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【医師監修】35歳で二人目を妊娠。上の子がいるからこそNIPTを受けるべき理由とは?

仲田洋美 医師

この記事の監修:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医として遺伝医療に携わっています。

35歳前後で二人目を妊娠したとき、「一人目は大丈夫だったから、今回も大丈夫だろう」と考える方は少なくありません。ただ、医学的には、赤ちゃんの染色体の数の変化は、妊娠のたびに独立して起こる「確率」の出来事です。一人目が健康だったことで、二人目の確率が下がるわけではありません。そこに、一人目のときより年齢が上がった分の確率が加わります。そして二人目以降の妊娠には、初めての妊娠にはなかった視点が1つ増えます。すでにいる上のお子さんの暮らしです。この記事は、上のお子さんがいるご家庭に向けて、検査を受ける・受けないを決める前に知っておきたい事実を、臨床遺伝専門医の立場から順に解説します。

この記事でわかること
📖 読了時間:約10分
👶 二人目妊娠・きょうだい児・NIPT
★ 臨床遺伝専門医監修
  • ➤「一人目は大丈夫だった」が当てはまらない理由 → ダウン症候群の約95%は、妊娠のたびに偶然起こるタイプです
  • ➤一人目のときと今回の年齢で、数字がどう変わるか → 出生時の頻度は25歳で約1,340人に1人、35歳で約350人に1人
  • ➤きょうだい児(上の子)への影響 → 国内外の研究が示す、気がかりな面と前向きな面の両方
  • ➤医療的ケアが必要になった場合の暮らし → 厚生労働省の調査が示す、家族の睡眠・外出・仕事への影響
  • ➤父親の年齢と、NIPTを受ける施設の選び方 → 陽性のとき、確定検査をどこで受けられるかまで確認する

⏱️ 30秒でわかる要約

👶 Q. 一人目が健康なら、二人目も大丈夫ですか?

そうとは言えません。ダウン症候群の約95%は、親から受け継ぐものではなく、妊娠のたびに偶然起こるタイプです。一人目の結果は二人目の確率を下げません。出生時の頻度は、25歳で約1,340人に1人、35歳で約350人に1人と、年齢の分だけ上がります。

🧸 Q. 上の子がいる家庭にとって、NIPTにはどんな意味がありますか?

生まれる前に分かれば、出産する施設、支援の窓口、上のお子さんへの伝え方を準備する時間を持てます。受けるか受けないかは、ご夫婦が決めることです。どちらを選んでも間違いではありません。

📊 Q. 36歳・37歳・38歳で二人目を出産するときのリスクは?

ダウン症候群の出生時の頻度は、36歳で約270人に1人、37歳で約200人に1人、38歳で約150人に1人と推定されています。35歳(約350人に1人)から38歳までの3年間で、約2.4倍になります。

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「1人目は受けなかったけど…」35歳経産婦が直面する迷い

35歳前後で二人目以降を妊娠した方が口にしやすいのが、次のような迷いです。「一人目のときは若かったし、何も考えずに産みました。でも今回は年齢も上がったし、もし赤ちゃんに病気や障害があったら、上の子に負担がかかるのではないかと心配で…」。

初めての妊娠では、不安の中心は「初めての育児がうまくいくか」にあります。これに対して経産婦さんの不安は、「いまの家族、とくに上の子の暮らしを守れるか」という、すでにある生活に根ざしたものです。この心配は、取り越し苦労でも、冷たい考え方でもありません。家族の暮らしを具体的に思い描けるからこそ生まれる、自然な心配です。

一方で、出生前検査は「受けるのが正しい」「受けないのが正しい」という検査ではありません。この記事では、二人目の妊娠で確率がどう変わるのか、上のお子さん(きょうだい児)について研究で何が分かっているのか、そして検査を受ける場合に確認しておきたい点を、出典を示しながら整理します。年齢ごとの妊娠・出産の詳しいデータは年齢別のページにまとめていますので、ここでは「上の子がいる家庭」の視点に絞ってお伝えします。

「1人目が健康だから大丈夫」という誤解と医学的真実

まず、医学的な事実を整理します。「一人目が健康に生まれたのだから、自分たち夫婦の遺伝子は大丈夫なはず」という考えは、染色体の数の変化(トリソミー)にはほとんど当てはまりません。

💡 用語解説:トリソミーとは

ヒトの細胞には、ふつう染色体が46本(23対)あります。トリソミーとは、特定の染色体が2本ではなく3本になっている状態です。ダウン症候群(21トリソミー)、エドワーズ症候群(18トリソミー)、パトウ症候群(13トリソミー)がよく知られています。多くは、卵子や精子ができるときに染色体がうまく分かれなかったこと(不分離)によって偶然起こります。

英国で登録された5,737例のダウン症候群を調べた報告では、95%が、21番染色体が1本多い標準型でした。転座型(染色体の一部がほかの染色体にくっついたタイプ)は4%、モザイク型は1%です[1]。標準型は、親から受け継がれるものではなく、妊娠のたびに偶然起こります。つまり、1回目の妊娠と2回目の妊娠は別々の出来事で、一人目が健康だったことは、二人目の確率を下げる理由になりません。これは、ご両親のどちらかに原因があるという意味でもありません。年齢以外の理由は、ほとんどが偶然です。

例外もあります。上のお子さんがダウン症候群などのトリソミーだった場合や、ご両親のどちらかが転座をもっている場合は、次の妊娠での確率の考え方が変わります。詳しくはダウン症は遺伝する?2人目の再発率と転座型のリスクをご覧ください。

一人目のときの年齢と、今回の年齢を比べてみる

二人目の妊娠で変わっているのは、年齢です。下の表で「一人目を出産したときの年齢」と「今回の年齢」を見比べてください。

母親の年齢別・ダウン症候群(21トリソミー)の出生時の頻度

出産時の母親の年齢 ダウン症候群の出生時の頻度 35歳と比べると
25歳 約1,340人に1人 約0.3倍
30歳 約940人に1人 約0.4倍
33歳 約570人に1人 約0.6倍
35歳 約350人に1人 ―
38歳 約150人に1人 約2.4倍
40歳 約85人に1人 約4.1倍

※出生前検査による影響を除いた、出生時(生まれてくる赤ちゃん)の頻度の推定値です[2]。妊娠初期(NIPTを受ける時期)の頻度は、その後に流産となる妊娠が含まれるため、これより高くなります。「35歳と比べると」は表の数字から計算した値です。

たとえば一人目を25歳で出産した方が35歳で二人目を妊娠した場合、ダウン症候群の出生時の頻度は約1,340人に1人から約350人に1人へ、約3.8倍になっています。それでも、35歳で出産する350人のうち349人には当てはまらない、という数字でもあります。大切なのは、数字を大きくも小さくも見積もらず、そのままの大きさで知ることです。20歳から45歳以上までの一覧と、妊娠初期と出生時で数字が違う理由は、ダウン症候群の確率と母親の年齢の関係にまとめています。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「1回ずつ独立した確率」に向き合うということ】

「一人目は何も問題なかったから、二人目も大丈夫」。そう考えたくなるのは自然なことです。ただ、染色体の数の変化については、1回目の妊娠と2回目の妊娠は別々の出来事で、前の結果が次の確率を下げることはありません。そこに年齢の分だけ確率が上がる、というのが医学的な事実です。

臨床遺伝専門医として大切だと考えているのは、「大丈夫」と言い切ることでも、不安を大きくすることでもなく、確率をそのままの大きさで伝えることです。数字を知ったうえで、検査を受けるか受けないかを決めるのはご夫婦です。どちらを選んでも、間違いではないと考えています。

「やっと授かった二人目」だからこそ知っておきたい:妊娠率・流産率の現実

35歳前後での二人目の妊娠には、「一人目のときより妊娠しにくい」「流産が増える」という現実も重なります。一人目は自然に授かったのに、二人目がなかなか授からない状態は「二人目不妊」と呼ばれ、年齢が上がるほど起こりやすくなります。原因と治療については二人目不妊とは?原因と治療方法で解説しています。

流産も年齢とともに増えます。デンマークの登録データを使った大規模な研究では、妊娠が流産や死産などで続かなかった割合は全体で13.5%でしたが、35歳では5分の1を超え、42歳では半数を超えていました[3]。この傾向は、過去の流産の回数や出産の経験にかかわらず見られています[3]。出産を経験している経産婦さんでも、年齢による流産の増え方は同じということです。

妊娠初期の流産の原因として最も多いのは、赤ちゃんの側に偶然起きた染色体の数の変化です。お母さんの仕事や家事、上のお子さんの抱っこが原因で起こるものではありません。なお、NIPTは流産を防ぐ検査でも、流産の原因を調べる検査でもありません。NIPTで分かるのは、いまお腹にいる赤ちゃんに、決められた範囲の染色体や遺伝子の変化がある可能性が高いかどうかです。

💡 NIPTを受けられる時期

一般的にNIPTは妊娠10週ごろから受ける検査ですが、当院では妊娠9週から受けられます。できるだけ早い時期に結果を知りたい方のために、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられる体制も整えています。ただし、週数が早いほど赤ちゃん由来のDNAが少なく、判定できずに再検査になることがあります。早い時期に結果を知ることには、考える時間や準備の時間を長く持てるという意味があります。

35歳だけじゃない。36・37・38歳の二人目出産とリスクの数字

この記事のタイトルは「35歳」ですが、36歳・37歳・38歳で二人目を妊娠した方にも、同じことが当てはまります。ダウン症候群の出生時の頻度は、35歳から38歳までの3年間で約2.4倍になります[2]。

36歳・37歳・38歳のダウン症候群の出生時の頻度

出産時の母親の年齢 出生時の頻度 35歳(約350人に1人)と比べると 年齢別の詳しいページ
36歳 約270人に1人 約1.3倍 36歳の妊娠とNIPT
37歳 約200人に1人 約1.8倍 37歳の妊娠とNIPT
38歳 約150人に1人 約2.4倍 38歳の妊娠とNIPT

※出生時の頻度の推定値です[2]。「35歳と比べると」は表の数字から計算した値です。

妊娠率、流産率、出産時のリスクなど、その年齢の妊娠・出産についての詳しいデータは、上の表の年齢別ページにまとめています。35歳の方は35歳の妊娠とNIPTをご覧ください。年齢が上がっても変わらないのは、「上の子の暮らし」「二人目不妊を経た妊娠の重み」「父親の年齢」という、二人目ならではの視点です。次の章から順に見ていきます。

見過ごされがちな「きょうだい児」への負担:ガラスの子どもたち

病気や障害のあるお子さんの兄弟姉妹は「きょうだい児」と呼ばれます。もし下のお子さんに特別なケアが必要になった場合、親の時間や注意はどうしてもそのお子さんに多く向かい、上のお子さんの暮らしにも影響が及ぶことがあります。

💡 用語解説:ガラスの子ども(Glass Child)とは

病気や障害のある兄弟姉妹をもつ子どもが、「親の視線が自分を通り越している」「自分は透明な存在のようだ」と感じる状態を指して、英語圏で使われるようになった言葉です。医学的な診断名ではありません。親を心配させまいとして「手のかからないよい子」でい続けようとする姿も、あわせて語られることがあります。

研究では何が分かっているのでしょうか。障害のある人のきょうだいを対象にした60の研究をまとめた総説では、きょうだいが家庭の中で「世話をする人」の役割を担いやすいこと、気持ちや行動の面では不安、気分の落ち込み、攻撃的な行動が主に報告されていることが示されています[4]。同時に、きょうだいどうしの関係の質は「良い」から「良くない」まで幅がありました[4]。影響は一様ではなく、家庭や支援の状況によって違うということです。

前向きな面を示す研究もあります。米国でダウン症候群のある人のきょうだい822人に尋ねた調査では、96%以上がきょうだいに愛情を感じていると答え、年長のきょうだいの94%が誇りに思うと答えました[5]。年長のきょうだいの88%は、きょうだいのおかげで自分がより良い人間になれたと感じていました[5]。ダウン症候群の支援団体の名簿に載っているご家族が対象の調査なので、すべてのご家族に当てはまるとは限りませんが、「きょうだいに病気や障害があること」がそのまま上の子の不幸を意味するわけではないことを示しています。

日本国内のデータが示す「きょうだい児・ヤングケアラー」の現実

💡 用語解説:ヤングケアラーとは

本来は大人が担うような家族の世話や家事を、日常的に行っている子どものことです。障害のある兄弟姉妹の世話や見守りを担っている場合も含まれます。

厚生労働省の事業として行われた全国調査では、中学2年生の5.7%(およそ17人に1人)が「世話をしている家族がいる」と答えました。世話に使う時間は、平日1日あたり平均4.0時間です[6]。世話の相手として最も多かったのは「きょうだい」でしたが、その理由で最も多かったのは「幼い」で、障害のあるきょうだいの世話に限った数字ではありません[6]。「二人目が生まれる」こと自体が、上の子の役割を変える出来事だということも、この調査から読み取れます。

ヨーロッパ6か国の15〜17歳を対象にした調査では、病気や障害のあるきょうだいの世話をしている若者は、親の世話をしている若者より多くの世話を担っていました[7]。本人たちは、「成長できた」という前向きな面と、心の不調、学校生活への影響、支援の不足という気がかりな面の両方を挙げています[7]。

これらの研究が示しているのは、上の子への影響は「ある・ない」の二択ではなく、親が上の子に向けられる時間、周りからの支援、上の子自身への説明によって変わるということです。だからこそ、準備の時間があるかどうかが意味を持ちます。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【家族全員のための情報という視点】

NIPTは「赤ちゃんのための検査」と思われがちですが、二人目以降の妊娠では、すでに上のお子さんの暮らしがそこにあります。検査で分かることは、赤ちゃんのことだけでなく、家族全員の準備に使える情報だと考えています。

生まれる前に分かっていれば、出産する施設を選び直す、上のお子さんへの伝え方を考える、保育や支援の窓口に早めに連絡する、といった準備ができます。一方で、「知らずに迎えたい」という考え方も尊重されるべきものです。検査は、受けることが正しく、受けないことが間違い、というものではありません。ご家庭ごとに違う答えを出すための材料を、正確にお渡しすることが専門医の役割だと考えています。

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「24時間ケア」と「上の子の育児」の物理的限界

生まれてくる赤ちゃんに病気があった場合、必要なケアは病気の種類と合併症によって大きく違います。心臓や呼吸、飲み込みに合併症がある場合には、退院後も自宅で医療的ケアが必要になることがあります。

💡 用語解説:医療的ケア児とは

人工呼吸器、経管栄養(チューブからの栄養)、たんの吸引などの医療的ケアを日常的に必要とする子どものことです。2021年に「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」が施行され、保育所や学校での支援が国や自治体の責務とされました。

複雑なケアが必要な子どもの親の時間の使い方を調べた32の研究をまとめた総説では、次の3点が示されています[8]。

複雑なケアが必要な子どもの親の時間について分かっていること

分かっていること 上の子の育児との関係
ケアの負担は、子どもの年齢が上がっても減らないことが多い 「赤ちゃんの時期だけ」とは限らず、上の子の入学や進級の時期と重なる
「見守り」に多くの時間がかかる 目を離せない時間が長く、上の子と2人で出かける時間を作りにくい
ふつうの子育てに加えて、医療的ケアの時間がかかる 授乳やおむつ替えに上乗せされるため、1日の中の余白が少なくなる

※左の列は総説[8]の内容、右の列はそれを二人目育児に当てはめた説明です。

日本の調査でも同じ傾向が見られます。自宅で暮らす20歳未満の医療的ケア児者のご家族843件が回答した厚生労働省の事業の調査では、「慢性的な睡眠不足である」「自分の体調が悪くても医療機関を受診できない」「医療的ケアが必要な子どもを連れての外出は困難を極める」のいずれも、6割以上のご家族が当てはまると答えました[9]。きょうだい児がいるご家庭(528件)では、約6割が「きょうだい児がストレスを抱えているように感じる」と答えています[9]。

「時間」と同時に考えておきたい「働き方・家計」への影響

同じ調査では、「希望する形で仕事につくこと」を9割近くのご家族が望んでいる一方で、問題なく行えていると答えたのは7.0%にとどまり、7割以上が行えていないと答えました[9]。働き方が変わることは、家計にも、上のお子さんの習い事や進学の計画にも関わります。

一方で、医療費の助成や手当、通所支援、訪問看護、短期入所など、利用できる公的な制度もあります。使える制度や利用できる枠はお住まいの自治体によって違うため、必要になった時点で早めに自治体の窓口や病院の相談窓口に確認することが、負担を軽くする近道です。

「親亡き後」まで続くきょうだい児の負担

きょうだい児の気がかりは、子どもの時期だけのものではありません。先ほどの総説でも、きょうだいが「世話をする人」の役割を担いやすいことが示されています[4]。大人になってからも、「親が年をとったら誰が世話をするのか」という将来への不安や、進学・就職・結婚といった自分の人生の選択との間で悩むことがあると指摘されています。

ここまでの内容は、「だから検査を受けるべき」という話でも、「病気や障害のある子を迎えるのは大変だからやめたほうがよい」という話でもありません。どのような結果であっても、早く知ることで、上のお子さんを含めた家族の準備の時間を長く持てる、ということです。

意外と知らない?二人目妊娠での「父親の年齢リスク」

二人目の妊娠では、お母さんだけでなく、パートナーも一人目のときより年齢を重ねています。父親の年齢も、赤ちゃんの遺伝子の変化に関係することが分かっています。

💡 用語解説:新生突然変異(de novo変異)とは

両親はもっていないのに、子どもで初めて生じる遺伝子の変化のことです。精子は生涯つくられ続け、そのもとになる細胞が分裂をくり返すたびに、DNAの写し間違いが少しずつ増えていきます。アイスランドの78組の親子の全ゲノムを調べた研究では、父親の年齢が1歳上がるごとに、子どもに伝わる新しい変異が約2個ずつ増えると報告されています[10]。

父親の年齢と自閉スペクトラム症(ASD)の関係を調べた研究もあります。イスラエルの約13万人を調べた研究では、父親が40歳以上の子どもは、30歳未満の子どもと比べてASDが5.75倍多いと報告されました[11]。ただし、この研究でASDと診断されたのは110人で、数字の幅(95%信頼区間2.65〜12.46)は大きくなっています[11]。その後、5か国の約577万人を調べたより大きな研究では、20代の父親と比べて40代で1.28倍、50歳以上で1.66倍でした[12]。

どちらの研究でも、父親の年齢が高いほどASDが増える傾向は共通しています。ただし、これは「割合が少し上がる」という話で、父親の年齢が高くても、大多数のお子さんには当てはまりません。また、自閉症や発達障害の原因はさまざまで、多くは1つの原因に特定できません。父親の年齢とde novo変異の関係はNIPTと単一遺伝子疾患|父親の年齢リスク(デノボ変異)とはで詳しく解説しています。

常染色体優性遺伝のメカニズム図(父親からの遺伝リスク)

(図:父親由来の遺伝子の変化が子へ伝わるイメージ)

NIPTは「どこで受けても同じ」ではありません

NIPTを受けると決めた場合に知っておきたいのは、NIPTは「どこで受けても同じ」検査ではない、ということです。施設による違いは、主に次の3つに表れます。

NIPTを受ける施設で確かめたい3つの点

確かめたい点 上の子がいる家庭にとっての意味 ミネルバクリニックの場合
どこまで調べるか 染色体の数だけか、微小欠失や単一遺伝子まで調べるかで、分かることが変わる 5つのプランから調べる範囲を選べる
検査の前後に誰が説明するか 結果の意味と限界を、夫婦で同じ理解にそろえられる 90分の受診枠の中で、常駐する臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行う
陽性のあと、確定検査をどこで受けるか 別の病院を探して通う場合、そのたびに上の子を預ける手配が必要になる 羊水検査・絨毛検査とも院内で受けられる

NIPTは、可能性が高いかどうかを調べるスクリーニング検査です。陽性の場合は、確定検査(羊水検査・絨毛検査)で本当にそうかを確かめる必要があります。陽性の結果だけで何かを決めることはできません。だからこそ、陽性になったあとの道筋まで含めて施設を選ぶことが大切です。施設の選び方はNIPTクリニックの選び方|どこで受ける?に、チェックリストの形でまとめています。

ダイヤモンドプラン(COATE法)

基本的なNIPTが調べるのは、主に染色体の数の変化です。前の章で触れた、父親の年齢とも関係するde novo変異による単一遺伝子の病気は、染色体の数を調べる検査では分かりません。当院のダイヤモンドプランは、米国の3大遺伝子検査会社の一角が提供する新技術「COATE法」(SNP法とターゲット法の組み合わせ)※を用いて、13・18・21・15・16・22トリソミー、微小欠失12種類13疾患、単一遺伝子(de novo変異)56遺伝子を調べます。単胎の妊娠が対象です。

※「3大遺伝子検査会社」は、遺伝性がんや周産期(出生前検査・保因者検査)を含む遺伝子検査全般を手がける米国の検査専業会社のうち、2025年通期の売上高が上位の3社を指します(各社の決算発表にもとづく当院調べ)。がん検診やリキッドバイオプシーに特化した会社は含みません。

💡 用語解説:「症候性自閉症」とは

自閉症や発達障害の原因はさまざまで、多くは1つの原因に特定できません。その中に、染色体の微細な欠失や特定の遺伝子の変化という、原因がはっきりしているものがあり、症候性自閉症と呼ばれることがあります。知的障害やてんかん、心臓の病気などを伴うことがあります。

一部の自閉症・発達障害・知的障害は、当院のNIPTでわかります。ダイヤモンドプランの56遺伝子には、レット症候群、コルネリア・デ・ランゲ症候群、CHARGE症候群、ソトス症候群などの原因遺伝子が含まれます。微小欠失では、アンジェルマン症候群、プラダー・ウィリー症候群、22q11.2欠失症候群を、スタンダードプランから調べられます。

⚠️ 知っておきたい検査の限界

NIPTは自閉症そのものを診断する検査ではありません。陽性の場合は確定検査が必要です。微小欠失は、染色体の数の変化と比べて陽性的中率が低め(項目によって60〜70%程度)です。陰性でも、自閉症・発達障害・知的障害がないとは言えません。脆弱X症候群など、NIPTでは調べられない原因もあります。また、症状の重さは検査では予測できません。詳しくは自閉症はNIPTでわかりますか?をご覧ください。

調べる範囲はプランごとに違います。スタンダードプラン、プレミアムプラン、ダイヤモンドプラン、インペリアルプラン、双子マックスプランの各ページで、対象の病気を確認できます。調べる範囲が広がると、陽性や確定検査の場面が増えることもあります。どこまで調べるかは、検査前の遺伝カウンセリングで決めていただけます。

まとめ:上の子がいる家庭にとっての「知って備える」という選択

染色体の数の変化は、妊娠のたびに独立して起こります。一人目が健康だったことは二人目の確率を下げず、年齢の分だけ確率は上がります。そして二人目以降の妊娠では、赤ちゃんのことに加えて、上のお子さんの暮らしをどう守るかという視点が加わります。

NIPTを受けることは、どのような結果であっても、これから迎える赤ちゃんの状態を知り、必要な準備をする時間を持つことにつながります。受けないと決めることも、同じように尊重される選択です。ご夫婦で話し合うときの材料として、この記事の数字を使っていただければと考えています。

🏥 ミネルバクリニックのNIPTの体制

項目 内容
受けられる時期 妊娠9週から。妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます
遺伝カウンセリング 90分の受診枠の中で、常駐する臨床遺伝専門医が行います
結果までの目安 基本は10〜14日。インペリアルプランの単一遺伝子の結果だけは3〜4週間。陰性の結果はマイページでお知らせします
陽性のとき 陽性後の遺伝カウンセリングは何度でも無料です
確定検査 2025年6月から産婦人科を併設し、羊水検査・絨毛検査とも院内で受けられます。主要な検査項目は3日以内に、マイクロアレイ検査は2週間ほどで結果が出ます
互助会 羊水検査互助会(カトレア会)8,000円:陽性のときの確定検査費用を補助します(補助の上限なし。対象外の項目があります)。安心検査結果保障制度6,000円:再検査が必要になったのに、流産のために再検査ができず結果が出なかったときに、検査代金(諸費用を除く)を返金します。どちらもNIPT1回ごとに全員にご加入いただく制度です
来院が難しい方 オンラインNIPT:Zoomでの遺伝カウンセリングと、全国110か所の提携施設での採血で受けられます(採血料は施設ごとに別にかかります)

※料金はNIPTの費用・料金のページでご確認ください。

🏥 上のお子さんがいるご家庭のNIPTを、調べる範囲から考える

「ダウン症候群だけで大丈夫?」と迷ったら、まず調べる範囲から考えてみてください。当院のNIPTは、ダウン症候群に加えて、18・13トリソミー、微小欠失症候群、単一遺伝子の病気まで、プランごとに調べる範囲を選べます。90分の受診枠の中で、常駐する臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、どのプランが合うかを一緒に考えます。陽性の場合も、確定検査(絨毛検査・羊水検査)まで院内で受けられます。主要な検査項目は3日以内に、マイクロアレイ検査は2週間ほどで結果が出ます。

よくある質問(FAQ)

Q1. 1人目は健康でしたが、2人目で障害が出る確率は?

染色体の数の変化は妊娠のたびに独立して起こるため、1人目が健康だったことで2人目の確率が下がることはありません。ダウン症候群の約95%は、親から受け継ぐものではなく偶然起こる標準型です。出生時の頻度は、出産時の年齢が25歳で約1,340人に1人、35歳で約350人に1人と推定されており、1人目のときより年齢が上がった分だけ確率は上がります。なお、これはダウン症候群についての数字です。

Q2. ダウン症候群だけ調べれば大丈夫ですか?

ダウン症候群を調べることには大きな意味があります。そのうえで、赤ちゃんの病気はダウン症候群だけではないことも知っておいていただきたい点です。18トリソミー・13トリソミーのほか、母親の年齢に関係なく起こる微小欠失症候群(22q11.2欠失症候群などは当院のスタンダードプランから調べられます)や、父親の年齢とも関係する単一遺伝子の病気(ダイヤモンドプランは56遺伝子、インペリアルプランは最大155遺伝子)があります。上のお子さんがいるご家庭では、生まれたあとの暮らしの準備という点から、どこまで調べるかを考える方もいます。調べる範囲を広げると、陽性や確定検査の場面が増えることもあるため、90分の受診枠の中で行う臨床遺伝専門医の遺伝カウンセリングで、ご家庭に合う範囲を決めていただけます。

Q3. NIPTは上の子と一緒に来院してもいいですか?

はい、お子さま連れでご来院いただけます。当院は完全予約制です。上のお子さんを連れての来院が難しい場合は、Zoomでの遺伝カウンセリングと全国110か所の提携施設での採血で受けられるオンラインNIPTもあります(採血料は施設ごとに別にかかります)。

Q4. 陽性が出たらどうすればいいですか?

NIPTは可能性を調べるスクリーニング検査なので、陽性の場合は確定検査(羊水検査・絨毛検査)で確かめる必要があります。陽性の結果だけで何かを決めることはできません。当院では、陽性後の遺伝カウンセリングは何度でも無料で、確定検査まで院内で受けられます。主要な検査項目は3日以内に、マイクロアレイ検査は2週間ほどで結果が出ます。確定検査の費用は、羊水検査互助会(カトレア会)で補助します(補助の上限なし。対象外の項目があります)。

Q5. 夫が検査に消極的です。どう説得すればいいですか?

説得するというより、同じ情報を二人で見ることから始めるのがよいと考えています。染色体の数の変化は妊娠のたびに独立して起こること、年齢によって確率がどのくらい変わるか、父親の年齢も赤ちゃんの遺伝子の変化に関係することなど、この記事の数字を一緒に確認してみてください。受ける・受けないのどちらを選ぶにしても、ご夫婦で納得して決めることが大切です。

Q6. NIPTは何週から受けられますか?

当院では妊娠9週から受けられます。妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。週数が早いほど赤ちゃん由来のDNAが少なく、判定できずに再検査になることがあります。早い時期に結果を知ることには、考える時間や準備の時間を長く持てるという意味があります。

Q7. もし障害が見つかった場合、上の子にはどう伝えたらいいですか?

上のお子さんの年齢に合わせて、短く、うそのない言葉で伝えることが大切だと考えています。たとえば「赤ちゃんには少しお手伝いが必要かもしれないけれど、あなたのことも変わらず大好きだよ」というように、上のお子さんへの気持ちが変わらないことをあわせて伝えます。一度で伝えきろうとせず、質問が出たときにその都度答えていく形で構いません。当院では、陽性後の遺伝カウンセリングは何度でも無料で、上のお子さんへの伝え方についても話し合えます。

Q8. NIPTは二人目でも保険は使えますか?費用はどのくらいかかりますか?

NIPTは公的医療保険の対象外(自由診療)で、一人目・二人目を問わず全額自己負担です。費用は調べる範囲(プラン)によって違うため、NIPTの費用・料金のページでご確認ください。当院では、検査費用とは別に、羊水検査互助会(カトレア会)8,000円と安心検査結果保障制度6,000円にご加入いただきます。

Q9. 一人目の時のNIPT結果は、二人目の検査結果に関係しますか?

基本的には関係しません。ダウン症候群の約95%を占める標準型は、妊娠のたびに偶然起こるためです。ただし、約4%を占める転座型の一部は、ご両親のどちらかがもつ染色体の転座が関係しており、次の妊娠でも起こることがあります。上のお子さんに染色体の変化があった場合や、ご家族に転座があると分かっている場合は、検査の前の遺伝カウンセリングでお伝えください。詳しくはダウン症は遺伝する?2人目の再発率と転座型のリスクをご覧ください。

Q10. 36歳・37歳・38歳でも、35歳と同じプランで受けられますか?

はい、同じプランで受けられます。当院のNIPTに年齢による制限はありません。ダウン症候群の出生時の頻度は、35歳で約350人に1人、36歳で約270人に1人、37歳で約200人に1人、38歳で約150人に1人と推定されています。どのプランにするかは、年齢だけで決めるものではなく、何をどこまで知りたいかで決めていただけます。

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参考文献

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※本記事は一般の方に向けた情報提供を目的とするもので、個別の診断・治療方針を示すものではありません。検査を受けるかどうか、結果をどう受け止めるかは、ご夫婦で話し合い、主治医・専門医と確認しながら決めてください。

プロフィール
仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続け、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、検査結果の数値そのものだけでなく、「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、日本人として異文化の中で生活した経験があります。価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。この経験は現在の診療においても、「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、36週6日で一人を死産した経験があります。その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、家族の未来に関わる重要な意思決定です。年齢や統計だけで判断するのではなく、医学的根拠と心理的支援の両面から、ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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