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VUS Variants of Unknown Significance

疾患リスクとの関連が不明確な遺伝子配列の変異のことをvariant of unknown significanceVUS)という。

疾患の原因となる病的バリアントやそうでない良性のバリアントとは異なり、研究者たちがまだそうした「遺伝子の塩基配列異常」が疾患に関与しているかどうかを判断するのに十分な情報を持っていないことを指す。

科学者はそれらを有害または無害とみなすのに十分な情報を収集できるまで収集したうえで分類を変える。

VUSはどれくらいの確率か?

遺伝子検査をして得られるほぼ20%がVUSと判定される。がんに関連するほんの一握りの遺伝子だけを一度に調べるものもあれば、80の遺伝子を分析するもの、1000の遺伝子を調べるもの、また臨床的に意義がある遺伝子約2万を一度に調べるものなどこれらの検査には様々な規模感がある。より多くの遺伝子を調べれば調べるほど、より多くの意義不明の変異VUSが見つかる。

遺伝子のバリアント(変異)が生じる原因とは?

人間の体には体格に左右されるが約70兆個の細胞があり、毎日、古い細胞が死に、新しい細胞が生まれるという新陳代謝を繰り返している。そのたびに、新しい細胞は古い細胞からDNAをコピーする。コピーするときに書き換えが起こりやすいのと、身体の中にも外にもDNAを障害する物質があるのでDNAが傷ついてしまうことは一日一細胞当たり1~100万か所発生するとされている。DNAを傷害する原因は、外的要因としては放射線(日常生活では主に宇宙線)、経口摂取した発がん物質、喫煙、空気や水といった環境中の化学物質、生体内で産生された活性酸素等がありる。これらのDNA損傷DNA修復酵素で修復されるが、非常にまれに修復酵素がエラーを起こす。これが、遺伝子の変異、つまり突然変異の原因となる。ヒトは皆、遺伝子に多くの変異を持っているが、その大部分は無害である。

バリアント(遺伝子変異)はどのように分類されるのか?

アメリカ医遺伝学ゲノム学会は、遺伝子のバリアントをリスクのレベル応じて5つに分類している。最も深刻なものから順に以下のようにランク付けされる。

  1. pathogenic 病原性(有害)
  2. likely pathogenic 病原性の可能性が高い
  3. VUS 重要性不明の変異体
  4. likely benign 良性である可能性が高い
  5. benign 良性(無害)

関連記事:バリアントの分類方法について:2015年5月発表の米国分子病理学会と米国ゲノム・遺伝医学学会のガイドライン
病原性のある変異体は最も一般的ではありません。VUSや良性のバリアントを持つ可能性の方がはるかに高い。

意義不明のバリアントVUSが再分類されることはあるのか?

VUSは、一般集団の当該疾患でない多くの人がこの変異体を持っていることが研究で明らかになった場合や、コンピュータモデルで遺伝的機能に大きな影響を与えないことが示された場合、良性に分類し直される。

また、VUSが病原性に分類されることもあるが、これは稀である。再分類されるバリアントの約9割が「良性」に格下げされ、病原性に格上げされたのは約1割である。

しかし、VUSの再分類には十分な観察期間が必要であるため、数ヶ月、数年、数十年かかることがある。また、決定的な結論を出すのに十分なデータがない場合、再分類されないことある。

バリアントに関する人類の知識の時代変遷

すべてのバリアント(遺伝的変異)はほとんど有害であると信じられていた時代が過去にはあります。しかし、約20年前にヒトゲノムの最初の配列が発表されたとき、必ず健康に害を与えるのは非常に稀なバリアントであり、バリアント自体はヒトゲノム全体に頻繁に存在することがわかった。平均的なヒトは約400のその個体に固有のバリアントを持っており、そのために健康が悪化することはないのである。

VUSは報告されるべきか?

VUSを報告すべきかどうかについて、学術団体などの専門機関が提供するガイダンスはないが、いくつかの ガイドラインでは、検査室はVUSに対応する確立された方針を持つべきであり、それを紹介する臨床医に明確にする必要があることを示唆している。ミネルバクリニックにおいては被験者が拒否しない限り、VUSを含めてレポートをすることにしている。知っておきたいという思いがある人が遺伝子検査を受ける傾向が強いことと、10%程度は病的に近い方に再分類されるためである。

遺伝子検査によりVUSがあると判った場合に知っておきたいこと

自分のVUSが再分類されたことを知ることができますか?

VUSが再分類された場合、検査を行った研究室は、そのバリアントがどのように、そしてなぜ再分類されたのかを説明する修正報告書を被検者の担当医師(臨床遺伝専門医)に送り、その後、遺伝専門医は、更新された結果とそれが本人や血縁者にとって何を意味するのかを説明するために連絡をとる。

VUS(意義不明の変異体)を持つ場合、血縁者も検査を受けるべき?

VUSはその変異の意味が明らかではないので、一般的には血縁者が検査を受けること自体の有益性はない。

VUSによって、個々人の受ける医療はどのように変わるのか?

変わらない。米国医遺伝学会のガイドラインでは、「意義の不明な変異体は、臨床的な意思決定に使用すべきではない」と規定されている。

たとえば乳がんの発症を予防する予防的乳房切除術のような手術は、後に良性であることが判明した患者には不必要であり、潜在的に有害となる可能性があるため、医学の専門家の間では、VUSのまま治療を行うことは決してなく、VUSが知見を積み重ねて分類が変わるのを待つことが標準的である。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

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