形の異常を詳しく調べる胎児ドックではありません。結果が出るまでの目安は基本10〜14日で、インペリアルプランの単一遺伝子の結果だけは3〜4週間かかります(ダイヤモンドプランは単一遺伝子も10〜14日)。
当院のNIPTは、三大トリソミーだけでなく、プランによって性染色体の数の異常、微小欠失症候群、単一遺伝子疾患まで調べられます。スタンダードプランから22q11.2欠失症候群などの微小欠失を、ダイヤモンドプランでは56、インペリアルプランでは最大155遺伝子・202疾患の単一遺伝子疾患を調べます。プランごとの範囲は下の章の表で比べられます。
確定検査は院内で行っています。羊水検査・絨毛検査は、主要な検査項目は3日以内に、マイクロアレイ検査は2週間ほどで結果が出ます。結果までの日数については確定検査の結果が早く出る理由で説明しています。
費用の面では、当院でNIPTを受ける方は全員、羊水検査の互助会(カトレア会、会費8,000円)に加入していただいており、陽性となった場合の確定検査の費用は互助会から補助されます(補助の上限はありません)。あわせて、流産で再検査ができず結果が出ない場合に備える互助会(安心検査結果保障制度、会費6,000円)にも加入していただきます。なお、当院は日本医学会の認証を受けた施設ではありません。認証の有無による違いはNIPTの認可(認証)施設と無認可施設の違いで説明しています。
🩺 院長コラム【検査の名前より先に決めておきたいこと】
出生前診断を調べると、どうしても「どの検査がいちばんよいか」に目が向きます。けれども、検査の種類を比べる前に決めておきたいことがあります。何を知りたいのか、そして結果が出たらどうするのか、の2つです。
非確定検査の「陰性」は、「何も心配がない」という意味ではありません。陰性は、その検査が調べた範囲について可能性が低いという結果です。調べていないことについては何も語っていません。この前提を知ったうえで検査を選ぶことが、結果を正しく受け取るために重要です。
ダウン症候群だけを調べればよいわけではない ― 子育ての負担と22q11.2
ここまで見てきたように、検査ごとに調べる範囲は決まっています。コンバインド検査やクアトロテスト、認証制度のもとでのNIPTが対象にしているのは、主にダウン症候群などの三大トリソミーです。では、三大トリソミーだけを調べれば十分なのでしょうか。2つの視点から考えます。
子育てのストレスと行動の問題
知的障害を伴う病気のお子さんのご家族を比べた研究では、スミス・マゲニス症候群、ウィリアムズ症候群、プラダー・ウィリー症候群のご家族は、ダウン症候群のご家族より子育てのストレスが高いと報告されています[7]。ストレスを最も強く左右していたのは、知的障害の程度よりも、攻撃的な行動や自傷などの行動の問題、睡眠の問題でした[7]。アンジェルマン症候群やスミス・マゲニス症候群では他人への攻撃的な行動が、コルネリア・デ・ランゲ症候群やスミス・マゲニス症候群、プラダー・ウィリー症候群では自傷が多いことが分かっています[8]。
こうした病気はどれも当院のNIPTで調べられます。スミス・マゲニス症候群、プラダー・ウィリー症候群、アンジェルマン症候群はすべてのプランで、コルネリア・デ・ランゲ症候群はダイヤモンドプランとインペリアルプランで、ウィリアムズ症候群はインペリアルプランと双子マックスプランで調べます。ダウン症候群だけを調べればよいのか、検査を選ぶ前に考えていただきたい点です。
22q11.2欠失症候群を調べる意味
22q11.2欠失症候群は、妊娠中の赤ちゃんのおよそ1,000人に1人にみられ、微小欠失症候群の中で最も多い病気です[10]。多くは親から受け継いだものではなく新しく起こる変化で、母親の年齢とは関係がありません[10]。心臓の病気、免疫の働きの低下、低カルシウム血症、口蓋裂、発達の遅れなどを伴うことがあり、自閉スペクトラム症を伴う割合も一般より高いと報告されています[10][11]。
米国臨床遺伝・ゲノム学会(ACMG)は、年齢にかかわらずすべての妊婦さんに、22q11.2欠失症候群のNIPTを提供することを提案しています[9]。生まれる前に分かっていれば、出産する施設の選び方や、生まれてすぐの心臓・カルシウム・免疫の検査など、赤ちゃんを迎える準備ができます。当院では、スタンダードプランから22q11.2欠失症候群を調べられます。ただし、微小欠失は数の異常より陽性的中率が低めなので、陽性のときは確定検査で確かめることが必要です。どこまで調べるかは学会のあいだでも考え方が分かれる項目なので、検査前の遺伝カウンセリングで一緒に考えます。
ダウン症候群だけで大丈夫? ― 「値段」ではなく「調べられる範囲」で選ぶ
「ダウン症候群だけが心配」という方は少なくありません。けれども、出生前検査で調べる病気は、どれも赤ちゃんとご家族の暮らしに大きくかかわるものです。そして、ご家族の子育ての負担を最も大きく左右するのは、知的障害の程度よりも、攻撃的な行動や自傷、睡眠の問題といった「行動の問題」だと分かっています[7]。こうした行動の問題を伴いやすい病気には、ダウン症候群ではなく、微小欠失症候群や単一遺伝子疾患が多く含まれます[7][8]。三大トリソミーだけを調べる検査では、これらの病気は調べられません。
出生前検査は、その後の人生を左右するかもしれない検査です。「安さ」だけで選んで大丈夫でしょうか。
三大トリソミーだけを調べる検査を仮に10万円とすると、1つの病気あたりは約3万3千円です。
当院のインペリアルプランは、全常染色体と性染色体の数の異常、92種類の微小欠失・重複、202の単一遺伝子疾患を調べます。性染色体の数の異常も含めて、数えられる病気だけで320になり、1つの病気あたりは約1,700円です。さらに、5Mbを超える欠失・重複はすべての染色体が対象なので、数えきれないほどの変化を調べていることになります。数えられる分だけでも、これだけの範囲を調べられます。
| プラン | 主に調べる範囲 | 数えた病気の数 | 1つの病気あたり |
|---|---|---|---|
| 三大トリソミーだけを調べる検査 (仮に10万円とした場合) |
13・18・21トリソミー | 3 | 約33,333円 |
| スタンダード (220,000円) |
13・18・21トリソミー、性染色体の数の異常、微小欠失6種類7疾患 | 14 | 約15,714円 |
| プレミアム (264,000円) |
13・18・21・15・16・22トリソミー、性染色体の数の異常、微小欠失12種類13疾患 | 23 | 約11,478円 |
| ダイヤモンド (407,000円) |
プレミアムの範囲+単一遺伝子56 | 79 | 約5,152円 |
| 双子マックス (440,000円) |
全常染色体の数の異常、92種類の微小欠失・重複、5Mbを超える構造異常 | 114+α | 約3,860円 |
| インペリアル (550,000円) |
全常染色体の数の異常、性染色体の数の異常、92種類の微小欠失・重複、5Mbを超える構造異常、単一遺伝子202疾患 | 320+α | 約1,719円 |
※価格は事前学習動画を見て来院した場合の当日割引後の税込価格です。最新の料金は料金ページをご確認ください。※病気の数は、数の異常・微小欠失・重複・単一遺伝子疾患を1つずつ数えたものです。性染色体の数の異常は4種類(ターナー症候群・クラインフェルター症候群・トリプルX症候群・XYY症候群)として数えています(性染色体を調べるのはスタンダード・プレミアム・ダイヤモンド・インペリアル。双子マックスは調べません)。5Mbを超える構造異常は数に入れていないため、双子マックスとインペリアルは実際にはさらに多くの変化を調べています。※「三大トリソミーだけを調べる検査」は計算のための仮の例で、特定の施設の価格ではありません。
ただし、病気の数が多いほどよい検査、というわけではありません。調べる範囲が広がれば、陽性になる可能性も、確定検査が必要になる場面も増えます。だからこそ、どこまで調べるかは検査前の遺伝カウンセリングで、ご家族の考えに合わせて選びます。
🏥 NIPTと確定検査を、正確な情報にもとづいて受けるために
どこまで調べたいかは、ご家族によって違います。90分の受診枠の中で、常駐する臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、どのプランが合うかを一緒に考えます。陽性の場合の確定検査(絨毛検査・羊水検査)も院内で行っています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 出生前診断には何種類ありますか?
大きく分けると、可能性を調べる非確定検査と、診断を確定する確定検査の2種類です。非確定検査にはNIPT、コンバインド検査、クアトロテスト(母体血清マーカー検査)、胎児ドック(胎児超音波検査)があり、確定検査には絨毛検査と羊水検査があります。合わせて6つを知っておけば、全体像はつかめます。
Q2. ダウン症候群だけ調べれば大丈夫ですか?
ダウン症候群だけを調べれば大丈夫、とは言えません。知的障害を伴う病気のお子さんのご家族を比べた研究では、スミス・マゲニス症候群、ウィリアムズ症候群、プラダー・ウィリー症候群のご家族は、ダウン症候群のご家族より子育てのストレスが高く、ストレスを最も強く左右していたのは知的障害の程度よりも行動の問題でした。こうした病気は三大トリソミーだけを調べる検査ではわかりません。当院ではスタンダードプランから22q11.2欠失症候群やプラダー・ウィリー症候群、アンジェルマン症候群などの微小欠失を、ダイヤモンドプラン・インペリアルプランでは単一遺伝子疾患まで調べられます。どこまで調べるかは、検査前の遺伝カウンセリングで一緒に考えます。
Q3. 出生前診断とNIPTの違いは何ですか?
出生前診断は、お腹の赤ちゃんの状態を生まれる前に調べる検査全体を指す言葉です。NIPTはその中の1つで、お母さんの血液に含まれるDNAの断片から、赤ちゃんの染色体の数の変化の可能性を調べる非確定検査です。NIPTだけで診断が確定するわけではなく、陽性のときは絨毛検査か羊水検査で確かめます。
Q4. コンバインド検査とNIPTはどちらがよいですか?
調べ方と精度が違うため、何を重視するかで変わります。ダウン症候群の検出率は、コンバインド検査が偽陽性率5%のときに82〜87%、NIPTは99.7%で偽陽性率0.04%と報告されています。一方、コンバインド検査は超音波を使うため、同じ機会に赤ちゃんの形も見ることができます。受けられる時期もコンバインド検査は妊娠11〜13週に限られます。
Q5. クアトロテストとNIPTはどっちがいいですか?
クアトロテストは妊娠15〜18週ごろの採血で、ダウン症候群・18トリソミー・神経管閉鎖障害の確率を出す検査です。ダウン症候群の検出率は偽陽性率5%のときに81%と報告されており、NIPTより精度は低くなりますが、費用を抑えられ、神経管閉鎖障害の確率がわかるという役割があります。NIPTは妊娠9〜10週ごろから受けられ、13トリソミーも対象です。
Q6. 胎児ドックとNIPTはどっちを受けるべきですか?
この2つは調べているものが違うため、片方がもう片方の代わりにはなりません。胎児ドックは超音波で心臓や脳、手足などの形を見る検査で、染色体の変化そのものは確定できません。NIPTは染色体の数の変化の可能性を調べる検査で、形の異常はわかりません。染色体を知りたいのか、形を見たいのかで選び、両方を組み合わせる方もいます。
Q7. 出生前診断はなぜ自費なのですか?
健康保険は病気やけがの治療に対して給付されるしくみで、希望して受ける出生前診断は対象になりません。そのため費用は全額自己負担で、金額は施設や検査の内容によって変わります。厚生労働省の資料(2020年)では、NIPTが約15〜20万円、母体血清マーカー検査が約2万円、絨毛検査・羊水検査が約10〜15万円と目安が示されています。
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参考文献
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- [2] 厚生労働省. 第4回 母体血を用いた出生前遺伝学的検査(NIPT)の調査等に関するワーキンググループ 資料1「構成員ヒアリングまとめ」. 令和2(2020)年7月22日. [厚生労働省]
- [3] Gil MM, Accurti V, Santacruz B, Plana MN, Nicolaides KH. Analysis of cell-free DNA in maternal blood in screening for aneuploidies: updated meta-analysis. Ultrasound Obstet Gynecol. 2017;50(3):302-314. [PubMed 28397325]
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※本記事は一般の方に向けた情報提供を目的とするもので、個別の診断・治療方針を示すものではありません。検査の費用や受けられる時期は施設によって異なります。






