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PGT-Aとは?わかること・費用・先進医療と保険適用、正常胚の確率と妊娠後のNIPTまで

仲田洋美 医師

この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

記事の作り方(編集方針)

PGT-A(着床前胚染色体異数性検査)とは、体外受精で育てた胚(胚盤胞)から細胞を数個採り、染色体の「数」に過不足がないかを調べてから、移植する胚を選ぶための検査です。日本では日本産科婦人科学会の細則で受けられる人が決められていて、2025年9月の改定で「35歳以上を目安とする高年齢の不妊症」が対象に加わりました。一方で、PGT-Aは赤ちゃんの染色体を確定させる検査ではなく、単一遺伝子の病気や微小欠失は調べられません。この記事では、PGT-Aでわかること・わからないこと、受けられる条件、判定A〜Dの読み方、先進医療と保険適用の今(2026年10月時点)、成績と「意味ない」と言われる理由、そして正常胚で妊娠したあとに何を確かめられるかまでを、臨床遺伝専門医の立場から順に解説します。

⏱️ 30秒でわかる要約

🧫 Q. PGT-Aとは何を調べる検査ですか?

体外受精で育てた胚盤胞の、将来胎盤になる部分から5〜10個ほどの細胞を採り、染色体の数に過不足がないかを調べて、移植する胚を選ぶ検査です。結果はA〜Dの4つに分けて伝えられます。

🏥 Q. PGT-Aは保険適用ですか?先進医療ですか?

2026年10月時点で保険適用ではありません。先進医療として告示されていて、厚生労働省の指定を受けた医療機関では、保険診療の体外受精・顕微授精と組み合わせて受けられます。先進医療の部分は全額自己負担です。

🧬 Q. PGT-Aで自閉症や発達障害はわかりますか?

PGT-Aでは調べられません。自閉症・発達障害・知的障害の原因の一部は、微小欠失や単一遺伝子の変化で、PGT-Aの対象外です。妊娠したあとなら、当院のNIPTでその一部を調べられます(プランによって範囲が違います)。

🌸 Q. 正常胚(A判定)を移植したら、妊娠後の検査はいりませんか?

米国産科婦人科学会(ACOG)は、PGT-Aを受けた方にも、妊娠後の出生前スクリーニング検査や確定検査を提示すべきとしています。PGT-Aは胚の一部の細胞しか見ていないためです。当院のNIPTは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。

\ PGT-Aのあとの妊娠、ダウン症候群のほかも確かめたい方へ /

📅NIPTを予約する

PGT-Aでは調べられない微小欠失や単一遺伝子の変化まで、当院のNIPTで調べられます(プランにより範囲が違います)。体外受精で妊娠した方も受けられます。
着床前診断のあとのNIPTについて | ダイヤモンドプラン

PGT-Aとは?体外受精の胚で染色体の「数」を調べる検査

PGT-Aは「preimplantation genetic testing for aneuploidy」の略で、日本産科婦人科学会は「着床前胚染色体異数性検査」と呼んでいます[1]。体外受精で育てた胚を子宮に戻す前に、染色体の数を調べ、移植する胚を選ぶための検査です。

人の細胞には、ふつう23対・46本の染色体があります。このうちどれかの本数が多かったり少なかったりする状態を「異数性」といいます。厚生労働省の先進医療の審査資料では、移植できる状態まで育った胚の半数以上に染色体の数の異常が見つかり、そのために着床しない、または流産に至ることが明らかになってきた、と説明されています。年齢が高くなるほど、その傾向がはっきりするとされています[5]。PGT-Aは、こうした胚を移植する前に見分けることで、着床や妊娠の継続につながる胚を選ぶことを目指します。

💡 用語解説:異数性(いすうせい)

染色体の本数が46本から増えたり減ったりしている状態です。1本多いものをトリソミー、1本少ないものをモノソミーといいます。卵子や精子ができるときの減数分裂で、染色体がうまく分かれないこと(染色体不分離)が主な原因で、卵子では母体の年齢とともに起こりやすくなります。しくみは染色体の数的異常とはとなぜ卵子で染色体異常(異数性)が起こるのかで解説しています。

検査の流れ:胚盤胞から5〜10個の細胞を採る

卵巣刺激と採卵は、それぞれの施設が行っている通常の体外受精と同じ方法で行います[1]。受精卵を胚盤胞まで育ったら、将来胎盤になる部分(栄養外胚葉)から5〜10個ほどの細胞を採ります[3]。採った細胞のDNAを増やし、アレイCGH法や次世代シークエンサー(NGS)などの方法で、染色体の数や構造の異常を判定します[1]。胚は凍結して結果を待ち、結果を受けて移植する胚を決めます。

① 採卵・受精通常の体外受精と同じ
▶
② 胚盤胞まで培養胎盤側の細胞を採る
▶
③ 染色体を解析胚は凍結して待つ
▶
④ 判定A〜D説明を受けて移植胚を決める

大事なのは、PGT-Aが見ているのは赤ちゃんになる部分(内細胞塊)ではなく、胎盤になる部分の数個の細胞だという点です[3]。この点が、あとで説明する「わからないこと」の多くにつながっています。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【PGT-Aは「胚を選ぶ検査」で、「赤ちゃんを確かめる検査」ではありません】

PGT-Aという名前に「遺伝学的検査」と入っているため、受けたら赤ちゃんの遺伝のことが全部わかる、と受け止められやすい検査だと考えています。けれども、PGT-Aの役割は、移植する前の胚の中から、染色体の数がそろっている可能性の高い胚を選ぶことです。

臨床遺伝専門医として大切だと考えているのは、「どの時期に、何を材料に、何を調べた検査か」を分けて理解しておくことです。PGT-Aは移植の前に胎盤側の細胞で染色体の数を調べ、NIPTは妊娠したあとにお母さんの血液で胎盤由来のDNAを調べ、羊水検査は赤ちゃん由来の細胞で確かめます。それぞれ役割が違う検査です。

PGT-Aでわかること・わからないこと

PGT-Aでわかるのは、主に常染色体の数の過不足です。一方で、米国産科婦人科学会(ACOG)は、今のPGTではすべての微小欠失・微小重複は見つけられず、新しく起きた病的な遺伝子の変化(de novo変異)も見つけられないとしています[10]。

🔍 PGT-Aでわかること・わからないこと

区分 内容
わかること 常染色体の数の過不足(トリソミー・モノソミーなど)、一部の細胞だけに異常があるモザイクの可能性、解析方法によっては大きな構造の異常[1]
わからないこと 単一遺伝子の病気(de novo変異を含む)、すべての微小欠失・微小重複[10]
確かではないこと 赤ちゃんになる部分の染色体(調べているのは胎盤になる部分の細胞)。偽陽性・偽陰性が起こりうる[10]
原則として伝えられないこと 性染色体の結果(性別)。性染色体に異常があるときだけ、臨床遺伝専門医が必要と判断した場合に開示される[1]

出典:日本産科婦人科学会のPGT-A細則(2026年9月改定)[1]、ACOG Committee Opinion No.799[10]

ACOGは、PGTで陰性(異常なし)という結果は、遺伝的な異常のない赤ちゃんが生まれることを保証するものではないとも述べています[10]。「正常胚なのにダウン症候群だった」がどのくらい起こるのか、なぜ起こるのかは、着床前診断でダウン症は防げる?NIPTとの違いと限界でくわしく解説しています。

また、着床しない・流産する原因は胚の染色体だけではありません。子宮の形や、お母さん側の病気が関わる場合もあります。流産をくり返す方は、PGT-Aとは別に、不育症の検査で原因を調べることが大切です。

⚠️ 知っておきたいこと:自閉症・発達障害とPGT-A

自閉症・発達障害・知的障害の原因の一部は、微小欠失や単一遺伝子の変化です。これらはPGT-Aの対象外なので、正常胚と判定されても、こうした原因がないことまではわかりません。妊娠したあとであれば、当院のNIPTで一部を調べられます(詳しくは妊娠後のNIPTの章)。

PGT-A・PGT-SR・PGT-Mの違い

着床前に胚を調べる検査(着床前遺伝学的検査:PGT)には、目的の違う3つの種類があります。日本産科婦人科学会は、PGT-AとPGT-SRを「不妊症および不育症を対象」とし、PGT-Mを「重篤な遺伝性疾患を対象」として、それぞれ別の指針・細則で決めています[2]。PGT-Aは「誰の胚にも起こりうる染色体の数の変化」、PGT-SRは「親の染色体の構造の変化に由来する異常」、PGT-Mは「家族に分かっている特定の遺伝子の病気」を調べる、と分けると理解しやすくなります。

🧬 着床前遺伝学的検査(PGT)3つの違い

検査 調べるもの 主な対象
PGT-A(着床前胚染色体異数性検査) 染色体の数の過不足 反復する体外受精の不成功、反復する流死産、高年齢の不妊症[1]
PGT-SR(着床前胚染色体構造異常検査) 親の均衡型転座などに由来する、染色体の構造の異常 夫婦のどちらかに染色体の構造の変化(均衡型転座など)が確認されている不育症(もしくは不妊症)[12]
PGT-M(重篤な遺伝性疾患を対象とした着床前遺伝学的検査) 家族に分かっている、特定の単一遺伝子の病気 重篤な遺伝性疾患の子どもが生まれる可能性があるご夫婦[2]

※検査の種類どうしの比較です。実施できる施設は、それぞれ日本産科婦人科学会の認定を受けた施設です[1]。

PGT-Aの細則では、反復する体外受精の不成功・反復する流死産の方について、夫婦のどちらかに均衡型染色体転座などの構造の変化が見つかっている場合は、PGT-Aの対象から除くとされています[1]。その場合に考えるのはPGT-SRです。均衡型転座のしくみは均衡型構造異常で、PGT-SRはPGT-SR(着床前胚染色体構造異常検査)とはで解説しています。

PGT-Mは、ご家族に原因の分かっている遺伝性の病気があるときの検査で、しくみは着床前遺伝学的検査(PGT-M)とはで解説しています。PGT-Mを考える前に、まずご夫婦がその病気の保因者かどうかを知ることが出発点になります。当院では、NIPTと同時に行うカップルの保因者検査ファミリーセーフティ プラス(女性787遺伝子・男性714遺伝子、NIPTと同じ日に採血できます。単独では受けられません)を行っています。PGT-Mだけが選択肢ではない理由は、着床前診断(PGT-M)だけが選択肢ではない理由をご覧ください。

PGT-Aを受けられる人(条件):2025年9月に35歳以上が追加

日本でPGT-Aを受けられる人は、日本産科婦人科学会の細則で決められています。2026年9月改定の細則では、次の3つのどれかに当てはまる夫婦が対象です[1]。

  • ➤反復する体外受精/顕微授精・胚移植の不成功の既往がある不妊症の夫婦
  • ➤反復する流死産の既往がある不育症の夫婦
  • ➤女性が高年齢の不妊症の夫婦(2025年9月の時点では、女性の年齢35歳以上を目安とする)

3つ目の「高年齢の不妊症」は、2025年9月6日の改定で加わった条件です[1]。それまでは、くり返し体外受精がうまくいかなかった方や、流産をくり返した方が対象でした。なお、1つ目・2つ目の「反復」が何回以上かは、細則には書かれていません[1]。実際に対象になるかは、実施施設で確認することになります。

PGT-Aを行えるのは、日本産科婦人科学会の施設認定を受けた施設で、施設内に常勤する生殖医療専門医や、染色体解析の専門家、臨床遺伝専門医(施設内に常勤、または連携する外部の医師)の体制が求められています[1]。不育症の原因になる染色体の話は不育症の原因になる染色体異常とはで解説しています。

検査の前後には遺伝カウンセリングがある

学会の指針では、検査を行う前と、結果が出て胚を移植する前の2つの時点で遺伝カウンセリングを行うことになっています[2]。さらに細則では、結果の解釈に専門性の高い知識が必要なとき、夫婦の染色体に由来する異常が疑われるとき、性染色体に変化があったとき、夫婦が希望したときなどに、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングを担当するとされています[1]。

ミネルバクリニックでは、体外受精やPGT-Aは行っていません。行っているのは、PGT-Aを考えている方・受けた方の遺伝カウンセリングと、妊娠したあとのNIPT・確定検査(羊水検査・絨毛検査)です。PGT-Aを受けるかどうか、どの胚を移植するかは、不妊治療を受けている施設で決めることになります。

PGT-Aの結果は、日本産科婦人科学会の細則で決められたA・B・C・Dの4つのカテゴリーで判定され、常染色体の解析結果と合わせて夫婦に説明されます[1]。

📋 PGT-Aの判定カテゴリー(日本産科婦人科学会の細則)

判定 細則での定義 言いかえると
A 常染色体が正倍数性である胚 調べた細胞では、常染色体の数がそろっている(いわゆる正常胚)
B 常染色体の数的あるいは構造的異常を有する細胞と、正倍数性細胞とのモザイクである胚 正常な細胞と異常のある細胞が混ざっている(モザイク胚)
C 常染色体の異数性もしくは構造異常を有する胚 調べた細胞に、染色体の数や構造の異常がある
D 解析結果の判定が不能な胚 うまく解析できず、判定できなかった

出典:日本産科婦人科学会「不妊症および不育症を対象とした着床前胚染色体異数性検査(PGT-A)に関する細則」[1]。厚生労働省の先進医療の資料でも同じ4分類が使われています[3]。

どの胚を移植するかは、解析結果について遺伝カウンセリングを受けたあとの、夫婦の自律的な意思で決めるとされています[1]。A判定は「調べた細胞では数がそろっていた」という意味で、赤ちゃんの染色体が正常と確定したという意味ではありません[10]。

PGT-Aで性別はわかる?産み分けはできる?

PGT-Aの解析では性染色体も読まれますが、日本では性別は原則として知らされず、産み分けにも使えません。学会の指針は「本法を用いて出生児の性別選択を行ってはならない」とし、性染色体の結果は原則として開示しない、ただし性染色体に何らかの異常が確認された場合にだけ開示を許容する、としています[2]。細則では、性染色体に異常がない場合は性染色体の情報が開示されないことを、同意書で確認することになっています[1]。

妊娠したあとのNIPTで赤ちゃんの性別が分かったとき、PGT-Aの結果と食い違って見えることがあります。その理由は性別が違う|NIPTの間違い?で解説しています。

B判定(モザイク胚)を移植するかどうか

B判定のモザイク胚は、「移植できない胚」と決まっているわけではありません。医師も患者さんも判定を知らないまま胚を移植した前向き試験では、異常のある細胞が50%未満の低〜中程度のモザイク胚(低程度282個・中程度131個)と、正倍数性の胚484個とで、出産に至る割合や流産の割合に差がなく、その後の妊娠や生まれた赤ちゃんにもモザイクは見つかりませんでした[11]。

ただし、モザイクの種類や割合によって見通しは変わります。ACOGは、モザイクと判定された胚を移植して妊娠した場合には、絨毛検査または羊水検査による出生前診断を強く勧めるとしています[10]。NIPTは胎盤由来のDNAを調べるスクリーニング検査なので、モザイクかどうかを確かめる検査にはなりません。胎盤と赤ちゃんで染色体が食い違うしくみはNIPTのモザイクとは?胎盤限局性モザイクのしくみで解説しています。

PGT-Aは保険適用?先進医療・費用・助成金(2026年10月時点)

2026年10月時点で、PGT-Aは保険適用ではありません。先進医療として告示されていて、厚生労働省から実施医療機関の指定を受けた医療機関で受ける場合は、保険診療の体外受精・顕微授精と組み合わせて受けられます[7]。指定を受けていない施設で受ける場合は、体外受精を含めて自費診療になります。

先進医療だと、費用はどうなる?

先進医療では、先進医療にかかる費用は全額自己負担で、診察・検査・投薬など通常の治療と共通する部分は、一般の保険診療と同じように扱われ、自己負担の割合分を支払います[6]。つまり、PGT-Aの検査の部分は全額自己負担、採卵や胚移植など保険診療の体外受精の部分は保険で、という組み合わせになります。

PGT-Aの費用は、検査する胚の数や施設によって異なります。金額は受ける施設で、胚1個あたりか、1回の治療あたりかを含めて内訳を確かめることをおすすめします。

助成金:東京都の例

自治体によっては、先進医療の費用に助成があります。たとえば東京都の不妊治療費助成(先進医療)では、PGT-Aも対象の技術に含まれています。2026年4月1日以降に始めた治療では、保険診療分と先進医療分を合わせて、1回の治療につき上限15万円の助成を受けられます。治療開始日の妻の年齢が43歳未満であることや、登録された医療機関で受けることなどの条件があります[7]。制度は自治体ごとに違い、変わることもあるので、お住まいの自治体の最新の案内を確認してください。

先進医療として行われた臨床研究の結果

日本では、大阪大学医学部附属病院が申請した先進医療として、2023年4月から2025年8月までPGT-Aの臨床研究が行われました。2025年12月に厚生労働省の先進医療技術審査部会で、その総括報告書が評価されています[4]。

📊 先進医療で行われたPGT-Aの臨床研究(大阪大学医学部附属病院申請)

項目 結果
PGT-Aを行った人 344人
胚移植まで進んだ人 218人
妊娠12週時の継続妊娠率 48.6%(95%信頼区間42.0〜55.3%)。あらかじめ決めた基準値42.4%を上回ったが、統計的な差は示せなかった
臨床的妊娠率(補足の解析) 57.8%(基準値を統計的に上回った)
流産率 15.9%(基準値を統計的に下回った)
胚の損傷 生検による損傷はなし。凍結融解による損傷が1件(0.5%)

出典:厚生労働省 第182回先進医療技術審査部会「着床前胚異数検査1(告示旧48)の総括報告書に関する評価について」(2025年12月)[4]。基準値42.4%は、日本産科婦人科学会のARTデータ(PGT-Aを行わない体外受精)から求めた値です。PGT-Aを行わない群と直接比べた研究ではなく、この基準値と比べています。

審査部会は、主要な評価項目では基準値との差を示せなかったものの、補足の解析で有効性が示されたとし、今後は比較対照試験などで有効性と安全性を確かめる必要があるとしています[4]。保険適用になるかどうかは、こうした検証の結果を待つことになります。

PGT-Aの成績と「意味ない」と言われる理由

「PGT-Aは意味ない」という声があるのは、体外受精を受けるすべての人に役立つ検査かどうかは、まだ示されていないからです。米国生殖医学会(ASRM)は2024年の委員会意見で、体外受精を受けるすべての患者さんへの一律の検査としてのPGT-Aの価値は示されていない、臨床的な流産を減らす価値もはっきりしない、としています[9]。

大規模なランダム化比較試験の結果

中国で行われた多施設共同のランダム化比較試験では、20〜37歳で、質のよい胚盤胞が3個以上得られた女性1,212人を、PGT-Aを行う群と行わない群に分けました。累積の出産率はPGT-Aを行った群で77.2%、行わなかった群で81.8%でした。著者は、この条件の女性では、PGT-Aを行わない通常の体外受精の累積出産率がPGT-Aに劣らなかった、と結論しています。流産率はPGT-A群8.7%、行わなかった群12.6%でした[8]。

この試験の対象は、年齢が比較的若く、胚がたくさん得られた方です。日本の細則で対象になっている、くり返し体外受精がうまくいかなかった方、流産をくり返した方、35歳以上を目安とする高年齢の方とは条件が違います。数字をそのまま当てはめないことが大切です。

「意味ない」と感じやすい3つの場面

  • ➤移植できる胚が残らない:先進医療の研究では、PGT-Aを行った344人のうち胚移植まで進んだのは218人でした[4]。検査によって移植の回数が減る一方で、移植できる胚がないと分かることもあります。
  • ➤戻せたかもしれない胚が選ばれない:ASRMは、モザイクや偽陽性の判定のために、生まれる力のある胚が使われなくなる可能性を指摘しています[9]。
  • ➤正常胚でも着床しない・流産する:着床や流産には、胚の染色体の数以外の原因も関わります。正常胚と判定されても、妊娠が保証されるわけではありません[10]。

PGT-Aを受けた方の経験から見えるデメリットはPGT-Aのデメリットとは?体外受精で妊娠した女性の実体験、デメリットの整理はPGT-Aのデメリットを詳細解説でご覧いただけます。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「意味ない」か「意味がある」かは、誰が受けるかで変わります】

PGT-Aについての研究を読むときに大切だと考えているのは、「誰を対象にした数字か」です。若く、胚がたくさん得られる方では、PGT-Aを行っても出産率は上がりませんでした。一方で、日本の細則が対象にしているのは、くり返し体外受精がうまくいかなかった方、流産をくり返した方、年齢が高い方です。同じ「PGT-A」でも、どの方に使うかで、得られるものは変わると考えています。

もう1つ、PGT-Aは移植の回数や流産の負担を減らすための検査であって、生まれてくる赤ちゃんの健康を確かめる検査ではありません。この2つを混同しないことが、検査を正しく使うことにつながると考えています。

正常胚で妊娠したあとも、NIPT・確定検査で確かめる意味

PGT-Aで正常胚(A判定)を移植して妊娠したあとも、妊娠中に検査で確かめる意味があります。ACOGは、PGT-Aを受けた方を含め、妊娠したすべての方に、出生前のスクリーニング検査や、絨毛検査・羊水検査による診断を提示すべきとしています[10]。理由は2つあります。

1つは、PGT-Aが見たのは胎盤になる部分の数個の細胞で、偽陽性・偽陰性が起こりうることです[10]。もう1つは、PGT-Aが微小欠失・微小重複の一部や、de novo変異による単一遺伝子の病気を調べていないことです[10]。妊娠後のNIPTは、検査の時期も材料も違う、別の角度からの確かめ方になります。

PGT-Aで調べていないものを、妊娠後のNIPTで

当院のNIPTは、プランによって、PGT-Aでは対象外の微小欠失や単一遺伝子の変化まで調べられます。自閉症・発達障害・知的障害を伴うことがある病気のうち、アンジェルマン症候群・プラダー・ウィリー症候群・22q11.2欠失症候群(微小欠失)はすべてのプランで、レット症候群・コルネリア・デ・ランゲ症候群(単一遺伝子)はダイヤモンドプランとインペリアルプランで調べられます。ただし、NIPTで自閉症や発達障害の原因がすべてわかるわけではなく、陰性でも自閉症・発達障害・知的障害がないとは言えません。

🧬 当院のNIPTプランと調べられる範囲

プラン 染色体の数 微小欠失など 単一遺伝子 単胎・双胎
スタンダード 13・18・21トリソミー+性染色体の数の異常 6種類7疾患 ― 単胎・双胎
プレミアム 13・18・21・15・16・22トリソミー 12種類13疾患 ― 単胎のみ
ダイヤモンド プレミアムと同じ プレミアムと同じ de novo 56遺伝子 単胎のみ
双子マックス 全常染色体の数の異常 92種類の微小欠失・重複+5Mbを超える構造異常 ― 単胎・双胎
インペリアル 全常染色体の数の異常 92種類の微小欠失・重複+5Mbを超える構造異常 最大155遺伝子(202疾患) 単胎のみ

料金はNIPTの費用・料金のページでご確認ください。料金には臨床遺伝専門医の遺伝カウンセリング・4Dエコー・性別判定が含まれます。

ダイヤモンドプランは、米国の3大遺伝子検査会社の一角が提供する新技術「COATE法」(SNP法とターゲット法の組み合わせ)※で検査します。精度のデータはCOATE法のエビデンスでご覧いただけます。

※「3大遺伝子検査会社」は、遺伝性がんや周産期(出生前検査・保因者検査)を含む遺伝子検査全般を手がける米国の検査専業会社のうち、2025年通期の売上高が上位の3社を指します(各社の決算発表にもとづく当院調べ)。がん検診やリキッドバイオプシーに特化した会社は含みません。

調べる範囲を広げると、見つけられる病気は増えますが、陽性になる場面や確定検査が必要になる場面も増えます。とくに微小欠失・重複は、染色体の数の異常より陽性的中率が低めで、項目によって60〜70%程度です。陽性なら確定検査で確かめることが前提になります。精度の考え方はNIPTの精度と的中率で解説しています。

受けられる時期と、陽性だったときの流れ

当院のNIPTは妊娠9週から受けられます。さらに、妊娠6〜8週から臨床研究として受けられる体制を整えています。当院のおすすめは8週で、妊娠8週で受けた場合の再検査率は約5%です(当院のデータ)。週数が早いほど、血液中の赤ちゃん由来のDNAが少なく、再検査になることがあります。体外受精で妊娠した方も受けられ、結果は基本的に10〜14日で出ます(インペリアルプランの単一遺伝子の結果だけは3〜4週間、ダイヤモンドプランは単一遺伝子も10〜14日)。

陽性の場合も、確定検査(絨毛検査・羊水検査)まで院内で受けられます。主要な検査項目は3日以内に、マイクロアレイ検査は2週間ほどで結果が出ます。陽性後の遺伝カウンセリングは何度でも無料です。NIPTを受ける方は全員、羊水検査互助会(カトレア会・1回のNIPTにつき8,000円)と安心検査結果保障制度(1回6,000円)に加入し、陽性時の確定検査の費用が補助されます(補助の上限なし)。

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📅NIPTを予約する

陽性でも、確定検査(羊水検査・絨毛検査)まで院内で受けられ、主要項目は3日以内に結果が出ます。
着床前診断のあとのNIPTについて | インペリアルプラン

よくある質問(FAQ)

Q1. PGT-Aとは、何を調べる検査ですか?

体外受精で育てた胚盤胞の、将来胎盤になる部分から5〜10個ほどの細胞を採り、染色体の数に過不足がないかを調べて、移植する胚を選ぶ検査です。日本産科婦人科学会は「着床前胚染色体異数性検査」と呼んでいます。赤ちゃんの染色体を確定させる検査ではなく、単一遺伝子の病気や、すべての微小欠失は調べられません。

Q2. PGT-Aで正常胚を移植しました。妊娠後に、ダウン症候群のほかにも調べておいたほうがよい病気はありますか?

PGT-Aで主に見ているのは染色体の数で、米国産科婦人科学会(ACOG)は、今のPGTではすべての微小欠失・微小重複は見つけられず、新しく起きた遺伝子の変化(de novo変異)も見つけられないとしています。当院のNIPTでは、スタンダードプランから22q11.2欠失症候群やプラダー・ウィリー症候群、アンジェルマン症候群などの微小欠失を、ダイヤモンドプラン・インペリアルプランでは単一遺伝子の病気まで調べられます。どこまで調べるかは、検査前の遺伝カウンセリングで決めます。

Q3. PGT-Aは保険適用ですか?先進医療ですか?

2026年10月時点で保険適用ではありません。先進医療として告示されていて、厚生労働省から実施医療機関の指定を受けた医療機関では、保険診療の体外受精・顕微授精と組み合わせて受けられます。先進医療にかかる費用は全額自己負担で、通常の治療と共通する部分は保険診療と同じように扱われます。

Q4. PGT-Aの費用はいくらですか?助成金はありますか?

費用は、検査する胚の数や施設によって異なるため、受ける施設で内訳を確かめてください。自治体によっては先進医療の費用に助成があります。たとえば東京都では、2026年4月1日以降に始めた治療について、保険診療分と先進医療分を合わせて1回の治療につき上限15万円の助成があり、PGT-Aも対象の技術に含まれています(治療開始日の妻の年齢が43歳未満などの条件があります)。

Q5. 正常胚(A判定)なら、妊娠できる確率はどのくらいですか?

年齢や移植までの経過で大きく変わるため、一つの数字ではお答えできません。日本で先進医療として行われた臨床研究では、胚移植まで進んだ218人の妊娠12週時の継続妊娠率は48.6%、臨床的妊娠率は57.8%、流産率は15.9%でした。正常胚と判定されても、妊娠や出産が保証されるわけではありません。

Q6. PGT-Aで性別はわかりますか?産み分けはできますか?

日本では、性別は原則として知らされず、産み分けにも使えません。日本産科婦人科学会の指針は、出生児の性別選択を行ってはならないとし、性染色体の結果は原則として開示しない、ただし性染色体に何らかの異常が確認された場合にだけ開示を許容する、としています。

Q7. PGT-Aは誰でも受けられますか?

受けられるのは、日本産科婦人科学会の細則で決められた夫婦です。反復する体外受精・胚移植の不成功の既往がある不妊症の夫婦、反復する流死産の既往がある不育症の夫婦、女性が高年齢の不妊症の夫婦(2025年9月の時点で35歳以上が目安)のどれかに当てはまることが条件で、学会の認定を受けた施設で行われます。

Q8. PGT-AとPGT-SR、PGT-Mの違いは何ですか?

PGT-Aは染色体の数の過不足を、PGT-SRは夫婦のどちらかの均衡型転座などに由来する染色体の構造の異常を、PGT-Mは家族に分かっている特定の単一遺伝子の病気を調べる検査です。夫婦のどちらかに染色体の構造の変化が見つかっている場合は、PGT-Aではなく、PGT-SRを考えることになります。

Q9. ミネルバクリニックでPGT-Aは受けられますか?

受けられません。ミネルバクリニックは体外受精やPGT-Aを行っていません。当院で行っているのは、PGT-Aを考えている方・受けた方の遺伝カウンセリングと、妊娠したあとのNIPT・確定検査(羊水検査・絨毛検査)です。当院のNIPTは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。

🏥 PGT-Aのあとの妊娠を、NIPTで確かめる

PGT-Aでは調べられない微小欠失や単一遺伝子の変化、一部の自閉症・発達障害・知的障害の原因まで、当院のNIPTで調べられます(プランにより範囲が違います)。臨床遺伝専門医が常駐し、陽性なら羊水検査・絨毛検査まで院内で受けられます。NIPTは妊娠9週から、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。

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参考文献

  • [1] 日本産科婦人科学会. 不妊症および不育症を対象とした着床前胚染色体異数性検査(PGT-A)に関する細則(令和8年9月5日改定). [日本産科婦人科学会]
  • [2] 日本産科婦人科学会. 不妊症および不育症を対象とした着床前遺伝学的検査に関する指針(2026年改定). [日本産科婦人科学会 倫理に関する見解・指針/細則一覧]
  • [3] 厚生労働省. 第166回先進医療技術審査部会 資料1-4(着床前胚異数性検査 医療技術の概要). 2024年10月10日. [厚生労働省]
  • [4] 厚生労働省. 第182回先進医療技術審査部会「着床前胚異数検査1(告示旧48)」の総括報告書に関する評価について. 2025年12月. [厚生労働省]
  • [5] 厚生労働省. 先進医療B実施計画等評価表(番号B134)着床前胚異数性検査. [厚生労働省]
  • [6] 厚生労働省. 先進医療の概要について. [厚生労働省]
  • [7] 東京都福祉局. 東京都不妊治療費助成事業(先進医療)の概要. [東京都福祉局]
  • [8] Yan J, Qin Y, Zhao H, et al. Live birth with or without preimplantation genetic testing for aneuploidy. N Engl J Med. 2021;385(22):2047-2058. [DOI 10.1056/NEJMoa2103613]
  • [9] Practice Committee of the American Society for Reproductive Medicine. The use of preimplantation genetic testing for aneuploidy: a committee opinion. Fertil Steril. 2024;122:421-434. [ASRM]
  • [10] American College of Obstetricians and Gynecologists. Preimplantation Genetic Testing: ACOG Committee Opinion No. 799. Obstet Gynecol. 2020;135(3):e133-e137. [ACOG]
  • [11] Capalbo A, Poli M, Rienzi L, et al. Mosaic human preimplantation embryos and their developmental potential in a prospective, non-selection clinical trial. Am J Hum Genet. 2021;108(12):2238-2247. [DOI 10.1016/j.ajhg.2021.11.002]
  • [12] 日本産科婦人科学会. 不妊症および不育症を対象とした着床前胚染色体構造異常検査(PGT-SR)に関する細則(2026年6月改定). [日本産科婦人科学会]

※本記事は一般の方に向けた情報提供を目的とするもので、個別の診断・治療方針を示すものではありません。PGT-Aを受けるかどうかは不妊治療を受けている施設で、妊娠後の検査については主治医・臨床遺伝専門医にご相談ください。

プロフィール
仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続け、遺伝医療と出生前診断に携わっています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、検査結果の数値そのものだけでなく、「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、日本人として異文化の中で生活した経験があります。価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。この経験は現在の診療においても、「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、36週6日で一人を死産した経験があります。その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、家族の未来に関わる重要な意思決定です。年齢や統計だけで判断するのではなく、医学的根拠と心理的支援の両面から、ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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