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出生前診断とは?種類やわかること、わからないことを解説

妊娠がわかり胎嚢や心拍が確認できると次に気になるのが、生まれてくる赤ちゃんの健康です。妊娠中は些細な変化に敏感になりますが、健康な赤ちゃんが生まれるかという悩みは出産するまで常につきものですよね。そのような不安を少しでも取り除くために出生前診断という検査があります。
今回は出生前診断とはどのような検査なのか、見分けられる障害について解説します。

出生前診断とは?

出生前診断とは、お母さんのお腹の中にいる胎児の発育や異常の有無を調べる検査です。出生前に胎児の状態や疾患等の有無を調べておくことで、生まれてくる赤ちゃんの状態に合わせた分娩方法を検討できます

また、出生前検査で赤ちゃんの疾患が見つかった場合には、設備の整った医療機関と連携しておくことで出生時に速やかな治療を目指せます。出生前診断は大きく分けると、非確定的検査と確定的検査の2種類があります。

非確定的検査の種類

非確定的検査には、以下の3つの方法があります。

● 超音波検査
NIPT
コンバインド検査
母体血清マーカー検査

それぞれの検査の違いは以下の通りです。

種類 超音波検査 NIPT コンバインド検査 母体血清マーカー
検査
検査方法 超音波装置を
腹部にあてる
母体の血液検査 超音波+
血液検査
母体の血液検査
検査対象 胎児の形態異常 21,18,13トリソミー 21,18トリソミー 21,18トリソミー

開放性神経管奇形

精度 98%前後 83%前後 80%前後
検査期間 妊娠4週〜 妊娠10週以降(*1) 妊娠11〜13週 妊娠15〜17週

*1 ミネルバクリニックでは妊娠6週から受けることができます
21トリソミーダウン症候群
※18トリソミー:エドワーズ症候群
※13トリソミー:パトウ症候群

1. 超音波検査

出生前診断の1つで、多くの妊婦さんが受けることになるのが超音波検査です。エコー検査とも呼ばれ、高い周波数の音波の反射波を利用して赤ちゃんの状態を映像化するものです。
超音波装置を腹部にあてて、赤ちゃんの映像を確認しながら診断を進めます。超音波検査は、とくに胎児の形態異常を発見するのに役立ちます。

胎児の手足の変形や変成、欠損などを早めに知ることができるため、どのような支援をしたらよいか赤ちゃんが生まれる前に準備ができるでしょう。
また、技術の高い医師が超音波検査を行うと、胎児の首後方の浮腫を測ることでダウン症かどうかを高精度で判断できます。
ただし、超音波検査は非確定的検査であり、母体への負担が少ない分、疾患や形態異常を確定することはできません。

2. NIPT(新型出生前診断)

ほとんどの施設で妊娠10週0日以降に行えるため、妊娠してからかなり早い時期に実施できるのが特徴です。妊婦さんの血液を採取して行います。
母体血液中にある胎児のDNAの断片を分析し、胎児が染色体異常や遺伝子異常症を持っているかどうかを判定します。
胎児への影響がなく、破水や流産のリスクがないのがメリットです。

NIPTは非確定的検査であるものの、検査制度が高いことでも知られています。出生前診断の検査精度は、検査結果が陽性で出産後に実際に陽性であった「感度」と、検査結果が陰性で出産後も陰性であった「特異度」によって判断され、数値が高ければ高いほど検査精度も高いことになります。
NIPTはダウン症候群に関して感度99.9%、特異度99.90%と非常に高い精度を誇っており、かなりの高確率で赤ちゃんの状態を知ることが可能です。(*2)ただし、NIPTの結果が陽性であった場合には、確定的検査を受けるか親御さんが判断しなければなりません。

*2 富山県|無侵襲的出生前遺伝学的検査について

3. 母体血清マーカー検査

妊娠11週〜13週6日に行える検査で、ダウン症候群や18トリソミー、開放性神経管奇形を胎児が持っている確率を算出できます。妊婦さんの血液を採取し、血液中のAFP, uE3, hCG, InhibinA 値という4つの成分を測定することにより、赤ちゃんが障害を持っている確率を算出します。
血液中の成分に加え、妊婦さんの年齢や体重、家族歴なども結果に影響を与えます。血液を分析した結果、カットオフ値と呼ばれる基準を上回ればスクリーニング陽性、下回ればスクリーニング陰性となります。ただし、母体血清マーカー検査も非確定的検査であり、母体に負担をかけずに検査できる一方、確定的なことが言えないデメリットがあります。

確定的検査の種類

確定的検査は、対象の検査を行うだけで疾患の診断の有無が確定する検査です。確定的検査に含まれる検査は以下の2つです。

羊水検査
絨毛検査

非確定的検査と異なり、お腹に針を刺して羊水や絨毛の細胞を採取するため、流産・死産のリスクを伴います。このようなリスクを避けるために、事前に非確定的検査を行う医療機関もあります。

羊水検査 絨毛検査
検査方法 母体の腹部に針を刺し、子宮内の羊水中に含まれる胎児の細胞を採取 母体の腹部に針を刺し、絨毛を採取し、胎児の染色体や DNA の変化を調べる
検査対象 染色体疾患全般 染色体疾患全般
精度 ほぼ100% ほぼ100%
流産リスク 約0.2〜0.3% 約1%

1. 羊水検査

羊水検査は、妊娠16週以降に受けられる検査方法で、お腹に針を刺して胎児を包んでいる羊膜の内部の羊水を採取し、染色体異常や遺伝子疾患の有無を調べるものです。羊水検査は確定的検査なので、疾患の診断を確定できるのが大きな特徴といえます。
非確定的検査で赤ちゃんが疾患や障害を持っている可能性が高いと判断された場合、羊水検査で診断を確定するのが一般的です。羊水検査を行えば、すべての病気を診断することはできないものの、胎児の染色体の変化については把握できます。

ただし、羊水検査はお腹に針を刺す手法であるため、妊婦さんへの負担が大きいのがデメリットです。
さらに、流産、破水、出血、腹痛、子宮内感染、早産などのリスクもあります。流産に関しては、約0.2〜0.3%の確率です。(*3)
また、羊水検査は他の非確定的検査と比べて検査費用が高く、15万円〜20万円かかる場合も少なくありません。

*3 厚生労働省|NIPT 等の出生前検査に関する専門委員会報告書

2. 絨毛検査

妊娠11週〜14週頃に受けられる検査手法の1つで、胎盤を形成する前の胎児由来の細胞「絨毛」を採取することで染色体異常を診断するものです。絨毛検査には経腹法と経膣法の2種類があり、胎盤がどの位置にあるかによって方法が変わります。
胎盤が子宮の前壁や底部にある場合には経腹法、胎盤が子宮の後壁や子宮頸部に近い部分にある場合には経膣法が用いられます。経腹法は麻酔後にお腹に針を刺して絨毛細胞を採取し、経膣法は絨毛生検鉗子を挿入して絨毛を採取していきます。

絨毛検査は、羊水検査と比べてやや安価で、採取する細胞の量が多いため遺伝子検査に向いている点がメリットです。加えて羊水検査よりも早い時期に、確実に検査結果が得られるメリットもあります。
ただし、羊水検査と同様妊婦さんには負担がかかり、流産や早産、出血、子宮内感染、破水などのリスクがあることは覚えておきましょう。流産にいたる確率は、羊水検査が約0.3%だったのに対し、絨毛検査は約1%とやや高くなっています。(*3)

出生前診断でわかる障害・わからない障害

出生前診断を行えば、赤ちゃんが生まれる前に形態異常や染色体異常などをある程度把握することができます。しかし、あらゆる病気や疾患が出生前診断でわかるわけではありません。出生前診断でわかる障害とわからない障害について見ていきましょう。

わかる障害1. ダウン症候群(21トリソミー)

染色体異常の1つで、発生頻度の高い先天性疾患と言われており、44本ある染色体のうち21番染色体のコピー数が多いことが原因となります。身体的特徴としては成長障害や筋肉の緊張低下などが挙げられ、臓器に障害を持つことも少なくありません。

わかる障害2. エドワーズ症候群(18トリソミー)

18番染色体のコピー数が多いことで発症する疾患で、成長障害や呼吸障害、摂食障害などの身体的特徴があります。子宮内での発育不全によって起こることが多く、流産や死産にいたるケースが多くみられます。

わかる障害3. パトウ症候群(13トリソミー)

染色体の13番目のコピー数が多いことで現れるのが、13トリソミー、別名パトー症候群です。パトー症候群では、ほとんどのケースで脳や臓器に欠損があり、流産や死産になる可能性が高くなります。無事に出産しても、生後1ヶ月になる前、または生まれた直後に亡くなる可能性が高い疾患です。

わかる障害4. ディジョージ症候群

トリソミーは染色体のコピーが多いことで現れる症状ですが、逆に染色体が少ないことで生じる疾患もあります。たとえば、ディジョージ症候群は、22番染色体の一部が削除されたことによって起こる疾患です。ディジョージ症候群は人によって現れる症状が大きく異なります。目立った影響を受けず、自分に染色体異常があることを知らない人もいれば、健康や発達に非常に重大な影響を受ける人もいます。

わからない障害1. 視覚障害

出生前診断ではさまざまな染色体異常などについて診断できますが、視覚障害については判断できません。視覚障害にはまったく見えない全盲や弱視、視野狭窄などいろいろなものがありますが、胎児の視力や視野について検査する方法はないため、視覚障害を出生前診断で判断するのは困難です。

わからない障害2. 聴覚障害

視覚障害と同様、聴覚障害も出生前診断で診断できません。聴覚障害には、まったく音が聞こえない全聾や、音が聞こえにくい難聴などがありますが、胎児の聴力を計測する方法がないため、聴覚障害を出生前診断で判断することはできないのです。

わからない障害3. 発達障害

自閉症や注意欠陥多動性障害などを含む発達障害も、出生前診断で診断することはできません。発達障害は染色体異常や形態異常ではなく、成長するにつれて徐々に症状が出てくるものです。一般的な出生前診断では、発達障害を診断することはできないとされています。

出生前診断の注意点

出生前診断は先天性疾患を診断するのに有効な手法ですが、注意すべき点もいくつかあります。では、出生前診断を受ける際の注意点を3つ見ていきましょう。

1. 出生前診断の目的を明確にしておくべき

出生前診断を受ける際の注意点は、どんな目的で検査を受けるのかを明確にしておくことです。出生前診断は、結果次第で親御さんに大きな不安を抱かせてしまう恐れがあります。どんな目的で出生前診断を受けるのかが明確でないと、ただ不安をいただいてストレスを抱えることになりかねません。
何らかの疾患を抱えている可能性があるのなら、治療法についてあらかじめ考えておくために検査を受けるのか、人工妊娠中絶を選択肢にするのかも検討しておかなければならないでしょう。

2. 費用が高額になる

出生前診断は費用が高額になることが少なくありません。
病院によっても異なりますが、非確定的検査の場合には3万円〜5万円前後、確定的検査の場合には10万円〜20万円前後の費用がかかると考えておくべきでしょう。さらに、陽性になった場合のカウンセリングを受けるケースでは、より多くの費用がかかることが予想されます。

3. 検査に制限があるケースもある

出生前診断の別の注意点は、検査に制約があるケースも少なくない点です。
たとえば、病院や施設によっては、検査を受けられる年齢に制限を設けている場合があります。出産時の年齢が35歳以上であることが条件になっていたり、遺伝子疾患を持っている可能性が高い妊婦さんに検査が限られていたりするかもしれません。加えて、すべての疾患を診断できないことも覚えておくべきです。

妊婦さんに寄り添う遺伝カウンセリング

出生前診断を希望し、胎児に異常が見つかった場合、「妊娠中から赤ちゃんの病気が分かったから、心の準備ができた」とポジティブに考える人もいれば、「妊娠中は赤ちゃんの異常について知らずに過ごしたかった」とネガティブに考える人もいます。
妊娠中は悩みや不安を抱きやすいため、納得できるまでパートナーやご家族と話し合いを行うことが大切です。妊婦さんに寄り添うために遺伝カウンセリングを利用する方法もあります。

遺伝カウンセリングとは、染色体異常に関する悩みや疑問に対して、臨床遺伝専門医である医師や遺伝カウンセラーが科学的な根拠を基に相談に乗ってくれるカウンセリングです。
ご自身だけでなくパートナーやご家族のサポートもしてくれるため、不安を感じる人はこのような専門のカウンセラーに相談するのもいいでしょう。

まとめ

出生前診断は検査は決してネガティブなものではなく、生まれてくる前から赤ちゃんのサポートができるように行われるものです。
それぞれのメリット・デメリットを理解した上で検査を受けることが大切です。

ミネルバクリニックでは妊娠9週から、ご希望の方には妊娠6週から受けていただける「スーパーNIPT」をご用意しております。基本検査や微細欠失症候群の偽陰性はゼロ、現在のところ、最も正確性の高いNIPT検査と言えます。
この第3世代のスーパーNIPTは、世界特許の企業である「Medicover genetics」とミネルバクリニックが独占契約しています。そのため日本で唯一、当院のみで検査可能です。より精度の高いNIPTを受けたいとお考えの妊婦さんは、ぜひご相談ください。

この記事の著者:仲田洋美(医師)

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ミネルバクリニックでは、以下のNIPT検査を提供しています。少子化の時代、より健康なお子さんを持ちたいという思いが高まるのは当然のことと考えています。そのため、当院では世界の先進的特許技術に支えられた高精度な検査を提供してくれる検査会社を遺伝専門医の目で選りすぐりご提供しています。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 (がん薬物療法専門医認定者名簿)、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医(臨床遺伝専門医名簿:東京都)として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

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