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35歳の出産|障害・自閉症の確率とリスク、NIPTでわかること(初産・2人目)

仲田洋美 医師

この記事の監修:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

35歳ではじめて出産する場合、日本では「高年初産婦」に該当します。一般には「高齢出産」と呼ばれる年齢の目安です。ただ、35歳の誕生日を境にリスクが急に跳ね上がるわけではありません。妊娠のしやすさや流産の確率、赤ちゃんの染色体の変化の確率は、30代に入ってから少しずつ、連続的に変わっていきます。35歳で出産したお子さんがダウン症候群である確率は、出生時でおよそ350人に1人です。裏を返せば、約0.28%に相当する数字です。この記事では、35歳での出産のリスクと障害の確率を原典の数字で整理したうえで、多くの方が気にかける自閉症・発達障害・知的障害のうち、NIPTで一部わかるものを、ミネルバクリニックのプランに沿って具体的に説明します。

この記事でわかること
📖 読了時間:約12分
🤰 35歳の出産・NIPT
★ 臨床遺伝専門医監修
  • ➤35歳での出産が「高齢出産」とされる理由と、34歳との違い
  • ➤35歳の妊娠のしやすさ・流産率・妊娠高血圧症候群などのリスク
  • ➤35歳で赤ちゃんがダウン症である確率(出生時と、NIPTを受ける時期の違い)
  • ➤一部の自閉症・発達障害・知的障害がNIPTでわかる理由と、わからないもの
  • ➤初産と2人目で変わること、変わらないこと

⏱️ 30秒でわかる要約

🤰 Q. 35歳での出産は高齢出産ですか?

日本では35歳以上ではじめて出産する方を「高年初産婦」と呼びます。2025年には、生まれた赤ちゃんの約3割が35歳以上のお母さんから生まれています。

🔎 Q. ダウン症候群だけ調べれば大丈夫ですか?

大丈夫とは言えません。35歳ではダウン症候群の確率に目が向きますが、ご家族の子育ての負担を最も大きく左右するのは、知的障害の程度よりも、攻撃的な行動や自傷、睡眠の問題といった行動の問題です。行動の問題を伴いやすいのは、ダウン症候群よりも微小欠失症候群や単一遺伝子疾患で、これらは三大トリソミーだけの検査では調べられません。当院のNIPTは、こうした病気まで調べられます。

🧬 Q. 35歳で赤ちゃんがダウン症である確率は?

出生時でおよそ350人に1人です。妊娠10〜12週ごろは、その後に自然に流産する分を含むため、出生時より高く、計算上はおよそ240人に1人になります。

🧩 Q. NIPTで自閉症や発達障害はわかりますか?

一部はわかります。当院のNIPTは、自閉症・発達障害・知的障害の原因になる染色体や遺伝子の変化の一部(ダウン症候群、22q11.2欠失症候群などの微小欠失、レット症候群などの単一遺伝子の病気)を、プランに応じて調べられます。陰性でも、すべての自閉症・発達障害が否定されるわけではありません。

👶 Q. 2人目なら確率は下がりますか?

下がりません。染色体の数の変化の確率は、上の子の有無ではなく今回の出産時の年齢で決まります。

\ ダウン症候群だけで大丈夫ですか? 当院のNIPTは、18・13トリソミーに加えて、子育ての負担につながりやすい微小欠失症候群や単一遺伝子疾患まで調べられます。35歳の妊娠でどこまで調べるかは、90分の受診枠の中で臨床遺伝専門医と一緒に決められます /

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35歳での出産は「高齢出産」にあたる?

結論からお伝えすると、35歳ではじめて出産する場合は、日本では「高年初産婦(こうねんしょさんぷ)」、いわゆる高齢出産にあたります。この区切りは昔から35歳だったわけではなく、1991年ごろまでは30歳以上とされていて、その後35歳以上に改められました[1]。出産年齢が全体に上がり、30代前半の出産が珍しくなくなったことが背景にあります。

実際、35歳以上での出産はもう少数派ではありません。厚生労働省の人口動態統計(2025年の概数)では、生まれた赤ちゃん671,236人のうち、お母さんが35〜39歳だったのは155,320人、40〜44歳が41,631人、45歳以上が1,644人でした。合わせると約19万9,000人、全体の約3割(29.6%)にのぼります。第1子を出産したときのお母さんの平均年齢も31.0歳です[2]。

一方、すでに出産経験のある方(経産婦)の場合、日本の定義は「初産婦」を対象にしているため、35歳以上でも「高年初産婦」とは呼びません。けれども、このあと説明する染色体の変化の確率や妊娠合併症のリスクは、初産か経産かにかかわらず年齢とともに上がります。呼び方の違いで、体に起きていることが変わるわけではない点に注意してください。初産婦と経産婦の違いは高齢出産は何歳から?初産と経産婦のちがいでも解説しています。

💡 用語解説:高年初産婦(こうねんしょさんぷ)

35歳以上ではじめて出産する女性を指す、日本の産婦人科の用語です。一般には「高齢出産」と呼ばれます。海外では、初産か経産かを問わず出産時35歳以上を「Advanced Maternal Age(AMA)」と呼ぶことが多く、国によって定義の対象が少し違うことを知っておくと、海外の論文や記事を読むときに混乱しにくくなります。

なぜ「35歳」が区切りなのか——34歳と35歳で何が違う?

「34歳と35歳では、何が違うのですか」という疑問はとても自然なものです。答えは、体の中で起きている変化はほとんど同じです。米国産科婦人科学会(ACOG)と米国生殖医学会の見解では、女性の妊娠する力(妊孕性:にんようせい)は32歳ごろから少しずつ下がりはじめ、37歳を過ぎると下がり方が速くなるとされています[3]。米国の周産期の指針も、妊娠・出産の合併症のリスクは「年齢とともに連続的に上がる」と整理しています[4]。

つまり35歳という数字は、医療者が検査や健診の目安をそろえるために引いた線です。「35歳になった瞬間に危険になる」のではなく、「このあたりから、知っておいたほうがよい変化が数字として見えてくる」と受け止めるのが正確です。34歳の方が安心しきってよいわけでも、35歳の方が過度に心配する必要があるわけでもありません。ご自身の今の年齢での具体的な数字を知り、それをもとに健診や検査を選ぶことが大切です。

35歳で妊娠・出産するときのリスク

35歳での妊娠・出産のリスクは、大きく「妊娠するまで」「妊娠初期の流産」「妊娠中から出産までの合併症」の3つに分けて考えると整理しやすくなります。それぞれ、どのくらいの変化なのかを順に見ていきます。

妊娠のしやすさ

妊娠のしやすさが年齢とともに下がる主な理由は、卵子の数と質の変化です。女性は生まれる前に一生分の卵子のもとをつくり、その後は新しくつくられません。年齢を重ねると卵子の数が減るとともに、卵子の中の染色体が正しく分かれにくくなり、受精しても育たない受精卵が増えます。妊娠する力は32歳ごろから少しずつ下がり、37歳以降で下がり方が速くなります[3]。

35歳以上では、避妊せずに性交を行っても6か月妊娠しない場合、不妊症の評価を開始することが推奨されています[3]。年齢が上がるほど、時間そのものが妊娠のしやすさに影響するためです。

35歳の流産率

流産の確率も年齢とともに上がります。ノルウェーの約42万件の妊娠を調べた研究では、妊娠全体の12.8%が流産に終わり、流産の確率が最も低かったのは25〜29歳(約10%)で、30歳を過ぎると上がりはじめ、45歳以上では53%でした[5]。デンマークの大規模な研究でも、20〜24歳での胎児の喪失は8.9%で、42歳では妊娠の半数以上が流産や死産に終わっていました[6]。

35歳は、この上昇がはっきり見えはじめる年代です。年齢による流産の増加の大部分は、卵子の染色体の数の変化によって、受精卵がうまく育たないことで起こります。これは受精の時点で決まっていることが多く、妊娠中の仕事や運動、食事で防げるものではありません。流産の確率は集団の平均であり、一人ひとりの妊娠にそのまま当てはめられる数字ではないことも、あわせて知っておいてください。

妊娠高血圧症候群・妊娠糖尿病・帝王切開

妊娠中から出産にかけては、お母さん側の合併症も年齢とともに増えます。米国産科婦人科学会と米国母体胎児医学会の共同指針では、35歳以上の妊娠で妊娠糖尿病、妊娠高血圧腎症(妊娠高血圧症候群の一つ)、帝王切開、早産、低出生体重などが増えること、そして妊娠後期の死産のリスクも上がることが示されています[4]。

これらは年齢だけで決まるものではなく、体重、もともとの血圧や血糖の状態、多胎妊娠かどうかなどが重なって起こります。だからこそ、妊婦健診で血圧や尿、血糖を確認し、変化を早く見つけることに意味があります。それぞれの病気については、妊娠高血圧症候群と妊娠糖尿病のページで解説しています。

35歳で赤ちゃんがダウン症・障害をもって生まれる確率

35歳で出産したときに、赤ちゃんがダウン症候群(21トリソミー)である確率は、出生時で1,000人あたり約2.8人、およそ350人に1人です。この数字は、英国の全国ダウン症候群登録のデータをもとに母親の年齢ごとの出生時の頻度を推定した研究と、その推定を用いた総説によるものです[7][8]。割合に直すと約0.28%で、残りの約99.7%の赤ちゃんはダウン症候群ではありません。

ダウン症候群は、21番染色体が通常の2本ではなく3本ある状態です。多くは、卵子ができるときの細胞分裂で21番染色体がうまく分かれないこと(染色体不分離)で起こります。卵子のもとになる細胞は、お母さんが胎児だったころに分裂の途中まで進み、排卵の直前まで長い年月そのまま待機しています。この待機の期間が長くなるほど、染色体を正しく引き分ける仕組みがゆるみやすくなると考えられていて、これが年齢とともに確率が上がる理由です。確率は1歳ごとに少しずつ上がり、34歳と35歳、35歳と36歳の差はわずかです。1歳ごとの数字は年齢別のダウン症の確率で、病気の全体像はダウン症候群総論で解説しています。

💡 用語解説:染色体不分離(せんしょくたいふぶんり)

卵子や精子がつくられるときには、対になった染色体を1本ずつに分ける特別な細胞分裂(減数分裂)が起こります。このとき、本来分かれるはずの染色体が分かれずに同じ細胞に入ってしまうことを不分離といいます。その卵子が受精すると、ある染色体が3本になる「トリソミー」や1本しかない「モノソミー」になります。お母さんの年齢とともに起こりやすくなることが知られています。

出生時の確率と、NIPTを受ける時期の確率は違う

ダウン症候群の確率を見るときに混乱しやすいのが、「いつの時点の確率か」という点です。上の350人に1人は、赤ちゃんが生まれたときの数字です。ダウン症候群の赤ちゃんの一部は、妊娠の途中で自然に流産や死産になるため、妊娠の早い時期ほど確率は高くなります。英国のデータを解析した研究では、35歳の場合、絨毛検査の時期(妊娠10〜12週ごろ)から出産までに約32%、羊水検査の時期(妊娠16週ごろ)から出産までに約25%のダウン症候群の妊娠が自然に失われると推定されています。この割合は、お母さんの年齢が高いほど大きくなります[9][8]。

この2つの数字から計算すると、妊娠10〜12週ごろの35歳のダウン症候群の頻度は、およそ240人に1人になります。インターネット上では、出生時の数字と妊娠中の数字が区別されずに並んでいることが少なくありません。「350人に1人」と「240人に1人」は矛盾しているのではなく、数えている時点が違うのです。

📊 35歳のダウン症候群の頻度(時点別)

数えている時点 35歳の頻度 根拠
出生時 約350人に1人(1,000人あたり約2.8人) 英国の登録データにもとづく推定
妊娠10〜12週ごろ(妊娠初期) 約240人に1人 出生時の頻度と、その後に自然に失われる割合(約32%)から計算

出典:Morrisら(J Med Screen, 2002)[7]、Cuckle・Morris(Prenat Diagn, 2020)[8]、Savvaら(Prenat Diagn, 2006)[9]。妊娠10〜12週の値は、出生時の頻度を「1−0.32」で割って求めた計算値です。

18トリソミー・13トリソミー・性染色体の変化

年齢とともに確率が上がるのは、ダウン症候群だけではありません。18番染色体が3本ある18トリソミー(エドワーズ症候群)や、13番染色体が3本ある13トリソミー(パトウ症候群)も、同じ不分離の仕組みで起こるため、お母さんの年齢とともに増えます。どちらもダウン症候群よりまれで、妊娠中に流産や死産になることが多く、生まれた赤ちゃんのうち1歳まで生きられるのは、18トリソミーで13.4%、13トリソミーで11.5%と報告されています[10]。

性染色体(X・Y)の数の変化には、お母さんの年齢とともにやや増えるもの(XXYのクラインフェルター症候群など)と、年齢とほとんど関係しないもの(Xが1本のターナー症候群)があります。性染色体の数の変化は、ほかの染色体の病気とは事情が異なるため、次の章で分けて説明します。

「障害をもって生まれる確率」の全体像

「障害をもって生まれる確率」という言葉で調べる方も多いので、全体像も整理しておきます。米国疾病予防管理センター(CDC)によると、生まれてくる赤ちゃんのおよそ33人に1人(約3%)に、何らかの先天異常があります[11]。この中には心臓の形の異常や口唇口蓋裂なども含まれ、その多くは年齢によってあまり変わりません。

35歳以降ではっきり増えるのは、主に染色体の数の変化です。言いかえると、35歳で出産する方にとって「年齢のせいで上がる部分」は、NIPTなどの出生前検査で調べられる種類の変化が中心だということです。逆に、NIPTで陰性だったとしても、年齢と関係なく起こる約3%の先天異常のすべてが否定されるわけではありません。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「350人に1人」をどう読むか】

確率の数字は、同じ値でも受け取り方が大きく変わります。「350人に1人」と聞いて多いと感じる方もいれば、「349人はダウン症候群ではない」と考えて落ち着く方もいます。どちらの受け止め方も間違いではありません。大切なのは、数字がどの時点のもので、どの集団から出たものかを正しく押さえることだと考えています。

年齢による確率は、あくまで「検査を受ける前」の目安です。NIPTや確定検査は、その目安を「この赤ちゃんの場合はどうか」という情報に置き換えるためのものです。年齢の数字だけで不安を大きくするのではなく、知りたいことがあるなら、どの検査で何がどこまで分かるのかを知ったうえで選んでいただきたいと考えています。

自閉症・発達障害・知的障害もNIPTで一部わかる ― 35歳の出産と当院で調べられること

35歳での出産については、ダウン症候群に加えて自閉症、発達障害、知的障害との関係も検索されることがあります。これらの原因はさまざまで、多くは原因を特定できません。けれども、その一部は染色体や遺伝子の変化が原因だと分かっています。知的障害の遺伝的な原因として最も多いのはダウン症候群で、18トリソミー・13トリソミーも重い知的障害を伴います。さらに、原因の分からない発達の遅れ・知的障害・自閉症のある子どもを染色体マイクロアレイ検査で調べると、15〜20%で染色体の微細な欠失や重複(コピー数の変化)が原因として見つかると報告されています[12]。

ダウン症候群だけを調べればよいわけではない

出生前検査で調べる病気は、どれも赤ちゃんの命や発達、そしてご家族の暮らしに大きくかかわるものです。ただ、その中身は病気によって大きく異なります。違いは命の見通しだけでなく、自立の見通し、自閉症や行動の問題を伴うかどうか、必要となる医療・福祉・発達支援の内容にも表れます。

ダウン症候群は、医療や支援の進歩で平均寿命が50〜60歳まで延び[13][14]、成人して働いたり地域で暮らしたりする方も多い病気です。知的障害のあるお子さんを比べた研究では、ダウン症候群のお子さんは、自閉症や原因不明の発達の遅れのあるお子さんに比べて行動の問題が少なく、母親の育児ストレスが最も大きかったのは自閉症のお子さんのグループでした[15]。自閉スペクトラム症を伴う割合も、ダウン症候群は16%で、出生前検査で調べるほかの病気と比べて少ないことが分かっています[16]。寿命についてはダウン症の寿命のページで解説しています。

一方、18トリソミーや13トリソミーでは、1歳まで生きられる赤ちゃんは約1割にとどまります[10]。また、微小欠失症候群や単一遺伝子疾患の中には、重い知的障害やてんかんに加えて、自閉スペクトラム症を高い割合で伴い、継続的な医療・福祉・発達支援を必要とする疾患もあります。自閉スペクトラム症を伴う割合は、レット症候群で61%、コルネリア・デ・ランゲ症候群で43%、アンジェルマン症候群で34%、CHARGE症候群で30%と報告されています[16]。ダウン症候群だけでなく、こうした病気まで調べられるかどうかは、検査を選ぶうえで大切なポイントです。

35歳という年齢からは、まずダウン症候群の確率に目が向きます。けれども、ご家族の子育ての負担という面から見ると、別の研究結果があります。知的障害を伴う遺伝性の病気について、ご家族の子育てのストレスを比べた研究をまとめた報告によると、スミス・マゲニス症候群、ウィリアムズ症候群、プラダー・ウィリー症候群のお子さんを育てるご家族は、ダウン症候群のご家族より子育てのストレスが高いとされています[25]。そのストレスに最も強くかかわっていたのは、知的障害の程度よりも、攻撃的な行動や自傷といった行動の問題と、睡眠の問題でした[25]。病気ごとに見ると、他人への攻撃的な行動はアンジェルマン症候群とスミス・マゲニス症候群で、自傷はコルネリア・デ・ランゲ症候群、スミス・マゲニス症候群、プラダー・ウィリー症候群で多いことが報告されています[26]。当院のNIPTでは、スミス・マゲニス症候群、プラダー・ウィリー症候群、アンジェルマン症候群は全プランで、コルネリア・デ・ランゲ症候群はダイヤモンドプランとインペリアルプランで、ウィリアムズ症候群はインペリアルプランと双子マックスプランで調べられます。年齢から計算した確率だけでなく、どの病気まで調べておきたいかも、検査を選ぶ前に考えていただきたい点です。

もう1つ、35歳かどうかにかかわらず知っておきたいのが22q11.2欠失症候群です。微小欠失症候群の中で最も多く、妊娠中の赤ちゃんのおよそ1,000人に1人にみられます[28]。ほとんどは親から受け継いだものではなく新しく起こる変化で、お母さんの年齢とは関係がありません[28]。心臓の病気や口蓋裂、免疫の働きの低下、低カルシウム血症、発達の遅れなどを伴うことがあり、自閉スペクトラム症を伴う割合も一般より高いことが分かっています[16][28]。米国臨床遺伝・ゲノム学会(ACMG)は、年齢にかかわらずすべての妊婦さんに22q11.2欠失症候群のNIPTを提供することを提案しています[27]。一方で、米国母体胎児医学会(SMFM)は、22q11.2欠失を調べる場合は検査前に十分な説明を受けて選ぶことを求めており、学会によって考え方に幅があります。だからこそ、検査前の遺伝カウンセリングが大切です。生まれる前に分かっていれば、出産する施設を選んだり、生まれてすぐに心臓・カルシウム・免疫の検査を受けたりと、赤ちゃんを迎える準備ができます。当院では、スタンダードプランから22q11.2欠失症候群を調べられます。ただし、陽性的中率は染色体の数の異常より低めなので、陽性の場合は確定検査で確かめる必要があります。

性染色体の数の異常は分けて考える

性染色体の数の異常(クラインフェルター症候群[47,XXY]、トリプルX[47,XXX]、47,XYY、ターナー症候群[45,X]など)は、ほかの染色体の病気とは事情が大きく異なります。知的障害を伴うことは少なく、成人の多くは自立して生活しています[17]。ただし、言葉の発達がゆっくりだったり、読み書きなど学習面に苦手さが出たりすることがあり、自閉スペクトラム症の診断がついた割合はXYYで19%、XXYで11%と、一般より高いと報告されています[17][18]。早く分かっていれば、ことばの支援や学習の支援を早めに始めることができます。

お母さん・お父さんの年齢との関係

お母さんの年齢では、ダウン症候群などの染色体の数の変化が年齢とともに増えることを、前の章で見てきました。自閉症への影響は小さいものの、ゼロではありません。母親の年齢と自閉スペクトラム症の関係を調べたメタ解析では、35歳以上で出産した場合のリスクは、25〜29歳と比べて約1.3倍と報告されています[19]。複数のメタ解析をまとめた総括研究でも、35歳以上の母親年齢の相対リスクは1.31(95%信頼区間1.18〜1.45)でした[20]。わずかに上がるのは事実ですが、35歳で出産したお子さんの大多数は自閉症ではありません。

お父さんの年齢では、別の変化が増えます。精子は思春期以降、一生つくられ続け、そのたびにDNAが複製されます。複製のたびにわずかな写し間違いが起こるため、父親の年齢が1歳上がるごとに、子どもに伝わる新しい遺伝子の変化(新生突然変異)が約2個ずつ増えることが、アイスランドの大規模な全ゲノム解析で示されました[21]。大部分は遺伝子の働きに影響しない場所に起こりますが、ごく一部が大切な遺伝子に起これば、知的障害や発達の遅れを伴う単一遺伝子の病気の原因になります。母体年齢と父親年齢はそれぞれ異なる機序で遺伝学的リスクと関連するため、母体年齢による染色体数的異常と、父親年齢に伴う新生突然変異の増加は分けて評価します。

💡 用語解説:新生突然変異(de novo変異:デノボへんい)と微小欠失・重複

新生突然変異は、両親のどちらももっていない遺伝子の変化が、精子や卵子ができる過程で新しく生じたものです。家族に同じ病気の人がいなくても起こります。微小欠失・重複は、通常の染色体検査では見えないほど小さな範囲で、染色体の一部が欠けたり余分に重なったりする状態で、お母さんの年齢とはほとんど関係なく起こります。用語の詳細はDe Novo変異(新生突然変異)とはをご覧ください。

ミネルバクリニックのNIPTで調べられること

一部の自閉症・発達障害・知的障害がNIPTでわかるのは、当院のNIPTが調べる微小欠失・重複や単一遺伝子の病気の中に、自閉症・発達障害・知的障害を伴う病気が含まれているためです。次の表は、それをプランごとに整理したものです。

🧬 プラン別:自閉症・発達障害・知的障害を伴うことがある主な疾患

プラン 微小欠失・重複 単一遺伝子(de novo) 自閉症・発達障害・知的障害を伴うことがある主な疾患
スタンダード 6種類7疾患 なし ダウン症候群、22q11.2欠失、1p36欠失、プラダー・ウィリー、アンジェルマン、ウォルフ・ヒルシュホーン、猫鳴き、スミス・マゲニス
プレミアム 12種類13疾患 なし 上記+ジェイコブセン、ランガー・ギーディオンなど
ダイヤモンド 12種類13疾患 56遺伝子 上記+レット、ソトス、コルネリア・デ・ランゲ、CHARGE
インペリアル 92種類+5Mbを超える構造異常 最大155遺伝子(202疾患) 上記+ウィリアムズ、16p11.2欠失・重複、ピット・ホプキンス、フェラン・マクダーミッド、KBG、ルビンシュタイン・テイビなど

※染色体の数の異常は、スタンダードが13・18・21番+性染色体、プレミアム・ダイヤモンドが13・18・21・15・16・22番+性染色体、インペリアルが全常染色体(1〜22番)+性染色体です。双子の妊娠では、スタンダードプランと双子マックスプラン(全常染色体・92種類の微小欠失・重複+5Mbを超える構造異常。性染色体は調べません)が対象です。

35歳でのプランの考え方

どのプランを選ぶかに正解はありませんが、年齢から考える目安はあります。まず、年齢とともに増えるのは染色体の数の変化です。13・18・21番だけでなく、全常染色体や微小欠失まで広く見るプランは、この変化をより広い範囲で拾うことができます。次に、お父さんの年齢が高い場合は、新生突然変異による単一遺伝子の病気を調べられるダイヤモンドプランやインペリアルプランが選択肢になります。こうした単一遺伝子疾患は1つひとつはまれですが、30遺伝子・25疾患を対象とした単一遺伝子NIPTの報告では、対象疾患を合わせた集団頻度は約600人に1人(0.17%)とされています[22][23]。ただし、これは複数の異なる単一遺伝子疾患を合算した推定頻度であり、個々の疾患の頻度とは異なります。当院のインペリアルプランでは、最大155遺伝子のde novo変異を対象にしています(ダイヤモンドプランは56遺伝子)。インペリアルプランと同じ155遺伝子・202疾患のパネルを、超音波異常を認める750例の高リスク妊娠で検証した研究では、陽性的中率96.9%、感度100%、特異度99.9%と報告されています。一般妊婦集団で同じ性能が得られることを示した研究ではない点に注意が必要です[24]。

ただし、ご夫婦の年齢や家族歴、どこまで知りたいかによって、合うプランは変わります。ミネルバクリニックでは、常駐する臨床遺伝専門医による遺伝カウンセリングの中で、各プランで分かること・分からないことを確認しながら、ご夫婦で選んでいただけます。

⚠️ 正直にお伝えしたい限界

NIPTでわかるのは、自閉症・発達障害・知的障害の原因の一部です。NIPTが陰性でも、自閉症・発達障害・知的障害がないとは言えません。大半は染色体や遺伝子の検査では原因が見つからないためです。微小欠失・重複の陽性的中率は、対象疾患、検査方式、欠失・重複サイズ、事前確率などによって大きく異なります。陽性の場合は羊水検査などの確定検査が必要です。脆弱X症候群のように、NIPTでは調べられない原因もあります。また、同じ染色体や遺伝子の変化でも、症状の出方や重さには幅があり、NIPTで予測することはできません。

もっと詳しく知りたい方へ:自閉症とNIPTの関係は自閉症はNIPTでわかりますか?、高齢出産と自閉症の関係は高齢出産と自閉症の確率、微小欠失の陽性的中率はNIPT 微小欠失の陽性的中率はどのくらい?、NIPTでは調べられない代表的な原因は脆弱X症候群(ぜいじゃくエックスしょうこうぐん)で解説しています。

\ 陽性でも、確定検査(羊水検査・絨毛検査)まで院内で受けられます。主要な検査項目は3日以内に、マイクロアレイ検査は2週間ほどで結果が出ます /

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35歳で2人目・3人目を出産する場合

前の妊娠で染色体数的異常がなかった場合でも、染色体の数の変化の確率は、上の子が健康だったかどうかではなく、今回の妊娠のときの年齢で決まります。不分離は卵子ができるたびに偶然起こるもので、前の妊娠の結果が次の妊娠の確率を下げることはありません。35歳で2人目を出産するなら、35歳の確率がそのまま当てはまります。お父さんの年齢による新生突然変異も、上の子のときより年齢が上がっている分だけ増えます。

一方で、経産婦であることで変わる点もあります。日本の定義では高年初産婦にはあたらず、出産の経過は初産に比べて短くなる傾向があります。ただし、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病といった合併症は年齢とともに増えるため[4]、2人目だからと健診の間隔をあけすぎないことが大切です。出生前検査には実施できる妊娠週数の目安があるため、希望する場合は妊娠週数に応じて検討します。

なお、上の子がダウン症候群など染色体の数の変化をもっていた場合は、次の妊娠での確率が年齢の数字より少し高く見積もられることがあり、転座型であれば両親の染色体検査が必要になります。上の子がいる家庭でのNIPTの考え方は35歳で二人目を妊娠したとき、上の子がいるからこそ考えたいNIPTで解説しています。

35歳でNIPTを受けるときに知っておきたいこと

当院のNIPTは通常妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週も臨床研究として受けられます。かつて日本では、NIPTを受けられるのは主に35歳以上の方とされていましたが、現在は年齢にかかわらず情報提供を受けて検討できるようになっています。それでも35歳前後で出生前検査を考える方が多いのは、ここまで見てきたように、年齢とともに染色体の数の変化の確率が上がるからです。35歳でNIPTを受ける方の割合は35歳でNIPTを受ける割合は?にまとめています。

NIPTを考えるときに知っておきたいのが、陽性的中率です。陽性的中率とは、NIPTで陽性と出た人のうち、実際に赤ちゃんにその変化がある人の割合です。この値は検査の性能だけでなく、検査を受ける人のもともとの確率によって変わります。同じ検査でも、もともとの確率が高い年齢ほど、陽性の結果が本当に当たっている割合は高くなります。逆に言えば、どの年齢でも陽性は「確定」ではなく、確定検査が必要です。精度の考え方はNIPTの精度・陽性的中率で解説しています。

① 遺伝カウンセリング何を調べるかを選ぶ
▶
② NIPT採血によるスクリーニング
▶
③ 陽性なら確定検査院内で羊水検査・絨毛検査
▶
④ 結果をもとに考えるその後の妊娠の過ごし方

陽性でも院内で確定検査まで

NIPTで陽性となった場合は、結果を確定するために羊水検査・絨毛検査などの診断検査を検討します。ミネルバクリニックは2025年6月から産婦人科を併設し、羊水検査・絨毛検査を院内で行っています。主要な検査項目は3日以内に、マイクロアレイ検査は2週間ほどで結果が出ます。確定検査の内容は羊水検査・絨毛検査をご覧ください。

費用の面では、2つの互助会があります。羊水検査互助会(カトレア会)は、当院でNIPTを受検する方が全員参加する互助会(入会金8,000円)で、規約の対象となる陽性または判定不能時の羊水検査・絨毛検査について検査費用の実費を負担します(入院費・マイクロアレイ等は対象外)。安心検査結果保障制度は、再検査が必要になったのに、流産して再検査ができず結果が出なかったときに、検査代金(諸費用を除く)が返金される仕組みです。陽性の場合は、陽性後のカウンセリングを何度でも無料で受けられます。

料金に含まれるもの・検査の方式

NIPTの料金には、臨床遺伝専門医による遺伝カウンセリング(90分の受診枠の中で行います)、4Dエコー、性別判定が含まれます。検査結果の作成費用は料金に含まれず、別途3,300円がかかります。検査料金のほかに必ずかかる費用は、この結果作成費用を含めて合計17,850円です。陰性の場合、結果はマイページでお知らせします。プランごとの料金はNIPTの料金のページをご覧ください。来院が難しい方は、Zoomでの遺伝カウンセリングと全国110か所の採血協力施設での採血を組み合わせたオンラインNIPTも利用できます。

検査方式もプランごとに異なります。スタンダードプランは標的捕捉濃縮法、ダイヤモンドプランは「COATE法」(胎児・母体cfDNAの遺伝的デコンボリューションを用いる解析法)、インペリアルプランは低深度全ゲノムシーケンスとターゲット法を組み合わせた方式です。

※COATE法は、read depth、allelic fraction、linked SNPなど複数の情報を統合して胎児由来と母体由来のcfDNAを解析する手法として報告されています。

💡 用語解説:陽性的中率(ようせいてきちゅうりつ)

検査で陽性と出た人のうち、本当にその病気や変化がある人の割合です。たとえば陽性的中率が80%なら、陽性の人の5人に1人は実際には変化がない(偽陽性)ということになります。もともとの確率が低い集団ほど、陽性的中率は下がるという性質があるため、年齢や調べる項目によって値が変わります。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【調べられることと、調べられないことを分けて考える】

出生前検査の範囲が広がるほど、「これで全部わかる」と受け取られやすくなります。けれども、どれほど範囲の広いNIPTでも、自閉症や発達障害の原因の大半は染色体や遺伝子の検査では分かりません。調べられる範囲を大きく見せることは、検査を受けた方の誤った安心につながりかねないと考えています。

一方で、ダウン症候群や一部の微小欠失、新生突然変異による単一遺伝子の病気のように、知的障害や発達の遅れの原因になる変化を妊娠中に知る手段があることも事実です。何が分かり、何が分からないのか。陽性のときに何が必要になるのか。その全体を理解したうえで、ご夫婦で納得できる選択をしていただくことが、臨床遺伝専門医による遺伝カウンセリングの役割だと考えています。

ダウン症候群だけで大丈夫? ― 「値段」ではなく「調べられる範囲」で選ぶ

35歳の妊娠では、年齢とともに確率が上がるダウン症候群にまず目が向き、「ダウン症候群だけが心配」とおっしゃる方は少なくありません。けれども、出生前検査で調べる病気は、どれも赤ちゃんとご家族の暮らしに大きくかかわります。前の章で見たとおり、ご家族の子育ての負担を最も大きく左右するのは、知的障害の程度よりも、攻撃的な行動や自傷、睡眠の問題といった「行動の問題」です[25]。そして、行動の問題を伴いやすい病気には、ダウン症候群ではなく、微小欠失症候群や単一遺伝子疾患が多く含まれます[25][26]。これらの病気は、三大トリソミーだけを調べる検査の対象には入っていません。

出生前検査の結果は、赤ちゃんとご家族のその後の人生にかかわるかもしれません。「安さ」だけで選んで大丈夫でしょうか。

プランを比べるときの1つの見方として、調べられる病気の数で割って考えてみます。三大トリソミーだけを調べる検査を仮に10万円とすると、1つの病気あたりは約3万3千円です。当院のインペリアルプランは、全常染色体と性染色体の数の異常、92種類の微小欠失・重複、202の単一遺伝子疾患が対象で、性染色体の数の異常を含めて、数えられる病気だけで320になります。1つの病気あたりにすると約1,700円です。加えて、5Mbを超える欠失・重複はすべての染色体で調べているため、実際には数えきれないほどの変化が対象になっています。数えられる分だけでも、これだけの範囲を調べられるということです。

プラン 主に調べる範囲 数えた病気の数 1つの病気あたり
三大トリソミーだけを調べる検査
(仮に10万円とした場合)
13・18・21トリソミー 3 約33,333円
スタンダード
(220,000円)
13・18・21トリソミー、性染色体の数の異常、微小欠失6種類7疾患 14 約15,714円
プレミアム
(264,000円)
13・18・21・15・16・22トリソミー、性染色体の数の異常、微小欠失12種類13疾患 23 約11,478円
ダイヤモンド
(407,000円)
プレミアムの範囲+単一遺伝子56 79 約5,152円
双子マックス
(440,000円)
全常染色体の数の異常、92種類の微小欠失・重複、5Mbを超える構造異常 114+α 約3,860円
インペリアル
(550,000円)
全常染色体の数の異常、性染色体の数の異常、92種類の微小欠失・重複、5Mbを超える構造異常、単一遺伝子202疾患 320+α 約1,719円

※価格は事前学習動画を見て来院した場合の当日割引後の税込価格です。最新の料金は料金ページをご確認ください。※病気の数は、数の異常・微小欠失・重複・単一遺伝子疾患を1つずつ数えたものです。性染色体の数の異常は4種類(ターナー症候群・クラインフェルター症候群・トリプルX症候群・XYY症候群)として数えています(性染色体を調べるのはスタンダード・プレミアム・ダイヤモンド・インペリアル。双子マックスは調べません)。5Mbを超える構造異常は数に入れていないため、双子マックスとインペリアルは実際にはさらに多くの変化を調べています。※『三大トリソミーだけを調べる検査』は計算のための仮の例で、特定の施設の価格ではありません。

各プランで調べられる病気の内訳は、スタンダードプラン、プレミアムプラン、ダイヤモンドプラン、双子マックスプラン、インペリアルプランの各ページで確認できます。

ただし、調べる病気の数が多いほど良い検査、というわけではありません。調べる範囲が広がれば、陽性になる可能性も、確定検査が必要になる場面も増えます。陽性の場合は確定検査で確かめることが前提で、当院では確定検査(羊水検査・絨毛検査)まで院内で受けられます。陽性的中率の考え方はNIPTの精度・陽性的中率のページで解説しています。だからこそ、検査前の遺伝カウンセリングで、ご夫婦の年齢やご家族の状況に合わせてプランを選びます。

🏥 35歳の妊娠で、赤ちゃんの染色体・遺伝子について知りたい方へ

ダウン症候群だけでなく、18・13トリソミーや微小欠失症候群、一部の自閉症・発達障害・知的障害の原因まで、当院のNIPTでわかります。どこまで調べたいかは、ご家族によって違います。90分の受診枠の中で、常駐する臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを行い、各プランの対象範囲と限界を説明します。来院が難しい方は、オンラインNIPT(Zoomでのカウンセリング+全国110か所の採血協力施設で採血)もご利用いただけます。

よくある質問(FAQ)

Q1. 34歳と35歳で、出産のリスクは何が違いますか?

体の中で起きている変化は、34歳と35歳でほとんど同じです。妊娠のしやすさや流産、染色体の数の変化の確率は、30代に入ってから年齢とともに連続的に変わっていきます。35歳は、日本で高年初産婦と呼ぶ区切りであり、検査や健診の目安をそろえるための線です。ご自身の年齢での具体的な数字を知って判断することが大切です。

Q2. ダウン症候群だけ調べれば大丈夫ですか?

ダウン症候群だけを調べれば大丈夫、とは言えません。35歳ではダウン症候群の確率が話題になりやすいのですが、知的障害を伴う病気のご家族を比べた研究では、スミス・マゲニス症候群、ウィリアムズ症候群、プラダー・ウィリー症候群のご家族のほうが、ダウン症候群のご家族より子育てのストレスが高いと報告されています。ストレスに最も強くかかわっていたのは、知的障害の程度よりも行動の問題でした。こうした病気は、三大トリソミーだけを調べる検査ではわかりません。当院では、22q11.2欠失症候群やスミス・マゲニス症候群、プラダー・ウィリー症候群、アンジェルマン症候群などの微小欠失をスタンダードプランから、ウィリアムズ症候群をインペリアルプラン(双子の妊娠では双子マックスプラン)で、単一遺伝子疾患をダイヤモンドプラン・インペリアルプランで調べられます。どこまで調べるかは、検査前の遺伝カウンセリングで一緒に考えます。

Q3. 35歳で2人目を出産する場合も高齢出産ですか?

日本の定義(高年初産婦)は初産を対象にしているため、経産婦は含まれません。ただし、赤ちゃんの染色体の数の変化の確率や、妊娠高血圧症候群・妊娠糖尿病などの合併症は、初産か経産かにかかわらず年齢とともに上がります。上の子が健康だったことで、今回の確率が下がるわけではありません。

Q4. 夫が年上だと、赤ちゃんへの影響はありますか?

父親の年齢が1歳上がるごとに、子どもに伝わる新生突然変異が約2個ずつ増えると報告されています。大部分は健康に影響しない場所に起こりますが、ごく一部が知的障害や発達の遅れを伴う単一遺伝子の病気の原因になることがあります。ミネルバクリニックでは、ダイヤモンドプラン(56遺伝子)とインペリアルプラン(最大155遺伝子)で、新生突然変異による病気の一部を調べられます。

Q5. 葉酸を飲んでいれば、ダウン症は防げますか?

妊娠前からの葉酸の摂取は、二分脊椎などの神経管閉鎖障害を減らす目的で勧められているものです。ダウン症候群のような染色体の数の変化は、卵子ができるときの不分離で起こるため、葉酸で防げるという効果は確認されていません。葉酸は大切ですが、染色体の数の変化とは分けて考えてください。

Q6. NIPTが陰性なら、自閉症や発達障害の心配はありませんか?

いいえ、そうとは言えません。当院のNIPTでわかるのは、ダウン症候群や一部の微小欠失・重複、一部の単一遺伝子の病気など、原因になりうる変化の一部です。自閉症・発達障害・知的障害の大半は染色体や遺伝子の検査では原因が見つからず、脆弱X症候群のようにNIPTの対象外の原因もあります。NIPTで一部わかる一方で、陰性がすべてを否定するものではない点を理解したうえで、検査を選んでください。

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参考文献

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※本記事は一般の方に向けた情報提供を目的とするもので、個別の診断・治療方針を示すものではありません。妊娠中の検査については、主治医・専門医にご相談ください。

プロフィール
仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、
臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。
のべ10万人以上のご家族の意思決定と向き合ってきた臨床遺伝専門医です。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、
検査結果の数値そのものだけでなく、
「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、
一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、
日本人として異文化の中で生活した経験があります。
価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。
この経験は現在の診療においても、
「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、
36週6日で一人を死産した経験があります。
その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、
そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。
現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、
出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、
家族の未来に関わる重要な意思決定です。
年齢や統計だけで判断するのではなく、
医学的根拠と心理的支援の両面から、
ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/
日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。

2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、
複数の海外メディア・専門誌で特集掲載
されました。

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