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出生前診断・NIPT陽性後の中絶はいつまで?ダウン症などが確定するまでの逆算スケジュールと21週6日の期限

仲田洋美 医師

この記事の監修:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

「NIPTで陽性と言われた。中絶はいつまでできるのか、もう間に合わないのではないか」。結果を受け取った直後に、まず日付を数え始める方は少なくありません。最初に結論をお伝えします。日本で人工妊娠中絶ができるのは、母体保護法とそれにもとづく国の基準により妊娠21週6日まで(22週未満)です。そして、NIPTの陽性だけで決めることはできず、羊水検査や絨毛検査で確かめる時間が必要です。この記事では、法律上の期限、12週を境に変わる体と手続きの負担、そして「何週にNIPTを受ければ、何週までに結果が確定するか」の逆算を、臨床遺伝専門医の立場から順に解説します。

この記事でわかること
📖 読了時間:約15分
🩺 出生前診断・母体保護法
★ 臨床遺伝専門医監修
  • ➤出生前診断のあとの中絶はいつまでか(妊娠21週6日の根拠と週数の数え方)
  • ➤12週を境に変わること(中期中絶の方法・入院・死産届・出産育児一時金)
  • ➤NIPT陽性だけで決めてはいけない理由と、確定検査の種類・時期
  • ➤何週にNIPTを受けると、何週までに確定するかの逆算表
  • ➤ダウン症候群・18トリソミー・13トリソミーで陽性になったときの考え方

⏱️ 30秒でわかる要約

📅 Q. 出生前診断で陽性のとき、中絶はいつまで?

母体保護法にもとづき妊娠21週6日までです。12週以降は「中期中絶」となり、入院して分娩の形で行うほか、死産届の提出が必要になります。陽性なら確定検査で確かめる時間も見込む必要があります。

🧬 Q. ダウン症候群だけで大丈夫?

ダウン症候群は頻度の高い染色体の病気ですが、22q11.2欠失症候群(ディジョージ症候群)などの微小欠失や、一つの遺伝子の病気もあります。調べる範囲が広いほど、陽性のときに考える時間を早めに確保できます。

⏳ Q. 何週にNIPTを受ければ間に合う?

当院のNIPTは通常妊娠9週から(6〜8週は臨床研究として)受けられ、結果は基本10〜14日です。陽性なら院内で確定検査を行い、主要な項目は3日以内に結果が出ます。早く受けるほど、決めるための時間が残ります。

\ ダウン症候群だけで大丈夫? 調べる範囲から選びたい方へ /

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出生前診断の中絶はいつまで?法律上の期限は妊娠21週6日(22週未満)

結論:出生前診断の結果にかかわらず、日本で人工妊娠中絶ができるのは妊娠21週6日までです。22週0日以降は、どのような理由があっても中絶はできません。

陽性の結果を受け取ると、「あと何日あるのか」が真っ先に気になると思います。ただ、日付だけを数えて焦る前に、この期限がどこから来ていて、週数がどう数えられているのかを知っておくと、残された時間を正確に見積もることができます。期限そのものは法律で決まっていて、施設によって変わることはありません。変わるのは、そこまでに確定検査と決断が間に合うかどうかです。

母体保護法第2条と「22週未満」の根拠

母体保護法は、人工妊娠中絶を「胎児が、母体外において、生命を保続することのできない時期に、人工的に、胎児及びその附属物を母体外に排出すること」と定めています[1]。法律そのものには週数が書かれておらず、「母体の外で生きられない時期」がいつまでかは、国の通知で示されてきました。新生児医療の進歩に合わせてこの基準は早められ、1991年(平成3年)1月からは「妊娠満22週未満」とされています[2]。都道府県の案内でも、中絶を受けられるのは妊娠21週6日までと明記されています[3]。

また、中絶を行えるのは、都道府県の医師会が指定した母体保護法指定医師だけです。中絶が認められる条件は、「妊娠の継続又は分娩が身体的又は経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれのあるもの」と、暴行や脅迫などによる妊娠の2つで、原則として本人と配偶者の同意が必要です[1]。「胎児に病気があること」を理由とする条文(いわゆる胎児条項)は、母体保護法にはありません。出生前診断のあとの中絶は、妊娠を続けることや出産・養育が母体の健康に与える影響を、指定医師が判断したうえで行われています。

妊娠週数の数え方:気づいてからの時間は思ったより短い

妊娠週数は、最終月経が始まった日を「0週0日」として数えます。排卵や受精はその約2週間後なので、妊娠に気づいたときには、すでに4〜6週になっていることがほとんどです。月経周期が不規則な方は、超音波で測った赤ちゃんの大きさ(頭殿長)をもとに週数が修正されます。週数の数え方は妊娠週数の数え方と超音波検査での修正で詳しく説明しています。

「21週6日」と聞くと、まだ5か月以上あるように感じるかもしれません。しかし、NIPTを受けられるのは妊娠9週前後からで、結果が出るまでに約2週間、陽性なら確定検査に数日〜数週間かかります。期限までに使える時間は、妊娠に気づいてからの数か月のうち、ほんの一部だと考えてください。

💡 用語解説:母体保護法指定医師(ぼたいほごほう していいし)

人工妊娠中絶や不妊手術を行うことを認められた医師で、都道府県の医師会が指定します。中絶はこの指定医師がいる医療機関でしか受けられません。特に12週以降の中期中絶は入院設備が必要なため、対応できる施設がさらに限られることも、時間を見積もるうえで大切な点です。

12週が分かれ目:初期中絶と中期中絶の違い

結論:妊娠11週6日までは「初期中絶」、12週0日から21週6日までは「中期中絶」と呼ばれ、方法も体への負担も手続きも大きく変わります。

同じ「中絶」でも、12週を境に別のものと考えたほうが実態に近いといえます。出生前診断の結果を待つ多くの方は、確定するころには12週を超えています。だからこそ、12週の前に結果が出るかどうかが、体と気持ちの負担を左右するのです。

方法と入院

初期中絶では、子宮の内容物を吸い出す吸引法や、器具でかき出す掻爬法(そうはほう)が行われ、多くは日帰りです。日本では2023年4月に、妊娠63日(9週0日)以下を対象とする飲み薬による中絶(ミフェプリストンとミソプロストールの併用)も承認されました[6]。

一方、中期中絶では、子宮の出口(子宮頸管)を数日かけて広げる処置をしたうえで、子宮を収縮させる薬で人工的に陣痛を起こし、分娩の形で赤ちゃんを外に出します[12]。入院が必要で、陣痛の痛みを伴い、週数が進むほど時間がかかる傾向があります。子宮頸管を広げる処置についてはラミナリアはなぜ痛いのかで、中絶の方法全体は人工妊娠中絶とは?可能な週数や費用・術後についてで解説しています。

📋 初期中絶と中期中絶の違い

項目 初期中絶(〜11週6日) 中期中絶(12週0日〜21週6日)
主な方法 吸引法・掻爬法、飲み薬(9週0日まで) 子宮頸管を広げ、陣痛を起こして分娩
入院 多くは日帰り 入院が必要
死産届 不要 7日以内に提出が必要
火葬 不要 火葬・埋葬が必要
出産育児一時金 対象外 妊娠85日(4か月)以降は対象(22週未満は48.8万円)
産後休業 対象外 妊娠4か月以降の死産として対象

出典:母体保護法、厚生労働省・こども家庭庁通知、協会けんぽ、厚生労働省「女性にやさしい職場づくりナビ」ほか[1][4][5][6][7]

12週以降に必要な手続き

妊娠12週以降の中絶は、法律上「死産」として扱われます。死産があった日から7日以内に市区町村へ死産届を提出し、火葬の許可を受けて火葬を行う必要があります[4]。死産届の右半分は医師が書く死産証書で、届出は中絶を行った医療機関から説明を受けながら進めるのが一般的です。

お金の面では、健康保険の出産育児一時金が、妊娠85日(4か月)以降の人工妊娠中絶も対象にしています。ただし、22週未満の分娩は産科医療補償制度の対象外のため、支給額は50万円ではなく48.8万円です[5]。また、労働基準法の産後休業でいう「出産」は妊娠4か月以上の分娩で、死産も含まれます。産後6週間は働くことができないため[7]、職場に休業を伝える必要が出てきます。この点を気にして、できるだけ12週より前に結論を出したいと考える方もいます。

費用の目安

中絶の費用は自由診療で、施設ごとに異なります。中期中絶は入院と分娩を伴うため、初期中絶より高額になるのが一般的です。具体的な金額は、中絶を行う医療機関に確認してください。なお、当院でNIPTを受けた方が陽性となった場合の羊水検査の費用は、全員加入の互助会(カトレア会)で補助され、現在は上限がありません。確定検査の費用を理由に検査をあきらめる必要がないようにしています。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「何週まで」の前に「何週に確定するか」を考える】

「中絶はいつまでですか」という問いの答えは、21週6日という一つの日付です。けれども、実際に意味を持つのは、その日付から逆に数えて「何週に結果が確定するか」のほうだと考えています。12週の前に確定すれば日帰りの初期中絶を選ぶ余地がありますが、12週を過ぎれば入院・分娩・死産届という重い手続きが加わります。

だからこそ、NIPTは「受けるかどうか」と同じくらい「いつ受けるか」が大切です。産む・産まないのどちらを選ぶにしても、正確な診断を待つ時間と、ご家族で話し合う時間は削るべきではありません。その時間を検査の段階から確保することが、出生前診断にかかわる臨床遺伝専門医の役割だと考えています。

NIPTで陽性だけでは決めない:確定検査が必要な理由

結論:NIPTはスクリーニング検査です。陽性でも実際には病気がない「偽陽性」があるため、中絶を考える場合は必ず羊水検査または絨毛検査で確かめてください。

米国産婦人科学会(ACOG)も米国臨床遺伝・ゲノム学会(ACMG)も、母体血を使う検査で陽性となった場合は、確定検査を行わずに妊娠の継続を左右する決定をしないよう求めています[8][11]。NIPTで調べているDNAの多くは、赤ちゃん本人ではなく胎盤の細胞から血液中に出たものだからです。陽性の結果を受け取った直後の動き方はNIPT陽性だったらどうする?確率や羊水検査を専門医が解説にまとめています。

陽性的中率と偽陽性

NIPTの感度と特異度は、ダウン症候群では非常に高いことが大規模な解析で示されています[9]。それでも、「陽性と出た人のうち、本当にその病気がある人の割合」である陽性的中率は100%ではありません。陽性的中率は病気そのものの頻度に左右されるため、頻度の低い13トリソミーや18トリソミー、微小欠失では、ダウン症候群より低くなりやすいのです[8]。年齢が若い方ほど低くなる点も同じ理由です。

偽陽性の原因として多いのは、胎盤だけに染色体の違う細胞がある限局性胎盤モザイクです(限局性胎盤モザイク(CPM)と羊水検査の役割)。NIPTの精度の考え方はNIPTの精度・確率は?感度・特異度と陽性的中率で解説しています。陽性なら確定検査で確かめる、当院では確定検査まで院内で受けられる、という2点を覚えておいてください。

💡 用語解説:陽性的中率(ようせいてきちゅうりつ)

検査で陽性と出た人のうち、実際にその病気がある人の割合です。同じ精度の検査でも、もともとの頻度が低い病気ほど陽性的中率は下がります。くわしくは何故NIPTは非確定的検査なのか:感度・特異度と陽性的中率・陰性的中率をご覧ください。「陽性=確定」ではないことが、確定検査が必要な理由です。

羊水検査と絨毛検査:受けられる時期と結果が出るまで

確定検査には、胎盤のもとになる組織を採る絨毛検査と、赤ちゃんを包む羊水を採る羊水検査があります。絨毛検査は妊娠10〜13週ごろ、羊水検査は15週以降に行うのが一般的です[13]。15週より前の羊水検査は合併症が増えるため勧められていません。検査に伴う流産のリスクは、近年のメタ解析で羊水検査が約0.30%、絨毛検査が約0.20%と、以前いわれていたより低いと報告されています[10]。

絨毛検査は早い時期に受けられる一方で、胎盤の細胞を調べるため、まれに限局性胎盤モザイクの影響を受け、羊水検査で確かめ直す必要が出ることがあります[13]。どちらを選ぶかは、陽性になった項目と週数によって変わります。羊水検査の基本は羊水検査とは?わかること・費用・リスク・受ける時期で、羊水検査を受けずに中絶を決めることの危うさはNIPT陽性で羊水検査なしの中絶は危険?偽陽性の真実で解説しています。

🔬 NIPTと確定検査の違い

項目 NIPT 絨毛検査 羊水検査
検査の位置づけ スクリーニング 確定検査 確定検査
受けられる時期 当院は通常9週〜(6〜8週は臨床研究) 10〜13週ごろ 15週以降
方法 母体の採血 絨毛(胎盤のもと)を採取 羊水を採取
検査に伴う流産 なし 約0.20% 約0.30%
当院での結果まで 基本10〜14日 主要な項目は3日以内、マイクロアレイは2週間ほど

流産のリスクはSalomonら(2019)のメタ解析[10]、時期はACOG Practice Bulletin No.162[13]にもとづきます。

⚠️ NIPTの陽性だけで中絶を決めないでください

確定検査を受けずに中絶すると、実際には病気がなかった赤ちゃんを失う可能性があります。時間がないと感じるときほど、絨毛検査で早く確かめる、迅速検査で先に結果を得るといった方法があります。迅速検査については羊水検査の迅速検査(FISH・QF-PCR)とはをご覧ください。

何週に受ければ間に合う?NIPTから確定までの逆算表

結論:中絶の期限である21週6日から逆に数えると、NIPTは早く受けるほど決めるための時間が残ります。12週より前に結果を確定させたいなら、妊娠9週前後、できれば臨床研究として受けられる6〜8週での受検が目安です。

ここからが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。NIPTの陽性からの道のりは、①NIPTの結果を待つ、②陽性カウンセリングを受けて確定検査を予約する、③確定検査の結果を待つ、④結果をもとに決める、の4段階です。どの段階でも日数がかかり、転院が入るとさらに延びます。当院の日数で、受ける週ごとに見てみましょう。

① NIPT結果は基本10〜14日
▶
② 陽性カウンセリング確定検査の方法と日程を決める
▶
③ 確定検査主要項目は3日以内
▶
④ 決める21週6日までに

当院の日数で見る逆算表

⏳ NIPTを受ける週と、確定するまでの目安

NIPTを受ける週 NIPTの結果 陽性なら確定検査 確定(主要項目) 21週6日までの残り
6〜8週(臨床研究) 8〜10週 絨毛検査(11週ごろ〜) 11〜12週ごろ 約10週。初期中絶の範囲で考えられる可能性がある
9〜10週 11〜12週 絨毛検査(11〜13週) 12〜13週ごろ 約9週。多くは12週を超える
11〜12週 13〜14週 絨毛検査または羊水検査(15週〜) 14〜16週ごろ 約6〜7週
13〜14週 15〜16週 羊水検査 16〜17週ごろ 約5週
15〜16週 17〜18週 羊水検査 18〜19週ごろ 約3週
17週以降 19週以降 羊水検査 20週以降 1〜2週以下。決める時間がほとんど残らない

当院でNIPTから確定検査まで受けた場合の目安です。マイクロアレイ検査が必要な場合は確定までさらに約2週間、インペリアルプランの単一遺伝子の結果(3〜4週間)を待つ場合は1〜2週間後ろにずれます。絨毛検査で限局性胎盤モザイクが疑われ、羊水検査を追加する場合も日数が加わります。

表から分かるとおり、妊娠6〜8週の早期NIPTであれば、12週前に確定まで進められる可能性があります。早い時期に受けるNIPTの利点と注意点は早期NIPTとは|費用やメリット・デメリットで解説しています。一方、15週を過ぎてから受けると、陽性の場合に残る時間は3週ほどになり、中絶を行う医療機関の予約や入院の準備まで考えると余裕はほとんどありません。染色体の詳しい解析が必要な染色体マイクロアレイ検査を追加すると、さらに約2週間かかります。

転院や検査待ちで時間が延びる場面

NIPTを受けた施設で確定検査ができない場合、陽性の結果を持って別の医療機関を探し、予約を取り、改めて説明を受けることになります。この転院の段階で数週間が過ぎてしまうことは珍しくありません。確定検査の結果が出るまでに2〜3週間かかる施設もあります。当院では2025年6月から産婦人科を併設し、羊水検査・絨毛検査を院内で行っているため、転院の時間がかかりません。主要な項目は3日以内に結果が出ます。結果を早く返す理由はNIPT確定検査を最短で結果を出す理由でも説明しています。

羊水検査が受けられる15週まで待つのがつらい場合は、絨毛検査で早く確かめる方法があります。NIPT陽性で羊水検査まで待てない方へ|絨毛検査で早期確定診断も参考にしてください。

16週以降に受ける場合の注意

NIPTはそれより遅い時期でも受けること自体はできます。ただし、陽性だった場合に中絶という選択肢を検討する時間は、ほとんど残らないことを理解したうえで受ける必要があります。妊娠を続けることを前提に、生まれる前から心の準備や療育・医療の準備をする目的であれば、遅い時期のNIPTにも意味があります。何週まで受けられるかはNIPTはいつからいつまで?受検可能な期間と推奨時期をご覧ください。

ダウン症・18トリソミー・13トリソミーなどで陽性になったとき

結論:期限はどの病気でも同じ21週6日ですが、病気によって陽性的中率や、生まれたあとの経過が大きく異なります。結果の意味は、病気ごとに確かめる必要があります。

ダウン症候群(21トリソミー)は、知的障害や心臓の病気を伴うことがありますが、成人して地域で暮らす方も多い病気です。18トリソミー(エドワーズ症候群)と13トリソミー(パトウ症候群)は、心臓や脳などの重い合併症を伴うことが多く、妊娠中に流産や死産となることも少なくありません。一方で、近年は積極的な治療を受けて長く生きるお子さんの報告もあります。それぞれの病気については18トリソミー(エドワーズ症候群)とは、13トリソミー(パトウ症候群)とはで解説しています。

18トリソミーや13トリソミーは、前の章で述べたとおりダウン症候群より陽性的中率が低くなりやすいため、確定検査の意味がとりわけ大きくなります。また、22q11.2欠失症候群(ディジョージ症候群)のような微小欠失は、ダウン症候群より頻度は低いものの、心臓の病気、免疫や副甲状腺の働きの低下、発達の遅れなどに長い期間の医療と支援が必要になることがあり、ご家族の生活への影響は小さくありません(22q11.2欠失症候群の全体像)。微小欠失はトリソミーより陽性的中率が低めのため、陽性なら必ず確定検査で確かめます。

NIPTで陽性となった方のうち、どのくらいの割合が中絶を選んでいるかについては、NIPT陽性後の中絶率で国内外のデータとともに解説しています。数字はあくまで集団の傾向であり、あなたがどうすべきかを決めるものではありません。

産む・産まないを決めるための時間と相談

結論:産むことも、産まないことも、どちらも尊重される選択です。正確な診断と、病気についての正しい情報をもとに、ご家族で決める時間を確保してください。

確定検査で病気が確定したあとも、すぐに決めなければならないわけではありません。21週6日までの範囲で、病気の見通し、受けられる医療や福祉の支援、ご家族の状況を整理する時間を持つことが大切です。妊娠を続ける場合は、出産する施設や小児科と早めに連携することで、生まれたあとの医療に備えることができます。

当院でNIPTを受けて陽性となった方は、陽性カウンセリングを何度でも無料で受けられます。臨床遺伝専門医が、確定検査の結果の意味、病気の経過、妊娠を続ける場合と中絶を選ぶ場合のそれぞれで考えておくことを説明します。どちらかの選択に誘導することはありません。なお、当院は分娩や中絶は行っていません。中絶を選ぶ場合は、中絶を行う医療機関(母体保護法指定医師のいる施設)で受けることになり、特に中期中絶は対応できる施設が限られるため、早めに主治医と相談してください。

母体保護法では、中絶には原則として本人と配偶者の同意が必要です。ただし、配偶者が分からない場合、意思を示すことができない場合、妊娠後に配偶者が亡くなった場合は、本人の同意だけで足ります[1]。中絶のあとに起こりうる気持ちの変化については中絶後の心の反応|涙・罪悪感・安堵は普通?で、ダウン症候群と分かって中絶を選んだ方の視点はダウン症とわかり中絶しました。後悔の理由と専門医の視点で取り上げています。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【どちらを選んでも、確かな診断の上で】

出生前診断のあとの決断に、正解と不正解はないと考えています。大切なのは、その決断が不確かな情報ではなく、確定検査による正確な診断と、病気についての正しい理解の上に立っていることです。NIPTの陽性だけで急いで決めた選択は、あとから「本当にそうだったのか」という問いを残しかねません。

産むことを選ぶ方にも、産まないことを選ぶ方にも、同じように正確な情報が必要です。臨床遺伝専門医が運営するクリニックとして、検査の前の説明から、陽性のときの確定検査、その結果の説明まで、終始責任をもって支援することを大切にしています。

ミネルバクリニックのNIPTで時間を確保できる理由

結論:当院では、早い時期からNIPTを受けられ、陽性なら院内で確定検査まで進めるため、21週6日までの時間をできるだけ残すことができます。

  • ➤通常妊娠9週から受検でき、6〜8週は臨床研究として受けられます
  • ➤結果は基本10〜14日(インペリアルプランの単一遺伝子のみ3〜4週間)
  • ➤陽性なら羊水検査・絨毛検査を院内で実施。主要な項目は3日以内、マイクロアレイは2週間ほど
  • ➤陽性カウンセリングは何度でも無料。臨床遺伝専門医が常駐しています
  • ➤全員加入のカトレア会(8,000円)で羊水検査の費用を補助(上限なし)。安心検査結果保障制度(6,000円)は、再検査が必要なのに流産で再検査ができず結果が出ない場合に備える互助会です(どちらも消費税の対象外)

遠方の方はオンラインNIPTで、全国110か所の提携施設で採血を受けられます。施設を選ぶときは、陽性のときに誰が説明し、確定検査をどこで受けられるのかまで確認してください。選び方のポイントはNIPTクリニックの選び方にまとめています。

ダウン症候群だけで大丈夫? ― 「値段」ではなく「調べられる範囲」で選ぶ

ダウン症候群は頻度の高い病気ですが、赤ちゃんの病気はそれだけではありません。22q11.2欠失症候群などの微小欠失や、ヌーナン症候群などの一つの遺伝子の病気も、NIPTで調べられる範囲に入れることができます。原因となる遺伝子や染色体の変化の一部を調べられるため、自閉症や発達障害の原因の一部も対象になります(すべてが分かるわけではありません)。ダウン症候群以外の病気の全体像はダウン症だけじゃない!出生前診断で後悔しないための疾患の全体像で解説しています。

🧬 当院のNIPTプランと調べる範囲

プラン 染色体の数 微小欠失など 単一遺伝子 対象
スタンダード 13・18・21+性染色体 6種類7疾患 ― 単胎・双胎
プレミアム 13・18・21・15・16・22+性染色体 12種類13疾患 ― 単胎のみ
ダイヤモンド プレミアムと同じ 12種類13疾患 56遺伝子 単胎のみ
双子マックス 全常染色体 92種類+5Mb超の構造異常 ― 単胎・双胎
インペリアル 全常染色体+性染色体 92種類+5Mb超の構造異常 最大155遺伝子(202疾患) 単胎のみ

検査方式:スタンダード=標的捕捉濃縮法/ダイヤモンド=米国の3大遺伝子検査会社の一角が提供する新技術「COATE法」(SNP法とターゲット法の組み合わせ)※(COATE法のエビデンス)/インペリアル=低深度全ゲノムシーケンス+ターゲット法

※「3大遺伝子検査会社」は、遺伝性がんや周産期(出生前検査・保因者検査)を含む遺伝子検査全般を手がける米国の検査専業会社のうち、2025年通期の売上高が上位の3社を指します(各社の決算発表にもとづく当院調べ)。がん検診やリキッドバイオプシーに特化した会社は含みません。

「1つの病気あたり」で考えると、プランの違いが見えやすくなります。下の表は、仮に三大トリソミーだけを調べる検査を10万円とした場合と比べたものです。

📊 1つの病気(項目)あたりで考える

プラン 料金 調べる項目の数 1項目あたり
三大トリソミーのみ(仮) 100,000円 3 約33,333円
スタンダード 220,000円 13 約16,923円
プレミアム 264,000円 22 12,000円
ダイヤモンド 407,000円 78 約5,218円
双子マックス 440,000円 114+α 約3,860円
インペリアル 550,000円 320+α 約1,719円

料金は事前学習動画を見て来院した場合の当日割引後の税込金額です。項目の数は、染色体の数の異常・性染色体4種類・微小欠失(種類数)・単一遺伝子(疾患数)の合計で、「+α」は5Mb超の構造異常です。互助会の会費など、別途必要な費用があります。

🏥 陽性のときに考える時間を、検査の段階から確保するために

ミネルバクリニックは臨床遺伝専門医が運営し、NIPTの前の説明から、陽性のときの院内での確定検査、結果の説明まで、終始責任をもって支援します。

よくある質問(FAQ)

Q1. ダウン症候群だけで大丈夫?

ダウン症候群は頻度の高い染色体の病気ですが、22q11.2欠失症候群(ディジョージ症候群)などの微小欠失や、ヌーナン症候群などの一つの遺伝子の病気もあります。どこまで調べるかで陽性のときに確認できる範囲が変わるため、「値段」ではなく「調べられる範囲」でプランを選ぶことをお勧めします。

Q2. 出生前診断で陽性だった場合、中絶はいつまで可能ですか?

母体保護法にもとづき、妊娠21週6日(22週未満)までです。22週0日以降はどのような理由でも中絶はできません。陽性の場合は確定検査で確かめる時間も必要なため、実際に使える時間はさらに短くなります。

Q3. ダウン症で中絶できる期間は、ほかの病気と違いますか?

違いはありません。病気の種類にかかわらず、期限は妊娠21週6日までです。ただし病気によって陽性的中率や生まれたあとの経過が異なるため、確定検査の結果をもとに病気ごとの説明を受けてから考えることが大切です。

Q4. 胎児の病気を理由にした中絶は違法ですか?

母体保護法には胎児の病気を理由とする条文はありません。出生前診断のあとの中絶は、妊娠の継続や分娩が身体的または経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれがあるという条件にもとづき、母体保護法指定医師の判断で行われています。

Q5. NIPTが陽性なら、確定検査なしで中絶してもよいですか?

お勧めできません。NIPTはスクリーニング検査で、陽性でも実際には病気がない偽陽性があります。米国の学会も、確定検査を行わずに妊娠の継続を左右する決定をしないよう求めています。時間がない場合は、絨毛検査で早く確かめる方法があります。

Q6. NIPTは何週までに受ければ中絶に間に合いますか?

当院で確定検査まで受ける場合、9〜10週に受けると確定は12〜13週ごろ、13〜14週なら16〜17週ごろが目安です。12週より前に確定させたい場合は、臨床研究として受けられる6〜8週の早期NIPTが選択肢になります。15週以降に受けると、陽性のときに残る時間は3週ほどになります。

Q7. 12週を過ぎた中絶では、どんな手続きが必要ですか?

妊娠12週以降の中絶は死産として扱われ、7日以内に市区町村へ死産届を提出し、火葬を行う必要があります。健康保険の出産育児一時金の対象となり、22週未満の場合の支給額は48.8万円です。産後休業の対象にもなります。

Q8. 中絶をしたあと、次の妊娠に影響はありますか?

適切に行われた中絶で、次の妊娠ができなくなることは通常ありませんが、感染などの合併症が起きた場合は影響することがあります。体の回復を待ち、主治医と相談して次の妊娠を考えてください。くわしくは「中絶後は不妊になる?手術の妊娠への影響とリスク」で解説しています。

関連記事

参考文献

  • [1] 母体保護法(昭和23年法律第156号)第2条・第14条. [e-Gov法令検索]
  • [2] 国立保健医療科学院 掲載資料(厚生省, 1994)妊娠中期の人工妊娠中絶と22週未満への変更(平成3年1月1日から). [国立保健医療科学院]
  • [3] 埼玉県. 人工妊娠中絶に関する情報について. [埼玉県]
  • [4] 船橋市. 死産届(妊娠満12週以後の死産・7日以内). [船橋市]
  • [5] 全国健康保険協会(協会けんぽ). 子どもが生まれたとき(出産育児一時金). [協会けんぽ]
  • [6] 厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課長, こども家庭庁成育局母子保健課長. ミフェプリストン及びミソプロストール製剤の使用にあたっての留意事項について(依頼). 薬生薬審発0428第5号/こ成母第54号, 2023年4月28日. [通知PDF(埼玉県掲載)]
  • [7] 厚生労働省. 女性にやさしい職場づくりナビ「産前・産後の休業について」. [厚生労働省]
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※本記事は一般の方に向けた情報提供を目的とするもので、個別の診断・治療方針を示すものではありません。当院は分娩・人工妊娠中絶を行っていません。中絶については、母体保護法指定医師のいる医療機関にご相談ください。

プロフィール
仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続け、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、検査結果の数値そのものだけでなく、「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、日本人として異文化の中で生活した経験があります。価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。この経験は現在の診療においても、「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、36週6日で一人を死産した経験があります。その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、家族の未来に関わる重要な意思決定です。年齢や統計だけで判断するのではなく、医学的根拠と心理的支援の両面から、ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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