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神経管閉鎖障害の原因は?葉酸で予防できる?ダウン症との関係性も紹介

神経管閉鎖障害は妊娠初期(4週~7週頃)に発症する先天異常で、脳や脊髄の神経組織の発達に影響を及ぼし、知的障害や発達障害、運動障害の原因となります。
神経管閉鎖障害は複数の要因が重なって発症すると考えられており、葉酸不足が要因のひとつとしてあげられます。十分な量の葉酸を摂取することで発症リスクを下げることができます。今回は、神経管閉鎖障害の原因や症状、予防法、治療法、ダウン症との関係などについてわかりやすく解説していきます。

神経管閉鎖障害とは

妊娠して数週間すると胎児の臓器が作られ始め、脳や脊椎・脊髄のもとになる「神経管」も形成されます。神経管は平たい組織が丸まって筒状になることで作られるのですが、一部がうまく筒状にならず、開口部(穴)ができてしまうことがあります。これが神経管閉鎖障害と呼ばれる状態です。
通常であれば神経組織は神経管の内側で発育し、神経管の外側は膜や骨となって、神経組織をしっかりと覆って保護します。しかし、神経管閉鎖障害が生じた部分(開口部)では、神経組織が露出してしまって正常に発育せず、膜や骨も形成されないままとなります。
障害が比較的軽度であれば、開口部の上に皮膚が発達し、神経組織が皮膚に覆われた状態で生まれてきます。重度の場合は皮膚も形成されず、神経組織が完全に露出した状態で生まれてくるため、生後すぐに緊急手術で皮膚を閉じる必要があります。
神経管には発達して頭部になる部分と、脊椎・脊髄になる部分があります。頭部になる部分に神経管閉鎖障害が生じると頭蓋や脳の一部が正常に発育せず「二分頭蓋」となり、脊椎・脊髄になる部分に神経管閉鎖障害が生じると脊椎・脊髄の一部が正常に発育せず「二分脊椎」となります。

神経管閉鎖障害の原因:葉酸で予防できる?

神経管閉鎖障害の原因はまだ完全にはわかっていませんが、複数の要因が絡まり合って生じると考えられています。
その要因のひとつが、葉酸不足です。葉酸はビタミンBの一種で、DNAの合成や細胞の増殖に重要な働きをします。妊娠初期にはDNA合成や細胞増殖が盛んに行われ、そのおかげで神経管が発達します。この時期に葉酸が不足していると、神経管の形成に不具合が生じて神経管閉鎖障害になるリスクが高まります。食事やサプリから十分な量の葉酸を摂取することで、神経管閉鎖障害の発症リスクを下げることができます。葉酸は野菜や柑橘類、大豆などに多く含まれています。妊娠を計画している(妊娠する可能性のある)女性は、栄養バランスのとれた食事を心がけつつ、少なくとも妊娠1か月前から妊娠後の3か月間は毎日0.4mgの葉酸サプリを摂取するよう、厚生労働省が呼びかけています。
ただし、神経管閉鎖障害の発症には遺伝や抗てんかん薬の服用、ビタミンA過剰摂取など、葉酸不足以外のさまざまな要因が関係しているため、葉酸摂取だけで完全に神経管閉鎖障害を予防することはできません。また、葉酸が不足すると必ず神経管閉鎖障害になるというわけでもありません。

神経管閉鎖障害の症状

神経管閉鎖障害には4つの種類があり、症状の現れる部位、内容、程度が異なります。障害が軽度の場合、これといった症状が見られないこともあります。

神経閉鎖障害の種類

神経管閉鎖障害には4つの種類があります(下表)。日本人の場合、二分頭蓋はまれで、潜在性二分脊椎か顕在性二分脊椎となる場合が多いです。

潜在性(閉鎖性) 顕在性(開放性)
二分頭蓋 頭蓋骨に欠損があり、欠損部から神経組織が突き出し、皮膚に覆われてこぶ状になっている 神経組織や頭蓋骨・皮膚が発達せず、脳が作られない(無脳症
そのため、死産となるか、生後まもなく死に至る
二分脊椎 脊椎に欠損があり、欠損部の脊髄が損傷される
欠損部の脊髄は皮膚で覆われている
脊椎に欠損があり、欠損部の脊髄が損傷される
欠損部の脊髄は皮膚で覆われず、露出している

潜在性二分頭蓋の症状

潜在性二分頭蓋では、頭蓋骨の欠損部から神経組織が突き出し、皮膚で覆われてこぶ(脳瘤)ができます。欠損やこぶの大きさは場合によりさまざまです。欠損部周辺の脳に形成異常が生じたり、脳の中に髄液という液体が過剰にたまる症状(水頭症)が生じたりする場合が少なくありません。
こぶが大きくて大量の神経組織が突き出していたり、脳の形成異常や水頭症が生じたりしている場合、知能や認知機能の発達に遅れが生じ、知的障害や発達障害を招きます。こぶが小さく、脳の形成異常や水頭症などもなければ、正常に発達するケースが多いです。

潜在性二分脊椎の症状

脊椎(背骨)の中には脊髄という神経の束があり、脳からお尻の辺りまで伸びています。脊髄は脳からの信号を体の各所に伝えたり、体の各所からの信号を脳に伝えたりする役目を持ちます。二分脊椎では脊椎のどこかに欠損があり、脊髄に損傷が生じています。潜在性二分脊椎の場合は欠損部が皮膚で覆われており、皮膚が盛り上がってこぶになっていたり、逆にくぼんでいたり、異常な発毛が見られたりします。
生まれた直後は皮膚の異常以外の症状はとくに見られませんが、脊髄に損傷があり、そこから下の神経と脳がうまく交信できない状態であるため、次第に神経や筋肉の働きに問題が生じ、体の発達にも影響します。主な症状は、下半身の運動障害・感覚障害、脚の変形・左右差・痛み、膀胱・直腸障害(排尿困難、ひどい便秘、排尿・排便のコントロール不能など)です。

顕在性二分脊椎の症状

顕在性二分脊椎の場合、脊椎の欠損部が皮膚で覆われずに脊髄が露出した状態で生まれてきます。胎内にいるときから下半身の麻痺や膀胱・直腸障害が生じており、水頭症(髄液循環が障害されたために、頭蓋内に髄液が過剰に貯留して頭囲が拡大している状態)やキアリ奇形(脳の下部が脊椎の中に落ち込んで神経が圧迫される障害)を伴う場合が多いです。
水頭症が生じると、脳の損傷や発育障害につながります。キアリ奇形は重度の場合、哺乳や呼吸が困難になります(ただし重度のキアリ奇形が生じる例は多くありません)。

神経管閉鎖障害の診断と治療法

神経管閉鎖障害の確定診断は出生後に行われますが、出生前に障害の有無が判定できる場合があります。ここでは、診断方法と治療法について紹介します。治療は主に外科手術により行われます。

潜在性二分頭蓋の診断と治療法

潜在性二分頭蓋のこぶ(脳瘤)は、出生後に肉眼で確認できるほか、出生前のエコー検査で見つかることもあります。出生後にMRI検査でこぶの正体を確かめ、潜在性二分頭蓋の有無や程度を診断します。
こぶが小さく、発達に影響がないと考えられる場合は、治療が不要です。こぶが大きく、発達に影響があると予想される場合は外科手術を行い、正常な神経を残しながらこぶを取り除きます。水頭症があればその治療も速やかに行います。
こぶの皮膚が薄くて簡単に破れてしまいそうな場合や、皮膚に欠損が見られる場合は、生後すぐに外科手術を行います。そうしたこぶを放置すると、神経組織損傷や重い感染症の原因になります。こぶの皮膚がしっかりしている場合も、様子を見ながらできるだけ早めに手術を行います。

潜在性二分脊椎の診断と治療法

潜在性二分脊椎の病変は、出生後に肉眼で確認できるほか、出生前のエコー検査で見つかることもあります。出生前に検査した場合でも出生後にMRI検査で病変の正体を確かめ、CT検査で二分脊椎の程度や範囲を診断します。
病変部位の神経が周囲の組織に癒着する「脊髄係留」が起きている場合、早期に癒着を取り除く手術を行います。目立った症状がないからといって放置すると、成長期に癒着によって脊髄が引っ張られて損傷し、下半身の運動障害や排尿・排便障害が生じることがあるためです。
二分脊椎で損傷した脊髄そのものを治すことは今のところ不可能です。脊髄損傷による障害があってもできる限り良好に発育し、快適な生活が送れるよう、小児科・泌尿器科・整形外科・リハビリテーション科などの医師・看護師がチームを組んでサポートしていきます。

顕在性二分脊椎の診断と治療法

顕在性二分脊椎の場合は出生後に肉眼で診断できますが、脊髄や脳の状態を正確に把握するためMRI検査やCT検査を行います。出生前のエコー検査で水頭症が見つかった場合、胎児MRI検査や母体血液検査(αフェトプロテイン濃度測定)、羊水穿刺(染色体検査)などを行って二分脊椎かどうか診断します。
顕在性二分脊椎では神経組織が露出しているため感染症の危険が高く、生後すぐに(できれば生後48時間以内、遅くとも72時以内)に皮膚を閉じる手術(修復術)を行う必要があります。水頭症やキアリ奇形が生じている場合、修復術に続いてすぐにそれらの治療を行います。顕在性二分脊椎の場合、生まれつき下半身の麻痺や膀胱・直腸障害などがあるため、出生直後から障害に対する専門的なサポートが必要になります。

神経管閉鎖障害児の出産経験があるとダウン症の可能性が高まる?

イスラエルで神経管閉鎖障害児出産経験のある母親493名を対象にして行われた研究(*1)によると、神経管閉鎖障害の子供を出産した経験のある女性は一般的な女性にくらべてダウン症児を妊娠する可能性が5.8倍高くなることが明らかになりました。
またその反対にウクライナでダウン症児を出産した経験のある女性を対象に神経管閉鎖障害児を妊娠する可能性を調べたところ、ダウン症児を出産した経験のある女性は一般的な女性にくらべて神経管閉鎖障害児を妊娠する可能性が5.0倍高いという結果が出ました。こうしたことから、神経管閉鎖障害とダウン症の発症には何らかの関係があると考えられます。

*1:Barkai G, Arbuzova S, Berkenstadt M, et al. Frequency of Down’s syndrome and neural-tube defect in the same family. Lancet 2003; 361: 1331–1335

ダウン症の早期発見はミネルバクリニックのNIPT検査で!

出生前診断の一種であるNIPT検査では、母胎の血液を採取するだけでダウン症の可能性を調べることができます。神経管閉鎖障害児を出産した経験のある女性はダウン症児を妊娠する可能性が比較的高いため、NIPTの検討をおすすめします。

ミネルバクリニックでは妊娠9週から(ご希望なら6週から)の早期受検が可能

NIPTの受検は妊娠10週以降としている医療機関が多いですが、ミネルバクリニックでは妊娠9週0日から受検が可能です。より早期の受検を強く希望される方には、妊娠6週目から検査を実施しています。最先端(第3世代)の検査法を用いることで、早期受検でも高い精度の診断が可能となっています。できるだけ早期に受検することで、どのように検査結果を受け止め、その後の妊娠生活をどう過ごしていくかについて、じっくりと検討することができます。
ミネルバクリニックでは遺伝専門医による充実した遺伝カウンセリングも行い、検査前後の妊婦さんとご家族をサポートしています。また、ダウン症などを調べる基本3検査(13・18・21トリソミー検査)に加えて性染色体検査、微少欠失検査、100種類以上の遺伝子検査のメニューも用意し、妊婦さんの幅広いご要望・ご不安に対応しています。

まとめ

神経管閉鎖障害の発症には、葉酸不足以外にも遺伝や抗てんかん薬の服用、ビタミンA過剰摂取などのさまざまな要因が関係しています。そのため、葉酸摂取だけで完全に神経管閉鎖障害を予防することはできませんが、厚生労働省でも妊娠を計画している(妊娠する可能性のある)女性は、栄養バランスのとれた食事と葉酸の摂取が推奨されているので心掛けるようにしましょう。また、神経管閉鎖障害の治療法は程度や症状によってさまざまであるため、医師との相談の上、最適な治療法を検討するようにしましょう。
神経管閉鎖障害の確定診断は出生後に行われますが、出生前に障害の有無が判定できる場合もあります。そして、神経管閉鎖障害児を出産した場合にダウン症児を妊娠する可能性が比較的高い傾向にあることがわかっていますが、ダウン症の可能性もNIPTなどの出生前診断で判定することが可能です。NIPT検査にご興味のある方は、ミネルバクリニックにご相談ください。

この記事の著者:仲田洋美(医師)

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ミネルバクリニックでは、以下のNIPT検査を提供しています。少子化の時代、より健康なお子さんを持ちたいという思いが高まるのは当然のことと考えています。そのため、当院では世界の先進的特許技術に支えられた高精度な検査を提供してくれる検査会社を遺伝専門医の目で選りすぐりご提供しています。

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プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 (がん薬物療法専門医認定者名簿)、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医(臨床遺伝専門医名簿:東京都)として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

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