InstagramInstagram

中絶後の心の反応|涙・罪悪感・安堵は普通?専門医が科学的に解説

目次

仲田洋美 医師

この記事の監修:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医として遺伝医療に携わっています。

中絶のあと、後悔や罪悪感が消えない。涙が止まらない。その一方で、ほっとしている自分もいる。こうした気持ちの揺れは、心が壊れているしるしではありません。米国で667人の女性を5年間追いかけた研究では、後悔・罪悪感・悲しみといった感情は最初の2年で弱まり、その後は低い水準で落ち着いていました[4]。時間がたつほど否定的な感情が強まっていく、という傾向も見つかっていません[4]。ただし、誰にも話せない方や、決めるときに強く迷った方では、つらさが強く出やすいことも分かっています[4][10]。この記事では、追跡研究のデータをもとに、気持ちの見通し、「性格が変わった」と感じるときの考え方、男性(パートナー)の心理、そしてつらさが続くときの相談先までを順に整理します。

この記事でわかること
📖 読了時間:約14分
🩺 中絶後の心理・メンタルヘルス
★ 臨床遺伝専門医監修
  • ➤涙・罪悪感・安堵が同時にあるのはなぜか(1週間後の調査の数字)
  • ➤後悔や罪悪感はいつまで続くのか、5年間の追跡研究で分かっていること
  • ➤「性格が変わった」「気持ちが冷めた」と感じるときの考え方と、男性(パートナー)の心理
  • ➤うつ・PTSDとの違いと、胎児の病気が理由だった場合の悲嘆(グリーフ)
  • ➤受診の目安と、医療機関・自治体・電話の相談先

⏱️ 30秒でわかる要約

🕊️ Q. 中絶の後悔や罪悪感が消えません。一生続くのでしょうか?

同じ強さのまま続くとは限りません。667人を5年間追った米国の研究では、後悔・罪悪感・悲しみは最初の2年で弱まり、その後は低い水準で落ち着いていました。5年後に否定的な感情が中心だった方は6%でした。少数ですが、つらさが続く方がいることも事実で、その場合は支えを受けてよい状態です。

🌧️ Q. 中絶後に「性格が変わった」「相手への気持ちが冷めた」と感じるのはなぜ?

多くは性格そのものの変化ではなく、強いストレスのあとに起こる心と体の反応です。眠れない、いら立つ、涙もろい、何も感じない、といった形で出ます。2週間以上続いて生活に差しつかえるときは、心療内科・精神科に相談してください。

🤝 Q. 中絶後、男性(パートナー)はどんな気持ちでいるのですか?

男性にも、安堵と痛みの両方があると報告されています。胎児の病気が理由だった夫婦151組の調査では、つらさの差は男女でわずかで、出来事を考えないようにする傾向は男女で変わりませんでした。黙っていることは、何も感じていないことと同じではありません。

🆘 いま「消えてしまいたい」「死にたい」気持ちがある方へ

その気持ちは、一人で抱えなくてよいものです。受診の目安と相談先に、24時間つながる電話相談の番号をまとめています。命の危険が差し迫っているときは、迷わず119番に連絡してください。

1. 涙・罪悪感・安堵が同時にあるのは普通?

【結論】中絶後の感情は一つに決まりません。涙、罪悪感、後悔、不安がある一方で、安堵や「自分にとって必要な決断だった」という感覚が同時に起こることは、研究でも多く報告されています[2]。

いまこの文章を読んでいる方は、「泣いている自分はおかしいのでは」「一生引きずるのでは」と不安を抱えているかもしれません。最初にお伝えしたいのは、あなたは壊れていないということです。

中絶後の心は、大きな出来事を受け止めていく途中にあります。矛盾する感情が同居しても不思議ではありません。「安堵しているのに涙が出る」のは、心が分裂しているのではなく、複数の意味を同時に抱えている状態です。

📌 まず確認してほしいこと

涙が出る:「弱さ」ではなく、張りつめていた心と体がゆるんだ反応として起こります。
罪悪感:「冷たい人だから」ではなく、価値観や責任感が強い方ほど出やすい感情です。
安堵:望まない妊娠や将来への負担が軽くなり、ほっとするのは自然な反応です。
後悔:「決断が間違いだった」と同じ意味ではありません。後悔と、決断への納得は別のものです。

「混合感情」は珍しくありません

米国の30施設で中絶を受けた女性に、1週間後の気持ちをたずねた調査があります。安堵を感じた方は90〜96%でした。同じ調査で、悲しみは61〜68%、罪悪感は55〜62%、後悔は33〜41%の方が感じていました[2]。つまり、安堵と悲しみ、安堵と罪悪感を同時に感じている方が多数だったことになります。

この調査では、「後悔がある」と答えた方の89%が、それでも「自分にとって正しい決断だった」と答えています[2]。後悔があることと、決断に納得していることは、同じ人の中で両立します。

📊 中絶から1週間後に感じていた気持ち(複数回答)

気持ち 妊娠初期に受けた方 施設の週数上限に近い時期に受けた方
安堵 96% 90%
悲しみ 61% 68%
罪悪感 55% 62%
後悔 33% 41%
正しい決断だったと答えた方 中絶を受けた方全体で95%

出典:Roccaら(Perspect Sex Reprod Health, 2013)[2]。米国の30施設・2008〜2010年の調査です。日本とは制度や背景が異なるため、目安としてご覧ください。

反対に、後悔していない、罪悪感がないという方もいます。1週間後の時点で、気持ちが主に肯定的だった方は35%、主に否定的だった方は24%でした[2]。後悔や罪悪感がないことは、冷たいことでも、おかしいことでもありません。感じ方に「正解」はありません。

中絶後に「性格が変わった」と感じる・言われるとき

中絶のあと、「いら立ちやすくなった」「涙もろくなった」「何をしても楽しくない」「人に会いたくない」「相手に冷たくなった」と感じる方や、家族やパートナーから「性格が変わった」と言われる方がいます。多くの場合、これは性格そのものが変わったのではなく、強いストレスのあとに起こる心と体の反応として説明できます。

背景にあるのは、眠れない日が続くこと、緊張が抜けないこと、誰にも話せない負担、失ったものへの悲しみ、そして妊娠が終わったあとの体の変化です。こうした状態では、ふだんならできていた気づかいや我慢ができなくなり、まわりからは別人のように見えることがあります。

中絶を希望して受診した956人を5年間追った研究では、不安や抑うつ、自尊心、生活への満足度といった心の状態は、時間とともに良くなるか、変わらず保たれていました[6]。「変わってしまった自分は元に戻らないのでは」という心配に対して、多くの方では回復に向かうことを示すデータです。ただし、2週間以上続いて仕事や家事、人間関係に差しつかえるときは、うつ状態などが隠れていることがあります。受診の目安を確認してください。

💡 つらさが強くなりやすい背景

米国心理学会の報告書は、中絶後の気持ちの落ち込みが強くなりやすい背景として、まわりからの偏見を感じていること、秘密にしなければならないこと、決断への支えが少ないこと、もともと心の不調があったことなどを挙げています[10]。出来事そのものより、その人を取り巻く状況の影響が大きい、という整理です。

2. いつまで続く?時間経過の見通し

【結論】追跡研究では、中絶後の感情の強さは時間とともに下がり、年がたつにつれて否定的な感情が新しく強まっていくという傾向は確認されていません[3][4]。

「いつまで泣くのだろう」「いつ普通に戻れるのだろう」。その疑問はとても切実です。ここでは、個人差があることを前提に、研究で分かっている見通しを整理します。多くの方は、揺れながら少しずつ落ち着いていきます。

🕰️ 中絶後の気持ちの経過(追跡研究で報告されていること)

時期 研究で報告されていること 過ごし方のポイント
直後〜1週間 安堵・悲しみ・罪悪感が同時に出やすい時期です[2] まず休むことを優先します
1週間〜2年 肯定的な感情も否定的な感情も、少しずつ弱まっていきます[3][4] 波が来てもよい、と自分に許します
2〜5年 感情は低い水準で落ち着きます。5年後には84%の方が「主に肯定的」または「特に感情はない」と答えました[4] 節目の日につらくなるのは自然なことです
つらさが続く場合 5年後も否定的な感情が中心だった方が6%いました[4] 専門家の支えを受けてよい状態です

出典:Roccaら(2013・2015・2020)[2][3][4]。米国の調査で、対象は中絶を希望して施設を受診した女性です。集団の平均であり、一人ひとりの経過をそのまま表すものではありません。

後悔や罪悪感が消えない・一生続くのではと感じるとき

「中絶の後悔が消えない」「罪悪感は一生続くのか」と感じている方に、まず数字をお伝えします。米国の21州で667人を5年間追った研究では、後悔・罪悪感・悲しみ・怒りといった否定的な感情も、安堵や幸福感といった肯定的な感情も、最初の2年で弱まり、その後は横ばいでした[4]。3年間の追跡でも、否定的な感情の点数(0〜16点)は平均3.9点から1.8点へ下がっています[3]。

「正しい決断だった」と答える方の割合は、1週間後が97.5%、5年後が99.0%と推定されています[4]。時間がたってから後悔が新しく生まれてくる、という傾向は見つかっていません[4]。

一方で、5年後も否定的な感情が中心だった方が6%いました[4]。つらさが長く続く方は少数ですが、確かにいます。この研究では、決めるときに強く迷った方(「とても難しかった」「やや難しかった」と答えた方は合わせて54%)と、地域やまわりの人から否定的に見られると感じていた方で、否定的な感情が強く出ていました。その差は、時間とともに縮まっていきます[4]。

罪悪感や後悔を、無理に消そうとする必要はありません。感情が残っていることは、決断が間違っていた証拠ではなく、その妊娠と真剣に向き合った結果です。すでにお子さんがいて、家計や育児の事情から3人目をあきらめた、という場合も同じです。いまいる家族の暮らしを守るための決断だったことと、悲しみや罪悪感があることは、両立します。

「突然つらくなる」はおかしくありません

気持ちが落ち着いてきたと思ったのに、ある日急に涙が出る。出産予定日だった日、手術を受けた日、赤ちゃんを見かけたとき。こうした場面でつらさがぶり返すことは、多くの方が経験します。張りつめていた気持ちがゆるんだあとに、ようやく悲しみが出てくることもあります。波が来たときは「戻ってしまった」と自分を責めるより、回復の途中に起こる自然な揺れとして受け止めてください。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【泣いているあなたへ、最初に伝えたいこと】

中絶後の涙は、「弱いから」出るのではないと考えています。安堵と悲しみが同時にあることは、追跡研究でもはっきり示されています。矛盾して見える感情が同居するのは、むしろ自然なことです。

医師として大切だと考えているのは、「泣かないようにすること」ではなく、一人で抱え込まずにすむ形をつくることです。罪悪感があるのは、あなたがその妊娠を軽く扱わなかったからです。つらさが長引くときに専門家を頼ることは、弱さではなく、自分を守るための選択だと考えています。

3. うつ・PTSDが心配なときの科学的整理

【結論】質の高い研究をまとめた報告では、中絶を受けたことで、うつ病・不安症・PTSD(心的外傷後ストレス障害)になる危険が高まるとは言えないと結論されています[1]。つらさが強い場合は、もともとの不安、暴力、孤立といった背景も含めて支えを組み立てることが大切です。

「中絶したからうつになるのでは」「PTSDになったらどうしよう」。この不安に答えるには、比べる相手を正しく選ぶ必要があります。望まない妊娠そのものが大きなストレスになるため、「中絶を受けた人」と「妊娠を経験していない人」を比べても、中絶の影響は分かりません。そこで、同じように中絶を希望した人どうしや、同じ人の中絶の前後を比べた研究が参考になります。

🧠 中絶と心の病気について、主な研究が示していること

調べたこと 結果
うつ病・不安症・PTSD全体 全米アカデミーズの委員会は、中絶を受けることでこれらの危険は高まらないと結論しています[1]
精神科への初めての受診(デンマーク) 妊娠初期の中絶の前9か月は1,000人年あたり14.6、後12か月は15.2で、前後で差はありませんでした[9]
うつ病・不安症の診断(3年間) 3年間に医療者から診断を受けた方は、うつ病が9〜14%、不安症が10〜15%で、中絶を受けた方と受けられなかった方で差はありませんでした[8]
PTSDの症状(4年間) 中絶を受けた方は、受けられなかった方と比べてPTSDの危険が高くありませんでした。症状は時間とともに減っていました[5]
死にたい気持ち(5年間) 週数の上限に近い時期に中絶を受けた方で、1週間後に1.9%、5年後に0.25%でした。中絶を受けられずに出産した方との差はありませんでした[7]

米国心理学会の報告書も、望まない妊娠をした成人女性が妊娠初期に1回の中絶を受けた場合、心の不調が起こる危険は、その妊娠を続けて出産した場合と比べて高くないとしています[10]。いずれも海外の研究です。

PTSDの症状を4年間追った研究では、中絶を希望して受診した1週間後の時点で、39%の方に何らかの心的外傷後ストレス症状がありました(中絶を受けられなかった方を含む数字です)。ただし、症状がある方にその原因をたずねると、暴力や虐待の経験が30%、暴力以外のパートナーとの関係の問題が20%で、今回の妊娠を挙げた方は19%でした[5]。つらさの原因が、中絶そのものではなく、その前からあった出来事や関係にあることは少なくありません。

「つらい」=精神疾患 ではありません

🧠 心の反応の整理

抑うつ:気分の落ち込み、何もする気が起きない、涙もろさが続く状態です。
PTSD:強い出来事のあとに、その場面がよみがえる(フラッシュバック)、関係するものを避ける、常に緊張している、といった状態が1か月以上続くものです。
大切なこと:中絶後に「つらい」ことはありますが、それだけで病気だと決めつける必要はありません。
受診の目安:日常生活が回らない、死にたい気持ちがある、つらさが2週間以上続く場合は、早めに相談してください。

⚠️ 「中絶後遺症候群」という言葉について

「中絶後遺症候群」「中絶後症候群(PAS)」という言葉を見かけることがありますが、米国精神医学会の診断基準(DSM)にも、世界保健機関の国際疾病分類(ICD)にも、この名前の病名はありません。名前がないからといって、あなたのつらさが「ないもの」になるわけではありません。つらさは一人ひとりの背景(暴力、強いストレス、孤立、もともとの不安やうつ)の影響を強く受けます[10]。病名に当てはまるかどうかより、いま困っていることを相談することが先です。

つらさが長引きやすい背景要因

背景 具体的な内容
心の状態 もともとの不安・うつ・つらい体験の記憶/眠れない状態が続く/自分を責める考えが止まらない
環境・関係 誰にも話せない(秘密を抱える負担)/支えてくれる人が少ない/暴力や支配が背景にある
決めるまでの経過 迷いが大きかった/決断を急かされた/自分の価値観との葛藤が強い/その妊娠を望んでいた

米国心理学会の報告書は、中絶後の心の状態を最も強く左右するのは、中絶の前の心の健康状態だったとしています[10]。当てはまるものがある方は、早めに相談先を一つ決めておくと安心です。

4. 胎児の疾患を理由にした中絶は、心の構造が違います

【結論】胎児の病気や重い異常を理由とする中絶は、望んでいた妊娠を手放す体験であり、「喪失(グリーフ)」としての重みが大きくなります。これは「あなたが弱いから」ではなく、背負っている意味が違うためです。

このテーマで苦しんでいる方の中には、「本当は産みたかった」「守りたかった」という思いを抱えながら、とても難しい決断をされた方がいます。診断を聞いた衝撃、思い描いていた未来が崩れる体験、自分で決めたという重み。これらが重なると、強い悲嘆や、心的外傷後ストレスに似た症状が出ることがあります。こども家庭庁も、流産・死産・人工妊娠中絶を含む周産期の死は、近親者との死別の中でも特に悲嘆が強いとしています[17]。

オランダで、胎児の異常のために中絶した女性147人を追った研究があります。心的外傷後ストレスの症状が基準を超えていた方は、4か月後に46%、16か月後に20.5%でした。抑うつは4か月後に28%、16か月後に13%です[13]。数字は大きいですが、時間とともに半分以下に減っています。中絶から2〜7年たった女性196人の調査では、心的外傷後ストレスが基準を超えていた方は17.3%、悲嘆が基準を超えていた方は2.6%でした[11]。

決断への後悔は多くありません。「強い後悔がある」と答えた方は16か月の時点で2.7%[13]、2〜7年後の調査で「後悔がある」と答えた方は8%でした[11]。深く悲しんでいることと、決断を後悔していることは別のものです。

🕯️ 喪失(グリーフ)としての中絶

強い悲嘆:「いなくなった」ではなく「手放した」という感覚が、自分を責める気持ちを強めることがあります。
孤独:まわりに理解されにくく、言葉にできない悲しみとして抱え込みやすくなります。
次の妊娠への不安:また同じことが起きるのでは、という怖さが強まることがあります。
支え方:「中絶後のケア」としてではなく、赤ちゃんを亡くした方へのグリーフケアとして扱うことが助けになります。

つらさが強くなりやすいのは、妊娠週数が進んでからの中絶、パートナーの支えが少ないと感じている場合、決めるときの迷いが大きかった場合です[11][13]。また、4か月の時点でつらさが強い方は、その後も長引きやすいことが分かっています[13]。数か月たっても眠れない、場面がよみがえる、という状態が続くときは、早めに専門家へつないでください。

「一般よりきつい」の言い換え

比べる点 望まない妊娠での中絶 胎児の病気が理由の中絶
中心にあるもの 危機が終わり、生活を立て直す 喪失、思い描いた未来が崩れる
感情 安堵が前に出やすい[2] 悲嘆と自分を責める気持ちが強くなりやすい[11][13]
支え方 情報の整理と、必要に応じた相談 グリーフケア(赤ちゃんを亡くした方への支え)
かける言葉 「自分を責めなくていい」 「悲しんでいい」

「一般よりつらい」というより、背負っている意味が違うと考えるほうが正確です。あなたの悲しみは弱さではなく、喪失に対する自然な反応として、ていねいに扱われるべきものです。出生前診断のあとの気持ちの整理はダウン症とわかり中絶しました。後悔の理由と専門医の視点で、次の妊娠への怖さは次の妊娠が怖い方へ|再発率とNIPTでわかることと羊水検査陽性での中絶から次の妊娠へで、それぞれ詳しく扱っています。

5. 体の回復とホルモン変化も心に影響します

【結論】中絶後の涙もろさや気分の不安定さは、心だけの問題ではありません。妊娠が終わったあとの体の変化や、痛み、出血、眠れなさが、不安やいら立ちを強めることがあります。

「気持ちの問題だから我慢しなければ」と思わないでください。妊娠が終わると、妊娠を支えていたホルモンの量が下がっていきます。この変化が気分に影響することがあると考えられています。体が回復の途中にあるとき、心も揺れやすくなります。とくに睡眠不足は、不安や落ち込みを強めます。まずは体の回復を優先してよい時期です。

体の症状が長引くと不安が強まることがあります

症状 手術を受けた医療機関に相談する目安
出血 量が多い、強い腹痛や発熱を伴う、説明された期間を過ぎても続く
痛み 日常生活が難しいほどの痛みが続く、だんだん強くなる
睡眠 眠れない日が続き、気持ちが追い詰められている
食欲 ほとんど食べられない状態が続く

出血や痛みが続く期間は、手術の方法や妊娠週数によって違います。手術を受けた医療機関で説明された目安を基準にし、気になるときは遠慮なく連絡してください。体の不調が続くと不安は強まりやすく、体のケアは心のケアでもあります。手術の方法や術後の経過は人工妊娠中絶とは?可能な週数や術後についてで、今後の妊娠への影響は中絶後は不妊になる?手術の妊娠への影響とリスクで解説しています。

「自分を責める声」が強いとき

罪悪感が強いとき、頭の中で自分を責める声が止まらなくなることがあります。そういうときは、反論してねじ伏せようとするより、「いま、責める声が出ている」と気づくことが助けになります。苦しいときほど、まず「休む」「食べる」「眠る」を小さく整えることが回復を支えます。

🌿 生活を守る小さな工夫

✓ 睡眠を最優先にする(夜に眠れない日は昼寝でもかまいません)
✓ 水分と、少しでも食べられるものを確保する
✓ 刺激の強い情報(SNS・掲示板・知恵袋の書き込み)から距離を置く
✓ 相談先を一つ決めておく(医療機関・自治体の窓口・電話相談)

6. 今日からできる心のケア(押しつけない形で)

【結論】回復に近道はありませんが、「孤立を減らす」「体を整える」「考えを一度外に出す」ことは、つらさを軽くする助けになります。どれも無理にする必要はなく、できるところからで大丈夫です。

「何をすればいいのか分からない」ときは、できそうな小さなことを一つ選ぶだけで十分です。いま必要なのは、がんばることではなく、心が安全なところへ戻るための手すりです。英国の診療指針も、中絶のあとにさまざまな感情が起こるのはよくあることだと伝えたうえで、家族や友人の支え、同じ経験をした人の集まり、カウンセリングなどを必要に応じて利用できるようにすることを求めています[16]。

考えが止まらないときの「外に出す」方法

✍️ 書くこと

頭の中でくり返している考えを紙に移すと、少し距離が取れます。誰にも見せなくてよいので、本音が出やすくなります。「今日の体調」「今日の気持ち」を一行だけ書く、という形でも十分です。

男性(パートナー)の心理と、二人の気持ちがすれ違うとき

「中絶のあと、相手が何も感じていないように見える」「相手への気持ちが冷めてしまった」。そう感じる女性は少なくありません。反対に、男性の側が「自分には悲しむ資格がない」「どう声をかけてよいか分からない」と悩んでいることもあります。

男性の気持ちを調べた研究は多くありませんが、分かっていることがあります。スウェーデンで、パートナーが中絶を受けた男性26人に4か月後と12か月後に話を聞いた研究では、ほとんどの男性が女性の決断を受け入れており、中絶を「ほっとした」「責任ある行動だった」と感じる一方で、「痛みを伴う、倫理的に難しい出来事」とも感じていました[14]。男性の中にも、安堵と痛みが同時にあります。

胎児の病気が理由だった夫婦151組を2〜7年後に調べたオランダの研究では、悲嘆や心的外傷後ストレスの男女の差はわずかでした。心的外傷後ストレスが基準を超えていた方は男性4.9%・女性14.7%、抑うつは男性8.2%・女性11.0%で、どちらも統計的にはっきりした差ではありませんでした。つらさの点数は多くの項目で女性のほうが高かったものの、その出来事を考えないようにする「回避」の点数は男女で変わりませんでした[12]。黙っていること、話題にしないことは、何も感じていないことと同じではありません。

🤝 パートナーの方へ

胎児の病気が理由だった方の研究では、女性の回復に関わる要因の一つが、「パートナーに支えられている」と感じられるかどうかでした[11][12][13]。特別な言葉は必要ありません。通院に付き添う、話をさえぎらずに聞く、解決策を急がない、家事を引き受ける。それだけで十分な支えになります。あなた自身がつらいときは、あなたも相談してかまいません。

中絶後に相手への気持ちが冷めたと感じるとき

気持ちが冷める背景には、相手の言動への怒り(付き添ってくれなかった、他人事のようだった)や、悲しみ方の違いがあります。一人は話したい、もう一人は考えたくない。この違いが、「分かってもらえない」という距離を生みます。

米国で、中絶を希望して受診した女性862人を2年間追った研究では、妊娠した時点で相手の男性と交際していた方は80%、受診の1週間後は61%、2年後は37%でした。ただし、2年後に交際が続いている割合は、中絶を受けた方と、受けられずに出産した方とで差がありませんでした。関係の質にも差はありませんでした[15]。関係が終わることは珍しくありませんが、「中絶したから関係が壊れた」とは言えない、という結果です。

気持ちが揺れている時期に、関係をどうするかの結論を急ぐ必要はありません。体と心が落ち着いてから考えても遅くありません。二人では話がこじれるときは、第三者を交えるのも一つの方法です。妊娠や検査をめぐって二人の意見が合わないときの話し合い方は、出生前診断で夫婦の意見が割れたら|後悔しない話し合いの進め方でも紹介しています。

7. 受診の目安|「我慢しない」ための基準

【結論】つらさが強いときは、早めに相談してかまいません。とくに、眠れない・食べられない・仕事や家事が回らない状態が続く場合は、専門家の支えが回復を助けます。

「この程度で相談していいのだろうか」と感じる方ほど、一人で抱え込みやすくなります。判断の助けになるよう、具体的な目安を整理します。

受診を考えるサイン

サイン 目安 相談先
眠れない 数日〜2週間続く 心療内科・精神科、またはかかりつけ医
食べられない ほとんど食べられない状態が続く かかりつけ医(体の状態も含めて)
落ち込み・涙 2週間以上続き、仕事や家事に差しつかえる 心療内科・精神科
場面がよみがえる 何度も起こり、日常に支障がある 心療内科・精神科(トラウマのケアも含めて)
死にたい気持ち ある すぐに医療機関または下の電話相談へ

つらい気持ちが続くときの相談先

かかりつけ医・手術を受けた産婦人科:体の回復の確認とあわせて、気持ちのつらさも伝えてください。必要に応じて専門の医療機関を紹介してもらえます。

精神科・心療内科:眠れない、落ち込みが続く、場面がよみがえる、といった症状の治療を担当します。「受診=重い病気」という意味ではありません。

自治体の相談窓口:こども家庭庁は、流産・死産・人工妊娠中絶を経験した方のための都道府県等の相談窓口一覧を公開しています[17]。各地の「性と健康の相談センター」でも相談できます。

🆘 死にたい・消えてしまいたい気持ちがあるとき

次の電話相談は、厚生労働省が案内している窓口です[18]。
よりそいホットライン:0120-279-338(24時間対応・無料)
#いのちSOS:0120-061-338(24時間365日・無料)
いのちの電話:0120-783-556(毎日16時〜21時、毎月10日は午前8時〜翌日午前8時・無料)
こころの健康相談統一ダイヤル:0570-064-556(受付の曜日・時間は都道府県によって異なります)
命の危険が差し迫っているときは、119番に連絡してください。

8. 出生前診断(NIPT・確定検査)と中絶の関係を整理

【結論】出生前診断は、「知ること」そのものが目的ではありません。結果の意味を正確に理解し、どの選択をしても支えを受けられることが大切です。

中絶後の心の反応の背景に、出生前診断が関わっていることがあります。「検査の意味をよく分からないまま決めてしまったのではないか」という思いが、後悔を強めている方もいます。ここでは、検査の位置づけを短く整理します。当時の自分を責めるためではなく、何が分かっていて、何が分からなかったのかを確かめるための整理です。

📌 検査の位置づけ

NIPTでわかること:NIPT(新型出生前診断)は、お母さんの血液に含まれる胎盤由来のDNAの断片を調べ、染色体の変化の「可能性」を調べる検査です。
NIPTでわからないこと:NIPTは診断を確定する検査ではありません。
確定検査:診断を確定するのは、羊水検査・絨毛検査です。

用語を短く整理します

用語 意味
陽性的中率 検査が陽性だったとき、本当にその病気である確率のことです
確定検査 可能性ではなく、染色体の変化があるかどうかを確かめる検査です。出生前では羊水検査・絨毛検査が中心です
モザイク 同じ体の中に、染色体の構成が違う細胞が混ざっている状態です
遺伝カウンセリング 検査の意味や選択肢について、専門家から説明を受け、自分で決めるための支えを受ける場です

⚠️ 知る権利と、知らないでいる権利

出生前診断でどこまで調べるかについては、国際的にも議論があります。知る権利と同じように、知らないでいる権利も尊重されるべきものです。どちらを選んでも、責められる理由はありません。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「あのとき」の自分を、いまの知識で裁かない】

出生前診断の結果は、出た瞬間から、ご家族の人生に関わります。だからこそ、検査では早さよりも正確さを優先すべきだと考えています。結果を伝えて終わりにせず、その意味と次の選択肢まで説明することが、医療の役割です。

そして、すでに決断を終えた方にお伝えしたいのは、当時のあなたは、当時の情報と状況の中で考え抜いて決めた、ということです。あとから得た知識で、あのときの自分を裁く必要はないと考えています。後悔は、間違いの証明ではありません。それだけ大切に思っていたことの表れです。

9. ミネルバクリニックの支援体制(当院受検者の心の安全を最優先)

はじめにお伝えしておくと、ミネルバクリニックは人工妊娠中絶を行っていません。また、うつ状態やPTSDなど、中絶後の心の不調そのものの治療は、精神科・心療内科が担当します。いま、つらさが強い方は、受診の目安と相談先を先にご覧ください。

当院は非認証施設です。そのうえで、当院で出生前検査を受けた方に対しては、次の体制をとっています。

項目 内容
担当する医師 常駐する臨床遺伝専門医が、検査前の遺伝カウンセリングから陽性後の説明までを担当します
陽性のとき 陽性後のカウンセリングは何度でも無料です
確定検査 2025年6月から、羊水検査・絨毛検査を院内で受けられます。主要な検査項目は3日以内、マイクロアレイ検査だけ2週間ほどで結果が出ます
遺伝カウンセリングの立場 特定の選択を勧めません。情報をお伝えし、ご本人が決めることを支えます

過去に中絶を経験し、次の妊娠を考えたときに「また同じことが起きるのでは」と不安になる方もいます。前回の検査結果の意味や、次の妊娠で同じことが起こる可能性については、臨床遺伝専門医による遺伝カウンセリングで確認できます。

よくある質問(FAQ)

Q1. 中絶後に涙が止まらないのは異常ですか?

異常とは限りません。中絶後は、張りつめていた気持ちがゆるむこと、体の変化、失ったものへの悲しみ、誰にも話せない負担などが重なり、涙が出ることがあります。中絶から1週間後の調査では、6割以上の方が悲しみを感じていました[2]。眠れない・食べられない・生活が回らない状態が続く場合は、早めに医療機関へ相談してください。

Q2. 中絶の後悔や罪悪感が消えません。一生続くのでしょうか?

同じ強さのまま続くとは限りません。667人を5年間追った米国の研究では、後悔・罪悪感・悲しみは最初の2年で弱まり、その後は低い水準で落ち着いていました[4]。一方で、5年後も否定的な感情が中心だった方が6%いました[4]。罪悪感は「間違いだった証拠」ではありません。頭の中でくり返す考えがつらいときは、書き出す、信頼できる相手や専門家に話すなど、外に出す工夫が助けになります。

Q3. 中絶を後悔していない、罪悪感がないのはおかしいですか?

おかしくありません。中絶から1週間後の調査では、気持ちが主に肯定的だった方が35%いました[2]。5年後には、84%の方が「主に肯定的」または「特に感情はない」と答えています[4]。後悔や罪悪感がないことは、冷たいことではありません。感じ方に正解はなく、あとから悲しみが出てきたとしても、それも自然なことです。

Q4. 中絶後に性格が変わった、相手への気持ちが冷めたと感じます。なぜですか?

多くは性格そのものの変化ではなく、強いストレスのあとに起こる心と体の反応です。眠れなさ、緊張、悲しみ、話せない負担が重なると、いら立ちやすくなったり、何も感じなくなったりします。相手への気持ちが冷める背景には、相手の言動への怒りや、悲しみ方の違いがあります。気持ちが揺れている時期に関係の結論を急ぐ必要はありません。2週間以上続いて生活に差しつかえるときは、心療内科・精神科に相談してください。

Q5. 中絶後、男性(パートナー)はどんな気持ちでいるのでしょうか?

男性にも、安堵と痛みの両方があると報告されています。スウェーデンの研究では、男性は中絶を「ほっとした」「責任ある行動だった」と感じる一方で、「痛みを伴う、倫理的に難しい出来事」とも感じていました[14]。胎児の病気が理由だった夫婦151組の調査では、つらさの男女差はわずかで、出来事を考えないようにする傾向は男女で変わりませんでした[12]。黙っていることは、何も感じていないことと同じではありません。

Q6. 中絶後にうつやPTSDになりますか?

質の高い研究をまとめた報告では、中絶を受けたことで、うつ病・不安症・PTSDの危険が高まるとは言えないと結論されています[1]。一方で、もともとの不安やうつ、暴力や強いストレス、孤立がある場合は、つらさが長引くことがあります[10]。死にたい気持ちがある、場面が何度もよみがえる、2週間以上生活に支障がある場合は、早めに専門家へ相談してください。

Q7. 「中絶後遺症候群」は病名ですか?カウンセリングは受けられますか?

「中絶後遺症候群」「中絶後症候群(PAS)」という名前の病名は、米国精神医学会の診断基準(DSM)にも、世界保健機関の国際疾病分類(ICD)にもありません。ただし、中絶のあとに気持ちのつらさが続く方がいるのは事実で、支えを受けることができます。精神科・心療内科のほか、こども家庭庁が公開している都道府県等の相談窓口や、各地の「性と健康の相談センター」で相談できます[17]。

Q8. 胎児の疾患が理由の中絶は、なぜ特につらいのですか?

望んでいた妊娠を手放す体験であり、赤ちゃんを亡くした悲嘆(グリーフ)としての意味が大きくなるためです。診断の衝撃、思い描いた未来が崩れること、自分で決めたという重みが重なります。オランダの研究では、心的外傷後ストレスの症状が基準を超えていた方は4か月後に46%、16か月後に20.5%でした[13]。必要なのは「正論」ではなく、グリーフケアとしての支えです。

Q9. 誰にも言えず苦しいです。どうしたらいいですか?

秘密を抱える負担は、つらさを強めやすい要因です[10]。「誰かに言わなければいけない」という意味ではありませんが、安心して話せる相手や場所を一つ持つことは回復を助けます。医療機関や自治体の相談窓口、電話相談など、秘密が守られる場を選ぶ方法もあります。

Q10. 出生前診断の結果と中絶の判断で後悔しています

後悔は「間違いの証明」ではありません。多くの場合、当時の情報と状況の中で、最善を探した結果です。胎児の病気が理由で中絶した方の調査でも、深い悲しみがある方は多い一方で、決断そのものを強く後悔している方は2.7%でした[13]。悲しんでいることと、決断を後悔していることは別のものです。つらさが続くときは、一人で抱えずに相談先を頼ってください。

Q11. 受診するほどではない気がします。それでも相談していいですか?

相談してかまいません。受診は「重い病気」という意味ではなく、生活が回るように支えるのが医療の役割です。眠れない、食べられない、仕事や家事が回らない、死にたい気持ちがある場合は早めに相談してください。迷うときは、まず相談先を一つ決めておくことが助けになります。

🏥 次の妊娠を考えて、不安になったときは

前回の経過や検査結果のこと、次の妊娠で同じことが起こる可能性について不安があるときは、常駐する臨床遺伝専門医にご相談いただけます。当院は人工妊娠中絶を行っていません。いま、つらさが強い方は、まず上の相談先を頼ってください。

関連記事

参考文献

  • [1] National Academies of Sciences, Engineering, and Medicine. The Safety and Quality of Abortion Care in the United States. Washington, DC: The National Academies Press; 2018. [DOI 10.17226/24950]
  • [2] Rocca CH, Kimport K, Gould H, Foster DG. Women’s emotions one week after receiving or being denied an abortion in the United States. Perspect Sex Reprod Health. 2013;45(3):122-131. [DOI 10.1363/4512213]
  • [3] Rocca CH, Kimport K, Roberts SCM, Gould H, Neuhaus J, Foster DG. Decision rightness and emotional responses to abortion in the United States: a longitudinal study. PLoS One. 2015;10(7):e0128832. [DOI 10.1371/journal.pone.0128832]
  • [4] Rocca CH, Samari G, Foster DG, Gould H, Kimport K. Emotions and decision rightness over five years following an abortion: an examination of decision difficulty and abortion stigma. Soc Sci Med. 2020;248:112704. [DOI 10.1016/j.socscimed.2019.112704]
  • [5] Biggs MA, Rowland B, McCulloch CE, Foster DG. Does abortion increase women’s risk for post-traumatic stress? Findings from a prospective longitudinal cohort study. BMJ Open. 2016;6(2):e009698. [DOI 10.1136/bmjopen-2015-009698]
  • [6] Biggs MA, Upadhyay UD, McCulloch CE, Foster DG. Women’s mental health and well-being 5 years after receiving or being denied an abortion: a prospective, longitudinal cohort study. JAMA Psychiatry. 2017;74(2):169-178. [DOI 10.1001/jamapsychiatry.2016.3478]
  • [7] Biggs MA, Gould H, Barar RE, Foster DG. Five-year suicidal ideation trajectories among women receiving or being denied an abortion. Am J Psychiatry. 2018;175(9):845-852. [DOI 10.1176/appi.ajp.2018.18010091]
  • [8] Biggs MA, Neuhaus JM, Foster DG. Mental health diagnoses 3 years after receiving or being denied an abortion in the United States. Am J Public Health. 2015;105(12):2557-2563. [DOI 10.2105/AJPH.2015.302803]
  • [9] Munk-Olsen T, Laursen TM, Pedersen CB, Lidegaard Ø, Mortensen PB. Induced first-trimester abortion and risk of mental disorder. N Engl J Med. 2011;364(4):332-339. [DOI 10.1056/NEJMoa0905882]
  • [10] American Psychological Association, Task Force on Mental Health and Abortion. Report of the APA Task Force on Mental Health and Abortion. Washington, DC: American Psychological Association; 2008. [APA]
  • [11] Korenromp MJ, Christiaens GCML, van den Bout J, Mulder EJH, Hunfeld JAM, Bilardo CM, Offermans JPM, Visser GHA. Long-term psychological consequences of pregnancy termination for fetal abnormality: a cross-sectional study. Prenat Diagn. 2005;25(3):253-260. [DOI 10.1002/pd.1127]
  • [12] Korenromp MJ, Page-Christiaens GCML, van den Bout J, Mulder EJH, Hunfeld JAM, Bilardo CM, Offermans JPM, Visser GHA. Psychological consequences of termination of pregnancy for fetal anomaly: similarities and differences between partners. Prenat Diagn. 2005;25(13):1226-1233. [DOI 10.1002/pd.1307]
  • [13] Korenromp MJ, Page-Christiaens GCML, van den Bout J, Mulder EJH, Visser GHA. Adjustment to termination of pregnancy for fetal anomaly: a longitudinal study in women at 4, 8, and 16 months. Am J Obstet Gynecol. 2009;201(2):160.e1-160.e7. [DOI 10.1016/j.ajog.2009.04.007]
  • [14] Kero A, Lalos A. Reactions and reflections in men, 4 and 12 months post-abortion. J Psychosom Obstet Gynaecol. 2004;25(2):135-143. [DOI 10.1080/01674820400000463]
  • [15] Mauldon J, Foster DG, Roberts SCM. Effect of abortion vs. carrying to term on a woman’s relationship with the man involved in the pregnancy. Perspect Sex Reprod Health. 2015;47(1):11-18. [DOI 10.1363/47e2315]
  • [16] National Institute for Health and Care Excellence. Abortion care. NICE guideline NG140. 2019(2025年5月27日更新). [NICE]
  • [17] こども家庭庁. 流産・死産等を経験された方へ. [こども家庭庁]
  • [18] 厚生労働省. まもろうよ こころ:電話相談窓口. [厚生労働省]

※本記事は一般の方に向けた情報提供を目的とするもので、個別の診断・治療方針を示すものではありません。本文で紹介した研究の多くは海外のもので、日本とは制度や背景が異なります。つらい気持ちが続くときは、かかりつけ医や精神科・心療内科にご相談ください。

プロフィール
仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続け、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、検査結果の数値そのものだけでなく、「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、日本人として異文化の中で生活した経験があります。価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。この経験は現在の診療においても、「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、36週6日で一人を死産した経験があります。その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、家族の未来に関わる重要な意思決定です。年齢や統計だけで判断するのではなく、医学的根拠と心理的支援の両面から、ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

関連記事